【発明の詳細な説明】
本出願は、1995年2月9日出願の米国特許出願第08/385,998号
の一部継続出願である。発明の名称
腫瘍遺伝子Int6のヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列発明の分野
本発明は、癌の診断及び治療の分野に関する。より特定的には、本発明は、I
nt6遺伝子に関し、また、遺伝子療法、ワクチン、診断方法及び免疫療法にお
けるInt6遺伝子の核酸配列及び推定アミノ酸配列に由来の試薬の使用に関す
る。発明の背景
マウス乳腫瘍ウイルス(MMTV)は、乳腫瘍のMMTV取込み部位に隣接し
た細胞性遺伝子の発現の調節異常を招く挿入性突然変異誘発物質として作用する
ことが証明されたレトロウイルスである(Varmus,H.E.(1982)Cancer Surv.
,1:309−320)。MMTV感染マウスでは腫
瘍発現前の過形成性胞状結節(HAN)が高頻度で発達し(Daniel,C.
ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,61:53−60;D
eOme,K.B.(1959)J.Natl.Cancer Inst.,7
8:751−757;Medina,D.(1973)Methods Can cer Res.
,7:3−53;Smith,G.ら(1984)Cance r Res.
,44:3426−3437)、同系マウスの清浄化された乳脂肪
パッド中でこれらの結節を連続外殖(outgrowth)によって継代させると、これ
らのマウスにおいて確率的に乳腫瘍が発達するという結果がしばしば得られる。
更に、乳腫瘍をもつ外殖(outgrowth)を有するマウスの肺に転移病巣が発見さ
れることも珍しくはない。これらの理由から、腫瘍発達の種々の時期に関与する
と考えられるMMTVに誘発された突然変異イベントを同定することは極めて重
要である。
MMTVゲノムを分子標識として使用して、マウス乳腫瘍の共通のMMTV取
込み部位(Int遺伝子座と命名)を表す5つの遺伝子座(Wnt−1/Int
−1、Fgf−3/Int−2、Int−3、Wnt−3及びFgf−4/Hs
t/k−FGF)が同定された(Dickson,C.ら(1984)Cell
,37:529−536;Gallahan,D.ら(1987)J.Viro l.
,61:218−220;Nusse,R.ら(1982)Cell.,3
1:99−109;Peters,G.ら(1989)Proc.Natl.A cad.Sci.USA.
,86:5678−5682)。MMTV LTRが
WNT−1、Fgf−3、Int−3のいずれかの遺伝子に結合しているトラン
スジーンを用いたトランスジェニックマウスの研究は、これらの遺伝子の発現の
活性化が乳房の腫瘍発生の一因であることを証明した(Jhappan,C.ら
(1992) Genes & Develop.,6:345−355;Mu
ller,W.J.ら(1990) Embo J.,9:907−913;T
sukamoto,A.S.ら(1988)Cell.,55:619−625
)。
本発明は、Int6と命名された新規なInt遺伝子の単離を記載しており、
また、診断方法、ワクチン、免疫療法及び遺伝子療法における該遺伝子及びその
遺伝子産物並びに該遺伝子及びその遺伝子産物に由来の試薬の使用を記載するも
のである。発明の概要
本発明はInt6遺伝子の単離に関する。本発明はまた、Int6遺伝子のコ
ーディング配列を含むネズミ及びヒトのcDNAに関する。本発明は更に、In
t6遺伝子及びInt6 cDNAに由来の核酸配列に関し、また、他の哺乳類
のInt6遺伝子の相同体単離用プローブまたはInt6遺伝子の突然変異検出
用プローブとしてこれらの核酸配列を使用することに関する。
組換えInt6タンパク質及び該タンパク質に由来のペプチドフラグメントの
産生を指令し得る合成核酸配列並びに等価の天然核酸配列を提供することも本発
明の目的の1つである。このような天然核酸配列は、Int6タンパク質の合成
を指令し得る遺伝子が同定または単離できるcDNAまたはゲノムのライブラリ
ーから単離され得る。本出願の目的となる核酸配列は、RNA、DNA、cDN
Aまたは任意のその合成変異体である。
本発明は更に、Int6タンパク質及び該タンパク質に由来のペプチドに関す
る。
本発明はまた、Int6タンパク質または該タンパク質に由来のペプチドに対
する抗体に関する。
本発明はまた、Int6遺伝子の突然変異の検出方法を提供する。このような
突然変異の検出は、被験者の異常増殖組織の存在または被験者の遺伝的癌素因の
存在を判断するために有用である。
Int6遺伝子の突然変異を検出する第一の方法では、Int6遺伝子の突然
変異を検出するために被験者のDNAを分析することを含む。
Int6遺伝子の突然変異を検出する第二の方法では、Int6mRNA発現
の改変を検出するために被験者のRNAを分析することを含む。
Int6遺伝子の突然変異を検出するまた別の方法では、Int6タンパク質
発現の改変を検出するために被験者のタンパク質を分析することを含む。
本発明はまた、被験者を癌に対して免疫感作するワクチンとして使用するため
及び免疫治療方法で使用するための医薬組成物を提供する。このような医薬組成
物の1つは、Int6タンパク質またはそのペプチドフラグメントの宿主生物合
成を指令し得る核酸配列を含む一方、第二の医薬組成物はInt6タンパク質ま
たは該タンパク質に由来のペプチドを含む。
上記の医薬組成物はまた、癌患者を治療するために免疫治療方法で使用され得
る。本発明は更に、免疫療法で使用するためのInt6タンパク質または該タン
パク質に由来のペプチドに対する抗体を含み、これらの抗体が毒素分子、放射性
同位体または薬剤に結合している第三の医薬組成物を提供する。
従って本発明は、1種以上の上記医薬組成物を治療有効量で癌患者に投与する
ことを含む癌患者に対する免疫療法の適用に関する。
本発明は更に、
(a)特異的T細胞応答を誘発すべく有効な量のInt6タンパク質をコードし
ている発現ベクターまたはInt6タンパク質自体によって患者を免疫し、
(b)免疫した患者からT細胞を単離し、
(c)免疫した患者または非免疫患者に治療有効量のT細胞を投与する;
ことを含む癌患者の治療方法に関する。。
本発明はまた、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってInt6の対立遺伝
子のヌクレオチド配列を決定するための診断用キットを提供する。本発明のキッ
トは、PCRプライマーとして有用な精製及び単離された核酸配列を含む。これ
らのPCRプライマーはまた、Int6遺伝子の突然変異を検出するための被験
者のDNAまたはRNA分析にも有用である。
本発明は更に、Int6遺伝子の突然変異によってInt6タンパク質の発現
が改変された細胞に野生型Int6遺伝子を供給する方法を提供する。この方法
は、Int6タンパク質の発現が改変された細胞に野生型Int6遺伝子を導入
し野生型遺伝子を細胞中で発現させることを含む。図面の説明
図1A及び1Bは、サザンブロット分析の結果を示す。この分析では、10マ
イクログラムの細胞性DNAをEcoRIによって消化し、アガロースゲル電気
泳動によって分離し、MMTV LTRプローブとハイブリダイズさせた。図1
Aにおいて、分析されたDNAは、図1Aの上部に示すように、CZZ−1 H
OGと命名された腫瘍発現前の過形成性外殖細胞系CZZ−1(レーン1)、及
び、乳腫瘍22(レーン2)、1262(レーン3)、1263(レーン4)、
20(レーン5)、19(レーン6)、23(レーン7)、21(レーン8)、
24(レーン9)、8(レーン10)、9(レーン11)、12(レーン12)
、13(レーン13)及び14(レーン14)に由来のCZZ−1から単離した
。図1Bにおいて、分析されたDNAは、図1Bの上部に示すように、腫瘍49
73(レーン1)に由来のCZZ−1、及び、腫瘍4973を保有するマウスの
11個の独立の肺転移(レーン2−12)から単離した。
図2A−2Cは、EcoRIで消化し、アガロースゲル電気泳動で分離し、以
下の手順でハイブリダイズさせた10マイクログラムの細胞性DNAのサザンブ
ロット分析の結果を示す。図2A及び2Bのブロットのレーン1及び2は、宿主
のフランキング配列に対応するプローブDとハイブリダイズした。図2A及び2
Bのレーン2のブロットを引き続いてMMTV gag配列(MMTV GR−
40に由来の2.0kbのPSt−XhoIフラグメント;Gallahan
and Callahan J.Virol.,61,66−74:(1987
))とハイブリダイズさせ、その結果を図2A及び2Bのレーン3に示す。図2
Cのレーン1及び2はプローブCとハイブリダイズさせた。レーン2を引き続い
てMMTV env配列(MMTV(C3H)に由来の1.7kbのPStIフ
ラグメント;Gallahan and Callahan J.Virol.
,61:66−74;(1987))とハイブリダイズさせ、その結果を図2C
のレーン3に示す。分析したDNAは、腫瘍22に由来のCZZ−1 HOG(
図2A、レーン2及び3)、独立の乳腫瘍1139(図2B、レーン2及び3)
、独立の乳腫瘍3134(図2C、レーン2及び3)、及び、正常肝臓(図2A
−2Cのレーン1)から単離した。図2A−2Cの矢印の存在は、MMTVに誘
発されて転位した制限フラグメントの部位を示す。Int6遺伝子中のプローブ
C及びDの位置は図3に示されている。
図3は、ネズミのInt6遺伝子座の概略図である。図中、Int6遺伝子座
(1−4で指定)にわたる4つのオーバーラップするラムダクローンの位置が、
Int6遺伝子座中のEcoRI(E)、XbaI(X)、PstI(P)、B
glII(BGL)、HindIII(H)及びBamHI(B)部位の部分的制限
地図に対する相対位置で示されている。Int6エキソンの位置及びプローブA
−Dとして使用される制限フラグメントの位置は夫々、制限地図の下方に夫々実
線枠及び斜線枠で示されている。制限地図の目盛りは、図の下部では1目盛り1
.0kbの増加を示し、腫瘍1139及び3144のInt6遺伝子の内部また
はCZZ−1 HOGのInt6遺伝子の内部に取込まれたMMTVプロウイル
スゲノムの位置及び転写方向は制限地図の上方の矢印の向きによって示されてい
る。
図4は、Int6陰性腫瘍(腫瘍178)及びInt6陽性腫瘍(22及び1
139)から単離された全RNAのノーザンブロット分析の結果を示す。RNA
をホルムアルデヒドの存在下で変性させ、ホルムアルデヒドを含有する1%アガ
ロースゲルで分離し、プローブAとハイブリダイズさせた。
図5は、ネズミの1.4kbのInt6 cDNAの完全ヌクレオチド配列を
示す。イントロンの切れ目は次のエキソンの起点の上方の小矢印(▲)で示し、
遺伝子産物の推定アミノ酸配列はヌクレオチド配列の下方に示す。サイクリック
AMP/サイクリックGMP−依存性タンパク質キナーゼ(○)、タンパク質キ
ナーゼC(△)、チロシンキナーゼ(−)、カゼインキナーゼII(▽)のリン酸
化可能部位及びグリコシレーション部位(□)を推定アミノ酸配列中に示す。
アミノ酸残基の略号:A,Ala;C,Cys;D,Asp;E,Glu;F
,Phe;G,Gly;H,His;I,Ile;K,Lys;M,Met;N
,Asn;P,Pro;Q,Gln;R,Arg;S,Ser;T,Thr;V
,Val;W,Trp;Y,Tyr.
