JPH11348291A - 液体噴射記録ヘッドおよびその製造方法ならびに前記液体噴射記録ヘッドを搭載する液体噴射記録装置 - Google Patents

液体噴射記録ヘッドおよびその製造方法ならびに前記液体噴射記録ヘッドを搭載する液体噴射記録装置

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JPH11348291A
JPH11348291A JP10172244A JP17224498A JPH11348291A JP H11348291 A JPH11348291 A JP H11348291A JP 10172244 A JP10172244 A JP 10172244A JP 17224498 A JP17224498 A JP 17224498A JP H11348291 A JPH11348291 A JP H11348291A
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resin
recording head
liquid
top plate
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JP10172244A
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Masashi Miyagawa
昌士 宮川
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Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 樹脂製天板と基板を溶着によって一体化す
る。 【解決手段】 液流路2aや吐出口2bを有する樹脂製
天板2は、射出成形等によって一体成形された耐アルカ
リ性の高い樹脂製のブランクに溝加工や穴加工を施すこ
とで製作される。樹脂製天板2を基板1上に位置合わせ
したうえで、樹脂製天板2の上からレーザ光を照射する
ことで、基板1と樹脂製天板2を溶着させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微細な吐出口(オ
リフィス)から飛翔液滴を吐出して被記録媒体(記録紙
等)に記録(印刷)を行なう液体噴射記録ヘッドおよび
その製造方法ならびに前記液体噴射記録ヘッドを搭載す
る液体噴射記録装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】記録液(インク)を、微細な吐出口(オ
リフィス)から飛翔液滴として吐出して被記録媒体(記
録紙等)に記録(印刷)を行なうバブルジェット方式の
液体噴射記録ヘッドは、複数の電気熱変換素子とそのリ
ード電極を有する基板(ヒーターボード)を有し、該基
板上に液流路(ノズル)や共通液室を形成する樹脂製の
ノズル層を積層したうえで、記録液供給口(インク供給
口)を備えたガラス製の天板を重ねたものが一般的であ
るが、最近では、ガラス製の天板を省略し、液流路およ
び共通液室に加えて記録液の供給口(インク供給口)等
を一体的に設けた樹脂製の天板部材(以下、「樹脂製天
板」という。)を射出成形等によって一体成形し、これ
を、弾性部材によって基板に押圧して一体化した液体噴
射記録ヘッドが開発されている。このような液体噴射記
録ヘッドは、組立部品点数が大幅に削減され、かつ組立
工程も極めて簡略化されるため、液体噴射記録装置の低
コストに大きく貢献している。
【0003】図6は樹脂製天板を用いた液体噴射記録ヘ
ッドE0 の主要部を、樹脂製天板の一部分を破断した状
態で示すもので、これは、複数の電気熱変換素子100
1aを有する基板1001と、各電気熱変換素子100
1a上に位置する液流路1002aとこれに連通する共
通液室1002bを備えた樹脂製天板1002を有し、
樹脂製天板1002には、各液流路1002aに連通す
る吐出口(オリフィス)1002cを有するオリフィス
プレート部1002dと、共通液室1002bに開口す
る記録液供給口1002eを有する筒状突出部1002
fが一体的に設けられている。
【0004】このように液流路1002aや共通液室1
002bに加えてオリフィスプレート部1002dと筒
状突出部1002fを有する樹脂製天板1002を射出
成形等によって一体的に製作し、エキシマレーザ等を用
いた穴加工によって吐出口1002cを形成し、各液流
路1002aが基板1001の電気熱変換素子1001
a上に位置するように位置決めしたうえで(図7参
照)、図示しない弾性部材や接着剤によって樹脂製天板
1002を基板1001に一体化する。基板1001
は、各電気熱変換素子1001aに電気信号を発生する
駆動回路を搭載した配線基板1003とともに、ベース
プレート1004上に接着剤を用いて貼り合わされる。
【0005】このようにして組み立てられた液体噴射記
録ヘッドE0 は、図8に示すように記録液供給部材等を
内蔵する外枠部材1005によってカートリッジ100
6に組み付けられる。なお、カートリッジ1006内に
は、記録液をしみ込ませて貯蔵するスポンジが収容され
る。
【0006】上記の液体噴射記録ヘッドは、電気熱変換
素子面と平行な方向に液滴(インク液滴)を吐出するも
のであり、この方式はエッジシューターと呼ばれてい
る。
【0007】他方、図9に示すように、基板1101の
表面の電気熱変換素子1101aに垂直に液滴を吐出す
る方式はサイドシューターと呼ばれている。この液体噴
射記録ヘッドの一般的製法としては、記録液供給口11
01bを基板1101に形成し、その表面に感光性樹脂
を用いて液流路1102aを有するノズル層(液流路形
成層)1102を形成したのち、電鋳によって製作した
吐出口1103aを有するオリフィスプレート1103
を貼り合わせる。
【0008】近年では、液体噴射記録装置の記録液とし
てPHの高いインクが使用される傾向にある。これは、
記録紙上での記録液の定着特性を高めるためであり、極
めてアルカリ性の高い水溶液にのみ溶解する染料を用い
て記録液を強アルカリ特性とし、液滴として記録紙(中
性紙)に着弾させて、PHの低下とともに染料の溶解特
性が低下することを利用したものである。
【0009】ところが、このような高アルカリ性のイン
クは高分子化合物を加水分解する性質を有し、特に前述
のように熱エネルギーを使用してインクを吐出せしめる
