【発明の詳細な説明】
ゼオライト及びその製造方法
本発明は、LTLの構造型を有するゼオライト、その製造方法、及び触媒又は
触媒ベースとしての使用に関する。該ゼオライトは、細孔寸法が0.55〜0.7
2nmの12員環構造を有する。
LTL構造型を有するゼオライトの例は、ゼオライトLであり、ゼオライトL
の製造方法は、米国特許第 3216789号、欧州特許出願第219354号及び同第595465
号に記載されており、それらの全ての開示を参考として本明細書に引用する。2
件の欧州特許出願には、背景について解釈される多くの従来技術が論じられてお
り、米国特許には、結晶性ゼオライトLの有意なX線回折データが示されている
と共に酸化物のモルによる式が下記のように示されている。
0.9〜1.3 M2/nO:Al2O3:5.2〜6.9 SiO2:yH2O
ここで、Mは原子価nの交換可能なカチオンを表し、yは0〜約9の範囲内の数
値を表す。第9回ゼオライト国際会議の議事録,Ed.von Ballmoosら,1993,p.
297,Xianping Mengらには、超微細(粒径約30nm)ゼオライトLの製造方法に
関する種々の結晶化条件及び反応成分比の効果が記載されている。
小さな粒径の生成物は、炭化水素転化を含む反応に触媒又は触媒ベースとして
用いられる場合に、質量に対する表面積の割合が高い、拡散速度及び反応性が大
きい、並びに孔填塞及び表面汚染による失活に対する耐性があることから、米国
特許第 3216789号の方法によって製造されたもののような大きな粒径の生成物よ
り有利である。同様の理由のために、炭化水素分離に有利であり、国際出願第94
/25151号に記載されたように、担持ゼオライト層、特に膜の製造における出発物
質として有効であり、この特許の開示を参考として本明細書に引用する。後者の
目的のためには、ゼオライト層が支持体上のコロイド懸濁液から付着させること
により形成されるので、通常、粒径が大きくても100nm、有利には大きくても
75nmの集合体か或いは単一結晶の形かのゼオライトが必要である。いずれの理
由に対しても懸濁液が安定でない場合には、目的に不適切である。欧州特許出願
第595465号には、単結晶形である、ゼオライト合成混合液においてアンモニアが
水に対して共溶媒として用いられる発明方法の生成物が記載されておりかつ70
〜160℃の範囲の温度で水熱処理を行って約30nm未満の直径の微結晶を有す
る生成物を得ることが言及されているが、その出願の説明及び顕微鏡写真から生
成物がコロイド懸濁液を形成することができないナノ結晶の大きな集合体からな
ると考えられる。同じことが欧州特許出願第323893号の生成物にも言え、小さな
微結晶が容易に回収可能な粒子に集合する(2頁、31〜33行)。
そこで驚くべきことに、米国特許第 3216789号に記載された合成混合液を10
0℃よりも低い温度で熱処理すると、ゼオライトのコロイド懸濁液が生じること
がわかった。
従って、本発明は、LTLゼオライトのコロイド懸濁液の製造方法であって、
固体成分が酸化物として計算されたモル比によって示された下記の範囲の組成を
有する合成混合液を、100℃よりも低い温度で溶媒に対してLTLゼオライト
のコロイド懸濁液を形成するのに十分な時間熱処理する方法を提供するものであ
る。
K2O/(K2O + Na2O) 0.33〜1:1
(K2O + Na2O)/SiO2 0.35〜0.5:1
SiO2/Al2O3 10〜40:1
溶媒/(K2O + Na2O) 15〜25:1
有利には、SiO2/Al2O3比は、少なくとも12:1、有利には多くても2
8:1である。
有利には、溶媒は水であるが、共溶媒、例えば、アンモニアの存在は除外され
ず、その場合のモル比は指定した範囲に含まれる。
本発明は、更に、粒径が大きくても100nmのLTLゼオライトの製造方法で
あって、上記のように調製されたコロイド懸濁液を、pH9〜12、有利には1
0〜11の範囲内のpHまで水洗し、所望される場合にはカチオン交換し、乾燥
し、所望される場合には焼成する方法を提供するものである。
得られたゼオライトは、下記式Iを有する組成を有するものが有利である。
0.9〜1.3 M2/nO:Al2O3:5.2〜6.9 SiO2 I
式中、Mは原子価nの交換可能なカチオンである。
本発明の方法は、コロイド懸濁液を形成する個々の結晶或いは集合体を提供す
るものである。即ち、直接又は洗浄により生成された懸濁液は安定な懸濁液であ
る。
安定な懸濁液は、沈降が全く起きないものか又は適切なタイムスケールにわた
って有意でないように沈降が徐々に起きるものである。かかる懸濁液は、本明細
書中でコロイドと呼ばれる。
上記のように、本発明のゼオライトは、主としてアルミノケイ酸塩であり、本
明細書にはそれだけで記載される。しかしながら、アルミニウムの全部又は一部
をガリウムで及び一部をホウ素、鉄又は他の3価の元素で置き換えることは本発
明の範囲内であり、シリコンも同様にゲルマニウム又はリンで置き換えられる。
合成混合液においてカリウム及びナトリウム以外のカチオンを含むことも本発明
の範囲内である。
最終生成物に必要とされる種々の元素源は、合成混合液を調製することができ