図6は、C.Elegans,ショウジョウバエ、ツメガエル、ニワトリ、マ
ウス及びヒトから単離した細胞性DNA(各々10μg)をストリンジェンシー
の高い条件下でInt6 cDNAとハイブリダイズさせた“Zoo”ブロット
の結果を示す。
図7は、正常成人組織(上部パネル)及び発達中の胚(下部パネル)から単離
した全RNA(各々10μg)のノーザンブロット分析の結果を示す。RNAを
ホルムアルデヒドの存在下で変性させ、ホルムアルデヒドを含有する1%アガロ
ースゲルに流し、次いでナイロン膜に移し、β−アクチンプローブ(2.3kb
のmRNA)及びネズミのInt6 cDNAプローブ(1.4kbのmRNA
)に順次ハイブリダイズさせた。
図8は、MMTV LTRの反転配列中の潜在的転写終了シグナルの位置及び
ヌクレオチド配列(下線部分)を示す概略図である。図示の配列はLTRの3′
端から数えて464から497までの塩基に対応する。斜線枠はInt6エキソ
ンに対応し、白抜き枠はInt6に取込まれたMMTVプロウイルスゲノムのL
TRに対応する。MMTV LTRのU5、R及びU3領域、並びに、MMTV
ゲノム及びInt6遺伝子の転写方向が示されている。
図9A及び9Bは、腫瘍1139(図9A)及び22(図9B)で検出された
キメラInt6−MMTV LTR RNA種のMMTV配列とInt6配列と
の結合部のヌクレオチド配列を示す。図9Aで、図示のヌクレオチド配列はエキ
ソンの5′端を起点とし、小文字で示すヌクレオチド配列はイントロン5の配列
に対応する。RNA種1のアミノ酸配列に等しいRNA種2のアミノ酸配列を付
点で示し、スプライシングによって除去されたRNA種2のヌクレオチド配列を
ダッシュで示す。下線を引いたヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は取込まれた
MMTVゲノムに由来の配列である。
図9B中、腫瘍22で検出されたキメラRNA種に関して図示したヌクレオチ
ド配列は、エキソン9の5′端を起点とし、イントロン9の一部分を通ってMM
TVゲノムの潜在的ポリA付加シグナルまで伸びている。イントロンのヌクレオ
チド配列を小文字で示し、MMTV配列を下線で示し、スプライシングによって
除去されたイントロンのヌクレオチド配列をダッシュで示す。付点はRNA種2
及び3によってコードされたアミノ酸残基に対応し、これらの残基はRNA種1
によってコードされたアミノ酸残基に等しい。図9A及び9Bに示すアミノ酸の
略号は図5の凡例で示した略号と同じである。
図10は、ヒトInt6遺伝子のゲノム地図を示す。マウスゲノムの場合と同
様に、ヒトInt6遺伝子は13のエキソン(黒塗り枠)から成り、各エキソン
のヌクレオチドの両端も図示されている。7番目のイントロンのCA反復配列の
位置も図示されている。
図11は、ヒトInt6遺伝子のイントロン7のCA反復配列にフランキング
する核酸配列(下線なし)に相補的なプライマーのヌクレオチド配列(下線付き
)を示す。CA反復配列からプライマーまでの間隔は夫々40及び138塩基対
であり、図示のCA反復配列の数(18)は野生型Int6遺伝子中に見出され
る数である。上部の核酸配列は5′から3′の方向で示されており、下部の核酸
配列は読取りが左から右に向かって行われる3′から5′の方向で示されている
。
図12は、ヒトDNA(レーン4)、ヒト染色体6(レーン1)またはヒト染
色体8(レーン2)だけを含むチャイニーズハムスター−ヒト体細胞ハイブリッ
トDNA、ヒト染色体3,7,8,15及び17を含むマウスーヒト体細胞ハイ
ブリットDNA(レーン3)を、HindIIIで消化し、ヒトInt6 cDN
Aとハイブリダイズさせたサザンブロットの結果を示す。
図13は、Int6遺伝子のイントロン7のCA反復配列にフランキングする
標識プライマーを用いたヒト原発性乳腫瘍(T)及び適合性正常組織(L)Lは
リンパ球を意味する)に由来のDNAのPCR増幅の結果を示す。各ブロットの
上方の数字は、腫瘍サンプル及び適合性正常組織サンプルを提供した被験者を示
す。各ブロットに近接の矢印は、適合性正常DNAに比べて対立遺伝子のシグナ
ルが完全に消失しているかまたは有意に低下していることを示す。
図14は、13のヒトInt6エキソンのうちの12のエキソンの両端に隣接
するヌクレオチド配列を示す。各エキソンの両端に隣接する核酸配列(下線なし
)に相補的なプライマーの核酸配列(下線付き)を各エキソンの左右に示す。各
エキソンの左右の上方に示す核酸配列は5′から3′の方向であり、各エキソン
の左右の下方に示す配列は3′から5′の方向である。各エキソンの両端に隣接
する配列がイントロン−エキソン結合点から始まるとき、この配列の長さは結合
点を起点とする各エキソンの左右の塩基対の数で与えられる。
図15は、原発性乳腫瘍(T)及び適合性正常組織(N)から単離された全R
NA(各々20μg)のノーザンブロットの結果を示す。RNAサンプルをホル
ムアルデヒドの存在下で変性させ、ホルムアルデヒドを含有する1%アガロース
ゲルに流し、次いでナイロン膜に移し、β−アクチンプローブ及びヒトInt6
cDNAプローブと順次ハイブリダイズさせた。
図16は、ヒト非小細胞肺癌(54T及び55T)及び適合性正常組織(55
N)から単離した全RNA(各々20μg)のノーザンブロットの結果を示す。
54Tに対する適合性正常組織についてもInt6 mRNA発現を観察したが
、54Nのノーザンブロットは図示していない。図15の場合と同様にしてノー
ザンブロット分析を行った。発明の説明
本発明は、腫瘍発生中の宿主細胞ゲノムへのMMTV取込みに関連する突然変
異性イベントが、Int6と命名されたこれまでは知られなかった遺伝子中で生
じることを開示している。この遺伝子はマウスの染色体15に局在する。より特
定的には本発明は、Int6遺伝子及びその対応するcDNAに関する。Int
6を保有するマウス染色体15の領域は、オーバーラップする4つのラムダクロ
ーン(図3に符号1−4で示す)中に提示され、完全Int6遺伝子を含んでい
る。Int6遺伝子は野生型Int6遺伝子を表す。
本発明はまた、ネズミのInt6遺伝子に対応する全長cDNAを目的とする
。このcDNA配列を配列1として以下に示す。
ヌクレオチドに使用した略号は当業界で標準的に使用されている略号に準拠し
た。
ネズミのInt6 cDNAの推定アミノ酸配列を配列番号2として以下に示
す。この配列は、配列番号1のヌクレオチド173を起点とし、1188ヌクレ
オチドの長さを有している。
本発明はまた、ヒトのInt6 cDNAと相同のヌクレオチド配列を開示し
ている。ヒトのInt6 cDNA配列はマウスの配列に89%の相同性を有し
ている。オーバーラップする2つの組換えクローン(HINT6AとHINT6
B)は夫々、ヒトのInt6 cDNA配列の5′側の半鎖及び3′側の半鎖を
表している。これらの2つのクローンはAmerican Type Cult
ure Collection(ATCC),12301 Parklawn
Drive,Parkville,MD 20852に1995年1月24日付
けで寄託され、ATCC受託番号97029及び97030で受託された。ヒト
のInt6 cDNA配列を配列番号3として以下に示す。
ヒトのInt6 cDNAの推定アミノ酸配列を配列番号4として以下に示す
。この配列は、配列番号3のヌクレオチド168を起点とし、1188ヌクレオ
チドの長さを有している。
ヒト及びマウスのInt6タンパク質のアミノ酸配列は等しい。
配列番号1及び3で示すcDNA配列中には、配列番号2及び4で夫々示すタ
ンパク質の類似体の産生を指令し得るDNA配列を与える変異が存在してもよい
。上記に示したDNA配列は本発明の好適例の1つを表すものであることに留意
されたい。遺伝コードが縮重性なので、本発明のInt6タンパク質またはそれ
らの類似体の産生を指令し得るDNA配列を与える多数の代替可能なヌクレオチ
ドが存在することは理解されよう。このことは、上記に示した配列に機能的に等
価のDNA配列、または、上記に示したアミノ酸配列通りに産生されるInt6
タンパク質の類似体の産生を指令する配列に機能的に等価のDNA配列が本発明
の範囲内に包含されることを意味する。
類似体という用語は、本文中に特定的に示した配列に実質的に等しいアミノ酸
残基配列を有しており1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が機能的に等しい残基
によって保存的に置換されている任意のタンパク質またはポリペプチドを意味す
る。保存的置換の例としては、イソロイシン、バリン、ロイシンもしくはメチオ
ニンのような1つの非極性(即ち、疎水性)残基による他の残基の置換、アルギ
ニンとリシンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、もしくは、グリシンと
セリンとの間の置換のような1つの極性(即ち、親水性)残基による他の残基の
置換、リシン、アルギニンもしくはヒスチジンのような1つの塩基性残基による
他の残基の置換、または、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸のような1つの
酸性残基による他の残基の置換がある。
保存的置換という表現はまた、非誘導体化残基の代わりに化学的に誘導体化さ
れた残基を使用することを意味する。
化学的誘導体という用語は、官能性側基の反応によって化学的に誘導体化され
た1つまたはそれ以上の残基を有するInt6タンパク質またはポリペプチドを
意味する。このような誘導体化された分子の例としては、遊離アミノ基が誘導体
化されて、例えばアミン塩酸塩、p−トルエンスルホニル基、カルボベンズオキ
シ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形
成している分子があるが、これらに限定されない。遊離カルボキシル基は誘導体
化されて、塩、メチルエステル及びエチルエステルまたは他の種類のエステルま
たはヒドラジドを形成し得る。遊離ヒドロキシル基は誘導体化されて、O−アシ
ルまたはO−アルキル誘導体を形成し得る。ヒスチジンのイミダゾール窒素は誘
導体化されて、N−im−ベンジルヒスチジンを形成し得る。また、20個の標
準アミノ酸の天然産生アミノ酸誘導体を1つまたはそれ以上の数で含むタンパク
質またはペプチドも化学的誘導体に包含される。例えば、4−ヒドロキシプロリ
ンはプロリンに置換し得る。5−ヒドロキシリシンはヒスチジンに置換し得る。
ホモセリンはセリンに置換し得る。オルニチンはリシンに置換し得る。
本発明によって提供される核酸配列は、プローブとして多くの目的に使用し得
る。例えば、これらの核酸配列は、ゲノムDNAに対するサザンハイブリダイゼ
ーションのプローブとして使用でき、また、点突然変異を検出するためにRNア
ーゼ保護方法でプローブとして使用できる。PCR増幅産物を検出するためにも
プローブを使用できる。また、他の技術を用いてInt6遺伝子またはmRNA
とのミスマッチを検出するためにプローブを使用してもよい。ミスマッチは、酵
素(例えばS1ヌクレアーゼ)、化学薬品(例えば、ヒドロキシルアミンまたは
四酸化オスミウムとピペリジン)を用いて検出してもよく、または、完全に適合
したハイブリッドと比較したときの不適正ハイブリッドの電気泳動移動度の変化
を利用して検出してもよい。これらの技術は当業界で公知である。プローブはI
nt6遺伝子のコーディング配列に相補的であるが、イントロンに対するプロー
ブも設計できる。野生型Int6遺伝子の改変を検出するキットを構成するため
に完全セットの核酸プローブを使用し得る。キットは完全Int6遺伝子にハイ
ブリダイゼーションできるようになっている。プローブは互いにオーバーラップ
してもよくまたは隣合って連続していてもよい。
mRNAとのミスマッチを検出するためにリボプローブを使用する場合、リボ
プローブはヒト野生型Int6遺伝子のmRNAに相補的である。従ってリボプ
ローブは、センス鎖の反対の極性を有するのでInt6タンパク質をコードしな
いアンチセンスプローブである。一般にはリボプローブを、当業界で公知の任意
の手段を用いて放射性物質、比色物質または蛍光物質によって標識し得る。DN
Aとのミスマッチを検出するためにリボプローブを使用する場合、リボプローブ
がセンスまたはアンチセンスのいずれの極性を有していてもよい。DNAプロー
ブも同様にしてミスマッチを検出するために使用し得る。
核酸プローブはまた、Int6遺伝子の突然変異対立遺伝子に相補的であって
もよい。これらの対立遺伝子特異的プローブは、ミスマッチではなくハイブリダ
イゼーションに基づいて他の被験者中の同様の突然変異を検出するために有用で
ある。Int6プローブはまた上述のように、欠失及び挿入のような染色体の顕
著な変化を検出するためにゲノムDNAとのサザンハイブリダイゼーションで使
用できる。プローブはまた、腫瘍組織及び正常組織からInt6遺伝子のcDN
Aクローンを選択するために使用できる。更に、発現の改変が野生型Int6遺
伝子の突然変異の結果であるか否かを判断すべく、プローブを組織中のInt6
mRNAを検出するために使用できる。Int6遺伝子及びInt6 cDN
Aの配列が配列番号1及び3に示す配列である限り、特定のプローブの設計は平
均的な当業者の技術の範囲内である。
本発明はまた被験者のInt6遺伝子の突然変異を検出する方法に関する。
本発明において、被験者は哺乳動物を意味し、突然変異は、野生型Int6遺
伝子の反転、転位、挿入、欠失または点突然変異を意味する。
腫瘍組織中に見出される多くの突然変異はInt6タンパク質の発現の改変に
導く突然変異であると考えられている。しかしながら、非機能性遺伝子産物に導
く突然変異もまた癌の原因となり得る。更に、点突然変異は、調節領域(例えば
プロモーター)で発生するか、または、適正なRNAプロセッシングを混乱させ
、その結果としてInt6 mRNAの発現の低下の原因またはInt6タンパ
ク質の発現の消失の原因となると理解されている。
