JP3767357B2 - 内燃機関の振動低減装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の運転によって生じる振動を低減する振動低減装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の環境問題に対応した自動車の燃費向上への関心の高まりから、直噴ガソリンエンジン,直噴ディーゼルエンジンの需要が高まっているが、これらによって内燃機関のロール振動や、機関回転軸の回転変動は悪化するため、自動車に搭載される内燃機関(エンジン)のロール振動や機関回転軸(クランクシャフト)の回転変動などの振動を防止する振動低減装置が提案されている。
【0003】
従来の振動低減装置として、機関回転軸の回転駆動力を伝える駆動力伝達機構の駆動側と従動側の回転慣性質量体相互を、弾性体を介して連結して回転振動系を形成し、機関運転によって生じる所定周波数域の回転振動に対し、前記回転振動系に反共振を発生させて前記回転振動を低減するようにしたものがある。具体的には、前記反共振の周波数を、機関の略一定回転で運転される運転状態での回転速度のn/2(n=自然数)倍の周波数と略一致させることにより、その状態での機関の振動を低減するようにしている(特開平11−325186合公報参照)。
【0004】
このものでは、前記回転振動系の反共振をコントロールすることにより、特定の運転条件で大きな振動防止効果が得ることができる。特にアイドル運転時に前記反共振を発生させることで、アイドル運転時の機関振動の大きな低減効果が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、内燃機関のアイドル回転速度は変動することがあるため、さらに効果を確実にするためには、その反共振の効果領域を更に広げる必要がある。
また、補機の回転振動系の共振で振動はさらに悪化することになる。実際の大部分の運転領域に、この共振付近は含まれないので、大きな問題とはなっていないが、この領域を全く使用しないわけではないので、該共振の悪化を防止することにより、その価値を高めることができる。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、ロール振動や回転変動を、より効果的に低減することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に係る発明は、
機関回転軸の回転駆動力を伝える駆動力伝達機構における駆動側と従動側の回転慣性質量体相互を、弾性体を介して連結して回転振動系を形成し、機関運転によって生じる所定周波数域の回転振動に対し、前記回転振動系に反共振を発生させて前記回転振動を低減するようにした内燃機関の振動低減装置であって、
前記弾性体のバネ力が、前記駆動側と従動側の回転慣性質量体相互の相対的な回転角変位に対して非線形特性を有することを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る発明によると、
前記回転振動系を構成する弾性体の前記回転角変位に対するバネ力の特性(以下バネ特性という)を、非線形特性とすることにより、回転角変位に対するバネ定数の変化特性の適切な設定によって、反共振点での振動低減効果を高めたり、反共振による振動低減効果を有する運転領域を広げたりすることができ、また、共振点での振動低減効果を高めたりすることができる。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、
前記反共振の周波数が、前記機関回転軸の所定回転速度における回転周波数を(自然数/2)倍した周波数のうちのいずれかの周波数と略一致するように形成されていることを特徴とする。
請求項2に係る発明によると、
内燃機関の気筒数に応じた種々の回転次数成分、例えば、4気筒の場合2次,3次,6次…、6気筒の場合3次,6次,9次…、8気筒の場合4次,8次,12次…、等の回転次数成分の周波数に起因するロール振動を大幅に低減することができる。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、
前記弾性体のバネ定数が、前記回転角変位の増加に対して増加する特性を有することを特徴とする。
請求項3に係る発明によると、
弾性体のバネ定数が、前記回転角変位の増加に対して増加する特性とすることで、反共振での回転振動系の振幅を大きくして機関振動の低減効果を高めたり、機関回転速度の変化に応じたバネ特性の変化によって、反共振の低減効果が得られる運転領域を広げたりすることができ、また、共振周波数を高回転側にずらせて共振を低減することなども可能となる。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、共振点における最大回転角変位以下の回転角変位領域で、前記弾性体のバネ定数が、回転角変位の増加に対して増加することを特徴とする。
請求項4に係る発明によると、共振点におけるバネ定数を、これより最大回転角変位の小さい反共振点におけるバネ定数に対して大きくすることができるので、共振点では前記回転振動系の振幅を小さくして振動を低減できる。また、反共振点から共振点に向かってバネ定数が増大するので、反共振点付近では、回転の上昇に応じたバネ定数の増加によって回転振動系の振幅を大きく維持でき、反共振の効果領域を広げることができる。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、反共振点における最大回転角変位以下の回転角変位領域で、前記弾性体のバネ定数が、回転角変位の増加に対して増加することを特徴とする。
請求項5に係る発明によると、上記非線形バネ特性を有する弾性体を、これと反共振点での振動周波数(反共振周波数)を同一としたバネ定数一定の完全に線形なバネ特性(以下単に線形バネ特性という)を有する弾性体と比較すると、以下のようになる。ここで、非線形バネ特性を有する弾性体では、回転角変位に対してバネ定数が変化するが、同一の反共振周波数を持つ線形バネ特性を有する弾性体のバネ定数を、非線形バネ定数を有する弾性体における等価バネ定数として定義する。
【0013】
