【発明の詳細な説明】
耐摩耗性を改良したポリイミド組成物
本出願は 1995年7月11日に出願された米国仮出願第60/001,062号における特
権を請求するものである。
発明の背景
米国特許第3,179,614号に記載したように、ポリイミド組成物は種々の商業用
途に適用することができる。応力の下および高い温度でのポリイミド組成物に特
有な独特の性能は、ブッシュ、シール、電気絶縁体、コンプレッサーの羽根およ
び羽根車、ピストンおよびピストンリング、ギア、糸ガイド、カム、ブレーキラ
イニング、クラッチ面、およびスラストプラグを形成するのに有効である。さら
に、米国特許第5,346,969号に記載されているように、ポリイミド組成物とポリ
アミドおよびポリエステル樹脂組成物をブレンドすることは、それらが射出成形
を経て加工できるという付加利益とともに、改良された高い温度性能のように、
より広範囲の物理的特性を有する製品を形成するのに有効である。
さらに、それらの最終形態に成形加工する前に、そのようなポリイミド組成物
およびブレンド物の中に種々の添加剤を混入することがしばしば望ましい。従っ
て、ベアリングに適用するときには、そのような組成物における摩耗特性を改良
するためにグラファイトがポリイミドに混入されており、ダイヤモンドが研磨用
の用途のために混入されており、およびフルオロポリマーが押出し成形により造
形するときに潤滑性のために混入されている。
種々のポリイミド組成物および添加剤は以前から有効であったけれども、高圧
および高速の条件において、特にブッシュおよびベアリングの形状に加工される
ときに、改良された摩耗耐性および摩擦を示すポリイミド組成物およびブレンド
物に対してのニーズが継続している。ポリイミド中に潤滑剤としてグラファイト
の混入でさえも、特に、高いPV(圧力x速度)条件におけるその摩擦はあまり
にも高すぎて、過度の摩耗または突然の故障なしで使用できない。
低濃度であっても無機の、低硬度で、熱的に安定な、層状ケイ酸塩を含んでい
るポリイミド組成物は、層状ケイ酸塩添加剤を含んでいない同じ組成物と比較し
て、中程度のPV値でのスチール合せ面に対する摩耗および摩擦をかなり減少さ
せた、ということが本発明において分かった。さらに、“PV限界”(つまり、
組成物が突然の破損なしに許容できるPV値の最大値)は、層状ケイ酸塩(shee
t silicate)を含んでいない同じ組成物と比較して数倍増加したことが分かった
。同様に、組成物に層状ケイ酸塩が混入された時、ポリイミドとポリアミドおよ
びポリエステル樹脂のブレンド物は、かなり減少された摩耗および摩擦特性を示
したことが分かった。
発明の要旨
本発明は、ポリイミド組成物における高圧x高速条件での耐摩耗性および摩擦
係数が、約0.1重量パーセントから約30重量パーセントまでの少なくとも一
つの無機の、低硬度で、熱的に安定な、層状ケイ酸塩をポリイミド組成物に混合
することにより本質的に改善できるという発見にある。それ故、本発明は、(a)
約70から99.9重量パーセントの少なくとも一つのポリイミド、および(b)
約0.1から30重量パーセントの少なくとも一つの無機の、低硬度で、熱的に
安定な、層状ケイ酸塩を含んでいる改良されたポリイミド組成物を提供するもの
である。さらに本発明は、少なくとも一つのポリイミドと、400℃未満の温度
で溶融加工できかつポリアミドおよびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも
一つの他のポリマーとのブレンド物であり、およびそのブレンド物は0.1重量
パーセントから30重量パーセントまでの少なくとも一つの無機の、低硬度で、
熱的に安定な、層状ケイ酸塩を含有する改良されたポリイミド組成物を提供する
ものである。他の見方によると、本発明は、ポリイミド組成物における耐摩耗性
の改良および摩擦係数の減少に関する方法であるか、またはポリイミドとポリア
ミドおよびポリエステル樹脂から選ばれる上述のような少なくとも一つのポリマ
ーとのブレンドであるポリイミド組成物であり、そこでの方法は、0.1重量パ
ーセントから30重量パーセントまでの無機の、低硬度で、熱的に安定な、層状
ケイ酸塩をポリイミド組成物に混入することを具えていることを特徴とするもの
である。本発明の好ましい実施例では、層状ケイ酸塩は1重量パーセントから2