る市販のもの又は文献に記載されたもののいずれであってもよい。
例えば、シリコン源は、ケイ酸塩、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩又はテトラ
アルキルオルトケイ酸塩とすることができるが、好ましくは、シリカのコロイド
水性懸濁液、例えば、E.I.du Pont de Nemours から商品名 Ludoxとして販売さ
れているものが用いられる。Ludox HS-40は、ナトリウム含有製品であり、AS-40
はナトリウムをほとんど含まない。
アルミニウム源は、好ましくはAl2O3・3H2Oであり、アルカリに溶解さ
れている。他のアルミニウム源としては、水溶性アルミニウム塩、例えば、硫酸
アルミニウム又はアルコキシド、例えば、アルミニウムイソプロポキシドが含ま
れる。
カリウム源は、水酸化カリウムであることが有利であり、ナトリウム源が存在
する場合には、その水酸化物も有利である。
合成混合液は、一方がカリウム源とアルミニウム源を含み、もう一方がシリカ
源であり、各々が混合時に要求されたモル比を生じるような量で水を含む2種の
溶液を混合することにより調製されることが便利である。
結晶化は、静状態下で或いは中程度に攪拌しながら及び所望される場合には還
流下で行われる。
熱処理(高温の熟成としても知られる)は、便利には40〜97℃、有利には
40〜95℃、好ましくは40〜85℃の範囲の温度で行われる。従来技術では
、通常、低温で長い結晶化時間が記載されているが、驚くべきことに、48〜5
00時間が用いられ、本発明の範囲の低い方の端の温度でさえ84時間までの時
間が十分であることがわかった。一般に、他の条件が一定である場合には、低い
温度が小さな粒径ゼオライトを生じる。温度の適切な選択により、粒径の均一性
が良好な最大寸法25〜100nmの範囲の集合体が得られる。
合成混合液は、所望される場合には、結晶化が起こるよりも低い温度で、即ち
、40℃未満の温度で、例えば、2日まで熟成される。この低温熟成を含むこと
により、一般に、それを省略している他の同じ手順と比べて小さな微結晶サイズ
が得られる。
上記の方法で製造されたコロイド懸濁液又は懸濁液から得られる結晶は、結晶
が成長促進層を与えることができる基体上の薄膜の製造を含む多くの用途に、又
はその場多重結晶化によるなどの膜自体のベースとして用いられる。しかしなが
ら、特に本発明によれば、ナノメートルサイズのゼオライトL粒子は、ゼオライ
トLの製造において種晶として用いられる。
米国特許第 3216789号に述べられたように、合成混合液がある範囲外にある組
成を有する場合には、ゼオライトL以外のゼオライト、他のゼオライト又は無定
形物質を混入したゼオライトL、又は無定形生成物のみを製造する傾向がある。
例えば、アルカリ度が低すぎるとゼオライトWの形成又はゼオライトWを混入し
たゼオライトLが生じる。
かつて、米国特許第 5330736号では、種晶ゲルとしてゼオライトLを含まない
無定形アルミノケイ酸塩種晶ゲルを用いてゼオライトLを製造することが提唱さ
れた。該ゲルは、単独で100℃まで加熱する場合には、ゼオライトYを製造す
るものであると述べられている。その特許には、ゼオライトL製造合成混合液に
ゼオライトL種晶を入れることの可能性を言及するために述べられている多くの
以前の米国特許が論じられている。米国特許第 5330736号に言及されている米国
特許第 4657749号の実施例12及び13には、種晶を入れる方法が記載されてお
り、指定されない粒径のゼオライトLの種晶が用いられている。米国特許第5330
736 号の比較例では、指定されない粒径の予備成形結晶性ゼオライトLがゼオラ
イトL形成合成混合液に入れるために用いられ、ゼオライトT混入ゼオライトL
生成物が得られた。
そこで、コロイドゼオライトL種晶は、その混合液がコロイド種晶の存在しな
いときに純粋なゼオライトL以外の生成物を生じるものである場合でさえ、ゼオ
ライトLの合成混合液からの形成を促進するために巧く用いられることがわかっ
た。
米国特許第 5,396,009号には、非常に望ましい形態、微結晶の全長に対する円
柱形の湾曲表面の軸長の比が好ましくは少なくとも0.9であるような形をした
基底面を有する実質的に円柱形であるもの及び直径に対する長さのアスペクト比
が好ましくは少なくとも0.5であるものを有するゼオライトLを得るための手
順が記載されている。微結晶の平均直径は、典型的には、0.05〜0.5μm の
範囲である。
該米国特許に記載されたゼオライトは、アルミニウム系であり、同じ手順を用
いる同じ形態のガリウム系ゼオライトの合成は、いくらかの困難に直面した。
そこで、ゼオライトL種晶のコロイド懸濁液をガリウム含有ゼオライトL形成
合成混合液に添加することにより、ゼオライトWなどでの混入が減少しかつ形態
及び粒径が制御された純粋な結晶性Ga−LTLゼオライトが得られることがわ
かった。Ga−LTLゼオライトは、0.2重量%未満のアルミナを含有するこ
とが有利である。
従って、本発明は、微結晶の軸全長に対する円柱状の湾曲表面の比率が0.9
より大きくかつ直径に対する長さのアスペクト比が多くても0.5であるような
