【発明の詳細な説明】
アルキルカルボキシアミノ酸−カイネートレセプターのモジュレーター
発明の背景
本発明は一般的に、シナプス後のグルタメートレセプターのカイニン酸(KA)
サブタイプに関し、そしてより詳細には、KAレセプターに結合するKA以外の化合
物およびその使用方法に関し、そしてグルタメートレセプターを調整する新規化
合物を設計する方法に関する。
過去20年間、神経組織の損傷および障害の処置に関する知識を生み出した、神
経組織のシナプス相互連結の基本構造および化学の理解における変革が起こって
きた。この研究は、シナプス前膜から放出される神経化学伝達物質、および、最
も重要なことに、これらの伝達物質に対するシナプス後レセプターの特性を理解
することに集中してきた。ニコチン性アセチルコリンレセプターおよびγ-アミ
ノ酪酸レセプター(GABA)が特徴付けられ、そしてアロステリックモジュレータ
ーの制御下にあることが見出されている。過去10年間、多くの注意が興奮性アミ
ノ酸(EAA)、主にグルタミン酸(一次興奮性神経伝達物質)およびアスパラギ
ン酸、ならびにそれらのレセプターに向けられてきた。なぜなら、これらのアミ
ノ酸は哺乳動物中枢神経系において迅速な(fast)興奮性伝達を仲介するからで
ある。従って、グルタミン酸は、入ってくる神経シグナルの強度を反映するシナ
プス後ニューロンに変化を引き起こし得る。
EAAレセプターの2つの主要なクラスが以下のように分類される。イオンチャ
ンネル型(ionotropic)および代謝型(metabotropic)。イオンチャンネル型レ
セプターは、リガンド依存性(ligand-gated)イオンチャンネルを含み、シグナ
リングのためのイオン流を仲介する。一方、代謝型レセプターは、シグナリング
にGタンパク質を用いる。イオンチャンネル型EAAグルタメートレセプターのさ
らなる下位分類は、このレセプターを選択的に活性化するグルタミン酸およびア
スパラギン酸以外のアゴニスト(刺激物質)に基づく。現在、規定された濃度で
の結合に基いて、イオンチャンネル型グルタメートレセプターの3つの主要なサ
ブタイプがあると考えられている:1)N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)に
反応性のあるレセプター;2)NMDAには反応性はないが、α-アミノ-3-ヒドロキ
シ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)に反応性のあるレセプタ
ー;3)NMDAには反応性はないが、KAに反応性のあるレセプター。NMDAレセプタ
ーは、二価イオン(Ca++)および一価イオン(Na+、K+)の両方のシナプス後神
経細胞への流入を制御するが、最大の関心はCa++流にある。AMPAおよびKAレセプ
ターはまた、一価のK+およびNa+、ならびに時に二価のCa++のシナプス後細胞へ
の流入を調節する。
EAAレセプターは、発生の間にニューロン構造およびシナプス結合性の特定に
関係付けられており、そして経験依存性のシナプスの修飾に関与し得る。これら
のレセプターはまた、CNS障害の広範なスペクトルに関与するようであるので、
興味がもたれてきた。例えば、卒中または外傷性の損傷によって引き起こされる
脳の虚血の間に、損傷を受けたニューロンまたは酸素の欠乏したニューロンから
過剰量のEAAグルタミン酸が放出される。この過剰なグルタミン酸のシナプス後
グルタメートレセプターへの結合は、そのリガンド依存性イオンチャンネルを開
き、それにより、イオンを流入させ、これが次いで、タンパク質、核酸、および
脂質の分解、ならびに細胞死をもたらす生化学的カスケードを活性化する。この
現象(興奮毒性として知られる)はまた、低血糖、虚血、およびてんかんから、
ハンティングトン病、パーキンソン病、およびアルツハイマー病における慢性神
経変性までの範囲の他の障害に関連する神経学的損傷の原因であると考えられて
いる。
イオンチャンネル型EAAレセプターに作用する薬物は、従って、膨大な治療的
潜在能力を有することが期待される。Cordiらの米国特許第4,904,681号は、記憶
を改善/促進し、そして神経学的障害に関連する認識欠損を処置するためのNMDA
レセプターを調整する化合物(D-シクロセリン)の使用を教示する。Cordiらの
米国特許第5,061,721号は、アルツハイマー病、加齢に関連する記憶障害、学習
欠損、および精神病的障害を処置するため、ならびに健常個体において記憶また
は学習を改善するための、D-シクロセリンおよびD-アラニンの組み合わせの使用
を教示する。Trullasらの米国特許第5,086,072号は、大うつ病、双極性障害、気
分変調性障害、および季節性感情障害を含む気分障害を処置するための、NMDAレ
セプターを調整する別の化合物(1-アミノシクロ-プロパンカルボキシル酸(AC
PC))の使用を開示する。Trullasらはまた、ACPCが動物モデルにおいて臨床的
に効果的な抗うつ薬の作用を模倣すること、ならびにACPCおよびその誘導体が、
NMDAレセプターの過度の活性化から生じる神経薬理学的障害を処置するために使
用され得ることを教示する。
EAAレセプターはまた、薬物嗜癖に関する生理学的基礎に関与する。米国特許
出願第08/121,100号において、Maccecchiniは、アヘン製剤に対する耐性だけで
なく、それに対する依存性もまた、NMDAレセプターの部分的なアゴニストにより
妨げられ得ることを実証している。現在、3つのタイプのEAAイオンチャンネル
型レセプターの活性化におけるバランスは、正常な神経学的シナプス制御を達成
するために必要であり得ると考えられている。過剰のグルタミン酸の存在下で、
NMDAレセプターのアンタゴニストが、即時興奮毒性を妨げることが知られている
。しかし、より長い期間にわたって、全ての細胞死は完全には妨げられない。こ
のことは、AMPAおよびKAレセプターにおけるEAAの連続した作用によって引き起
こされる興奮毒性によるかもしれない。
NMDA、AMPA、およびKAは以下の概略図で示されるグルタミン酸アナログである
。
これらのアナログが、レセプターのタイプの間で区別され得、そして種々の結合
部位の3次元配座における微妙な差異を反映しているにちがいないことは驚くべ
きことである。配座的に制限されたアナログの選択的結合は、グルタミン酸が異
なる配座で各レセプターに結合し得ることを示唆する。グルタミン酸はそれ自体
、少なくとも9つの低エネルギーねじれ型配座を有する。これらの相違点の存在
は
また、EAAレセプターに及ぼされる微細な程度の化学的調節を示唆し、そして必
要な結合配座が各レセプターについて理解されたならば、レセプターの選択的モ
ジュレーターを見出すための潜在能力を示唆する。
最初に海藻Digenea simplex(これは、日本の海岸沖に生育する)から単離さ
れたKAは、3つの不斉炭素原子を有するグルタミン酸アナログである。これは、
最も強力な一般的に用いられる外因性の興奮毒の1つであり、そして研究により
、その神経毒作用はAMPAおよびKAレセプターを介して仲介されることが示されて
いる。特に興味深いのは、KA興奮毒性により引き起こされる神経変性は、他のEA
Aレセプターアゴニストで観察されるものとは著しく異なるという事実である。
実際、KA曝露後の試験動物の脳において観察される変性は、神経変性障害、ハン
ティングトン病、および側頭葉てんかんにおいて観察される変性と非常に類似し
ている。
アロステリックモジュレーターによるNMDAレセプターの調節について非常に多
くが知られてきたが、AMPAおよびKAレセプターについて知られていることはずっ
と少ない。この知識が欠乏していることの主な理由は、KAレセプターを選択的に
