JPH1150909A - エンジンのクランクケース - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 シリンダブロックにロワケースを結合してク
ランク軸を支持し、シリンダ室間の隔壁に通気口を有す
るエンジンのクランクケースにおいて、クランクケース
幅を小さくする。 【解決手段】 複数のシリンダボア２を有し、スカート
部４に各気筒間でクランク室を区画する隔壁７を有する
シリンダブロックに、隔壁７に結合する隔壁８を有する
はしご状のロワケース５をボルト15，20によって結合す
る。隔壁７，８の軸受部９，10によってクランク軸11を
回転可能に支持する。隔壁７にボルト20とオーバラップ
するように通気口21を開口させ、隣接するクランク室を
互いに連通させて、ポンピングロスを低減させる。ボル
ト20と通気口21とをオーバラップさせることにより、こ
れらの設置スペースを小さくして、クランクケース幅を
小さくすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、シリンダブロック
のスカート部に略はしご状のロワケースを結合させてク
ランク軸を支持するようにしたエンジンのクランクケー
スに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】自動車等のレシプロエンジンには、シリ
ンダブロックのスカート部にロワケースを結合させてク
ランク軸を支持するようにしたものがある。従来のこの
種のエンジンのクランクケースの一例について、図９を
用いて説明する。

【０００３】図９に示すように、エンジン１は、直列に
配置された複数のシリンダボア２（１つのみ図示されて
いる）を有するシリンダブロック３のスカート部４にロ
ワケース５が結合されており、ロワケース５の下端部に
オイルパン６が結合されている。そして、シリンダブロ
ック３およびロワケース５の各気筒間の隔壁７，８にそ
れぞれ形成された半割状の軸受部９，10を互いに結合さ
せてクランク軸11を回転可能に支持する軸受が形成され
ている。シリンダブロック４とロワケース５とは、隔壁
７，８の外周フランジ部12，13付近に配置されたボルト
14および軸受部９，10の側部に配置されたボルト15によ
って結合されている。

【０００４】このように構成されたエンジン１では、複
数のシリンダボア２の下方のスカート部４内が各気筒間
の隔壁７，８によって複数のクランク室に区画されてい
る。そして、これら各クランク室の容積は、シリンダボ
ア２に嵌装されたピストン（図示せず）のストロークに
ともなって変化し、各クランク室内のガスは、ピストン
の下降によって収縮されたクランク室からピストンの上
昇によって拡張されたクランク室へ、ロワケース５とオ
イルパン６に貯留された潤滑油の油面Ｓとの隙間を通っ
て流れる。このとき、この隙間の流通抵抗によってポン
ピングロスが生じ、また、油面Ｓが乱されてガスの巻き
込みによるエアレーションおよびクランクウェブ等の過
度のかき上げによる機械的損失が生じやすくなる。

【０００５】そこで、従来、図10に示すように、クラン
ク室を区画する隔壁７，８に通気口16を設け、この通気
口16によって隣接するクランク室間を互いに連通させる
ことにより、ピストンのストロークにともなうクランク
室間のガスの移動を円滑にして、ポンピングロスおよび
油面Ｓの乱れを軽減するようにしている。このように、
隣接するクランク室間を互いに連通させる通気口を設け
るようにしたエンジンのクランクケースが例えば特開平
７−１４５７５３号公報、実開平２−１０３１５２号公
報および実開平２−３０４３号公報に記載されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図10に
示す従来のエンジンのクランクケースでは、次のような
問題がある。シリンダブロック４およびロワケース５の
隔壁７，８には、外周フランジ部12，13付近および軸受
部９，10の側部にそれぞれボルト14，15が挿通されてお
り、通気口16は、これらのボルト14，15と干渉しないよ
うに設けられている。このため、ボルト14，15および通
気口16を配置するスペースを確保する必要があり、クラ
ンクケース幅Ｗが大きくなり、エンジンが大型化すると
いう問題を生じる。

【０００７】また、隔壁７，８に、オイルパン６内とシ
リンダヘッド（図示せず）内とを連通させるブローバイ
ガスまたは潤滑油等の通路が設けられている場合、これ
らの通路と干渉しないように通気口16を配置するスペー
スを確保する必要があり、クランクケース幅Ｗの増大が
さらに問題となる。