本発明に係る非線形バネ特性を有する弾性体では、同一の反共振周波数を持つ線形バネ特性を有する弾性体のバネ定数よりバネ定数が小さい部分での回転角変位が大きいので、変位の合計値としての最大回転角変位つまり振幅が大きくなる。これにより、反共振による振動低減効果を高めることができる。また、反共振点より回転角変位の小さい領域から反共振点に向かって等価バネ定数が増加するので、反共振点付近では、回転の上昇に応じたバネ定数の増加によって回転振動系の振幅を大きく維持でき、反共振の効果領域を広げることができる。
【0014】
また、請求項6に係る発明は、前記回転振動系が機関運転によって生じる周波数が異なる種類の回転振動のうち、低周波数側の振動に対する反共振点における最大回転角変位以下の回転角変位領域で、前記弾性体のバネ定数が、回転角変位の増加に対して増加することを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明によると、
前記機関のロール振動と回転変動のように周波数が異なる種類の回転振動に対して、低周波数側の振動に対する反共振点での最大回転角変位より小さい回転角変位でバネ定数が増加するので、低周波数側及び高周波数側の振動に対してそれぞれ反共振の振幅を増大でき、振動低減効果を高めることができる。また、低周波数側の振動に対する反共振点での最大回転角変位より小さい回転角変位から等価バネ定数が増加するので、反共振の効果領域を広げることもできる。
【0016】
また、請求項7に係る発明は、
前記弾性体は、回転角変位の増大に応じてバネ定数が段階的に増加する特性を有していることを特徴とする。
請求項7に係る発明によると、
回転角変位の増大に応じてバネ定数がk1、k2(>k1)、…というように増加する特性を有する。バネ定数k1>0の場合は、該バネ定数k1の回転角変位領域では部分的に線形バネ特性を有し、それより回転角変位が大きい領域では等価バネ定数が回転角変位の増加と共に増加する非線形バネ特性を有する。
【0017】
そして、例えば、前記非線形バネ特性を有する回転角変位の領域に、共振点、反共振点、低周波数側の振動に対する反共振点を設定することにより、上記請求項4〜請求項6に係る発明の効果を容易に得ることができる。
また、請求項8に係る発明は、
前記弾性体は、コイル間隔が異なることによってバネ定数が異なる複数のスプリングを直列に繋げて一本化したコイルスプリングによって構成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項8に係る発明によると、
コイルスプリングを圧縮すると、始めは異なるバネ定数を合成したバネ定数k1を有するが、圧縮量が増大してコイル間隔が小さい方のスプリング部分のコイル間隔が0となった後は、コイル間隔が大きい方のスプリングのみがバネとして機能するので、該コイル間隔が大きい方のスプリングのバネ定数k2(>k1)に切り換わる。なお、同種のコイルスプリングを1つの接続体の両側に設けることにより、中立位置に対して一方のコイルスプリングが引っ張られるときは、他方のコイルスプリングが圧縮されるので、機関回転と同一方向と逆方向との両方向の回転角変位に対して、同一の非線形特性を持たせることができる。
【0019】
これにより、簡易に非線形バネ特性を有する弾性体を得ることができる。
また、請求項9に係る発明は、
前記回転角変位が所定値以下の領域では、前記弾性体の回転角変位に対するバネ力の特性が略線形であると共に、前記所定値を超える回転角変位の増大を規制するストッパが設けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項9に係る発明によると、
回転角変位がストッパで規制されるまでは、バネ定数が略一定の線形特性を有し、ストッパで規制後は、バネ定数が急激に大きくなる非線形特性に切り換わる。
これにより、シンプルな構成で非線形バネ特性を得ることができる。
【0021】
また、請求項10に係る発明は、
前記回転振動系が機関運転によって生じる周波数が異なる種類の回転振動のうち、高周波数側の振動に対する反共振点での最大回転角変位は、前記所定値より小さいことを特徴とする。
請求項10に係る発明によると、
前記機関のロール振動と回転変動のように周波数が異なる種類の回転振動に対して、共に前記線形バネ特性の領域で反共振を発生させて安定した効果を得られ、かつ、反共振点より高回転側でバネ定数が増大することによって、反共振の効果領域を広げられる。
【0022】
一方、共振点ではストッパによる回転角変位の規制で回転振動系の振幅を十分小さく抑えられるので共振の悪化を確実に防止できる。
また、請求項11に係る発明は、
前記弾性体のバネ定数が、機関回転方向とその逆方向のそれぞれに対して回転角変位の増大に応じて最初に段階的に増加するときの回転角変位が、前記それぞれの回転方向における共振点若しくは反共振点の最大回転角変位に応じて異なる値に設定されていることを特徴とする。
【0023】
請求項11に係る発明によると、
機関はアイドル運転時にであっても、摩擦力分等の駆動力を発生しており、その駆動トルク変動は、通常回転方向プラス側で大きく、回転方向マイナス側(逆側)は、それより小さくなる。
そこで、バネ定数が、最初に段階的に増加するときの回転角変位を、それぞれの回転方向によって上記のように異なる値に設定することで、両方向で異なる最適な回転角変位でバネ定数を増加させることにより、反共振の効果領域をより広くすることができる。
【0024】
また、請求項12に係る発明は、
前記ストッパの回転角変位の増大を規制する接触面に、弾性体を装着したことを特徴とする。
請求項12に係る発明によると、
ストッパが当たった時の打音を抑制することができる。
【0025】
また、請求項13に係る発明は、
前記弾性体のバネ定数は、前記回転角変位が所定値以下の領域では略0若しくは前記回転角変位が所定値を超える領域でのバネ定数に比較して十分小さいことを特徴とする。
請求項13に係る発明によると、
線形バネ特性を有する弾性体を用いた場合と比較して、共振,反共振の周波数が低下することに伴なって、共振のレベルを低減できるとともに、共振を生じる領域を狭めることができ、かつ、反共振の効果領域を広げることができる。
【0026】
また、請求項14に係る発明は、