調整する化合物が知られていないからである。例えば、6-ニトロ-7-スルフアモ
イルベンゾ[f]キノキサリン-2,3-ジオン(NBQX)は、神経変性疾患を処置するた
めに有用であるAMPA/KAレセプターアンタゴニストであるとして、Jacobsenらに
より、米国特許第4,889,855号において報告されている。NBQXは、キノキサリン-
2,3-ジオンファミリーの化合物の最もAMPA/KAレセプター選択的なメンバーであ
る。NBQXは、AMPAおよびKAレセプターの両者へのグルタメート結合を競合的に阻
害するが、KAレセプターと比較してAMPAレセプターに対して30倍高い親和性を有
し、そしてまたNMDAレセプターのグリシン部位にも非特異的に結合する。不運な
ことに、NBQXは水中の溶解性が非常に限られているので、ヒトへの使用のために
開発されていない。従って、他のレセプターからの未知の寄与を有することなく
KAレセプターに対するEAAの効果を研究することは不可能であった。さらに、KA
レセプターの過剰なEAA刺激によって引き起こされる損傷を選択的に防ぐことは
不可能であった。明らかに、KAレセプターを選択的に調整する化合物の利用可能
性は、過剰な刺激による興奮毒性細胞死を妨げ得る。
グルタミン酸およびアスパラギン酸が神経レセプターを活性化する天然の神経
伝達物質であるという発見以来、化学者および薬理学者は、これらのレセプター
のアゴニストまたはアンタゴニスト調整にとって重要な形状、ファーマコホア(
pharmacophore)位置、およびファーマコホアタイプの重要な局面を理解しよう
と試みている。一般的にランダムなスクリーニング、ならびに運を天に任せる合
成および試験が、これらのレセプターの新規のアゴニストまたはアンタゴニスト
を見出すために用いられた。各々のグルタミン酸レセプターサブタイプ(例えば
、NMDA、AMPA、またはKA)は、アンタゴニストに対する異なる形状およびファー
マコホア位置と共にアゴニストの形状およびファーマコホア位置についてのそれ
自体の要求を有するようである。新規のアゴニストまたはアンタゴニストを設計
するための最適の方法は、特異的な形状およびファーマコホア位置を含む各々の
レセプターサブタイプに対するアゴニストまたはアンタゴニストのモデルを有し
、次いで、このモデルを用いてファーマコホアを新規分子に連結することである
。
グルタミン酸は細胞中いたるところの多くの種々の生化学的反応に関与するの
で、グルタミン酸アナログを見出すための試みがなされた。ここで、種々のグル
タミン酸炭素についての立体化学が、生化学的反応に関係するように正確な次元
的適合を有する他の分子を見出す試みで、変化されている。
いくつかの刊行物は、置換されたアルキルグルタミン酸を開示する。H.J.Ov
ermanら(Neuroscience,26(1),17-31,1988、表4)は、ラセミDL 4-メチルグ
ルタミン酸、DL 4-フルオログルタミン酸、またはDL 3-メチルアスパラギン酸、
およびそれらのNMDAレセプターへの結合を記載する。Overmanは、メチル基が、
グルタミン酸自体と比較してNMDA結合親和性に有害であることを教示する。
NMDAレセプターに関して知られてきたことの多くが、種々の調整剤の1つまた
は別の作用をブロックする化合物の発見により可能になった。ブロッキング剤を
使用して経路を調べるアプローチは、生化学的研究および生物物理学的研究にお
ける長い歴史を有し、そして非常に多くの場合、これらのブロッキング剤は有用
な治療剤であることが見出されてきた。KAレセプターに選択的に結合する化合物
も、例外ではない。
従って、本発明の1つの目的は、KAレセプターに選択的に結合する化合物を提
供することである。
本発明のさらなる目的は、KAレセプター機能を選択的に調整または調節する化
合物を提供することである。
本発明のさらなる目的は、KAリガンド依存性EAAレセプター複合体を介したカ
チオンの流れを特異的に調節するための化合物およびそのような化合物の使用の
ための方法を提供することである。
本発明の別の目的は、グルタメートレセプターモジュレーターを設計するため
の方法を提供することである。
本発明のなお別の目的は、神経学的、神経心理学的、神経精神病学的、および
神経精神薬理学的状態、中枢神経系または脊髄の外傷および損傷後の神経変性の
処置、痛みの緩和、ならびに学習および記憶の促進のための化合物、およびそれ
らを使用する方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、KAレセプターにおいて選択的に作用する化合物を用
いて患者における化学毒性を処置するための化合物およびそれらを使用するため
の方法を提供することである。
発明の要旨
KAレセプターに結合し、そしてKAレセプター機能を調整する、1つのクラスの
アルキルカルボキシアミノ酸化合物が見出された。例示的な化合物は以下を含む
:
(2S,4R)-4-メチルグルタミン酸、および
(2S,4S)-4-メチルグルタミン酸。
これらの化合物は、適切な薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、1)
イオンチャンネル型EAAレセプターのカイネートサブタイプの過剰な活性化また
は不十分な活性化に関連する、神経学的、神経心理学的、神経精神病学的、神経
変性性、神経心理薬学的、および機能的な障害を処置するための方法;2)KAレ
セプターの不活性化、次善の活性化、または過剰活性化に関連する認識障害を処
置するための方法;3)記憶、学習、および関連する精神的プロセスを改善およ
び促進するための方法;および4)痛みの緩和に有用である。化合物はまた、急
性および慢性の神経変性疾患、発作、うつ病、不安、および物質嗜癖を処置する
ための他の化合物を同定し、そして特徴付けるための試験剤として使用され得る
。
AMPA、KA、NMDA、代謝型、または他のレセプターに対するグルタメートレセプ
ターアゴニスト、部分的アゴニスト、部分的アンタゴニストまたはアンタゴニス
トについての設計およびスクリーニングの方法もまた、本明細書中で特徴付けら
れるモデルに基づいて記載される。アゴニスト結合形状は、グルタミン酸の9つ
の低エネルギー配座の1つに由来する。低エネルギー配座は、分子力学プログラ
24(1992)により記載された)のような力場により算出される包括的な最小エネル
ギー配座が3kcal以内の配座である。NMDA、AMPA、およびKAレセプターは各々、
異なる形状のグルタミン酸、およびレセプターのアゴニスト配座に対するアミノ
およびカルボキシルファーマコホアの位置付けを必要とする。
このモデルおよび実施例に示される結果に基づいて、[3H]カイニン酸結合の阻
害についてIC50<50μMでKAレセプターに結合し、図1の投影図のように水素また
は孤立電子対を有するアミノ基、ならびに図1の投影図のように孤立電子対を有
する酸素O1、O3、およびO4を有する化合物は、レセプター機能に対するアゴニス
トである。図1のようにアミノ基ならびにO1、O2、O3、およびO4の全ての酸素を
有する化合物は、最適なアゴニスト活性を有する。[3H]カイニン酸結合の阻害に
ついてIC50<50μMでKAレセプターに結合し、図2の投影図のように水素を有する
アミノ基、および図2の投影図のように孤立電子対を有する酸素を有する化合物
は、レセプター機能に対するアンタゴニストである。
図面の簡単な説明
図1は、KAアゴニストの2方向の概略図である。
図2は、KAアンタゴニストの2方向の概略図である。
図3は、ファーマコホアモデルの概略図である。
図4は、KAアゴニストモデル(四角)、AMPA(十字のある丸)、およびL-グル
