【発明の詳細な説明】
熱可塑性の生分解性ポリエステル、その製造方法
およびそれから製造した物品
本発明は、熱可塑性の生分解性ポリエステルの製造方法であって、請求項1に
記載された方法に関する。
この方法によれば、まず比較的低分子量のポリエステルプレポリマーをヒドロ
キシ酸モノマーから調製し、次いでこのプレポリマーをその末端基と反応するモ
ノマーと共重合させ、高分子量を有するポリマーを調製する。
また、本発明は、請求項21に記載されたコポリエステル、および請求項39に記
載されたポリエステル[これは、コポリマー製造のための前駆体(プレポリマー)
として用いることができる]に関する。
生分解性ポリマーには、発泡性梱包、紙被覆および堆肥性廃棄容器などの多く
の応用分野があり、堆肥性が材料の競争を大きく増加させている。しかし、従来
の生分解性ポリマーを容器および他の大きな用途に使用することは、ポリマーが
非常に高価であることにより限定されている。
生分解性プラスチックの1つの具体的な群は脂肪族ポリエステルからなり、こ
れらは加水分解が可能なエステル結合の存在により生物学的に分解されうる。一
般に、これらポリエステルは、ヒドロキシ酸または二酸とジオールから製造され
る。ポリマーの機械的性質が十分に良好であるためには、その分子量は比較的高
いものでなければならず、この高分子量を達成する最も普通の方法は、開環ラク
トン法によってポリエステルを製造することである。
乳酸は、生分解性の大きなポリマーのための可能性ある粗原料である。乳酸か
ら中間のラクチド段階を経て開環機構によってポリラクチド(PLA)を製造する
と、高分子量のポリマーが得られるが、これはいくつかの中間段階および非常に
純粋な供給原料を必要とし、乳酸からのポリマーの全収率は非常に低い。
構造的にはPLAは直鎖のポリエステルであり、長鎖の分岐は起こらない。直
鎖ポリエステル溶融物のレオロジー特性は、押出法を用いるほとんどの製造法、
例えばブロー成形、フィルムブローおよび紙被覆において、これら溶融物の使用
の障害となる。しかし、溶融物の高い強度および弾性を必要とするこれらの加工
法は、梱包工業の最も重要な製造方法である。
通常、脂肪族ジオールと二酸またはヒドロキシ酸の線状縮重合は、多くとも約
10,000g/モルの数平均分子量を与え、技術的および経済的に妥当な分子量
は約2,000〜5,000g/モルであることが多い。
乳酸モノマーから溶融加工に適した高分子量ポリウレタンを製造することを可
能にする方法が当分野で既知である。この方法はフィンランド特許出願No.9246
99に開示されており、初めに乳酸を重合させて比較的低分子量のオリゴマーを生
成させ、次いでこのオリゴマーをイソシアネートと共重合させて高分子量ポリウ
レタンを生成させることにより、2段階でポリマーを調製することからなる。
本発明の目的は、溶融加工が可能なヒドロキシ酸モノマーを基本とするポリマ
ーであって、高い分子量を持ち、所望の形状に加工するのが容易なポリマーを製
造する別の方法を提供することである。本発明の別の目的は、全てまたは実際的
には全ての加水分解可能な結合がエステル結合からなり、どのような窒素官能基
をも実質的に含有しない生分解性ポリマーを提供することである。
本発明は、乳酸もしくは別のヒドロキシ酸または二酸とジオールを線状ポリ縮
合反応にかけ、次いで、このようにして得たプレポリマーの分子量を、ジエポキ
シ化合物の助けにより、ポリマーの鎖末端の化学的カップリングによって高める
という考えに基づくものである。この結果、プレポリマーよりも明らかに高い分
子量を有する熱可塑性の生分解性コポリエステルが得られる。
本発明の方法は実質的に2段階からなり、第1段階は、ヒドロキシ酸を重合さ
せてラクチドの生成を少なく保ちながらカルボン酸末端の線状ポリエステルを相
応の時間内に調製することによりプレポリマーを製造することからなる。この方
法の主要なパラメーターは、重合温度、温度上昇プロフィール、縮合水の除去方
法、コモノマーおよび触媒である。本方法の第2段階においては、1,4-ブタン
ジオール-ジグリシジルエーテルなどのジエポキシ化合物を用いて、カルボン酸
末端プレポリマーの分子量を高めることによって高分子量ポリエステルを製造す
る。この第2段階において、重合温度、温度勾配、使用するジエポキシドおよび
その量(エポキシと酸のモル比)、重合のための触媒および技術的手段(溶融重合)
が重要である。通常、ジエポキシとプレポリマー末端のカルボン酸基の間のモル
比は約1:1である。
より具体的には、本発明の方法は主として請求項1の特徴部分に記載したこと
により特徴付けられる。
本発明の溶融加工可能なコポリエステルは、ポリエステルに由来する構造単位
とジエポキシに由来する構造単位を含有し、このポリエステルは少なくとも実質
的にはヒドロキシ酸に由来する反復単位からなり、この単位は1または数種のモ
ノマーに由来し、構造単位間の結合は少なくとも大部分がエステル結合である。
このポリマーの数平均分子量Mnは少なくとも10,000g/モルであり、その
重量平均分子量Mwは20,000g/モルを越え、Mw/Mn比で表されるその分
子量分布は2を越える。好ましくは、数平均分子量は10,000〜200,00
0g/モル、特に、約15,000〜100,000であり、重量平均分子量は2
0,000〜1,000,000、特に、約30,000〜600,000であり、
その分子量分布は2〜20、好ましくは3〜12である。
即ち、より具体的には、本発明のコポリエステルは、請求項21の特徴部分に記
載したことにより特徴付けられる。
溶融加工可能なコポリエステルの製造に使用するポリエステル-プレポリマー
は、ヒドロキシ酸(例えば、α-ヒドロキシ酸)に由来する構造単位を含有し、そ
して有機二酸または環式酸無水物に由来する構造単位を含有していてよく、これ
らは、ポリエステルの末端基が少なくとも実質的にカルボン酸基からなるように
