JPH1150857A - エンジンのピストン機構 - Google Patents

エンジンのピストン機構

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JPH1150857A
JPH1150857A JP20647697A JP20647697A JPH1150857A JP H1150857 A JPH1150857 A JP H1150857A JP 20647697 A JP20647697 A JP 20647697A JP 20647697 A JP20647697 A JP 20647697A JP H1150857 A JPH1150857 A JP H1150857A
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JP
Japan
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piston
center
crankshaft
engine
connecting rod
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JP20647697A
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English (en)
Inventor
Katsunari Matsumoto
克成 松本
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Publication date
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F02COMBUSTION ENGINES; HOT-GAS OR COMBUSTION-PRODUCT ENGINE PLANTS
    • F02FCYLINDERS, PISTONS OR CASINGS, FOR COMBUSTION ENGINES; ARRANGEMENTS OF SEALINGS IN COMBUSTION ENGINES
    • F02F7/00Casings, e.g. crankcases or frames
    • F02F7/0002Cylinder arrangements
    • F02F7/0019Cylinders and crankshaft not in one plane (deaxation)

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  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Combustion & Propulsion (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】スキッシュ隙間に堆積したカーボンにピストン
頭上面の端部が衝突して発生する打音を好適に抑制する
エンジンのピストン機構を提供する。 【解決手段】ピストン機構11は、シリンダ12内にお
いて、同シリンダ12内を往復するピストン13、機関
の回転軸であるクランクシャフト14、ピストン13と
クランクシャフト14を連結するコネクティングロッド
15、ピストン13とコネクティングロッド15を連結
するピストンピン16等から構成される。エンジン回転
数2000rpm時のピストンのピン回り回転モーメン
トΦrの絶対値が0.6Nm以下となるように、ピスト
ン重量m、ピストンのピン中心−ピストン中心間距離O
p、ピストン中心−ピストン重心間距離Og、コネクテ
ィングロッド長L、及びコネクティングロッド15とク
ランクシャフト14との連結部の回転半径Rを設定す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリンダ内で生じ
る燃焼ガスによる圧力をクランクシャフトの回転力へと
変換するためのエンジンのピストン機構に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、エンジンのピストン機構
は、シリンダ内でピストンを往復させ、膨張行程での燃