バブルジェット方式に於ては、高温であってしかも強ア
ルカリ性のインクに長時間曝されるため、ノズル層の構
成材として用いる感光性樹脂や、樹脂製天板を基板に接
着するための接着剤として使用できる高分子化合物は極
めて少数のものに限定される。一般的に感光性樹脂や接
着剤等はそのほとんどが反応性の高い官能基を有するた
めに強アルカリ性のインクによって加水分解されてしま
い、このようなインクを用いる液体噴射記録ヘッドの構
成材や接着剤として使用できるものはほとんどないのが
現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の技術によれ
ば、前述のように一般的に感光性樹脂や接着剤は強アル
カリ溶液によって加水分解され易い高分子化合物であ
り、これを用いた液体噴射記録ヘッドは、インクのPH
を余り高くできないばかりか、樹脂製天板やノズル層の
寸法精度や位置合わせの精度が不充分になり易く吐出性
能等の信頼性が低いという未解決の課題がある。すなわ
ち、感光性樹脂や接着剤等のように、光や熱に感応する
官能基を有する材料は、アクリル樹脂等がベースとなっ
ており、エステル結合や官能基がアルカリによって加水
分解され易い。
【0011】従って、このような感光性樹脂や接着剤を
使用しない液体噴射記録ヘッドの開発が望まれている。
【0012】本発明は、上記従来の技術の有する未解決
の課題に鑑みてなされたものであり、耐アルカリ性等に
すぐれており、しかも吐出性能等の信頼性も高い液体噴
射記録ヘッドおよびその製造方法ならびに前記液体噴射
記録ヘッドを搭載する液体噴射記録装置を提供すること
を目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の液体噴射記録ヘッドは、吐出エネルギー発
生手段を備えた基板と、液流路を備えた液流路形成層を
有し、前記基板と前記液流路形成層が、両者の対向面を
溶着させることによって一体化されていることを特徴と
する。
【0014】基板と液流路形成層の間に樹脂膜が介在し
ているとよい。
【0015】樹脂膜に、光を吸収しやすい物質が添加さ
れているとよい。
【0016】基板に、光に対する反射率の低い被膜が設
けられているとよい。
【0017】
【作用】基板に液流路形成層を重ねて両者の対向面を溶
着させる。溶着方法は、液流路形成層の上方からレーザ
光等を照射したり、基板等に超音波を与える等の方法で
熱エネルギーを前記接触面に吸収させることによって行
なわれる。
【0018】このように基板と液流路形成層を溶着によ
って一体化するものであるため、液流路形成層等を感光
性樹脂によって製作する場合や、液流路形成層と基板を
接着剤によって接着する場合のように、液体噴射記録ヘ
ッドを構成する材料に耐アルカリ性の低いものを必要と
せず、従って、液体噴射記録ヘッドの耐アルカリ性等を
大幅に強化できる。
【0019】加えて、液流路形成層の製作や基板との位
置合わせも簡単であるから、吐出エネルギー発生手段と
液流路の間の位置合わせの精度や液流路の形状精度等も
大幅に向上させることができる。
【0020】その結果、耐アルカリ性等にすぐれてお
り、従って強アルカリ特性を有するインクを記録液とし
て用いることができるうえに、吐出性能等の信頼性の高
い液体噴射記録ヘッドを実現できる。
【0021】基板と液流路形成層の間に樹脂膜が介在し
ていれば、基板と液流路形成層の結合力を強化できる。
【0022】樹脂膜に、光を吸収しやすい物質が添加さ
れていれば、光によって樹脂膜を溶融するときの熱エネ
ルギーの吸収率を高めて、基板と液流路形成層をより一
層強固に結合させることができる。
【0023】基板に、光に対する反射率の低い被膜が設
けられていれば、基板と液流路形成層の間に光のエネル
ギーを集中させて、基板と液流路形成層を迅速かつ強固
に結合させることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づ
いて説明する。
【0025】図1は、一実施の形態による液体噴射記録
ヘッドを示すもので、これは、基板(ヒーターボード)
1上に、液流路2aや吐出口2bを有する液流路形成層
である樹脂製天板2を重ねて位置決めし、両者の対向面
である接触面をYAGレーザのレーザ光等の光や超音波
等によって加熱、溶融することで、溶着させたものであ
る。
【0026】基板1は、酸化層と蓄熱層を設けたシリコ
ン基板等の表面1aに金属膜を被着させ、これを公知の
リソグラフィ等によってパターニングすることによって
吐出エネルギー発生手段である電気熱変換素子1bを形
成したもので、基板1の表面1a全体は、図示しない絶
縁層や耐キャビテーションのための保護層等によって覆
われている。
【0027】電気熱変換素子1bは、基板1の中央に設
けられたインク供給口1cを挟んで複数ずつ2列に配設
され、樹脂製天板2は、複数の液流路2aがそれぞれ基
板1の電気熱変換素子1bに重なるように位置決めされ
る。
【0028】樹脂製天板2は、耐アルカリ性の高い樹脂
材料によって一体成形したブランクに、レーザ光を用い
た溝加工や穴加工を施して液流路2aや吐出口2bを形
成したもので、ブランクの一体成形には射出成形等の公
知の成形技術が用いられる。
【0029】基板1と樹脂製天板2の溶着方法は、樹脂
製天板2と基板1を圧着しつつ熱を付与する汎用的な熱
溶着や、樹脂製天板2あるいは基板1より超音波を伝達
する超音波溶着、あるいはYAGレーザ等の光であるレ
ーザ光を用いた溶着等いずれでもよいが、なかでもレー
ザ光による溶着は、エネルギーロスが少ない等の利点を
有し、最も好ましい。樹脂製天板2にはこのように予
め、液流路2aや吐出口2bが形成されているため、樹
脂製天板2と基板1の溶着における大きな課題は、これ
らの微細な構造の変形を極力抑えて高い接着力を得るこ
とにある。そこで、熱溶着を採用する場合は、熱エネル
ギーを如何に所望の箇所に瞬時に付与するかが重大な課
題となる。
【0030】他方、YAGレーザのレーザ光は樹脂製天
板2の透過性が極めて高く、レーザ光を樹脂製天板2に
照射しても樹脂製天板2はレーザ光を透過して熱変換し
ないため、ほとんど昇温することはない。
【0031】一般的に液体噴射記録ヘッドの樹脂製天板
として使用されるポリスルフォンやポリエーテルスルフ
ォン等の樹脂は分子構造中に水素結合を有していないた
め、汎用的樹脂のなかでも特にYAGレーザのレーザ光