マウスの腫瘍発現前の乳房病巣で観察されるInt6遺伝子へのMMTVの取
込みは、Int6の突然変異が癌の初期イベントに関与することを示唆する。従
ってInt6遺伝子の突然変異の検出方法は診断及び予後に関する情報を提供し
得る。例えば臨床医は、腫瘍中のInt6遺伝子の突然変異の検出に基づいて治
療計画を選択し得る。本発明の方法はInt6の突然変異が発生するいかなる腫
瘍にも適用できる。肺及び乳房の腫瘍ではInt6遺伝子の発現の消失が観察さ
れた。従ってこれらの腫瘍では、Int6が腫瘍発生に何らかの役割を果たして
いる。更に、Int6は、脳、心臓、腎臓、肝臓、卵巣、脾臓及び精巣などの試
験
したすべての組織中で発現されるので、Int6遺伝子の発現に不利な影響を及
ぼす突然変異はこれらの組織中の異常増殖の一因ともなり得る。最後に、肺腫瘍
及び乳腫瘍は上皮組織に由来するので、本発明方法は、非小細胞肺癌のような上
皮細胞由来の癌の検出にも有用であろう。
更に、本発明で開示された検出方法が胎児の出生前スクリーニングまたは家族
の病歴に基づいて癌の危険が予測される被験者の前兆スクリーニングにも使用で
きることが当業者に理解されよう。
本発明の1つの実施態様においては、Int6遺伝子の突然変異の検出方法は
、野生型Int6遺伝子の突然変異を検出するために被験者のDNAを分析する
ことを含む。DNA分析のためには、生物標本を被験者から採取する。本方法で
使用するために採取される生物標本の例としては、組織生検及び血液があるが、
これらに限定されない。組織調製物中の腫瘍細胞を富化する手段は当業界で公知
である。例えば、パラフィン切片もしくはクリオスタット切片から組織を単離し
てもよい。また、フローサイトメトリーによって正常細胞から癌細胞を分離して
もよい。正常細胞から腫瘍を分離するこれらの技術及びその他の技術は当業界で
周知である。または、平均的な当業者に公知の方法を用いて腫瘍生検から一次細
胞培養物を樹立してもよい。
Int6遺伝子の突然変異を検出するために、生物標本から単離したDNAを
種々の方法で分析し得る。例えば、適当な制限酵素による消化後のサザンブロッ
ティング(制限酵素断片長多型、RELP)(Botstein,D.Amer
.J.Hum.Genet.(1980)69:201−205)、変性勾配電
気泳動法(Myers,R.M.,Nature(1985)313:495−
498)、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション(Conner,R.ら
,EMBO J.(1984)3:13321−1326)、プローブRNAと
標的DNAとの間の二重鎖のRNアーゼ消化(Winter,E.ら, Pro
c.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1985)82:7575−
7579)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Saiki,P.K.ら,Sc
ience(1988)239:487−491;米国特許第4,683,19
5号及び第4,683,202号)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(欧州特許出
願第
0,320,308号及び第0,439,182号)、並びに、PCR−一本鎖
コンフォーメーション分析(PCR−SSCP)(Orita,M.ら,Gen
omics(1989)5:874−879;Dean,M.ら,Cell(1
990)61:863−871)などの方法がある。
1つの好ましい実施態様では、腫瘍または血液のDNA中のInt6遺伝子の
顕著な転位を観察するためにサザンブロット分析を使用できる。サザン分析によ
って分析すべきDNAを、1つまたはそれ以上の制限酵素によって消化する。制
限消化後、得られたDNAフラグメントをゲル電気泳動によって分離し、標識し
た核酸プローブとのハイブリダイゼーションによってフラグメントを検出する(
Southern,E.M.,J.Mol.Biol.(1975)98:50
3−517)。
サザン分析においてプローブとして使用される核酸配列は、一本鎖または二重
鎖の形態で標識できる。核酸配列の標識は当業者に公知の技術によって行うこと
ができる。このような標識技術では、ラジオラベル及び酵素を使用できる(Sa
mbrook,J.ら(1989),“Molecular,Cloning,
A Laboratory Manual”,Cold Spring Har
bor Press,Plainview,New York)。更に、化学的
部分をピリミジン環及びプリン環に結合させる方法(Dale,R.N.K.ら
(1973)Proc.Natl.Acad.Sci.,70:2238−22
42;Heck,R.F.(1968)S.Am.Chem.Soc.,90:
5518−5523)、化学発光によって検出する方法(Barton,S.K
.ら(1992)J.Am.Chem.Soc.,114:8736−8740
)、ビオチニル化した核酸プローブを使用する方法(Johnson,T.K.
ら(1983)Anal.Biochem.133:126−131;Eric
kson,P.F.ら(1982)J.of Immunology Meth ods
,51:241−249;Matthaei,F.S.ら(1986)A nal.Biochem.
,157:123−128)及び市販製品を用いる蛍
光検出方法のような非放射性のシグナル増幅技術も知られている。プローブの大
きさは約200ヌクレオチドから約数キロ塩基の範囲に及ぶ。好ましいプローブ
の
大きさは約500〜約2000ヌクレオチドである。プローブはInt6遺伝子
のイントロンに由来してもよくまたはエキソンに由来してもよい。サザン分析で
プローブとして使用される核酸配列の各々はネズミまたはヒトのInt6遺伝子
の対応する部分、即ちこれらの遺伝子が夫々配列番号1または3で示すcDNA
配列を有している部分に実質的に相同である。好ましい実施態様において、プロ
ーブは、配列番号3に示すInt6 cDNA配列を有するヒトInt6遺伝子
に由来する。「実質的に相同な」という表現は、プローブとして使用される核酸
配列とヒトまたはネズミのInt6遺伝子の対応する配列との間の相同性のレベ
ルを意味する。相同性のレベルは、好ましくは70%以上、極めて好ましくは8
0%以上であり、特に好ましい核酸配列はマウスまたはヒトのInt6遺伝子の
配列と90%以上の相同性を有している。
分離したDNAフラグメントと標識した核酸プローブとをハイブリダイズさせ
た後、オートラジオグラフィーによって制限消化パターンを可視化し、Int6
遺伝子の突然変異に関連した制限断片長多型(RFLP)の有無を検査する。
別の好ましい実施態様においては、Int6遺伝子の突然変異を検出するため
に、ゲノムDNAをPCR−SSCPによって分析してもよい。この方法では、
PCRで使用するために選択されたプライマー対の各々を、Int6遺伝子中の
配列とハイブリダイズして増幅され、変性した増幅産物中の突然変異が非変性型
ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって検出され得るように設計する。好まし
い実施態様では、プライマー対がヒトInt6遺伝子に由来する。より好ましい
実施態様では、プライマー対がヒトInt6遺伝子の所与のエキソンの5′端及
び3′端に隣接するイントロン性配列に由来する。ヒトInt6遺伝子のエキソ
ンの特異的増幅を可能にするプライマー対の例を以下に示すが、これらに限定さ
れない:
配列番号5及び6はエキソン1の両端に隣接し、配列番号7及び8はエキソン
2の両端に隣接し、配列番号9及び10はエキソン3の両端に隣接し、配列番号
11及び12はエキソン4の両端に隣接し、配列番号13及び14はエキソン5
の両端に隣接し、配列番号15及び16はエキソン6の両端に隣接し、配列番号
17及び18はエキソン8の両端に隣接し、配列番号19及び20はエキソン9
の両端に隣接し、配列番号21及び22はエキソン10の両端に隣接し、配列番
号23及び24はエキソン11の両端に隣接し、配列番号25及び26はエキソ
ン12の両端に隣接し、配列番号27及び28はエキソン13の両端に隣接する
。Int6遺伝子配列に対して十分に特異的なハイブリダイゼーションを得るた
めの増幅反応の最適化は当業者の知識の範囲内であり、好ましくはアニーリング
温度の調整によって行う。
本発明のプライマーは公知のオリゴヌクレオチド合成方法のいずれかを用いて
合成できる(例えば、Agarwalら(1972)Agnew.Chem.I
nt.Ed.Engl.11:451のホスホジエステル法、Hsiungら(
1979)Nucleic Acids Res.6:1371のホスホトリエ
ステル法、または、Beuacageら(1981)Tetrahedron
Letters 22:1859−1862の全自動ジエチルホスホルアミダイ
ド法)。または、これらのプライマーは天然産生DNAまたはクローン化したD
NAの単離フラグメントであってもよい。更に、オリゴヌクレオチドを、種々
の製造業者から販売されている全自動装置によって合成できること、または、業
者に注文生産することができることが当業者には明らかであろう。1つの実施態
様においては、プライマー延長産物を検出及び/または同定するために適当な検
出可能ラベル(例えば、ビオチン、アビジンまたは放射性標識dNTP)を含む
ようにプライマーを誘導体化してもよく、または増幅産物の単離を容易にする物
質(例えばビオチンまたはアビジン)によってプライマーを誘導体化してもよい
。
別の実施態様においては、Int6疾病遺伝子の突然変異形態にハイブリダイ
ズするようにプライマー対を選択し得る。選択されたプライマー対は、突然変異
した遺伝子配列に十分に特異的にハイブリダイズし、従って、野生型Int6遺
伝子配列に対する非特異的ハイブリダイゼーションが、突然変異遺伝子配列の増
幅産物の同定を妨害することはない。Int6遺伝子配列中の突然変異にハイブ
リダイズするプライマー対は、生物サンプルのDNA中に存在する特異的突然変
異遺伝子配列を増幅するために使用できる。
PCRの増幅産物は直接または間接に検出できる。増幅産物の直接検出はプラ
イマー対の標識を介して行う。本発明のプライマーを標識するための好適なラベ
ルは当業者に公知であり、例えば、放射性ラベル、ビオチン、アビジン、酵素及
び蛍光分子がある。増幅反応を実施する前に所望のラベルをプライマーに組込む
とよい。好ましい標識手順では、放射性標識したATP及びT4ポリヌクレオチ
ドキナーゼを使用する(Sambrook,J.ら(1989),“Molec
ular Cloning,A Laboratory Manual”,Co
ld Spring Harbor Press,Plainview,NY)
。または、増幅反応中のプライマー延長産物に1つまたはそれ以上の標識dNT
Pの形態で所望のラベルを組込んでもよい。本発明においては、Int6遺伝子
の突然変異を検出するための標識された増幅PCR産物の分析を、非変性ポリア
クリルアミドゲル電気泳動、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PCR−S
SCP)によってPCR産物を分離するかまたはPCR産物を直接配列決定する
ことによって行う。
更に、別の実施態様においては、Int6疾病遺伝子中の突然変異を検出する
ための非標識増幅産物の分析を、サザンブロットまたはドットブロット中の放射
性標識またはビオチン標識した核酸プローブとのハイブリダイゼーションによっ
て行う。この実施態様に有用な核酸プローブは、サザン分析に関して前述した核
酸プローブである。更に別の実施態様においては、配列番号1及び3に示したc
DNA配列を用いて腫瘍組織中に存在する対立遺伝子を分子クローニングし、当
業界で周知の技術を用いてこの対立遺伝子を配列決定することによって点突然変
異を検出し得る。
第2の実施態様においては、Int6遺伝子の突然変異の検出方法は、Int
6特異的mRNA発現の改変を検出するために被験者のRNAを分析することを
含む。
この方法でRNAを分析するためには、被験者から得られた血液サンプルまた
は腫瘍生検サンプルからRNAを単離できる。このような腫瘍の例は乳房及び肺
の腫瘍であるが、これらに限定されない。
分析すべきRNAを血液サンプルまたは生検サンプルから全細胞RNAまたは
ポリ(A)+RNAとして単離できる。全細胞RNAは当業者に公知の方法によ
って単離できる。このような方法には、差別的沈降によるRNAの抽出(Bir
nbiom,H.C.(1988)Nucleic Acids Res.,1
6:1487−1497)、有機溶媒によるRNAの抽出(Chomczyns
ki,P.ら(1987)Anal.Biochem.,162:156−15
9)、及び、強い変性剤によるRNAの抽出(Chirgwin,J.M.ら(
1979)Biochemistry,18:5294−5299)がある。ポ
リ(A)+RNAはオリゴ−d(T)カラムにおけるアフィニティクロマトグラ
フィーによって全細胞RNAから選択できる(Aviv,H.ら(1972)P
roc.Natl.Acad.Sci.,69:1408−1412)。RNA
の好ましい単離方法は、酸−フェノールによる全細胞RNAの抽出である(Ch
omczynskiら,1987)。
Int6特異的mRNA発現のパターンまたはレベルの改変を検出するために
RNAを分析する方法としては、ノーザンブロッティング(Alwine, J
.C.ら(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.,74:535
0
−5354)、ドット及びスロットハイブリダイゼーション(Kafatos,
F.C.ら(1979)Nucleic Acids Res.,7:1541
−1522)、フィルターハイブリダイゼーション(Hollander,M.
