JP3059433B2 - 尿中トリプシンインヒビタ―の測定方法およびそれに用いる測定キット - Google Patents

尿中トリプシンインヒビタ―の測定方法およびそれに用いる測定キット

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JP3059433B2
JP3059433B2 JP11036909A JP3690999A JP3059433B2 JP 3059433 B2 JP3059433 B2 JP 3059433B2 JP 11036909 A JP11036909 A JP 11036909A JP 3690999 A JP3690999 A JP 3690999A JP 3059433 B2 JP3059433 B2 JP 3059433B2
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protease
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、尿中トリプシンイ
ンヒビターの測定方法およびそれに用いる測定キットに
関する。
【0002】
【従来の技術】最近、尿中トリプシンインヒビター(U
TI)が、生体の状態を表わす指標として注目され、臨
床医学の分野において様々な研究がされている。UTI
は、例えば、生体が炎症や外科手術等の内的および外的
ストレスに晒された場合や感染症に罹った場合に、尿中
に出現することが知られている(「尿中トリプシンイン
ヒビターの臨床的意義」、桑島士郎ら、JAPANESE JOURN
AL OF INFLAMMATION REVIEW ARTICLE,VOL9,NO.3,MA
Y 1989)。なお、UTIは、最初、尿中でその存在が確
認されたが、その後の研究により、血液等の他の体液中
にも存在することが明らかになっている。
【0003】UTIは、その量に応じてトリプシン活性
を阻害するため、その測定は、トリプシン活性の阻害程
度を測定することによって行われる。一般的には、試
料、緩衝液およびトリプシンを含有する酵素液を混合
し、これに基質溶液を添加して、酵素反応を測定するこ
とにより、試料中のUTIによるトリプシン活性の阻害
程度を測定する。通常、この測定において、トリプシン
活性化剤であるカルシウムが、前記緩衝液に配合され
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、UTI
は、生体の状態を表わす指標としてその重要性が指摘さ
れているものの、疾患特異性が低いという問題がある。
【0005】例えば、本発明者らが、炎症の代表的な指
標であるC反応性タンパク(CRP)を用い、尿中のU
TI量と炎症との相関関係を調べたところ、CRPが陰
性であるにもかかわらず、UTIの測定値が高くなる場
合があることが分かった。このUTI測定値が高い尿試
料をさらに調べたところ、これらの試料の大半におい
て、腎症の指標であるアルブミンが陽性であった。この
ことは、UTIが、炎症だけでなく、腎症の場合にも尿
中に増加することを意味し、これではUTIを炎症の特
異的指標若しくは腎症の特異的指標として用いることが
できない。
【0006】さらに、本発明者らの研究結果によると、
従来のUTIの測定方法では、尿中に存在するUTI量
を正確に測定できていないということも分かった。
【0007】そこで、本発明の目的は、生体の状態を表
わす指標としてのUTIの臨床的有用性を高めることが
でき、かつ正確にUTI量を測定できるUTIの測定方
法およびそれに用いる測定キットを提供することであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明のUTIの測定方法(方法A)は、尿試料中
の尿中トリプシンインヒビターの量を測定する方法であ
って、以下の(a)〜(d)の工程を有することを特徴
とする。 (a)尿試料にトリプシン以外のプロテアーゼを添加
し、前記プロテアーゼと 前記尿試料中のα1−アンチト
リプシンとを反応させて複合体を形成させ ることによ
り、前記α1−アンチトリプシンを不活性化する工程。 (b)前記不活性化の後、尿試料とトリプシンとを混合
する工程。 (c)前記トリプシンの活性の阻害を測定する工程。 (d)前記阻害から尿試料中の尿中トリプシンインヒビ
ターの量を決定する工程。
【0009】本発明者らは、前述の調査結果をさらに綿
密に検討し、研究を続けた結果、腎症において、従来の
測定方法によるUTIの測定値が高くなるのは、血液中
のα1−ATが尿中に漏出することが原因であることを
突き止めた。腎症において、アルブミンのような腎前性
タンパク質が尿中に出現するのは、腎糸球体基底膜のバ
リヤー機能が低下するためである。また、α1−AT
は、UTIと同様にトリプシン活性阻害機能を有し、血
液中に多量に含まれ(血液中におけるトリプシン阻害物
質の約90%を占める)、その分子量や等電点がアルブ
ミンと類似している。したがって、腎症であれば、アル
ブミンと共に、血液中のα1−ATも尿中に漏出するは
ずである。このため、従来の測定方法では、UTIのト
リプシン活性阻害に加え、血液中から尿中に漏出したα
1−ATのトリプシン活性阻害も測定しているのであ
る。さらに、腎症では、尿中のUTI濃度もほとんど増
加しないことを突き止めた。すなわち、α1−ATによ
る影響を排除すれば、UTIを正確に測定することがで
きるばかりでなく、尿中のUTIを炎症特有の指標とし
て用いることができるのである。本発明者らは、このよ
うな研究結果および着想に基づき、前記本発明の測定方
法に到達したのである。