タメート(丸)についての推定のLog IC50[3H]-カイネート対実際のLog IC50[3H
]-カイネートのグラフである。
発明の詳細な説明
I.用語の解説。
本明細書中で使用される用語「アゴニスト」は、カイネートレセプターを介す
るカチオンの流動を増加させる、すなわち、チャンネルオープナーとして働き、
かつ同じレセプターを介するカチオンの流動を減少させることが観察されていな
い任意の化合物を意味する。
本明細書中で使用される用語「アンタゴニスト」は、カイネートレセプターを
介するカチオンの流動を低減させる、すなわち、チャンネルクローザーとして働
き、かつ同じレセプターを介するカチオンの流動を増加させることが観察されて
いない任意の化合物を意味する。
本明細書中で使用される用語「部分的アゴニスト」は、主要部位モジュレータ
ー(principal site modulator)の存在または非存在に依存して、リガンド依存
性チャンネルを介するカチオンの流動を増加させるかまたは減少させるように、
EAAレセプターを調整する化合物を意味する。主要部位モジュレーターの非存在
下で、部分的アゴニストは、リガンド依存性チャンネルを介するカチオンの流動
を増加させるが、それは主要部位モジュレーターによって達成される流動より低
い。部分的アゴニストは、レセプターチャンネルを部分的に開く。主要部位モジ
ュレーターの存在下で、部分的アゴニストは、リガンド依存性チャンネルを介す
るカチオンの流動を、主要部位モジュレーターによって通常達成される流動より
低く減少させる。
本明細書中で使用される用語「主要部位リガンド」は、ある部位に結合する既
知の内因性リガンドをいう。
本明細書中で使用される用語「グルタミン酸」は、アミノ酸L-グルタミン酸(
「Glu」 )を意味する。
本明細書中で使用される用語「神経精神薬理学的障害」は、KAレセプターリガ
ンド依存性カチオンチャンネルを介するイオンの減少した流動または過剰な流動
から生じる障害、またはそれに関連する障害を意味し、そして認識、学習、およ
び記憶の欠損、化学的毒性(物質耐性および物質嗜癖を包含する)、興奮毒性、
神経変性障害(例えば、ハンティングトン病、パーキンソン病、およびアルツハ
イマー病)、卒中後の後遺症、てんかん、発作、気分障害(例えば、双極性障害
、気分変調性障害、および季節性感情障害)、ならびにうつ病を包含する。神経
変性障害は、レセプターの機能異常または機能不全から生じ得る。本明細書中で
使用されるように、この用語は痛みを包含する。
本明細書中で使用される用語「NMDAレセプター」は、少なくとも、EAAグルタ
ミン酸ならびにNMDAによって刺激されるが、AMPAまたはカイニン酸によっては刺
激されないシナプス後レセプターを意味する。これは、リガンド依存性レセプタ
ーである。
本明細書中で使用される用語「AMPAレセプター」は、EAAグルタミン酸ならび
にAMPAによって刺激されるが、NMDAによっては刺激されず、そしてカイニン酸に
よって最小限のみかつ高濃度で刺激されるシナプス後レセプターを意味する。こ
れは、リガンド依存性レセプターである。
本明細書中で使用される用語「KAレセプター」は、少なくとも、EAAグルタミ
ン酸ならびにKAによって刺激されるが、NMDAによっては刺激されず、そしてAMPA
によって最小限のみかつ高濃度で刺激されるシナプス後レセプターを意味する。
これは、リガンド依存性レセプターである。
本明細書中で使用される用語「効力(potency)」は、レセプターチャンネル
に対する特定の効果が観察されるモル濃度をいう。詳細には、拮抗効果を示す化
合物の効力はIC50値として表される。IC50値は、その濃度でのチャンネル開口の
阻害が、達成し得る最大阻害の50%である濃度である。より低い値は、より高い
効力を示す。作用効果を示す化合物の効力はEC50値として表される。EC50値は、
その濃度でのチャンネル開口の増強が、達成し得る最大増強の50%である濃度で
ある。より低い値は、より高い効力を示す。
本明細書中で使用される用語「有効な(efficacious)」は、特定の化合物に
よって達成される最大チャンネル開口または閉口と、主要部位リガンドによって
達成される最大チャンネル開口または閉口との比較をいう。有効性(efficacy)
は、特定の効果の大きさをいう。
本明細書中で使用される用語「ファーマコホア」は、静電気的にまたは水素結
合を介してレセプタータンパク質と直接相互作用する原子または原子群を意味す
る。
本明細書中で使用される用語「特異的に結合する」は、複数の部位またはレセ
プターに結合する化合物より少なくとも3倍大きな親和性で、レセプターに結合
する化合物を意味する。
アルキル置換基が本明細書中で同定される場合、他に特定されない限り、通常
のアルキル構造が意図される(すなわちブチルはn-ブチルである)。しかし、基
が同定される場合(例えば、R1)、アルキル、アルケニル、およびアルキニルの
定義において、分枝鎖および直鎖の両方が包含される。
薬学的に受容可能な塩には、金属(無機)塩および有機塩の両方が包含される
;その一覧は、Remington's Pharmaceutical Sciences、第17版、1418頁(1985)
に提供される。適切な塩の形態が、物理的および化学的な安定性、流動能、吸湿
性、および溶解性に基づいて選択されることは、当業者に周知である。
必要とされる活性に依存して、このクラス由来の化合物は、薬学的神経保護剤
として、急性のCNS損傷および外傷の症例を処置するため、ならびに痙攣、気分
障害、痛みの緩和、およびKAレセプターを介するイオン流の制御における慢性的
な障害に部分的に起因する他の神経精神病学的疾患および神経変性疾患を処置す
るために使用され得る。同様に、このクラスの化合物は、障害を処置するために
必要とされる活性について選択され得る。本明細書中で使用されるように、神経
精神病学的障害および神経変性障害の一般的な定義が意図され、ここでは、診断
は、組織病理学よりもむしろ異常な挙動の緩和に基づいている。
II.合成
アルキルカルボキシアミノ酸化合物のクラスは、KAレセプターに結合し、そし
て、KAレセプターの機能を調整することが見出されている。これらの化合物は以
下の式を有する:
ここで:
R1は、
1)CH3、または
2)ハロゲン(F、Cl、およびBr);
R2およびR3は、独立して
1)H、
2)C1〜C6-アルキル、
3)C3〜C4-アルケニル、
4)C3〜C5-シクロアルキル、
5)C1〜C6-アルキル-CO-、
6)C1〜C6-アルキル-OCO-、
7)C1〜C6-アルキル-NHCO-、
8)HCO-、または
9)C3〜C6-アルキニルであり;
R2およびR3は一緒になって、-CH2(CH2)pCH2-であり得;
pは0〜3であり;
そしてこれらの化合物の薬学的に受容可能な塩である。
好ましい化合物は、式Iの化合物であり、ここで:
R1はCH3であり;
R2およびR3は、独立して
1)H、
2)C1〜C3-アルキル、
3)C3〜C4-アルケニル、
4)C3-シクロアルキル、
5)HCO-、または
6)CH3-(CH2)n-CO-であり;
R2およびR3は一緒になって、-CH2(CH2)pCH2-であり得;
nは0〜1であり;
pは0〜3であり;
そしてこれらの化合物の薬学的に受容可能な塩である。
好ましい化合物のより好ましいものは、選択的にカイネートレセプターと結合
する式Iの化合物であり、ここで:
R2およびR3は、独立して
1)H、
2)C1〜C3-アルキル、
3)HCO-、または
4)CH3-CO-であり;
そしてこれらの化合物の薬学的に受容可能な塩である。
例示的な化合物として:
(2S,4R)-4-メチルグルタミン酸、