の吸収率は低い。
【0032】そこで、図2に示すように、溶着する基板
1と樹脂製天板2の接触面に集光レンズ11を用いてレ
ーザ光を集光させれば、レーザ光は樹脂製天板2を透過
して接触面において熱エネルギーに変換され、樹脂製天
板2を溶融する。このようにして、基板1と樹脂製天板
2とを瞬時に溶着させる。
【0033】この工程は、基板1上の電気熱変換素子1
bと樹脂製天板2の吐出口2b等の位置合わせを行なっ
たうえで、樹脂製天板2をガラス製フィンガー12によ
って基板1に押圧し、これを載置したXYステージ13
を公知のNC制御によって移動させながら、基板1と樹
脂製天板2からなる積層体W1 にスポット状のレーザ光
を照射することによって行なわれる。
【0034】YAGレーザのレーザ光は、前述のように
集光レンズ11によって基板1と樹脂製天板2の接触面
に集光されてこれをスポット状に溶着する。XYステー
ジ13のNC制御によって積層体W1 を移動させること
で、レーザ光の集光点を相対移動させ、基板1と樹脂製
天板2の接触面全体を溶着する。
【0035】あるいは、このようにXYステージ13の
NC制御によってレーザ光の集光点を移動させる替わり
に、図3に示すように、YAGレーザから発生されたレ
ーザ光を、複数のハエの目レンズとコンデンサーレンズ
との組み合わせによって均一な強度分布を有する断面寸
法の大きいビームに拡大し、これを、金属製の穴開きマ
スク14を経て積層体W2 に照射して、部分的に一括露
光してもよい。穴開きマスク14は、積層体W2 の基板
21と樹脂製天板22の接触面に沿った開口を有し、該
接触面を除く残りの部分がレーザ光に曝されるのを防
ぐ。この場合は、積層体W2 を一括露光する露光サイク
ルごとに、XYステージ13をステップ移動させること
で、積層体W2 の基板21と樹脂製天板22の接触面全
体を溶着する。
【0036】このような一括露光は、XYステージ13
をNC制御する場合に比べてXYステージ13の制御が
簡単であるから、装置コストの低減や液体噴射記録ヘッ
ドの製造タクトの短縮に大きく貢献できる。
【0037】積層体W2 の溶着面積がレーザ光の断面寸
法より小さければ、積層体W2 全体を1回の一括露光に
よって溶着できるため、液体噴射記録ヘッドの製造タク
トをより一層短縮できる。
【0038】また、基板の表面にレーザ光の反射率の低
い被膜を形成しておくことも、基板と樹脂製天板を速や
かに溶着するうえで効果的である。基板表面にレーザ光
の反射率の低い材料層を形成しておけば、レーザ光は樹
脂製天板を通過し、基板表面において熱エネルギーに効
率よく変換される。すなわち、樹脂製天板越しに基板に
照射されたレーザ光が、基板表面を局所的且つ瞬間的に
昇温させ、その熱によって樹脂製天板を加熱、溶融せし
めて基板と天板の溶着が行なわれる。このような被膜と
しては、反射率の低いクロムが好適であり、最適な材料
としては5酸化タンタルを挙げることができる。
【0039】一般的にタンタル被膜は、液体噴射記録ヘ
ッド、特にバブルジェット方式の液体噴射記録ヘッドに
おいて、気泡の消泡の際に発生するキャビテーションに
対する強度が高く、ヒーターボードを保護する特性に優
れているため、汎用的に液体噴射記録ヘッドの電気熱変
換素子の表面に成膜され使用されている。該被膜は一般
的には樹脂との密着性が極めて低く、そのまま樹脂製天
板と高い固着力で溶着することは難しい。
【0040】しかしながら、5酸化タンタルの被膜は耐
キャビテーション性に優れるとともに、樹脂との密着性
が高い特徴を有している。さらには、タンタル被膜は一
般的にYAGレーザのレーザ光に対する反射率が高い
が、5酸化タンタルであればレーザ光の反射率が低くな
る。従って樹脂製天板越しにレーザ光を照射すると、レ
ーザ光は樹脂製天板を透過し、5酸化タンタルの表面で
効率よく熱エネルギーに変換され、樹脂製天板と基板の
接触面を瞬時に昇温させて両者を溶着することができ
る。
【0041】5酸化タンタル被膜は、スパッタ法等によ
って成膜したタンタル被膜を陽極酸化して形成してもよ
いし、また5酸化タンタルそのものをスパッタして成膜
しても構わない。
【0042】このように基板に5酸化タンタル被膜等の
反射率の低い被膜を設けた場合は、レーザ光のエネルギ
ーを極めて有効に利用できるため、穴開きマスクを用い
た一括露光を採用するのが望ましい。
【0043】なお、レーザ光を樹脂製天板越しに集光さ
せてこれを溶着する場合には、集光レンズ等の光学系の
fナンバー(焦点距離をレンズ径で除した値)を小さく
することが望ましい。樹脂製天板のレーザ光の透過率は
高いものの、若干の吸収は存在するため、強力なレーザ
光を照射した場合には突発的に樹脂製天板にコゲが発生
してしまう。基板と樹脂製天板の溶着においては、樹脂
製天板と基板の接触面に焦点を絞ってレーザ光を照射す
ることが最も好ましいが、レーザ光の強度が高過ぎる場
合には、光学系のfナンバーが大きい突発的な樹脂製天
板コゲが発生しやすい。これを回避するには、レーザ光
の強度を落とすか、光学系のfナンバーを小さくする
か、あるいは樹脂製天板の厚さを厚くする(樹脂製天板
上面と下面のエネルギー密度の差を大きくする)等の対
処が必要であるが、製造タクトが長くなる等の不都合が
生じることを考慮する必要がある。
【0044】基板面にレーザ光に対する反射率の低い材
料層を形成した場合は、基板全域を一括露光する方法を
採るのが望ましい。レーザ光を走査したり、あるいは基
板側を移動したりする必要がないため、液体噴射記録ヘ
ッドの製造タクトの短縮と装置コストの低減に大きく貢
献できる。
【0045】また、基板と樹脂製天板の固着力をより一
層強化するために、図4の(a)に示すように、基板3
1の表面に予め樹脂膜33を被着しておくことも有効で
ある。基板31と樹脂製天板32の高い溶着力を実現す
るには、樹脂膜33を熱変形温度より充分に高い温度で
溶融させて溶着することが望ましいが、温度を高くする
と樹脂製天板32に形成した液流路32a等の微細構造
の変形が大きくなる。そこで、予め基板31の表面に樹
脂膜33を成膜し、該樹脂膜33と基板31との充分な
密着力を得られる温度で熱処理を行なったうえで、樹脂
膜33と樹脂製天板32とをYAGレーザのレーザ光に
よって加熱、溶着させれば、樹脂製天板32の変形が少
なくてしかも基板31との間に十分な密着力を得ること
ができる。
【0046】実験によれば、例えば樹脂製天板の材料と