【0010】
【0011】
【0012】α1−ATは、プロテアーゼ阻害活性部位
が一つしかない。これに対し、UTIは、プロテアーゼ
活性阻害部位を二つ有しており、阻害するプロテアーゼ
は各阻害部位で異なる。したがって、試料にトリプシン
以外のプロテアーゼを添加して、前記試料中のα1−A
Tと複合体を形成させて、α1−ATを不活性にした場
合、前記試料中に共存するUTIも前記プロテアーゼと
反応して複合体を形成したとしても、もう一方のトリプ
シン活性阻害部位が残っている。この状態でトリプシン
の酵素活性を測定しても、UTIはトリプシンの活性を
阻害することができるため、α1−ATの影響なくUT
Iを測定することができる。前記トリプシン以外のプロ
テアーゼとしては、トリプシンの基質を分解しないもの
が好ましく、また、トリプシンを阻害しないものが好ま
しい。
【0013】α1−ATは、セリンプロテアーゼインヒ
ビターであるから、前記トリプシン以外のプロテアーゼ
は、セリンプロテアーゼが好ましいが、本発明は、これ
に限定されない。α1−ATは、システインプロテアー
ゼ等とも反応するからである。前記トリプシン以外のプ
ロテアーゼの好ましい具体例としては、エラスターゼ、
ズブチリシン、キモトリプシン、カテプシン、プラスミ
ン、トロンビン、カリクレインおよびウロキナーゼ等が
あげられる。これらのプロテアーゼのなかで、より好ま
しいのは、エラスターゼ、ズブチリシンであり、特に好
ましくは、コストの点から、ズブチリシンである。前記
トリプシン以外のプロテアーゼは、1種類を用いてもよ
いし、2種類以上を併用してもよい。
【0014】方法Aにおいて、前記トリプシン以外のプ
ロテアーゼの添加割合は、試料1mlに対し0.33×
10-9〜16.6×10-9molの範囲が好ましく、特
に好ましくは3.3×10-9〜10.0×10-9mol
の範囲である。0.33×10-9molより少ないと、
試料中のα1−ATを完全に不活性化できないおそれが
ある。なお、この方法Aにおいて、トリプシン以外のプ
ロテアーゼの添加量をmolで表したのは、以下の理由
による。通常、酵素の添加量は、その活性を基準にした
ユニット単位で表される。しかし、前述のように、方法
Aでは、酵素の活性を問題とせず、α1−ATとトリプ
シン以外のプロテアーゼとの複合体を形成させるのだか
ら、その数が問題となる。したがって、前記トリプシン
以外のプロテアーゼの添加量は、分子数を表す「mo
l」で表すことが好ましい。なお、前記プロテアーゼの
分子量がわかればグラム単位(g)で表示することがで
き、実際に、この方法Aを実施する場合、グラム単位に
換算して使用することが好ましい。この場合、前記添加
量は、試料1mlに対し10〜500μgの範囲が好ま
しく、特に好ましくは、100〜300μgの範囲であ
る。
【0015】 また、前記トリプシン以外のプロテアー
ゼとして前記ズブチリシンまたはエラスターゼを使用す
る場合も、前記添加割合と同様の範囲であることが好ま
しい。また、グラム単位で表した添加量の割合も同様で
ある。
【0016】本発明の測定方法において、試料に酸化剤
を添加することにより、前記試料中のα1−ATを不活
性化するという方法(方法B)を併用してもよい
【0017】α1−ATにおける、トリプシンとの反応
部位は、358番目のメチオニン残基である。したがっ
て、酸化剤により、このメチオニン残基をメチオニンス
ルホキシドに酸化すると、α1−ATは、不活性化され
る。
【0018】この方法Bにおいて、前記酸化剤は、過マ
ンガン酸、過マンガン酸塩、酸素酸、酸素酸塩、金属塩
類、酸化物および過酸化物等が好ましく、特に好ましく
は、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素、硫酸銅および三塩化
鉄である。なお、前記酸化剤は、1種類を用いてもよい
が、十分な効果が得られることから、2種類以上を併用
することが好ましい。
【0019】方法Bにおいて、前記酸化剤の添加割合
は、試料1mlに対し0.005〜0.5mmolの範
囲であることが好ましく、特に好ましくは、0.01〜
0.1mmolの範囲である。0.005mmolより
少ないと、試料中のα1−ATを完全に不活性化できな
いおそれがある。
【0020】本発明の測定方法において、前記トリプシ
ンとしては、特に制限されず、例えば、牛膵臓由来のト
リプシン、ブタ膵臓由来のトリプシン等が使用できる。
【0021】本発明の測定方法において、使用される基
質としては、特に制限されず、例えば、カゼイン、アル
ブミン等の天然のタンパク質の他、合成基質等があげら
れる。前記合成基質としては、例えば、Nα−ベンゾイ
ル−アルギニン−p−ニトロアニリド(BAPNA)、
Nα−ベンゾイル−リジン−p−ニトロアニリド、t−
ブトキシカルボニル−アルギニン−p−ニトロアニリ
ド、t−ブトキシカルボニル−リジン−p−ニトロアニ
リド等が使用できる。これらの合成基質は、トリプシン
により分解されると発色物質を生成する。これらの基質
の中で好ましいのは、BAPNAである。
【0022】本発明の測定方法において、使用される緩
衝液としては、特に制限されず、例えば、トリエタノー
ルアミン塩酸塩緩衝液、トリス塩酸緩衝液、リン酸緩衝
液、グッド緩衝液等があげられる。
【0023】
【0024】つぎに、本発明のUTI測定キットは、方
Aに対応して、以下に示すように、測定キットAが
る。
【0025】前記測定キットAは、トリプシン、基質お
よびトリプシン以外のプロテアーゼを備える。この測定
キットを用いれば、方法Aによる本発明の測定方法を容
易かつ迅速に実施できる。