(2S,4S)-メチルグルタミン酸、
(2R,4S)-メチルグルタミン酸、および
(2R,4R)-メチルグルタミン酸、が挙げられる。
式Iの化合物は、本節に記載される反応および技術を用いて調製され得る。こ
の反応は、用いられる試薬および材料に適切で、かつもたらされる変換に適切な
溶媒中で行われる。分子上に存在する機能性が、提案される化学的な変換に一致
しなくてはならないことは、有機合成の当業者に理解される。このことは、合成
工程の順序、必要とされる保護基、脱保護条件、および分子上の適切な基の結合
を可能にするエノレートの生成に関する判断をしばしば必要とする。
スキームIにおいて、(S)-または(R)-グルタミン酸は、標準的な条件(March、
「Advanced Organic Chemistry」、第4版1992年、Wiley-Interscience Publica
tion、New York)下で、適切なアルコール(例えば、メタノール、エタノール、
t-ブタノール、またはベンジルアルコール)でエステル化される。次いで、ジエ
ステル生成物(式II)のアミン基は、標準的な条件(BuehlerおよびPearson、「
Survey of Organic Synthesis」、1970年、Wiley-Interscience Publication、N
ew York)で、適切なアミン保護基(例えば、ニトロベンゾイル、ナフトイル、N
-tert-ブトキシカルボニル(BOC)またはカルボベンジルオキシ(CBZ)などの芳
香族アミド)により保護される。この完全に保護されたグルタミン酸のエノレー
ト(III)は、不活性溶媒(例えば、テトラヒドロフランまたはエチルエーテル
)中で、-78℃〜0℃の温度範囲で、1〜5時間、強塩基(例えば、リチウムビ
ス(トリメチルシリル)アミドまたはリチウムジイソプロピルアミド)とIIIを
反応させることにより調製される。次いで、エノレートは、求電子剤(例えば、
ハロゲン化アルキル)と、-78℃〜-30℃の間の温度で、0.5〜24時間反応して式I
Vの化合物を与える。出発のグルタミン酸が(2S)の立体化学を有する場合、生
成物は(2S,4S)の立体化学を有する。反対に、出発のグルタミン酸が(2R)の
立体化学を有する場合、生成物は(2R,4R)の立体化学を有する。R1がアルキル
、アルケニル、アルキニル、およびシクロアルキルである本明細書中に記載され
る化合物は、この手順から調製される。式Vの化合物は、0℃の温度で、式IVの
化合物を強い水性の酸(例えば、HCl)と1〜48時間還流させる反応によるか、ま
たは溶媒(例えば、THFまたはエタノール)中で、0℃〜60℃の温度にて、0.5〜
18時間、LiOHで処理し、次いで、溶媒(例えば、塩化メチレン(CH2Cl2))中で
、室温にて0.5〜24時間トリフルオロ酢酸で処理することにより調製される。
式IX、X、XIおよびXIIの化合物は、スキームIIに従って調製され得る。式IXの
化合物(これは、ジアステレオマー混合物である)は、「Chemistry of Amino A
cids」、J.P.GreenseinおよびM.Winitz編、第3巻、1984年;Kreiger Publis
hing:Malabar、Florida、2438〜2445頁、およびその中に引用される参考文献に
記載される手順により調製され得る。次いで、式Xのラセミ体の二酸化合物、(2
S,4R)および(2R,4S)(分別結晶により得られる)は、March、「Advanced Org
anic Chemistry」、第4版1992年、Wiley-Interscience Publication、New York
、およびその中に引用される参考文献に記載されるような、標準的な物理的また
は化学的手段によって、個々の立体異性体に分離され得る。例として、式Xの化
合物は、上記の標準的な条件下でエステル化され得、次いで、アミンは、不活性
溶媒(例えば、CH2Cl2)中で、存在するアミン塩基(例えば、トリエチルアミン
、ピリジン、またはN,N-ジメチルアミノ-ピリジン)を用いて、0℃の温度で、0
.5〜24時間、溶媒を還流して、キラルなアシル化剤(例えば、(R)-(+)-または(S
)-(-)-α-メトキシ-α-(トリフルオロメチル)フェニルアセチルクロリド)でア
シル化され得る。次いで、得られたジアステレオマーは、分別結晶またはクロマ
トグラフィーにより物理的に分離され得、次いで、保護されたキラル異性体は、
強い水性の酸(例えば、HCl)と反応させ、0℃の温度で、1〜48時間、還流す
ることにより、脱保護され得、個々の異性体(例えば、式XIまたはXIIの化合物
)を与える。
あるいは、XIおよびXIIは、スキームIIIに概説された手順により調製され得る
。中間体XIVは、WooおよびJones(Tet.Lett.32(47)6949〜6952、1991)によ
り記載された手順により調製され得る。
ピログルタミン酸は、標準的な条件(March、「Advanced Organic Chemistry
」、第4版1992年、Wiley-Interscience Publication,New York)下で、適切な
アルコール(例えば、メタノール、エタノール、t-ブタノール、またはベンジル
アルコール)でエステル化されて、XIIIを与える。次いで、エステルXIIIを、ア
ルコール溶媒(例えば、エタノール( 「EtOH」 ))中で、0℃〜室温で1〜24時
間、還元剤(例えば、NaBH4)で還元する。次いで、対応するアルコールを、不
活性溶媒(例えば、THFまたは塩化メチレン)中で、(t-Bu)Ph2SiClのような試薬
で、0℃〜室温にて、1〜24時間シリル化する。次いで、アミドを不活性溶媒(
例えば、CH2Cl2)中で、-10℃〜室温にて、1〜6時間、BOCClまたは(BOC)2O、
および塩基(例えば、ピリジンまたはEt3N)での処理によりアミノ酸保護基(例
えば、BOC)で保護する。XIVのエノレートは、XIVを強塩基(例えば、リチウム
ビス(トリメチルシリル)アミドまたはリチウムジイソプロピルアミド)と、不
活性溶媒(例えば、テトラヒドロフランまたはエチルエーテル)中で、-78℃〜0
℃の温度範囲にて、1〜5時間反応させることにより調製される。次いで、エノ
レートを、求電子剤(例えば、ハロゲン化アルキル)と-78〜30℃の間の温度で
、0.5〜24時間反応させ、式XVの化合物を得る。次いで、XVを、室温にて、不活
性溶媒(例えば、THF)中で、F-を用いた処理により最初にアルコールを脱保護
し、次いで、酸化剤(例えば、RuCl3/NaIO4)によりアルコールを酸化すること
により、酸XVIに転化させる。
式XVIIの化合物は、スキームIVのパートaに記載されるように、適切に保護さ
れたアミノ酸のアシル化により調製され得る。アミノ酸は、塩基(例えば、ピリ
ジンまたはN,N-ジメチルアミノピリジン)とともに不活性溶媒(例えば、トルエ
ンまたはCH2Cl2)中で、または塩基(例えば、NaOHまたはNa2CO3)とともに混合
溶媒系(例えば、トルエン/水)中で、0℃の温度にて、溶媒が還流するまでア
シル化剤(例えば、ハロゲン化アシル、または無水物)で処理され得る。適切な
条件下での生成物の脱保護により、XVIIを与える。
式XVIIIの化合物は、スキームIV、パートbに記載されるように、適切に保護
されたアミノ酸のホルミル化により調製され得る。アミノ酸は、塩基(例えば、
ピリジンまたはN,N-ジメチルアミノピリジン)とともに不活性溶媒(例えば、ト
ルエンまたはCH2Cl2)中で、または塩基(例えば、NaOHまたはNa2CO3)とともに
混合溶媒系(例えば、トルエン/水)中で、0℃の温度にて、溶媒が還流するま
