JPH11188882A - 液体噴射記録ヘッドおよびその製造方法 - Google Patents

液体噴射記録ヘッドおよびその製造方法

Info

Publication number
JPH11188882A
JPH11188882A JP9367899A JP36789997A JPH11188882A JP H11188882 A JPH11188882 A JP H11188882A JP 9367899 A JP9367899 A JP 9367899A JP 36789997 A JP36789997 A JP 36789997A JP H11188882 A JPH11188882 A JP H11188882A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
discharge port
laser
port plate
recording head
jet recording
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9367899A
Other languages
English (en)
Inventor
Toshinori Hasegawa
利則 長谷川
Masaki Inaba
正樹 稲葉
Masafumi Takimoto
雅文 瀧本
Masaaki Furukawa
雅朗 古川
Akira Goto
顕 後藤
Yoshinori Ito
美紀 伊東
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP9367899A priority Critical patent/JPH11188882A/ja
Publication of JPH11188882A publication Critical patent/JPH11188882A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Laser Beam Processing (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 吐出口プレートにおける吐出口の吐出面側の
開口面積を大きくするとともに吐出口周辺の表面性状を
変化させて、液滴の吐出方向の安定化を特別な工程を設
けることなく実現し、製造のスループットを向上させ
て、印字特性を良好なものとすることができる液体噴射
記録ヘッドの製造方法を提供する。 【解決手段】 コヒーレントなレーザ光Lの照射により
吐出口23となる穴を一括アブレーション加工する際
に、吐出口プレート21の吐出面側にレーザ光Mを照射
して、吐出口プレート21の吐出面側の部位24を削り
取って吐出口形成部位の厚さを薄くし、同時に吐出口プ
レート21の吐出面の表面性状を変化させ、さらに吐出
口形成時に発生する副生成物の付着を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザ光の照射に
よる溝加工や穴あけ加工等によって樹脂製天板に液流路
や吐出口を作製する液体噴射記録ヘッドの製造方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】インク等の記録液を微細な吐出口(オリ
フィス)から飛翔液滴として吐出させて記録紙等の被記
録媒体に記録あるいは印刷を行なう液体噴射記録ヘッド
は、複数の吐出エネルギー発生素子とそのリード電極を
有する基板(ヒーターボード)を有し、この基板上に液
流路(ノズル)や共通液室を形成する樹脂製のノズル層
(液流路形成層)を積層した上で、記録液の供給管を備
えたガラス製の天板を重ねたものが一般的であったが、
最近では、ガラス製の天板を省略し、液流路および共通
液室に加えて記録液の供給管等を一体的に設けて樹脂製
の天板を射出成形等によって一体成型し、次いで吐出口
を加工形成した後に、この天板を弾性部材によって基板
に押圧して一体化した液体噴射記録ヘッドが開発されて
いる。このような液体噴射記録ヘッドは、組立て部品点
数が大幅に低減され、かつ組立て工程もきわめて簡略化
されるために、液体噴射記録装置の低コスト化に大きく
貢献するものとして期待されている。
【0003】このように形成された樹脂製天板を用いた
液体噴射記録ヘッドの基本的態様を図11に図示する。
図11において、樹脂製天板の一部を破断して示す液体
噴射記録ヘッドEoは、吐出エネルギー発生素子として
の複数の電気熱変換素子101aを有する基板101
と、各電気熱変換素子101a上に位置する液流路10
2fとこれに連通する共通液室102cを備えた樹脂製
天板102を有し、樹脂製天板102には、各液流路1
02fに連通する吐出口(オリフィス)102gを有す
る吐出口プレート部102bと、共通液室102cに開
口する液供給口102eを有する筒状突出部102dが
一体的に設けられている。
【0004】このように液流路102fおよび共通液室
102cに加えて吐出口プレート部102bと筒状突出
部102dを有する樹脂製天板ブランク(粗成形品)を
射出成形等によって一体的に形成し、次いで吐出口10
2gを加工形成した後、複数の液流路102fが基板1
01の電気熱変換素子101a上にそれぞれ位置するよ
うに樹脂製天板102を位置決めしたうえで、図示しな
い弾性部材によって天板102を基板101に押圧し、
これと一体的に結合させている。基板101は、各電気
熱変換素子101aに電気信号を発生する駆動回路を搭
載した配線基板103とともにベースプレート104上
にビス止め等の公知の方法で固着される。
【0005】また、液流路102fを設ける前の本体部
分102aと吐出口102gを設ける前の吐出口プレー
ト102b等からなるブランク(粗成形品)を射出成形
によって一体成形したうえで、エキシマレーザ光を用い
て樹脂製天板102の本体部分102aに液流路102
fを溝加工し、同様にエキシマレーザ光を用いて吐出口
プレート102bに各吐出口102gを穴あけ加工する
ことによって、樹脂製天板102を作製する方法も開発
されている。
【0006】このように、射出成形とレーザ加工とを組