互いに結合している。このことは、全てまたは少なくともほとんど全ての末端ヒ
ドロキシル基がカルボン酸に変換されていることを意味する。このポリエステル
の数平均分子量は、500〜20,000、好ましくは約1,000〜8,000g
/モルの範囲内にあり、そのラクトン濃度は10重量%未満であり、遊離ヒドロ
キシ酸の量は10重量%未満である。
より具体的には、本発明のプレポリマーは、請求項39の特徴部分に記載したこ
とにより特徴付けられる。
上記のポリエステル-プレポリマーをジエポキシ化合物と反応させることによ
って、以下の極めて有利な性質を有する新規なコポリエステルが得られる:
・このポリマーは生分解性(即ち、通常は微生物の作用下に生物学的環境におい
て分解する)であり、堆肥化することができる;
・このポリマーは熱可塑的に加工することができ、その機械的性質は多くの実用
に対して十分に良好である;以下のポリマー使用例を挙げることができる:
・・射出成形物品;
・・熱成形およびブロー成形したパッケージおよびボトル;
・・ポリマーで被覆した紙または厚紙から製造されるサック、バッグおよびフィ
ルム、ならびに、紙または厚紙の押出被覆のためのポリマーの使用;
・・ブロー成形または平面フィルムから製造されるパッケージ、バッグおよびサ
ック;
・・発泡体および発泡体から製造される物品;
・・繊維および不織物品;
・・例えば制御されて放出される肥料または医薬の被覆物またはマトリックスと
してのポリマーの使用;ならびに
・・例えば接着剤またはバインダーにおける分散物の形態でのポリマーの使用;
・ヒドロキシ酸がコポリエステルの総収量の約95モル%であるので、粗原料コ
ストがヒドロキシ酸の価格に非常に近似している。
本発明によって得ることができる別の利点は、本方法が、コポリエステルの分
子量分布、長鎖の分岐および架橋を調節することを可能にし、これによってポリ
マー溶融物の制御されたレオロジー特性が得られることである。
本発明のコポリエステルのモノマーまたはラクトン濃度は非常に低い(通常は
3モル%未満であり、2モル%未満であることもある)。これは、最後のカップ
リング反応が、かなりの量の未反応供給原料を残すエステル化反応のような平衡
反応ではなく、遊離の官能基を消費する反応であることによる。
重合方法は比較的単純であり、既存のポリエステル法を容易に利用することが
できる。この方法によって、脂肪族コポリエステルだけでなく芳香族コポリエス
テルをも製造することができる。1つの特に好ましい態様によれば、芳香族ヒド
ロキシ酸モノマーを重合させるか、またはこれらを脂肪族ヒドロキシ酸モノマー
と共重合させてポリエステル-プレポリマーを製造する。マンデル酸またはp-ヒ
ドロキシ安息香酸などの芳香族モノマーの使用は、ポリマー鎖を堅くし、さらに
ポリマーのガラス転移温度(Tg)を高める。さらに、生分解性ポリマーへの芳香
族化合物の導入が、ポリマーの加水分解性に有害であることはどのような意味に
おいても見い出されていない。
次に、以下の詳細な説明およびいくつかの実施例により、本発明をさらに明瞭
にする。
プレポリマーの製造
出発化合物の量に依存して、ポリエステル-プレポリマーは、通常、80〜9
9.9%のヒドロキシ酸モノマーおよび20〜0.1%の二酸モノマーまたは環式
酸無水物からなる。所望であれば、このカルボン酸末端のポリエステル-プレポ
リマーを、ヒドロキシ末端のポリエステル-プレポリマーから製造することがで
きる。この状況は、同一のプレポリマーのバッチを、コポリエステルとポリウレ
タンの両方の製造に使用しようとするときに生じるであろう。ヒドロキシ末端の
ポリエステルを製造するためには、通常、本プレポリマー中のジオール量が10
〜0%となるようにジオールを用いる。上記の%による量は、ポリマーの全モル
量から計算した。
本発明によれば、プレポリマーの製造に用いるヒドロキシ酸モノマーは、通常
、α-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸およびラクトンから選択される。特に好ま
しいのは、脂肪族または芳香族α-ヒドロキシ酸モノマー、例えばL-乳酸、D-
乳酸およびこれらの混合物(例えば、ラセミ体のD,L-乳酸)、グリコール酸、L
-またはD-マンデル酸、α-ヒドロキシ-イソブタン酸、ラクチドまたはこれらの
混合物であり、ここでラクトンの濃度は多くともポリマー量の10%である。ま
た、このヒドロキシ酸モノマーは多官能であることもできる。これらのモノマ
ーとして、マレイン酸が例示される。
本ポリエステル-プレポリマーを乳酸モノマーから製造するのが好ましく、所
望により、これを他の脂肪族または芳香族ヒドロキシ酸モノマーと共重合させる
ことができる。乳酸を例えばマンデル酸と共重合させることによって、プレポリ
マー鎖のガラス転移温度を高めることができる。ヒドロキシ酸モノマーと芳香族
化合物を共重合させて芳香族構造が主鎖の一部を構成するようにして、ポリエス
テル鎖の堅さを高めることができる。適当な化合物の例には、芳香族ジオール、
芳香族二酸およびヒドロキシ酸、例えばヒドロキノン、テレフタル酸およびp-
ヒドロキシ安息香酸が含まれる。
ヒドロキシ酸モノマーは市販されている生成物であり、容易に入手することが
できる。即ち、これは必ずしも純粋でなくてもよく、部分的にポリマーに結合し
てその一部を形成する反応性の糖残基を含有していていもよい。
プレポリマーの製造、即ち乳酸の縮重合は、エステル化反応に適する任意の装
置において行うことができる。1つの好ましい態様によれば、ポリエステル化を
溶融相における塊状重合として行い、これにより、撹拌しながらポリマー溶融物
中に乾燥不活性ガスを導入することによって、縮合生成物として生成する水を除
去することができる。また、減圧を用いることによって水の除去を増強すること
ができる(反応の圧力を徐々に低下させる)。