C.ら(1990)Biotechniques;9:174−179)、RN
アーゼ保護(Sambrook,J.ら(1989),“Molecular
Cloning,A Laboratory Manual”,Cold Sp
ring Harbor Press,Plainview,NY)、逆転写ポ
リメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(Watson,J.D.ら(1992)
,“Recombinant DNA”,Second Edition,W.
H.Freeman and Company,New York)、及び、R
T−PCR−SSCPがある。好適な方法はノーザンブロッティングである。
Int6特異的mRNA発現を検出するプローブとして使用される核酸配列は
配列番号1または3に実質的に相同である。「実質的に相同」という表現は、核
酸配列と配列番号1または3のcDNA配列との間の相同性のレベルを意味する
。相同性のレベルは、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり
、特に好ましい核酸配列は配列番号1または3に示すcDNA配列と90%以上
の相同性を有している。
第二の好ましい実施態様においては、Int6遺伝子中の突然変異を検出する
ためにRNAをRT−PCR−SSCPによって分析する。逆転写酵素を用いて
腫瘍の全RNAまたはポリA+富化RNAから一本鎖cDNAを調製する。この
方法においては、得られる一本鎖cDNAのPCRに使用すべく選択されたプラ
イマー対の各々は、増幅され、次いで変性した増幅産物中の突然変異が非変性型
ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって検出されるべく適正な間隔(少なくと
も約100〜300ヌクレオチド)を隔てて遺伝子中に存在するInt6 cD
NA中の配列とハイブリダイズするように設計される。オーバーラップするIn
t6遺伝子配列に特異的にハイブリダイズし得るプライマー対は、Int6遺伝
子配列に由来し得る。プライマー対は、上記に示した配列番号1及び3中のcD
NA配列に由来し得る。好ましい実施態様において、プライマーは配列番号3に
示すヒトInt6 cDNA配列に由来する。対を成すプライマーの各々は、二
重鎖標的配列の一方の鎖の3′端の配列に相補的な約15〜20塩基の長さの一
本鎖オリゴヌクレオチドである。各対が2つのこのようなプライマーを含み、一
方のプライマーが相補的3′端であり、他方のプライマーが標的配列の他の3′
端に相補的である。標的配列は一般的には約100〜約300塩基対の長さであ
る。Int6 cDNAに対して十分に特異的なハイブリダイゼーションを得る
ための増幅反応の最適化は当業界でよく知られており、好ましくはアニーリング
温度の調整によって行う。または、Int6遺伝子の突然変異を検出すべく変性
RT−PCT産物を分析するために、RT−PCT産物を直接配列決定してもよ
い。
更に別の好ましい分析方法はRNアーゼ保護方法であり、この方法は、Win
terら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:p.757
5(1985)及びMeyersら,Science,230:p.1242(
1985)に詳細に記載されている。本発明の実施にあたっては、方法がヒト野
生型遺伝子のコーディング配列に相補的な標識リボプローブの使用を含む。リボ
プローブと腫瘍組織から単離されたmRNAまたはDNAとを一緒にアニーリン
グ(ハイブリダイズ)し、次いで二重鎖RNA構造中のミスマッチを検出できる
酵素RNアーゼAによって消化する。RNアーゼAによりミスマッチが検出され
た場合、それはミスマッチの部位を開裂させる。リボプローブはRNAまたは遺
伝子の全長を含む必要はなく、RNAまたは遺伝子のいずれか一方の一部分を含
んでいればよい。リボプローブがInt6 RNAまたはInt6遺伝子の一部
分だけを含む場合に、全mRNA配列をミスマッチのためにスクリーニングする
ためには、これらのプローブを複数で使用するのが望ましい。
本発明はまた、配列番号1及び3に示すcDNAに由来の組換えタンパク質を
包含する。組換えInt6タンパク質は当業者に公知の組換えDNA方法によっ
て産生できる。Int6タンパク質のアミノ酸配列がマウス(配列番号2)及び
ヒト(配列番号4)で等しいので、配列番号4に示すアミノ酸配列の全部または
一部を含むタンパク質をコードし得る適当な核酸配列は、配列番号3または配列
番号1に示された配列である。好ましい実施態様では、このような適当な核酸配
列を、宿主生物に導入され宿主生物中で複製され得るベクターにクローニングで
きる。
本発明で使用するように設計されたベクターは、上記の核酸配列が任意の好適
なまたは必要な作動要素と共に挿入され次いで宿主生物に導入され宿主生物中で
複製され得るような任意のベクターである。好ましいベクターは、十分に解明さ
れた制限部位を有しており且つ核酸配列の転写に好適なまたは必要な作動要素を
含んでいるベクターである。
本文中で使用された「作動要素」という用語は、少なくとも1つのプロモータ
ーと、少なくとも1つのオペレーターと、少なくとも1つのリーダー配列と、少
なくとも1つの終止コドンと、ベクター核酸の適正な転写及びその後の翻訳に必
要なまたは好適な他の任意のDNA配列とを意味する。このようなベクターは特
に、宿主生物によって認識される少なくとも1つの複製起点を、少なくとも1つ
の選択可能マーカーと核酸配列の転写を開始させ得る少なくとも1つのプロモー
ター配列と共に含むように設計されている。
本発明のクローニングベクターの構築においては、さらに、核酸配列及びそれ
に付帯する作動要素との多数コピーを各ベクターに挿入し得ることに注目するべ
きである。このような実施態様においては、宿主生物が産生するベクターあたり
の所望Int6タンパク質の量が増加している。ベクターに挿入し得るDNA配
列の多数コピーの数は、適当な宿主微生物に導入され複製及び転写されるベクタ
ーの能力のみによって限定され、この能力は得られるベクターの大きさに依存す
る。
別の実施態様では、Int6タンパク質のコーディング配列を含む制限消化フ
ラグメントを、原核細胞または真核細胞中で機能する適当な発現ベクターに挿入
し得る。「適当な」という用語は、ベクターがInt6タンパク質をコードする
完全核酸配列を保有し発現し得ることを意味する。細菌のような原核細胞中で機
能する発現ベクターの例は、T7プロモーターに基づくベクター及びtrpE及
びlacZ融合物を産生するベクターであるが、これらに限定されない。好適な
発現ベクターは、真核細胞中で機能するベクターである。このようなベクターの
例は、ワクシニアウイルスベクター、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、バキ
ュロウイルスまたは哺乳類のC型レトロウイルスのベクターであるが、これらに
限
定されない。
次に、選択された組換え発現ベクターを、組換えタンパク質を発現させる目的
の適当な真核細胞系にトランスフェクトし得る。このような真核細胞系の例とし
ては、ヒトMCF10AまたはマウスHC11乳房上皮細胞のような細胞系があ
るが、これらに限定されない。バキュロウイルスベクターと共に使用するための
好ましい真核細胞系の一例は、spodoptera frugyerda由来
のSF21卵巣細胞である。
発現された組換えタンパク質を、クーマシーブルー染色、及び、抗Int6抗
体含有血清を用いるウエスタンブロッティングのような当業界で公知の方法によ
って検出し得る。
別の実施態様においては、発現された組換えタンパク質を粗溶解物として得る
ことができ、または当業界で公知の標準タンパク質精製手順によって精製するこ
ともできる。このような精製手順としては、分画(differential)沈殿、分子ふ
るいクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、等電点フォーカシン
グ、ゲル電気泳動、アフィニティー及びイムノアフィニティークロマトグラフィ
ー、などがある。イムノアフィニティークロマトグラフィーの場合、Int6タ
ンパク質に特異的な抗体を結合させた樹脂を含むカラムに通すことによって組換
えタンパク質を精製し得る。
更に別の実施態様においては、本発明は、配列番号2及び4に示すInt6ア
ミノ酸配列に由来のペプチドに関する。本発明のペプチドまたはその類似体が、
種々の製造業者によって販売されている全自動装置によって合成できること、業
者に注文生産させることができること、または、適当な発現ベクターから上述の
ように発現させることができることは当業者に容易に理解されよう。「類似体」
という用語は本発明のペプチドを説明するために本文中で既に説明したが、更に
、分枝状または非直鎖状のペプチドも類似体に包含される。好ましいペプチドは
約20〜約24アミノ酸の長さの免疫原性ペプチドである。本発明の実施例8で
後述するように、Int6遺伝子の突然変異の結果として、発現されたInt6
タンパク質は先端が切断されている。点突然変異したrasタンパク質が適正に
プロセッシングされることによって特異的T細胞媒介細胞障害性の標的となり得
る
ことは従来の研究(Tsang,K.Y.ら(1994)Vaccine Re search
,3:183−193;Takahashi,H.S.ら(198
9)Science,246:118−121;Jung,S.ら(1991)J.Exp.Med.
,173:273−276(1991);Peace,D
.J.ら(1991)J.Immunol.,146:2059−2065;F
enton,R.G.ら(1993)J.Natl.Cancer Inst.