してポリスルフォンを使用し、基板表面に形成した5酸
化タンタル被膜にそのまま樹脂製天板を溶着する場合に
は、基板の温度を350℃以上にする必要があるが、上
記の樹脂膜を予め形成しておけば、200℃程度の温度
で溶着することができることが判明している。ポリスチ
レンやキシリレン樹脂は耐インク性が高く、またその軟
化温度は分子量によっても異なるが100〜150℃程
度である。一方ポリスルフォン樹脂もインクに対して高
い耐性を有し、その軟化温度は200℃程度である。基
板上に予めポリスチレンの樹脂膜を形成せしめ、その上
に液流路等を成形したポリスルフォンの樹脂製天板を圧
着して150〜180℃程度に加熱すれば、両者を強固
に溶着することが可能であり、しかも樹脂製天板の液流
路等の微細構造の変形は起こらない。
【0047】上記の樹脂膜は、耐インク特性が高く、ま
た液体噴射記録ヘッドの使用環境において耐え得る耐熱
性を有している樹脂材料であれば、何らの樹脂を使用し
ても構わない。これらの樹脂を溶剤に溶解し、スピンコ
ートやバーコート等のソルベントコート法で基板上に塗
布、乾燥させる。また、樹脂を熱等にて溶融し、そのま
ま基板にホットメルト方式によって塗布することもでき
る。樹脂膜は電気熱変換素子上に存在することは好まし
くないため、パターニングすることが必要である。その
方法は、樹脂溶液をスクリーン印刷等によって塗布する
方法等を採用することができる。
【0048】あるいは、光や電離放射線照射によってパ
ターニングできる樹脂を使用しても構わない。耐インク
性の高いポリスチレンやポリスルフォン等の樹脂は一般
的には感光特性を持たないが、芳香環を有するこれらの
樹脂は、ビスアジド化合物の添加によってネガ型感光特
性を付与できる場合がある。また、DEEP−UV光や
X線、電子線等の電離放射線を用いれば、さらに高感度
でパターニングできる。感光性を付与できる最も好適な
樹脂としては、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォ
ンの他にポリスチレン、クロロメチル化ポリスチレン、
クロロメチル化ポリ−α−メチルスチレン等を挙げるこ
とができる。
【0049】樹脂に感光性がない場合は、エキシマレー
ザを用いてパターニングしたり、あるいは樹脂膜上に感
光性樹脂のパターンを形成して酸素プラズマを用いて樹
脂膜の不要部分をエッチングする方法を採用することが
できる。特にシリコン系レジストをパターニングして酸
素プラズマによるエッチングを行なう方法は、工程数が
少なく、基板を一括処理することができるうえに、樹脂
膜とのエッチング選択比が大きい等の利点を有してお
り、最も好ましい。シリコン系レジストとしては、富士
ハントテクノロジー社製FH−SPや東ソー社製SNR
等を使用することができる。酸素プラズマによるエッチ
ングは通常のRIE装置を使用することができる。
【0050】従来例のように液体噴射記録ヘッドのノズ
ル層(液流路形成層)全体を感光性樹脂によって製作す
るときは、そのパターニングの膜厚は数十μmであり、
耐アルカリインク特性の低い材料を使用せざるをえなか
ったが、本実施例による樹脂膜の膜厚は数μm程度です
むため、耐アルカリインク特性の良好な高分子化合物を
電離放射線によるパターニングやレーザー加工によって
パターニングできる。
【0051】また、樹脂膜中にYAGレーザのレーザ光
の吸収率の高い物質を予め添加しておくことも有効であ
る。汎用的に使用できるものとしては、カーボンブラッ
ク、あるいは近赤外線を吸収する染料を挙げることがで
きる。染料の具体例としては、三井東圧化学(株)社製
SIR−144(アントラキノン系染料)、SIR−1
28,SIR−130,SIR−132,SIR−15
9,SIR−152,SIR−162,PA−100
1,PA−1006(金属錯体系染料)、SIR−10
3,KIR−103,(フタロシアニ系染料)を挙げる
ことができる。これらの吸収剤は、どれもYAGレーザ
のレーザ光の波長1064nm附近に高い吸収があり、
効率よくレーザ光を熱に変換できる。
【0052】また、基板表面の無機被膜等に図4の
(b)に示すようにオーバーハング構造の凹形パターン
41cを形成せしめ、これに樹脂膜43の一部を嵌合す
ることにより、より強固に樹脂製天板42と基板41を
溶着することができる。液体噴射記録ヘッドの基板表面
は、耐キャビテーションおよびパッシベーションのため
に前述のようにタンタル膜や5酸化タンタル被膜を形成
する場合が多いが、該被膜と樹脂との接着性を高めるこ
とは難しい。そこで、上記の凹形パターン41cを設け
てこれに樹脂の一部を充填し、350℃以上の熱処理を
施せば、基板41と樹脂製天板42は強固に固着する。
【0053】このような高温下で処理した場合には、樹
脂の炭化が起こることが多く、その後の樹脂製天板42
との溶着が困難になったり、また溶着強度が落ちたりし
て、樹脂製天板42と基板41の溶着の信頼性が低下す
るおそれがある。これを回避するために、基板41の表
面の無機被膜にオーバーハング形状の凹形パターン41
cを形成しておく。その結果、樹脂膜43と基板41の
固着力を飛躍的に高めることができる。
【0054】基板41のオーバーハング構造の凹形パタ
ーン41cは以下のように製作されるがこれに限定され
るものではない。電気熱変換素子41a上の保護膜41
dと電気熱変換素子41aの蓄熱層41eにスルーホー
ル41fを形成し、シリコン基板をアルカリによって異
方性エッチングすることによって凹所を形成する。この
ようにして凹形パターン41cを形成した基板41に、
樹脂膜43となる高分子化合物をソルベントコートすれ
ば、基板41と樹脂膜43の結合は極めて強固なものに
することができる。
【0055】基板の電気熱変換素子は、汎用的な半導体
プロセスによって形成することができ、また予め基板上
に電気熱変換素子を駆動するための駆動回路を形成して
おくことも構わない。前述のように、インク供給口に対
して両側に電気熱変換素子を形成する場合は、予め基板
にインク供給口を形成しておく。
【0056】インク供給口は、YAGレーザを用いて形
成してもよいし、サンドブラスト、超音波加工、あるい
は強アルカリ液による異方性エッチングによって形成し
ても構わない。YAGレーザを用いて形成する場合は、
NC制御されたXYステージに基板を配置し、YAGレ
