JPH1144251A - 2サイクルエンジンのピストン - Google Patents

2サイクルエンジンのピストン

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JPH1144251A
JPH1144251A JP20050497A JP20050497A JPH1144251A JP H1144251 A JPH1144251 A JP H1144251A JP 20050497 A JP20050497 A JP 20050497A JP 20050497 A JP20050497 A JP 20050497A JP H1144251 A JPH1144251 A JP H1144251A
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JP
Japan
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piston
alloy
exhaust port
less
shoulder
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Application number
JP20050497A
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English (en)
Inventor
Takeshi Motoyama
雄 本山
Toshikatsu Koike
俊勝 小池
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Yamaha Motor Co Ltd
Original Assignee
Yamaha Motor Co Ltd
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Publication date
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Publication of JPH1144251A publication Critical patent/JPH1144251A/ja
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F02COMBUSTION ENGINES; HOT-GAS OR COMBUSTION-PRODUCT ENGINE PLANTS
    • F02FCYLINDERS, PISTONS OR CASINGS, FOR COMBUSTION ENGINES; ARRANGEMENTS OF SEALINGS IN COMBUSTION ENGINES
    • F02F2200/00Manufacturing
    • F02F2200/04Forging of engine parts
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F05INDEXING SCHEMES RELATING TO ENGINES OR PUMPS IN VARIOUS SUBCLASSES OF CLASSES F01-F04
    • F05CINDEXING SCHEME RELATING TO MATERIALS, MATERIAL PROPERTIES OR MATERIAL CHARACTERISTICS FOR MACHINES, ENGINES OR PUMPS OTHER THAN NON-POSITIVE-DISPLACEMENT MACHINES OR ENGINES
    • F05C2201/00Metals
    • F05C2201/02Light metals
    • F05C2201/021Aluminium

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  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)
  • Manufacture Of Alloys Or Alloy Compounds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ピストン肩部の溶損を防止し、またクレビス
から発生する未燃焼HCの低減を図った2サイクルエン
ジンのピストンを提供する。 【解決手段】 排気ポート側のピストン9の肩部近傍を
部分的にパウダーメタル合金からなる高温高強度材料1
3で構成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は2サイクルエンジン
のピストンに関し、特にその肩部を含むトップランド部
分の構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】2サイクルエンジンのシリンダには排気
ポートおよび掃気ポートが開口し、これらのポートはピ
ストンの上下動により開閉する。爆発行程でのピストン
下降時に排気ポートが開き始めてしばらくは、高温の燃
焼ガスが排気ポート上縁とピストン肩部間の狭い隙間か
ら高速で流出する。
【0003】また、排気ポートには、ピストンリングの
引掛かりを防止するため、通常面取り加工が施され、こ
の面取りに対応して排気ポートの開く時間が長くなる。
したがって、この面取りが大き過ぎると、これを通過し
てピストン肩部と接する高温燃焼ガスの流れる時間が長
く続き、肩部が過熱して融解するおそれがある。このた
め排気ポートの面取りは必要最小限にしなければならな
い。同様にピストン肩部に面取りを施すことは、燃焼ガ
スとの接触時間が長くなり肩部が過熱融解するおそれが
あるため従来行われていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の2サイクルエンジンにおいては、高温の燃焼ガスに
長時間さらされる排気ポート側のピストン肩部が過度に
温度上昇し、場合によっては過熱部分が溶損して排気管
側に流出し、燃焼室容積が広がって圧縮比が低下し出力
の低下および燃費の低下を来すことがあった。
【0005】一方、ピストンのトップランド側面とシリ
ンダ間の隙間はクレビスと呼ばれ、このクレビスに未燃
焼燃料が進入する。このような未燃焼燃料(HC)は排