0重量パーセントまでの範囲内で組成物中に存在し、およびケイ酸塩は白雲母マ
イカ、タルクおよびカオリナイトから成る群から選ばれる。
発明の詳細な説明
本発明の組成物は、(a)約70から99.9重量パーセント、しかし一般的
には約90から99重量パーセントの少なくとも一つのポリイミド、および(b
)0.1から30重量パーセントの少なくとも一つの無機の、低硬度で、熱的に
安定な、層状ケイ酸塩を含んでおり、前記重量パーセントは成分(a)および(
b)の重量のみを基準にしている。さらに本発明は、20から30重量パーセン
トの少なくとも一つのポリイミド、約400℃未満の温度で溶融加工可能であり
かつポリアミドおよびポリエステル樹脂から選ばれる45から79.9重量パー
セントの少なくとも一つのポリマー、および0.1から30重量パーセントの少
なくとも一つの無機の、低硬度で、熱的に安定な、層状ケイ酸塩、からのブレン
ド物であるポリイミド組成物を含んでいる。
米国特許第3,179,614号に記載されているものも含めて種々の広範囲のポリイ
ミドが本発明による使用に適している。(なお、前記米国特許をここに参照する
ことによりその内容が本明細書の一部を構成するものとする。)その中に記載さ
れたポリイミドは、少なくとも一つのジアミンおよび少なくとも一つの無水物か
ら得られる。用いることができる好ましいジアミンは、m−フェニレンジアミン
(MPD)、p−フェニレンジアミン(PPD)、オキシジアニリン(ODA)、メチ
レンジアニリン(MDA)、およびトルエンジアミン(TDA)を含んでいる。用
いることができる無水物は、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTD
A)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(biphenyl dianhydride)(BPDA
)、トリメリト酸無水物(TMA)、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、無水マレ
イン酸(MA)、およびナディック無水物(NA)を含んでいる。
好ましいポリイミドは、無水物およびジアミンの以下の組合せから得られるポ
リイミドを含んでいる。すなわち、BTDA−MPD、MA−MDA、BTDA
−TDA−MPD、BTDA−MDA−NA、TMA−MPD&TMA−ODA
、BPDA−ODA、BPDA−MPD、BPDA−PPD、BTDA−4,4
’−ジアミノベンゾフェノン、およびBTDA−ビス(p−フェノキシ)−p,
p’−ビフェニルである。特に、本発明において有効な良好なポリイミドは、ピ
ロメリト酸二無水物および4,4’−オキシジアニリン(PMDA−ODA)か
ら得られたものである。
本発明のポリイミド組成物は、白雲母マイカ[KAl3Si3O10(OH)2]、
タルク[Mg3Si4O10(OH)2]、およびカオリナイト[Al2Si2O5(OH
)4]、およびそれらの混合物のような、約0.1から30重量パーセントまでの
無機の、低硬度で、熱的に安定な、層状ケイ酸塩を含んでいる。この種の層状ケ
イ酸塩は、ケイ酸塩の層の中で強い2次元結合、(しかし弱い層間結合)を有し
ており、そのことにより、グラファイトのような板状の化合物の潤滑特性を増加
する。本発明の目的のために、用語“無機の”は、実験室において合成すること
ができるものと同様に天然に存在する層状ケイ酸塩を含むことを意味する。合せ
面に対する摩耗を妨げるために低硬度であるのが望ましい。硬度は、滑らかな表
面におけるスクラッチ耐性に関する鉱物の能力である。モーズ硬度計が尺度にな
ることは当業者に知られており、そこではタルクが硬度1(最も小さい硬度)を
有し、およびダイヤモンドが硬度10を有する。本発明の組成物に関して、低硬
度は5未満であると理解される。さらに、450℃までの温度において層状ケイ
酸塩の構造水(structural water)の熱的安定性を維持しながら(熱重量分析(
TGA)によって示される)、層状ケイ酸塩の結晶構造における相安定を維持す
ることは決定的に重要である。ポリイミド組成物の製造加工の間の構造水の熱損
失は、ポリイミド組成物の完全さを損ない、および層状ケイ酸塩の結晶構造を多
分変える結果をもたらし、硬くて、より表面があらい化合物を与える。本発明に