前記弾性体の接続部の前記駆動側と従動側の回転慣性質量体の少なくとも一方に対する接続端部が、該端部と接続する部位に対してクリアランスを有して組み込まれており、前記回転角変位が前記クリアランス以下のときに弾性体のバネ定数が略0若しくは前記回転角変位が前記クリアランスを超える領域でのバネ定数に比較して十分小さいことを特徴とする。
【0027】
請求項14に係る発明によると、
弾性体を前記クリアランスを有して組み込むことにより、回転角変位が該クリアランス以下のときに弾性体のバネ定数を0近傍まで小さい値に、容易に設定することができる。
また、請求項15に係る発明は、
前記弾性体は、前記駆動側と従動側の回転慣性質量体の少なくとも一方に対する接続端部を、該端部に接続する部位に対して回転自由に支持すると共に、該接続端部と該端部に接続する部位との間にストッパを形成し、該ストッパ間によって前記クリアランスを設けたことを特徴とする。
【0028】
請求項15に係る発明によると、
弾性体をストッパによって規制されるクリアランス分だけ、回転自由に組み込むことにより、回転角変位が該クリアランス以下のときに弾性体のバネ定数を0近傍まで小さい値に、容易に設定することができる。また、この構成により、弾性体としてゴムなどを利用できる。
【0029】
また、請求項16に係る発明は、
前記弾性体は、線材を渦巻き状若しくはコイル状に巻くことにより形成され、該線材の端部が、前記前記駆動側と従動側の回転慣性質量体の一方に、クリアランスを有して係合することを特徴とする。
請求項16に係る発明によると、
線材で形成される弾性体の端部を、クリアランスを有して係合する簡易な構成で、回転角変位が該クリアランス以下のときに弾性体のバネ定数を0近傍まで小さい値に、容易に設定することができる。また、この構成により、弾性体として金属バネなどを利用できる。
【0030】
また、請求項17に係る発明は、
前記線材で形成された弾性体の端部が略直線状に形成されて、前記前記駆動側と従動側の回転慣性質量体の一方に形成された溝内に、クリアランスを有して係合すると共に、該端部の前記直線状の直線に沿った方向の動きが規制されていることを特徴とする。
【0031】
請求項17に係る発明によると、
弾性体の不必要な動きを抑えることができるので、その摩擦損失による効果の目減りを防止することができる。
また、請求項18に係る発明は、
前記クリアランスの少なくとも一部に、前記回転角変位が前記クリアランスを超える領域でのバネ定数に比較して十分小さいバネ定数を有する弾性体を介在させたことを特徴とする。
【0032】
請求項18に係る発明によると、
クリアランス部に柔らかなゴムなどの弾性体を設けることにより、衝撃音を低減することができる。
また、請求項19に係る発明は、
前記クリアランスを可変にする機構を有することを特徴とする。
【0033】
請求項19に係る発明によると、
クリアランスの大きさを調整できるので、同一の部品で、アイドル回転速度や気筒数の異なる機関に適用できる。
また、請求項20に係る発明は、
前記弾性体のバネ定数が、回転角変位に対して段階的に変化する変曲点を複数有しており、該変曲点の1つが、機関運転によって生じる周波数が異なる種類の回転振動の1つの反共振点の最大回転角付近にあることを特徴とする。
【0034】
請求項20に係る発明によると、
反共振付近にバネ定数の変曲点を有することで、該反共振付近のバネ定数が非線形特性となることにより、さらに反共振の効果領域を広げることができ、共振の悪化もより小さくすることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る振動低減装置を備えた自動車用4気筒エンジン(内燃機関)を示し、このエンジン1では、駆動力を発生するクランクシャフト(機関回転軸)2の前端部にクランクプーリ3が固定されており、また、図2に示すような補機としてのオルタネータ4が、その回転軸5に固定されたオルタネータプーリ6と前記クランクプーリ3との間に巻き掛けられた補機駆動ベルト7により、クランクシャフト2と同一方向に回転駆動されるようになっている。このオルタネータプーリ6、クランクプーリ3、補機駆動ベルト7等により、クランクシャフト2の回転駆動力を伝える駆動力伝達機構が構成されている。なお、クランクシャフト2の後端部には、フライホイール8が固定されている。
【0036】
前記オルタネータプーリ6は、図3に示すように、その回転軸5に直接結合される内周部6Aと、補機駆動ベルト7が掛かり、前記回転軸5にベアリングを介して回転自由に支持される外周部6Bとに2分割されており、これらは、弾性体であるコイルスプリング6Cを介して結合されている。ここで、コイルスプリング6Cは、図4に拡大して示すように、その線材のコイル間隔を大小2種類設定することにより、前記駆動力伝達機構の回転体である内周部6Aと外周部6Bとの相対的な回転角変位(以下単に角変位という)が増大する途中でバネが硬くなる(バネ定数が大きくなる)ような、バネ力の非線形特性を有している。
【0037】
このように構成されたコイルスプリング6Cと、前記クランクシャフト2の後端部に固定されたフライホイール8及びオルタネータプーリ6のロータ部(図2のA)によるマスにより、回転振動系が構成される。これにより、エンジン1のロール振動及びクランクシャフト2の回転変動などの振動に関しては、該回転振動系の共振に伴なって反共振が発生し、それらの周波数は、バネの線形領域では次式で表わされる。
【0038】
【数1】
Figure 0003767357
【0039】
但し、f0:共振周波数
1:エンジンロール振動の反共振周波数
2:エンジン回転軸回転変動の反共振周波数
1:フライホイール等エンジン回転部の慣性モーメント
2:オルタネータ回転部の慣性モーメント
ρ:オルタネータ増速比
エンジン回転に対して順回転の場合 ρ>0
エンジン回転に対して逆回転の場合 ρ<0
K:コイルスプリングのバネ定数
この反共振周波数を、このエンジン1の運転条件のうち、一定回転速度条件で頻繁に使用され、かつ、エンジンのロール振動が問題となる、例えばアイドル運転条件で問題となる周波数に合わせておくことにより、大きなロール振動防止効果が得られる。あるいは、反共振周波数を、クランクシャフトの回転変動が問題となる運転条件、例えばアイドル運転時の補機負荷が大きいとき等に、問題となる周波数に合わせておくことにより、大きな回転変動防止効果が得られる。