焼によって生じる高温・高圧力のガス圧力を、当該ピス
トンとピストンピンによって連結されたコネクティング
ロッドを介して、クランクシャフトの回転力に変換する
ものである。
【0003】図4に、従来より広く用いられてきたエン
ジンのピストン機構の一例を示す。同図に示すようにこ
のピストン機構11は、内燃機関の燃焼室として円筒状
に形成されたシリンダ12内において、同シリンダ12
内を往復するピストン13、機関の出力軸であるクラン
クシャフト14、ピストン13とクランクシャフト14
を連結するコネクティングロッド15、ピストン13と
コネクティングロッド15を連結するピストンピン16
等から構成されている。ピストンピン16は、ピストン
13のほぼ径方向に延び、同ピストン13の側面を貫通
する態様で装着されている。また、コネクティングロッ
ド15は、ピストンピン16の軸線を中心に回動可能と
なっている。たとえば、実開平7−8544号公報に
は、このようなピストン機構の一例が、「内燃機関用ピ
ストン」として提示されている。
【0004】ところで、この種のピストン機構にあって
は、エンジン作動時におけるピストンの熱膨張を見込ん
で、ピストンの外径をシリンダの内径に比べ僅かに小さ
くし、これにより両部材間には常温である程度の隙間
(クリアランス)が存在するよう形成されている。そし
てこのため、ピストンが首振りしてしまい、シリンダ内
壁への衝突音、いわゆるスラップ音が生じることがあ
る。
【0005】そこで従来は、こうした問題を解決するた
めに、ピストンピンの中心位置をピストン中心(シリン
ダ中心)よりややスラスト側にオフセットさせた構造を
有するピストン機構が広く採用されてきた。この種のピ
ストン機構によれば、ピストン13が上死点に達する際
にピストン13本体にピストンピン16回り(同図に矢
指する方向)の慣性モーメントを発生させ、ピストン1
3をそのスカート部から反スラスト側のシリンダ内壁に
打突させることにより、ピストン13が頭部からシリン
ダ12の内壁に衝突して大きなトップランド音を発する
ことを抑制している。
【0006】この結果、ピストン13がその往復運動の
過程で上死点(最上点)に達する際、ピストン13の頭
上部(ピストンヘッド)の端部が図5に拡大して示すよ
うに、ピストンヘッドの上面が垂直に上昇した場合の最
上点を僅かに越えてより高い位置にまで達することとな
る。もっとも、上死点におけるピストンヘッドの頭上面
と、シリンダ12内の天井周縁部には微小な隙間、いわ
ゆるスキッシュ隙間が設けられているため、前述したよ
うなピストンの揺動が生じてもピストンヘッドの一端が
シリンダ内の天井内周縁部に接触するようなことはな
い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、例えばこの
ようなエンジンを搭載した自動車にあって、エンジン始
動後、十分なウオームアップを行わないうちに運転を開
始し、短距離を走行するのみでエンジンを停止するよう
な使用態様を繰り返していると、図6に示すように、燃
焼室(シリンダ)内において、燃え残ったカーボン
(煤)が天井の周縁部に堆積し、スキッシュ隙間を狭め
てしまうことがある。
【0008】そして、こうしたカーボンの堆積が更に進
むと、同図6に示すように、その堆積したカーボンにピ
ストン13の頭上面の一端が接触するようになり、とく
に冷間時のエンジン回転数1000〜2000rpm領
域での運転時等においては顕著な打音を生じさせるよう
になる。
【0009】本発明は、こうした実情に鑑みてなされた
ものであり、その目的とするところは、スキッシュ隙間
にカーボンが堆積される場合であれ、それに起因する打
音の発生を好適に抑制することのできるエンジンのピス
トン機構を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1記載の発明では、エンジンのシリンダ内を
往復運動するピストンと、該ピストンに設けられたピス
トンピンに軸支されて同ピストンの往復運動をエンジン
の出力軸であるクランクシャフトの回転運動に変換する
コネクティングロッドとを備えるエンジンのピストン機
構において、前記ピストンの質量、前記ピストンピンの
ピストン中心からのオフセット量、前記ピストンのピス
トン中心から重心位置までの距離、前記コネクティング