含めるのには十分に安定でない層状ケイ酸塩の一例は、モンモリロナイト[(1/
2Ca,Na)0.35(Al,Mg)2(Si,Al)4O10(OH)2・nH2
O]、バーミキュライト[(Mg,Ca)0.35(Mg,Fe,Al)3
(Al,Si)4O10(OH)2・4H2O]、パイロフィライト[Al2Si4O10
(OH)2]である。シリカ(SiO2)、バライト(BaSO4)、および方解
石(CaCO3)のような層状構造よりもむしろ三次元構造を有する無機化合物
も、本発明に含まれる化合物のような有利な効果を持たない。
ポリイミドにおける摩耗および摩擦の劇的な改良は、約1重量パーセーントの
一つの層状ケイ酸塩を用いることで見られる。約30重量パーセントより上の量
では、摩耗耐性は物理特性における全体的な減少のために影響を受ける。好まし
くは、組成物は約0.1から20重量パーセントの層状ケイ酸塩を含有している
。最も好ましくは、組成物は約1から10重量パーセントの層状ケイ酸塩を含有
している。
本発明のポリイミド組成物は、少なくとも一つのポリイミドと少なくとも一つ
の他のポリマーのブレンド物を含むこともできる。そのポリマーは、約400℃
未満の温度で溶融加工でき、ポリアミドまたはポリエステル樹脂から選ばれ、か
つ約45から79.9重量パーセントの濃度で存在できる。溶融加工できるとは
慣用的な意味で用いられ、すなわち本質的なポリマーの分解なしに、指示された
温度で押し出し装置中で加工できることである。そのようなポリマーは、ポリア
ミドまたはポリエステルを含んでいる。
種々のポリアミドおよび/またはポリエステルは、ポリイミドとブレンドする
ことができる。例えば、使用できるポリアミドはナイロン6、ナイロン6,6、
ナイロン610およびナイロン612を含む。使用できるポリエステルは、ポリ
ブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートを含む。
可融性のまたは溶融加工可能なポリアミドまたはポリエステルは、液晶ポリマ
ー(LCP)の形であることができ、その液晶ポリマーの形であることが好まし
い。LCPは概してポリエステルであり、ポリエステルアミドおよびポリエステ
ルイミドを含んでいるがそれらに限定はされない。LCPは、例えば、米国特許
第4,169,933号、第4,242,496号、第4,238,600号において、“Liquid Crystal Po
lymers: VI Liquid Crystalline Polyesters of Substituted Hydroquinones”
においてと同様にJacksonらによって記述されている。本発明において用いられ
る特定のLCPは、基本的なアミドまたはエステル部分が存在する限り、決定的
に重要ではない。
当業者に対して明らかであるように、本発明の組成物は、最終ポリイミド製品
の全体的な特性を低下させない他の添加剤、充填剤および乾燥潤滑剤をさらに含
むことができる。添加剤は約60重量パーセント(この組成物の総重量基準)ま
での量で存在できる。特に組成物へのグラファイトの混入は、耐摩耗性材料とし
て有効である範囲を拡大することができる。他の有益な添加剤は、熱膨張係数を
減少する目的のためのカーボンファイバーである。
本発明の組成物の製造において、成分の添加における順番は決定的に重要では
ない。ポリイミドおよび無機の層状ケイ酸塩といった二つの基本的な成分は、慣
用の粉砕技術を用いて必要とされる量でブレンドされる。粉砕にかわるものとし
て、ポリイミドとして沈殿する前にポリイミド前駆体のポリマー溶液にブレンド
することにより、層状ケイ酸塩をポリイミドに便宜的に混入することもできる。
後者の製造技術が好ましい。同様の製造方法が、ポリイミド、層状ケイ酸塩、お
よびポリアミドまたはポリエステル樹脂のブレンドに関して用いられる。
製品に加工される場合、本発明のポリイミド組成物は、ブッシュ、シール、ス
ラストワッシャー、コンプレッサーの羽根および羽根車、ピストンおよびピスト
ンリング、ギア、糸ガイド、カムの形成に際して、特に高いPV(圧力x速度)
条件を伴う操作条件において、摩耗表面を提供するのに適している。ポリイミド
に対して1から8重量パーセントの層状ケイ酸塩の添加は、層状ケイ酸塩を含ま
ない同様のポリイミドと比較して、100,000psi−fpm(3.5MP
a−m/s)のPVにおける摩耗を少なくとも10倍、および最大35倍も減少