【0026】前記測定キットAにおいて、前記トリプシ
ン以外のプロテアーゼは、前記方法Aと同様に、セリン
プロテアーゼが好ましいが、これに限定されない。前記
トリプシン以外のプロテアーゼの好ましい具体例として
は、エラスターゼ、ズブチリシン、キモトリプシン、カ
テプシン、プラスミン、トロンビン、カリクレインおよ
びウロキナーゼ等があげられる。このなかで、特に好ま
しいプロテアーゼは、エラスターゼ、ズブチリシンであ
る。前記トリプシン以外のプロテアーゼは、1種類を用
いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0027】前記測定キットAは、トリプシン溶液(R
1)、基質溶液(R2)およびトリプシン以外のプロテ
アーゼ溶液(R3)を備え、これらに加え、緩衝液(R
4)を有していてもよい。これらの試薬(R1、R2、
R3およびR4)の調製は、方法Aによる本発明の測定
方法の説明において述べる方法により行うことができ、
また各組成およびその割合等は、前記測定方法の箇所で
述べるとおりである。
【0028】この測定キットAにおいて、試薬R1、R
2、R3およびR4は、それぞれ独立してもよく、また
これらの組み合わせであってもよい。具体的には下記の
ように2液系および3液系の組み合わせがある。 (1)3液系:R1+R2+R3とR4の混合液 (2)2液系:R1+R2とR3とR4の混合液
【0029】また、前記方法Bに対応した測定キットB
は、トリプシン、基質および酸化剤を備える。この測定
キットBを用いれば、方法Bによる測定方法を容易かつ
迅速に実施することができる。
【0030】前記測定キットBにおいて、前記酸化剤
は、前記方法Bと同様に、過マンガン酸、過マンガン酸
塩、酸素酸、酸素酸塩、金属塩類、酸化物および過酸化
物等が好ましく、特に好ましくはヨウ素酸ナトリウム、
ヨウ素、硫酸銅および三塩化鉄である。前記酸化剤は、
1種類を用いてもよいが、2種類以上を併用することが
好ましい。
【0031】前記測定キットBは、トリプシン溶液(R
1)、基質溶液(R2)および酸化剤溶液(R5)を備
え、これらに加え、緩衝液(R4)を有していてもよ
い。これらの試薬(R1、R2、R5およびR4)の調
製は、方法Bによる本発明の測定方法の説明において述
べる方法により行うことができ、また各組成およびその
割合等は、前記測定方法の箇所で述べるとおりである。
【0032】この測定キットBにおいて、試薬R1、R
2、R5およびR4は、それぞれ独立してもよく、また
これらの組み合わせであってもよい。具体的には下記の
ような3液系の組み合わせがある。 3液系:R1+R5+R2とR4の混合液
【0033】
【0034】
【発明の実施の形態】方法Aによる本発明の測定方法
は、例えば、トリプシンを含有する酵素液(トリプシン
溶液)と、基質溶液と、トリプシン以外のプロテアーゼ
とを用いて実施できる。
【0035】前記トリプシン以外のプロテアーゼは、そ
のまま使用してもよいが、操作の簡便性等の点から、前
記プロテアーゼを含有する溶液として用いることが好ま
しい。前記プロテアーゼ溶液の調製に用いる溶媒は、通
常、緩衝液であり、特に前記緩衝液が好ましい。
【0036】前記緩衝液は、常法により調製される。前
記緩衝液のpHは、トリプシンの最適pHであるpH7
〜8の範囲が好ましい。また、トリプシン活性化剤とし
て、通常、緩衝液中にカルシウムを配合する。その配合
割合は、通常、前記緩衝液に対して0.01〜0.5重
量%の範囲である。
【0037】前記トリプシン溶液の濃度は、前記トリプ
シン溶液全体に対し、通常、13,000〜10,00
0,000U/リットルの範囲であり、好ましくは13
0,000〜2,000,000U/リットルの範囲で
ある。なお、この活性(U)は、トリプシン活性の測定
において、基質としてNα−ベンゾイル−L−アルギニ
ンエチルエステル(BAEE)を用いた場合の値であ
る。また、前記トリプシン溶液の濃度をグラム単位を用
いて表す場合、その比活性等により適宜決定されるが、
前記トリプシン溶液全体に対し、通常、1〜500mg
/リットルの範囲であり、好ましくは10〜100mg
/リットルの範囲である。また、このトリプシン溶液
は、トリプシンの自己消化を防止する目的で、例えば、
塩酸、緩衝液等によりpH2.0〜3.5の範囲に調整
してもよい。
【0038】前記基質溶液の濃度は、通常、1〜10g
/リットルの範囲である。前記基質溶液の調製に用いる
溶媒は、通常、水(精製水等)であるが、前記緩衝液で
もよい。また、前記合成基質は、水溶液等には難溶であ
るため、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等
の有機溶媒に溶解してから、水等で希釈することが好ま
しい。
【0039】つぎに、方法Aによる本発明の測定方法に
ついて、尿を試料とした場合を例として、以下に説明す
る。
【0040】すなわち、まず、尿試料にトリプシン以外
のプロテアーゼを混合して不活性化処理する。前記プロ
テアーゼは、尿試料に直接添加してもよいが、操作の迅
速性、簡便性の点から、先に述べたように前記プロテア
ーゼを含有する緩衝液(プロテアーゼ溶液)を調製し、
これと尿試料とを混合することが好ましい。この混合割
合(体積比)は、前記プロテアーゼ溶液の濃度により異
なるが、前記濃度が0.01mMの場合、通常、前記尿
試料:前記プロテアーゼ溶液=1:5〜1:20の範囲
に設定される。このように前記プロテアーゼの添加によ
り尿試料中のα1−ATは、室温において直ぐに不活性
となるが、25〜37℃で1〜800秒間インキュベー
ションすることが好ましい。