形をした基底面を有する円柱状微結晶で形成されたガリウム含有LTLゼオライ
トを提供するものである。
微結晶の平均長は、0.6μm 未満であることが有利であり、平均径は、1.5
μm 未満であることが有利である。
対応するモル組成及び同じ物理的特性のAl−LTLゼオライトと比べてGa
−LTLゼオライトの酸性度が低いために、いくつかの炭化水素転化、例えば、
芳香族化において触媒又は触媒成分、例えば、触媒金属と混合したものとして用
いられる場合にGa−LTLが有利である。
本発明は、また、LTLゼオライトの製造方法であって、固体成分が酸化物と
して計算されたモル比によって示された下記の範囲の組成を有しかつ粒径が大き
くても100nmのLTLゼオライトの種晶を含む合成混合液を形成する工程、及
び種晶含有合成混合液をLTLゼオライトを形成するのに十分な温度及び時間水
熱処理する工程を含む方法を提供するものである。
K2O/(K2O + Na2O) 0.60〜1:1
(K2O + Na2O)/SiO2 0.18〜0.36:1
SiO2/Al2O3又はGa2O3 5〜18:1
H2O/(K2O + Na2O) 25〜90:1
有利には、Al2O3が用いられる場合、SiO2/Al2O3比は、5〜15であ
り、Ga2O3が用いられる場合には、5〜18である。
有利には、LTLゼオライトは、ゼオライトLである。
得られたLTLゼオライトの微結晶は、微結晶の軸全長(h)に対する円柱状
の湾曲表面の軸長(m)の比が0.9より大きく、好ましくは1に近いような形
の基底面を有する円柱状の形が有利である。(完全に平坦な基底面を有する幾何
学的に完全な円柱は、m=h及びm/h=1であり、基底面のドーミング又は成
長は、hがmより大きいことを意味する。)
円柱状微結晶の平均直径(d)は少なくとも0.05μm、好ましくは少なくと
も0.1μm であることが有利である。微結晶のある用途については、微結晶の
直径は、有利には0.3〜1.5μm、好ましくは0.4〜1.0μm であり、微結
晶の長さは、有利には0.1〜0.6μm、好ましくは0.1〜0.3μm である。
アスペクト比(平均直径dに対する円柱状表面の軸長の比)は、有利には2未満
、好ましくは1未満、最も好ましくは0.8以下である。ある用途については、
微結晶は、ホッケーパック形(アスペクト比0.2〜0.5)又はコイン形(アス
ペクト比0.2未満)であることが有利である。
本発明の特に有利なLTLゼオライトは、実質的に平坦な基底面を有する、即
ち、m/h比が実質的に1である平滑な表面のはっきりした円柱状の微結晶を含
む。好ましくは、LTLゼオライトは、基底面の即ち80%、好ましくは少なく
とも90%が20nm以内までの顕微鏡的に平坦であるので、らせん状の段階成長
を示さない。
本発明のLTLゼオライトは、円柱状の形態を特徴とする。本明細書に用いら
れる“円柱”及び“円柱状”という語は、固体の形、即ち、一定の平面曲線を切
断するように一定の線に平行に移動する線で生じる表面とその表面が交差する2
つの平行な面(底)で区切られた固体において定義された円柱の形を記載するも
のである。円柱は、一般に、円形の円柱であり、即ち、円の断面を有するが、本
発明の関係においては、断面が多角形、特に六角形の形、即ち、曲線の六角の形
であるような円柱状表面を平らにしているものを示すことができ、本明細書に用
いられる“円柱”及び“円柱状”という語は、そのような形が含まれる。
驚くべきことに、非常に少量のゼオライト種晶のコロイド懸濁液としての添加
が他の結晶性ゼオライト形又は無定形物質を混入せずに合成混合液から所望のゼ
オライトを結晶化することを促進するのに効果的であることがわかった。少量の
種晶が必要であることから、種晶は、Ga−LTLの合成において得られた実質
的にガリウム系の生成物に影響を及ぼさずにアルミニウム系ゼオライトLとする
ことができる。得られた粒子は、狭い粒度分布を有し、ゼオライト生成物の企図
された使用に有利である。合成混合液にコロイド懸濁液を形成するのに大きすぎ
る粒径の種晶のスラリーを添加することにより形成される欧州特許出願第142347
号の生成物は、粒度分布が広く、例えば、約1〜3μm、ゼオライトWを混入し
た物質を含む。
全合成混合液に対して約0.5重量%の種晶を用いた米国特許第 5330736号の
上記比較例と対照的に、本発明の方法は、全合成混合液の重量に対してppm の割
合のコロイド種晶、例えば、0.005〜0.10重量%、有利には0.015〜
0.05%、便利には約0.025%で効果がある。より大きな割合を用いること
も本発明の範囲内であるが、技術的な利点が生じないと思われる。
上記のように便利に調製された種晶の粒径は、有利には25〜100nm、好ま
しくは60〜80nmの範囲内である。
上に示されたように、種晶をコロイド懸濁液として添加する方法が含まれる。
コロイド懸濁液が蒸発乾固される場合には、得られた乾燥種晶は逆に変化すると
考えられ、いずれにしても乾燥種晶を用いて製造された生成物は汚染される傾向
がある。
水熱処理は、有利には100〜180℃、好ましくは150〜175℃の温度
で、有利には自然圧力下で、有利には4〜200時間、好ましくは20〜80時