ロッドの長さ、及び前記コネクティングロッドと前記ク
ランクシャフトとの連結部の回転半径の少なくとも1つ
を、前記ピストンの上死点位置での回転モーメントの絶
対値が所定値以下となるように設定したことを要旨とす
る。
【0011】請求項2記載の発明では、請求項1記載の
エンジンのピストン機構において、前記ピストンの質量
をm、前記ピストンピンのピストン中心からのオフセッ
ト量をOp、前記ピストンのピストン中心から重心位置
までの距離をOg、前記コネクティングロッドの長さを
L、前記コネクティングロッドと前記クランクシャフト
との連結部の回転半径をR、前記コネクティングロッド
の長さL及び前記コネクティングロッドと前記クランク
シャフトとの連結部の回転半径Rに基づくエンジンの所
定回転数における前記ピストンの上死点位置での加速度
をαとするとき、次式 Φr=α×m×(Op−Og) により定まる前記ピストンの上死点位置での回転モーメ
ントΦrが0.6Nm以下となるように前記各値m、O
p、Og、L、及びRの少なくとも1つが設定されるこ
とを要旨とする。
【0012】上記請求項1または請求項2に記載した発
明の構成によれば、ピストンの質量、ピストンピンのピ
ストン中心からのオフセット量、ピストンのピストン中
心から重心位置までの距離、コネクティングロッドの長
さ、及びコネクティングロッドとクランクシャフトとの
連結部の回転半径等の調整に基づき、ピストンの上死点
位置での回転モーメントの絶対値が所定値以下に管理さ
れる。このため、上死点位置にあるピストンの傾きが不
要に増大されることはなくなり、たとえスキッシュ隙間
にカーボンが堆積されることがあっても、それに起因す
る打音の発生は好適に抑制されるようになる。
【0013】とくに請求項2記載の発明によるように、
上記ピストンの上死点位置での回転モーメントが0.6
Nm以下となるように管理されることで、エンジン回転
数が例えば2000rpmであっても、その打音感が問
題のないレベルに抑えられることが発明者によって確認
されている。
【0014】請求項3記載の発明では、エンジンのシリ
ンダ内を往復運動するピストンと、該ピストンに設けら
れたピストンピンに軸支されて同ピストンの往復運動を
エンジンの出力軸であるクランクシャフトの回転運動に
変換するコネクティングロッドとを備えるエンジンのピ
ストン機構において、前記ピストンの質量、前記ピスト
ンピンのピストン中心からのオフセット量、前記ピスト
ンのピストン中心から重心位置までの距離、前記コネク
ティングロッドの長さ、前記コネクティングロッドと前
記クランクシャフトとの連結部の回転半径、及び前記ク
ランクシャフトのピストン中心からのオフセット量の少
なくとも1つを、前記ピストンの上死点位置での回転モ
ーメントの絶対値が所定値以下となるように設定したこ
とを要旨とする。
【0015】請求項4記載の発明では、請求項3記載の
エンジンのピストン機構において、前記ピストンの質量
をm、前記ピストンピンのピストン中心からのオフセッ
ト量をOp、前記ピストンのピストン中心から重心位置
までの距離をOg、前記コネクティングロッドの長さを
L、前記コネクティングロッドと前記クランクシャフト
との連結部の回転半径をR、前記クランクシャフトのピ
ストン中心からのオフセット量をOc、前記コネクティ
ングロッドの長さL及び前記コネクティングロッドと前
記クランクシャフトとの連結部の回転半径R及び前記ク
ランクシャフトのピストン中心からのオフセット量Oc
に基づくエンジンの所定回転数における前記ピストンの
上死点位置での加速度をαとするとき、次式 Φr=α×m×(Op−Og) により定まる前記ピストンの上死点位置での回転モーメ
ントΦrが0.6Nm以下となるように前記各値m、O
p、Og、L、R、及びOcの少なくとも1つが設定さ
れることを要旨とする。
【0016】上記請求項3または請求項4に記載した発
明の構成によれば、ピストンの質量、ピストンピンのピ
ストン中心からのオフセット量、ピストンのピストン中
心から重心位置までの距離、コネクティングロッドの長
さ、コネクティングロッドとクランクシャフトとの連結
部の回転半径、及びクランクシャフトのピストン中心か
らのオフセット量等の調整に基づき、ピストンの上死点