【0041】つづいて、前記処理済尿試料にトリプシン
溶液を配合する。この配合割合(体積比)は、通常、前
記処理済尿試料:前記トリプシン溶液=1:1〜5:1
の範囲に設定される。通常、この混合液を25〜37℃
で1〜5分間インキュベーションする。そして、これに
前記基質溶液を配合し、前記トリプシンと前記基質とを
反応させる。前記基質溶液の配合割合は、通常、全反応
液に対し、5〜30体積%の範囲である。この反応条件
は、通常、25〜37℃で1〜20分間である。また、
このときの前記反応液のpHは、トリプシンの最適pH
であるpH7〜8の範囲が好ましい。そして、所定の方
法により、トリプシンの酵素反応を検出し、その酵素活
性を測定する。この反応において、前記尿試料中のα1
−ATが予め不活性にされているため、UTI量に応
じ、トリプシンの酵素反応が阻害されて、正確なUTI
量を測定できる。前記トリプシンの酵素反応の検出方法
としては、例えば、BAPNA等の酵素反応により発色
する基質を用いた場合は、この発色程度を分光光度計等
により測定する方法があげられる。この他に、酵素反応
生成物の濃度を測定することにより、その酵素活性を測
定することもできる。
【0042】なお、方法Aによる本発明の測定方法にお
いて、試料と前記トリプシン溶液とが接触する前に、試
料中のα1−ATのトリプシン活性阻害能が不活性化さ
れていればよい。このため、試料の前記プロテアーゼ処
理は、前記方法に限定されず、前記プロテアーゼ溶液、
試料および基質溶液を、順序を問わずに混合できる。そ
して、この混合液にトリプシン溶液を添加することによ
り、トリプシンの酵素反応を開始する。
【0043】つぎに、方法Bによる本発明の測定方法
は、例えば、トリプシンを含有する酵素溶液(トリプシ
ン溶液)と、基質溶液と、酸化剤とを用いて実施でき
る。なお、後述する酸化剤以外は、特に示さない限り、
前記方法Aによる測定方法と同様のものを用いることが
でき、また同様にして調製できる。
【0044】前記酸化剤は、そのまま使用してもよい
が、操作の簡便性等の点から、酸化剤溶液として使用す
ることが好ましい。前記酸化剤溶液の調製に用いる溶媒
は、通常、その酸化力を維持するために、水が好まし
い。また、前記酸化剤溶液は、エチレンジアミン四酢酸
(EDTA)等のその他の成分を含んでいてもよい。例
えば、EDTAを添加すれば、金属と錯体を形成するた
め、沈殿物の生成を防止できる。
【0045】つぎに、方法Bによる測定方法について、
尿を試料とした場合を例として、以下に説明する。
【0046】すなわち、まず、尿試料に酸化剤を混合し
て不活性化処理する。前記酸化剤は、尿試料に直接添加
してもよいが、操作の迅速性、簡便性の点から、先に述
べたように前記酸化剤溶液を調製し、これと尿試料とを
混合することが好ましい。この混合の割合(体積比)
は、前記酸化剤溶液の濃度により異なるが、前記濃度が
0.1mmol/mlの場合、通常、前記尿試料:前記
酸化剤溶液=1:5〜1:20の範囲に設定される。こ
のように前記酸化剤の添加により尿試料中のα1−AT
は、室温において直ぐに不活性となるが、25〜37℃
で10〜600秒間インキュベーションすることが好ま
しい。
【0047】つづいて、前記処理済尿試料、緩衝液およ
びトリプシン溶液を混合する。この混合の割合(体積
比)は、通常、前記処理済尿試料:前記緩衝液:前記ト
リプシン溶液=1:1〜5:1の範囲に設定される。前
記混合を行った後は、前述の方法Aによる測定方法と同
様にして、トリプシンの酵素反応を行い、これを検出し
て酵素活性を測定する。この反応において、前記尿試料
中のα1−ATが酸化剤により予め不活性にされている
から、UTI量に応じ、トリプシンの酵素反応が阻害さ
れて、正確なUTI量を測定できる。
【0048】なお、方法Bによる測定方法において、試
料と前記トリプシン溶液とが接触する前に、試料中のα
1−ATのトリプシン活性阻害能が酸化剤により不活性
化されていればよい。このため、試料の前記酸化剤処理
は、前記方法に限定されず、前記酸化剤溶液、試料およ
び基質溶液を、順序を問わずに混合できる。そして、こ
の混合液にトリプシン溶液を添加することにより、トリ
プシンの酵素反応を開始する。ただし、前記酸化剤の添
加は、その操作の簡便性等から、先に述べたように、試
料の前処理として行うことが特に好ましい。
【0049】また、本発明の測定方法において、前述の
ように、方法Aにより、α1−ATを不活性化するだけ
でなく、方法Aおよび方法Bの併用により、α1−AT
を不活性化してもよい。
【0050】この場合、例えば、試料をトリプシン以外
のプロテアーゼと酸化剤とで、順次処理してもよいし、
試料に前記両者を同時に添加して処理してもよい。この
ように方法Aおよび方法Bを併用する場合は、試料1m
lに対し、前記プロテアーゼを0.33×10-9〜1
6.6×10-9molの範囲および酸化剤を0.005
〜0.5mmolの範囲で添加することが好ましい。
【0051】
【実施例】つぎに、実施例について比較例と併せて説明
する。
【0052】(実施例A−1)この実施例A−1は、ト
リプシン以外のプロテアーゼとしてズブチリシンを用
い、これを種々濃度で尿試料に添加してα1−ATを不
活性化し、トリプシン活性阻害程度をUTI量として求
めた例である。この実施例A−1における緩衝液、トリ
プシン溶液および基質溶液は、前述の方法により調製し
た。その組成およびUTI測定の操作方法を下記に示
す。
【0053】 (緩衝液:pH8.1) トリエタノールアミン塩酸塩 0.5mol/リットル CaCl2・2H2O 150mg/リットル TritonX−405(ナカライテスク社製) 2.0g/リットル