ーザのレーザ光を照射してそのまま基板に貫通孔を形成
することができる。またレーザ光による加工時に、基板
の溶融物が基板表面に付着する場合があるが、予め基板
表面に樹脂被膜(特にメタクリル樹脂が望ましい)を塗
布しておき、加工後に溶融除去すれば弊害を排除でき
る。
【0057】サンドブラストによってインク供給口を形
成する場合は、予め感光性樹脂によりマスクパターンを
形成しておきそのままブラスト加工することによって貫
通孔を形成できる。なお、該ブラスト加工時に発生する
静電気によって電気熱変換素子や駆動回路が破壊される
場合があるが、予め基板表面に金属被膜を形成し、該金
属被膜をアースして静電気を除去することによって前記
の弊害を排除できる。また金属被膜は加工後にエッチン
グ液によって除去する。
【0058】異方性エッチングによってインク供給口を
形成する場合は、耐アルカリ特性の高いゴム系の感光性
材料等、あるいは窒化シリコン等によってマスキングし
たのち、強アルカリにて高温でエッチングすることによ
り貫通孔を形成する。
【0059】また、レーザ光の照射時に、基板に樹脂製
天板を圧着する方法としては前述のようにガラス製のフ
ィンガーを使用するのが望ましい。すなわち、YAGレ
ーザのレーザ光はガラスによる吸収はほとんどないた
め、樹脂製天板の搬送や、基板の電気熱変換素子と樹脂
製天板の吐出口との位置合わせ時の樹脂製天板の移動
や、これを基板に圧着するときの操作はガラス製のフィ
ンガーによって容易に行なうことができる。
【0060】従来例に示したようなエッジシューターに
おいて、液体噴射記録ヘッドの基板と樹脂製天板との密
着を押さえバネによって行なう場合は、バネの形状や押
さえ位置によって、吐出特性が大きく変動していた。ま
た、長尺ヘッドにおいては、押さえバネの設計や押さえ
方法に大きな課題を有していたが、本実施の形態のよう
に基板と樹脂製天板を溶着させれば、バネ等は必要なく
なるか、あるいは使用しても補助的な押さえでよい。こ
れによって、製品の品質向上やコストダウンに大きく貢
献できる。またサイド方式の液体噴射記録ヘッド(サイ
ドシューター)は、バネ等で天板を上方より押さえるこ
とは基本的には不可能であり、上記の溶着技術を用いて
バネ等の樹脂製天板を圧着する部品を省略することによ
る利点が極めて大きい。
【0061】以下に実施例を説明する。
【0062】第1実施例 本実施例は、基板上に酸化タンタル層と溶着用の樹脂膜
を形成し、一括露光によって樹脂製天板と基板を溶着し
たものである。
【0063】真空成膜法と汎用的フォトリソグラフィ技
術によって電気熱変換素子、アルミ配線パターン、保護
膜および耐キャビテーション層としてタンタル被膜を形
成した基板上に、さらに酸化タンタル被膜層を形成し
た。この基板の表面に東京応化(株)製OEBR−10
00(ポリメタクリル酸メチル系電子線レジスト)を保
護膜として膜厚5μmだけ塗布し、100℃でベーキン
グしたのち、日立建機(株)製YAGレーザ装置LU−
100を用いてインク供給口を形成した。これは、パル
スエネルギー50J/cm2 、周波数500Hzで集光
したレーザビームを基板の所定箇所にNC制御されたX
Yステージを操作することによって照射し、貫通孔を形
成することによって行なった。次いで保護膜をアセトン
で洗浄することにより、基板表面に付着した加工粉を排
除した。
【0064】続いて、溶着用の樹脂膜をパターン形成し
た。その樹脂材料としては、東ソー(株)製クロロメチ
ル化ポリスチレンを用いた。これは高い耐アルカリ性を
有するとともに、DEEP−UV光によってパターニン
グできる特性を有し、また軟化温度は150℃である。
レジスト液をロールコート法によって基板に塗布し、1
00℃で30分間乾燥して膜厚3μmを得た。キヤノン
製DEEP−UVマスクアライナーPLA−620FA
に250コールドミラーを使用し、60カウントのパタ
ーン露光を行なったのち、シクロヘキサノンで現像して
溶着用の樹脂膜のパターンを得た。
【0065】基板をダイシングソーで切断し、アルミ製
ベースプレートにダイボンディングした。アルミ製ベー
スプレートには予め、基板に形成したインク供給口にイ
ンクを供給する貫通孔と、印字装置との電気接続を行な
うためのコンタクトパッドを形成した回路基板が貼り付
けてあり、該回路基板と電気熱変換素子を形成した基板
をワイヤーボンディングにて接続した。
【0066】次いで膜厚75μmのポリスルフォン膜に
対して、エキシマレーザのレーザ光を照射して液流路と
吐出口を開けた樹脂製天板を作製した。エキシマレーザ
はルモニクス社製INDEX−200を使用し、ニッケ
ル電鋳によって作製した穴開きマスク(太陽工業社製)
を介してレーザ光を1/4に縮小する投影露光によって
照射した。液流路の加工は70Hzで2秒間の照射、吐
出口の加工は200Hzで1.5秒のレーザ照射を行な
った。
【0067】樹脂製天板を基板に乗せ、ガラスフィンガ
ーによって樹脂製天板を吸着しつつ、基板上の電気熱変
換素子と、樹脂製天板の吐出口を位置合わせした。これ
は、基板に形成したアライメントマーク位置を予め画像
処理によって認識し、該マーク位置に対して樹脂製天板
の吐出口を画像処理しつつガラスフィンガーによって移
動させて行なった。ガラスフィンガーはイコライズ機構
を有しており、樹脂製天板と基板を片当たりすることな
く均一な力にて押さえることができる構成となってい
る。
【0068】このままガラスフィンガーによって100
gf/cm2 の力で樹脂製天板を基板に圧着しつつ18
0℃のオーブンに10分間投入したところ、樹脂製天板
と基板は接着した。
【0069】次いでYAGレーザによる溶着を行なうた
め、ガラスフィンガーによって樹脂製天板を基板面に押
し付けながら、YAGレーザのレーザ光を照射した。レ
ーザ照射位置は日立建機社製LU−100を使用し、パ
ルスエネルギー15J、パルス幅1msec、300H
zで1秒間照射した。このとき、フォーカス位置に対し
て基板表面が60mm高くなるようにベースプレート固
定治具を設置した。該デフォーカス位置においてビーム
直径はφ20となり、基板(5×12mm)全域にわた
ってレーザ照射が可能となる。またガラスフィンガー上
面3mmの位置に照射面積に対応した穴開きマスク(7
×14mm)を設置し、レーザ照射領域を限定した。こ
のようにして基板と樹脂製天板を強固に溶着することが
できた。