後記の実施例においては、水の連続的な除去が可能な「ロタベーパー(Rotavap
or)」型の装置を用いて実験室スケールでポリエステルを調製した。
ポリエステル化を触媒の存在下に行うのが好ましい。1つの特に好ましい態様
によれば、使用する触媒は通常のポリエステル化触媒である。この種の触媒は、
例えばスズまたはチタンのアルキルまたはアルコキシ化合物、例えばSn(II)オ
クトエートである。
ポリエステル化生成物の分子量の増大速度は重合温度に依存する。重合温度が
210℃を越えると、ポリマー鎖の分解が重合温度を制限する。また、有害な副
生成物、即ちラクチドの生成は、220℃を越える温度で大きく増加する。上記
の理由から、重合温度は、5〜50℃/時の速度で140〜200℃の温度範囲
内を、および0〜30℃/時の速度で200〜230℃の温度範囲内を徐々に上
昇させるのが好ましい。
1つの好ましい態様によれば、最初のポリエステル化温度は約160℃であり
、次いでこの温度を徐々に210℃まで上昇させる。これに対応して圧力を22
0〜40mバールの範囲内で低下させ、窒素の助けを借りて縮合生成物を連続的
に除去する。上記の標準的な方法により、約2,000〜8,000g/モル(例え
ば、約6,000g/モル)の数平均分子量および約1.7の多分散性を有するポリ
エステル-プレポリマーが得られる。
ポリエステル化の最終段階において、所望により、反応混合物の圧力を低下さ
せて低分子量分画を留去することにより、該分画を除去することができる。
プレポリマーの鎖末端の官能化
ポリエステルのカップリング試薬として使用するジエポキシは、カルボキシル
基と最も良く反応する。通常、ヒドロキシ酸が重合したときには、鎖の一方の末
端にカルボキシル基が生成し、他方にはヒドロキシル基が生成する。このような
プレポリマーとジエポキシとのカップリングは困難であることがわかっており、
過剰の架橋が問題となる。本発明によれば、この問題は、ポリマー鎖の両末端に
カルボキシ基が存在するプレポリマーを製造することによって解決された。
本発明のカルボン酸末端のプレポリマーは、自体既知の方法によって得ること
ができる。しかし、このカルボキシル末端は、出発化合物として0.1〜10モ
ル%、好ましくは約0.5〜5モル%の二酸を加えることによって達成するのが
好ましい。酸末端化の別の好ましい方法は、環式無水物の助けを借りてプレポリ
マーのヒドロキシル末端基をカルボン酸に変換することである。使用する二酸は
脂肪族または芳香族の酸であってよく、例えばコハク酸、アジピン酸、フタル酸
またはテレフタル酸であってよい。環式酸無水物モノマーの例は、無水コハク酸
、無水グルタル酸および無水フタル酸である。
カルボキシ末端化中の共重合すべきモノマーのカルボキシル基とヒドロキシル
基のモル比は、1を越えるように維持する。
プレポリマーの特性化
得られるプレポリマーは、脆い無色かつ半透明の無定形物質である。官能化ポ
リエステルの分子量は、未官能化ポリエステルの分子量よりも低い。このプレポ
リマーは約40℃に明瞭なガラス転移点(Tg)を持ち、これをDSCグラフから
観察することができる。結晶性は認めることができない。ポリL-ラクチドと比
較すると、本発明のプレポリマーは、対応する分子量のPLLAのガラス転移点
Tgと同程度のTgを有するが、このポリエステルは、少なくとも重合直後以外で
は、PLLAには普通であるどのような結晶性をも含有しない。
乳酸を縮重合させると副反応によってL-ラクチドが生成する。本発明の重合
法に関連して、供給原料の重量を基準に1%未満のラクチドが縮合生成物の収集
容器中で昇華するが、1H-NMR分析は生成物が常に少量のL-ラクチドを含有
することを示す。しかし、通常はこのラクチド濃度は10重量%より低く(例え
ば、約3〜5%)、同様に遊離乳酸の濃度は10重量%未満である。このポリエ
ステルは、0〜約0.5重量%のポリエステル化触媒を含有する。
他に具体的に示すことがなければ、プレポリマーの分子量は、参照としてポリ
スチレン標準を用いてGPC法によって測定した。また、実施例の一部において
は、末端基の濃度を測定するために、プレポリマーの分子量を13C-NMR法に
よって測定した。
ポリエステル化および官能化の条件を適切に調節することによって、プレポリ
マーの数平均分子量を500〜20,000に、好ましくは約1,000〜8,0
00g/モルに合わせることができる。通常、縮重合によって製造されるポリエ
ステル-プレポリマーの分子量は約2,000〜5,000g/モルである。長鎖分
岐のポリエステルを得るためには、低い分子量が有利である。
コポリエステルの製造
鎖末端の官能基(カルボキシル基)と反応するカップリング試薬を用いて、プレ
ポリマーのポリマー鎖を互いに結合させることによってコポリエステルを製造す
る。本発明によれば、比較的短い重合時間でCOOH末端のプレポリマーとジエ
ポキシ化合物から高分子量を有する生分解性コポリエステルを製造することがで
きる。カップリング反応(以下においては、「共重合」と言うこともある)は、塊
状重合として溶融相で行うのが好ましい。使用するジエポキシ化合物には、好ま
しくは脂肪族または環式脂肪族のジエポキシ化合物、例えば、グリシジルエーテ
ルが含まれる。具体的な例には、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルお
よび3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサン カル
ボキシレート(CHD)が含まれる。
この反応は触媒の存在下に行うことができる。好ましい触媒には、アルカリ触
媒、例えば第三脂肪族または芳香族アミン、アンモニウム塩、アルカリ金属水酸
化物、アルカリ土類金属水酸化物およびアルカリ金属酢酸塩が含まれる。特に好
ましい触媒には、ベンジルジメチルアミン、ドデシルジメチルアミン、トリブチ