位置での回転モーメントの絶対値が所定値以下に管理さ
れる。とくにこの場合には、クランクシャフトのピスト
ン中心からのオフセット量も加味されることで、同回転
モーメントの管理もさらに容易となり、たとえスキッシ
ュ隙間にカーボンが堆積されることがあっても、それに
起因する打音の発生は好適に抑制されるようになる。
【0017】そしてこの場合も、請求項4記載の発明に
よるように、上記ピストンの上死点位置での回転モーメ
ントが0.6Nm以下となるように管理されることで、
エンジン回転数が例えば2000rpmであっても、そ
の打音感が問題のないレベルに抑えられることが発明者
によって確認されている。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)以下、本発明を具体化した第1の実施
形態を図1及び図3に基づいて説明する。
【0019】図1に、本実施形態に係るエンジンのピス
トン機構11の力学的な構造を示す。なお、このピスト
ン機構11にあっても、その実際の構造は先の図4に例
示した構造に準ずるものであり、図1では便宜上、図4
に示した各要素と対応する要素にはそれぞれ同一の符号
を付して示している。
【0020】さて、同図1に示すように、このピストン
機構11は、燃焼室として円筒状に形成されたシリンダ
12内において、同シリンダ12内を往復するピストン
13、機関の回転軸であるクランクシャフト14、ピス
トン13とクランクシャフト14を連結するコネクティ
ングロッド15、ピストン13とコネクティングロッド
15を連結するピストンピン16を有してなる。ピスト
ンピン16は、ピストン13のほぼ径方向に延び、同ピ
ストン13の側面を貫通する態様で装着されている。コ
ネクティングロッド15は、その一端がピストンピン1
6の軸心P1に軸支されるとともに他端が連結点P2に
てクランクシャフト14に連結されて、ピストン13の
往復運動をクランクシャフト14の回転運動に変換す
る。また、シリンダ12のボアとピストン13とはとも
にほぼ円筒形状を有するが、シリンダ12のボア径はピ
ストン13の外径に比べ僅かに大きく形成されているた
めに、ピストン13側面の外周には僅かな隙間があり、
よって同ピストン13はピストンピン16回りに揺動可
能となっている。
【0021】ここで、同図1に示すように、ピストン1
3の中心軸線をC1、ピストンピン16の回転軸中心を
通って前記中心軸線C1と平行な線をC2、ピストン1
3の重心を通って前記中心軸線C1と平行な線をC3と
し、ここで、C2−C1間の距離すなわちピン中心−ピ
ストン中心間距離をOp、C3−C1間の距離すなわち
ピストンの重心−ピストン中心間距離をOgと定義す
る。
【0022】このとき、前記ピストン13の往復運動に
よって変動するコネクティングロッド15の揺動角ψは
次式(1)のようにピン中心−ピストン中心間距離O
p、クランク半径(クランクシャフト14とコネクティ
ングロッド15との連結部P2の回転半径)R、コネク
ティングロッド長(P1−P2間距離)Lを用いて表す
ことができる。 sinψ=(R×sinθ+Op)/L (1) また、クランクシャフト14の回転中心位置とピストン
ピン16の位置とに係るシリンダ12の中心軸線方向に
おける距離、すなわち図1における線分A−B間距離y
は、次式(2)によって表される。 y=L×cosψ+R×cosθ (2) そこで、下死点から上死点方向に向かうピストン13の
速度dy/dtは、次式(3)によって表すことができ
る。 dy/dt=−L×sinψ×(dψ/dt)−ω×R×sinθ (3) ただし、ω:クランクシャフト14の回転角加速度dθ
/dt よって、ピストン13の加速度αは、次式(4)で表さ
れる。 α=d^2y/dt^2 (^2は二乗を示す) すなわち、 α=−L×cosψ×(dψ/dt)^2 −L×sinψ×(d^2ψ/dt^2) −ω^2×R×cosθ (4) そしてこのとき、ピストン13がその往復運動において
生じる慣性力によるピストンピン16回りの回転モーメ
ントΦrは、次式(5)によって表されることが周知で
ある。 Φr=α×m×(Op−Og) (5) ただし、m:ピストン重量 すなわち、ピストンピン16回りに生じる回転モーメン
トΦrは、式(5)に示したように、ピン中心−ピスト