【0070】第2実施例 本実施例は、集光レンズによってレーザ光をスポット状
に集光し、基板をNC制御によって動かして溶着を行な
ったものである。
【0071】第1実施例と同様に、基板表面に溶着用の
クロロメチル化ポリスチレン樹脂膜をパターニングし
た。次いで第1実施例と同様にして作製した樹脂製天板
を基板上に乗せ、基板の電気熱変換素子と樹脂製天板の
吐出口を位置合わせした。ガラスフィンガーによって樹
脂製天板を基板に圧着しつつレーザ照射を行なった。レ
ーザ照射は第1実施例と同様の装置を用いて行ない、基
板表面が焦点位置となるようにベースプレート固定治具
の高さを調整した。レーザパルスエネルギーは5J、パ
ルス幅0.5msec、繰返し周波数は300Hzとし
た。また光学系は改造し、出射光部φ20、焦点距離4
0mmとした。この照射条件でXYステージを0.5m
/secの速度で、液室枠部と液流路の壁に沿ってレー
ザ照射できるように移動させた。このようにして基板と
樹脂製天板を強固に溶着することができた。
【0072】第3実施例 本実施例は、基板表面に酸化タンタル被膜を形成したま
ま基板と樹脂製天板を溶着したものである。第1実施例
と同様に真空成膜法によって酸化タンタル被膜層を形成
した基板を作製し、これをダイシングソーで切断したの
ち、アルミ製ベースプレートにダイボンディングを行な
った。次いで樹脂製天板を基板上に乗せ、第1実施例と
同様に基板の電気熱変換素子と樹脂製天板の吐出口とを
位置合わせした。そのままガラスフィンガーによって樹
脂製天板を基板に圧着しつつ、第1実施例と同様にレー
ザ照射を行なった。本実施例においては、基板表面に樹
脂膜を形成してないため、レーザ照射時間を5秒と長く
して溶着させた。これによって、基板と樹脂製天板を強
固に溶着することができた。
【0073】第4実施例 本実施例は、基板表面の被膜はタンタルのままで、レー
ザ光を集光レンズによって基板と樹脂製天板の接触面に
焦点を絞って照射したものである。第1実施例と同様に
タンタル被膜を形成した基板を作製し、ダイシングソー
によって切断し、アルミ製ベースプレートにダイボンデ
ィングした。次いで樹脂製天板を基板上に乗せ、基板の
電気熱変換素子と樹脂製天板の吐出口とを位置合わせし
た。そのまま樹脂製天板をガラスフィンガーによって押
さえ基板に圧着した。第2実施例と同様にレーザ照射を
行なった。XYステージの移動速度は0.2m/sec
と遅くしてレーザ照射を行なった。これによって、樹脂
製天板を基板に強固に溶着することができた。
【0074】第5実施例 本実施例は、基板にオーバーハング状の凹形パターンを
形成し、該凹形パターンに溶着用の樹脂膜を被着させて
溶着したものである。
【0075】基板の電気熱変換素子および配線パターン
のない所定の箇所に環化ゴム系ネガ形フォトレジストに
て抜きパターンを形成した。次いでC38 ガスによる
平行平板型ドライエッチング装置によるドライエッチン
グにて保護膜および蓄熱層をエッチングしてシリコン基
板を露出させ、50℃の20%水酸化ナトリウム溶液に
5分間浸漬してシリコン層を異方性エッチングした。保
護膜の窒化シリコンおよび蓄熱層の酸化シリコン被膜は
アルカリではエッチングされずにそのままの形状を保っ
た。
【0076】この基板上に第1実施例と同様にしてクロ
ロメチル化ポリスチレンをソルベントコートしてパター
ニングし、次いでYAGレーザによって樹脂製天板を溶
着したところ強固に溶着することができた。
【0077】第6実施例 本実施例は、溶着用の樹脂膜に、YAGレーザの吸収性
を高めるために、三井東圧化学社製アントラキノン系染
料SIR−144を5%添加したポリスチレン被膜を用
いたものである。第1実施例と同様に樹脂膜をパターニ
ングし、レーザ照射によって樹脂製天板を溶着したとこ
ろ強固に溶着することができた。
【0078】第7実施例 第1ないし第6実施例の液体噴射記録ヘッドを、そのま
まノリルを成型して作製したインクタンクに熱溶着し
た。このインクタンク内にはインクを吸収保持するため
にウレタン系スポンジを挿入してある。
【0079】これに純水65部、ジエチレングリコール
30部、ダイレクトブラック154を5部混合したイン
クを充填し、第5図に示す液体噴射記録装置によって印
字評価を行なったところ、結果は極めて良好であった。
【0080】図5は本実施の形態による液体噴射記録ヘ
ッドをインクジェットカートリッジ(IJC)として装
着した液体噴射記録装置(IJRA)を示す外観斜視図
である。
【0081】図5において、120は搬送装置であるプ
ラテン124上に送紙されてきた被記録媒体である記録
紙の記録面に対向してインク吐出を行なうノズル群を備
えたインクジェットカートリッジ(IJC)である。1
16はIJC120を保持するキャリッジHCであり、
駆動モーター117の駆動力を伝達する駆動ベルト11
8の一部と連結し、互いに平行に配設された2本のガイ
ドシャフト119Aおよび119Bと摺動可能とするこ
とによりIJC120の記録紙の全幅にわたる往復移動
が可能となる。
【0082】126はヘッド回復装置であり、IJC1
20の移動経路の一端、例えばホームポジションと対向
する位置に配設される。伝動機構123を介したモータ
ー122の駆動力によって、ヘッド回復装置126を動
作せしめ、IJC120のキャッピングを行なう。この
ヘッド回復装置126のキャップ部126AによるIJ
C120へのキャッピングに関連させて、ヘッド回復装
置126内に設けた適宜の吸引手段によるインクの吸引
もしくはIJC120へのインク供給経路に設けた適着
の加圧手段によるインク圧送を行ない、インクを吐出口
より強制的に排出させることによりノズル(液流路)内
の増粘インクを除去する等の吐出回復処理を行なう。ま
た、記録終了時等にキャッピングを施すことによりIJ
C120が保護される。
【0083】130はヘッド回復装置126の側面に配
設され、シリコンゴムで形成されるワイピング部材とし
てのブレードである。ブレード130はブレード保持部
材130Aにカンチレバー形態で保持され、ヘッド回復
装置126と同様、モーター122および伝動機構12
3によって動作し、IJC120の吐出面との係合が可
能となる。これにより、IJC120の記録動作におけ
る適切なタイミングであるいはヘッド回復装置126を
用いた吐出回復処理後に、ブレード130をIJC12
0の移動経路中に突出させ、IJC120の移動動作に