した。そのような組成物は、かかるPVおよびそれ以上でかなり減少された摩擦
も示したので、純粋なポリイミドが破損なしで耐える最大PVの少なくとも6倍
に増加した。
本発明のブレンド物は、例えば成形製品、フィルムおよび繊維を含んでいる種
々の物理的立体構造において有効である。このブレンド物は、慣用の技術を用い
て射出成形することができ、このことが本発明のポリイミドの用途を本質的に広
くしている。
本発明は、以下の特定の実験および比較実験においてさらに例示される。
実施例
以下の各実施例において、ポリイミド樹脂は米国特許第3,179,614号または米
国特許第4,622,384号の方法によりピロメリト酸二無水物および4,4’−オキ
シジアニリンから製造した。指示された量の無機の、層状ケイ酸塩および他の添
加剤を、ポリイミドとして沈殿する前にポリマー溶液に混入した。
得られた該層状ケイ酸塩と充填されたポリイミドは、室温下100,000p
si(689MPa)の圧力での直接成形により試験サンプルに転換した。得ら
れた成形品は、常圧において窒素下400℃で、3時間にわたって焼結した。室
温まで冷却した後、成型品を試験サンプルのための最終形状まで機械加工した。
0.25インチ(6.35mm)幅の接触表面の摩耗/摩擦試験ブロックは、直
径1.375インチ(34.9mm)x幅0.375インチ(9.5mm)の金
属合わせリングの外周に一致するような曲率に機械加工された。ブロックを炉乾
燥し、そして試験まで乾燥剤を用いて乾燥を維持した。
摩耗試験はFalex No.1 Ring and Block Wear and Friction Testerを用いて行
った。この装置はASTM試験方法D2714に記載されている。秤量した後、
乾燥したポリイミドブロックを回転している金属リングに対して取り付け、およ
びそれに対して決められた試験圧力で荷重をかけた。リングの回転速度は所望の
スピードに合わせた。非潤滑剤を、艶消しの表面の間に使用した。リングはSA
E4620スチール、Rc58−63、6−12RMSであった。各試験のため
に新しいリングを使用した。摩擦および摩耗が高い時を除いて(この場合試験は
早く終了する)、試験時間はたいてい24時間だった。摩擦力は連続的に記録さ
れた。試験時間の最後にブロックを取り外し、秤量し、そして摩耗を以下の計算
式によって計算した。すなわち、
PV(圧力x速度)限界試験は、同様のFalex No.1 Ring and Block Wear and
Friction Testerを用いて行った。これらの試験において、100,000ps
i−fpm(3.5MPa−m/s)のPVですでに試験された摩耗ブロックお
よびリングを同じPVで再スタートした。15から20分の間隔で、最大136
5fpm(6.93m/s)まで速度を増加させることによる増加分でPVを増
加させ、その後破損するまで荷重を増加させた。破損は摩擦における急激で制御
不可能な上昇として定義した。摩擦力を連続的に記録した。
実施例1から15と比較実験AおよびB
実施例1から15では、米国特許第4,360,626号において記載したようにピロ
メリト酸二無水物および4,4’−オキシジアニリンから製造されたポリイミド
樹脂は、表1に示した層状ケイ酸塩の割合になるような量で存在する層状ケイ酸
塩添加剤の存在下沈殿させた。他の添加剤は存在しない。比較実験AおよびBで
は、ポリイミド樹脂はピロメリト酸二無水物および4,4’−オキシジアニリン
から製造されるが、層状ケイ酸塩または他の添加剤を含んでいない。
100,000psi−fpm(3.5MPa−m/s)および50,000
psi−fpm(1.75MPa−m/s)のPV(圧力x速度)において、サ
ンプルを上述の方法のように摩耗および摩擦に関して試験した。実施例1から9
を通じて100,000psi−fpmでは1.0から7.4重量パーセントの
範囲にある量でケイ酸塩を含んでいて、同じ条件で試験したケイ酸塩を含んでい
ない比較実験Aと比べて10から35倍の摩耗速度の改良を示した。実施例1か
ら9における摩擦係数は、比較実験Aにおける摩擦係数の2分の1未満である。
それ故、摩擦係数の範囲は比較実験Aの摩擦係数よりずっと小さく、一定してい
る。
同様に実施例10から15を通じて50,000psi−fpmでは、1.0