ン中心間距離Opとピストン重心−ピストン中心間距離
Ogとの差(Op−Og)、ピストン重量m、及びピス
トン13の加速度αにより決定されることになる。さら
に、式(4)から明らかなように、ピストン13の加速
度αは、クランクシャフト14の回転角速度ωが所定
値、且つピストンピン16が下死点から上死点までの所
定位置にある時には、コネクティングロッド長L及びク
ランク半径Rの関数として示される。言い換えると、ピ
ストン13が所定位置にあり、且つクランクシャフトの
回転角速度ω(エンジン回転数と同義)が所定値である
ときの回転モーメントΦrは、ピストン重量m、ピン中
心−ピストン中心間距離Op、ピストンの重心−ピスト
ン中心間距離Og、コネクティングロッド長L、クラン
ク半径Rによって決定されることとなる。
【0023】ここで、本実施形態のピストン機構11に
あっては、エンジン回転数2000rpmで上死点にあ
るピストン13のピン16回り回転モーメントΦrの絶
対値が0.6Nm以下となるよう、各値m、Op、O
g、L、Rを設定している。
【0024】以上のように構成されたピストン機構11
の作用について、図3及び図5、図6を併せ参照して以
下に説明する。エンジンが始動し、ピストン13が往復
運動を行うと、上死点(最上点)に達する際、ピストン
13の頭上部(ピストンヘッド)の端部が図5において
前述したように、ピストン14とシリンダ12との隙間
及びピストン13のスカート部分のたわみ分ピストン1
3の頭上面一端がシリンダ12内の天井周縁部に近接す
る。このとき、前記シリンダ12内の天井周縁部にカー
ボンが堆積していると、図6において説明したように、
前記ピストン13の頭上面一端が堆積したカーボンに接
触することになる。
【0025】ところが、本実施形態のピストン機構11
にあっては、ピストン重量m、ピン中心−ピストン中心
間距離Op、ピストンの重心−ピストン中心間距離O
g、コネクティングロッド長L、及びクランク半径Rの
各数値を適宜設定することにより、前記式(5)に示し
た慣性力によるピストンピン16回りの回転モーメント
Φrに係る、エンジン回転数2000rpmにおける上
死点での値が0.6Nm以下となるようピストン機構1
1を構成しているため、上記カーボンとの接触に際して
不快な打音等を生じることもなくなる。
【0026】たとえば図3は、エンジン回転数2000
rpm時におけるピストン13の打音感と同ピストン1
3のピン16回りの回転モーメントΦrとの関係を示す
グラフである。同図に示すように、回転モーメントΦr
が増加するほど打音感も増すことがわかる。また、打音
感の基準値Sは、運転者がピストンの打音を不快に感じ
ない上限値である。すなわち、同図3から明らかなよう
に、エンジン回転数が2000rpmであるときには、
回転モーメントΦrが0.6Nm以下であれば、運転者
はピストンの打音を不快に感じなくなる。
【0027】また、2000rpmを上回るエンジン回
転数域においては、エンジンの高速回転音が増すため
に、この種の問題が生じなくなることも発明者によって
確認されている。
【0028】また、少なくともエンジンの運転状態が低
回転領域にあれば、エンジン回転数が増すほどピストン
の打音感が増すことも自明である。しかし上述のよう
に、その上限域ともいえるエンジン回転数2000rp
mの運転域に対して、慣性力によるピストン13のピン
16回りの回転モーメントΦrが十分小さく(0.6N
m以下)なるようピストン機構11を構成することによ
り、ピストン13頭上面端部がシリンダ12の天井周縁
部に衝突することに起因する打音感は好適に抑制される
ことになる。
【0029】以上説明したように、本実施形態によれば
以下に示す効果が得られる。・回転モーメントΦrの値
(絶対値)が減少し、上死点におけるピストン13頭上
面端部のシリンダ12の天井周縁部に堆積したカーボン
への衝突力が軽減される。・こうして衝突力が軽減され
ることで、その不快な打音等も好適に抑制される。 (第2実施形態)次に、本発明の第2の実施形態を、前
記第1の実施の形態と異なる部分を中心に説明する。
【0030】図2に、本実施形態に係るエンジンのピス
トン機構11’の力学的構造を示す。なお、このピスト
ン機構11’にあっても、その実際の構造は先の図4に