【0040】
また、4気筒エンジンの場合には、その振動は、燃焼圧力の変動によりエンジン回転の2、4、6…次の周波数が大きく、そのうち特にエンジン回転の2次の周波数が大きくなる。この周波数は、6気筒エンジンの場合は3次、8気筒エンジンの場合は4次になる。このように、エンジンの気筒数の1/2倍の次数のことを、一般に基本次数という。したがって、この4気筒エンジンのアイドル回転速度が750rpmであった場合には、その回転の2次、つまり、25Hzに反共振周波数がくるように、上記(2)式又は(3)式に従い、前記オルタネータプーリ6のコイルスプリング6Cのバネ定数、オルタネータ回転部の慣性モーメントI2の大きさ、増速比ρを調整する。
【0041】
一般に、アイドル運転時にエンジンのロール振動が問題となるのは、オートマチックトランスミッション(A/T)車のNレンジ、マニュアルトランスミッション(M/T)車の補機駆動負荷等が少ない低負荷時等である。また、アイドル運転時に回転変動が問題となるのは、A/T車のDレンジ、M/T車の補機駆動負荷等が大きい高負荷時等である。
【0042】
第1の実施の形態では、前記エンジン回転軸の回転変動の低減効果を得られるように、前記(3)式に合わせて、反共振周波数を設定する。
ここで、前記内周部6Aと外周部6B間を、コイルスプリング6Cの反共振時における等価バネ定数と同一のバネ定数を持つ完全な線形バネ特性を有したバネ(弾性体)で連結した場合の角変位θは、図5に示すように、この振動系の共振点付近で最大角変位θ1をとる。反共振時の角変位は、これより小さく、θ2'となる。
【0043】
前記非線形バネ特性を持たせたコイルスプリング6Cでは、図6に示すように、角変位θ=0から前記角変位θ2'より小さな角変位θ3までは、バネ定数k1の線形領域を有し、θ3より大きい各変位領域では、バネが硬くなる(バネ定数がk2に増大する)特性を有する。
これにより、線形領域のバネ定数は反共振時のバネ定数より小さくなるので、前記完全な線形バネ特性を有するバネと比較すると、線形領域のバネ定数を小さくすることができる。その結果、図7に示すように、反共振時の回転変動の低減効果をより大きくすることができ、さらに、角変位が増すと共にバネが硬くなる効果により反共振の効果領域を広げることができる。
【0044】
上記の作用について、より詳細に説明する。
反共振は、2つの振動モードが打ち消し合うことによっておこる。すなわち本実施の形態では、駆動側であるクランクシャフト2(エンジン回転軸)の回転変動、つまり、主としてフライホイール8が回転振動するモードと、コイルスプリング6Cを介して駆動力が伝達される従動側のオルタネータ4が回転振動するモードとが打ち消し合うことによって起こる。これら2つの振動モードの振動レベルが同じ大きさぐらいのときに最も反共振が大きくなるが、通常の車両用エンジンの場合、前者の主としてフライホイールが回転振動するモードの方が大きいため、後者のオルタネータが回転振動するモードの振動レベルを大きくすることによって、反共振を大きくすることができる。そこで、本実施の形態のコイルスプリング6Cのように、線形領域でのバネ定数を小さくすることによって、振幅を大きくして(θ2>θ2':図5参照)振動レベルを大きくすることにより、反共振を大きくして振動低減効果を高めることができる。
【0045】
また、図5(エンジン回転速度Ne−角変位特性)、図7(エンジン回転速度Ne−効果代[dB]特性)を参照して、反共振点からエンジン回転速度が上昇して共振点に向かうところを考えると、共振点に近づくにつれてコイルスプリング6Cは角変位が増大すると共に、等価バネ定数も増大する。その結果、共振点に向かう山が徐々に高回転側にずれていき、この特性により、等価バネ定数の等しいバネ定数を有する、つまり、反共振周波数の等しい完全な線形バネの特性と比較すると、谷も広くなって反共振による効果が得られる領域(以下単に効果領域という)も広がる。
【0046】
なお、コイルスプリング6Cのバネ特性が非線形であることにより、エンジン回転速度の上昇時と下降時とでは、回転変動が異なる。
また、本実施の形態では、バネ定数がk1とk2との2段階に切り換えられ、等価バネ定数が、角変位θ3まではk1、θ3を超える領域ではk1から徐々に増大する非線形特性となるように構成したが、コイルスプリングの各コイル間の間隔を徐々に増大させるなどして、バネ定数が角変位θ=0からθの増大と共に増大するようにして、等価バネ定数もθ=0からθの増大と共に増大する完全な非線形特性としてもよい(図6の一点鎖線参照)。
【0047】
また、非線形バネ特性を有するコイルスプリングがエンジンのロール振動の低減効果を得られるように、前記(2)式に合わせて反共振周波数を設定する構成した場合も、同様にして完全な線形バネ特性を有するバネ(バネ定数が非線形バネの等価バネ定数と同一)と比較して、該反共振点での振動低減効果を高められると同時に、効果領域を広げることができる。
【0048】
次に、第2の実施の形態について説明する。
本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同様のエンジン1を、図8に示すように、A/T車100に搭載し、条件に応じてエンジンコントロールユニット(ECU)101からの指令で、アイドル回転速度を変更することにより、エンジンのロール振動若しくは回転変動を効果的に低減することにより、アイドル運転時の振動低減効果を高めたものである。
【0049】
すなわち、図9に示すように、A/TのセレクタがNレンジに入っており、エンジンのロール振動が問題となるときには、基本次数が(2)式で表わされる周波数f1になるようにアイドル回転速度Ni1を設定してロール振動を低減する一方、セレクタがDレンジに入っており、エンジンの回転変動が問題になるときには、基本次数が(3)式で表わされる周波数f2になるようにアイドル回転速度Ni2を設定して回転変動を低減するように、条件に応じてアイドル回転速度を切り換える。
【0050】