でホルミル化剤(例えば、混合無水物)で処理され得る。適切な条件下での生成
物の脱保護により、XVIIIを与える。
式XIXおよびXXの化合物は、スキームIV、パートcに記載されるように、適切
に保護されたアミノ酸のアルキル化により調製され得る。アミノ酸は、所望のア
ルデヒド(例えば、アセトアルデヒド)および還元剤(例えば、NaBH3CN)と、
酢酸のような溶媒中、20℃と80℃の間の温度での処理により、還元的にモノアル
キル化またはビスアルキル化され得る。適切な条件下での生成物の脱保護により
XIXおよびXXを与える。
Yがヘテロ環である式Iの化合物は、Eli LillyによるEPA 590,789およびその中
の参考文献に記載される手順の、当業者に公知の改変により調製され得る。
本明細書中に記載の化合物、およびそれらの調製は、以下の限定しない実施例
からさらに理解される。これらの実施例において、他に指示のない限り、全ての
温度は摂氏であり、そして部およびパーセントは重量による。
グルタミン酸の種々のアナログ、特に、4-アルキル-置換グルタメートのアナ
ログが合成された。4-メチルグルタメートは、以下に合成および単離されるよう
に、4つの立体異性体を生じる2つのキラル中心を有する。
実施例1: (2R,4R)-4-メチルグルタミン酸。
パートA: N-(4−ニトロベンゾイル)R-グルタミン酸ジエチルエステルの調
製。
14.7g(100mmol)のD-グルタミン酸の0℃まで冷却したエタノール(150mL)溶
液に、11mL(150mmol)の塩化チオニルを滴下した。次いで、混合物を透明にな
るまで加熱した。次いで、反応混合物を室温にて、48時間撹拌した。溶媒をエバ
ポレーションした後、透明なオイル状の残渣を得、これを次の工程に用いた。オ
イル状の残渣および18.5g(100mmol)の4-ニトロベンゾイルクロリドを、150mL
の塩化メチレンおよび20mLの水の中で撹拌した。100mLの20% Na2CO3溶液をゆっ
くりと添加した。反応混合物を室温にて3時間撹拌した。有機相を分離し、そし
て溶媒をエバポレーションした後、残渣をジエチルエーテルから結晶化した。
パートB: N-(4-ニトロベンゾイル)(2R,4R)-4-メチルグルタミン酸ジエチル
エステルの調製。
窒素下で-78℃に冷却した、3.52g(10mmol)のN-(4−ニトロベンゾイル)-D-
グルタミン酸ジエチルエステルの無水テトラヒドロフラン(100mL)溶液に、22m
L(22mmol)の1.0Mリチウムビス(トリメチルシリル)アミドのTHF溶液をシリン
ジを介してゆっくりと添加した、混合物を-78℃にて1時間撹拌し、次いで、40m
molのヨードメタンを添加した。次いで、反応混合物を飽和塩化アンモニウムで
クエンチした。溶媒の半分をエバポレーションした後、混合物を200mLの水で希
釈し、そして塩化メチレン(3×50mL)で抽出した。合わせた抽出物を、水、ブ
ラインで洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。溶媒をエバポレーションし、そして
オイル状の残渣を、酢酸エチルおよびヘキサン(1:1)の混合物で溶出するシ
リカゲルのカラムを通して精製し、1.6gのオイルを得た。
パートC: (2R,4R)-4-メチルグルタミン酸の調製。
上記の生成物Bを、50mLの6N HCl中で2時間還流し、次いで、室温まで冷却し
た。沈澱を濾過し、そして濾液を真空下で濃縮した。残渣を50mLの蒸留水中に溶
解し、そしてクロロホルム中の5%トリオクチルアミンの50mLで2回洗浄した。
水相を真空下で濃縮し、そしてオイル状の残渣をアセトンおよび水中で結晶化さ
せた。
実施例2: (2S,4S)-4-メチルグルタミン酸。
適切な出発物質を用いて、実施例2のパートBおよびパートCに記載される手
順を用いることにより、(2S,4S)-4-メチルグルタミン酸を得た。
実施例6: (2S,4S)、(2R,4R)、(2S,4R)、および(2R,4S)-4-メチルグルタミ
ン酸混合物。
金属ナトリウムの小片(500mg)を、450mLの無水エタノール中に溶解し、そし
てこの溶液に400mgのイオウおよび37g(170mM)のジエチルアセトアミドマロネ
ートを添加した。次いで、30g(300mM)のメタクリル酸メチルを、還流の間、4
時間かけて滴下した。反応混合物をさらに1時間還流した。溶媒を真空下でエバ
ポレーションにより除去し、そして残渣をエタノールから結晶化し、107〜109℃
の融点を有する33.4g(62%)の固体を得た。5g(15.8mmol)のこの固体物質を
、20% HCl中で2時間還流し、次いで、溶媒を真空下でエバポレーションにより
除去した。残渣を50mLの蒸留水中に溶解させ、そしてCH3Cl中の5%トリオクチ
ルアミンで洗浄した。水相を真空下でエバポレーションし、そしてオイル状の残
渣をごく少量の水(約1mL)に溶解し、そして過剰のアセトンで結晶化して、16
3〜164℃の融点を有する1.3g(54%)の表題化合物を得た。
実施例7: (2R,4S)および(2S,4R)-4-メチルグルタミン酸。
(2R,4S)および(2S,4R)-4-メチルグルタミン酸を、水およびアセトン中で
4℃にて分別結晶により、実施例43で得られたラセミ体のジアステレオマーから
得た。
実施例8: (2S,4R)-4-メチルグルタミン酸(スキームIII)。
パートA: (S)-1-t-ブトキシカルボニル-5-t-ブチルジフェニルシロキシメ
チル-ピロリジン-2-オン。
(S)-(-)-2-ピロリジドン-5-カルボン酸から文献の手順を用いて、表題化合物
を調製した。
パートB: (3R,5S)-1-t-ブトキシカルボニル-5-t-ブチルジフェニルシロ
キシメチル-3-メチル-ピロリジン-2-オン。
(S)-1-t-ブトキシカルボニル-5-t-ブチルジフェニルシロキシメチル-ピロリ
ジン-2-オン(15g、33mmol)のTHF(250mL)溶液に、-78℃にて1M LiN(SiMe3)2
溶液(35mL、35mmol)をゆっくりと添加した。1時間の撹拌後、ヨードメタン(
6.2mL、100mmol)を添加した。反応混合物をさらに2時間-78℃にて撹拌し、次
いで、酢酸でクエンチした。混合物を半分の容積まで濃縮し、水(200mL)で希
釈し、そして酢酸エチル(EtOAc)で抽出した。合わせた抽出物を水、ブライン
で洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。溶媒を真空下でエバポレーションし、そし
て残渣を、EtOAc:ヘキサン(1:2.5)で溶出されるシリカゲルのフラッシュカ
ラムクロマトグラフィーにより精製した。所望の(2S,5R)異性体を、カラムか
ら最初に溶出し、そしてヘキサン中で結晶化して、7.3g(47%)の生成物を白色
結晶として得た。
パートC: (3R,5S)-1-t-ブトキシカルボニル-5-ヒドロキシメチル-3-メチ
ルピロリジン-2-オン
(3R,5S)-1-t-ブトキシカルボニル-5-t-ブチルジフェニルシロキシメチル-3-
メチル-ピロリジン-2-オン(17.8g、38.1mmol)および氷酢酸(2当量)の乾燥T
HF(50mL)溶液に、0℃にて、1.0Mフッ化テトラブチルアンモニウムのTHF(150
mL、150mmol)溶液を添加した。溶液を室温まで加温し、そして一晩撹拌した。
酢酸エチル(500mL)を添加し、そして有機相を塩化アンモニウム水溶液(20%
、3×200mL)で抽出した。合わせた水相を酢酸エチル(200mL)で抽出した。合
わせた有機相をブライン(500mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、そして