例示した構造に準ずるものであり、図2においても便宜
上、図4あるいは図1に示した各要素と対応する要素に
はそれぞれ同一の符号を付して示している。
【0031】さて、図2に示す本実施形態のエンジンの
ピストン機構11’にあっても、ピストン13のピン1
6回りの回転モーメントの絶対値が0.6Nm以下とな
るよう、ピストン重量m、ピン中心−ピストン中心間距
離Op、ピストンの重心−ピストン中心間距離Og、コ
ネクティングロッド長L、及びクランク半径Rの各数値
を適宜設定するものであることは、第1の実施形態と同
様である。ただし、本実施形態のピストン機構11’に
あっては、上記各値Op、Og、m、L、Rの設定条件
に加え、クランクシャフト14の回転中心をシリンダ1
2のボア中心(=ピストン中心)よりスラスト側にオフ
セットさせ、そのオフセット量をも上記回転モーメント
の設定に寄与させるようにしている。
【0032】すなわち、同図2に示すように、クランク
シャフト14の回転中心をP3とすると、同点P3をシ
リンダ12の中心軸線(ピストン13の中心軸線を共
有)C1からスラスト側に距離Oc(1mm程度)だけオ
フセットさせている。
【0033】このとき、前記ピストン13の往復運動に
よって変動するコネクティングロッド15の揺動角ψ
は、前記ピン中心−ピストン中心間距離Op、クランク
半径R、コネクティングロッド長(P1−P2間距離)
L、そしてこのオフセット量Ocを用いて次式(6)の
ように表すことができる。 sinψ=(R×sinθ+Op−Oc)/L (6) そして、第1の実施形態と同様に、式(2)〜(4)に
従い算出される上死点でのピストン加速度αの絶対値
は、このオフセット量Ocを加味することによって減少
することとなり、結局は前記式(5)に基づき定まる慣
性力によるピン回り回転モーメントΦrの絶対値も減少
する。
【0034】この結果、先の第1の実施形態に比べてさ
らに容易に同回転モーメントΦrの絶対値を減少させる
ことができ、上死点においてピストン13頭上面端部が
シリンダ12の天井周縁部に衝突することに起因する打
音の低減もより容易に図られるようになる。
【0035】以上説明したように、本実施形態によれば
以下に示す効果が得られる。 ・回転モーメントΦrの値(絶対値)の減少がさらに容
易となり、上死点におけるピストン13頭上面端部のシ
リンダ12の天井周縁部に堆積したカーボンへの衝突力
の軽減もより一層容易となる。 ・また勿論、こうして衝突力が軽減されることで、その
不快な打音等も好適に抑制される。
【0036】なお、上述した各実施形態にあっては、ピ
ストン重量m、ピン中心−ピストン中心間距離Op、ピ
ストンの重心−ピストン中心間距離Og、コネクティン
グロッド長L、及びクランク半径Rの各数値、あるいは
これにクランクシャフト14の回転中心−シリンダ12
のボア中心間のオフセットOcを加味した各値を適宜設
定して、ピストン13の上死点位置での回転モーメント
Φrの絶対値が所定値以下となるようにしたが、必ずし
もそれら各値の全てを新たに設定し直す必要はない。す
なわち、現状のピストン機構において、それら各値の1
つでも変更可能な要素があり、その1つでも変更するこ
とによって上記所望とする回転モーメントΦrが得られ
さえすれば、上記効果を得ることはできる。
【0037】
【発明の効果】請求項1または請求項2記載の発明によ
れば、上死点位置にあるピストンの傾きが不要に増大さ
れることはなくなり、たとえスキッシュ隙間にカーボン
が堆積されることがあっても、それに起因する打音の発
生は好適に抑制されるようになる。
【0038】請求項3または請求項4記載の発明によれ
ば、クランクシャフトのピストン中心からのオフセット
量も加味されることで、ピストンの上死点位置での回転
モーメントの管理もさらに容易となる。そしてこの場合
も、たとえスキッシュ隙間にカーボンが堆積されること
があっても、それに起因する打音の発生は好適に抑制さ
れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態におけるピストン機構の力学
的構造を示す概略図。
【図2】(エンジン回転数2000rpm時における)
ピストン打音感とピン回り回転モーメントとの関係を示
すグラフ。
【図3】第2の実施の形態におけるピストン機構の力学
