JPH1138195A - イオンビーム用荷電ストリッパー膜の強化方法 - Google Patents

イオンビーム用荷電ストリッパー膜の強化方法

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JPH1138195A
JPH1138195A JP18943697A JP18943697A JPH1138195A JP H1138195 A JPH1138195 A JP H1138195A JP 18943697 A JP18943697 A JP 18943697A JP 18943697 A JP18943697 A JP 18943697A JP H1138195 A JPH1138195 A JP H1138195A
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ion beam
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Hiroo Hasebe
裕雄 長谷部
Yoshitoshi Miyazawa
佳敏 宮澤
Masatake Henmi
政武 逸見
Eiji Ikezawa
英二 池沢
Toshimitsu Aihara
利光 藍原
Tomonori Oki
智則 大木
Keisuke Yamauchi
啓資 山内
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SUMIJIYUU KASOKUKI SERVICE KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 特別な治具を用いず、手間をかけずに、スト
リッパー膜の各部を均等に撓ませることができ、イオン
ビーム照射に対する寿命を大幅に延ばすことができるイ
オンビーム用荷電ストリッパー膜の強化方法を提供す
る。 【解決手段】 開口2を有するホルダー板3に開口を覆
って炭素箔1を皺なく張り付け、次いで炭素箔に強い可
視光を短時間照射し、これにより開口部の炭素箔全面に
細かい皺7を形成する。可視光の光束は、約200万〜
300万ルーメンであり、その照射時間は、約100〜
300μsである。可視光は、キセノンフラッシュラン
プによる照射光であり、炭素箔は、膜厚約10μg/c
2 の純炭素箔であるのがよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イオンビーム用荷
電ストリッパー膜の強化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】イオンビームの加速には、その効率を上
げるために加速イオンから電子を剥ぎ取るストリッパー
膜が用いられる。このストリッパー膜は、通常極めて薄
い炭素の薄膜であり、この膜を加速器で加速されたイオ
ンビームはほとんどエネルギーを失うことなく通過する
が、イオンのまわりに残っていた電子がストリッパー膜
で剥ぎ取られ、より高い価数のイオンとなる。このよう
にして得られた価数の高いイオンビームは磁場で容易に
軌道を変えることができ、かつ効率的に加速することが
できる。
【0003】例えば図4は、ストリッパー膜を通過した
キセノンイオンビームのエネルギーに対する生成価数と
そのイオンビームの強度との関係を示している。この図
において、例えば0.25MeV/u(核子)のエネル
ギーのキセノンイオンビームを用いると、通過したキセ
ノンイオンビームは、価数18が最も多く生成されて、
入射したキセノンイオンの約20%が18価にかわり、
その前後の価数の比率も高くなっている。この特性を利
用してイオンビームの価数を高めることができる。
【0004】上述した用途に使用するストリッパー膜
は、膜厚約10μg/cm2 前後の純炭素箔として市販
されている。このストリッパー膜1を、通常は図5
(A)に模式的に示すように、開口2を有する金属板3
(ホルダー板)に皺ができないように張り付け、イオン
ビームの通過位置に取り付けて使用する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、かかるストリ
ッパー膜1は、一般に寿命が短く、イオンビームの照射
によってすぐに破損してしまうため、加速器の利用効率
を著しく低下させていた。この原因は、イオンビームの
照射によってストリッパー膜の厚さが部分的に増加し、
これにより膜内に過大な引張応力(張力)が発生するた
めである。
【0006】そこで、図5(B)に模式的に示すよう
に、金属リング4にストリッパー膜1を皺なく張り付け
た後、機械的に金属リング4を内方に縮めて塑性変形さ
せ、これによりストリッパー膜1を大きく撓ませて(す
なわち、たるみを付けて)試験に供することが一部で実
施され、寿命を延ばす効果が確認されている。
【0007】しかし、図4(B)に示す方法を実施する
ためには、金属リング4を内方に縮めるための特別の治
具が必要であり製作に手間がかかるばかりでなく、スト
リッパー膜の各部を均等に撓ませることが困難であり、
品質のバラツキが大きく、安定した特性を得ることが困
難である問題点があった。
【0008】本発明は、かかる問題点を解決するために
創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、ホ
ルダーの開口に皺なく張り付けたストリッパー膜を、特
別な治具を用いず、手間をかけずに、イオンビーム照射