乾燥するまでエバポレーションした。粗生成物を、シリカゲルを通してヘキサン
中の70% EtOAcで溶出する濾過により精製し、透明なオイルとして生成物を得た
。これをさらに精製することなく次の工程で用いた。
パートD: (3R,5S)-1-t-ブトキシカルボニル-5-カルボキシ-3-メチルピロ
リジン-2-オン
アセトニトリル:四塩化炭素:水(2:3:3、266mL)の溶媒混合物中の(3R,5S
)-1-t-ブトキシカルボニル-5-ヒドロキシメチル-3-メチルピロリジン-2-オンの
溶液に、過ヨウ素酸ナトリウム(3当量、24.0g)および三塩化ルテニウム(2.2
mol%、0.174g)を添加した。溶液を2時間室温にて撹拌し、次いで、ジクロロ
メタン(500mL)およびブライン(200mL)の添加により希釈した。有機相を分離
し、そして水相をジクロロメタン(3×200mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2
SO4で乾燥し、次いでセライトを添加した。溶液をセライトの床を通して吸引濾
過し、そして濾液をエバポレーションして、オイル状の残渣を得、酢酸エチルお
よびヘキサン中で結晶化することにより5.03g(54%)の生成物を得た。母液を
、ヘキサン中の70%の酢酸エチル(1%のギ酸を含有する)を用いて溶出するシ
リカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、さらに1.21g(13%
)の酸(2つの工程において、全部で67%の収率)を得た。
パートE: (2S,4R)-N-t-ブトキシカルボニル-4-メチルグルタミン酸
(3R,5S)-1-t-ブトキシカルボニル-5-カルボキシ-3-メチルピロリジン-2-オ
ン(6.2g、25.5mmol)のTHF(50mL)溶液を、水酸化リチウム一水和物(3当量
、3.20g)および水(5mL)で処理した。室温にて16時間撹拌後、THFを真空下で
除去し、そして水(20mL)を添加した。氷酢酸の添加によりpHを3に調整し、エ
ーテル(100mL)を添加し、そして層を分離した。水相をエーテル(3×100mL)
で抽出し、そして合わせた有機相をブライン(400mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥
し、濾過し、そしてトルエン(3×15mL)と共沸させて乾燥するまでエバポレー
ションした。残渣を高真空下で乾燥して、6.58gの生成物(99%)を白色発泡体
として得た。これをさらに精製することなく用いた:Rf 0.8(酢酸エチル中の1
%ギ酸、ニンヒドリンで発色)。
パートF: (2S,4R)-4-メチルグルタミン酸
BOC保護した二酸である(2S,4R)-N-t-ブトキシカルボニル-4-メチルグルタミ
ン酸を、トリフルオロ酢酸:塩化メチレン(40:60、100mL)の混合物に、室温に
て3時間供した。揮発性物質を真空下で除去し、そして残渣をトルエン(50mL)
と共沸させた。水(150mL)を添加し、そして水相を5%のトリオクチルアミン
のクロロホルム溶液(3×200mL)で抽出した。合わせた有機相を水(50mL)で洗
浄し、そして合わせた水相を、48時間凍結乾燥機に設置することによりエバポレ
ーションして、アセトンおよび水中で再結晶して、生成物(2つの工程で4.6g、
66%)を白色発泡体として得た。
表1に示す例は、上記に示されたスキームI〜IVにおける方法の概説、および
適切な出発物質および試薬を用いて実施例に記載の手順により調製されたか、ま
たは調製され得る。
III.化合物の設計についてのコンピューターモデリング法
モデルをSilicon Graphics Indigo II ワークステーションでMolecular Simul
レセプターの6つの公知のアゴニスト(KA、HFPA、アクロメリン酸(Acromelic ac
id)AおよびB、L-CCG-III、およびL-CCG-IV)および2つのモジュレーター(実施
例2に示すものおよび(2S,4S)-4-エチルグルタミン酸)の構造、ならびに表2に
示す[3H]カイニン酸結合阻害についてのそれぞれのIC50に基づき構築された。
個々のモデルアゴニストは、すべてのカルボン酸を脱プロトン化しそして塩基
性アミンをプロトン付加して解析し、そして全エネルギーへのクーロンまたは水
素結合寄与を用いないUniversal Forcefieldを用いて最小化した。全体の最小値
を、図3のファーマコホアモデルに示すようにオーバーラッピングファーマコホ
ア束縛(pharmacophore constraint)として、塩基性アミンN1およびカルボキシル
酸素O1、O2、O3、およびO4を用いて並べた。カイニン酸束縛において十分に並ば
なかったこれらの化合物を、O2オーバーラップ束縛を削除することにより調整し
た。
偽レセプター表面を、4つの最も強いアゴニスト(HFPA,KA、およびアクロメ
リン酸AおよびB)、および4つのより弱い化合物(実施例2、(2S,4S)-4-エチル
グルタミン酸、L-CCGIII,およびL-CCGIV)から構築した。偽レセプター表面は、
1つまたはいくつかの分子の組合わされた3次元特性を描く、1つまたは1連の
分子由来の推測に基づく外側のファンデルワールス半径として形成される。この
方法は、アゴニストの相対的結合親和性([3H]カイニン酸結合阻害についての-lo
g(IC50)として表される)に基づいて各構造のそれぞれの寄与を負荷して、8つの
化合物それぞれの構造に基づく偽レセプター表面を構築する。選択された化合物
に適合させる表面を、合わされたファンデルワールス半径から、0.025nmを加え
たこの距離まで変化させることを可能にした。8つの化合物の偽レセプター表面
との相互作用または適合を全エネルギー項を用いて評価した。相互作用はEinsi de
、Erelax、Estrain、およびEinteractの項で評価した。QSAR表を、上記に示
した項および個々の分子の他の算出した物理的特性の範囲を用いて構築し、表2
に示した。このデータの遺伝アルゴリズム分析は、上記に示した結合親和性(IC5 0
)とEinteract、EinsideおよびlogP(分配係数)との高い相関関係を示した。作
成した方程式は:
推定=6.845+0.19LogP+0.017Einside−0.0012Einteract+0.012Estrain
である。
2つの公知のKAレセプターアゴニスト、L-グルタミン酸およびS-AMPAを評価し
、レセプターモデルおよびQSAR方程式の有用性をテストした。このモデルは正し
いIC50値を推定した。図4は、KAアゴニストモデル、AMPA、およびL-グルタメー
トについての推定のLogIC50[3H]カイネート対実際のLogIC50[3H]カイネートのグ
ラフである。
同じ方法論がAMPAレセプターおよび他のグルタメートレセプターに適用され得
る。
IV:インビトロおよびインビボの研究に基づく薬学的組成物および治療的適用レ
セプター結合
本明細書中に記載する基本的な発見は、選択的にKAレセプターに結合し、そし
てKAレセプター機能を調整する化合物のクラスについてである。結合は、表3に
示すようなデータを生じるために、標準的な技術を用いて決定され得る。KA EAA
レセプターの調整は、インビトロでKAレセプターに強い親和性を示した化合物に
よって示されるように、化合物を、EAAに関連するヒトの神経精神薬理学的状態
の処置に有用にする。本明細書中に記載の化合物はKAのインビトロの効果を調節
するので、それらはEAA依存の精神病、神経変性、痙攣、痛み、ならびに学習お
よび記憶の欠損のインビボでの処置に有用である。
