JPH0121163Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は耐摩環に関し、更に詳しくはアルミ
ニウム合金でなる耐摩環に関する。

従来、往復動内燃機関にはアルミニウム合金製
ピストンが使用されている。アルミニウム合金製
ピストンの使用は、機関の軽量化と機関の効率向
上に有効である。

しかしながら、従来、内燃機関用ピストンとし
て一般に使用されているアルミニウム合金は、そ
の耐熱特性と耐摩耗特性が充分でなく、したがつ
て苛酷な使用条件の下で使用されるとピストンリ
ングが挿入されているリング溝の壁面、特に下側
壁面に摩耗や変形が発生しピストンの機能が損わ
れ易い。それ故、アルミニウム合金製ピストンの
上記難点を解消することを目的として、ピストン
リングが装着される部分に耐熱耐摩耗性が良好で
且つ高強度を有する材質でなる環体、即ち、耐摩
環を鋳包み、リング溝側壁部分の耐熱耐摩耗特性
を増強させたアルミニウム合金製ピストンの使用
が増加してきている。

この種のアルミニウム合金製ピストンに使用さ
れる耐摩環は、耐熱特性や耐摩耗特性が良好であ
り且つ高強度を有する材質でなることが必要であ
るが、アルミニウム合金で鋳包まれて使用される
関係でその熱膨張係数が該アルミニウム合金のそ
れに近似する材質のものでなることが必要であ
る。これらの要求を満足する耐摩環として、ニレ
ジストと称されている高Niオーステナイト鋳鉄
よりなる耐摩環が一般に使用されている。

しかしながら、従来使用されている高Niオー
ステナイト鋳鉄製の耐摩環は、高価なNiを多量
含有し且つ鋳造性の良くない材質でなるために製
造コストが高く経済的でなく、また、重量が大で
あるためにピストンの軽量化の観点からも充分満
足されるものではない。

この考案は、上記に鑑み、耐摩環に要求される
前記諸要求特性を具有し、且つ安価な耐摩環を提
供することを目的としてなされたもので、硬質微
粒子を微細均一に分散させて有するアルミニウム
合金でなる耐摩環に係る。

以下、図示の実施例により本考案の詳細を説明
する。

耐摩耗環１は、第２図に示す如く硬質微粒子２
あるいは２２を微細均一に分散させて有するアル
ミニウム合金でなる環体である。本考案の耐摩環
はその基質３がアルミニウム合金でなり、且つ該
基質はその中に微細均一に分散された硬質粒子
２，２２によつて分散強化されているものである
ために、その熱膨張係数はアルミニウム合金製ピ
ストン本体のそれに近似し、機関作動時の高温に
更されても行硬度および高強度を維持し変形を生
じることがない。

また、本考案の耐摩環は、その基質中に微細均
一に分散している硬質粒子の存在によつて良好な
耐摩耗特性を示し、苛酷な条件で使用されるピス
トンに用いる場合においてもリング溝壁面に生ず
る摩耗を最少に抑えることができる。

本考案でアルミニウム合金でなる基質中に分散
される硬質粒子としては、粒径が15μｍ以下のSi
粒子または該Si粒子および粒径が20μｍ以下の
Fe，Mn，Niの少なくとも一以上とAlまたはSi
との金属間化合物粒子が特に好適である。

第２図で２はSi粒子で２２はFe，Mn，Niの少
なくとも一以上とAlまたはSiとの金属間化合物
粒子である。

ここで、Si粒子２の粒径が15μｍを越えて大き
い場合には耐摩環の被削加工性が悪くなり製造コ
ストが高くなるとともにピストンリングやシリン
ダ等の摺動相手部材の摩耗を増大させ易くなる。
それ故、本考案では分散させるSi粒子の粒径を
15μｍ以下好ましくは5μｍ以下とする。また、ア
ルミニウム合金基質中に分散させるFe，Mn，Ni
等とAlまたはSiとの金属間化合物粒子は、これ
らを微細均一に分散させることにより耐摩環の高
温強度を一層高めるとともに耐摩耗特性の向上さ
せることを狙いとするものであり、これらの金属
間化合物粒子が粗大であると切削加工特性が悪く
製造コストが高くなるとともに分散強化の効果が
充分に得られなくなる。それ故、本考案の耐摩環
にあつては、これらの金属間化合物粒子の粒径は
大きいものでも20μｍ以下、実質的には5μｍ以下
にすることが望ましい。

なお、本考案の耐摩環の基質３を構成するアル
ミニウム合金はFe，Mn，Niの少なくとも一つの
元素を含有するAl−Si共晶合金とすることが望
ましい。

本考案の耐摩環１は、アルミニウム合金でなる
ピストン４の第一圧力リングが装着される部位に
鋳包まれ、ピストンリング（第一圧力リング）用
リング溝５が削設されて使用される。

以上説明した通りで、本考案の耐摩環は実質的
にはアルミニウム合金でなるものであり、その熱
膨張係数はピストン本体の熱膨張係数と近似す
る。したがつて、加熱．冷却が繰返されてもピス
トン本体から耐摩環が分離することがない。ま
た、本考案の耐摩環は、そのアルミニウム合金で
なる基質中に硬質粒子を微細均一に分散させた組
織構造をなしているために高温強度が高く、耐摩
耗特性が良好である。したがつて、苛酷な運転条
件の下での使用に際してもリング溝が摩耗したり
変形したりすることがない。

次に、本考案の耐摩環の製造方法について述べ
る。

本考案者らは先に「耐熱耐摩耗高力アルミニウ
ム合金粉末と該合金粉末成形体およびその製造方
法」について提案した（特願昭57−119901号及特
願昭57−119902号）。

本考案の耐摩環は、例えば上記耐熱耐摩耗高力
アルミニウム合金粉末成形体の製造方法に従つて
容易に製造することができる。好ましい例を示す
と次の通りである。

即ち、重量比でSi10.0〜30.0％と、Fe3.0〜15.0
％、Mn5.0〜15.0％またはNi5.0〜15.0％のうち１
種または２種以上（ただしNi＋Fe＋Mnの合計で
6.0〜15.0％とすることが望ましい。）と、さらに
必要に応じてCu0.5〜5.0％およびMg0.3〜3.0％と
を含有するアルミニウム合金溶湯を分散急冷凝固
させて合金粉末とし、次いで得られた合金粉末を
熱間押出成形することにより円筒体とした後、該
円筒体を輪切りにして耐摩環１を得ることができ
る。

上記方法により耐摩環を製造することにより、
硬質で微細な初晶Si粒子とFe，Mn，Ni等とAl
またはSiとの金属間化合物粒子とがアルミニウム
合金基質中に微細均一に分散した組織構造をなす
耐摩環を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は耐摩環の斜視図。第２図は本発明の耐
摩環の組織構造を示す。第３図は耐摩環を有する
ピストンの断面を示す。 図中：１……耐摩環、２，２２……硬質粒子、
３……アルミニウム合金基質、４……ピストン、
５……リング溝。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 少くともSiを含有するAl合金溶湯を、硬質
   微粒子が微細に均一に分散させられるよう、分
   散急冷凝固させたAl合金粉末の押出成形体か
   らなる耐摩環。 (2) 前記硬質微粒子が粒径15μｍ以下のSi粒子で
   ある第１項記載の耐摩環。 (3) 前記硬質微粒子が、粒径15μｍ以下のSi粒子
   と、並びに粒径20μｍ以下のFe，Mn，Niの少
   なくとも一つとAlまたはSiとの金属間化合物
   粒子とである第１項記載の耐摩環。