ルアミン、KOHおよびNaAcが含まれる。アルカリ触媒を使用することによっ
て、ヒドロキシル基とエポキシ基の間の反応を減少させながら、同時に主反応で
あるカルボン酸基とエポキシ基の間の反応を高めることができる。カップリング
試薬としてジエポキシを使用するときには、2つのエステルの間の鎖中に内部ヒ
ドロキシ基が生成し、これが反応混合物中のジエポキシ化合物と反応することが
でき、鎖の分岐および架橋を生じることができる。
触媒の量は、反応混合物の全重量から計算して0.01〜10%、好ましくは
多くとも2%である。
共重合中のジエポキシのエポキシ基とポリエステルのカルボキシル基の間のモ
ル比は、通常は0.5〜1.5、例えば0.7〜1.2であり、好ましくは約1であ
る。また、少なくとも部分的に架橋した生成物を得ようとするときには、ジエポ
キシとポリエステルのカルボキシル基の間のモル比は1を越えることができる。
さらに、重合を十分長く続けることによって、重合を十分高い温度で行うことに
よって、および酸触媒を使用することによって、架橋した生成物を得ることがで
きる。
この共重合は約110〜220℃、好ましくは130〜200℃の温度で行い
、得られるコポリエステルが少なくとも実質的に遊離のエポキシ基を含まなくな
るまで共重合を続ける。得られるコポリエステルの分子量分布(Mw/Mn比とし
て
表される)が少なくとも2になるまで共重合を続けるのが好ましい。
実験室スケールでは、この共重合を、アルゴン雰囲気下に300mlのガラス製
反応器において塊状重合として行った。ミキサーは粘稠物質に適した羽根ミキサ
ーからなり、使用したカップリング温度は150℃および180℃であった。カ
ップリング反応の進行を、15分毎に重合混合物から試料を採取することによっ
てモニターした。反応時間は1分間〜100時間、好ましくは約1〜50時間で
あった。
ポリマーの性質
カップリングしたポリマーの数平均分子量は、10,000〜200,000g
/モル、通常は約20,000〜40,000である。乳酸とグリコール酸から製
造したポリマーの分子量分布は通常は広いが、これらモノマーを他のヒドロキシ
酸、例えばマンデル酸、α-ヒドロキシイソブタン酸またはマレイン酸と共重合
させることによって狭い分子量分布を得ることができる。
長鎖の分岐および分子量分布の広範囲化、特に長いポリマー鎖の割合の増加は
、一般にポリマーの溶融加工特性に影響を与え、溶融物の弾性および強度が増加
することになる。これらの性質は、特に、押出法を利用する加工法を用いるとき
(例えば、紙被覆およびフィルム製造に関連して)には有利である。
遊離のヒドロキシ酸モノマーおよびラクチドの濃度は、ポリマー重量の多くと
も3%である。
このポリマーを溶融加工することができるが、ポリマー溶融物の粘度は、20
0L/秒の剪断速度および200℃の温度で毛管レオメーターで測定したときに
、10〜5,000Pa・s、好ましくは50〜2,000Pa・sである。
プレポリマーおよび最終生成物として得られるポリマーは両方とも無定形であ
り、これはこれらの最も高い使用温度が約50℃であることを意味する。
生分解の1つの要件は、ポリマーが加水分解によって分解されうることである
。広く受入れられているのは、水性環境における加水分解が、特に乳酸から製造
されたポリマーの場合の主要な分解機構であるという考えである。加水分解は生
分解の前段工程であり、これにより、微生物が低分子量加水分解生成物を分解す
る
のを容易にすることができる。
後記の実施例(実施例26を参照)が示すように、本発明のコポリエステルは加
水分解によって分解することができ、その重量平均分子量を、最大100日以内
にpH7および37℃の加水分解温度で半分に低下させる。
また、カップリング重合の生成物の機械的特性を測定した。これらの結果を実
施例1においてさらに詳細に説明する。これに関連して、ポリマーの引張強度お
よび堅さが非常に良好であることに注意すれば十分である。
コポリエステルの混合、充填および強化
この新規なコポリエステルを他の溶融加工が可能なポリマー(例えば、熱可塑
性物質)と溶融混合することができ、これにより、混合割合に依存して新規コポ
リエステルまたは他のポリマーの性質のどちらかが修飾される。本コポリエステ
ルと溶融混合しうるポリマーの例として、ポリエステルおよびポリオレフィンを
挙げることができるが、これらは例えばポリマー混合物の生分解性に影響を与え
るであろう。本コポリエステルの耐熱性を、例えば、ポリ(エチレンテレフタレ
ート)(PET)と溶融混合して改善することができる。
また、この新規なポリエステルを充填剤または強化剤を用いて充填または強化
することができる。これらは、例えば、コポリエステルの耐熱性を高めること、
機械的性質を改善すること、またはそのコストを低下させることを可能にする。
適当な充填剤は、例えば白亜またはタルクである。適当な強化剤は、例えばセル
ロース繊維または麻である。
コポリエステルの応用
ポリマーの長鎖の分岐のゆえに、この新規なポリエステルは、紙および厚紙の
被覆(現在、これらは技術的理由により長鎖分岐を含むLD-ポリエチレンから調
製されている)に特に適している。
この新規なポリマーは広い応用範囲を有している。即ち、これらは射出成形物
品ならびに熱成形およびブロー成形パッケージ、バッグ、サックおよびボトルの
製造に使用することができる。このポリマーを、紙および厚紙から製造したサッ
ク、バッグおよびフィルムの被覆として使用することができる。これらをブロー
成形または平面フィルムの形状にすることができ、これをパッケージ、バッグお
よびサックの製造に利用することができる。また、これらポリマーを、繊維およ
び織物(不織製品)の製造に使用することができる。例えばパッケージ充填に適す
る発泡プラスチック製品、気泡性プラスチックおよび発泡体をこれらから製造す
ることができる。最後に、これらは、制御されて放出される肥料、殺虫剤、およ