気ガス中に混入し有害成分となって外部に排出される。
このようなクレビス内の未燃焼燃料を燃焼させるため
に、単にクレビス間隔を広げて火炎を導入しようとすれ
ば、前述のように、ピストン肩部への燃焼ガスの接触時
間が長くなり肩部が過熱して溶損するという問題が起こ
る。
【0006】本発明は上記従来技術の問題点に対処する
ためになされたものであって、ピストン肩部の溶損を防
止し、またクレビスから発生する未燃焼HCの低減を図
った2サイクルエンジンのピストンの提供を目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明では、排気ポート側のピストン肩部近傍を部
分的にパウダーメタル合金からなる高温高強度材料で構
成した2サイクルエンジンのピストンを提供する。
【0008】この構成により、ピストン肩部が部分的に
パウダーメタルからなる高温高強度材料で形成されるた
め、トップランド部分はエンジン高出力時の排気ガスの
高温に充分耐えることができ、ピストン肩部の溶損等を
起こすことはなく、したがって、溶損による圧縮比低下
およびこれに基づく出力低下や燃費の低下を来すことは
ない。この場合、例えばバウダーメタルのアルミニウム
合金を鍛造等により通常のピストン用合金とともに加工
することにより、境界面が強固に接合されるため、部分
的な高温高強度材料の使用が可能になる。したがって、
高温高強度材料が高価であっても、全体のコスト上昇を
抑えることができる。
【0009】また、強度が高まるため、トップランドを
薄くすることができる。これによりピストンの小型軽量
化を図るとともに、クレビス長さを短くして未燃HCの
低減を図ることができる。さらに、ピストン肩部が充分
高温に耐えるため、排気ポートの開き始め時間が早まっ
て高温ガスとの接触時間が長くなっても問題はなく、し
たがって、この肩部に面取りまたは丸み加工を施してク
レビス間隔を消炎距離以上に広げることができる。これ
により、クレビス内での燃焼が可能になり、未燃HCの
低減がさらに有効に図られる。
【0010】また、このようにピストン肩部に面取り又
は丸み加工を施して排気ポートが開くタイミングを早め
ることにより、排気ポートの開き開始直後に表われる圧
力ピークを低くなだらかにすることができ、これによ
り、エンジンの高音側高周波数の金属音的な騒音を減少
させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】好ましい実施の形態においては、
排気ポート側のピストン肩部に面取り又は丸み加工を施
してクレビス内での燃焼を可能としたことを特徴として
いる。この面取りは、1mmC〜5mmCであることが
好ましく、また丸み加工は、1mmR〜5mmRである
ことが好ましい。
【0012】この構成により、前述のように、消炎距離
以上にクレビス間隔を広げ未燃HCを燃焼させて大気中
への放出を抑えることができる。また、前述のように、
エンジンの高周波数側の騒音を抑制することができる。
【0013】さらに好ましい実施の形態においては、前
記高温高強度材料は、鉄およびシリコンを含むアルミニ
ウム合金であることを特徴としている。
【0014】この構成においては、鉄(Fe)により、
合金の金属組織が分散強化されて高温での強度が高めら
れ、またシリコン(Si)により、熱膨張率が低減し高
温での形状変化が抑制されるとともに、高速摺動による
疲労や摩耗劣化等に対する対摩耗性が向上する。この場
合、さらに炭化シリコン(SiC)を添加すれば耐摩耗
性がさらに向上する。
【0015】このようなアルミニウム合金で通常の鋳造
法によりピストンを成形すると、鉄の粗大な化合物が形
成されて強度の低下を招く。しかしながら、本発明で
は、アルミニウム合金の急冷凝固によるパウダーメタル
を用いて例えば鍛造により、ピストンを成形するため、
鉄の粗大な化合物形成が抑制され、したがって鉄分を多
く添加することが可能になって高い疲労強度のピストン
が得られる。
【0016】
【実施例】図1は、本発明の実施例に係る2サイクルエ
ンジンのピストン部の構造を示す。このエンジン1は、
シリンダブロック2とこれにボルト締めで固定されたシ
リンダヘッド3とを有し、シリンダヘッド3の中央部に
形成した燃焼室4に点火プラグ5が臨む。シリンダブロ
ック2の下側に設けたクランク室6内のクランク軸(図
示しない)にコンロッド7が連結されピストンピン8を
介してピストン9がシリンダボア10内に装着される。
シリンダボア10にはクランク室6に連通する掃気ポー
ト11および排気管(図示しない)に連結される排気ポ
ート12が開口する。
【0017】ピストン9は天井部を構成するヘッド部9
aと周囲の円筒側壁を形成するスカート部9bとからな
り、ヘッド部9aの側面に2本のピストンリング14が
装着されている。このピストン9はほぼ全体が通常のピ
ストン合金で形成され、肩部、即ちヘッド部9aの周縁
部でピストンリング14の近傍は後述の高温高強度材料
(耐摩材)13で形成される。
【0018】図2は、このような高温高強度材料(耐摩
材)13の配設位置の例を示す。(a)は排気ポート側
の肩部にのみ両ピストンリング12を覆って耐摩材13
を設けた例、(b)はヘッド頂面中央部と排気ポート側
の肩部に耐摩材13を設けた例、(c)はヘッド部全周
縁の肩部に上側のピストンリング(トップリング)を覆
って環状に耐摩材を設けた例、(d)はピストンリング
12の背面側から両ピストンリング12を覆って耐摩材
13を設けた例、(e)はヘッド部の頂面全体および両
ピストンリング12を覆って耐摩材13を設けた例をそ
れぞれ示している。いずれの例においても少なくとも排
気ポート側の肩部は部分的に高温高強度材料(耐摩材)
13により構成されている。
【0019】このようにピストン上面側、特に高温ガス
に接触する排気ポート側の肩部を高温高強度材料で構成
することにより、高出力時の高温ガスに充分耐えて円滑
なピストン動作が達成されるとともに、強度が高まるた
めにトップリング上側のトップランドを薄くすることが
でき、ピストンの小型軽量化が図られる。さらにクレビ
ス長さが短くなるために未燃HCの低減が図られる。
【0020】図3は本発明の別の実施例の断面図であ
り、図4(A)はその要部詳細図、同(B)は他の形態
の詳細図である。この実施例は、前述の図1のエンジン
のピストン肩部に面取り15を施したものである。この