に対する寿命を延ばすことができるイオンビーム用荷電
ストリッパー膜の強化方法を提供することにある。ま
た、本発明の別の目的は、ストリッパー膜の各部を均等
に撓ませることができ、品質のバラツキが少なく、安定
した特性を得ることができるイオンビーム用荷電ストリ
ッパー膜の強化方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の発明者等は、炭
素箔に強い可視光をストロボ等で照射することにより、
炭素箔の全面に細かい皺を形成することができることを
新たに見出した。更に、この特性を利用し、ホルダーに
皺なく張った炭素箔の全面に細かい皺を形成し、イオン
ビームを照射して試験した結果、皺のない従来品よりも
寿命が大幅に延びることを確認した。本発明はかかる新
規の知見に基づくものである。
【0010】すなわち、本発明によれば、開口を有する
ホルダー板に開口を覆って炭素箔を皺なく張り付け、次
いで該炭素箔に強い可視光を短時間照射し、これにより
開口部の炭素箔全面に細かい皺を形成する、ことを特徴
とするイオンビーム用荷電ストリッパー膜の強化方法が
提供される。この方法によれば、ホルダーに皺なく張っ
た炭素箔は作りやすいので、それに、ストロボ等で強い
可視光を照射するだけで、特別な治具を用いず、手間を
かけずに、イオンビーム照射に対する寿命を延ばすこと
ができる。また、この方法により、強い可視光を均一に
照射するだけで、ストリッパー膜の各部を均等に撓ませ
ることができ、品質のバラツキが少なく、安定した特性
を得ることができる。
【0011】本発明の好ましい実施形態によれば、前記
可視光の光束は、約200万〜300万ルーメンであ
り、その照射時間は、約100〜300μsである。ま
た、前記可視光は、キセノンフラッシュランプによる照
射光であるのがよい。更に、前記炭素箔は、膜厚約10
μg/cm2 の純炭素箔であることが好ましい。
【0012】上記照射光は、市販のカメラ用ストロボで
発生させることができる。すなわち、市販のストロボの
ランプの多くは、キセノンフラッシュランプであり、そ
の幾つかを予め試験して、光束が約200万〜300万
ルーメンであり、その照射時間が約100〜300μs
であるものを選択すれば、そのストロボを距離にして3
〜5cmに近づけて発光させることにより、細かい皺を
よせて撓ませることができる。なお、光束が強すぎた
り、照射時間が長いと、皺が大きくなってストリッパー
膜が破損しやすくなり、逆に光束が弱すぎたり、照射時
間が短いと、十分な皺が形成できない。
【0013】このようにして製作したイオンビーム用荷
電ストリッパー膜は、図5(B)のように機械的に撓ま
せたものと同等の性能を示し、皺なく張りそのままの状
態で使用する従来のものよりも、約3〜5倍の寿命に強
化することができる。また、市販のストロボは、光束及
び発光時間が安定しているので、予め所定の性能のスト
ロボを選択しておくだけで、所定の強い可視光を均一に
照射することができ、これによりストリッパー膜の各部
を均等に撓ませることができ、品質のバラツキが少な
く、安定した特性を得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態
を図面を参照して説明する。なお、各図において、共通
する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略す
る。図1は、本発明の方法を模式的に示す図である。こ
の図に示すように、本発明のイオンビーム用荷電ストリ
ッパー膜の強化方法は、(A)まず、開口2を有するホ
ルダー板3に開口2を覆って炭素箔1(ストリッパー
膜)を皺なく張り付ける。この工程は、従来の普通の使
用方法と同様であり、ホルダー板3、開口2も同一のも
のをそのまま使用する。
【0015】炭素箔1は、膜厚約10μg/cm2 の純
炭素箔を使用する。純炭素箔の表面に硝酸セルロースの
コーティングをしたものも市販されているが、かかる炭
素箔は、表面のコーティングの影響を受けるため、本発
明を適用しても十分な効果は得られない。
【0016】(B)次いで炭素箔1に強い可視光5を短
時間照射し、これにより図1に模式的に示すように、開
口部の炭素箔全面に細かい皺7を形成する。この可視光
5の照射条件は、後述するように、可視光の光束が約2
00万〜300万lm(ルーメン)であり、その照射時
間が約100〜300μsであるのがよい。300万l
mを越える光束、或いは300μsを越える照射時間で
は、皺7が大きくなってストリッパー膜が破損しやすく
なる。また、200万lm未満の光束、或いは100μ
s未満の照射時間では、十分な皺が形成できない。
【0017】なお、形成された皺7は、図では表現でき
ないが、方向性のない細かい起伏であり、光を照射した
表面及び裏面にも同様に形成される。起伏の高さは、数
10μm程度である。またこの皺は開口部の炭素箔全面
に限られず、開口部周辺のホルダー板3への張付け部に
も形成されるが、この部分の剥がれ等は生じなかった。
なお、張付け部の皺がわずかでも悪影響を及ぼす場合に
は、張り付けた反対側から可視光を照射することによ
り、これを避けることができる。
【0018】上述した可視光は、キセノンフラッシュラ
ンプによる照射光であることが好ましい。かかるキセノ
ンフラッシュランプを用いることにより、必要な光束、
照射時間を容易に得ることができる。なお、市販のスト