,85:1294−1302;Gedde−Dahl,T.,IIIら(1992
)Hum.Immunol.,33:266−274及びGedde−Dahl
,T.,IIIら(1992)Int.Immunol.,4:1331−133
7)で指摘されており、これらの研究に基づいて、突然変異したInt6タンパ
ク質は、MHC装置を介して腫瘍細胞表面に提示されることによって特異的T細
胞応答を誘発すると考えられる。
従って本発明は、ワクチン及び免疫治療方法で使用するためのInt6タンパ
クまたは該タンパク質に由来のペプチドを含む医薬組成物を提供する。哺乳類の
癌を防御するワクチンとして使用される場合、医薬組成物は、組換え発現ベクタ
ーまたは発現タンパク質を含有する培養上清をトランスフェクトした細胞から得
られた細胞溶解物を免疫原として含有し得る。または、免疫原が、部分的もしく
は実質的に精製された組換えタンパク質または合成ペプチドであってもよい。
獣医薬及びヒト医薬の双方に使用される上記の組成物又は製剤は、上記のよう
な免疫原を、1種またはそれ以上の適格な医薬用担体及び任意の他の治療用成分
と共に含有する。(1種または複数の)担体は、製剤の他の成分と相溶性であり
、そのレシピエントに有害でないという意味で「許容できる」ものでなければな
らない。製剤は単位量の剤形で提供されるのが好都合であり、製剤業界で周知の
任意の方法によって調製できる。
すべての方法が、有効成分と1種またはそれ以上の補助成分を構成する担体と
を会合させる段階を含む。一般には、有効成分を液体担体または微細分割した固
体担体またはその双方と均一かつ均質に会合させ、次いで、必要に応じて製品を
所望の製剤形態に形成することによって製剤を調製する。
静脈内筋肉内、皮下、または腹腔内投与に好適な調剤は便宜的には、受容者の
血液と好ましくは等張である溶液を含む活性成分の滅菌水性溶液を含む。そのよ
うな調剤は、固体活性成分を塩化ナトリウム(例えば0.1〜2.0M)、グリ
シンなどのような生理学的に適合可能な物質を含み、水性溶液を製造するための
生理学的条件と適合可能な緩衝化したpHを有する水に溶解し、そして上記溶液
を滅菌することによって便宜的に調製することができる。これらは、単位または
多数回投薬容器、例えば、シールしたアンプルまたはバイアル中に存在すること
ができる。
本発明の調剤は安定剤を取り込むことができる。例示的な安定剤はポリエチレ
ングリコール、タンパク質、多糖類、アミノ酸、無機酸、および有機酸であり、
これらはそれらのみでも混合物としてでも使用することができる。これらの安定
剤は、好ましくは、免疫原の1重量部当たり0.11〜10,000重量部の量
で取り込まれる。2以上の安定剤を使用することを意図する場合、それらの総量
は好ましくは上記で特定した範囲内である。これらの安定剤は好適な濃度および
pHにおいて水性溶液中で使用される。そのような水性溶液の特定の浸透圧は一
般的には0.1〜3.0浸透圧モルの範囲内であり、好ましくは0.8〜1.2
の範囲内である。水性溶液のpHは5.0〜9.0の範囲内、好ましくは6〜8
の範囲内に調整される。本発明の免疫原を配合する際に、抗吸着剤を使用しても
よい。
さらなる薬学的方法を使用して、作用の持続を調節することができる。調節さ
れた放出調製物をポリマーの使用を通じて達成し、本タンパク質またはその誘導
体を複合化または吸収することができる。調節された運搬は、放出を調節するこ
とを目的として、好適な巨大分子(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリ
ビニル、ピロリドン、エチレンビニルアセテート、メチルセルロース、カルボキ
シメチルセルロース、またはプロタミン硫酸塩)と、巨大分子の濃度と、配合の
方法とを選択することによって達成することができる。調節された放出調製物に
よる作用の持続を調節するためのもう一つ別の可能な方法は、タンパク質、タン
パク質アナログまたはそれらの機能的誘導体を、ポリエステル、ポリアミノ酸、
ヒドロゲル、ポリ(乳酸)またはエチレンビニルアセテートコポリマーなどのポ
リマー材料の粒子中に配合することである。あるいは、これらの試薬をポリマー
粒子に配合する代わりに、これらの材料を、例えばコアセルベーション技術また
は界面重合によって調製したマイクロカプセル中に、例えば各々ヒドロキシ−メ
チルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリ
レート)マイクロカプセル中に、あるいはコロイド薬剤運搬システム中に、例え
ばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子
、およびナノカプセル中に、あるいはマクロエマルジョン中に、入れることも可
能である。
経口調製物を所望する場合、組成物を、ラクトース、スクロース、澱粉、タル
クステアリン酸マグネシウム、結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシ
メチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウムまたは中でもアラビアゴ
ムなどの典型的な担体と組み合わせることができる。
本発明のタンパク質は、キットの形態、単独、または上記のような医薬組成物
の形態で供給できる。
ワクチン化は慣用的方法により実施できる。例えば、免疫原は、食塩水または
水などの好適な希釈剤、あるいは完全または不完全アジュバンド中において使用
できる。さらに、免疫原は、タンパク質を免疫原性にするために担体に結合して
もよいし、しなくてもよい。そのような担体分子の例には、ウシ血清アルブミン
(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風トキソイド
などが挙げられるが、これらに限定されない。免疫原は、静脈内、腹腔内、筋肉
内、皮下などの抗体産生に適した任意の経路によって投与することができる。免
疫原は、有意な力価の抗−Int6抗体が生産されるまで、一回または周期的間
隔で投与することができる。抗体は以下に記載する免疫分析を使用して血清中に
検出することができる。
さらに別の態様において、本発明は、Int6タンパク質またはInt6タン
パク質配列から誘導されたペプチドの宿主生物合成を指令できる核酸配列を含む
医薬組成物を提供する。そのような核酸配列は、当業者に既知の方法によって好
適な発現ベクター中に挿入することができる。in vivoで高効率遺伝子移
入を生み出すために好適な発現ベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイ
ルスおよびワクシニアウイルスのベクターが挙げられるが、これらに限定されな
い。そのような発現ベクターの作動要素は、本明細書中に以前に開示されており
当業者に既知である。そのような発現ベクターは、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔
内または経口的に投与することができる。
免疫原が、Int6タンパク質、それから誘導されたペプチド、あるいはIn
t6タンパク質またはそれから誘導されたペプチドの宿主生物合成を指令できる
核酸配列であるにせよ、免疫原は予防または治療目的の何れかのために投与する
ことができる。予防的に付与される場合、免疫原は癌または癌に起因する任意の
症状に先立って付与される。免疫原の予防的投与は、癌のいかなる次の発症を防
止または衰退させるのに役立つ。治療的に付与される場合、免疫原は癌または癌
に付随する任意の症状の発症時または発症直後に付与される。
免疫原が部分的または実質的に精製された組み換えInt6タンパク質または
Int6ペプチドである場合、Int6に対する抗体応答を引き出すのに有効な
投与量は約10μgから約1500μgの範囲である。
Int6に対する抗体応答を引き出すのに有効な核酸配列をコードするInt
6タンパク質の投与量は、約10から約1000μgの範囲である。
Int6タンパク質(単数または複数)の宿主生物合成を指令できる核酸配列
を含む発現ベクターは、キットの形態、単独、または上記したような医薬組成物
の形態で供給することができる。
本発明はさらに、薬学的に許容できる担体中に、Int6タンパク質あるいは
Int6タンパク質の宿主生物合成を指令できる発現ベクターを含む癌に対して
哺乳動物を免疫するためのワクチンに関する。
ワクチンとしての並びに免疫治療における使用に加えて、上記組成物はInt
6タンパク質に対する抗体を調製するために使用することができる。抗体を調製
するためには、宿主動物は、Int6タンパク質あるいはそれから誘導されたペ
プチドあるいはInt6タンパク質またはそれから誘導されたペプチドを発現す
ることができる上記発現ベクターを使用して、免疫される。宿主の血清または血
漿を適当な時間間隔後に回収し、ウイルス粒子と反応性を有する抗体を含む組成
物が得られる。ガンマグロブリン画分またはIgG抗体を、例えば、飽和硫酸ア
ンモニウムまたはDEAE Sephadex、または当業者に公知の他の技術
を使用することによって得ることができる。抗体は、薬剤のような他の抗ウイル
ス剤に付随することがある多くの有害副作用を実質的には含まない。
抗体組成物は、潜在的な有害免疫系応答を最小化することによって、宿主系と
より適合可能にすることができる。これは、外来種抗体のFc部分の全部または
一部を除去することによって、または宿主動物と同一種の抗体を使用することに
よって、例えば、ヒト/ヒトハイブリドーマからの抗体の使用によって、達成す
ることができる。ヒト化抗体(即ち、ヒトにおいては非免疫原性)は、例えば、
抗体の免疫原性部分を、対応するが非免疫原性である部分で置き換えることによ
って作製することができる(即ち、キメラ抗体)。そのようなキメラ抗体は、1
つの種からの抗体の反応性または抗原結合部位および異なる種からの抗体(非免
疫原性)のFc部位を含むことができる。キメラ抗体の例としては、非ヒト哺乳
動物−ヒトキメラ、げっ歯動物−ヒトキメラ、マウス−ヒトおよびラット−ヒト
キメラが挙げられるが、これらに限定されない(Robinson et al.,国際特許出
願184,187;Taniguchi M.,欧州特許出願171,496;Morrison et
al.,欧州特許出願173,494;Neuberger et al.,PCT出願WO86/
01533;Cabilly et al.,1987Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439;Nish
imura et al.,1987 Canc.Res.47: 999;Wood et al.,1985 Nature 314: 446
;Shaw et al.,1988 J.Natl.Cancer Inst.80: 15553,これらは全て引用に
より本明細書中に取り込まれる)。
「ヒト化」キメラ抗体の一般的考察は、Morrison S.,1985 Science 229: 120
2およびOi et al.,1986 BioTechniques 4; 214 により提供される。
好適な「ヒト化」抗体はあるいはまたCDRまたはCEA置換によって作製す
ることができる(Jones et al.,1986 Nature 321:552; Verhoeyan et al.,198
8 Science 239: 1534; Biedleret al.1988J.Immunol.141: 4053,これらは全
て引用により本明細書中に取り込まれる)。
抗体または抗原結合断片はまた遺伝子工学によって作製することができる。E. coli
中における重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の両方の発現のための技術は、P
CT特許出願;公開番号WO901443、WO901443およびWO901
4424および Huse et al.,1989 Science 246: 1275-1281の対象である。
あるいはまた、抗Int6抗体を免疫原として抗イディオタイプ抗体を投与す
ることによって誘導することができる。便宜的には、上記で説明したように調製
された精製した抗Int6抗体調製物を使用して、宿主動物中に抗イディオタイ
プ抗体を誘導する。本組成物は好適な希釈剤中で宿主動物に投与される。投与後
に、通常は反復投与後に、宿主は抗イディオタイプ抗体を産生する。Fc領域に
対する免疫原性応答を排除するために、宿主動物と同一種により産生された抗体
を使用することができ、または投与された抗体のFC領域を除去することができ
る。宿主動物中に抗イディオタイプ抗体を誘導した後、血清または血漿を取り出
し、抗体組成物が得られる。本組成物は抗−Int6抗体に関して上記説明した
ように、あるいは親和性マトリックスに結合した抗−Int6抗体を使用するア
フィニティークロマトグラフィーによって、精製することができる。産生した抗
イディオタイプ抗体は真正なInt6抗原と立体配置が同様であり、Intタン
パク質を使用するよりはむしろ、ワクチンを調製するために使用することができ
る。
動物中に抗−Int6抗体を誘導するための手段として使用する場合、抗体の
注入方法はワクチン接種目的の場合と同一であり、即ち、アジュバンドと一緒に
またはそれなしに、生理学的に好適な希釈剤中において有効濃度において、筋肉
内、腹腔内、皮下などに注入される。1以上の追加免疫注入が望ましい場合もあ
る。
Int6タンパク質に対する抗体および抗イディオタイプ抗体の両方のin vivo
使用のために、並びに診断用途のためには、モノクローナル抗体を使用
することが好ましい場合がある。モノクローナル抗−Int6抗体または抗イデ
ィオタイプ抗体は当業者に既知の方法によって作製することができる(Goding,
J.W.1983.Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,Pladermic Pre
ss,Inc.,NY,NY,pp.56-97)。ヒト−ヒトハイブリドーマを作製するために
、ヒトリンパ球提供者が選択される。Int6抗原を有することが知られる提供
者は好適なリンパ球提供者として役立つ場合がある。リンパ球は抹消血液試料か
ら単離することができ、提供者が牌除去に付される場合は脾臓細胞を使用できる
。エ
プスタイン−バーウイルス(EBV)を使用してヒトリンパ球を不死化すること
ができ、またはヒト融合パートナーを使用してヒト−ヒトハイブリドーマを作製
することができる。ペプチドによる1次in vitro免疫感作またヒトモノ
クローナル抗体の生成においても使用することができる。
不死化された細胞により分泌される抗体をスクリーニングして、所望の特異性
を有する抗体を分泌するクローンを決定する。モノクローナル抗体については、
抗体はInt6タンパク質またはペプチドに結合しなければならない。モノクロ
ーナル抗イディオタイプ抗体のためには、抗体は抗−Int6抗体に結合しなけ
ればならない。所望の特異性を有する抗体を産生する細胞が選択される。
上記の抗体およびその抗原結合断片は、キット形態、単独またはin viv o
用途用の医薬組成物において提供することができる。免疫治療において医薬組
成物として使用する場合、本書中に記載した抗体またはキメラ抗体はまた、慣用
的方法により毒素分子、ラジオアイソトープ、および薬剤に結合することができ
る(Vitetta et al.(1991)in「Biologic Therapy of Cancer」De Vita VT,He
llman S.,Rosenberg,S.A.(編集)J.B.Lippincott Co.フィラデルフィア;
Larson,S.M.et al.(1991)in「Bio1ogical Therapy of Cancer」De Vita V.