間の範囲内の時間行われる。
驚くべきことに、熱処理を攪拌しながら行うことが可能であることがわかった
。これは、低アルカリ合成混合液からゼオライトLを調製する普通の合成方法に
おいて、攪拌はその使用がゼオライトWの望ましくない形成を生じるので避けね
ばならなかったことから驚くべきことである。小規模な操作では静状態が許容さ
れるが、工業的規模については工業的に実行可能な加熱法に攪拌を必要とするこ
とがよくある。結晶核形成剤、特に本発明の第1態様により製造された種晶の存
在は、攪拌した合成混合液中にゼオライトWが混入せずにゼオライトLを製造す
ることを可能にする。
従って、熱処理は、静状態下で又は攪拌しながら行われる。
種晶以外の合成混合液の種々の成分源は、LTLゼオライトコロイド懸濁液の
形成の本発明の第1実施態様に記載された通りとすることができ、種晶は、本発
明の第1実施態様の生成物であることが有利である。
本発明の種晶を入れる方法を用いることにより、例えは、ゼオライトT又はW
生成物を生じる傾向がある合成混合液においてゼオライトL形成が促進される。
即ち、種晶が構造配向剤として作用する。
本発明は、更に、ゼオライトLの合成混合液の水熱処理方法において、ゼオラ
イLのコロイド懸濁液を得るためか又は最大寸法が大きくても約100nmのゼオ
ライトLの粒子を得るための100℃よりも低い温度の使用を提供するものであ
る。
本発明は、更に、ゼオライト形成合成混合液の水熱処理において、ゼオライト
L含有生成物、有利には実質的にゼオライトLからなる生成物、好ましくは純粋
なゼオライトL生成物の合成混合液から結晶化を促進するための、ゼオライトL
の種晶のコロイド懸濁液、即ち、最大寸法が大きくても約100nmの種晶の使用
を提供するものである。コロイドゼオライトL種晶の濃度を高めることにより、
条件を一定に維持する場合には生成物の粒径は小さくなる。
本発明の第2態様によって製造されたゼオライトLは、要求される場合には洗
浄、カチオン交換及び/又は焼成した後に、多くの炭化水素転化における触媒と
して使用するのに適切であり、炭化水素分離又は吸着にも効果的である。ゼオラ
イトL材料は、単独で又は他のゼオライトと混合して微粒子の形で又は支持体上
の層の形で、特に膜として用いられる。担持層は、国際出願第94/25151号及び同
第96/01683号に記載された方法で製造され、それらの開示を参考として本明細書
に引用する。
しかしながら、特に本発明は、基体及びゼオライトL含有層を含むゼオライト
L含有構造の製造方法であって、基体の片面をゼオライトLのコロイド懸濁液、
即ち、粒径が大きくても約100nmである懸濁液と接触させて中間層を形成する
工程、及び引き続き前記片面上にゼオライト形成合成混合液の水熱処理によるゼ
オライトLの結晶化によりゼオライトL含有層を形成する工程を含む方法を提供
するものである。有利には、合成混合液は、基体の処理面と接触させる場合には
流動可能なゲルである。基体面は、中間層を形成する前に、バリヤー層形成材料
、例えば、水で前処理される。また、基体面は、ゼオライトLの分散液が施され
る場合に乾燥していることもできる。
本発明は、また、基体、中間層及び上層を含む構造であって、該中間層が大き
くても100μm の粒径のゼオライトLを含み、該上層がゼオライトL粒子を含
み、該上層におけるゼオライト粒子が該中間層の粒子の寸法より大きい少なくと
も1種の寸法を有する構造を提供するものである。有利には、ゼオライトL粒子
の少なくとも75%の方向は、12員環細孔(c軸)が層の平面に対して垂直な方
向の30°以内にあるようにする。好ましくは、上層におけるゼオライトL粒子
の少なくとも75%の方向は、粒子のc軸が層の平面に対して垂直な方向の5°
以内にあるようにする。
本発明のLTLゼオライトは、触媒ベースとして用いられ、種々の炭化水素転
化プロセスにおいて触媒的に活性な金属と組合わせて用いられる。触媒的に活性
な金属としては、VIII族金属、例えば、白金及びパラジウムが含まれる。
特に有利な触媒組成物は、これにより芳香族化において優れた結果が得られる
ので、白金又はパラジウムを0.1〜6.0重量%(組成物の全重量に対して)、
好ましくは0.1〜1.5重量%混合する。0.4〜1.2重量%の白金が特に好ま
しい。従って、本発明は、本発明の種晶を入れる方法によって製造されたLTL
ゼオライト及び触媒的に活性な金属を含む触媒を提供するものである。
触媒が用いられるべき条件下に実質的に不活性な1種以上の物質もまたバイン
ダーとして本発明の触媒に混合される。かかるバインダーは、温度、圧力及び摩
耗に対する触媒の耐性を改善するために作用することができる。適切なバインダ
ーの例としては、合成又は天然に存在する無機物質、例えば、クレー及び/又は
金属酸化物、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア及び/又はジルコニアが含ま
れる。天然に存在するクレーの例としては、モンモリロナイト及びカオリン系の
ものが含まれ、亜ベントナイト及びジキシークレー、マクナミークレー、ジョー
ジアクレー及びフロリダクレーとして一般に知られるカオリン又は主成分鉱物が
ハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト又はアンオーキサイト
である他のものが含まれる。かかるクレーは、未精製状態で、始めに採掘された
もの又は焼成、酸処理もしくは化学変性されたものとして用いられる。本発明に
おいて具体的な用途である他のマトリックス材料としては、多孔性マトリックス
材料、例えば、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−チタニア及び
三元組成物、例えば、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニ
ア、シリカ−アルミナ−マグネシア及びシリカ−マグネシア−ジルコニアが含ま
れる。好ましいバインダーは、米国特許第 5,486,348号及び国際出願第96/16004
号に開示されるゼオライト物質の粒子を含み、それらの特許の開示を参考として
本明細書に引用する。
本発明のLTLゼオライトは、炭化水素転化に用いられ、触媒用途、例えば、
低い酸性位置強度が所望される芳香族化に有利な低い酸性度を有する。炭化水素
転化としては、分解、改質、水素化精製、芳香族化、アルキル化、アルキル交換
反応、脱アルキル化、脱水素、水素添加、脱ろう、水素化脱ろう、アルコール転
化、オリゴマー化、異性化及び水素化分解などが挙げられる。脂肪族炭化水素の
水素化環化及び/又は異性化が特に重要であり、炭化水素を370〜600℃、
好ましくは430〜550℃の温度でアルカリ金属イオンとして交換可能なカチ
オンMを好ましくは少なくとも90%有する本発明のゼオライトLを含むと共に
脱水素活性を有する少なくとも1種のVIII族金属を混合している触媒と接触
させて脂肪族炭化水素の少なくとも一部を芳香族炭化水素に転化する。
脂肪族炭化水素は、直鎖又は分枝鎖非環式炭化水素及び特にパラフィン、例え
ば、ヘキサンとすることができるが、炭化水素の混合液、例えば、ある範囲のア
ルカンをおそらくは少量の他の炭化水素と含むパラフィン留分を用いることもで
きる。脂環式炭化水素、例えば、メチルシクロペンタンも用いられる。好適態様
においては、芳香族炭化水素、特にベンゼンを調製するプロセスへの供給材料は
、ヘキサンを含む。触媒反応の温度は、370〜600℃、好ましくは430〜
550℃とすることができ、大気圧を超える圧力、好ましくは2000KPa、更
に好ましくは500〜1000 KPaが用いられる。水素は、芳香族炭化水素の形
成において、好ましくは供給材料に対する水素のモル比10未満で用いられる。
更に態様においては、本発明は、脂肪族炭化水素の脱水素環化及び/又は異性
化方法であって、370〜600℃の範囲の温度の該炭化水素を、触媒的に活性
な金属及び微結晶の軸全長に対する円柱状の湾曲表面の軸長の比が0.9より大
きいような形をした基底面を有する円柱状微結晶で形成されたガリウム含有LT
Lゼオライトを含む触媒と接触させて炭化水素の少なくとも一部を芳香族炭化水
素に転化する工程を含む方法を提供するものである。
下記の実施例は、本発明を具体的に説明するものである。
比較例A
米国特許第 3216789号の実施例1を繰り返した。
下記の2種類の溶液を調製した。溶液 A
重量部
KOH ペレット、純度87.4重量%(Baker) 53.17
Al(OH)3末、純度98.5%(Alcoa) 8.20
脱イオンH2O 57.19
カリウム源及びアルミニウム源を水と混合し、透明な溶液が生じるまで煮沸し
た。室温に冷却後、水の損失を補った。溶液 B
重量部
SiO2、Ludox HS40、40重量% SiO2 155.54
脱イオンH2O 23.13
溶液Aを溶液Bに攪拌しながら量的に加えた。得られた合成混合液は、下記の
モル組成を有した。
8.0 K2O:Al2O3:20 SiO2:200 H2O
合成混合液の一部を、ガラスライナーに移し、スレンレススチールオートクレ
ーブに入れた。オートクレーブをオーブンに移し、室温から100℃に2時間か
けて加熱し、その温度で169時間維持した。
冷却後、オートクレーブを開け、ライナーの内容物を調べた。生成物が底に沈
降し、透明な母液が残った。生成物をpH10.2に達するまで数回水洗し、オ
ーブン内で乾燥した。
X線回折(XRD)は、ゼオライトKLのパターン特性を示した。走査電子顕
微鏡(SEM)は、図1に示されたように平均サイズ125nmの球状集合体を示
している。
実施例1〜3
比較例Aの手順を、合成混合液の調製まで繰り返し、得られた混合液の種々の
試料を下記の表1に示される温度及び時間熱処理した。還流条件下にポリプロピ
レン容器内で結晶化した。得られた反応混合液をpH10〜11まで水洗し、最
後の洗浄水に維持した。最終洗浄水からの生成物を、高速遠心分離により分離し
た。実施例3では、68時間加熱した後の反応混合液からの試料を用いた。本試
料の一部及び完了した実験の洗浄スラリー生成物の各々の一部を乾燥し、X線回
折及びSEMデータを得るために用いた。XRD及びSEMの結果は、実施例3
の生成物が164時間処理の完了後と68時間後が同じであることを示している
。
実施例1〜3の洗浄反応器スラリーをプラスチック容器に移し、7日間放置し