ような面取り15を施すことにより、図4(A)に示す
ように、トップリング14aの上側のシリンダ9との間
の隙間(クレビス)17の間隔が広がる。これによりク
レビス17内での燃焼が可能となり、クレビス内に進入
した混合気が燃焼し、未燃HCの排出が防止される。こ
の面取りは1〜5mmRであることが好ましい。
【0021】このような面取り15に代えて、図4
(B)に示すように、丸み加工16を施してもよい。こ
のような丸み加工16によっても、面取り15と同様
に、クレビス間隔を広げ未燃HCの低減を図ることがで
きる。この丸み加工は1〜5mmCであることが好まし
い。
【0022】さらに、このような面取り加工あるいは丸
み加工によりエンジンの高音域の騒音防止効果が得られ
る。これは面取りによりピストン下降時に排気ポートが
開くタイミングが早くなり圧力ピークがなだらかになる
ためである。
【0023】図5はこのような排気ポートにおける圧力
波形を示す。横軸は時間、縦軸は排気ポート内の圧力を
示す。実線aは面取りのない従来のピストン形状の場
合、一点鎖線bは面取りを施したピストンの場合を示
す。グラフaから分るように、面取りのない場合には、
排気ポートが開く時点(ピストン肩部の角が排気ポート
の上縁を横切る時点)t0直後に急激に圧力上昇して急
峻な圧力ピークが表われる。この圧力ピークにより高周
波数の金属音的騒音が発生する。これに対し、グラフb
に示すように、面取りを施したピストンでは、ピストン
側面の面取り長さに対応した時間tだけ排気ポートが早
く開く。このため、排気ポート内では面取りがない場合
の排気ポートが開く時間t0よりtだけ早い時間から圧
力上昇が始る。これにより圧力ピークが下がりピークが
なだらかになって高周波成分の騒音が低減する。
【0024】このように排気ポートが開く時間を早める
ために、図6に示すように、排気ポート12側に面取り
18を形成してもよい。このように排気ポート12に面
取り18を施すと、ピストン9が下降するとき、面取り
18がない場合よりも排気ポート12が早く開き、図5
のグラフbと同様の圧力波形が得られる。
【0025】図7は、本発明に係る 2サイクルエンジ
ンの縦断面図、図8はピストン単体の断面図(図7のA
−A線断面図)である。図7においては、21はシリン
ダボディであって、これの上部にはシリンダヘッド22
が下部にはクランクケース23がそれぞれ結着されてい
る。そして、シリンダボディ21の中央にはシリンダ2
4が形成されており、該シリンダ24内にはピストン2
5が上下摺動自在に嵌装されている。ピストン25には
コンロッド26の上端部がピストンピン27を介して連
結されており、コンロッド26の下端部はクランクシャ
フト28にクランクピン29を介して連結されている。
なお、ピストン25の頂部内面はピストンピン27の周
方向に湾曲する上方に凸の曲面形状に成形されている。
また、前記クランクシャフト28は、前記クランクケー
ス23内のクランク室30内に図7の紙面垂直方向に回
転自在に配されている。
【0026】また、シリンダ24内のピストン25とシ
リンダヘッド22にて区画される空間には燃焼室が形成
され、シリンダヘッド22の頂部には点火プラグ31が
螺着されている。さらに、シリンダ24には3つの掃気
ポート32a,32b,32cおよび1つの排気ポート
33が開口している。なお、掃気ポート32aは排気ポ
ート33に対してシリンダ24内でほぼ対向する位置に
配置されている。
【0027】ところで、前記シリンダボディ21には3
つの掃気通路34と1つの排気通路35が形成されてお
り、掃気通路34の各一端は前記掃気ポート32a,3
2b,32cを介してシリンダ24内に開口しており、
他端はクランク室30内に開口している。また、上記排
気通路35の一端は前記排気ポート33を介してシリン
ダ24内に開口しており、他端部には不図示の排気管が
接続されている。
【0028】そして、前記ピストン25のスカート部の
前記ピストン27よりも上方位置には、前記掃気ポート
32aに選択的に連通する通気孔37が穿設されてい
る。ここで、通気孔37は、その上緑とピストン25の
頂部外周部との間隔が掃気ポート32aのシリンダ軸方
向高さ寸法以上になるような位置に穿設されている。
【0029】一方前記クランクケース23には吸気通路
38が形成されており、該吸気通路38の一端はクラン
ク室30内に開口しており、他端部にはキャブレータ3
9が連結されている。そして、吸気通路38内には混合
気(新気)のクランク室30方向への流れのみを許容す
るリード弁式の逆止弁400が設けられている。なお、
キャブレータ39の上流側には不図示のエアクリーナが
接続されている。上記構成のエンジンのピストン25の
肩部に前記実施例で説明した高温高強度材料13が設け
られている。
【0030】次に、本2サイクルエンジンの作用を説明
する。掃気工程においては、前サイクルでの燃焼室内に
おける混合気の燃焼によって生じた排気ガスは排気ポー
ト33から排気通路35及び排気管を経て大気に排出さ
れ、シリンダ24内に残留する排気ガスは掃気ポート3
2a〜32cから流入する掃気によって効果的に排出さ
れる。
【0031】本実施の形態においては、前述のように通
気孔37の上縁とピストン25の頂部外周部との間隔が
掃気ポート32aのシリンダ軸方向高さ寸法以上になる
ように設定されているため、図7に示すように掃気工程
においてピストン25の上昇時に該ピストン25の頂部
が掃気ポート32a,32b,32cを閉じた後にピス
トン25の通気孔37が掃気ポート32aに連通する
が、このとき、掃気ポート32aがピストン頂部によっ
て閉じられる以前に掃気通路34を流れていた掃気流は
その慣性で通気孔37からピストン25の内部に流入し
て該ピストン25の頂部内面の冷却に供されるため、ピ
ストン25の頂部が効果的に冷却される。ところで、ピ
ストン25の頂部を効果的に冷却するには通気孔37を
ピストン25の頂部付近に形成することが望ましいが、
実際にはピストン25の上部外周にはピストンリングが
嵌着されているため、通気孔37をピストン25の頂部
付近に形成することは事実上不可能である。
【0032】一方、掃気ポート32b,32cから燃焼
室内に流入する掃気流は、掃気の排気通路35への吹き
抜けを防ぐ目的で排気通路35から遠ざかる方向に向け
られる反面、排気通路35にほぼ対向する位置に開口す