【０００８】本発明は、上記の点に鑑みてなされたもの
であり、シリンダブロックのスカート部にロワケースを
結合させてクランク軸を支持し、各気筒のクランク室間
の隔壁に通気口を設けたエンジンのクランクケースを小
型化することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、請求項１の発明は、複数のシリンダボアを有し、
スカート部に各気筒間でクランク室を区画する上部隔壁
を有するシリンダブロックと、前記上部隔壁に結合され
る下部隔壁を有する略はしご状のロワケースとを、前記
上部および下部隔壁に挿通されたボルトによって結合さ
せ、前記上部および下部隔壁に設けられた軸受部によっ
てクランク軸を回転可能に支持するようにしたエンジン
のクランクケースであって、前記上部および下部隔壁の
少なくとも一方に、隣接する前記クランク室間を互いに
連通させる通気口を前記ボルトとオーバラップするよう
に開口させたことを特徴とする。

【００１０】このように構成したことにより、シリンダ
ボアに嵌装されたピストンのストロークにともなう各ク
ランク室の容積変化に対して、各クランク室間でその内
部のガスが通気口を介して円滑に移動することができる
ので、ポンピングロスおよびオイルパンに貯留された潤
滑油の油面の乱れが軽減される。また、上部および下部
隔壁において、通気口とボルトとがオーバラップするよ
うに配置されているので、これらの設置スペースを小さ
くすることができる。

【００１１】請求項２の発明は、上記請求項１の構成に
おいて、通気口は、上部および下部隔壁の少なくとも一
方の結合部に設けた切欠によって形成されていることを
特徴とする。

【００１２】このように構成したことにより、通気口
は、シリンダブロックまたはロワケースの成形時に容易
に形成することができる。

【００１３】また、請求項３の発明は、上記請求項１ま
たは２の構成に加えて、上部および下部隔壁には、クラ
ンク室とシリンダヘッドとを連通させる通路が設けら
れ、通気口は、前記通路を避けて配置されていることを
特徴とする。

【００１４】このように構成したことにより、通気口が
クランク室とシリンダヘッドとを連通させる通路と干渉
することがない。

【００１５】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基づいて詳細に説明する。なお、図９に示す従来例と同
様の部分には同一の番号を付して説明する。

【００１６】本発明の第１実施形態について図１および
図２を参照して説明する。図１に示すように、第１実施
形態に係るエンジン17は、一例として直列４気筒エンジ
ンであって、直列に配置された４つのシリンダボア２
（１つのみ図示されている）を有するシリンダブロック
３のスカート部４にロワケース５が結合されており、ロ
ワケース５の下端部にオイルパン６が複数のボルト（図
示せず）によって結合されている。シリンダブロック３
のスカート部４内には、４つのシリンダボア２の下部の
クランク室を区画するように各気筒間に隔壁７（上部隔
壁）が形成されている。各隔壁７およびスカート部４の
前後壁（図示せず）の下端部中央には、半割状の軸受部
10が形成されている。

【００１７】また、図２に示すように、ロワケース５
は、シリンダブロック３のスカート部４の隔壁７に結合
されてシリンダボア２の下部のクランク室を区画する隔
壁８（下部隔壁）を有する略はしご状に形成されてい
る。ロワケース５の隔壁８および前後壁18，19には、シ
リンダブロック３側の軸受部10に対向させて半割状の軸
受部10が形成されている。そして、シリンダブロック３
およびロワケース５の各気筒間の隔壁７，８および前後
壁18，19（シリンダブロック３のスカート部４の前後壁
は図示せず）にそれぞれ形成された半割状の軸受部９，
10を互いに結合させてクランク軸11を回転可能に支持す
る軸受が形成されている。

【００１８】シリンダブロック３とロワケース５とは、
これらの隔壁７，８および前後壁の外周フランジ部12，
13付近に挿通されたボルト20および軸受部９，10の側部
に挿通されたボルト15によって互いに結合されている。

【００１９】シリンダブロック３のスカート部４の隔壁
７には、隣接するクランク室を互いに連通させる一対の
通気口21が設けられている。通気口21は、隔壁７の下端
部側で、外周フランジ部12付近に挿通されたボルト20と
オーバラップするように開口されている。ボルト20は、
図10に示す従来例のボルト14よりも長く、通気口21を貫
通して、その先端のねじ部20a が隔壁７の通気口21の上
方に形成されたねじ穴22にねじ込まれている。