下記の分析法を使用して、各リガンドについての結合を決定した。これらの分
析法は、それぞれがより十分に記載される参考文献により同定される:
CGS 19755 を用いたN-メチル-D-アスパルテート(NMDA)レセプター結合アッセイ :
Murphyら、「[3H]-3-(2-カルボキシピペラジン-4-イル-D-プロピル-1-ホスホ
ン酸)のラット脳膜への結合:N-メチル-D-アスパルテートレセプターの選択的、
高親和性リガンド」J.Pharm.Exper.Therapeutics.240:778-784(1987)。
AMPA レセプター結合アッセイ:
Murphyら、[3H]α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチルイソキサゾール-4-プロピオ
ン酸を用いたラット脳組織におけるキスカレート認識部位の特徴付けおよび濾過
アッセイ」Neurochemical Research.12:775-781(1987)。
KA を用いたKAレセプター結合アッセイ:
Londonら、「ラット脳における[3H]カイニン酸のレセプター部位への特異的結
合」Molecular Pharmacology.15:492-5-5(1979)。
表3に示すIC50値を、放射性標識したリガンドにレセプター調製物を曝し、そ
して試験リガンドの量を増加させることにより、これらの手順に従って決定した
。レセプター調製物に結合した放射能の量は、放射性標識したリガンドの結合部
位について競合する試験化合物の存在下で減少する。
表3のデータから、本明細書中に記載の化合物は特異的にカイネートレセプタ
ーに結合することが認められ得る。
天然のKAレセプターは異種であるので、実施例8の特性を組換えGluR6レセプ
ターにおいても調べた。これらのレセプターは、飽和可能な[3H]カイネート結合
を示し、KAおよびグルタメートに応答して天然KAレセプターに特徴的な急速に脱
感作する電流を生じた。GluR6での[3H]カイネートのKdはかつて12.9nMと95nMと
の間であると報告されており、そして本研究で得られたKdは先の値と一致する
。[3H]カイネートの見かけの親和性における差異は、使用された発現系およびア
ッセイ法の両方に起因し得る。GluR6への[3H]カイネート結合を阻害する実施例
8の効力はKAに匹敵し、そして実施例8の存在下で認められた[3H]カイネートの
Kd
における増加(Bmaxの変化なしで)は作用の競合様式と一致する。KA、ドモエー
ト(domoate)、およびNS-102の効力の等級順序(rank order)に基づき、GluR6は、
KAレセプターの「低」親和性形態と最もよく類似していると結論されている。野
生型のKAレセプターの明確な異種性を考慮して、実施例8の見かけの親和性は本
質的にGluR6でのKAの見かけの親和性と等しいが、ラット脳における天然のKAレ
セプターの「高」および「低」親和性形態の両方で2〜3倍低い、という観察は
、実施例8がいくつかのレセプターのサブタイプについて選択性を示し得ること
を示している。
生理学的活性および効力のインビトロアッセイ
インビトロおよびインビボアッセイは、組み合わせで患者の処置のためのこれ
らの化合物の活性を予測できる。このことは、例えば、Cordiらの米国特許第5,0
61,721号(アルツハイマー病、加齢に関連する記憶障害、学習の欠損、および精
神的障害の処置、ならびに健康な個体の記憶または学習の改善のためのD-シクロ
セリンおよびD-アラニンの組合わせでの使用について)、および、Trullasらの米
国特許第5,086,072号(NMDAレセプターを調整する1-アミノシクロ-プロパンカル
ボン酸(ACPC)について)に支持される。現在、臨床試験において試験されている
ように、ACPCおよびその誘導体は、虚血において起こるような、NMDAレセプター
の過度の活性化に由来する神経薬理学的障害の処置に用いられ得る。NMDAアンタ
ゴニストおよび部分的アゴニストはインビトロおよびインビボアッセイに基づく
ヒトの臨床試験において有用であることが明確に示されている(Hutchinsonら、J . Med .Chem.
32,2171-2178(1989)に記載されている)。4-(ホスホノメチル)-2-
ピペリジンカルボン酸(CGS-19755)は、NMDAレセプターに対する競合的グルタメ
ートアンタゴニストであるが、卒中のような神経変性疾患の動物モデルにおいて
活性であり、そして現在、卒中および頭部外傷の処置についてヒトの臨床評価が
行われているということが、Hutchinsonら(1989)により報告された。
以下の試験を、結合活性はインビトロおよびインビボの両方で生理学的活性と
相関するということを実証するために使用した。これらの試験の結果は、カイネ
ートアンタゴニストおよび部分的アゴニストは以下に挙げる障害を含む種々の障
害の処置に、臨床的に有効であることを示す。認識、学習、および記憶の欠損、
化学毒性(物質耐性および物質嗜癖を含む)、興奮毒性、神経変性障害(例えば
、ハンティングトン病、パーキンソン病、およびアルツハイマー病)、卒中後の
後遺症、てんかん、発作、気分障害(例えば、双極性障害、気分変調、および季
節性感情障害)、うつ病、および痛み。神経変性障害は、レセプターの機能異常
または機能不全の結果であり得る。
電気生理学
Yamada(Neurophysiology.,1994、およびその中の参考文献)に記載されたよう
な、組織片または全細胞の電気生理学を、グルタメートレセプターに対する薬物
のアゴニスト、部分的アゴニスト、またはアンタゴニスト特性の測定のために使
用した。この方法は、化合物の効力として規定される有効性が予測できるので、
本明細書中で記載したような化合物のインビボ活性の証明に有用なアッセイであ
る。これは結合親和性とは異なる。
例えば、全細胞の電気生理学により、実施例8の化合物、(2S,4R)-4-メチルグ
ルタミン酸がKAレセプターを調整するが、AMPAレセプターは調整しないというこ
とが示される。ラットGluR6 KAレセプターを、培養物中のHEK 293細胞中で発現
し、そしてパッチクランプ技術により評価した。(2S,4R)-4-メチルグルタミン酸
は、10nMから20μMの用量で競合的および可逆的に300mMのKAにより引き起こされ
た電流をブロックした。(2S,4R)-4-メチルグルタミン酸は、細胞に損傷を与えず
にKAブロッカーと組み合わせて数回投与され得る。対照的に、ラットGluR4(AMPA
)レセプターがHEK293細胞中に発現した場合、200μMまでの(2S,4R)-4-メチルグ
ルタミン酸の濃度は300μMのAMPAにより引き起こされた電流に影響を与えない。
同じタイプの実験を、GluR5 KAレセプターを高レベルで発現する培養物中のラ
ット後根神経節を用いて繰り返し行った。20〜40μMの(2S,4R)-4-メチルグルタ
ミン酸は、300μMのKAが誘導する電流を完全かつ可逆的にブロックした。(2S,4R
)-4-メチルグルタミン酸をHEK 293細胞で発現されるGluR4 AMPAレセプターに対
して試験した場合、200μMまでの用量では300μMのAMPAの電流を阻害しなかった
。このことは、(2S,4R)-4-メチルグルタミン酸が、AMPAレセプターよりKAレセプ
ターに対して選択的に調整することを実証する。
本明細書中で記載される他の化合物もまた、KAレセプターを選択的に調整する
ことが期待される。
以下のアッセイもまた、本明細書中で記載される化合物の生理学的活性および
効力を評価するために用いられ得る。
スナネズミの前脳部虚血アッセイ
このアッセイは、神経変性のモデルとして虚血条件下におかれた神経脳細胞に