る掃気ポート32aから燃焼室への掃気の流れは他の掃
気ポート32b,32cから燃焼室への流れに比べてシ
リンダ軸線方向成分が大きい。このため、通気孔37が
ピストン25の頂部付近よりも下方位置に形成されてい
るにも拘わらず、該通気孔37からピストン25の内部
に導かれる掃気の流れもシリンダ軸線方向成分が大きく
なり、従ってこの掃気によってピストン25の頂部内面
が効果的に冷却される。
【0033】また、通気孔37がピストンピン27より
も上方位置に穿設され、しかも、ピストン25の頂部内
面がピストン27の周方向に湾曲する曲面形状に成形さ
れているため、該通気孔37からピストンピン25の内
部に流入する掃気がピストン25の頂部内面に沿ってス
ムーズに流れ、この流れはピストンピン27およびコン
ロッド26の小端部によって遮られることがなく、従っ
てこの掃気流によってピストン25の頂部内面が効果的
に冷却される。
【0034】ところで、掃気ポート32a〜32c及び
排気ポート33がピストン25によって閉じられると、
シリンダ4内に供給された混合気はピストン25によっ
て圧縮される。
【0035】一方ピストン25の上動によってクランク
室30内には負圧が発生し、この負圧に引かれてキャブ
レータ39によって形成された混合気は逆止弁400を
通過してクランク室30内に導入される。
【0036】そして、やがてピストン25が上死点近傍
に達すると、点火プラグ31によってシリンダ24内で
圧縮された混合気が着火燃焼せしめられ、この混合気の
燃焼によって生じた高圧がピストン25の上面に作用し
て該ピストン25が下動する。このピストン25が下動
すれば、やがて掃気ポート32a〜32c及び排気ポー
ト33がシリンダ24内に開口し、排気ガスが排気ポー
ト33から排気通路35及び排気管を経て大気に排出さ
れ、シリンダ24内に残留する排気ガスは掃気ポート3
2a〜32cから流入する掃気によって効果的に排出さ
れ、以後は前述と同様の作用が繰り返される。なお、ピ
ストン25の下動によってクランク室30内に導入され
た混合気が圧縮される。
【0037】図9は、本発明に係るピストンの製造工程
を順に示した説明図である。以下本図に基づいて、本発
明に係る内燃機関用ピストンの製造方法の一例について
説明する。
【0038】まず、工程(A)において、スカート部用
の、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、銅(C
u)、マグネシウム(Mg)からなる合金のインゴット
を準備する。ここで、シリコンは、金属組織中に硬質の
初晶または共晶シリコン粒を晶出させることにより、ピ
ストンスカート部の摺動面に要求される耐摩耗性および
耐焼付性を高めるために添加されるものである。また、
銅およびマグネシウムは共に合金強度を高めるために添
加されるものである。この場合、シリコンの配合率を5
〜25%とし、銅の配合率を0.5〜5%とし、マグネ
シウムの配合率を0.5〜1.5%とすることが好まし
い。このような範囲外では、所望の耐摩耗性、耐焼付性
および高温での必要な強度が得られないからである。な
お、アルミニウム、シリコン、銅、マグネシウムからな
る合金のインゴットの代わりに、アルミニウムのインゴ
ットまたは粉末、シリコンのインゴットまたは粉末、銅
のインゴットまたは粉末、及びマグネシウムのインゴッ
トまたは粉末をそれぞれ別に準備しこれらを混合して溶
融してもよい。
【0039】次に、工程(B)において、インゴットを
溶解し、連続鋳造または押し出し成形によりスカート部
用ブロックを製造する。このようにして得たAl−Si
系合金のブロックは、後述のAl−Fe系合金のブロッ
クに比べて、熱間での変形抵抗が低く(400℃におけ
る耐力でAl−Fe系パウダーメタルの約50%)、薄
肉部における良好な成形性が得られる。
【0040】次に、工程(C)において、ブロックをス
カート部に必要な大きさに切断し、ピストン合金50を
形成する。
【0041】一方、工程(D)において、ヘッド部用の
アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、シリコン(Si)
からなる合金のインゴットを準備する。ここで、鉄は金
属組織を分散強化して、200℃以上で高い疲労強度を
得るために添加されるものである。また、シリコンは前
述のように耐摩耗性および耐焼付性を高めるとともに、
延性を大きくし、また融点を低下させる作用がある。従
ってシリコンの添加量が多いと延びが大きくなりすぎて
強度の低下となり、また融点が下がることにより耐熱性
の低下となるため、ヘッド部の成形性や耐摩耗性に応じ
て必要な最小量のみを添加する。鉄については上述した
ように、高温強度、高温における疲労強度を向上するの
に有効であり、このヘッド用合金中の鉄の配合率は5%
以上とする。
【0042】次に、工程(E)において、インゴットを
溶解し、冷却速度100℃/sec以上で急冷凝固させ
てAl−Fe系合金粉末を製造する。次に、工程(F)
において、成形固化し、さらに熱間押し出しする。この
ようにして得た急冷粉末アルミ合金のブロックは、応力
集中の原因となる部分のない一様な金属組織が得られ高
い疲労強度が得られる。これは、通常の鋳造工程による
冷却では、合金中に鉄の粗大な組成物が形成されて強度
の低下を来すが、急冷凝固によりAl−Fe系合金粉末
を成型固化し、さらに熱間押出しにより合金を形成する
ことにより、鉄の粗大な組成物の形成を阻止し、応力集
中の原因となる鉄成分の粗大組成部のない均一な金属組
織が得られるため、鉄成分を多く添加することが可能に
なり、高い疲労強度の合金を得ることができるからであ
る。なお、アルミニウム、鉄、シリコンからなる合金の
インゴットの代わりに、アルミニウムのインゴットまた
は粉末、鉄のインゴットまたは粉末、及びシリコンのイ
ンゴットまたは粉末をそれぞれ別に準備してこれらを混
合して溶融してもよい。
【0043】次に、工程(G)において、ブロックをヘ
ッド部の大きさに切断し、パウダーメタル合金(PM合
金)51を形成する。
【0044】以上の工程を経て得られたスカート部用合
金(ピストン合金)50とヘッド部用合金(PM合金)
51は、工程(H)において、重ねられ、離型剤が塗布
される。次に、工程(K)において、成形性をよくする
ために加熱される。次に、工程(L)において、加熱さ