伴ってIJC120の吐出面における結露、濡れあるい
は塵等をふきとるものである。
【0084】本発明は、特に液体噴射記録方式の中で熱
エネルギーを利用して飛翔液滴を形成し、記録を行な
う、いわゆるインクジェット記録方式の記録ヘッド、記
録装置において、優れた効果をもたらすものである。
【0085】その代表的な構成や原理については、例え
ば、米国特許第4723129号明細書、同第4740
796号明細書に開示されており、本発明はこれらの基
本的な原理を用いて行なうものが好ましい。この記録方
式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のい
ずれにも適用可能である。
【0086】この記録方式を簡単に説明すると、記録液
(インク)が保持されているシートや液流路に対応して
配置されている吐出エネルギー発生手段である電気熱変
換素子に駆動回路より吐出信号を供給する、つまり、記
録情報に対応して記録液(インク)に核沸騰現象を越
え、膜沸騰現象を生じるような急速な温度上昇を与える
ための少なくとも一つの駆動信号を印加することによっ
て、熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面
に膜沸騰を生じさせる。このように記録液(インク)か
ら電気熱変換素子に付与する駆動信号に一対一に対応し
た気泡を形成できるため、特にオンデマンド型の記録法
には有効である。この気泡の成長、収縮により吐出口を
介して記録液(インク)を吐出させて、少なくとも一つ
の滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、
即時適切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答
性に優れた記録液(インク)の吐出が達成でき、より好
ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許
第4463359号明細書、同第4345262号明細
書に記載されているようなものが適している。なお、上
記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第43
13124号明細書に記載されている条件を採用する
と、さらに優れた記録を行なうことができる。
【0087】記録ヘッドの構成としては、上述の各明細
書に開示されているような吐出口、液流路、電気熱変換
素子を組み合わせた構成(直線状液流路又は直角液流
路)の他に、米国特許第4558333号明細書、米国
特許第4459600号明細書に開示されているよう
に、熱作用部が屈曲する領域に配置された構成を持つも
のにも本発明は有効である。
【0088】加えて、複数の電気熱変換素子に対して、
共通するスリットを電気熱変換素子の吐出口とする構成
を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネル
ギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成
を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた
構成を有するものにおいても本発明は有効である。
【0089】さらに、本発明が有効に利用される記録ヘ
ッドとしては、記録装置が記録可能である被記録媒体の
最大幅に対応した長さのフルラインタイプの記録ヘッド
がある。このフルライン記録ヘッドは、上述した明細書
に開示されているような記録ヘッドを複数組み合わせる
ことによってフルライン構成にしたものや、一体的に形
成された一個のフルライン記録ヘッドであってもよい。
【0090】加えて、装置本体に装着されることで、装
置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給
が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あ
るいは記録ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッ
ジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効で
ある。
【0091】また、記録ヘッドに対する回復手段や予備
的な補助手段を付加することは、記録装置を一層安定に
することができるので好ましいものである。これらを具
体的に挙げれば、記録ヘッドに対しての、キャッピング
手段、クリーニング手段、加圧または吸引手段、電気熱
変換素子あるいはこれとは別の加熱素子、あるいはこれ
らの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出
を行なう予備吐出モード手段を付加することも安定した
記録を行なうために有効である。
【0092】さらに、記録装置の記録モードとしては黒
色等の主流色のみを記録するモードだけではなく、記録
ヘッドを一体的に構成したものか、複数個の組み合わせ
で構成したものかのいずれでもよいが、異なる色の複色
カラーまたは、混色によるフルカラーの少なくとも一つ
を備えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0093】本発明において、上述した各インクにたい
して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行する
ものである。
【0094】さらに加えて、インクジェット記録装置の
形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出
力端末として用いられるものの他、リーダ等と組み合わ
せた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミ
リ装置の形態を採るものであってもよい。
【0095】以上説明した本発明の実施の形態において
は、インクを液体として説明しているが、室温やそれ以
下で固化するインクであって、室温で軟化もしくは液体
となるもの、あるいは、インクジェットにおいて一般的
に行なわれている温度調整の温度範囲である30℃以上
70℃以下の温度範囲で軟化もしくは液体となるもので
もよい。すなわち、使用記録信号付与時にインクが液状
をなすものであればよい。加えて、積極的に熱エネルギ