【００２０】以上のように構成した第１実施形態の作用
について次に説明する。

【００２１】シリンダボア２に嵌装されたピストン（図
示せず）のストロークにともなって各クランク室の容積
が変化すると、これらのクランク室内のガスがピストン
の下降によって収縮されたクランク室からピストンの上
昇によって拡張された室へ通気口21を介して円滑に移動
するので、ピストンのストロークによるポンピングロス
を低減することができる。また、ロワケース５とオイル
パン６に貯留された潤滑油の油面Ｓとの隙間を通過する
ガスの流量が減少するので、油面Ｓの乱れを軽減するこ
とができ、ガスの巻き込みによるエアレーションおよび
クランクウェブ等の過度のかき上げによる機械的損失を
低減することができる。

【００２２】シリンダブロック３の隔壁７において、ボ
ルト20と通気口21とをオーバラップさせて配置している
ので、これらの設置スペースを小さくすることができ、
エンジン17のクランクケース幅を小型化することができ
る。また、ボルト20を長くして、そのねじ部20a をねじ
込むねじ穴22を通気口21の上方に配置したことにより、
シリンダブロック３とロワケース５との結合面とボルト
20の螺着部との距離が大きくなるので、ボルト20の締付
力による結合面の面圧を均一化することができる。

【００２３】次に、本発明の第２ないし第７実施形態に
ついて図３ないし図８を参照して説明する。なお、第２
ないし第７実施形態は、上記第１実施形態の一部を変更
したものであるから、以下、上記第１実施形態のものに
対して同様の部分には同一の符号を付して異なる部分に
ついてのみ詳細に説明する。

【００２４】図３に示すように、第２実施形態に係るエ
ンジン23では、図１に示す第１実施形態のものに対し
て、隔壁７の通気口24は、ボルト20に加えて、軸受部
９，10の側部に挿通されたボルト25にもオーバラップす
るように開口されている。そして、ボルト25は、第１実
施形態のボルト14よりも長く、通気口24を貫通してその
先端のねじ部25a が隔壁７の通気口24の上方に形成され
たねじ穴26にねじ込まれている。この構成により、上記
第１実施形態の作用、効果に加えて、通気口24の開口面
積を大きくすることができる。

【００２５】図４に示すように、第３実施形態に係るエ
ンジン27では、図１に示す第１実施形態のものに対し
て、シリンダブロック３の隔壁７のロワケース５の隔壁
８との結合部に切欠28を設けることによって、ボルト20
とオーバーラップするように通気口28a を形成してい
る。この構成により、上記第１実施形態の作用、効果に
加えて、通気口28a となる切欠28は、機械加工すること
なく、シリンダブロック３の鋳造時に容易に形成するこ
とができる。

【００２６】図５に示すように、第４実施形態にかかる
エンジン29では、図４に示す第３実施形態のものに対し
て、ロワケース５の隔壁８のシリンダブロック３側の隔
壁７との結合部に切欠30を設けることによって、ボルト
14とオーバーラップするように通気口30a を形成してい
る。なお、隔壁７，８の外周フランジ部12，13付近に挿
通されるボルト14は、図９に示す従来例と同様なものが
使用されている。この構成により、上記第３実施形態と
同様の作用、効果を奏することができる。

【００２７】なお、上記第３および第４実施形態では、
通気口28a ，30a を形成する切欠28，30をシリンダブロ
ック３の隔壁７またはロワケース５の隔壁８の一方に形
成しているが、これらの隔壁７，８の両方に形成するよ
うにしてもよい。

【００２８】図６に示すように、第５実施形態に係るエ
ンジン31では、図５に示す第４実施形態のものに対し
て、ロワケース５の隔壁８に、外周フランジ部13付近に
挿通されるボルト14とオーバラップするように、通気口
32を開口させている。この構成により、上記第４実施形
態と同様の作用、効果を奏することができる。

【００２９】図７に示すように、第６実施形態に係るエ
ンジン33では、図６に示す第５実施形態のものに対し
て、通気口34は、ボルト14に加えて、受部９，10の側部
に挿通されたボルト15にもオーバラップするように開口
されている。この構成により、上記第５実施形態の作
用、効果に加えて、通気口34の開口面積を大きくするこ
とができる。