れた2層の合金を上下一対の型で挟み、強圧する鍛造に
よりピストンの形状に一体成型する。このとき後述のよ
うに、両合金同士が接合される。
【0045】次に、工程(M)において、強度を高める
ため、熱処理する。最後に、(N)工程において、機械
加工によりピストンリング溝65を形成し、不要な部分
を削り落とす等の加工処理を行って終了する。この後、
必要に応じて、例えば摺動特性、耐摩耗性を良くするた
めスカート部の側面にメッキをする等の表面処理を行
う。完成されたピストン58は、ヘッド部40が急冷粉
末アルミ合金(PM合金)からなり、スカート部41が
アルミニウム、シリコン、銅、マグネシウムからなる合
金(ピストン合金)からなる異種材料の鍛造接合体によ
り構成される。
【0046】図10は、図9の工程(K)〜(N)の詳
細を説明する図である。図10(A)は、図9の工程
(K)に対応し、急冷粉末アルミ合金で構成されるヘッ
ド部用PM合金51を下に、アルミニウム、シリコン、
銅、マグネシウムからなる合金で構成されるスカート部
用ピストン合金50を上にして重ね、加熱された2層の
合金を、予熱した下型55の凹部56内に収容し、予熱
した上型であるパンチ57により加圧してピストン形状
に鍛造する。図中100は、鍛造前における2層の合金
の境界面であり、本実施例では平面とされる。この境界
面100を境にして2層の合金は互いに接触している。
鍛造前に2層の合金の円筒状の外周面に離型剤が塗布さ
れている。パンチ57はピストン58各部のそれぞれに
必要な肉厚を与えるように形状がきめられる。一方、前
記下型55の凹部56の底面中央部に、パンチ57の突
出部57a対向して凹み59が形成される。
【0047】このような下型55およびパンチ57を用
いた熱間鍛造によれば、成型と接合が同時に行われ、接
合界面が溶融することがないため、Al−Fe系合金お
よびAl−Si系合金の特性を損うことなく、かつ寸法
精度良くピストンを成型できる。
【0048】図10(B)は、図9の工程(L)に対応
し、鍛造されたピストン58は、前記下型55の中央に
形成された凹み59によりヘッド部40の中央に押し出
し突起42を有する。
【0049】図9の工程(L)において、パンチ57の
突出部57aが上層のスカート部用合金50に食い込む
に従い、スカート部用合金50の外周が盛り上がり、ス
カート部を形成する。一方、ヘッド部用合金51はスカ
ート部用合金50を介してパンチ57の突出部57aに
より押され、下型55に形成された凹み59内に入り込
み突起42を形成する。この凹み59内への入り込みに
より、境界面100が変形し、凹み59と対応する部分
がヘッド部用合金51側に凸状に変形する。また、パン
チ57の突出部57aが、鍛造前の境界面100の位置
よりさらに下降することにより、ヘッド部用合金51の
外周が盛り上がるとともに、突出部57aの下側のスカ
ート部用合金50は厚みが薄くなりつつ、スカート部用
合金50の外周がさらに盛り上がる。
【0050】鍛造後の境界面200は、鍛造前の境界面
100より高い位置となる外周部200aと、突出部5
7aに沿って鍛造前の境界面100より低い位置まで下
方に凸状に突出する第1ドーム部200bと、中央部に
おいてさらに下方に凸状に突出する第2ドーム200c
とで構成されることになる。鍛造前の平坦な境界面10
0が、鍛造後にドーム状の境界面200に変化する。す
なわち、鍛造により境界面100の面積は増大するの
で、スカート部用合金50のみでなくヘッド部用合金5
1も境界面で大きく伸びることになる。この伸びの大き
い部分においては大きな鍛造による圧力も作用して酸化
膜が破壊される。また、両合金50、51の間に伸び易
さに差があると、境界面の面積増大に加え、両合金5
0、51の間に相対すべりが発生し、これも酸化膜の破
壊に寄与する。酸化膜が破壊されると、スカート部用合
金50とヘッド部用合金51が直接接触し接合する。す
なわち、第1ドーム部200bと第2ドーム200cに
おいて境界面の面積増大(伸び)あるいはさらに相対す
べりの発生により酸化膜が破壊し、両合金が接合し、十
分な接合強度がえられる。接合により、鍛造後の境界面
200は接合界面となる。このとき、ヘッド部40の突
起42およびこの突起に対応する位置のヘッド部とスカ
ート部の接合界面近傍には、鍛造時の材料組織の移動に
沿ってファイバーフローが形成される。このファイバー
フローは、鍛造時に、ヘッド部側をスカート部側の2つ
の合金の間に起こる相対すべりに起因して形成されるも
のであり、この相対すべりにより接合界面の酸化膜を破
壊、除去して十分な接合強度が得られる。この場合、突
起42内においては、この突起42を削り落とした場合
に、ヘッド部40の上面に対して直角方向のファイバー
フローが形成され、突起42の周囲には、放射状のファ
イバーフローが形成される。
【0051】図10(C)は、図9の工程(N)に対応
し、ピストンを形成するための各種機械加工が施され
る。即ち、前記押し出し突起42は、熱間鍛造後は不要
となるので削り落とされ、また、ピストンリング溝65
を形成する等の加工処理がされる。このとき、図10
(B)で形成されたファイバーフローは残存する。な
お、押し出し突起42を設ける位置は、ヘッド部40の
中央に限るものではなく、また、押し出し突起42の形
状は、略円錐台形状に限るものではない。さらに、押し
出し突起42の数は、3個以上であっても良い。
【0052】すなわち、境界面に第1ドーム200bを
形成することにより、この下方へのドームの円周状の側
壁部のみでなく、突起42を形成するに対応して形成さ
れる水平方向の断面が円形以外の形状の第2ドーム20
0cとすることで、第2ドーム200cの側壁部の面積
すなわち接合面積を増大させることができる。同様に、
複数の突起42を形成するのに対応して形成される複数
の第2ドーム200cによっても接合面積を増大させる
ことができ、ヘッド部用合金51はスカート部用合金5
0に強固に結合することになる。
【0053】なお、このような押出し突起に代えてまた
はこれとともに、ピストンヘッド部上面に凹部を形成し
てもよい。このような凹部を鍛造時に形成することによ
り、前記突起の場合と同様に接合界面に相対すべりによ
るファイバーフローが形成され、接合強度を高めること
ができる。
【0054】図11は、前記押し出し突起の位置及び形
状の例を示す説明図である。(A)は、円形の押し出し