ーによる昇温をインクの固形状態から液体状態への態変
化のエネルギーとして使用せしめることで防止するか、
または、インクの蒸発防止を目的として放置状態で固化
するインクを用いるかして、いずれにしても熱エネルギ
ーの記録信号に応じた付与によってインクが液化してイ
ンク液状として吐出するものや記録媒体に到達する時点
ではすでに固化し始めるもの等のような、熱エネルギー
によって初めて液化する性質のインク使用も本発明には
適用可能である。このような場合インクは、特開昭54
−56847号公報あるいは特開昭60−71260号
公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通
孔に液状または固形物として保持された状態で、電気熱
変換素子に対して対向するような形態としてもよい。本
発明においては、上述した各インクに対して最も有効な
ものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0096】
【発明の効果】本発明は上述のとおり構成されているの
で、次に記載するような効果を奏する。
【0097】耐アルカリ性にすぐれており、従って強ア
ルカリ特性を有するインクを用いることができるうえ
に、吐出性能等の信頼性の高い液体噴射記録ヘッドを実
現できる。このような液体噴射記録ヘッドを搭載するこ
とで、液体噴射記録装置の高性能化に大きく貢献でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態による液体噴射記録ヘッドの主要
部を示すもので、(a)は樹脂製天板の一部を破断して
示す一部破断斜視図、(b)は(a)の一部分を示す部
分断面図である。
【図2】レーザ光による溶着方法を説明する図である。
【図3】別の溶着方法を説明する図である。
【図4】2つの変形例による液体噴射記録ヘッドの一部
分をそれぞれ示す部分断面図である。
【図5】液体噴射記録装置を説明する図である。
【図6】一従来例による液体噴射記録ヘッドを説明する
図である。
【図7】図6の装置を示す断面図である。
【図8】図6の液体噴射記録ヘッドをカートリッジに組
み付けた状態を示すものである。
【図9】別の従来例を説明する図である。
【符号の説明】
1,31,41 基板 1b 電気熱変換素子 2,32,42 樹脂製天板 2a 液流路 2b 吐出口 33,43 樹脂膜

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 吐出エネルギー発生手段を備えた基板
    と、液流路を備えた液流路形成層を有し、前記基板と前
    記液流路形成層が、両者の対向面を溶着させることによ
    って一体化されていることを特徴とする液体噴射記録ヘ
    ッド。
  2. 【請求項2】 基板と液流路形成層の間に樹脂膜が介在
    していることを特徴とする請求項1記載の液体噴射記録
    ヘッド。
  3. 【請求項3】 樹脂膜に、光を吸収しやすい物質が添加
    されていることを特徴とする請求項2記載の液体噴射記
    録ヘッド。
  4. 【請求項4】 基板に、光に対する反射率の低い被膜が
    設けられていることを特徴とする請求項1ないし3いず
    れか1項記載の液体噴射記録ヘッド。
  5. 【請求項5】 基板に、5酸化タンタルの被膜が設けら
    れていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1
    項記載の液体噴射記録ヘッド。
  6. 【請求項6】 吐出エネルギー発生手段を備えた基板
    と、液流路を備えた液流路形成層を重ねて両者の対向面
    を溶着させる工程を有する液体噴射記録ヘッドの製造方
    法。
  7. 【請求項7】 基板と液流路形成層を光によって溶着さ
    せることを特徴とする請求項6記載の液体噴射記録ヘッ
    ドの製造方法。
  8. 【請求項8】 光がレーザ光であることを特徴とする請
    求項7記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  9. 【請求項9】 基板に、光に対する反射率の低い被膜を
    設けておくことを特徴とする請求項7または8記載の液
    体噴射記録ヘッドの製造方法。
  10. 【請求項10】 基板と液流路形成層の少なくとも一方
    に樹脂膜を設けておくことを特徴とする請求項6ないし
    9いずれか1項記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  11. 【請求項11】 樹脂膜に、光を吸収しやすい物質を添
    加しておくことを特徴とする請求項10記載の液体噴射
    記録ヘッドの製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項1ないし5いずれか1項記載の
    液体噴射記録ヘッドと、該液体噴射記録ヘッドの吐出エ
    ネルギー発生手段に電気信号を供給する手段と、前記液
    体噴射記録ヘッドに対向するように被記録媒体を搬送す
    る搬送装置を有する液体噴射記録装置。
JP10172244A 1998-06-04 1998-06-04 液体噴射記録ヘッドおよびその製造方法ならびに前記液体噴射記録ヘッドを搭載する液体噴射記録装置 Pending JPH11348291A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1314540C (zh) * 2003-08-19 2007-05-09 佳能株式会社 喷墨记录头及其制造方法
WO2008038452A1 (fr) * 2006-09-27 2008-04-03 Shinmaywa Industries, Ltd. dispositif de fusion d'ÉlÉments en verre et systÈme de fusion du verre l'utilisant
JP2014216451A (ja) * 2013-04-25 2014-11-17 株式会社リコー 積層基板、圧電素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置

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