JPH1161347A - 耐食性および溶接性に優れたラインパイプ用マルテンサイト鋼 - Google Patents

耐食性および溶接性に優れたラインパイプ用マルテンサイト鋼

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JPH1161347A
JPH1161347A JP21935797A JP21935797A JPH1161347A JP H1161347 A JPH1161347 A JP H1161347A JP 21935797 A JP21935797 A JP 21935797A JP 21935797 A JP21935797 A JP 21935797A JP H1161347 A JPH1161347 A JP H1161347A
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JP
Japan
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less
corrosion resistance
weldability
steel
martensitic steel
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Application number
JP21935797A
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English (en)
Inventor
Yukio Miyata
由紀夫 宮田
Mitsuo Kimura
光男 木村
Takaaki Toyooka
高明 豊岡
Fumio Murase
文夫 村瀬
Takeshi Shimamoto
健 島本
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課 題】 炭酸ガス環境で十分な耐全面腐食性、耐孔
食性を示し、少量の硫化水素を含む環境で優れた耐SS
C性を示し、溶接性、溶接部靱性、高温引張特性にも優
れコストも安いラインパイプ用のマルテンサイト鋼を提
案する。 【解決手段】 C:0.015wt %超〜0.015wt %、Si≦0.
5 wt%、Mn:0.2 〜3.0wt%、Cr:10〜14wt%、Ni:0.2
〜7.0 wt%、Mo:0.2 〜5.0 wt%、Al≦0.1 wt%、N
≦0.07wt%と、必要に応じてCu≦2.0 wt%、Ti≦0.15wt
%、Zr≦0.15wt%、Ta≦0.15wt%、Ca≦0.006 wt%の1
種または2種以上、Nbおよび/またはVの(0.8 Nb+
V):0.02〜0.20wt%と、を (Cr%)+(Mo%) +0.1(Ni%)
+3(Cu%)−3(C%)≧12.2、 (Cr%)+3.5(Mo%)+ 10(N%)
+0.2(Ni%)− 20(C%)≧14.5、150(C%)+100(N%)−
(Ni%)−(Mn%)≦4を満たす範囲で含有し、残部は実質
的にFeの組成になる鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、主に石油・天然
ガスの輸送用鋼管としての用途に供して好適なラインパ
イプ用マルテンサイト鋼に関し、特にその耐食性および
溶接性の向上を図ったものである。
【0002】
【従来の技術】近年、石油・天然ガスを生産する井戸
は、穏やかな環境のものは掘り尽くされ、腐食環境の厳
しい井戸や、寒冷地、深井戸、海底油田など、厳しい環
境の井戸に手を付けざるを得ない状況になりつつある。
そのため、油井管やラインパイプとして使用される鋼材
には、従来以上の高い性能が求められている。
【0003】例えば最近、炭酸ガスを多量に含む井戸が
増加しているが、かような環境では炭素鋼は著しく腐食
されるので、防食手段としてインヒビタの添加が行われ
てきた。しかしながら、インヒビタの使用は、コスト高
となるだけでなく、高温では十分な効果が得られないこ
とがあるため、最近ではインヒビタを用いず、耐食性材
料を使用する傾向にある。
【0004】耐食性材料のうち、油井管としてはCrを13
wt%含有するマルテンサイト系ステンレス鋼が広く知ら
れている。この鋼は、製造コストが安価なだけでなく、
耐炭酸ガス腐食性に優れているという利点はあるが、一
方で硫化物応力腐食割れ感受性が高いため、硫化水素を
含む環境下での使用には適さない。そこで、最近では、
少量の硫化水素を含む環境に適合させるために、13%Cr
鋼にMo,Ni等を添加した耐硫化物応力腐食割れ性(耐S