そして、本実施の形態では、オルタネータがエンジンの回転方向に対して同一方向に回転しており、この場合には、前記(2)、(3)式において、増速比ρ>0であるため、図10に示すように、回転変動の反共振の方が、ロール振動の反共振より低い周波数で起こる(f2<f1)ので、回転変動の反共振時の最大角変位θ11よりも小さい角変位θ10でバネが硬くなるように設定する。なお、ロール振動の反共振時の最大角変位を、θ12として示す。また、バネ特性を、θ10より大きい角変位領域でバネ定数が徐々に増大したり(図示1点鎖線参照)、θ10以下の領域も含めて全領域でバネ定数が徐々に増大したりする(図示2点鎖線参照)ように構成してもよい。
【0051】
すなわち、角変位θが1個の共振点に向かって増大する途中で、回転変動とロール振動が生じるので、上記のような非線形バネ特性に設定することで、回転変動の反共振周波数f2と、ロール振動の反共振周波数f1とを、f2<f1なる関係を満たして設定することができ、かつ、これら反共振周波数f1、f2に合わせてアイドル回転速度Ni1、Ni2を切り換えることで、それぞれのアイドル回転速度Ni1、Ni2で反共振を生じさせて、回転変動及びロール振動の両方に対して大きな振動低減効果を得ることができる。また、各反共振点前後で等価バネ定数が漸増する特性により、各反共振点を中心とした谷が広げられるので、各反共振による振動低減の効果領域も広げられることとなる。
【0052】
次に、第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は、図11に示すように、オルタネータ4を補機駆動ベルト7の背面に係合させて駆動することにより、エンジン1の回転方向と逆方向に回転させたものに、既述した実施の形態と同様に本発明に係る回転振動系を設けたものである。このようにオルタネータ4をエンジン1の回転方向と逆方向に回転させたものでは、前記ロール振動の反共振周波数f1を表わす(2)式において、増速比ρ<0となって周波数f1が減少し、反共振が共振点から離れるので、最大角変位を小さくすることができ、特にロール振動に対して大きな低減効果が得られる。
【0053】
また、オルタネータ4がエンジン1と逆方向に回転する場合、ロール振動の反共振の方が、回転変動の反共振より低い周波数で起こる(f1<f2)。そこで、図12、図13に示すように、該ロール振動の反共振時の最大角変位θ12よりも小さい角変位θ10でバネが硬くなるように設定し、かつ、該バネ特性により設定されるロール振動及び回転変動の各反共振周波数f1、f2に合わせてアイドル回転速度Ni1、Ni2を切り換えるようにしてもよい。
【0054】
このようにすれば、第2の実施の形態と同様に、それぞれのアイドル回転速度Ni1、Ni2で反共振を生じさせて、回転変動及びロール振動の両方に対して大きな振動低減効果を得ることができ、かつ、夫々の効果領域を広げることができる。
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0055】
本実施の形態では、図14に示すように、回転振動系に介装される弾性体として、オルタネータプーリ11の内周部12と外周部13との間に渦巻きバネ14を装着する。また、内周部12の外周面に外側に突出する複数のストッパ12aを設ける共に、外周部13の内周面に内側に突出する複数のストッパ13aを設けて、内周部12と外周部13との相対的な角変位を規制する。なお、外周部13側のストッパ13aの、内周部12側の突起12aが突き当たる各側面に、ゴム15を貼り付けてあり、該ゴム15によってストッパ12a,13a同士の衝突時の打音を緩和している。
【0056】
ここで、前記渦巻きバネ14単独では、角変位に対してほぼ線形なバネ特性を有するが、前記ストッパ12a,13aにより、所定の角変位以上での変位を拘束することにより、図15に示すような非線形バネ特性を持たせている。なお、ストッパ12a,13a当接後、前記ゴム14の弾性変形によって若干の角変位がある。
【0057】
ここで、図16に示すように、(内周部12と外周部13との間の)角変位は、渦巻きバネ14と同一のバネ定数を有し角変位も拘束されない完全な線形バネの場合、この回転振動系の共振付近で最大角変位θ1をとり、反共振時の角変位が、これより小さくθ2となることは既述したのと同様である。
そして、前記ストッパ12a,13aにより規制される角変位θ4を、反共振時の最大角変位θ2より、若干大きい値とする。
【0058】
このようにストッパで角変位を拘束して非線形バネ特性とした場合、前記ストッパで拘束される角変位θ4を反共振時の最大角変位θ2より小さい値に設定すると、反共振点でストッパ同士が突き当たってバネ定数が急激に変化するので、負荷の変動によって反共振周波数が大きく変化し、安定性が得られない。そこで、上記のように、θ4をθ2より大きく設定することにより、反共振は線形領域で発生することになるので、図17に示すように、安定した周波数で振動低減効果を得ることができる。また、それより高い回転速度領域では、バネ定数増大による非線形特性の効果によって、反共振の効果領域を広げながら、共振周波数を高回転側にシフトさせつつ共振の悪化も低減できる。
【0059】
次に、第5の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、上記第4の実施の形態で示したように回転振動系を構成したエンジンを、第2の実施の形態と同様に図8で示すようにA/T車に搭載し、条件に応じてアイドル回転速度を変更することによって、エンジンのロール振動若しくは回転変動を効果的に低減することにより、より大きなアイドル振動低減を図ったものである。
【0060】
ここで、オルタネータがエンジンと同一方向に回転するように装着されたもの(図1参照)では、回転変動の反共振の方がロール振動の反共振よりも低い周波数で起こるので、ロール振動の反共振時の最大角変位よりも大きい角変位で変位が拘束されるようにストッパを設定することにより、第2の実施の形態と同様に、ロール振動、回転変動共に安定して反共振の低減効果を得ることができ、反共振の効果領域を広げながら、共振の悪化を小さくすることができる。
【0061】
次に、第6の実施の形態について説明する。
これまでに示した各実施の形態では、オルタネータに回転振動系を構成する弾性体を設けたが、本実施の形態では、弾性体をエンジン回転軸であるクランクシャフトに結合されているクランクプーリに設ける。