び医薬のための被覆またはマトリックスとして適している。
上記の全ての応用に対して、新規コポリエステルの独特の性質(生分解性と良
好な機械的性質の組合せを含む)を利用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
酸末端プレポリマーの製造に関する実施例
実施例1 重合開始時に環式無水物を添加することによって化学量論的に過剰
のカルボキシル基を用いることによる酸末端ポリ(乳酸)プレポリマーの製造
反応器として、2Lの「ロタベーパー」型回転エバポレーターを用いた。L-
乳酸(450g)、無水コハク酸(10.0g)およびスズ(II)オクトエート(0.25g
)をこの反応器に入れた。乾燥窒素を反応混合物の液体表面の下に供給し、この
反応器を230mバールの絶対圧まで排気した。この反応容器を160℃の温度
の油浴中に部分的に浸漬し、100rpmの速度で回転を開始することによって反
応混合物を混合した。油浴の温度を200℃の温度まで20℃/時の速度で、さ
らに210℃の温度まで5℃/時の速度で徐々に上昇させた。次いで、210℃
の温度の油浴中でさらに20時間重合を続けた(総重合時間は24時間であった)
。重合の1時間後に圧力を170mバールまで低下させ、次いで、1時間間隔で
130mバール、100mバール、80mバール、60mバール、50mバールおよ
び40mバールまで低下させた。重合の最後には、圧力は40mバールであった。
全重合中に、乾燥窒素を反応混合物の表面下から吹き込んだ。重合中に生成した
縮合水は、その生成に伴って回収した。
得られたポリマーの分子量をGPC装置(ゲル透過クロマトグラフィー)によっ
て分析し、ポリスチレン標準と比較して数平均分子量を5,990g/モルと測定
した。多分散性は1.9であり、酸価は30であった。13C-NMR分析は、ポリ
マー鎖の末端基のほとんど全て(90%以上)がカルボキシ基であり、このポリマ
ーが3.6重量%のL-ラクチドおよび1.3重量%のL-乳酸を含有することを示
した。DSC-分析(示差スキャニング熱量計)は、このポリマーのガラス転移温
度が44.4℃であり、結晶融解ピークが認められない(これは、このポリマーが
完全に無定形であることを意味する)ことを示した。
実施例2 重合開始時に環式酸無水物を添加することによって化学量論的に過
剰のカルボン酸基を用いることによる酸末端ポリ(乳酸)プレポリマーの製造
実施例1と同様に重合を行ったが、重合時間は全体で16時間であった。
得られたポリマーの分子量をGPCによって分析し、ポリスチレン標準と比較
して数平均分子量が4,500g/モルであることがわかった。多分散性は1.8
9であり、酸価は33であった。13C-NMR分析および酸価の滴定は、ポリマ
ー鎖の末端基の大部分がカルボン酸基であり、このポリマーが4.2モル%のラ
クチドおよび2.0モル%の乳酸を含有することを示した。DSC-分析は、この
ポリマーのガラス転移温度が45.1℃であり、このポリマーが完全に無定形で
あることを示した。
実施例3 重合開始時に脂肪族二酸を添加することによって化学量論的に過剰
のカルボン酸基を用いることによる酸末端ポリ(乳酸)プレポリマーの製造
実施例1と同様に重合を行ったが、無水コハク酸の代わりにアジピン酸(14.
6g;2モル%)を用い、重合時間は全体で10時間であった。
得られたポリマーの分子量をGPCによって分析し、ポリスチレン標準と比較
して数平均分子量が2,950g/モルであることがわかった。多分散性は1.9
8であった。13C-NMR分析および酸価の滴定は、ポリマー鎖の末端基の大部
分がカルボン酸基であり、このポリマーが3.9モル%のラクチドおよび0.9モ
ル%の乳酸を含有することを示した。DSC-分析は、このポリマーのガラス転
移温度が39.9℃であり、このポリマーが完全に無定形であることを示した。
実施例4 重合開始時に脂肪族二酸を添加することによって化学量論的に過剰
のカルボン酸基を用いることによる比較的低分子量の酸末端ポリ(乳酸)プレポリ
マーの製造
実施例2と同様に重合を行ったが、アジピン酸を29.2g(4モル%)の量で用
い、重合時間は全体で13時間であった。
得られたポリマーの分子量をGPCによって分析し、ポリスチレン標準と比較
して数平均分子量が1,530g/モルであることがわかった。多分散性は1.8
4であり、酸価は75であった。13C-NMR分析および酸価の滴定は、ポリマ
ー鎖の末端基の大部分がカルボン酸基であり、このポリマーが3.8モル%のラ
クチドおよび1モル%未満の乳酸を含有することを示した。DSC-分析は、こ
のポリマーのガラス転移温度が34.8℃であり、このポリマーが完全に無定形
であることを示した。
実施例5 環式酸無水物を用いてプレポリマーのヒドロキシル末端基をカルボ
ン酸に変換することによる酸末端プレポリマーの製造
実施例1の記載と同様にL-乳酸を重合させたが、無水コハク酸は添加せず、
重合時間は全体で10時間であった。得られたポリマーの分子量をGPCによっ
て分析し、ポリスチレン標準と比較して数平均分子量が5,300g/モルである
ことがわかった。多分散性は2.1であり、酸価は23であった。13C-NMR分
析および酸価の滴定は、ポリマー鎖の末端基が1:1のヒドロキシル基およびカ
ルボキシル基であることを示した。
次の段階で、無水コハク酸(10.9g)および触媒としてベンジルジメチルアミ
ン(0.3g)を溶融ポリマー(300g)に加えた。この混合物を150℃で2時間
反応させた。無水コハク酸とOH末端基の間のモル比は1:1と概算した。
無水物添加後に得られたポリマーの分子量をGPCによって分析し、ポリスチ
レン標準と比較して数平均分子量が4,400g/モルであることがわかった。多
分散性は2.5であり、酸価は40であった。13C-NMR分析および酸価の滴定
は、ポリマー鎖の末端基の大部分がカルボキシル基であり、このポリマーが2.