T.,Hellman S.,Rosenberg,S.A.(編集)J.B.Lippincott Co.,フィラデル
フィア)。抗体を結合させることができる毒素の例としては、リシンおよびシュ
ードモナスエンドトキシンであるが、これらに限定されない。薬剤または化学治
療剤の例としては、アドリアマイシンが挙げられるが、これに限定されない。ラ
ジオアイソトープの例としては、131Iが挙げられるが、これに限定されない。
上記試薬に共有結合により結合した抗体は、癌の化学治療において使用すること
ができる。抗体はまた、下記に説明するような免疫分析において治療用途そして
診断用途のために、Int6タンパク質を精製するための免疫親和剤としても使
用することができる。
従って、本発明は、Int6タンパク質発現における変化について被験体のタ
ンパク質を分析することを含む、Int6遺伝子の突然変異を検出するための第
3の方法に関する。
この方法によるタンパク質の分析のためには、タンパク質は腫瘍ビオプシー試
料などのような生物学的試料から得られる。タンパク質は、粗製ライセートとし
て得ることができ、またはそれは当業者に既知の方法によってさらに精製するこ
とができる(Sambrook,J.et al.(1989)in「Molecular Cloning,Alaborato
ry Manual」,Cold Spring Harbor press,Plainview,NY)。
粗製タンパク質ライセートは、抗−Int6抗体を使用する免疫分析によって
Int6タンパク質について分析することができる。
本発明の免疫分析は、放射免疫分析、ウエスタンブロット分析、免疫蛍光分析
、酵素免疫分析、化学発光分析、免疫組織化学分析などが挙げられる。ELIS
Aについて当業者に既知の標準的技術は、Methods in Immunodiagnosis,第2版
、Rose および Bigazzi,eds.,John Wiley およびSons,1980 およびCampbell
et al.,Methods of Immunology,W.A.Benjamin,Inc.,1964に記載されており
、これらは共に引用により本明細書中に取り込まれる。このような分析は、技術
文献に記載されているように直接、間接、競合、または非競合免疫分析でもよい
(Oellerich,M.1984.J .Clin.Chem.Clin.Biochem.22: 895-904)。
形成したInt6タンパク質抗Int6抗体複合体の検出は、複合体と標識抗
ラビット抗体などの2次抗体との反応により達成することができる。標識は、好
適な蛍光または発色試薬の存在中で複合体をインキュベートすることによって検
出される酵素であればよい。他の検出可能な標識、例えば、放射標識または金コ
ロイドなども使用できる。標識されたInt6タンパク質−抗Int6抗体複合
体は次いで、オートラジオグラフィーによって視覚化される。
本発明はまた、Int6タンパク質、Int6タンパク質の宿主生物合成を指
令できる核酸配列を含む発現ベクター、または抗−Int6抗体を、治療的に有
効量において含む医薬組成物を投与することを含む、癌の治療方法を包含する。
治療的に付与される場合、ラジオアイソトープ、毒素分子または薬剤に結合した
Int6タンパク質、Int6タンパク質をコードする発現ベクター、または抗
Int6抗体は、感染の発症時(またはその直後)、または癌に起因する感染ま
たは疾患の任意の症状の発症時に付与される。Int6タンパク質、Int6タ
ンパク質をコードする発現ベクター、または抗Int6抗体の治療的投与は感染
または疾患を減衰させるのに役立つ。
本発明はまた、癌を有する被験者を治療する別の方法であって、
(a)特異的T細胞応答を引き出すのに有効な量のInt6タンパク質またはI
nt6タンパク質の宿主生物合成を指令できる発現ベクターにより被験者を免疫
し;
(b)上記T細胞を上記免疫された被験者から単離し;そして
(c)上記T細胞を上記免疫された被験者または非免疫被験者に治療的な有効な
量において投与する、
ことを含む方法を包含する。
Int6タンパク質に対して反応性であるT細胞集団を、Int6タンパク質
で免疫した提供者の抹消血液試料または脾臓細胞から単離することができる。エ
プスタインバーウイルス(EBV)を使用してヒトリンパ球を不死化することが
でき、ヒト融合パートナーを使用して、ヒト−ヒトハイブリドーマを作製するこ
とができる。Int6タンパク質による1次in vitro免疫感作もまた、
Int6タンパク質に対して反応性であるT細胞の生成において使用することが
できる。
T細胞は約7日〜約90日まで培養し(Yanelli,J.R.J.Immunol.Methods
139: 1-16(1991))、次いでスクリーニングして、T細胞応答性を分析する既知
の方法を使用して免疫原性キメラタンパク質中に含まれる他のペプチドに対する
所望の反応性を有するクローンを決定する;かくして、所望の応答性を産生する
T細胞が選択される。
上記のT細胞は、T細胞を哺乳動物に静脈内、腹腔内、筋肉内または皮下投与
することによって、癌に罹患した個人の治療としてin vivo使用のために
使用することができる。好ましい投与経路は、静脈内または腹腔内である。
本発明はまた、野生型Int6遺伝子を表す核酸配列を含む発現ベクターをI
nt6遺伝子の突然変異を有する被験者に投与する、遺伝子治療方法に関する。
野生型Int6遺伝子を表す核酸配列は、配列番号1および配列番号3に示され
ているものである。そのような核酸配列は当業者に既知の方法によって好適な発
現ベクター中に挿入することができる。高効率遺伝子移入をin vivoで生
み出すのに好適な発現ベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルスおよ
びワクシニアウイルスのベクターが挙げられる。
野生型Int6遺伝子を表す核酸配列を含む発現ベクターは、静脈内、筋肉内
、皮下、腹腔内または経口的に投与することができる。好ましい投与経路は静脈
内である。
本発明はまた、Int6遺伝子の突然変異を検出するための診断キットを提供
する。この診断キットは、Int6疾患遺伝子の突然変異についてDNAまたは
RNAを分析する際におけるPCRプライマーとして有用な精製かつ単離された
核酸配列を含む。
本明細書中に引用された如何なる文献または特許は引用により取り込まれる。
以下の実施例は本発明の多様な側面を例示するために提示されるものであり、本
発明の範囲を限定することを意図するものでは決してない。
実施例
実施例1
MMTVゲノムの新規の挿入部位の同定
高率のガンの表現型による選択的な同型交配によって偏向していない、乳癌D
NAにおける新規Int遺伝子座を同定するため、チェコスロバキアで捕獲され
たM.musculus(CZECH II)(Gallahan,D.and Callahan,R.(1987)J .Virol.
,61:66-74)の単一家系のつがい由来の野生のマウス株を利用した。高発現率の
同型交配マウス株とは異なり、CZECH IIマウスは内因性のMMTVゲノムを欠い
ているが、乳を通して先天的に受け継がれるMMTVの感染性の株を保持する(C
allahan,R.et al.(1982)Proc .Natl.Acad.Sci.U.S.A.,79: 4113-411
7)。CZECH IIマウスにおいては、腫瘍形成に先立って、安定で、クローン優性で
、時には肺に転移するフォーカス乳癌を形成する過増殖外殖ライン(HOG)が
発達していた。HOGまたはHOG由来の腫瘍、またはHOG由来の腫瘍をもつ
マウスの肺転移における、ゲノムDNAへのMMTVプロウイルスゲノムの挿入
を検出するために、CZZ1と呼称するCZECH II HOGライン、また
はCZZ−1由来の悪性腫瘍または肺転移から細胞DNAを単離して、以下のよ
うにサザンブロットにより解析した。10μgの細胞DNAをEcoRIで消化
し、0.8%アガロースゲルで泳動し、ナイロン膜に吸着させ、Gallahan,D.a
nd Callahan,R.(J .Virol.(1987)61:66−74)に記載されてい
るように、MMTV LTRプローブでハイブリダイゼーションを行った。簡略
には、ハイブリダイゼーションの前に、フィルターを37℃で4から24時間、
3×SSPE(1×SSPEは180mMのNaCl、10mMのNaH2PO4
[pH7.4]、および1mMのEDTAからなる)、5×デンハルト溶液(0
.02%ファイコール、0.02%ポリビニルピロリドン、および0.02%牛
血清アルブミン)、2.5%デキストラン硫酸、および50%ホルムアミドを含
むプレハイブリダイゼーション溶液中に浸した。40%ホルムアミドを含む以外
はプレハイブリダイゼーション溶液と同様の溶液に、変性させたプローブを加え
た。こ
の混合液をプレハイブリダイゼーションしたフィルターを含むプラスチックバッ
グに加え、37℃で24時間保温した。フィルターを、65℃で0.1×SSC
(1×SSCは0.15MのNaClと0.015Mのクエン酸ナトリウムから
なる)と0.5%ドデシル硫酸ナトリウムを3回取り替え(20から30分の洗
浄ごとに取り替えた)、ストリンジェント条件下で洗浄した。フィルターは、コ
ダックXAR−5 C線フィルムに一晩から数日間露光した。これらのサザンブ
ロットの結果を図1Aおよび1Bに示す。図1Aに示す結果は、3個のMMTV
プロウイルスゲノム(6個のEcoRI制限酵素断片)を有する、一つのCZZ
−1 HOGラインのDNAが細胞DNAへ挿入されていることと、これらのプ
ロウイルスゲノムがまた、HOG内で独立に発生した原発腫瘍中にも存在するこ
とを示す。この結果はさらに、これらの6個のMMTV関連断片がもともとの外
殖物中やそれぞれの継代移植世代中にも再現性良く認められるため、CZZ−1
が腫瘍形成に先立つ細胞中でクローン優性集団であることを示す。実際、CZZ
−1 HOGのクローン優性な性質は、4.8および2.8kbのEcoRI制
限酵素断片に相当する一つの完全なプロウイルスゲノムを欠いた、腫瘍1262
(図1Aレーン3)により明らかにされている。図1Aで解析された13の腫瘍
DNAのうち5つ、および腫瘍4973をもつマウスの肺の11の独立な転移部
位のうち5つ(図1B)が付加的な挿入MMTVゲノムを有するという観察は、
付加的挿入が付加的な細胞遺伝子を活性化(または不活性化)することによって
腫瘍の進行に寄与していることを示唆する。しかし、既知の共通の挿入部位(W
nt−1、Fgf−3、Int3、Wnt−3およびFgf−4)はいずれもC
ZZ−1 HOG中でMMTVにより組換えられていないので、それぞれのCZ
Z−1 HOGのEcoRI宿主−MMTV結合制限酵素断片の組換え体クロー
ンを得て、宿主配列のサブクローンをMMTV誘導DNA組換えの証拠として、
独立のMMTV誘導乳癌DNAのサザンブロットをスクリーニングするためのプ
ローブとして用いた。
この手法を利用して、CZZ−1 HOGの一つのMMTVプロウイルスの近
傍の宿主配列(すなわち、図1Aに示す3.0kb断片)からなるプローブを、
CZZ−1 HOG由来の腫瘍22(図2A、レーン2および3)、および独立
の乳癌1139(図2B,レーン2および3)および3144(図2C)レーン
2および3)のInt6共通挿入部位を同定するのに用いた。簡略には、腫瘍D
NAおよび正常な肝臓DNA(各パネルのレーン1)由来の細胞DNA(10μ
g)をEcoRIで消化し、0.8%アガロースゲルで泳動し、ナイロン膜上に
ブロットした。図2Aおよび2Bのブロットのレーン1および2は、宿主近傍配
列に相当するプローブDでハイブリダイゼーションした。 その後、図2Aおよ
び2Bのレーン2を、MMTV gag配列(Gallahan and Callahan(1987
)J .Virol.61:66−74)を用いてハイブリダイゼーションし、その結果
を図2Aおよび2Bのレーン3に示す。図2Cのレーン1および2はプローブC
でハイブリダイゼーションした。その後、レーン2はMMTVenv配列(Gall
ahanおよびCallahan(1987)J .Virol.61:66−74)を用いてハイブ
リダイゼーションし、その結果を図2Cのレーン3に示す。最初のプローブでの
それぞれのブロットのハイブリダイゼーションはこの実施例の前述の記載(Gall
ahanおよびCallahan(1987)J .Virol.61:66−74)に従い実施した
。その後ブロットを第二のプローブでハイブリダイゼーションする場合、ブロッ
トをGallahanおよびCallahan((1987)J.Virol.61:66−74)に従
い、以下のように再びプローブを加えた。簡略には、フィルターを100mlの
0.4NのNaOH中に浸し、室温で20分間保温することによってジェネトラ
ンフィルターからプローブDNAを除去した。この溶液を捨て、0.1MのTr
is(pH7.5)−0.1×SSC−0.5%ドデシル硫酸ナトリウム溶液に
取り替えてフィルターを中和した。フィルターを室温で15分間保温した後、中
和溶液を取り替えて保温をさらに15分間続けた。その後、この実施例で以前に