すなわち、図18において、クランクプーリ21の、オルタネータを駆動するベルトが掛かるエンジンに対して内側の相対的に径の大きな外周部22と、径の小さな内周部23との間に、前記回転振動系の弾性体としてゴム層24を設けている。また、前記実施の形態と同様に、外周部22と内周部23とに相互に突き当たって角変位を規制するストッパ22a、23aを形成し、ストッパ22aに打音防止用のゴム29を貼り付ける。
【0062】
このようにしても、エンジン回転軸とオルタネータ回転軸との間に弾性体を設けていることには変わりないので、同様の反共振の効果が得られ、さらに、オルタネータ以外の補機についても、ゴム層24を介して駆動されるので、それらもマス(回転慣性質量体)に含まれ、該マスをより大きく採ることができる。
なお、エンジンに対して外側のクランクプーリ25も内周部26と外周部27とに2分割されているが、こちらは、クランクシャフトの捩じり共振を動吸振器として働くように、間のゴム層28のバネ定数、外周部27の慣性モーメントがチューニングされている。
【0063】
また、オルタネータは、図11に示すようにしてエンジンと逆方向に回転駆動させれば、特にロール振動に対して反共振の効果を拡大できる。
また、このエンジンを第2の実施の形態と同様に、A/T車に搭載し、条件に応じてアイドル回転速度を変更することによって、エンジンのロール振動及び回転変動を効果的に低減することにより、反共振の効果領域を広げながら、共振の悪化を小さくすることができる。
【0064】
次に、第7の実施の形態について説明する。
本実施の形態では、図19に示すように、第6の実施の形態において、ストッパによって規制する角変位を、正回転側と逆回転側とで、異なる値θ4+、θ4-に設定したものである。つまり、エンジンはアイドル運転時であっても、摩擦力分等の駆動力を発生しているため、その駆動トルク変動は、通常回転方向プラス側で大きく、回転方向マイナス側(逆側)は、それより小さくなるのである。
【0065】
そのため、図20に示すように、反共振時のゴム層24(弾性体)の変位もエンジン回転軸を正方向に回したときの角変位θ2+の方が大きく、逆方向に回したときの角変位θ2-は、それより小さくなる。そこで、それぞれの方向のストッパにより規制される角変位を、回転変動における反共振時のそれぞれの方向の最大角変位θ2+、θ2-より若干大きくなるように、異なる値θ4+、θ4-に設定することにより、より確実に両方向でストッパに当てることができ、反共振の効果領域をより広くすることができる。
【0066】
次に、第8の実施の形態について説明する。
本実施の形態では、前記第4の実施の形態と同様に、図21に示すように、オルタネータプーリ31の内周部32と外周部33との間に渦巻きバネ34を装着するが、該渦巻きバネ34が、内周部32に対してクリアランスCを持って組み込まれており、該クリアランスC内には、渦巻きバネ34のバネ剛性に対して十分柔らかいゴム35が挿入されている。これにより、このプーリ31は、角変位0付近では渦巻きバネ34が働かず、柔らかいゴム35のみがバネとして働くので、そのバネ定数は十分小さくなり、図22に示すような非線形バネ特性を有する。
【0067】
このように構成された回転振動系においても、渦巻きバネ34による回転バネと、クランクシャフトに取り付けられた主フライホイール及びロータのマスにより、共振が起こる。このとき、エンジンのロール振動及び回転変動に関して、前記共振に伴なって反共振が起こり、前記渦巻きバネ34を、クリアランスCを無くして取付けた場合の完全に線形なバネの場合の共振時及び反共振時の各周波数は、前記(1)〜(3)に示したとおりである。
【0068】
これに対して、本実施の形態のように角変位0付近にバネ定数が十分小さい領域(低バネ領域)を持つときには、図23に示すように、該低バネ領域が大きいほど、反共振の周波数は線形なバネ特性を持つものより低くなる。そこで、第1の実施の形態と同様に、アイドル回転速度の2次の回転速度に対する周波数(例えば600rpmのアイドル回転速度に対して20Hz)で反共振が起こるように、(2)又は(3)式に従って、前記渦巻きバネ34のバネ定数、オルタネータプーリ31の慣性モーメント、増速比ρ、クリアランスCの大きさを調整する。
【0069】
本実施の形態では、特に回転変動に対して低減効果が得られるように反共振周波数を設定してあり、その低減効果は、図24に示すようになる。このように、角変位0付近で十分柔らかいバネとなるような低バネ領域を持たせた場合、線形なバネ特性の場合と比較して共振での悪化が小さくなり、その領域も狭くすることができる一方、反共振の効果領域を広く取ることができる。更にエアコンプレッサ等の補機駆動のためにエンジンの負荷が増えた場合、それに伴なってエンジン回転速度を上げるが、非線形なバネ特性のために、バネ定数の増加に伴って共振、反共振を起こすエンジン回転速度も上昇するので、より広い運転領域で反共振の効果を得ることができる。
【0070】
また、クリアランスC内のゴム35により、渦巻きバネ34が内周部32に当たるときの打音を抑制できる。
また、渦巻きバネ34のゴム35内に埋設された直線部34aの先端34bを曲げ、内周部32の溝内に挿入している。これにより、前記直線部34aがその直線に沿った方向に動くことを規制することにより、該直線方向に動く時の摩擦損失によって反共振の効果が減少することを防止できる。
【0071】
次に、第9の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、前記第8の実施の形態における非線形バネ特性を持つバネを、クランクプーリに設ける。
すなわち、図25に示すように、第6の実施の形態と同様、オルタネータを駆動するベルトが掛かるエンジンに対して内側のクランクプーリ41において、相対的に径の大きな外周部42と、径の小さな内周部43との間に、前記回転振動系の弾性体としてゴム層44を設けるが、本実施の形態では、該ゴム層44を、外周側、内周側共に金属製のスリーブ45,46に溶着して取付ける。そして、内周側のスリーブ46は、プーリ41の内周部43に対して圧入して完全に固定される。これに対し、外周側のスリーブ45は、プーリ41の外周部42との間に、隙間を設けて回転自由とすると共に、外周側のスリーブ45を外側に突出したストッパ45aと、プーリ41の外周部42を内側に凹ませたストッパ42aとを設けて、これらストッパ45a、42a同士が突き当たるまでの角変位では自由に回転し、それ以上の角変位で前記ゴム層44がバネとして働くようになっている。また、外周部42のストッパ42aの両側面にスリーブ45側のストッパ45aと衝突したときの打音を抑制するため、ゴム47が貼り付けてある。以上の構成により、図26に示すような非線形なバネ特性が得られる。