ロボ6のランプの多くは、キセノンフラッシュランプで
あり、その幾つかを予め試験して、光束が約200万〜
300万ルーメンであり、その照射時間が約100〜3
00μsであるものを選択すれば、そのストロボを距離
にして3〜5cmに近づけて発光させ、細かい皺をよせ
て撓ませることができる。
【0019】開口部の炭素箔全面に細かい皺が形成され
るメカニズムは、現在のところ正確には把握されていな
いが、強い可視光の短時間照射により、適量の光圧(放
射圧)の衝撃波が生じ、この衝撃波によって薄い炭素箔
が部分的に伸び縮みし、微細な皺7が形成されて少した
るみを帯びた形状になるものと思われる。
【0020】図2は、試験に使用したストロボの性能比
較表である。このストロボは、すべて写真用であり、
a,bは、コンパクトカメラに内蔵のもの、c,dは単
独ストロボである。これらのストロボを用いてストリッ
パー膜1に同一条件で照射した結果、a,b,cでは、
良好な皺が形成されたが、dでは、皺が大きくなってス
トリッパー膜が破損した。従って、可視光の光束が約2
00万〜300万lm(ルーメン)であり、その照射時
間が約100〜300μsであるのがよいことがわかっ
た。
【0021】
【実施例】図3は、本発明の方法を適用したストリッパ
ー膜の寿命比較図である。なお、この試験は、136 Xe
9+のイオンビームをE=0.25MeV/u(核子)の
エネルギーで照射して実施した。ビームカレントは、
1.0eμA、ビームサイズは5mm×5mmであっ
た。また、試験した炭素箔(カーボンフォイル)は、米
国のアリゾナカーボン社製(図中のA)とカナダのチョ
ークリバー社製(図中のB,C)である。なお、図中の
各棒線のうち、斜線は本発明の方法を適用したもの、そ
の他は、皺なく張りつけたままの従来のものである。
【0022】図3の実施例から、本発明の方法を適用し
たストリッパー膜は、従来のものと比較して少なくとも
倍以上、ものによっては5倍以上の長寿命を示している
ことがわかる。
【0023】なお、本発明は上述した実施例に限定され
るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々
変更できることは勿論である。例えば、膜厚が100μ
g/cm2 以上の炭素箔にも、同様に適用することがで
きる。また、本発明の荷電ストリッパー膜を同様の目的
に使用するビームターゲットにも適用することができ
る。
【0024】
【発明の効果】上述したように、本発明の方法によれ
ば、ホルダーに皺なく張った炭素箔は作りやすいので、
それに、ストロボ等で強い可視光を照射するだけで、特
別な治具を用いず、手間をかけずに、イオンビーム照射
に対する寿命を延ばすことができる。また、この方法に
より、強い可視光を均一に照射するだけで、ストリッパ
ー膜の各部を均等に撓ませることができ、品質のバラツ
キが少なく、安定した特性を得ることができる。
【0025】すなわち、皺形成は、カメラのストロボを
用いて発光させるだけなので、短時間で、場所も取ら
ず、コストもかからず、誰にでも簡単に、強化した炭素
箔を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を模式的に示す図である。
【図2】試験に使用したストロボの性能比較表である。
【図3】本発明の方法を適用したストリッパー膜の寿命
比較図である。
【図4】ストリッパー膜を通過したキセノンイオンビー
ムのエネルギーに対する生成価数とそのイオンビームの
強度との関係図である。
【図5】従来のストリッパー膜の使用方法を示す模式図
である。
【符号の説明】
1 ストリッパー膜 2 開口 3 ホルダー板 4 金属リング 5 可視光 6 ストロボ 7 皺
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 逸見 政武 埼玉県和光市広沢2番1号 理化学研究所 内 (72)発明者 池沢 英二 埼玉県和光市広沢2番1号 理化学研究所 内 (72)発明者 藍原 利光 東京都杉並区高円寺南1−31−3 (72)発明者 大木 智則 東京都北区中里3−11−11−401 (72)発明者 山内 啓資 東京都練馬区土支田2−23−2

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 開口を有するホルダー板に開口を覆って
    炭素箔を皺なく張り付け、次いで該炭素箔に強い可視光
    を短時間照射し、これにより開口部の炭素箔全面に細か
    い皺を形成する、ことを特徴とするイオンビーム用荷電
    ストリッパー膜の強化方法。
  2. 【請求項2】 前記可視光の光束は、約200万〜30
    0万ルーメンであり、その照射時間は、約100〜30
    0μsである、ことを特徴とする請求項1に記載のイオ
    ンビーム用荷電ストリッパー膜の強化方法。
  3. 【請求項3】 前記可視光は、キセノンフラッシュラン
    プによる照射光である、ことを特徴とする請求項1又は
    2に記載のイオンビーム用荷電ストリッパー膜の強化方
    法。
  4. 【請求項4】 前記炭素箔は、膜厚約10μg/cm2
    の純炭素箔である、ことを特徴とする、請求項1乃至3
    のいずれかに記載のイオンビーム用荷電ストリッパー膜
    の強化方法。
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