記載したようにフィルターをプレハイブリダイゼーションし、ハイブリダイゼー
ションした。この方法で処理したジェネトランフィルターはDNAが顕著に失わ
れるまで、少なくとも5回は再使用し得る。
結果は、MMTV誘導再構成(図2Aから2Cにおいて矢印で示す)が二つの
独立のMMTV誘導乳癌DNA(図2Bおよび2Cのレーン2と3)で検出され
たことを表す。興味深いことに、MMTV誘導型再構成が検出されたそれぞれの
場合、再構成した制限酵素断片はMMTVgag又はenv配列を含む断片と一
緒に泳動されていた。これらの結果は、各腫瘍におけるウイルスゲノムの転写の
向きが同じ方向であることを表す。すなわち、挿入されたMMTVゲノムに近接
した宿主配列は、Int6と名付けられた、MMTVの新しい共通の挿入部位を
示す。
実施例2
ネズミInt6遺伝子の単離
Int6遺伝子座の組換えゲノムクローンを得るため、宿主近傍配列を含む3
.0kbのEcoRI断片(図1Aに示す)のサブクローン(すなわち、プロー
ブD、図3)を、マウス株129/sv由来のゲノムDNAのラムダファージラ
イブラリー(Stratagene,LaJolla,CA)をプローブ探査するのに用いた。この
ゲノムDNAは、ヌクレオチド配列解析によって決定されたように野生型Int
6DNAを含む。Int6遺伝子座の47kbを覆うような重なりあうラムダク
ローンがさらに3つ、プローブA−C(図3)を用いて得られた。これらの4つ
の重複するラムダクローンは、図3に示すようにネズミInt6遺伝子を覆う。
遺伝子はマウスの15番染色体上のmycガン原遺伝子の動原体部位に位置する
。Int6遺伝子座のゲノムクローンのさらなるヌクレオチド配列解析から、こ
の遺伝子は図3に示すようにゲノムDNAの34kbにおよぶ13のエキソンを
もつことが示された。
実施例3
CZECH II 乳ガンにおけるInt6遺伝子の発現
CZECH II乳ガンにおけるInt6遺伝子の発現を研究するため、In
t6陰性腫瘍(腫瘍178)および、Int6上にウィルスの挿入されたInt
6陽性腫瘍(22および1139)から調製された総RNA(20μg)をホル
ムアルデヒド存在下で変性させ、ホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲルで
泳動した。RNAをナイロン膜に吸着させ、Gallahan,D.およびCallahan,R.(
1
987)J.Virol.,61:66−74に記載されたようにプローブAとハイブリ
ダイゼーションを行った(図3)。ノーザンブロット解析の結果を図4に示す。
簡略には、3つの腫瘍の各々において、プローブAでのハイブリダイゼーション
によって1.4kbの型のRNAが検出され、腫瘍1139にはさらにプローブ
Aの配列に関係する0.9kbの型のRNAが含まれた。ウィルスによるInt
6の再構成を伴わない腫瘍178(図4)、およびMMTVによって誘導される
いくつかの他の乳ガンでは、プローブAによって検出される1.4kbの型のR
NAを発現したという観察結果から、腫瘍22および1139におけるInt6
遺伝子の発現レベルはこの遺伝子座へのウィルスの挿入による重要な結果ではな
いことが示唆される。
実施例4
野生型ネズミInt6のcDNAの単離
野生型1.4kbのInt6RNAに対応するcDNAを単離するため、MM
TVによるInt6の再構成を伴わない、MMTVによって誘導された乳ガンの
ネズミcDNAライブラリーを、標準的な方法(Sambrook et al(1989)"M
olecular Cloning,A Laboratory Manual",Cold Spring Harbor Press,Plainvie
w NY)を用いて調製し、プローブAを用いてプローブ探査した(プローブAは図
3に示したXbaI断片である)。ネズミInt6 cDNAのヌクレオチド配
列を決定し、これを図5に示す。1.4kbの型のInt6RNAの翻訳から、
43.5キロダルトンのタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム
が発見された。図5に示すように、このタンパク質には2つのN−グリコシル化
され得る部位(Chem.,260:12492−12499)、チロシンキナーゼ
(Hunter,T.およびCooper,J.A.(1985)Ann.Rev.Biochem ,54:897−
930)、およびカゼインキナーゼII(Pinna,L.A.(1990)Biochem Bio phys Acta
,1054:267−284)が含まれる。
実施例5
種間に渡るInt6cDNAの保存
ネズミの乳ガンにおいて、MMTVの挿入によって発現が影響されまたは変化
する全ての遺伝子は進化を通じて高度に保存されている(Dickson,C.and Peter
s,G.(1987)Nature 326:883;Rijsewizk,K.F.et al(1987)Cell
,50:649−657:Robbins,J.et al(1992)J.Virol,66:
2594−2599)ため、異種間のゲノムDNAにおけるInt6遺伝子の保
存性をサザンブロット解析によって研究した。線虫C.elegans,ショウ
ジョウバエ,アフリカツメガエル,ニワトリ、ネズミ、およびヒト由来の細胞D
NA(各10μg)をBamHIで消化し、0.8%アガロースゲルで泳動し、
ナイロン膜に吸着させ、3×SSPE(1×SSPEは180mMのNaCl,
10mMのNaH2PO4(pH7.4),1mMのEDTA)、5×Denha
rdt液(0.02%Ficoll,0.02%ポリビニルピロリドン,0.0
2%ウシ血清アルブミン)、5%デキストラン硫酸、2%SDS(ドデシル硫酸
ナトリウム)中でInt6cDNAと65℃で一晩ハイブリダイゼーションした
。ハイブリダイゼーション後、膜をストリンジェント条件下で0.5×SSC(
1×SSCは0.15MのNaCl,0.015Mのクエン酸ナトリウム)プラ
ス0.5%SDSで3回(洗液は20から30分の洗浄ごとに換えた)65℃で
洗浄した。Kodak XAR−5フィルムに3日間感光させた。図6に示すよ
うに、Int6に関連する配列が、検査した全ての真核生物種において検出され
た。また、Int6関連配列を含む酵母DNAの制限酵素消化断片がサザンブロ
ット解析によって検出された(データは示さない)。
さらに、ショウジョウバエのInt6相同遺伝子のcDNAクローンのヌクレ
オチド配列を決定し(データは示さない)、ショウジョウバエのInt6タンパ
ク質の推定アミノ酸配列はヒト/ネズミの推定アミノ酸配列と60%同一であっ
た。併せて考えると、これらの結果によって、Int6遺伝子の幅広い進化的保
存性が証明され、Int6が基本的な生命機能を果たすことが示唆される。
実施例6
標的組織におけるInt6特異的なmRNAの発現の検出
MMTVによる遺伝子の再構成を伴わない腫瘍中のInt6の1.4kbの型
のRNAを検出した(すなわち図4の腫瘍178)ため、正常な成体の組織およ
び発生の各段階の胚のInt6 RNAの発現を以下のようにノザンブロット解
析によって調査した。各組織から総RNA(各10μg)を調製した。RNAを
ホルムアルデヒド存在下で変性させ、ホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲ
ルで泳動した。このRNA試料をナイロン膜に吸着させ、最初にβ−アクチンプ
ローブと、続いてInt6 cDNAプローブと、GallahanおよびCallahan(J. Virol.
,61:66−74(1987))に記載された条件でハイブリダイゼー
ションした。図7に示すように、Int6 RNAは乳腺を含む成体の調査した
全ての組織で発現しており、胚におけるInt6 RNAの発現は発生の8日目
にすでに検出された。
実施例7
標的組織におけるInt6特異的なmRNAの発現の検出
Int6特異的なmRNAの発現を検出するために、種々の組織由来の総RN
Aを用いてランダムプライミングしたcDNAを調製する。Int6ネズミcD
NAの700bp断片を、配列番号29 TGTCCACATATTCTACG
CTAおよび配列番号30 TGTATGTCATCCTTTATACAとして
示すプライマーを用いてPCRによって増幅する。PCRの条件は:変性94℃
1分、アニーリング55℃1分、伸長72℃2分を30サイクルである。最後の
サイクルの後、2分の伸長反応を追加する。PCR産物を1.0%アガロースゲ
ルで泳動する。エチジウムブロミド染色の後、ゲルの写真撮影によってRT−P
CR産物を検出する。
実施例8
MMTVによるInt6の再構成が乳癌において
新種のInt6RNAの発現をもたらす
図3に示したようなネズミのInt6遺伝子のマッピングデータの検査によっ
て、全てのウイルスの挿入がInt6遺伝子のイントロン中で起こること、およ
び、取り込まれたウイルスゲノムの転写方向はInt6遺伝子のそれと反対方向
であることが明らかである。Int6遺伝子座でのMMTVの果たす役割につい
て少なくとも4つの可能な仮説がある。第一の仮説では、Int6遺伝子は実際
はMMTVが作用する標的遺伝子ではない。Wnt1、Fgf−3、およびFg
f−4遺伝子座(Dickson,C.,etal.(1984)Cell.37: 529-536; Nusse,R
.,et al.(1982)Cell,31:99−109;Peters,G.,et al.(19
89)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.86:5678−5682)において、MM
TV挿入部位は標的遺伝子の周囲に規則的様式で集まり、標的遺伝子の5’側に
挿入されたウイルスゲノムの転写方向は標的遺伝子のそれと反対方向であるが、
標的遺伝子の3’側に挿入されたものは同じ転写方向である。さらに、公表され
た報告に基づくと、MMTV挿入部位は特定の標的遺伝子から15kb以内にあ
る。しかしInt6遺伝子の3’側13kbまでの配列に対応するRNAの発現
の活性化の証拠が発見されていないため、推定上の標的遺伝子の位置は挿入され
たMMTVゲノムから、CZZ−1 HOGの場合は24kb以上、腫瘍113
9の場合は30kb以上離れていなければならず(図3参照)、従ってこの可能
性は非常に少ない。
Int6遺伝子へのMMTVの挿入に起因し得る二番目の結果は、挿入された
ウイルスゲノムの3’LTRから開始する、Int6の新たなキメラRNA転写
物の発現の活性化である。Int6の場合以外では、類似した状況がMMTVに
よって誘導されるInt−3の再構成の場合に起き(Robbins,J.,et al.(19
92)J.Virol.,66:2594−2599)、ウイルスゲノムの転写方向がI
nt6の転写方向と反対であるため、Int6アンチセンスRNAの発現を引き
起こすと考えられる。このような結果は、対立遺伝子の両者の発現を不活性化す
るトランス優性な突然変異を表すと考えられる。しかし、種々の方法を用いたが
、MMTVによって誘導されるInt6アンチセンスRNAの発現は検出され
なかった。
三番目の可能性によると、Int6遺伝子はInt遺伝子座内のMMTVの挿
入の標的であると仮定される。この場合ウイルスの挿入は一つの対立遺伝子の発
現を阻害し、もう一方の対立遺伝子に劣性の自発的な突然変異が存在することが
明らかになると考えられる。この可能性を調べるために、腫瘍22および腫瘍1
139内の再構成されていないInt6の対立遺伝子に対応するcDNAヌクレ
オチド配列が決定され、どちらの場合も突然変異は見つからなかった。
4番目のよりあり得る仮説は、Int6遺伝子へのMMTVの挿入が、乳上皮
細胞の増殖の正常な制御を失わせるような、生物学的に活性化された遺伝子産物
(Int3のような(Robbins,J.,et al.(1992)J.Virol.,66:259
4−2599))または優性ネガティブ遺伝子産物の発現を引き起こし、影響を
受けた乳上皮細胞の過形成をもたらすというものである。これによって、乳ガン
の発達を引き起こし得る前悪性の上皮細胞集団が発生する。
MMTVのInt6遺伝子への挿入によって、変化したRNA種が発生するか
どうかを調べるために、腫瘍1139および腫瘍22からのInt6 RNAの
cDNAクローンのヌクレオチド配列が決定された。それぞれの場合において再
構成された対立遺伝子の転写によって、MMTV LTRの逆転したU3部位中
の隠れた転写終止シグナルで終止したキメラRNA種の発現が起こった(図8)
。興味深いことに類似した隠れた終止シグナルが、MMTVによって誘導される
Fgf−3のいくつかの再構成において活性であることが以前に示されている(
Clausse,N.,(1993)Virology,194:157−165)。
図9Aおよび9Bは、腫瘍1139(図9A)および22(図9B)中に検出
されたInt6−MMTV LTR RNA種のヌクレオチド配列を示す。図9
Aにおいては再構成された対立遺伝子由来の二つのRNA種(図A、900bp
および965bp)が検出された。900bpのRNA種に対応するRNA種が
図4においてノザンブロット解析によって検出された。一つのRNA種において