た。懸濁したKL生成物は、容器の底に沈降する傾向を示さなかった。実施例1
〜3の全ての生成物は、KLの極めて弱いが認識可能なXRDパターンを示し、
無定形副生成物による混入が示される無定形ハロは存在しなかった。実施例3の
生成物のTEM写真を図2に示す。
実施例1〜3の生成物のトルエン吸着特性を、高度に結晶性(XRDで示され
る)の標準KL生成物と比較した。結果を表2に示す。
結果から、実施例1〜3の生成物の結晶化度が確認される。高マクロポア容量
は、個々のナノメートルサイズのKL粒子間に小さな空隙があることを示してい
る。
実施例4
比較例A及び実施例1〜3と同じモル組成を有する合成混合液を97℃で74
時間熟成した。熟成した生成物を水洗し、高速遠心分離機で洗浄水から分離し、
水に再び懸濁し、遠心分離し、水に再び懸濁し、このプロセスを洗浄水のpHが
10.8に達するまで繰り返した。
一晩放置した後に懸濁液を調べると、微量の固体が容器の底に沈降したことが
示された。乾燥した固体生成物のXRDは、ゼオライトLの特徴的なパターンを
示した。走査及び透過電子顕微鏡は、100〜110nmの粒径範囲を示した。本
実施例は、KLコロイド結晶が本発明の方法によって形成される上限に97℃が
近いことを示している。
実施例5
下記の2種類の溶液を調製した。溶液 A
重量部
KOH ペレット、純度87.4%(Baker) 30.31
Al(OH)3、98.5% ペレット(Alcoa) 15.84
脱イオンH2O 75.58
カリウム源及びアルミニウム源を水と混合し、透明な溶液が生じるまで煮沸し
た。その溶液を室温に冷却し、水の損失を補った。溶液 B
重量部
SiO2、Ludox HS40 150.24
脱イオンH2O 115.20
ゼオライトL種晶、75nm、5.49重量% 固形分/水 1.7884
水をコロイドシリカに加え、得られた液体をブレンダーで混合した。種晶懸濁
液をブレンダー内容物に加え、30秒間混合した。次に、溶液Aを加え、3分間
混合し、濃厚化ゲルが得られた。使用した種晶は、実施例1に記載されたように
得られた。
混合液の全重量に対して252重量ppm(0.025重量%)を有する合成混合液
のモル組成は下記の通りであった。
2.36 K2O:Al2O3:10 SiO2:162 H2O
326.70gの合成混合液を、300mlのスレンレススチールオートクレー
ブに移し、室温のオーブン内に入れた。オーブンを4時間かけて175℃に加熱
し、その温度で66時間維持した。
冷却後、生成物を750mlの水で洗浄水のpHが9.6に達するまで5回洗浄
した。生成物を120℃で乾燥し、収量は50.9gであった。
SEMは、平均長が0.6μm、1/d比が1.7で平坦な基底面を有する円柱状
微結晶からなる生成物を示した。SEMは、結晶形態が全て円柱状KLの特徴を
有することを示した。図3及び図4は、各々倍率10,000及び40,000の
SE顕微鏡写真を示す。
実施例6及び比較例B
これらの例においては、実施例5よりアルカリ度の低い合成混合液の生成物に
関するコロイド種晶の影響を調べた。
下記のモル組成を共に有する2種類の合成混合液、
2.10 K2O:Al2O3:10 SiO2:160 H2O
実施例1に記載されたように製造された種晶0.075重量%を更に含む実施例
5の混合液、種晶を含まない比較例Bの混合液を調製した。双方の混合液を、ス
テンレススチールオートクレーブ内で150℃で80時間水熱処理した。
実施例6の生成物は、極めて良好な結晶性で純粋なゼオライトLであり、比較
例Bは、主にゼオライトW及び無定形物質であった。
実施例7
下記のモル組成を有する合成混合液を調製した。
3.14 K2O:0.177 Al2O3:10 SiO2: 159 H2O
本合成混合液のK2O:Al2O3比は、単独で水熱処理した場合にゼオライトL
にゼオライトTがかなり混入しかつ無定形物質が生じるようなものであった。し
かしながら、実施例1に記載されたように調製された255重量ppm(0.025
重量%)の75nmのKL種晶を混合液に入れた。
混合液をステンレススチールオートクレーブで170℃において80時間処理
し、pH9.5まで洗浄し、120℃で乾燥した。生成物は、純粋なゼオライト
KLであった。SEMは、平坦な基底面を有する円板形結晶(“ホッケーパック
”型
結晶)の生成物であった。図5及び図6は、各々倍率10,000及び40,00
0のSE顕微鏡写真を示す。
実施例8
下記の2種類の溶液を調製した。溶液 A
重量部
KOH ペレット、純度87.4%(Baker) 62.16
Al(OH)3、98.5%(Alcoa) 32.47
脱イオンH2O 157.00溶液 B
重量部
SiO2、Ludox HS40 308.00
脱イオンH2O 236.21
KL種晶コロイド懸濁液 3.67
(75nm、5.49重量% 固形分/水)
これらの溶液を調製し、実施例5に記載されたように混合した。
混合液の全重量に対して253重量ppm 種晶を有する合成混合液のモル組成は
下記の通りであった。
2.36 K2O :Al2O3 : 10 SiO2 : 162 H2O
合成混合液を、1リットルの攪拌スレンレススチールオートクレーブに移した