0モル%のラクチドおよび1モル%未満の乳酸を含有することを示した。DSC
-分析は、このポリマーのガラス転移温度が46.7℃であり、このポリマーが完
全に無定形であることを示した。
実施例6 触媒として1-メチルイミダゾールを用い、環式酸無水物を用いて
ヒドロキシル末端プレポリマーのヒドロキシル末端基をカルボン酸に変換するこ
とによる酸末端プレポリマーの製造
実施例1の記載と同様にL-乳酸を重合させたが、無水コハク酸の代わりに1,
4-ブタンジオール(9.0g)を反応混合物に加え、重合時間は全体で10時間で
あった。得られたポリマーの分子量をGPCによって分析し、ポリスチレン標準
と比較して数平均分子量が5,200g/モルであることがわかった。多分散性は
1.9であった。13C-NMR分析および酸価の滴定は、このポリマーが4.0モ
ル%のラクチドおよび4.5モル%の乳酸を含有することを示した。
次の段階で、無水コハク酸(2.0g)および触媒として1-メチルイミダゾール(
0.12g)を溶融ポリマー(40g)に加えた。この混合物を150℃で1時間反応
させた。無水コハク酸とOH末端基の間のモル比は1:1と概算した。
無水物添加後に得られたポリマーの分子量をGPCによって分析し、ポリスチ
レン標準と比較して数平均分子量が4,700g/モルであることがわかった。多
分散性は2.0であった。13C-NMR分析および酸価の滴定は、ポリマー鎖の末
端基の大部分がカルボキシル基であり、このポリマーが4.0モル%のラクチド
および1モル%未満の乳酸を含有することを示した。DSC-分析は、このポリ
マーのガラス転移温度が40.2℃であり、このポリマーが完全に無定形である
ことを示した。
実施例7 D,L-乳酸からの酸末端プレポリマーの製造
実施例1の記載と同様に重合を行ったが、L-乳酸の代わりにDL-乳酸(D:
L=1:1)を供給原料として用い、全重合時間は14時間であった。
得られたポリマーの分子量をGPCによって分析し、ポリスチレン標準と比較
して数平均分子量が3,090g/モルであることがわかった。多分散性は1.8
4であり、酸価は43であった。13C-NMR分析および酸価の滴定は、ポリマ
ー鎖の末端基の大部分がカルボキシル基であり、このポリマーが2.9モル%の
ラクチドおよび1モル%未満の乳酸を含有することを示した。DSC-分析は、
このポリマーのガラス転移温度が39.5℃であり、このポリマーが完全に無定
形であることを示した。
実施例8 乳酸とグリコール酸からの酸末端プレポリマーの製造
実施例1の記載と同様に重合を行ったが、純粋なL-乳酸の代わりにL-乳酸(
360g)およびグリコール酸(76.1g)をヒドロキシ酸モノマーとして用い、全
重合時間は14時間であった。
得られたポリマーの分子量をGPCによって分析し、ポリスチレン標準と比較
して数平均分子量が2,260g/モルであることがわかった。多分散性は2.1
7であり、酸価は47であった。13C-NMR分析および酸価の滴定は、ポリマ
ー鎖の末端基の大部分がカルボキシル基であり、このポリマーが3.4モル%の
ラクチドおよび1モル%未満の乳酸を含有することを示した。DSC-分析は、
このポリマーのガラス転移温度が42.3℃であり、このポリマーが完全に無定
形であることを示した。
実施例9 マンデル酸からの酸末端プレポリマーの製造
実施例1の記載と同様に重合を行ったが、純粋なL-乳酸の代わりにL-乳酸(
405g)およびDL-マンデル酸(76.1g)をヒドロキシ酸モノマーとして用い
、全重合時間は15時間であった。
得られたポリマーの分子量をGPCによって分析し、ポリスチレン標準と比較
して数平均分子量が1,680g/モルであることがわかった。多分散性は1.2
であり、酸価は62であった。13C-NMR分析および酸価の滴定は、ポリマー
鎖の末端基の大部分がカルボキシル基であり、このポリマーが3.4モル%のラ
クチドおよび1モル%未満の乳酸を含有することを示した。DSC-分析は、こ
のポリマーのガラス転移温度が45.3℃であり、このポリマーが完全に無定形
であることを示した。
実施例10 乳酸とα-ヒドロキシイソブタン酸からの酸末端プレポリマーの
製造
実施例1の記載とほぼ同様に重合を行ったが、純粋なL-乳酸の代わりにL-乳
酸(360g)およびα-ヒドロキシイソブタン酸(52.1g)をヒドロキシ酸モノ
マーとして用い、全重合時間は13時間であった。さらに、重合の温度プロフィ
ー
ルは実施例1に示したものと同様であったが、圧力を重合の1時間後に180m
バールまで低下させ、この値でその後の7時間維持した。次いで、4時間で圧力
を徐々に50mバールまで低下させ、残りの時間はこの圧力を維持した。この結
果、未反応のモノマーは、重合の最後の5時間中に反応容器から実質的に留去さ
れた。
得られたポリマーの分子量をGPCによって分析し、ポリスチレン標準と比較
して数平均分子量が2,980g/モルであることがわかった。多分散性は1.5
であり、酸価は51であった。13C-NMR分析および酸価の滴定は、ポリマー
鎖の末端基の大部分がカルボキシル基であり、このポリマーが2.9モル%のラ
クチドおよび1モル%未満の乳酸を含有することを示した。DSC-分析は、こ
のポリマーのガラス転移温度が34.4℃であり、このポリマーが完全に無定形
であることを示した。
実施例11 乳酸とマレイン酸からの酸末端プレポリマーの製造
実施例1と同様に重合を行ったが、L-乳酸(450g)、無水コハク酸(10.