対し、試験化合物により与えられる保護の程度を決定するために使用される。雄
性スナネズミに、頸動脈閉塞の前に試験化合物を注射する。血流を4〜5分間閉
塞させ、次いで開き、そして調べて再還流を確認した。外科処置の後、スナネズ
ミを7日間生存させる。スナネズミをペントバルビタールで麻酔し、そしてヘパ
リンを添加した生理食塩水、続いて緩衝化ホルマリンを心臓より灌流する。脳を
摘出し、トリミングし、そして組織学的プロセスのために調製する。切片を染色
し、そして海馬のCA1領域における損傷を受けたニューロンを調べる。試験化合
物の効果を、無処置のコントロールと比較する。
上記のインビトロの結果に基づき、本明細書中で記載される化合物で処置した
スナネズミにおいて、細胞消失は極めて減少することが期待される。
ラット機械的異痛の疼痛モデル
この試験は、神経障害的疼痛感覚に対する試験化合物による保護の程度を決定
する。このモデルは、Bennett,Neuro .Report 5,1438-1440(1994)およびそこで
引用される参考文献に記載される。ラットを両大腿部の坐骨神経を両側で露出す
ることにより準備する。一方を、神経の周囲で緩くフィットした収縮性の結紮糸
を結ぶ;もう一方を、擬似的に操作する(sham manipulated)が、結紮はしない。
ラットを高く、穿孔した床に立たせて、機械的異痛を、変化のある足の足底の真
ん中の領域に等級付けした一連のvon Frey hairを下方から適用することにより
測定する。少なくとも1度、引込み応答を引き起こしたhairは疑似処置した神経
と比較した場合、閾値のレベルを表す。
マウスの抗うつ強制水泳試験
この試験は、試験化合物の抗うつ活性の程度を決定する。モデルはTrullasら
、Eur .J.Pharm. 185,1-10(1990)およびそこで引用される参考文献に記載され
る。
マウスを個々に22〜25℃の水を満たしたシリンダーに入れる。静止の持続期間を
6分の試験中、最後の4分の間記録する。
コカイン誘導運動性亢進
局部的に投与されたカイネートまたは皮下(s.c.)投与されたコカインは、過度
の運動、後ろ足立ち、スニッフィング(sniffing)、グルーミングのような定型的
な行動を伴う側坐核(nucleus accumbens)および尾状核でのドーパミンの放出増
加を誘導する。これらの効果は、KAレセプターアンタゴニストの局部または全身
投与により阻害され得る。これらの観察に基づき、非NMDAレセプターは尾状核で
ドーパミンの放出を調節し、そして非NMDAレセプターアンタゴニストは精神病の
症状を緩和し得るという結論が導かれている。
本明細書中に記載される化合物は、それゆえ、カイニン酸またはコカインが誘
導した行動を消去または阻害するはずである。
投与形態
有効投与量範囲
本明細書中で記載される化合物は、約0.1mg/kg体重と150mg/kg体重との間の用
量範囲で、非経口的(皮下、筋肉内、または静脈内のいずれか)に投与され得るか
、またあるいは、経口的に投与され得る。
キャリアおよび添加剤
活性成分は、非経口的に、滅菌液体投与形態で投与され得る。一般に、水、適
切な油、生理食塩水、水性デキストロース、および関連する糖の溶液もしくはプ
ロピレングリコールまたはポリエチレングリコールのようなグリコールが、非経
口の液剤として適切なキャリアである。非経口投与のための液剤は、好ましくは
、活性成分、適切な安定化剤、および、必要であれば、緩衝化物質の水溶液形態
を含む。
重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸のような抗酸
化剤は、単独または組み合わせのいずれかで、適切な安定化剤として使用され得
る。クエン酸およびその塩、ならびにEDTAナトリウムもまた使用され得る。さら
に、非経口液剤は、塩化ベンザルコニウム、メチルまたはプロピルパラベン、お
よびクロロブタノールなどの防腐剤を含み得る。
活性成分はカプセル、錠剤、および粉剤のような固形投与形態、または、エリ
キシル、シロップ、および懸濁液のような液体投与形態で経口的に投与され得る
。ゼラチンカプセルは、活性成分、およびラクトース、スターチ、セルロース誘
導体、ステアリン酸マグネシウム、またはステアリン酸のような粉末キャリアを
含む。類似の希釈液が、圧縮錠剤の作成に使用され得る。錠剤およびカプセルは
共に数時間にわたる連続した薬物の放出を提供する持続的放出製品として製造さ
れ得る。圧縮錠剤は任意の好ましくない味を隠し、そして大気から錠剤を保護す
るために糖またはフィルムでコートされ得る。
送達のために使用され得る他の因子は、以下を含む。リポソーム、微粒子(微
小球および微小カプセルを含む)、および、制御され、延長され、もしくはパル
スされた送達を提供するか、または、例えば血液脳関門の通過を増強する、他の
放出デバイスおよび形態。
生体侵食性(bioerodible)微小球は薬物送達のための微小球の作成のために開
発された任意の方法を用いて調製され得る。例えば、MathiowitzおよびLanger、J .Controlled Release
5,13-22(1987);Mathiowitzら、Reactive Polymers 6,27
5-283(1987);およびMathiowitzら、J .Appl.Polymer Sci. 35,755-774(1988)に
記載され、その教示は本明細書中に援用される。方法の選択は、所望のポリマー
選択、サイズ、外部形態、および結晶度に依存し、それらは、例えば、Mathiowi
tzら、Scanning Microscopy 4,329-340(1990); Mathiowitzら、J .Appl.Polyme r Sci.
45,125-134(1992);およびBenitaら、J .Pharm.Sci. 73,1721-1724(1984
)に記載され、その教示は本明細書中に援用される。当業者らに日常的に用いら
れる方法は、溶媒蒸発法、熱融解カプセル化、溶媒除去、スプレードライ、相分
離、およびヒドロゲルを形成するための、アルギネートまたはポリホスファジン
、もしくは他のジカルボキシリックポリマーのようなゲルタイプポリマーのイオ
ン性架橋を含む。
他の送達系(フィルム、コーティング、ペレット、スラブ、およびデバイスを
含む)は、溶媒または融解キャスティング、および押し出し成形、ならびに合成
物を作成するための標準的な方法により製作され得る。
微粒子を、患者への投与のために生理食塩水のような適切な任意の薬学的キャ
リアに懸濁し得る。最も好ましい実施態様において、微粒子は投与の直前まで、
乾燥または凍結乾燥された形態で保存される。次いで、微粒子は投与のために十
分な溶液中に懸濁される。重合体の微粒子は注射、点滴、移植、経口で投与され
得、またはエアロゾルの使用により粘膜表面(例えば鼻-咽頭領域および/または
肺)へ投与され得、またはクリーム、軟膏、スプレー、または他の局所的キャリ
アにより、例えば直腸もしくは膣の領域に投与され得る。他のデバイスは、放出
が所望される領域への移植により好ましくは投与される。材料はまた、経皮性送
達のための適切なビヒクルならびにステントに組み込まれ得る。適切なビヒクル
は、軟膏、ローション、パッチ、および他の標準的な送達手段を含む。
本明細書中で引用した参考文献は、特に参考として援用される。
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(72)発明者 スターゲス,マイケル アラン
アメリカ合衆国 ペンシルバニア 19380,
ウエスト チェスター,ブート ロード
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