的構造を示す概略図。
【図4】従来のピストン機構を示す側断面図。
【図5】上死点におけるそのピストンの拡大図。
【図6】上死点におけるそのピストンの拡大図。
【符号の説明】
11…ピストン機構、12…シリンダ、13…ピスト
ン、14…クランクシャフト、15…コネクティングロ
ッド、16…ピストンピン。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エンジンのシリンダ内を往復運動するピス
    トンと、該ピストンに設けられたピストンピンに軸支さ
    れて同ピストンの往復運動をエンジンの出力軸であるク
    ランクシャフトの回転運動に変換するコネクティングロ
    ッドとを備えるエンジンのピストン機構において、 前記ピストンの質量、前記ピストンピンのピストン中心
    からのオフセット量、前記ピストンのピストン中心から
    重心位置までの距離、前記コネクティングロッドの長
    さ、及び前記コネクティングロッドと前記クランクシャ
    フトとの連結部の回転半径の少なくとも1つを、前記ピ
    ストンの上死点位置での回転モーメントの絶対値が所定
    値以下となるように設定したことを特徴とするエンジン
    のピストン機構。
  2. 【請求項2】前記ピストンの質量をm、前記ピストンピ
    ンのピストン中心からのオフセット量をOp、前記ピス
    トンのピストン中心から重心位置までの距離をOg、前
    記コネクティングロッドの長さをL、前記コネクティン
    グロッドと前記クランクシャフトとの連結部の回転半径
    をR、前記コネクティングロッドの長さL及び前記コネ
    クティングロッドと前記クランクシャフトとの連結部の
    回転半径Rに基づくエンジンの所定回転数における前記
    ピストンの上死点位置での加速度をαとするとき、次式 Φr=α×m×(Op−Og) により定まる前記ピストンの上死点位置での回転モーメ
    ントΦrが0.6Nm以下となるように前記各値m、O
    p、Og、L、及びRの少なくとも1つが設定される請
    求項1記載のエンジンのピストン機構。
  3. 【請求項3】エンジンのシリンダ内を往復運動するピス
    トンと、該ピストンに設けられたピストンピンに軸支さ
    れて同ピストンの往復運動をエンジンの出力軸であるク
    ランクシャフトの回転運動に変換するコネクティングロ
    ッドとを備えるエンジンのピストン機構において、 前記ピストンの質量、前記ピストンピンのピストン中心
    からのオフセット量、前記ピストンのピストン中心から
    重心位置までの距離、前記コネクティングロッドの長
    さ、前記コネクティングロッドと前記クランクシャフト
    との連結部の回転半径、及び前記クランクシャフトのピ
    ストン中心からのオフセット量の少なくとも1つを、前
    記ピストンの上死点位置での回転モーメントの絶対値が
    所定値以下となるように設定したことを特徴とするエン
    ジンのピストン機構。
  4. 【請求項4】前記ピストンの質量をm、前記ピストンピ
    ンのピストン中心からのオフセット量をOp、前記ピス
    トンのピストン中心から重心位置までの距離をOg、前
    記コネクティングロッドの長さをL、前記コネクティン
    グロッドと前記クランクシャフトとの連結部の回転半径
    をR、前記クランクシャフトのピストン中心からのオフ
    セット量をOc、前記コネクティングロッドの長さL及
    び前記コネクティングロッドと前記クランクシャフトと
    の連結部の回転半径R及び前記クランクシャフトのピス
    トン中心からのオフセット量Ocに基づくエンジンの所
    定回転数における前記ピストンの上死点位置での加速度
    をαとするとき、次式 Φr=α×m×(Op−Og) により定まる前記ピストンの上死点位置での回転モーメ
    ントΦrが0.6Nm以下となるように前記各値m、O
    p、Og、L、R、及びOcの少なくとも1つが設定さ
    れる請求項3記載のエンジンのピストン機構。
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