【0054】 (トリプシン溶液:pH3.0) トリプシン(14,900U/mg、シグマ社製)50mg/リットル HCl 1mmol/リットル
【0055】(基質溶液)約70℃に加温した水に、4
g/リットルの割合でL−BAPNA(ペプチド研究所
社製)を溶解することにより調製した。
【0056】(ズブチリシン)枯草菌由来ズブチリシン
(ベーリンガー・マンハイム社製)
【0057】(α1−AT)ヒト血清由来α1−AT
(ART社製)
【0058】(試料1、2、3)試料1は、α1−AT
を健常者尿に14mg/100mlの濃度になるように
添加した試料(α1−AT添加尿)である。試料2は、
尿タンパク質陽性患者の血清と健常者尿とを、体積比が
前記血清:前記尿=1:7になるように混合した試料
(血清添加尿)である。前記尿タンパク質陽性患者と
は、血清中のCRPおよび血清アミロイドA(SAA)
が陰性であり、尿中のUTIが陽性(従来法による)で
ある患者のことである(以下、同じ)。試料3は、健常
者尿である。
【0059】(操作方法)前記試料1、2、3に対し、
ズブチリシンを所定濃度(0mg/100ml、0.4
mg/100ml、0.8mg/100ml、1.2m
g/100ml、1.6mg/100ml、2mg/1
00ml、2.4mg/100ml、3.2mg/10
0ml、4mg/100ml)になるように直接添加し
た。そして、このズブチリシン処理後の尿試料20μ
l、緩衝液200μlおよびトリプシン溶液100μl
を混合し、37℃で5分間保温した。この混合液に前記
基質溶液100μlを添加して、酵素反応を開始した。
そして、前記反応液を37℃で保温して、前記反応液の
2分間の吸光度(405nm)変化を日立7070型自
動分析装置(日立製作所社製)で測定し、その相対吸光
度(△O.D.)を求めた。この相対吸光度から、予め
作成した検量線を用いて、トリプシン活性阻害程度をU
TI量として求めた。なお、前記検量線は、UTI標準
物質(ユーティニン、メクト社製)を生理食塩水に溶解
した標準液を用い、前述と同様に測定して作成した。こ
のUTIの測定は、各試料について3回ずつ行った。こ
の結果を図1のグラフに示す。
【0060】図1に示すように、前記α1−AT添加尿
(試料1)では、ズブチリシンの添加量を増加するに従
い、UTI量が減少し、ズブチリシンを試料に対し0.
4mg/100ml(試料1mlに対し0.13×10
-9mol)以上になるように添加すると、UTI量は一
定となり、健常者尿(試料3)のUTI量とほぼ同量に
なった。このことから、健常者尿に添加したα1−AT
が完全に不活性化されたことが分かる。また、同様に前
記血清添加尿についても、ズブチリシンを試料に対し
1.6mg/100ml(試料1mlに対し0.53×
10-9mol)以上になるように添加することにより、
前記血清由来のα1−ATが不活性化されたことがわか
る。なお、充分量のズブチリシンを添加した前記血清添
加尿のUTI量が、健常者尿のUTI量よりも高い値を
示すのは、添加した前記血清中に存在するUTIによる
ためと考えられる。
【0061】(実施例A−2)この実施例A−2は、エ
ラスターゼを種々濃度で試料に添加してα1−ATを不
活性にし、トリプシン活性阻害程度をUTI量として求
めた例である。なお、特に示さない限り、UTIの測定
操作は、実施例A−1と同じである。
【0062】(エラスターゼ)ヒト白血球由来エラスタ
ーゼ(ART社製)
【0063】(試料)尿タンパク質陽性患者の尿(尿タ
ンパク質濃度:541mg/100ml)を用いた。
【0064】(操作方法)前記試料に対し、エラスター
ゼを所定濃度(0mg/100ml、2mg/100m
l、4mg/100ml、6mg/100ml、8mg
/100ml、10mg/100ml)になるように直
接添加した。以後、実施例A−1と同様にしてUTI量
を求めた。このUTIの測定は、2回ずつ行った。この
結果を、図2のグラフに示す。
【0065】図2に示すように、エラスターゼ濃度に比
例して、そのUTI量が減少した。この試料は、炎症を
おこしていない腎症の患者の尿である。従って、エラス
ターゼを添加する前は、UTIが高い値を示し、エラス
ターゼの濃度を高くするに従い、UTIの値が低下した
ということは、この尿試料にはα1−ATが存在し、こ
れが、トリプシン活性を阻害しているといえる。また、
このα1−ATは、エラスターゼを添加することにより
不活性化される。この実施例A−2の結果から、本発明
の測定方法によれば、尿中のUTIを炎症特有の指標と
して用いることができるといえる。
【0066】(実施例A−3)この実施例A−3では、
ズブチリシンによる試料の処理時間とUTI量との関係
を調べた。なお、特に示さない限り、使用した試料およ
びUTIの測定操作は実施例A−1と同じである。
【0067】(試料)実施例A−1で用いた試料2(血
清添加尿)を使用した。
【0068】(ズブチリシン溶液)前記緩衝液に実施例
A−1と同じズブチリシンを20mg/100mlの濃
度になるように添加して調製した。
【0069】(操作方法)ズブチリシン溶液200μl
と前記試料20μlとを混合し、これを種々の時間(2
5秒、50秒、425秒、800秒)インキュベートし
た。このインキュベート時の温度は、37℃である。こ
の溶液にトリプシン溶液100μlを添加し、以後、実
施例A−1と同様にしてUTI量を測定した。吸光度の
測定には、日本ロシュCOBAS MIRA自動分析装
置(日本ロシュ社製)を使用した。このUTIの測定
は、5回ずつ行った。この結果を図3のグラフに示す。