突起42をピストン58の中央に形成した例を示す。図
中の点線は、2サイクルエンジンの場合の2つの主掃気
ポート60,61と副掃気ポート62と排気ポート63
との位置を示している。(B)は、押し出し突起42を
ピストン58の中央から排気ポート63側にずらして高
温となる排気側の接合強度を高めた例を示す。なお、こ
のような円形の押し出し突起を複数箇所に設けても良
い。(C)は、円形の押し出し突起42をヘッド部の中
心に設け、さらにその周囲に環状の突起42’を設けた
例を示す。(D)は、湾曲変形した押し出し突起42”
をヘッド部の中心からずらして湾曲形状に設けた例を示
す。(E)は、環状の押し出し突起42’のみを設けた
例を示す。ここで、各押し出し突起42、42’、4
2”の周囲には多数のすじが形成される。このすじは、
ファイバーフロー64を示し、押し出し突起から放射状
に形成される。このファイバーフローは、前述のよう
に、鍛造時に合金のすべりに対応して組織が変化する方
向に沿って形成されるものであり、押し出し突起の輪郭
に対しほぼ直角方向に形成される。前述のように、この
ファイバーフローは異種材料同士の接合界面にも形成さ
れる。すなわち、境界面近傍でスカート部用合金50あ
るいはヘッド部用合金51の少なくとも一方にファイバ
ーフローが形成されるということは、境界面での伸びが
大きいことと同意であり、境界面における酸化膜が破壊
され、スカート部用合金50とヘッド部用合金51は直
接接触し強固に接合する。
【0055】尚、上記実施例においては、完成されたピ
ストン58は、ピストンリング溝を含むヘッド部全体が
急冷粉末アルミ合金からなり、スカート部全体がアルミ
ニウム、シリコン、銅、マグネシウムからなる合金から
なるが、これに限らず、ヘッド部の一部のみを急冷粉末
アルミ合金で構成しても良い。
【0056】図12は、ピストンのヘッド部を構成する
急冷粉末アルミ合金の構成分布の別の例を示す説明図で
ある。(A)は、ヘッド部40のピストンリング溝65
を含む周縁部のみを急冷粉末アルミ合金(PM合金)で
構成した例を示す。この例によれば、特に耐熱性が要求
されるヘッド部40の周縁部を耐熱性の優れたPM合金
で形成し、他の部分を成形性のよいピストン合金で形成
しているため、鍛造時の加工性が向上するとともに、接
合面が曲面となって相対すべりが発生しやすくなり、接
合強度の向上が図られる。これにより、前記実施例と同
様に、ピストンリング溝65より上側のトップランドを
薄くすることができ、クレビス減少により未燃ガスが減
少し、排ガス対策として有効になるとともに、特に、ト
ップランドの角部が350℃程度になっても耐えること
ができ、角部がだれたり、変形したりしなくなる。
【0057】(B)は、急冷粉末アルミ合金51の厚さ
を吸排気側で厚くし、ピストンピンボス側で薄くした例
を示す。この例によれば、熱負荷の厳しい吸排気側の部
分が選択的に耐熱性が強化される。
【0058】上述したように、鍛造前のスカート部用合
金50とヘッド部用合金51との接触境界面が鍛造後に
増大するようにすれば、酸化膜が破壊され、鍛造前のス
カート部用合金50とヘッド部用合金51が直接接触紙
強固に接合する。そして、鍛造後の接触境界面近傍には
伸びに伴うファイバーフローが形成され、ファイバーフ
ローを曲げるような外力に対して強度を増加させる。す
なわち、ピストンを実機エンジンに使用中、ヘッド部に
作用するガス圧力が作用しても、ヘッドの外周に向かっ
て放射状に形成されるファイバーフローは、この力を支
え、ピストンピンボスに伝える作用をし、ヘッド部の強
度を増大させる。なお、鍛造前のスカート部用合金50
とヘッド部用合金51との接触境界面が鍛造後に増大す
る方法としてさらに以下の方法がある。
【0059】図13は、本発明に係わるピストンの別の
製造方法を示す断面図である。図13中の各符号の内、
図10と共通のものは記述を省略する。ヘッド部用合金
51には、鍛造前に中央部に凹部51aが下側に設けら
れている。この凹部51aがスカート部用合金50を介
して突出部57aにより下型55に接触するまで押し下
げられる。これにより、図13(B)に示す様に、鍛造
前の境界面100の中央部が鍛造により変形し、鍛造後
に境界面200cを形成する。鍛造後の境界面の他の部
分200a、200bの形成については図10について
の記載の通り、境界面200の近傍の両合金50、51
にファイバーフローが形成されるとともに、両合金5
0、51は強固に結合する。本製造方法によるピストン
加工前素材には図10に示す押し出し突起42がないの
で、加工が簡単になる。一方、鍛造前のヘッド部用合金
51を焼結等により成形するならば、凹部51aは容易
に形成することができる。
【0060】図14は、本発明に係わるピストンのさら
に別の製造方法を示す断面図である。本製造方法によれ
ば、ピストンの外周部にスカート部用合金50とヘッド
部用合金51との結合を強固にできる。
【0061】図14中の各符号の内、図10と共通のも
のは記述を省略する。下型55の凹部56の底面の外周
に円環状の凹部55aを設けている。パンチ57の下降
に伴い外周部でスカート部用合金50が盛り上がる。こ
れにつれて境界面100も外周部で盛り上がる。パンチ
57のさらなる下降に伴い、スカート部用合金50の外
周部の盛り上がりが、パンチ57の外周部57bにより
規制され、さらに押し戻されるようになる。ヘッド部用
合金51の外周部はスカート部用合金50を介して外周
部57bにより押し下げられ、凹部56に入り込む。こ
の時、一旦盛り上がった境界面は図14(B)に示すよ
うに外周部が下がり、略円錐状部200dを形成する。
鍛造により境界面の外周部の面積が増大するので、略円
錐状部200dにおいても両合金50、51は強固に結
合する。また、境界面200の近傍の両合金50、51
内にファイバーフローを形成できる。なお、押し出し突
起51aは鍛造後の加工工程において、加工除去され
る。
【0062】図15は、本発明に係わるピストンのさら
に別の製造方法を示す断面図である。本製造方法によれ
ば、図12(A)に示すピストン40の鍛造に使用可能
であり、ピストン外周部にスカート部用合金50とヘッ
ド部用合金51との結合を強固にできる。図15中の各
符号の内、図10及び図12(A)と共通のものは記述
を省略する。
【0063】下型55は左右に分離可能な左型55b、