SC性)に優れた油井管が開発されている(例えば特開
昭60−174859号公報)。
【0005】一方、ラインパイプ用材料としては、 API
規格に、C量を低減した12%Crマルテンサイト系ステン
レス鋼が規定されているが、円周溶接の際に予熱および
後熱が必要なためコストの上昇を招くだけでなく、溶接
部の靱性に劣ることから、一般にはほとんど採用されて
いない。また、上記したNi,Mo等を含む13%Cr鋼は、溶
接性に全く考慮が払われていないため、そのままライン
パイプとして使用した場合、予熱、後熱なしで溶接する
と、溶接割れを起こす危険性が高い。
【0006】このため、従来、ラインパイプ用材料とし
ては、溶接性に優れ、かつ耐食性にも優れる二相ステン
レス鋼が用いられてきた。しかしながら、二相ステンレ
ス鋼は、井戸によっては過剰性能であったり、高コスト
になるという問題があった。また、ラインパイプ中を石
油が流れる場合には、強度の低下が生じるため、その対
策として、従来は、パイプの常温強度を上げたり、板厚
を厚くするといった対策が講じられてきたが、前者は溶
接性を低下させる危険性があり、一方後者はコストアッ
プを招くという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来
の技術は、安定した防食作用や良好な溶接熱影響部の靱
性等が得難いだけでなく、高温強度が十分とはいい難
く、またいずれも高コストという共通した課題を抱えて
いた。この発明は、上記の問題を有利に解決するもの
で、炭酸ガス環境でも十分な耐全面腐食性および耐孔食
性を示し、また少量の硫化水素を含む環境においても優
れた耐硫化物応力腐食割れ性を示し、しかも溶接性およ
び溶接部の靱性のみならず高温での引張特性にも優れ、
さらにはコストも安いラインパイプ用のマルテンサイト
鋼を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上記
の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、いわゆる13
%Cr鋼において、CおよびN量を所定レベルまで低減す
るともに、Ni,Mo、さらには炭化物形成元素であるTi,
ZiおよびTa等を適量添加し、またさらにはNbやVを適量
添加することが、所期した目的の達成に関し、極めて有
効であることの知見を得た。
【0009】この発明は、上記の知見に立脚するもので
ある。すなわち、この発明の要旨構成は次のとおりであ
る。 1. C:0.005wt %超え0.015wt %以下、 Si:0.5 wt%以下、 Mn:0.2 〜3.0 wt%、 Cr:10〜14wt%、 Ni:0.2 〜7.0 wt%、 Mo:0.2 〜5.0 wt%、 Al:0.1 wt%以下、 N:0.07wt%以下を、 (Cr%)+(Mo%) +0.1(Ni%)−3(C%)≧12.2 (Cr%)+3.5(Mo%)+ 10(N%)+0.2(Ni%)− 20(C%)≧14.
5 150(C%)+100(N%)−(Ni%)−(Mn%)≦4 を満足する範囲において含有し、残部は実質的にFeの組
成になる耐食性および溶接性に優れたラインパイプ用マ
ルテンサイト鋼(第1発明)。 2. C:0.005wt %超え0.015wt %以下、 Si:0.5 wt%以下、 Mn:0.2 〜3.0 wt%、 Cr:10〜14wt%、 Ni:0.2 〜7.0 wt%、 Mo:0.2 〜5.0 wt%、 Al:0.1 wt%以下、 N:0.07wt%以下 ならびに Cu:2.0 wt%以下、 Ti:0.15wt%以下、 Zr:0.15wt%以下、 Ta:0.15wt%以下、 Ca:0.006 wt%以下 のうちから選んだ1種または2種以上を、 (Cr%)+(Mo%) +0.1(Ni%)+3(Cu%)−3(C%)≧12.2 (Cr%)+3.5(Mo%)+ 10(N%)+0.2(Ni%)− 20(C%)≧14.
5 150(C%)+100(N%)−(Ni%)−(Mn%)≦4 を満足する範囲において含有し、残部は実質的にFeの組
成になる耐食性および溶接性に優れたラインパイプ用マ
ルテンサイト鋼(第2発明)。 3. C:0.005wt %超え0.015wt %以下、 Si:0.5 wt%以下、 Mn:0.2 〜3.0 wt%、 Cr:10〜14wt%、 Ni:0.2 〜7.0 wt%、 Mo:0.2 〜5.0 wt%、 Al:0.1 wt%以下、 N:0.07wt%以下を、 (Cr%)+(Mo%) +0.1(Ni%)−3(C%)≧12.2 (Cr%)+3.5(Mo%)+ 10(N%)+0.2(Ni%)− 20(C%)≧14.