【0072】
本実施の形態では、エンジンのロール振動を低減するように、アイドル回転の基本次周波数にロール振動の反共振がくるように、前記ゴム層44のバネ定数、オルタネータロータ部の慣性モーメント、増速比ρ、ストッパの許容回転角の大きさを調整する。
また、エンジンに対して外側のクランクプーリ48の内周部49と外周部50との間に、クランクシャフトの捩じり共振を動吸振器として働くゴム層51を設けることも第6の実施の形態と同様である。
【0073】
以上のように構成された本実施の形態は、第6の実施の形態で説明したのと同様の理由で、オルタネータに設けた場合と同様の反共振の効果が得られると共に、マス(慣性質量)を大きく取ることができる。
そして、前記非線形バネ特性を持たせたことにより、図27に示すように、エンジンのロール振動に対して前記第8の実施の形態と同様に、共振での悪化を小さくでき、かつ、共振領域を狭めることができると共に、反共振の効果領域も広く取ることができ、より広い運転領域で反共振の効果を得ることができる。
【0074】
最後に、第10の実施の形態について説明する。
本実施の形態では、図11に示した構成によって、オルタネータをエンジンの回転方向と逆方向に回転させたものに適用したものであり、クランクプーリに前記第9の実施の形態と同様な構成を設けて、エンジンロール振動に対する反共振の効果を拡大する。
【0075】
また、図28に示すように、第9の実施の形態と同様な構成に加えて、プーリ41の外周部42のゴム層44よりエンジン内側部分を凹ませてストッパ42bを設けると共に、該凹部に臨ませてプーリ41の内周部43を突出させてストッパ43bを設け、これらストッパ42b、43bによって、反共振時の最大角変位θ以上の変位を規制する。また、ストッパ43bの両側面にゴム43cを貼り付けて、衝突時の打音を抑制する。このバネ特性は、図29に示すような非線形特性を持つ。
【0076】
これにより、反共振より高い共振付近の回転速度では、前記ストッパ42b、43bによって、硬いバネとなるので、図30に示すように、共振点が高回転側にずれ、反共振の効果領域をさらに広げることができる。
さらに、プーリ41の外周部42に設けるストッパ42aを、一方の側が交換可能な部材42a'で形成し、この部材42a'を交換することにより、ストッパ42a、43aによるバネ機能を有しない(バネ定数0)変位角の範囲を変更することができる。これにより、アイドル回転速度が異なるため基本次数が異なるエンジン機種間においても、部品を共用化でき、コスト低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関を示し、(A)は概略正面図、(B)は概略側面図。
【図2】第1の実施の形態に係るオルタネータの一部断面図。
【図3】同じくオルタネータプーリ部分の縦断面図(A){図(B)のB−B断面図}と、該(A)図のA−A断面図(B)。
【図4】同上のオルタネータプーリ部分に組み込まれるコイルスプリングを示す側面図。
【図5】第1の実施の形態におけるエンジン回転数と回転角変位の関係を示す図。
【図6】同じく回転角変位に対するバネ力の特性示す図。
【図7】同じくエンジン回転数に対する効果代を示す図。
【図8】第2の実施の形態に係る装置を車両に搭載した状態を示す図。
【図9】同上実施の形態における反共振周波数とアイドル回転速度の関係を示す図。
【図10】同じく角変位とバネ力との関係を示す図。
【図11】第3の実施の形態に係る内燃機関の概略構成図。
【図12】同上実施の形態における反共振周波数とアイドル回転速度の関係を示す図。
【図13】同じく角変位とバネ力との関係を示す図。
【図14】第4の実施の形態に係るオルタネータプーリ部分の縦断面図(A){図(B)のB−B断面図}と、該(A)図のA−A断面図(B)と、該(A)図のC−C断面図(C)。
【図15】同じく角変位とバネ力との関係を示す図。
【図16】同じくエンジン回転数と回転角変位の関係を示す図。
【図17】同じくエンジン回転数に対する効果代を示す図。
【図18】第6の実施の形態に係るオルタネータプーリ部分の縦断面図(A){図(B),(C)のB−B断面図}と、該(A)図のA−A断面図(B)と、該(A)図のC−C断面図(C)。
【図19】第7の実施の形態に係るオルタネータプーリ部分の縦断面図(A){図(B),(C)のB−B断面図}と、該(A)図のA−A断面図(B)と、該(A)図のC−C断面図(C)。
【図20】同じくエンジン回転数と回転角変位の関係を示す図。
【図21】第8の実施の形態に係るオルタネータプーリ部分の縦断面図(A){図(B)のB−B断面図}と、該(A)図のA−A断面図(B)。
【図22】同じく角変位とバネ力との関係を示す図。
【図23】同じく低バネ領域の大きさの影響を示す図。
【図24】同じくエンジン回転数に対する効果代を示す図。
【図25】第9の実施の形態に係るオルタネータプーリ部分の縦断面図(A){図(B)のB−B断面図}と、該(A)図のA−A断面図(B)。
【図26】同じく角変位とバネ力との関係を示す図。
【図27】同じくエンジン回転数に対する効果代を示す図。
【図28】第10の実施の形態に係るオルタネータプーリ部分の縦断面図(A){図(B),(C)のB−B断面図}と、該(A)図のA−A断面図(B)と、該(A)図のC−C断面図(C)。
【図29】同じく角変位とバネ力との関係を示す図。
【図30】同じくエンジン回転数に対する効果代を示す図。
【符号の説明】
1 内燃機関
2 クランクシャフト
4 オルタネータ
6 オルタネータプーリ
6A 内周部
6B 外周部
6C コイルスプリング
11 オルタネータプーリ
12 内周部
12a ストッパ
13 外周部
13a ストッパ
14 渦巻きバネ
15 ゴム
21 クランクプーリ
22 外周部
22a ストッパ
23 内周部
23a ストッパ
24 ゴム層
29 ゴム
31 オルタネータプーリ
32 内周部
33 外周部
34 渦巻きバネ
35 ゴム
41 クランクプーリ