。
オートクレーブを80 rpm(先端速度≒0.4M/S)で攪拌しながら150℃まで8
時間かけて加熱した。温度が≒150℃に達した時に攪拌を停止し、混合液をこ
の温度で60時間静状態下に維持した。生成物をpH10.9に達するまで数回
水洗し、120℃のオーブンで乾燥した。
XRDは、生成物が微量のゼオライトWのような混入物のない非常に良好な結
晶性KLであった。
SEMは、生成物が長さ約0.4μm で平坦な基底面を有する非常に均一なサ
ブミクロン円柱状結晶からなることを示した。
X線回折を図7にμm で示し、10,000×及び40,000×のSEM写真
を図8及び図9に示す。
比較例C
本実施例は、50重量ppm のMg2+化合物を含有する合成混合液からガリウム
−LTLを製造する米国特許第 5,396,009号の手順を記載するものである。
溶液A−没食子酸カリウム溶液
成分1及び2を透明になるまで煮沸しながら3に溶解した。その溶液を室温に
冷却した。成分3(50.00部)の一部を用いて没食子酸カリウム溶液をケイ
酸塩溶液に量的に移した。
溶液B−50重量ppm Mg2+を含有するケイ酸塩溶液
成分1、2及び3は、約2分間ブレンダーで混合した。ブレンダーの含量に没
食子酸カリウム溶液(A)を加えた。2つの溶液を約4分間混合した。わずかに
青味を帯びて透明な非ゲル化混合液が得られた。
合成混合液のモル組成は下記の通りであった。
2.60 K2O :0.65 Ga2O3 : 10 SiO2 : 160 H2O
混合液は、50重量ppm Mg2+化合物を含有した。
343.96部の合成混合液を、スレンレススチールオートクレーブに移した
。オートクレーブを室温のオーブンに入れた。オーブンを1時間かけて150℃
まで加熱し、その温度で39時間維持した。
生成物を、700部の水で4回pH10.4まで洗浄し、引き続いて120℃
で16時間乾燥した。得られた生成物の重量は、38.8部であった。
XRDによれば、生成物は、2θ20と35間にわずかな“ハロ”の存在によ
って示された未反応ゲル粒子がわずかに混入したガリウムLTLであった。SE
Mにより、無定形物質の存在が確認され、粒子が大きいことが示された。直径は
、1.5〜3μm であり、長さが0.7〜1.0μm であった。
Al−LTLが微量の2価のカチオン、例えば、Mg2+の存在下に結晶化する
場合、粒径及び粒度分布は2価のカチオンを含まない同じ合成混合液から得られ
たAl−LTLに対して極めて顕著に減じる。
比較例D
2価のカチオンを含有しない(添加しない)以外は実施例Cと同様に調製し同
じ条件下に結晶化した合成混合液から、無定形物質を混入した大きな結晶サイズ
Ga−LTLが得られた。
比較例C及びDで得られた生成物のSEM写真を、図10及び図11に示す。
実施例9
50重量ppm のLTLコロイド種晶の存在するときのGa−LTLの合成
下記のモル組成を有しかつ50重量ppm LTLコロイド種晶を含む合成混合液
を、比較例C及びDと同じ手順を用いて調製した。
2.60 K2O : 0.65 Ga2O3 : 10 SiO2 : 160 H2O
混合液を、150℃で39時間結晶化した。得られた生成物を、pH9.6まで
数回水洗し、引き続いて120℃で乾燥した。生成物の収量(部生成物/100
部ゲル)は、10.1であった。XRDは、生成物が非常に良好な結晶性で純粋
であり、長さ0.3〜0.5μm 及び直径0.5〜0.8μm の均一な粒子からなる
ことを示した。1/d比は、≒0.6であった。
実施例10
250重量ppm LTLコロイド種晶の存在するときのGa−LTLの合成
250重量ppm コロイド種晶を含む以外は実施例9と同じモル組成を有する合
成混合液を、その実施例と同じ方法で結晶化した。得られた生成物をpH9.6
まで洗浄し、120℃で乾燥した。生成物の収量は、10.2であった。XRD
により、生成物が非常に良好な結晶性で純粋であり、SEMは、長さ0.1〜0.
3μm及び直径0.2〜0.5μm の均一な粒子からなることを示した。1/d比
は、≒0.6であった。
実施例9及び10の結果は、LTLコロイド種晶がGa−LTLの形成に非常
に有効であると共に種晶レベルを調節することにより粒子寸法を制御するのに非
常に有効であることを示している。
実施例9及び10で得られた生成物のSEM写真を図12及び図13に示す。
実施例11
75重量ppm 種晶の存在するときのGaを多く含んだ合成混合液からのGa−
LTLの合成。
75重量ppm コロイド種晶を含む合成混合液を調製した。この場合、合成混合
液のGa2O3含量が92%だけ増加し、混合液のアルカリ度がK2O/SiO2=
0.26からK2O/SiO2=0.24に低下した。モル組成は下記の通りであっ
た。
2.40 K2O : 1.25 Ga2O3 : 10 SiO2 : 160 H2O
これは、望ましくないゼオライトWの形成に対する合成の“耐性”を調べるた
めに行った。合成混合液を2つのステンレススチールオートクレーブに分けた。
一方の合成混合液を150℃で48時間熟成し、もう一方を175℃で24時間
熟成した。洗浄及び乾燥した後、生成物の収量は150℃合成については19.