右型55cにより形成される。鍛造前のヘッド部用合金
51は中空の円柱状をなし、この中空部にスカート部用
合金50の突起部50aが嵌合する。両合金は互いに接
触し、平面状の境界面100aと、円筒状の境界面10
0bが形成される。下型55には境界面100aの外周
部にドーナツ状の凹部55dが設けられている。図15
(B)に示すように鍛造により、凹部55d内に両合金
50、51が押し出されて入り込み、鍔状の突起90が
形成される。鍛造後の境界面200はこの突起90内に
入り込む。すなわち、鍛造前の境界面100aと100
bの面積の和より境界面200の面積の方を大きくする
ことが可能である。また、境界面200の近傍の両合金
50、51内にファイバーフローを形成できる。この突
起90は鍛造後の加工工程において除去される。
【0064】図16は、本発明に係わるピストンのさら
に別の製造方法を示す断面図である。本製造方法によれ
ば、図12(A)に示すピストン40の鍛造に使用可能
であり、ピストン外周部にスカート部用合金50とヘッ
ド部用合金51との結合を強固にできる。図16中の各
符号の内、図10及び図15と共通のものは記述を省略
する。
【0065】下型55の凹部56の底面には、境界面1
00bの外周部にドーナツ状の凹部55aが設けられて
いる。図16(B)に示すように鍛造により、凹部55
a内に両合金50、51が押し出されて入り込み、突起
91が形成される。鍛造後の境界面200はこの突起9
0内に入り込む。すなわち、鍛造前の境界面100aと
100bの面積の和より境界面200の面積の方を大き
くすることが可能である。また、境界面200の近傍の
両合金50、51内にファイバーフローを形成できる。
この突起90は鍛造後の加工工程において除去される。
【0066】(実施例)以上説明したヘッド部の少なく
とも一部を構成するAl−Fe系合金の好ましい実施例
として以下の実施例1〜11を用いることができる。こ
れらの実施例1〜11のうち、実施例1〜3は、図9
(A)(B)(C)に示したように連続鋳造又は押出し
成形によりヘッド部用合金51を形成し、実施例4〜1
1は、図9(D)(E)(F)(G)に示したようにパ
ウダーメタルを用いてヘッド用合金51を形成するもの
である。
【0067】実施例1:5〜25%(重量%以下同じ)
のSi;1〜3%のFe;0.5〜5%のCu;0.5
〜5%のMg;2%以下のMn;2%以下のNi;2%
以下のCr;2%以下のZr;2%以下のMo;及びほ
ぼ0%のSiCを含むAl。
【0068】実施例2:5〜25%のSi;1〜3%の
Fe;0.5〜5%のCu;0.5〜5%のMg;2%
以下のMn;2%以下のNi;2%以下のCr;2%以
下のZr;2%以下のMo;及び1〜10%のSiCを
含むAl。ここでSiCの平均粒径は約1〜20μmで
ある。
【0069】実施例3:5〜25%のSi;1〜3%の
Fe;0.5〜5%のCu;0.5〜5%のMg;2%
以下のMn;2%以下のNi;2%以下のCr;2%以
下のZr;2%以下のMo;及び1〜10%のSiC又
はBN又はAlN又はAl23を含むAl。ここでSi
C、BN、AlN、およびAl23はこのうち1種類の
みを用いてもよいが合計1〜10%の範囲内で複数種類
を複合して用いてもよい。
【0070】実施例4:5%以下のSi;5%以上のF
e;0.5〜5%のCu;0.5〜5%のMg;2%以
下のMn;2%以下のNi;2%以下のCr;2%以下
のZr;2%以下のMo;及びほぼ0%のSiCを含む
Al。
【0071】実施例5:5%以下のSi;5%以上のF
e;0.5〜5%のCu;0.5〜5%のMg;2%以
下のMn;2%以下のNi;2%以下のCr;2%以下
のZr;2%以下のMo;及び1〜10%のSiCを含
むAl。ここでSiCの平均粒径は1〜20μmであ
る。
【0072】実施例6:5%以下のSi;5%以上のF
e;0.5〜5%のCu;0.5〜5%のMg;2%以
下のMn;2%以下のNi;2%以下のCr;2%以下
のZr;2%以下のMo;及び1〜10%のSiC又は
BN又はAlN又はAl23を含むAl。ここでSi
C、BN、AlN、およびAl23はこのうち1種類の
みを用いてもよいが合計1〜10%の範囲内で複数種類
を複合して用いてもよい。
【0073】実施例7:5%以下のSi;5%以上のF
e;0.5〜5%のCu;0.5〜5%のMg;2%以
下のMn;2%以下のNi;2%以下のCr;2%以下
のZr;2%以下のMo;1〜10%のC又はMoS
2 ;及び1〜10%のSiC又はAl23を含むAl。
ここでCおよびMoS2 一方のみを用いてもよいが合計
1〜10%の範囲内で両方共用いてもよい。
【0074】実施例8:5〜25%のSi;1〜10%
のFe;0.5〜5%のCu;0.5〜5%のMg;2
%以下のMn;2%以下のNi;2%以下のCr;2%
以下のZr;2%以下のMo;及びほぼ0%のSiCを
含むAl。
【0075】実施例9:5〜25%のSi;1〜10%
のFe;0.5〜5%のCu;0.5〜5%のMg;2
%以下のMn;2%以下のNi;2%以下のCr;2%
以下のZr;2%以下のMo;及び1〜10%のSiC
を含むAl。ここでSiCの平均粒径は1〜20μmで
ある。
【0076】実施例10:5〜25%のSi;1〜10
%のFe;0.5〜5%のCu;0.5〜5%のMg;
2%以下のMn;2%以下のNi;2%以下のCr;2
%以下のZr;2%以下のMo;及び1〜10%のSi
C又はBN又はAlN又はAl23を含むAl。ここで
SiC、BN、AlN、およびAl23はこのうち1種
類のみを用いてもよいが合計1〜10%の範囲内で複数
種類を複合して用いてもよい。
【0077】実施例11:5〜25%のSi;1〜10
%のFe;0.5〜5%のCu;0.5〜5%のMg;
2%以下のMn;2%以下のNi;2%以下のCr;2
%以下のZr;2%以下のMo;1〜10%のC又はM
oS2;及び1〜10%のSiC又はAl23を含むA
l。ここでCおよびMoS2 は一方のみを用いてもよい
が合計1〜10%の範囲内で両方共用いてもよい。
【0078】以上がヘッド部用のアルミ合金の具体的な
実施例である。
【0079】次に、前述のスカート部(および前記Al
−Fe系合金での構成部分以外の部分のヘッド部)を構
成するAl−Si系合金の好ましい実施例として以下の
実施例12〜14を示す。これらの実施例12〜14