0g)およびマレイン酸(リンゴ酸)(3.35g)を供給原料として用い、全重合時間
は14時間であった。
得られたポリマーの分子量をGPCによって分析し、ポリスチレン標準と比較
して数平均分子量が1,330g/モルであることがわかった。多分散性は1.2
であった。13C-NMR分析および酸価の滴定は、ポリマー鎖の末端基の大部分
がカルボキシル基であり、このポリマーが3.4モル%のラクチドおよび1モル
%未満の乳酸を含有することを示した。酸価は55であった。DSC-分析は、
このポリマーのガラス転移温度が44.0℃であり、このポリマーが完全に無定
形であることを示した。
ジエポキシ化合物を用いるコポリエステルの製造に関する実施例
実施例12 酸末端プレポリマーとジエポキシのカップリング重合ならびにこ
のようにして製造したコポリエステルの性質(例えば、溶融加工した圧縮成形シ
ートから測定した)
L-乳酸および無水コハク酸から実施例1に従って製造したプレポリマー(50
g)を、300mlのガラス製反応器に入れた。このプレポリマーの酸価は30mg/
gであった。この反応器中にアルゴン流を導入し、温度を150℃に調節した。
ポリマーが溶融したときに、混合を開始し、このポリマー溶融物にブタンジオー
ル-ジグリシジルエーテル(2.2ml)を加えた。プレポリマーの末端酸基とエポキ
シ基の間の比は1:1であった。使用した触媒は、0.1重量%のベンジルジメ
チルアミン(BDMA)からなっていた。重合時間は1.5時間であった。
最終生成物として得られたポリエステルは、ポリスチレン標準と比較してGP
Cで測定したときに、28,000g/モルの数平均分子量および270,000g
/モルの重量平均分子量を有していた。このポリマーの分子量分布は非常に広い
ものであった。DSCで測定したときのこの無定形ポリマーのガラス転移温度は
45.8℃であった。13C-NMR分析から、このポリマーが2モル%未満のラク
チドおよび1モル%未満の乳酸を含有することが明らかであった。圧縮成形シー
トから切り出した試験片(2mm-9mm-50mm)は、12MPaの引張強度、197
0MPaの引張弾性モジュールおよび1%の破断時伸びを有していた。
実施例13 触媒として水酸化カリウムを用いる酸末端プレポリマーとジエポ
キシ化合物のカップリング重合
実施例11の記載と同様にカップリング重合を行ったが、ベンジルジメチルア
ミンの代わりに水酸化カリウム(KOH)(0.05g)を触媒として用い、プレポリ
マーは実施例2に従って製造したプレポリマーからなっていた。重合時間は1.
5時間であった。
最終生成物として得られたポリエステルは、参照としてポリスチレン標準を用
いるGPCで測定したときに、37,700g/モルの数平均分子量および123
,000g/モルの重量平均分子量を有していた。このポリマーの分子量分布は比
較的広く、その多分散性は3.3であった。この無定形ポリマーは、DSCで測
定したときに、47.1℃のガラス転移温度を有していた。
実施例14 脂環式ジエポキシ化合物を用いる酸末端プレポリマーとジエポキ
シのカップリング重合
実施例12の記載と同様にカップリング重合を行ったが、ブタンジオール-ジ
グリシジルエーテルの代わりに3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エ
ポキシシクロヘキサンカルボキシレート(3.2ml)をジエポキシ化合物として用
い、エポキシ基とプレポリマーのカルボン酸基の間のモル比は1:1であった。
最終生成物として得られたポリエステルは、参照としてポリスチレン標準を用
いるGPCで測定したときに、24,700g/モルの数平均分子量および51,
600g/モルの重量平均分子量を有していた。このポリマーの分子量分布は比
較的狭く、その多分散性は2.09であった。DSCで測定したときのこの無定
形ポリマーのガラス転移温度は55.6℃であった。
実施例15 脂環式ジエポキシ化合物および触媒として酢酸ナトリウムを用い
る酸末端プレポリマーとジエポキシのカップリング重合
実施例14の記載と同様にカップリング重合を行ったが、水酸化カリウムの代
わりに酢酸ナトリウム(NaAc)(0.05g)を触媒として用い、プレポリマーは実
施例2に従って製造したプレポリマーからなっていた。
最終生成物として得られたポリエステルは、参照としてポリスチレン標準を用
いるGPCで測定したときに、226,000g/モルの数平均分子量および12
3,000g/モルの重量平均分子量を有していた。このポリマーの分子量分布は
非常に広く、その多分散性は11.7であった。DSCで測定したときのこの無
定形ポリマーのガラス転移温度は55℃であった。
実施例16 比較的高温での酸末端プレポリマーのカップリング重合
実施例12の記載と同様にカップリング重合を行ったが、温度は180℃であ
った。
最終生成物として得られたポリエステルは、参照としてポリスチレン標準を用
いるGPCで測定したときに、31,000g/モルの数平均分子量および253
,000g/モルの重量平均分子量を有していた。このポリマーの分子量分布は比
較的狭く、その多分散性は8.2であった。DSCで測定したときのこの無定形
ポリマーのガラス転移温度は45.5℃であった。
実施例17 二酸末端プレポリマーのカップリング重合
実施例12の記載と同様にカップリング重合を行ったが、使用したプレポリマ
ーは実施例3に従って製造したポリエステルからなっていた。
最終生成物として得られたポリエステルは、参照としてポリスチレン標準を用
いるGPCで測定したときに、11,500g/モルの数平均分子量および32,
000g/モルの重量平均分子量を有していた。DSCで測定したときのこの無
定形ポリマーのガラス転移温度は36.6℃であった。
実施例18 二酸末端の比較的低分子量のプレポリマーのカップリング重合
実施例12の記載と同様にカップリング重合を行ったが、使用したプレポリマ
ーは実施例4に従って製造したポリエステルからなっていた。
最終生成物として得られたポリエステルは、参照としてポリスチレン標準を用
いるGPCで測定したときに、17,700g/モルの数平均分子量および96,
800g/モルの重量平均分子量を有していた。このポリマーの分子量分布はか
なり広く、その多分散性は5.5であった。DSCで測定したときのこの無定形
ポリマーのガラス転移温度は33.2℃であった。
実施例19 無水物を用いて後に酸末端にしたプレポリマーのカップリング重
合
実施例12の記載と同様にカップリング重合を行ったが、使用したプレポリマ