5 150(C%)+100(N%)−(Ni%)−(Mn%)≦4 を満足する範囲において含有し、かつNbおよびVの少な
くともいずれか1種を (0.8 Nb+V):0.02〜0.20wt% の範囲で含有し、残部は実質的にFeの組成になる耐食性
および溶接性に優れたラインパイプ用マルテンサイト鋼
(第3発明)。 4. C:0.005wt %超え0.015wt %以下、 Si:0.5 wt%以下、 Mn:0.2 〜3.0 wt%、 Cr:10〜14wt%、 Ni:0.2 〜7.0 wt%、 Mo:0.2 〜5.0 wt%、 Al:0.1 wt%以下、 N:0.07wt%以下 ならびに Cu:2.0 wt%以下、 Ti:0.15wt%以下、 Zr:0.15wt%以下、 Ta:0.15wt%以下、 Ca:0.006 wt%以下 のうちから選んだ1種または2種以上を、 (Cr%)+(Mo%) +0.1(Ni%)+3(Cu%)−3(C%)≧12.2 (Cr%)+3.5(Mo%)+ 10(N%)+0.2(Ni%)− 20(C%)≧14.
5 150(C%)+100(N%)−(Ni%)−(Mn%)≦4 を満足する範囲において含有し、かつNbおよびVの少な
くともいずれか1種を (0.8 Nb+V):0.02〜0.20wt% の範囲で含有し、残部は実質的にFeの組成になる耐食性
および溶接性に優れたラインパイプ用マルテンサイト鋼
(第4発明)。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、この発明において鋼の成分
組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。 C:0.005 wt%超え0.015 wt%以下 Cは、溶接割れの回避、溶接熱影響部の靱性向上、溶接
熱影響部の硬さ低減、さらには炭酸ガスに対する耐食
性、耐孔食性確保いずれの面でも、極力低減することが
望ましく、これらの効果を安定して確保するためには0.
015wt %以下とする必要があることから、C量は0.015w
t %以下に限定した。なお、より好ましいC量の範囲は
0.012 wt%以下である。ただし、C量を0.005 wt%以下
にまで低減すると、場合によっては強度の低下や熱間加
工性の劣化を生じる虞があるので、C量は0.005 wt%超
に限定した。なお、より好ましいC量の範囲は0.008 wt
%以上である。
【0011】Si:0.5 wt%以下 Siは、脱酸剤として添加されるが、フェライト生成元素
であるので、多量に含まれるとフェライトが生成し易く
なり、母材および溶接部の靱性を劣化させる。また、継
目無鋼管においてはフェライトが存在すると、製造に支
障をきたすおそれがある。そこでSi量は、かようなおそ
れのない 0.5wt%以下に限定した。
【0012】Mn:0.2 〜3.0 wt% Mnは、脱酸および強度確保に必要な元素である。また、
オーステナイト生成元素であるため、フェライト生成を
抑制し、母材および溶接部の靱性を向上させる上でも有
用な元素である。しかしながら、含有量が 0.2wt%に満
たないとその添加効果に乏しく、一方 3.0wt%を超えて
添加してもその効果は飽和に達するので、Mn量は 0.2〜
3.0 wt%の範囲に限定した。
【0013】Cr:10〜14wt% Crは、マルテンサイト組成を確保し、かつ炭酸ガスに対
する耐食性および耐孔食性を付与するために必要な基本
元素であり、これらの効果を得るためには10wt%以上の
添加が必要である。しかしながら、14wt%を超えて含有
されるとフェライトが生成し易くなるため、マルテンサ
イト組成を安定して得るには多量のオーステナイト生成
元素の添加が必要になり、コスト高となるので、Cr量は
10〜14wt%の範囲に限定した。
【0014】Ni:0.2 〜7.0 wt% Niは、オーステナイト生成元素としてC,Nの低減によ
る影響を補うと共に、炭酸ガス環境下における耐食性、
ならびに靱性を向上させる効果があり、そのためには
0.2wt%以上の添加が必要である。また、Mo添加鋼の場
合、熱間加工性を確保するために添加する必要がある。
しかしながら、7.0 wt%を超えて添加するとAc1点が下
がりすぎ、要求される特性を得るには長時間の焼戻しが
必要となる他、コストも高くなる。従って、Ni量は 0.2
〜7.0 wt%の範囲に限定した。
【0015】Mo:0.2 〜5.0 wt% Moは、耐SSC性の向上に有用な元素であるが、その効
果を得るためには 0.2wt%以上の添加が必要である。一
方、5.0 wt%を超えて含有するとフェライトが生成し易
くなるだけでなく、耐SSC性向上に対してもあまり効
果がなくなるので、0.2 〜5.0 wt%の範囲に限定した。