は、図9(A)(B)(C)に示したように連続鋳造又
は押出し成形により或いは図9(D)(E)(F)
(G)に示したようにパウダーメタルを用いてスカート
部用合金50を形成するものである。
【0080】実施例12:5〜25%のSi;1%以下
のFe;0.5〜5%のCu;0.5〜5%のMg;1
%以下のMn;1%以下のNi;及び1%以下のCrを
含むAl。
【0081】実施例13:5〜25%のSi;1%以下
のFe;0.5〜5%のCu;0.5〜5%のMg;2
%以下のMn;2%以下のNi;2%以下のCr;2%
以下のZr;2%以下のMo;及び5%以下のSiC又
はBN又はAlN又はAl23を含むAl。ここでSi
C、BN、AlN、およびAl23はこのうち1種類の
みを用いてもよいが合計5%以下の範囲内で複数種類を
複合して用いてもよい。
【0082】実施例14:5〜25%のSi;1%以下
のFe;0.5〜5%のCu;0.5〜5%のMg;2
%以下のMn;2%以下のNi;2%以下のCr;2%
以下のZr;2%以下のMo;1〜10%のC又はMo
2;及び5%以下のSiC又はAl23を含むAl。
ここでCおよびMoS2 は一方のみを用いてもよいが合
計1〜10%の範囲内で両方共用いてもよい。
【0083】なお、上記実施例において、C或いはMo
2 はピストンの摺動性を高めるためのものである。
【0084】
【発明の効果】以上説明したように、本発明において
は、ピストン肩部が部分的にパウダーメタルからなる高
温高強度材料で形成されるため、トップランド部分はエ
ンジン高出力時の排気ガスの高温に充分耐えることがで
き、ピストン肩部の溶損等を起こすことはなく、したが
って、溶損による圧縮比低下およびこれに基づく出力低
下や燃費の低下を来すことはない。この場合、例えばバ
ウダーメタルのアルミニウム合金を鍛造等により通常の
ピストン用合金とともに加工することにより、境界面が
強固に接合されるため、部分的な高温高強度材料の使用
が可能になる。したがって、高温高強度材料が高価であ
っても、全体のコスト上昇を抑えることができる。
【0085】また、強度が高まるため、トップランドを
薄くすることができる。これによりピストンの小型軽量
化を図るとともに、クレビス長さを短くして未燃HCの
低減を図ることができる。さらに、ピストン肩部が充分
高温に耐えるため、排気ポートの開き始め時間が早まっ
て高温ガスとの接触時間が長くなっても問題はなく、し
たがって、この肩部に面取りまたは丸み加工を施してク
レビス間隔を消炎距離以上の広げることができる。これ
により、クレビス内での燃焼が可能になり、未燃HCの
低減がさらに有効に図られる。
【0086】また、このようにピストン肩部に面取り又
は丸み加工を施して排気ポートが開くタイミングを早め
ることにより、排気ポートの開き開始直後に表われる圧
力ピークを低くなだらかにすることができ、これによ
り、エンジンの高音側高周波数の金属音的な騒音を減少
させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係るエンジンの要部断面
図。
【図2】 本発明に係る耐摩材の配置例の説明図。
【図3】 本発明の別の実施例のエンジンの要部断面
図。
【図4】 本発明のエンジン肩部の詳細図。
【図5】 排気ポートの圧力波形図。
【図6】 本発明の別の形態例の説明図。
【図7】 本発明が適用される2サイクルエンジンの構
成図。
【図8】 図7のエンジンのピストンの構成図。
【図9】 本発明のピストンの製造フローチャート。
【図10】 図9の工程(K)〜(N)の説明図。
【図11】 本発明のピストンの押出し突起の配置説明
図。
【図12】 本発明の耐摩材分布説明のためのピストン
断面図。
【図13】 本発明のピストンの別の製造方法の説明
図。
【図14】 本発明のピストンのさらに別の製造方法の
説明図。
【図15】 本発明のピストンのさらに別の製造方法の
説明図。
【図16】 本発明のピストンのさらに別の製造方法の
説明図。
【符号の説明】
1:エンジン、2:シリンダブロック、3:シリンダヘ
ッド、4:燃焼室、5:点火プラグ、6:クランク室、
7:コンロッド、8:ピストンピン、9:ピストン、9
a:ヘッド部、9b:スカート部、10:シリンダボ
ア、11:掃気ポート、12:排気ポート、13:高温
高強度材料、14:ピストンリング、15,18:面取
り、16:丸み加工、17:クレビス、21:シリンダ
ボディ、22:シリンダヘッド、23:クランクケー
ス、24:シリンダ、25:ピストン、26:コンロッ
ド、30:クランク室、32a〜32c:掃気ポート、
33:排気ポート、37:通気孔、40:ヘッド部、4
1:スカート部、50ピストン合金、51:PM合金、
56,59:凹部、57:パンチ、58:ピストン、6
0,61:主掃気ポート、62:副掃気ポート、63:
排気ポート、64:ファイバーフロー、65:ピストン
リング溝。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22C 32/00 C22C 32/00 Q F16J 1/01 F16J 1/01 9/00 9/00 A

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】排気ポート側のピストン肩部近傍を部分的
    にパウダーメタル合金からなる高温高強度材料で構成し
    た2サイクルエンジンのピストン。
  2. 【請求項2】排気ポート側のピストン肩部に面取り又は
    丸み加工を施してクレビス内での燃焼を可能とした請求
    項1に記載の2サイクルエンジンのピストン。
  3. 【請求項3】前記高温高強度材料は、鉄およびシリコン
    を含むアルミニウム合金である請求項1または2に記載
    の2サイクルエンジンのピストン。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105256182A (zh) * 2015-10-20 2016-01-20 安徽天祥空调科技有限公司 一种空调散热器用高耐腐蚀轻薄型铝合金片及其制备方法
CN106756343A (zh) * 2017-02-27 2017-05-31 东莞市铝美铝型材有限公司 一种钻杆用高强耐热铝合金及其制备方法

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