【0070】図3に示すように、ズブチリシンによる試
料中のα1−ATの不活性化処理時間を変えてもUTI
量に大きな違いは見られず、前記不活性化処理時間が2
5秒で、完全にα1−ATは不活性化された。
【0071】(実施例A−4、比較例A−1)実施例A
−4および比較例A−1において、UTI量と炎症との
相関性を調べた。なお、特に示さない限り、UTIの測
定操作は実施例A−1と同じである。
【0072】(試料)実施例A−4および比較例A−1
の試料として、患者尿(検体数:n=77)を使用し、
また対照の試料として、同患者の血清(検体数:n=7
7)を使用した。
【0073】実施例A−4では、前記試料20μlと実
施例A−3で用いたズブチリシン溶液200μlとを混
合した後、これに前記トリプシン溶液100μlを添加
し、以後、実施例A−1と同様にしてUTI量を測定し
た。
【0074】対照として、前記血清(n=77)につい
て、CRPの測定を行った。この測定は、CRP測定キ
ット(デンカ生研社製)を用い、その使用方法に準じて
行った。
【0075】この実施例A−4と対照の結果を図4のグ
ラフに示す。このグラフは、前記ズブチリシン処理後の
尿試料中のUTI量と前記血清試料中のCRP濃度との
相関関係を示すグラフであり、図中の式は、前記相関関
係を表す式、Rは相関係数をそれぞれ示す。
【0076】一方、比較例A−1は、トリプシン以外の
プロテアーゼで処理を行わない従来のUTI測定方法の
例である。この比較例A−1では、前記試料20μl、
前記緩衝液200μlおよびトリプシン溶液100μl
を混合し、以後、実施例A−1と同様にしてUTI量を
測定した。この結果と前記対照の結果を図5のグラフに
示す。このグラフは、前記プロテアーゼ未処理の尿試料
中のUTI量と前記血清試料中のCRP濃度との相関関
係を示すグラフであり、図中の式は、前記相関関係を表
す式、Rは相関係数をそれぞれ示す。
【0077】図4および図5のグラフに示すように、実
施例A−4におけるUTI量とCRP濃度との相関(R
=0.39)は、比較例A−1における前記相関(R=
0.24)よりも高かった。この結果から、本発明の測
定方法によれば、UTIの炎症に対する指標としての特
異性を高めることができるといえる。
【0078】(参考例)この参考例は、尿における尿タ
ンパク質濃度とα1−AT濃度との関係を調べた例であ
る。
【0079】(試料)患者尿(検体数:n=98)
【0080】前記各患者尿(n=98)について、その
タンパク質量をタンパク質測定キット(和光純薬社製)
を用い、その使用方法(ピロガロールレッド法)に準じ
て測定した。この測定には、日立7070型自動分析装
置(日立製作所社製)を使用した。一方、前記各患者尿
(n=98)について、そのα1−AT濃度を、ELI
SA法により測定した。これらの結果を図6のグラフに
示す。このグラフは、前記尿タンパク質濃度と前記尿中
α1−ATとの相関関係を示すグラフであり、図中の式
は、前記相関関係を表す式、Rは相関係数をそれぞれ示
す。
【0081】図6に示すように、尿タンパク質濃度が高
い検体は、尿中のα1−AT濃度も高い傾向にあり、前
記両者は高い相関性を示している。このことから、尿タ
ンパク質濃度が高くなる腎症では、UTIと同じトリプ
シン活性阻害能を有するα1−ATが、尿中に漏出して
いることが分かる。つまり、腎症患者の尿においては、
この尿中に漏出したα1−ATがトリプシン活性を阻害
するため、従来法では尿中のUTI量がみかけ上高くな
るといえる。
【0082】(実施例B−1)この実施例B−1は、種
々の酸化剤を用い、これを尿試料に添加してα1−AT
を不活性化し、トリプシン活性阻害程度をUTI量とし
て求めた例である。以下の実施例B−1〜B−5も同様
である。この実施例B−1における緩衝液、トリプシン
溶液、基質溶液および酸化剤は、前述の方法により調製
した。その組成およびUTI測定の操作方法を下記に示
す。
【0083】 (緩衝液:pH8.3) トリエタノールアミン塩酸塩 0.5mol/リットル CaCl2・2H2O 150mg/リットル TritonX−405(ナカライテスク社製) 2.0g/リットル
【0084】 (トリプシン溶液:pH3.0) トリプシン(14,900U/mg、シグマ社製)50mg/リットル HCl 1mmol/リットル
【0085】(基質溶液)約70℃に加温した水に、4
g/リットルの割合でL−BAPNA(ペプチド研究所
社製)を溶解することにより調製した。
【0086】(酸化剤溶液)0.05M NaIO
3(ナカライテスク社製、以下同じ)および0.05M
2(和光純薬社製、以下同じ)をそれぞれ調製し、こ
れらを体積比が1:1の割合になるように混合した。調
製用の溶媒としては、水を使用した。後述の各酸化剤溶
液の調製も、同じく溶媒として水を用いた。
【0087】(試料)健常者尿と尿タンパク質陽性患者
の血清とを体積比が7:1になるように混合した血清添
加尿を試料とした。また、対照の試料として、生理食塩
水と前記健常者尿とを体積比1:1になるように混合し
たもの(希釈健常者尿)を使用した。
【0088】(操作方法)まず、前記試料と前記酸化剤
溶液とを体積比が1:1になるように混合した。そし
て、この酸化剤処理後の尿試料20μl、緩衝液200
μlおよびトリプシン溶液100μlを混合し、37℃
で5分間保温した。この混合液に前記基質溶液100μ
lを添加して、酵素反応を開始した。そして、前記反応
液を37℃で保温して、前記反応液の2分間の吸光度
(405nm)変化を日立7070型自動分析装置(日
立製作所社製)で測定し、その相対吸光度(△O.