【0016】Al:0.1 wt%以下 Alは、Siと同様、脱酸の目的で添加されるが、 0.1wt%
を超える添加は靱性の低下を引き起こすので、含有量は
0.1wt%に制限した。 N:0.07wt%以下 Nは、Cと同様、溶接割れの回避、溶接熱影響部の靱性
向上および溶接熱影響部の硬さ低減のためにはできるだ
け低いほうが望ましく、0.07wt%を超えるとこれらの効
果が十分に得られないので、N量は0.07wt%以下に限定
した。なお、好ましくは範囲は0.05wt%以下である。
【0017】以上、必須成分について説明したが、この
発明ではさらに以下に述べる元素についても、必要に応
じて適宜添加することができる。 Cu:2.0 wt%以下 Cuは、Ni,Mnと共にオーステナイト生成元素としてC,
Nの低減による影響を補うだけでなく、溶接熱影響部の
靱性向上および耐全面腐食性の向上にも有効に寄与す
る。また、炭酸ガスおよび塩化物を含有する環境での耐
孔食性の向上にも効果がある。しかしながら、2.0 wt%
を超えて含有すると一部が固溶せず析出するようにな
り、溶接熱影響部の靱性に悪影響が出てくるので、Cuは
2.0wt%以下好ましくは 0.2〜0.7 wt%の範囲で含有さ
せるものとした。
【0018】Ti:0.15wt%以下、Zr:0.15wt%以下、T
a:0.15wt%以下、 Ti,ZrおよびTaはそれぞれ、母材および溶接部の靱性向
上に有効に寄与する。また、Cr炭化物をTi,Zr,Taの炭
化物に置換することによって、耐孔食性に対する有効Cr
量の低下を防止し、耐孔食性を向上させる働きもある。
しかしながらいずれも、0.15wt%を超えて添加すると溶
接割れ感受性が高くなるだけでなく、逆に靱性を劣化さ
せることから、それぞれ0.15wt%以下の範囲で添加する
ものとした。
【0019】Ca:0.006 wt%以下 Caは、CaSの形成により、溶解し易いMnSを低減するこ
とによって、耐食性を向上させる有用元素である。しか
しながら、 0.006wt%を超えて添加されるとクラスタ状
介在物の生成が増大し、かえって靱性の劣化を招くの
で、Caは 0.006wt%以下の範囲に限定した。
【0020】(0.8 Nb+V):0.02〜0.20wt% NbおよびVはいずれも、高温における引張り特性の改善
に有用な元素である。しかしながら、含有量が (0.8 Nb
+V)で0.02wt%に満たないと80〜150 ℃における高温
強度を確保する上で充分ではなく、一方0.20wt%を超え
る添加では靱性の劣化を招くので、 (0.8 Nb+V)で0.
02〜0.20wt%好ましくは0.03〜0.12wt%の範囲で含有さ
せるものとした。
【0021】以上、有用成分について説明したが、この
発明で所期した効果を得るには、各成分を上記の範囲に
単に制限するだけでは不十分で、以下の関係式も併せて
満足させることが肝要である。 (Cr%)+(Mo%) + 0.1(Ni%) −3(C%)≧12.2(第1,3
発明)または (Cr%)+(Mo%) + 0.1(Ni%) +3(Cu%)−3(C%)≧12.2
(第2,4発明) この発明の目的の一つとして、炭酸ガスおよび塩化物を
含有する環境下での耐食性(以下単に耐炭酸ガス腐食性
という)の向上がある。これには不働態皮膜を安定化さ
せることが有効で、そのためにはCrの増量と共に、Moの
添加が効果的である。しかしながら、Crが炭化物を形成
すると耐孔食性に対する有効Cr量が減少するため、耐食
性が低下する。従って、Cを減量することは耐食性の向
上につながる。またNi,Cuの添加は不働態皮膜を安定に
する効果がある。
【0022】そこで、耐炭酸ガス腐食性に対するかかる
元素の効果を定量的に調べた結果、充分な耐炭酸ガス腐
食性を得るためには、上掲式の関係を満足する範囲で各
元素を含有させる必要があることが究明された。 (Cr%)+3.5(Mo%) + 10(N%)+0.2(Ni%)− 20(C%)≧1
4.5 また、この発明の他の目的として、少量の硫化水素を含
有する環境下での耐応力腐食割れ性の向上があり、本鋼
材の耐SSC性を向上させるには、硫化水素を含有した
環境における耐孔食性の向上が有効である。
【0023】そこで、耐孔食性に及ぼす影響が大きいC
r,Mo,N,Ni,Cについてその効果を定量的に調査し
たところ、所期した目的達成のためには上掲式の関係を
満足させる必要があることが判明した。 150(C%)+100(N%)−(Ni%)−(Mn%)≦4 この発明鋼は、ラインパイプとして使用されることを目
的としているので、溶接性も重要である。特に海底ライ
ンパイプに使用される場合、予熱、後熱を省略できるこ
とが不可欠である。
【0024】そこで、発明者らは、この点についても鋭
意検討を重ねた結果、予熱、後熱なしで十分な溶接性を