42 外周部
42a ストッパ
42a' ストッパ
42b ストッパ
43 内周部
43b ストッパ
43c ゴム
44 ゴム層
45a ストッパ
47 ゴム

Claims (20)

  1. 機関回転軸の回転駆動力を伝える駆動力伝達機構における駆動側と従動側の回転慣性質量体相互を、弾性体を介して連結して回転振動系を形成し、機関運転によって生じる所定周波数域の回転振動に対し、前記回転振動系に反共振を発生させて前記回転振動を低減するようにした内燃機関の振動低減装置であって、
    前記弾性体のバネ力が、前記駆動側と従動側の回転慣性質量体相互の相対的な回転角変位に対して非線形特性を有することを特徴とする内燃機関の振動低減装置。
  2. 前記反共振の周波数が、前記機関回転軸の所定回転速度における回転周波数を(自然数/2)倍した周波数のうちのいずれかの周波数と略一致するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の振動低減装置。
  3. 前記弾性体のバネ定数が、前記回転角変位の増加に対して増加する特性を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の振動低減装置。
  4. 共振点における最大回転角変位以下の回転角変位領域で、前記弾性体のバネ定数が、回転角変位の増加に対して増加することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の振動低減装置。
  5. 反共振点における最大回転角変位以下の回転角変位領域で、前記弾性体のバネ定数が、回転角変位の増加に対して増加することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の振動低減装置。
  6. 前記回転振動系が機関運転によって生じる周波数が異なる種類の回転振動のうち、低周波数側の振動に対する反共振点における最大回転角変位以下の回転角変位領域で、前記弾性体のバネ定数が、回転角変位の増加に対して増加することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の振動低減装置。
  7. 前記弾性体は、回転角変位の増大に応じてバネ定数が段階的に増加する特性を有していることを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれか1つに記載の内燃機関の振動低減装置。
  8. 前記弾性体は、コイル間隔が異なることによってバネ定数が異なる複数のスプリングを直列に繋げて一本化したコイルスプリングによって構成されていることを特徴とする請求項7に記載の内燃機関の振動低減装置。
  9. 前記回転角変位が所定値以下の領域では、前記弾性体の回転角変位に対するバネ力の特性が略線形であると共に、前記所定値を超える回転角変位の増大を規制するストッパが設けられていることを特徴とする請求項7に記載の内燃機関の振動低減装置。
  10. 前記回転振動系が機関運転によって生じる周波数が異なる種類の回転振動のうち、高周波数側の振動に対する反共振点での最大回転角変位は、前記所定値より小さいことを特徴とする請求項9に記載の内燃機関の振動低減装置。
  11. 前記弾性体のバネ定数が、機関回転方向とその逆方向のそれぞれに対して回転角変位の増大に応じて最初に段階的に増加するときの回転角変位が、前記それぞれの回転方向における共振点若しくは反共振点の最大回転角変位に応じて異なる値に設定されていることを特徴とする請求項7〜請求項10のいずれか1つに記載の内燃機関の振動低減装置。
  12. 前記ストッパの回転角変位の増大を規制する接触面に、弾性体を装着したことを特徴とする請求項9〜請求項11のいずれか1つに記載の内燃機関の振動低減装置。
  13. 前記弾性体のバネ定数は、前記回転角変位が所定値以下の領域では略0若しくは前記回転角変位が所定値を超える領域でのバネ定数に比較して十分小さいことを特徴とする請求項7に記載の内燃機関の振動低減装置。
  14. 前記弾性体の接続部の前記駆動側と従動側の回転慣性質量体の少なくとも一方に対する接続端部が、該端部と接続する部位に対してクリアランスを有して組み込まれており、前記回転角変位が前記クリアランス以下のときに弾性体のバネ定数が略0若しくは前記回転角変位が前記クリアランスを超える領域でのバネ定数に比較して十分小さいことを特徴とする請求項13に記載の内燃機関の振動低減装置。
  15. 前記弾性体は、前記駆動側と従動側の回転慣性質量体の少なくとも一方に対する接続端部を、該端部に接続する部位に対して回転自由に支持すると共に、該接続端部と該端部に接続する部位との間にストッパを形成し、該ストッパ間によって前記クリアランスを設けたことを特徴とする請求項14に記載の内燃機関の振動低減装置。
  16. 前記弾性体は、線材を渦巻き状若しくはコイル状に巻くことにより形成され、該線材の端部が、前記駆動側と従動側の回転慣性質量体の一方に、クリアランスを有して係合することを特徴とする請求項14に記載の内燃機関の振動低減装置。
  17. 前記線材で形成された弾性体の端部が略直線状に形成されて、前記駆動側と従動側の回転慣性質量体の一方に形成された溝内に、クリアランスを有して係合すると共に、該端部の前記直線状の直線に沿った方向の動きが規制されていることを特徴とする請求項16に記載の内燃機関の振動低減装置。
  18. 前記クリアランスの少なくとも一部に、前記回転角変位が前記クリアランスを超える領域でのバネ定数に比較して十分小さいバネ定数を有する弾性体を介在させたことを特徴とする請求項14〜請求項17のいずれか1つに記載の内燃機関の振動低減装置。
  19. 前記クリアランスを可変にする機構を有することを特徴とする請求項14〜請求項17のいずれか1つに記載の内燃機関の振動低減装置。
  20. 前記弾性体のバネ定数が、回転角変位に対して段階的に変化する変曲点を複数有しており、該変曲点の1つが、機関運転によって生じる周波数が異なる種類の回転振動の1つの反共振点の最大回転角付近にあることを特徴とする請求項13〜請求項19のいずれか1つに記載の内燃機関の振動低減装置。
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