は、エキソン5はMMTV LTRのU5部位の末端にスプライシングされ、も
う一つの種においてはイントロン5中の隠れたスプライシング受容部位において
スプライシングが起こった。同様に図9、CZZ−1ではエキソン9がイントロ
ン9中の隠れた三つの異なるスプライシング受容部位のうちの一つにスプライシ
ングされた三つのキメラRNA種が存在した。キメラ腫瘍RNA種の大きさは正
常なInt6RNAのそれに類似しているため、図4の腫瘍22RNAのノザン
ブロット解析では検出されなかった。
再構成したInt6 RNAの仮想されるタンパク質への翻訳によって、すべ
ての5つの種からの産物は、Int6のイントロンおよび/または逆転したMM
TV LTRヌクレオチド配列によってコードされる新規のアミノ酸配列にIn
t6アミノ酸配列が連結された短縮型のキメラであることが明らかになった。9
65bpのRNA種が腫瘍1139中に存在することはInt6遺伝子産物の短
縮がMMTVの挿入の重要な結果であることを示唆する。
実施例9
ヒトInt6遺伝子の単離
マウスInt6cDNAをラムダファージ中のヒト肺RNAのcDNAライブ
ラリー(Clontech Inc.)をプローブ探査するために用い、ヒト肺
cDNAライブラリーからクローン化したヒトInt6 cDNAに特異的なプ
ライマー(配列番号3)を用いて、ヒトゲノムDNAのP1ファージライブラリ
ーを、Genome Systems Inc.(St.Louis,MO)に
よってInt6関連クローンについてPCRによってスクリーニングした。この
方法を用いて50kb以上のヒトゲノムDNAを含むひとつのP1ファージクロ
ーンおよび二つのラムダクローンが得られた。これらのクローンのヌクレオチド
配列解析によって、ヒトInt6遺伝子が図10に示されたような構成であるこ
とが明らかになった。マウスゲノム中と同様にヒトInt6遺伝子は13のエキ
ソンから構成される。ヒトInt6遺伝子はまた、七番目のイントロン中にCA
反復配列を含む(図10)。
実施例10
イントロン7に含まれるCA反復配列の大きさの多型
ヒトInt6遺伝子のイントロン7中のCA反復配列の周辺の核酸配列に相補
的で(図1)、配列番号31 GTGAAAATGACATGAAATTTCA
Gおよび配列番号32 TGCAGTGTGACAATATGGGCを有するプ
ライマーが、ヒトゲノムDNA中のCA反復配列を含むInt6遺伝子の部位を
PCR増幅するために用いられた。PCRの条件は、94℃1分間の変性、55
℃1分間のアニーリング、72℃2分間の伸長を30サイクル行った。最後のサ
イクルの後、2分間の伸長時間を加えた。非変性6%ポリアクリルアミドゲル電
気泳動によるPCR産物の分離によって、解析された84の個々のDNAのうち
46が異なる大きさの(情報を含む)対立遺伝子のヘテロ接合体であることを明
らかにした。
実施例11
ヒトInt6遺伝子の染色体上の局在
ヒトInt6遺伝子の染色体上の局在を決定するために、ヒトDNAおよび個
々のヒト染色体を含む齧歯類−ヒト体細胞融合細胞から単離したDNAのサザン
ブロット解析が行われた。簡略には、齧歯類−ヒト体細胞融合細胞DNAまたは
ヒトDNAをHindIIIによって消化し、3xSSPE、5xDenhard
t溶液、2.5%デキストラン硫酸および40%ホルムアミド中でヒトInt6
cDNAと37℃で24時間ハイブリダイゼーションした。ブロットを65℃3
回の0.1xSSC、0.5%SDSの液交換を含む(それぞれの液交換は20
から30分毎に行われた)ストリンジェント条件下で洗浄した。このサザンブロ
ットの結果を図12に示す。レーン1およびレーン2はヒト6番染色体(レーン
1)または8番染色体(レーン2)を含むチャイニーズハムスター−ヒト体細胞
ハイブリッドDNAを含み、レーン3はヒト3、7、8、15および17番染色
体を含むマウス−ヒト体細胞ハイブリッドからのDNAを含み、レーン4はヒト
ゲノムDNAを含む。レーン4に見られる23kb断片はInt6関連偽遺伝子
を含み、Int6遺伝子をコードする配列はレーン4に見られた4.5、3.5
およ
び3.0kb断片により特定される。この結果から、23kb断片がレーン1(
ヒト6番染色体を含むハイブリッド)だけにしか検出されない一方、4.5kb
および3.5kb断片はレーン2(ヒト8番染色体を含むハイブリッド)に検出
されたことがわかる。さらに、3.0kbヒト断片(レーン4参照)はまた、レ
ーン1およびレーン2の両方に検出された。しかし、マウスDNAはInt6関
連3.0kbHind III断片を含まないことが示されているため、レーン
3において3.0kb断片が検出されたことから、3.0kb断片が、チャイニ
ーズハムスターの配列ではなくヒトInt6関連配列を有することが示された。
これらの結果は、ヒトInt6遺伝子が8番染色体上に位置することを示す。こ
の染色体上の局在は実施例10に記載されたCA反復配列多型をもちいた連鎖解
析によって確認され、さらに精密には8番染色体q22−q24にあることが示
された。
実施例12
ヘテロ接合性の欠失を引き起こすヒト胸部腫瘍DNAの
Int6遺伝子中の突然変異の検出
以前に示されたMMTV誘導型マウス乳癌の結果に基づき、Int6遺伝子が
ヒト胸部腫瘍の悪性腫瘍化の間の変異の標的となるかどうかを決定するために、
ヒト胸部腫瘍の生体採取試料由来のDNAを解析した。簡略には、原発ヒト胸部
腫瘍由来および、Int6のCA繰返し配列が既知である40人の対応する正常
組織由来のDNAを、実施例10で使用したPCR法により腫瘍DNA中にヘテ
ロ接合性の欠失(LOH)の存在について解析した。これらの腫瘍のうち11に
ついて(25%)完全な欠失または対応した正常DNAと比較して、有意な遺伝
子座のシグナルの減少が認められた。これら11中の5つの腫瘍DNA(T)と
それらに対応した正常試料(L)を図13に示す。これらの結果はヒト胸部腫瘍
の悪性化の進行のあいだInt6遺伝子が変異の標的となることを示す。さらに
、Int6遺伝子の発現がすべての解析を行った組織で検出されるため(図7参
照)、Int6遺伝子の突然変異は他の組織に見られるガンの進行のあいだに引
き起
こされるのだと考えられる。
実施例13
Int6遺伝子のエキソンに結合する配列に由来するプライマーの組を
用いたPCR−SSCPによるヒトInt6遺伝子の突然変異の解析
13のヒトInt6エキソン(図14)うち12に結合する核酸配列に相補的
なプライマーの組をSEQ ID NO:5−28に示す。SEQ ID NO
:5−28から選択されたプライマーの組を用いて、エキソン7以外のInt6
遺伝子の各エキソンを、Int6遺伝子にヘテロ接合性の欠失を有する11の原
発胸部腫瘍DNA(実施例12参照)、および対応する正常組織試料のDNAか
らPCRにより増幅し、PCR産物を変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によ
り1本鎖構造多型(SSCP)について解析を行った。エキソン7は、ヒトIn
t6のcDNAのエキソン7に一致する部分を用いたハイブリッドミスマッチ法
により解析を行った。Int6遺伝子にヘテロ接合性の欠失を有する原発胸部腫
瘍DNAの、1本鎖構造多型解析(SSCP)とハイブリッドミスマッチ法の両
方の解析においては、残りの遺伝子座に点変異は一つも検出されなかった(デー
タは示さない)。しかし、残りの遺伝子座におけるプロモーターおよびイントロ
ン領域の突然変異に関する解析は行わなかった。Int6遺伝子のプロモーター
、イントロンおよび/またはコード領域の変異が腫瘍試料中に検出された場合に
は当然、これらの突然変異は腫瘍および対応する正常組織DNA中の変異遺伝子
座の塩基配列解析により確かめることが可能である。
実施例14
ヒト胸部および肺腫瘍試料におけるInt6のmRNAの発現の欠失
36人の悪性ヒト胸部腫瘍と2人の新生物発生前障害(高度形成異常症)、お
よび対応する正常組織から単離した全RNAを、Int6mRNAの発現に関し
て、β−アクチンおよびヒトInt6のcDNAプローブでGallahanおよびCall
ahan(J.Virol .61:66−74)に記載された条件で行った連続ハイブリダ
イゼーションを用いたノーザンブロット解析により解析した。これら38試料中
14(37%)はInt6mRNAの発現について、対応する正常組織試料と比
較して有意な減少または検出不能を示した。
これら14の場合のうち、8は浸潤性導管ガン(IDC)で、2はコメド癌(
広い導管内成分を有するIDC)、2は小葉ガン、2つは新生物発生前障害であ
った。図15にノーザンブロットの結果をしめす。
別の研究において、47つの非小細胞肺ガン(NSCLC)および対応する正
常組織におけるInt6 mRNAの発現を、本実施例中で上記のように10μ
gの総RNAのノーザン解析により測定した。ノーザンブロットの表示を図16
に、47つのNSCLC試料のノーザン解析の結果は表1にまとめた。
興味深いことに、47NSCLC中14がInt6mRNAの発現の欠失を示
し、Int6mRNAの発現の欠失は特異的組織学的サブタイプと非常に有意な
関係(P=0.003)が見られた。(表1、NSCLCのアデノカルシノーマ)
本実施例で示した結果は、Int6の発現の欠失はヒト胸部ガンの初期の現象
であり、肺ガンのような他の腫瘍形成に寄与する要素であるという結論に一致す
る。
実施例15
ネズミInt6タンパク質の特性
Int6遺伝子は50KDaのタンパク質をコードし、3つの翻訳開始点と考
えられ得る部位(マウスの配列の27bp,174bpおよび189bp)を有
する。これらの各々のポリペプチドは、ウサギの網赤血球システムにおけるIn
t6RNAのin vitro翻訳の産物として検出された。マウスのInt6
の57−71(ペプチド47)残基および、262−281(ペプチド20)残
基のアミノ酸に一致する合成ペプチドに対するウサギのポリクローン血清を調製
し、Int6のin vitro翻訳産物の免疫沈降に用いた。この免疫沈降は
対応するペプチドにより競合される。大人のマウス組織(脳、肺、腎臓、筋肉、
心臓及び乳腺)のタンパク質抽出液のペプチド20(rAB20)に対する抗体
を用いたウェスタンブロット解析で、80kDのポリペプチドの3量体同様に主
要な40kDaポリペプチドが検出された。これらのポリペプチドとの反応はペ
プチド20により競合される。興味深いことに、唾液線抽出液のウェスタンブロ
ットで30KDのInt6関連ポリペプチドの発現もまた観察された。40KD
ポリペプチドは50KDa前駆体の切断産物であり、80KDの交差反応したポ
リペプチドは40KDのペプチドの2量体であると考えられる。
さらに、細胞画分研究および上記のペプチドに対する抗体を用いた免疫蛍光の
研究で、Int6は主に細胞質に局在する事が示された。さらにマウス胚の免疫
蛍光研究で、Int6タンパク質はゴルジ体に局在する事が示された。
最後にタンパク質キナーゼC(PKC)リン酸化部位の3つの候補を含むIn
t6タンパク質を、QUIA Express Type 4ベクター(Quiagen,Chatsworth CA)
をもちいて細菌中で発現し、精製し、PKCによりリン酸化されることが示され
た(データは示さない)。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
A61K 51/00 C12P 21/08
C07K 14/82 C12Q 1/68 A
C12P 21/08 G01N 33/53 Y
C12Q 1/68 33/574 A
G01N 33/53 33/577 B
33/574 A61K 39/395
33/577 43/00
// A61K 39/395 37/48
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),UA(AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM
),AL,AM,AT,AU,AZ,BB,BG,BR
,BY,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,
ES,FI,GB,GE,HU,IS,JP,KE,K
G,KP,KR,KZ,LK,LR,LS,LT,LU
,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,
NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,S
I,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US
,UZ,VN
(72)発明者 ブッティッタ,フィアマ
イタリア国イ−ヴィアレッジオ,ヴィア・
デル・パルティジアーニ 29ア
(72)発明者 スミス,ギルバート・エイチ
アメリカ合衆国ヴァージニア州20073,フ
ォールズ・チャーチ,ロックモント・コー
ト 6607
(72)発明者 キャラハン,ロバート
アメリカ合衆国ヴァージニア州22302,ア
レクサンドリア,ウッドランド・テラス
514