得るためには、上掲式の関係を満足させる必要があるこ
とが究明されたのである。なお、不純物のうち特にPお
よびSは悪影響が大きいので、以下の範囲に抑制するこ
とが好ましい。
【0025】P:0.05wt%以下 Pは、粒界に析出して粒界強度を低下させ、耐SSC性
に悪影響を及ぼすので、0.05wt%以下にすることが好ま
しい。 S:0.005 wt%以下 Sは、MnS等の硫化物を析出させ、熱間加工性を劣化さ
せるので、0.005 wt%以下にすることが好ましい。
【0026】上記の好適成分組成に溶製した鋼は、鋳造
後、プラグミル方式やマンドレルミル方式などの一般に
行われる工程からなる継目無鋼管製造方法で造管する
か、または電縫鋼管、UOE鋼管、スパイラル鋼管など
の一般に行われる工程からなる溶接鋼管製造方法により
造管した後、適切な熱処理を実施して製品とされる。
【0027】
【実施例】表1に示す成分組成になる鋼スラブを、熱間
圧延し、厚み:15mmの熱延板とした。この時、熱間加工
性を評価するため、熱延板での耳割れの有無を確認し
た。引き続き、焼入れ、焼戻しの熱処理を施し、X80グ
レードの強度に調整した。これらの鋼板に対して、 JIS
−3158で規定されている斜めY形溶接割れ試験を、予
熱:30℃にて行い、溶接性を調査した。
【0028】また、全鋼板に対して、母材の炭酸ガス腐
食試験を実施し、耐孔食性と耐全面腐食性を調査した。
炭酸ガス腐食試験は、オートクレーブで 3.0 MPaの炭酸
ガスを飽和させた20%NaCl中に、母材から採取した 3.0
mm×25mm×50mmの試験片を浸漬し、80℃で7日間保持す
ることにより行った。SSC試験はNACE−TM 0177 meth
odAに準じた定荷重試験で評価した。試験は、5%NaCl+
0.5%CH3COOH 試験液のpHをCH3COONa添加によって 3.5に
調整した後、1%H2S+99%CO2の混合ガスを流しながら行
った。付加応力は85%SMYSで試験期間は 720時間であ
る。
【0029】さらに、高温引張り特性については、引張
り試験片を 100℃, 150℃で引張り、常温強度との比を
求めることで評価した。かくして得られた調査結果をま
とめて表2に示す。なお、溶接性については、溶接割れ
の発生しなかったものを○、発生したものを×で表し
た。耐全面腐食性については腐食速度で表し、また耐孔
食性については、孔食の発生しなかったものを○、発生
したものを×で表した。炭酸ガス腐食速度の優劣を判断
する限界値としては0.127mm/yrを採用した。
【0030】さらにSSC試験については、破断しなか
ったものを○、破断したものを×で表した。なお、熱間
加工性については、耳割れの発生しなかったものを○、
発生したものを×で表した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】表2より明らかなように、この発明に従い
得られた鋼はいずれも、予熱30℃の斜めY形溶接割れ試
験において断面割れは認められず、優れた溶接性を示し
た。さらに適量のNb,Vを添加することにより高温強度
も改善されている。また、腐食試験においても優れた耐
炭酸ガス腐食性、耐孔食性および耐SSC性を示した。
同時に優れた熱間加工性も有している。
【0034】
【発明の効果】かくしてこの発明によれば、炭酸ガス環
境下で優れた耐孔食性および耐全面腐食性を示すだけで
なく、少量の硫化水素を含む環境下においても優れた耐
SSC性を示し、しかも予熱、後熱なしで円周溶接が可
能で、さらには高温での引張り特性にも優れたラインパ
イプ用マルテンサイト鋼を得ることができる。
【0035】従ってこの発明によれば、石油・天然ガス
などを輸送するためのラインパイプが安価に提供可能と
なり、産業の発展に寄与するところ極めて大である。
フロントページの続き (72)発明者 豊岡 高明 愛知県半田市川崎町1丁目1番地 川崎製 鉄株式会社知多製造所内 (72)発明者 村瀬 文夫 愛知県半田市川崎町1丁目1番地 川崎製 鉄株式会社知多製造所内 (72)発明者 島本 健 愛知県半田市川崎町1丁目1番地 川崎製 鉄株式会社知多製造所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.005wt %超え0.015wt %以下、 Si:0.5 wt%以下、 Mn:0.2 〜3.0 wt%、 Cr:10〜14wt%、 Ni:0.2 〜7.0 wt%、 Mo:0.2 〜5.0 wt%、 Al:0.1 wt%以下、 N:0.07wt%以下を、 (Cr%)+(Mo%) +0.1(Ni%)−3(C%)≧12.2 (Cr%)+3.5(Mo%)+ 10(N%)+0.2(Ni%)− 20(C%)≧14.