から3.8重量パーセントの量の層状ケイ酸塩を含んでいて、同じ条件の下で試
験された層状ケイ酸塩を含まない比較実施例Bと比較して6から20倍の摩耗速
度の改良を示した。また、実施例10から15を通じて、摩擦係数は比較実験B
のそれ未満であり、並びに摩擦範囲はより小さい。
試験結果を表Iにまとめた。
実施例16から29および比較実験CからH
ピロメリト酸二無水物および4,4’−オキシジアニリンモノマーを用いて始
め、さらに層状ケイ酸塩への添加におけるいくつかの実施例では、グラファイト
およびカーボンファイバーを含ませ、実施例1から15と比較実験AおよびBに
おける調製方法を、実施例16から29および比較実験CからHに対して繰り返
した。
サンプルは上述の方法のようにPV(圧力x速度)限界(以下の表に「破損P
V」のように記載した)について試験した。添加剤を含んでいないポリイミドは
、比較実験として含まれていない。なぜなら、100,000psi−fpm(
3.5MPa−m/s)で試験した時、その高くて変化しうる係数は、すでにP
V限界またはそれ以上を示したためである。実施例16から20は層状ケイ酸塩
、カオリナイト、タルク、白雲母のうちの一つの介在が、高いPVおよび少なく
とも700,000psi−fpm(24.5MPa−m/s)のPV限界で一
定した低い摩擦を提供する。比較実験Cと比較した実施例21および22では、
15重量パーセントのグラファイトを含有する組成物への層状ケイ酸塩の添加が
、そのPV限界を約2倍だけ増加したことを示している。比較実験Dと比較した
実験項23から27では、37重量パーセントのグラファイトを含有する組成物
へのケイ酸塩の添加が、そのPV限界を少なくとも3倍だけ増加したことを示し
ている。比較実験Eと比較した実施例28および29では、グラファイトと一緒
に成分の一つとしてカーボンファイバーが含まれるとき、層状ケイ酸塩の介在に
よりPV限界が約2倍だけ増加したことを示している。比較実験FからHと比較
した実施例23から27では、熱的に安定な層状ケイ酸塩、カオリナイト、タル
ク、または白雲母を含有する組成物の特性が、熱的に安定でない層状ケイ酸塩、
パイロフェライトおよびモンモリロナイトのうちの一つを含有する組成物の特性
に対して非常に優れていることを示している。
試験結果を表IIにまとめた。
実施例30および比較実験IからK
実施例30および比較実験IからKに関して、液晶性のポリエステル(すなわ
ち、Zenite 30のようにE.I.du Pont de Nemours and Companyにより売られ
ている)を層状ケイ酸塩添加剤および/または、ピロメリト酸二無水物および4
,4’−オキシジアニリン(ポリアミック酸の前駆体として存在する)から合成
されたポリイミド樹脂と表IIIに記載された割合を得るような量でブレンドした
。
組成物は、290℃に合わせたバレルおよび335℃のダイを備えた30mm
二軸スクリューエクストルーダーを用いてストランドに成形した。ストランドは
ウォータースプレー(water spray)を用いて急冷した。次いで、急冷したスト
ランドを標準的な回転ブレードカッター(rotating blade cutter)を用いてカ
ットしペレットにした。170g容量の大きさのバレルを備えた160トン射出
成形器を用いたASTMD638に明記されたように、標準的な厚さ6.4mm
の引っ張り試験棒にペレットを成形した。成形プロファイルは以下のとおりであ
る。
後部 313℃
中心 334℃
先端 335℃
ノズル 332℃
ブース 1sec
注入 20sec
ホールド 20sec
注入圧 3.4MPa
ラムスピード 速い
スクリュースピード 107rpm
背圧 最小
サンプルは機械加工により上述の試験片にした。摩擦およびPV(圧力x速度
)限界に関しての試験はサンプルが以前に試験された試験片でないとき、および
試験を12,500psi−fpmで始めたときを除いて、上記方法に記載した
ように処理した。実施例30では、ポリイミド/ポリエステルブレンドへの層状
ケイ酸塩の介在が、ポリエステル樹脂のみ(比較実験I)、ポリエステル/層状ケ
イ酸塩組成物(比較実験J)、および層状ケイ酸塩のブレンドなしのポリエステル
/ポリイミドブレンド(比較実験K)を越えて大いに改良された(少なくとも2
倍)摩擦係数を与えた。実施例30における43,000psi−fpm(1.