D.)を求めた。この相対吸光度から、予め作成した検
量線を用いて、トリプシン活性阻害程度をUTI量とし
て求めた。なお、前記検量線は、UTI標準物質(ユー
ティニン、メクト社製)を生理食塩水に溶解した標準液
を用い、前述と同様に測定して作成した。また、対照例
として、前記希釈健常者尿20μl、緩衝液200μl
およびトリプシン溶液100μlを混合し、以後、前記
実施例B−1と同様にしてUTI量を測定した。これら
の結果を下記表1に示す。
【0089】(実施例B−2)0.1M NaIO3
調製し、これと前記0.05M I2とを、体積比1:
1になるように混合したものを酸化剤溶液として使用し
た以外は、実施例B−1と同様にして、UTI測定の操
作を行った。この結果を下記表1に併せて示す。
【0090】(実施例B−3)0.05M FeCl3
・6H2O(和光純薬社製、以下同じ)を調製し、これ
を酸化剤溶液として使用した以外は、実施例B−1と同
様にして、UTI測定の操作を行った。この結果を下記
表1に併せて示す。
【0091】(実施例B−4)この実施例B−4では、
酸化剤溶液に他の成分としてEDTAを添加した場合の
トリプシン活性阻害程度をUTI量として求めた。
【0092】すなわち、0.05M CuSO4・5H2
O(ナカライテスク社製)および0.05M EDTA
−2Na・2H2O(ナカライテスク社製、以下同じ)
をそれぞれ調製し、これらを体積比が1:1の割合にな
るように混合したものを酸化剤溶液として使用した。こ
の溶液と実施例B−1と同じ試料とを混合し、以後、実
施例B−1と同様にして、UTI量を求めた。この結果
を下記表1に併せて示す。
【0093】(実施例B−5)前記0.05M FeC
3・6H2Oと前記0.05M EDTA−2Na・2
2Oとを体積比が1:1の割合になるように混合した
ものを酸化剤溶液とした。この溶液と実施例B−1と同
じ試料とを混合し、以後、実施例B−1と同様にして、
UTI量を求めた。この結果を下記表1に示す。
【0094】(比較例B−1)この比較例B−1は、酸
化剤で処理を行わない従来のUTI測定方法の例であ
る。この比較例B−1では、まず、実施例B−1と同じ
試料(血清添加尿)と生理食塩水とを体積比1:1にな
るよう混合した。そして、この混合液20μl、緩衝液
200μlおよびトリプシン溶液100μlを混合し、
以後、前記実施例B−1と同様にしてUTI量を測定し
た。この結果を下記表1に併せて示す。
【0095】
【表1】 UTI量 α1−AT (IU/リットル) の不活性化程度 対照例 143 − 実施例B−1 54 ◎ 実施例B−2 85 ◎ 実施例B−3 394 ○ 実施例B−4 325 ○ 実施例B−5 326 ○ 比較例B−1 1826 ×
【0096】上記表1に示すように、実施例B−1およ
びB−2におけるUTI量のそれぞれの値は、比較例B
−1(従来法)のUTI量の値と比較して大幅に減少
し、対照である前記希釈健常者尿中のUTI量の値とほ
ぼ同様の値が得られた。また、酸化剤を二種類併用する
と、充分にα1−AT不活性化の効果が得られることが
分かった。また、実施例B−3におけるUTI量の値
も、比較例B−1(従来法)のUTI量の値より減少
し、対照である前記希釈健常者尿中のUTI量の値に近
い値が得られた。そして、EDTAを共に添加した実施
例B−4、B−5のUTI量の値も、比較例B−1(従
来法)のUTI量の値より減少し、対照である前記希釈
健常者尿中のUTI量の値に近い値が得られた。
【0097】(実施例C−1および比較例C−1)この
実施例C−1は、試料に、トリプシン以外のプロテアー
ゼと酸化剤の両方を添加して、トリプシン阻害程度をU
TI量として求めた例である。なお、前記プロテアーゼ
および酸化剤を併用した場合に、α1−ATが充分に不
活性化されたかを評価するために、試料をトリプシン以
外のプロテアーゼのみで処理した場合のUTI量も求め
た。
【0098】(緩衝液)実施例A−1と同じ緩衝液を使
用した。
【0099】(ズブチリシン溶液)前記緩衝液に、実施
例A−1と同じズブチリシンを、0.02mg/mlの
濃度になるように添加した。
【0100】(酸化剤溶液)0.2M CuSO4・5
2Oおよび0.2M EDTA−2Na・2H2Oをそ
れぞれ調製し、これらを体積比が1:1の割合になるよ
うに混合した。
【0101】(試料)健常者尿に対し、患者血清を所定
濃度(0体積%、20体積%、40体積%、60体積
%、80体積%、100体積%)になるように混合し、
これらを試料とした。
【0102】(操作方法)前記試料と前記酸化剤溶液と
が、体積比2:1の割合になるように混合し(試料1m
lに対して酸化剤0.05mmol)、この混合液75
0μlに前記ズブチリシン溶液250μlを混合した
(試料1mlに対してズブチリシン13.3×10-9
ol)。この後、前記実施例A−1と同様にして、前記
トリプシン溶液および前記基質溶液を添加して、UTI
量を測定した。このUTI量の測定は3回ずつ行い、そ
の平均値を求めた。
【0103】一方、前記試料と生理食塩水とが、体積比
2:1の割合になるように混合し、この混合液750μ
lに前記ズブチリシン溶液250μl(試料1mlに対
してズブチリシン13.3×10-9mol)を混合した
後、前述と同様にしてUTI量を測定した。
【0104】なお、比較例C−1は、試料をトリプシン
以外のプロテアーゼおよび酸化剤のいずれによっても処
理しない従来のUTI測定方法の例である。この比較例
では、前記試料を生理食塩水と混合し、ズブチリシン溶
液の代わりに前記緩衝液を添加した以外は、前述と同様
にしてUTI量を測定した。これらの結果を、図7のグ
ラフに示す。図中において、◇は、ズブチリシンのみで
試料を処理した場合のUTI量、□は、ズブチリシンお
よび酸化剤で試料を処理した場合のUTI量、○は、試
料を処理しない比較例C−1のUTI量をそれぞれ示
す。
【0105】図示のように、比較例C−1では、α1−
ATの影響により、高いUTI量を示し、測定範囲を越