    5 150(C%)+100(N%)−(Ni%)−(Mn%)≦4 を満足する範囲において含有し、残部は実質的にFeの組
    成になる耐食性および溶接性に優れたラインパイプ用マ
    ルテンサイト鋼。
  2. 【請求項2】C:0.005wt %超え0.015wt %以下、 Si:0.5 wt%以下、 Mn:0.2 〜3.0 wt%、 Cr:10〜14wt%、 Ni:0.2 〜7.0 wt%、 Mo:0.2 〜5.0 wt%、 Al:0.1 wt%以下、 N:0.07wt%以下 ならびに Cu:2.0 wt%以下、 Ti:0.15wt%以下、 Zr:0.15wt%以下、 Ta:0.15wt%以下、 Ca:0.006 wt%以下 のうちから選んだ1種または2種以上を、 (Cr%)+(Mo%) +0.1(Ni%)+3(Cu%)−3(C%)≧12.2 (Cr%)+3.5(Mo%)+ 10(N%)+0.2(Ni%)− 20(C%)≧14.
    5 150(C%)+100(N%)−(Ni%)−(Mn%)≦4 を満足する範囲において含有し、残部は実質的にFeの組
    成になる耐食性および溶接性に優れたラインパイプ用マ
    ルテンサイト鋼。
  3. 【請求項3】C:0.005wt %超え0.015wt %以下、 Si:0.5 wt%以下、 Mn:0.2 〜3.0 wt%、 Cr:10〜14wt%、 Ni:0.2 〜7.0 wt%、 Mo:0.2 〜5.0 wt%、 Al:0.1 wt%以下、 N:0.07wt%以下を、 (Cr%)+(Mo%) +0.1(Ni%)−3(C%)≧12.2 (Cr%)+3.5(Mo%)+ 10(N%)+0.2(Ni%)− 20(C%)≧14.
    5 150(C%)+100(N%)−(Ni%)−(Mn%)≦4 を満足する範囲において含有し、かつNbおよびVの少な
    くともいずれか1種を (0.8 Nb+V):0.02〜0.20wt% の範囲で含有し、残部は実質的にFeの組成になる耐食性
    および溶接性に優れたラインパイプ用マルテンサイト
    鋼。
  4. 【請求項4】C:0.005wt %超え0.015wt %以下、 Si:0.5 wt%以下、 Mn:0.2 〜3.0 wt%、 Cr:10〜14wt%、 Ni:0.2 〜7.0 wt%、 Mo:0.2 〜5.0 wt%、 Al:0.1 wt%以下、 N:0.07wt%以下 ならびに Cu:2.0 wt%以下、 Ti:0.15wt%以下、 Zr:0.15wt%以下、 Ta:0.15wt%以下、 Ca:0.006 wt%以下 のうちから選んだ1種または2種以上を、 (Cr%)+(Mo%) +0.1(Ni%)+3(Cu%)−3(C%)≧12.2 (Cr%)+3.5(Mo%)+ 10(N%)+0.2(Ni%)− 20(C%)≧14.
    5 150(C%)+100(N%)−(Ni%)−(Mn%)≦4 を満足する範囲において含有し、かつNbおよびVの少な
    くともいずれか1種を (0.8 Nb+V):0.02〜0.20wt% の範囲で含有し、残部は実質的にFeの組成になる耐食性
    および溶接性に優れたラインパイプ用マルテンサイト
    鋼。
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