【００３０】また、図８に示すように、第７実施形態に
係るエンジン35では、図６に示す第５実施形態のものに
対して、隔壁７，８に、オイルパン６内とシリンダヘッ
ド（図示せず）内とを連通させる通路36（ブローバイガ
ス通路またはオイル戻し通路等）が設けられている。そ
して、通気口37および通気口38は、通路36を避けるよう
に、それぞれボルト14，15とオーバラップするように開
口されている。この構成により、通気口37，38をブロー
バイガスまたは潤滑油等の通路36と干渉させることなく
開口させて、上記第５実施形態と同様の作用、効果を奏
することができる。

【００３１】

【発明の効果】以上詳述したように、請求項１の発明の
エンジンのクランクケースによれば、シリンダボアに嵌
装されたピストンのストロークにともなう各クランク室
の容積変化に対して、各クランク室間でその内部のガス
が通気口を介して円滑に移動することができるので、ポ
ンピングロスを低減することができ、また、オイルパン
に貯留された潤滑油の油面の乱れを軽減して、エアレー
ションおよびクランクウェブ等の過度のかき上げによる
機械的損失を低減することができる。また、上部および
下部隔壁において、通気口とボルトとがオーバラップす
るように配置したので、これらの設置スペースを小さく
することができ、クランクケース幅を小さくすることが
できる。

【００３２】請求項２の発明のエンジンのクランクケー
スによれば、通気口を機械加工することなくシリンダブ
ロックまたはロワケースの成形時に容易に形成すること
ができる。

【００３３】また、請求項３の発明のエンジンのクラン
クケースによれば、通気口がクランク室とシリンダヘッ
ドとを連通させる通路と干渉することがない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施形態に係るエンジンの気筒間
の縦断面を概略的に示す図である。

【図２】図１のＡ−Ａ線による矢視図である。

【図３】本発明の第２実施形態に係るエンジンの気筒間
の縦断面を概略的に示す図である。

【図４】本発明の第３実施形態に係るエンジンの気筒間
の縦断面を概略的に示す図である。

【図５】本発明の第４実施形態に係るエンジンの気筒間
の縦断面を概略的に示す図である。

【図６】本発明の第５実施形態に係るエンジンの気筒間
の縦断面を概略的に示す図である。

【図７】本発明の第６実施形態に係るエンジンの気筒間
の縦断面を概略的に示す図である。

【図８】本発明の第７実施形態に係るエンジンの気筒間
の縦断面を概略的に示す図である。

【図９】従来のクランクケースにロワケースが結合され
たエンジンの気筒間の縦断面を概略的に示す図である。

【図１０】従来のクランクケースにロワケースが結合さ
れてクランク室の隔壁に通気口が開口されたエンジンの
気筒間の縦断面を概略的に示す図である。

【符号の説明】

２ シリンダボア ３ シリンダブロック ４ スカート部 ５ ロワケース ７ 隔壁（上部隔壁） ８ 隔壁（下部隔壁） 9,10 軸受部 11 クランク軸 14,15,20,25 ボルト 21,24,28a,30a,32,34,37,38 通気口 28,30 切欠 36 通路

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数のシリンダボアを有し、スカート部
   に各気筒間でクランク室を区画する上部隔壁を有するシ
   リンダブロックと、前記上部隔壁に結合される下部隔壁
   を有する略はしご状のロワケースとを、前記上部および
   下部隔壁に挿通されたボルトによって結合させ、前記上
   部および下部隔壁に設けられた軸受部によってクランク
   軸を回転可能に支持するようにしたエンジンのクランク
   ケースであって、 前記上部および下部隔壁の少なくとも一方に、隣接する
   前記クランク室間を互いに連通させる通気口を前記ボル
   トとオーバラップするように開口させたことを特徴とす
   るエンジンのクランクケース。
2. 【請求項２】 通気口は、上部および下部隔壁の少なく
   とも一方の結合部に設けた切欠によって形成されている
   ことを特徴とする請求項１に記載のエンジンのクランク
   ケース。
3. 【請求項３】 上部および下部隔壁には、クランク室と
   シリンダヘッドとを連通させる通路が設けられ、通気口
   は、前記通路を避けて配置されていることを特徴とする
   請求項１または２に記載のエンジンのクランクケース。