51MPa−m/s)のPV限界は、比較実験よりも大体2倍優れている。
試験結果を表IIIにまとめた。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1997年9月6日
【補正内容】
請求の範囲
1.(a)約70から99.9重量パーセントの少なくとも一つのポリイミド、
(b)約0.1から30重量パーセントの少なくとも一つの無機の、低硬度
で、熱的に安定な、層状ケイ酸塩、
(c)0から60重量パーセントの少なくとも一つの添加剤(ここで添加剤
は、5重量パーセントまでのカーボンファイバーを含むことができる)、
を含んでいる、前記重量パーセントは、成分(a)、(b)および(c)のみの
重量に基づく、ことを特徴とするポリイミド組成物。
2.前記ポリイミドが、約20から30重量パーセントの範囲内で存在し、およ
び前記ブレンド物がさらに、ポリアミドおよびポリエステル樹脂から成る群から
選ばれる約400℃未満の温度で溶融加工可能である少なくとも一つの他のポリ
マーを約45から79.9重量パーセント含んでいることを特徴とする請求項1
に記載の組成物。
3.前記層状ケイ酸塩が、組成物の約1から20重量パーセントの量で存在し、
および白雲母マイカ、タルクおよびカオリナイトから成る群から選ばれることを
特徴とする請求項1または請求項2に記載の組成物。
4.さらに添加剤、充填剤または乾燥潤滑剤の少なくとも一つを含むことを特徴
とする請求項1に記載の組成物。
5.ポリイミド組成物に約0.1重量パーセントから30重量パーセントまでの
少なくとも一つの無機の、低硬度で、熱的に安定な、層状ケイ酸塩および0から
60重量パーセントの少なくとも一つの添加剤(ここで添加剤は、5重量パーセ
ントまでのカーボンファイバーを含むことができる)を混入することを特徴とす
るポリイミド組成物における摩耗耐性の改良および摩擦係数の減少のための方法
。
6.前記層状ケイ酸塩が、1重量パーセントから20重量パーセントの濃度で存
在し、および白雲母マイカ、タルクおよびカオリナイトから成る群から選ばれる
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
7.請求項1または請求項2による組成物から製造される改良された摩耗耐性お
よび減少された摩擦係数を有することを特徴とする成形製品。
8.請求項1または請求項2による組成物から製造される改良された摩耗耐性お
よび減少された摩擦係数を有することを特徴とする射出成形製品。
9.請求項1または請求項2による組成物から製造され、ブッシュ、シール、電
気絶縁体、スラストワッシャー、コンプレッサーの羽、羽根車、ピストン、ピス
トンリング、ギア、糸ガイド、カム、ブレーキライニング、およびスラストプラ
グから成る群から選ばれる改良された摩耗耐性および減少された摩擦係数を有す
ることを特徴とする成形製品。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
F16C 33/12 F16C 33/12 A
33/20 33/20 A
F16D 69/02 F16D 69/02 C
F16H 53/02 F16H 53/02 B
55/06 55/06
F16J 1/01 F16J 1/01
9/28 9/28
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),CA,JP,SG
(72)発明者 ブルーム,ジョイ,ソーヤー
アメリカ合衆国 19810 デラウェア州
ウィルミントン カントリー ゲーツ ド
ライブ 29
(72)発明者 フェイスト,トーマス,ポール
アメリカ合衆国 12065 ニューヨーク州
クリフトン パーク ウィンターグリー
ン コート 11