えていた。一方、ズブチリシンおよび酸化剤の両方で試
料を処理した場合と、ズブチリシンのみで試料を処理し
た場合とでは、比較例C−1に比べ、充分にそのUTI
量が減少し、両者のUTI量も、ほぼ同様の値を示し
た。このことから、トリプシン以外のプロテアーゼと酸
化剤とを併用しても、十分に試料中のα1−ATを不活
性化できることがわかった。なお、試料中の血清濃度
(体積%)の増加に伴い、UTIの値が高くなるのは、
血清中に含まれるUTIによるものと推測できる。
【0106】
【発明の効果】以上のように、本発明のUTIの測定方
法は、試料の存在下、トリプシン活性を測定することに
より前記試料中のUTIを測定する方法であって、試料
中のα1−ATを不活性化してから、前記トリプシンと
試料とを混合することにより、UTI量を正確に測定
し、かつUTIの臨床的指標としての有用性を高めるこ
とができる。例えば、本発明の測定方法により尿中のU
TIを測定すれば、腎症患者の尿であっても、UTIを
正確に測定でき、このことはUTIを炎症の指標として
活用できることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【図1】方法Aによる本発明の測定方法の一実施例にお
いて、ズブチリシンを用いてα1−ATを不活性にし、
UTIの測定を行った結果を示すグラフである。
【図2】方法Aによる本発明の測定方法のその他の実施
例において、エラスターゼを用いてα1−ATを不活性
にし、UTIの測定を行った結果を示すグラフである。
【図3】方法Aによる本発明の測定方法のさらにその他
の実施例において、ズブチリシンによるα1−ATの不
活性化処理時間を変えて、UTIの測定を行った結果を
示すグラフである。
【図4】方法Aによる本発明の測定方法のさらにその他
の実施例において、ズブチリシンを用いてα1−ATを
不活性にし、UTIの測定を行った結果を示すグラフで
ある。
【図5】比較例において、従来の方法により、UTIの
測定を行った結果を示すグラフである。
【図6】参考例において、尿中のタンパク質濃度とα1
−AT濃度との関係を示すグラフである。
【図7】方法Aと方法Bとを併用した本発明の測定方法
のさらにその他の実施例において、ズブチリシンと酸化
剤とを用いてα1−ATを不活性にし、UTIの測定を
行った結果を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−11198(JP,A) ANNALES DE BIOLOG IE CLINIQUE,(1989),V ol.47,No.5,p.261−267 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12Q 1/25 - 1/66 BIOSIS(DIALOG)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 尿試料中の尿中トリプシンインヒビター
    の量を測定する方法であって、以下の(a)〜(d)の
    工程を有する測定方法。 (a)尿試料にトリプシン以外のプロテアーゼを添加
    し、前記プロテアーゼと 前記尿試料中のα1−アンチト
    リプシンとを反応させて複合体を形成させ ることによ
    り、前記α1−アンチトリプシンを不活性化する工程。 (b)前記不活性化の後、尿試料とトリプシンとを混合
    する工程。 (c)前記トリプシンの活性の阻害を測定する工程。 (d)前記阻害から尿試料中の尿中トリプシンインヒビ
    ターの量を決定する工程。
  2. 【請求項2】 トリプシン以外のプロテアーゼが、セリ
    ンプロテアーゼである請求項1記載の測定方法。
  3. 【請求項3】 トリプシン以外のプロテアーゼが、エラ
    スターゼ、ズブチリシン、キモトリプシン、カテプシ
    ン、プラスミン、トロンビン、カリクレインおよびウロ
    キナーゼからなる群から選択された少なくとも一つのプ
    ロテアーゼである請求項1記載の測定方法。
  4. 【請求項4】 トリプシン以外のプロテアーゼを、尿試
    料1mlに対し0.33×10 -9 〜16.6×10 -9
    olの範囲で添加する請求項1〜3のいずれか一項に記
    載の測定方法。
  5. 【請求項5】 トリプシン以外のプロテアーゼを、尿試
    料1mlに対し3.3×10 -9 〜10.0×10 -9 mo
    lの範囲で添加する請求項1〜3のいずれか一項に記載
    の測定方法。
  6. 【請求項6】 トリプシンが、牛膵臓由来のトリプシン
    およびブタ膵臓由来のトリプシンの少なくとも一方であ
    る請求項1〜5のいずれか一項に記載の測定方法。
  7. 【請求項7】 トリプシン活性の測定に使用される基質
    が、Nα−ベンゾイル−アルギニン−p−ニトロアニリ
    ド、Nα−ベンゾイル−リジン−p−ニトロアニリド、
    t−ブトキシカルボニル−アルギニン−p−ニトロアニ
    リドおよびt−ブトキシカルボニル−リジン−p−ニト
    ロアニリドからなる群から選択された少 なくとも一つの
    合成基質である請求項1〜6のいずれか一項に記載の測
    定方法。
  8. 【請求項8】 請求項1記載の測定方法に用いる尿中ト
    リプシンインヒビター測定キットであって、トリプシ
    ン、基質およびトリプシン以外のプロテアーゼを備える
    尿中トリプシンインヒビター測定キット。
  9. 【請求項9】 トリプシン以外のプロテアーゼが、セリ
    ンプロテアーゼである請求項8記載の測定キット。
  10. 【請求項10】 トリプシン以外のプロテアーゼが、エ
    ラスターゼ、ズブチリシン、キモトリプシン、カテプシ
    ン、プラスミン、トロンビン、カリクレインおよびウロ
    キナーゼからなる群から選択された少なくとも一つのプ
    ロテアーゼである請求項8記載の測定キット。
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