6及び175℃合成については19.4であった。XRD及びSEMにより、生
成物は非常に良好な結晶性で純粋であり、向上した形態、即ち、顕微鏡的に平坦
な基底面を有した。150℃及び175℃双方の生成物のX線回折及びSEM写
真を図14〜図17に示す。
実施例12〜15
これらの4実施例では、担持ゼオライトL含有層の製造において種々の手順を
用いた。
各実施例については、α−アルミナ多孔性円板を超音波浴中n−ヘキサンで1
0分間洗浄し、5分間風乾し、超音波浴中アセトンで10分間洗浄し、50℃の
オーブンで1時間乾燥した。次に、実施例12〜14の円板を減圧下で2時間水
中に浸漬し、4000r.p.m.で30秒間回転乾燥した。実施例15については、
この処理を省略し、円板を次の段階まで50℃で維持した。
75nmのゼオライトL種晶のコロイド懸濁液を、実施例13〜15の円板の表
面に滴下した。円板を表面上の液体と10秒間放置し、次に、4000r.p.m.で
30秒間遠心した。実施例13及び14については、懸濁液は9.56重量%の
種晶を含有し、実施例15については、濃度は0.48重量%であった。実施例
12については、種晶を入れる工程を省略した。
下記の重量組成の合成混合液を調製した。
溶液Aを、比較例Aに記載されたように調製した。
各実施例においては、溶液Aを溶液Bと量的に混合した。実施例13では、円
板に種晶を入れる前に混合が行われたので、混合液をオートクレーブに注入した
後、実施例12及び13の円板を浸漬する前に粘稠になるのに時間(約7分)が
かかった。ゲル表面は、完全に平らでなかった。実施例14及び15では、円板
に種晶を入れ、準備した後に合成混合液を調製したので、円板をオートクレーブ
内の合成混合液に処理した面を下にして浸漬した場合に、その表面は平坦であり
、種晶層とゲル間の良好な接触が得られた。
各実施例においては、オートクレーブを2時間かけて175℃に加熱し、その
温度で24時間維持した。混合液を冷却した後、オートクレーブを開け、支持体
を水で洗浄し、洗浄水の導電率が5μジーメンス/cm、70℃(200mlの水中
)になるまで70℃で洗浄し、円板を100℃で一晩乾燥した。
下記の表3は、実施例12〜15に用いられた手順の違いを纏めているもので
ある。
被覆した円板をXRD及びSEMで調べた。XRDは、4例全てにおいてゼオ
ライトWと混合したゼオライトLを含む層が支持体上で成長したことを示した。
SEMで調べた場合、実施例12の生成物は約30μm 厚のゼオライト層を示
した。ゼオライトLが極めて多く、長さ0.5〜2.0μm、1/d比約3のラン
ダムに向いた六角形の結晶からなる。ゼオライトL層全体にランダムに向いたゼ
オライトW結晶は、約30μm 長及び10μm 厚である。
実施例13の生成物のSEM分析は、支持体上に25μm 厚の種晶層を示し、
その上面にゼオライトW結晶が混入された長さ0.5〜15μm、1/d比約3の
六角形のゼオライトL結晶の約1〜2μm 厚の第1層及びゼオライトLマトリッ
クスに埋込まれた大きな(30μm ×10μm)ゼオライトW結晶からなる約4
0μm 厚の剥離可能な第2層を付着している。
実施例14の生成物のSEM試験は、種晶層を示さなかったが、c軸が支持体
表面に対して60〜90°に向いた0.5〜2μm、1/d比約3のゼオライトL
結晶の第1薄層(約2μm)上に約30μm 厚のゼオライト層が形成されている。
厚いゼオライト層は、ゼオライトWが混入された主にゼオライトLである。
実施例15の生成物のSEM試験は、円板の大きな面積においてc軸が支持体
表面に対して90°近くに向いたゼオライトL結晶(断面の直径約300nm、1
/d比約3)の薄層を示している。(この層は、観察されない種晶層から生じる
と考えられる。) 円板の一部には、大きなゼオライトW結晶が埋込まれている
ゼオライトLの30μm厚さの容易に剥離可能な層が重層している。
色素浸透試験にかけると、実施例12〜14の生成物は容易にローダミンBを
吸収した。実施例15の生成物は、円板の縁でのみ色素を吸収し、密な中間成長
ゼオライト層が形成されたことを示した。
図18及び図19は、実施例14及び15の生成物のXRDパターンを示す。
円板が浸漬されている合成混合液は、層内のゼオライトW形成を減少又は回避
するためにゼオライトLコロイド種晶を含有することもできる。
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フロントページの続き
(72)発明者 アントニー マルク アシュ
ベルギー ベー1981 オーフシュタード
モーニエストラート 30