ーは実施例5に従って製造したポリエステルからなっていた。
最終生成物として得られたポリエステルは、参照としてポリスチレン標準を用
いるGPCで測定したときに、13,500g/モルの数平均分子量および146
,000g/モルの重量平均分子量を有していた。このポリマーの分子量分布は広
くかつ多相であり、その多分散性は11.2であった。DSCで測定したときの
この無定形ポリマーのガラス転移温度は41.3℃であった。
実施例20 無水物を用いて後に酸末端にしたプレポリマーのカップリング重
合
実施例12の記載と同様にカップリング重合を行ったが、使用したプレポリマ
ーは実施例6に従って製造したポリエステルからなっていた。
最終生成物として得られたポリエステルは、参照としてポリスチレン標準を用
いるGPCで測定したときに、14,500g/モルの数平均分子量および32,
000g/モルの重量平均分子量を有していた。即ち、このポリマーの分子量分
布はかなり狭いものであった。DSCで測定したときのこの無定形ポリマーのガ
ラス転移温度は36.3℃であった。
実施例21 DL-乳酸から製造した酸末端プレポリマーのカップリング重合
実施例12の記載と同様にカップリング重合を行ったが、使用したプレポリマ
ーは実施例7に従って製造したポリエステルからなっていた。
最終生成物として得られたポリエステルは、参照としてポリスチレン標準を用
いるGPCで測定したときに、15,000g/モルの数平均分子量および187
,000g/モルの重量平均分子量を有していた。このポリマーの分子量分布は非
常に広く、その多分散性は12.5であった。DSCで測定したときのこの無定
形ポリマーのガラス転移温度は37.0℃であった。
実施例22 乳酸とグリコール酸から製造した酸末端プレポリマーのカップリ
ング重合
実施例12の記載と同様にカップリング重合を行ったが、使用したプレポリマ
ーは実施例8に従って製造したポリエステルからなっていた。
最終生成物として得られたポリエステルは、参照としてポリスチレン標準を用
いるGPCで測定したときに、23,000g/モルの数平均分子量および270
,000g/モルの重量平均分子量を有していた。このポリマーの分子量分布は非
常に広く、その多分散性は11.7であった。DSCで測定したときのこの無定
形ポリマーのガラス転移温度は41.0℃であった。
実施例23 乳酸とマンデル酸から製造した酸末端プレポリマーのカップリン
グ重合
実施例12の記載と同様にカップリング重合を行ったが、使用したプレポリマ
ーは実施例9に従って製造したポリエステルからなっていた。
最終生成物として得られたポリエステルは、参照としてポリスチレン標準を用
いるGPCで測定したときに、10,500g/モルの数平均分子量および29,
400g/モルの重量平均分子量を有していた。このポリマーの分子量分布はか
なり狭いものであった。DSCで測定したときのこの無定形ポリマーのガラス転
移温度は44.5℃であった。
実施例24 乳酸とα-ヒドロキシイソブタン酸から製造した酸末端プレポリ
マーのカップリング重合
実施例12の記載と同様にカップリング重合を行ったが、使用したプレポリマ
ーは実施例10に従って製造したポリエステルからなっていた。
最終生成物として得られたポリエステルは、参照としてポリスチレン標準を用
いるGPCで測定したときに、11,000g/モルの数平均分子量および33,
000g/モルの重量平均分子量を有していた。このポリマーの分子量分布はか
なり狭く、その多分散性は3.0であった。DSCで測定したときのこの無定形
ポリマーのガラス転移温度は39.2℃であった。
実施例25 乳酸とマレイン酸から製造した酸末端プレポリマーのカップリン
グ重合
実施例12の記載と同様にカップリング重合を行ったが、使用したプレポリマ
ーは実施例11に従って製造したポリエステルからなっていた。
最終生成物として得られたポリエステルは、参照としてポリスチレン標準を用
いるGPCで測定したときに、21,000g/モルの数平均分子量および50,
700g/モルの重量平均分子量を有していた。このポリマーの分子量分布はか
なり狭いものであった。DSCで測定したときのこの無定形ポリマーのガラス転
移温度は41.1℃であった。
実施例26 コポリエステルの加水分解
実施例16に記載のコポリエステルを、緩衝水溶液において、pH7および6
0℃の温度で加水分解した。1日後に、ポリマーの数平均分子量は28,000g
/モルであり、その重量平均分子量は44,000g/モルであり、溶液のpHは
7であり、乾燥した試料は重量を損失していなかった。加水分解の10日後には
、数平均分子量は5,000g/モルであり、その重量平均分子量は6,000g/
モルであり、溶液のpHは2.5であり、試料の乾燥重量は40%減少していた。
実施例27 ポリエステルの溶融加工特性
実施例12に記載のコポリエステルの溶融物の粘度を、毛管レオメーターによ
り180℃の温度で測定した。これにより、このポリマーが溶融加工可能である
ことが示された。このポリマーは、130℃の温度でポリマーシートの圧縮成形
に用いることができた。
比較例 ヒドロキシル末端プレポリマーのカップリング
実施例12の記載と同様にカップリング重合を行ったが、プレポリマーは4,
500g/モルの分子量を有するヒドロキシル末端プレポリマーからなり、重合
温度は180℃であった。このプレポリマーは、アジピン酸の代わりに1,4-ブ
タンジオール(9.0g)を用いたこと以外は実施例2に従って製造した。
最終生成物として得られたポリエステルは、参照としてポリスチレン標準を用
いるGPCで測定したときに、3,000g/モルの数平均分子量および5,50
0g/モルの重量平均分子量を有していた。このポリマーの分子量分布は非常に
狭く、多分散性は1.8であった。DSCで測定したときのこの無定形ポリマー
のガラス転移温度は19.8℃であった。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C09J 167/04 C09J 167/04
(72)発明者 ヒルトゥネン,カリ
フィンランド、エフイーエン−00520ヘル
シンキ、オパスティンシルタ9アー4番
(72)発明者 セリン,ヨハン−フレドリク
フィンランド、エフイーエン−00980ヘル
シンキ、イソンマストンティエ15デー番
(72)発明者 ハコラ,ユルキ
フィンランド、エフイーエン−04430 イ
ェルヴェンペー、プイストティエ81ベー11
番