み合わせることによって、樹脂製天板を安価に製造する
ことができるため、液体噴射記録ヘッドの低コスト化を
一層促進できる。なお、射出成形によって得られるブラ
ンクにレーザ光を照射して溝加工や穴あけ加工を施すた
めのレーザ加工装置は、エキシマレーザが適しており、
一般的に、レーザ光源としてのレーザ発振器と、液体噴
射記録ヘッドの液流路や吐出口の加工形成用の開口パタ
ーンを有するマスクと、レーザ光によってマスクの開口
パターンをブランクに投影する光学系を備えている。
【0007】ところで、液体噴射記録ヘッドにおいて
は、実際に記録を実行する場合、記録信号に応答して吐
出される主たるインク液滴に付随して、該主たるインク
液滴に遅れて吐出口から飛翔する微小なインク液滴が発
生する場合がある。また、主たるインク液滴が記録紙に
着弾した時、その着弾の際にインクが跳ね返る現象が生
じ、極めて微細なインク液滴が記録領域中に発生する場
合もある。こうした微小インク(以下、インクミストと
もいう。)が発生すると液体噴射記録ヘッドの吐出口周
辺に付着し、インクの液溜まりが生じることがしばしば
ある。こうした液溜まりの発生は、吐出口からのインク
液滴の吐出を不安定にしたり、インクの不吐出を引き起
こす等の問題の発生につながることが知られている。
【0008】従来、こうした問題を解決するために、特
開平4−211959号公報に開示されているように、
吐出口が設けられた吐出口面に撥水処理を施すことが行
われている。図12に、吐出口面に撥水処理を施した液
体噴射記録ヘッドを模式的に図示する。
【0009】図12において、110は液供給口11
1、吐出口112、液室、液流路および吐出口プレート
113等が形成されている天板、116は記録液を吐出
口113から吐出させるための吐出エネルギー発生素子
を有する基板であり、114は吐出口112が設けられ
た吐出口面であって、撥水膜115は図12においては
吐出口面114のほぼ全面に形成されている。このよう
に吐出口面114のほぼ全面に撥水膜115を形成した
場合、吐出口112の周辺部分にはインクの滞留が少な
くなり、前述した記録液の不安定吐出等の問題はある程
度改善される。
【0010】しかし、連続した長期間の高周波駆動で、
高印字スピードでかつ高デューティーで記録を実行する
場合には、発生するインクミストの量が多く、吐出口面
にインクの液滴が次第に滞留するようになる。そのた
め、特開平6−210859号公報に記載されているよ
うに、液体噴射記録ヘッドの吐出口面に対し、吐出口か
ら所定距離隔てた箇所に吐出口の配列方向に沿った帯状
親水領域を形成する方法が知られている。この帯状親水
領域は、吐出口面に形成された撥水膜へ吐出側からレー
ザ光を照射して、吐出口プレートの表面を削りとること
によって、撥水膜の一部をともに取り去ることで、その
側面および底面領域が親水領域とされた溝状の構造を形
成している。このように、吐出口面に撥水および親水処
理が施された液体噴射記録ヘッドを図13に模式的に図
示する。
【0011】図13において、110および116は、
図12と同様に、吐出口プレート113を有する天板お
よび吐出エネルギー発生素子を有する基板であり、11
4は吐出口112が設けられた吐出口面である。吐出口
面114には、撥水性領域120と親水性領域121が
形成されており、このように親水性領域121を吐出口
112の配列方向に沿った帯状の溝として設けることに
よって、吐出口近傍に付着したインクミストの存在を除
去するとともに、吐出口面に付着したインクミストの成
長を抑制し、インクの吐出を安定化させるようにしてい
る。
【0012】ところで、前述したようにレーザ光を用い
て吐出口となる穴を加工形成する場合に、加工時に発生
する副生成物がその加工表面に付着する。これにより、
副生成物が付着した吐出口周辺部の部位の表面エネルギ
ーが高くなり、インク等の記録液に対する濡れ性が高く
なり、すなわち表面が親水性となる。
【0013】副生成物による樹脂表面エネルギーの上昇
すなわち親水化をさけるため、エキシマレーザにより樹
脂製ブランクに溝や穴の加工形成を施した後に、吐出口
(オリフィス)の周囲に付着した副生成物を除去する方
法は、特開平4−279356号公報等に開示されてお
り、副生成物を除去するために、加熱処理を行なう、超
音波洗浄を行なう、超音波水流による洗浄を行なう、高
圧水流による洗浄を行なう、粘着テープによる貼る剥が
すを繰り返す手法などの方法が知られている。
【0014】また、特開平4−279355号公報に記
載されているように、樹脂表面に予めレジスト等をコー
ティングしておき、エキシマレーザにより樹脂製ブラン
クに吐出口となる穴の加工を施した後に、現像液により
副生成物ごとレジストを洗浄、除去することにより、副
生成物を除去する方法も知られている。さらに、特開平
5−138888号公報に記載されているように、エキ
シマレーザにより樹脂製ブランクに吐出口となる穴の加
工を行なうと同時に、吐出口プレートの穴を貫通したレ
ーザ光が出射してくる側にエキシマレーザ光を照射し、
副生成物の吐出口プレート表面への付着を防止するよう
になし、液体噴射記録ヘッドの不具合である不吐出や印
字よれの原因となる副生成物の吐出口プレートへの付着
を防止する方法などが知られている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】ところで、インク等の
記録液を吐出するための吐出口をレーザ光の照射等によ
って加工する液体噴射記録ヘッドにおいては、吐出口の
加工精度がその印字品位や印字性能に大きく影響する。
そこで、吐出口の吐出面側の開口面積をある程度大きく
しかつ吐出液滴の吐出方向を安定させることが重要とな
る。
【0016】しかしながら、上記の従来技術のようにブ
ランクを射出成形等により作製する手法では、吐出口を
形成する吐出口プレートを薄く成形することはその樹脂
成形上の精度から難しく、また、レーザ光の照射による
貫通穴あけ加工においては、レーザ光の出射側の開口面
積が入射側の開口面積に対して小さくなるようなテーパ
形状の穴となる。そのため、厚く成形された吐出口プレ
ートに所望の大きな開口面積を有する吐出口をレーザ加
工することは難しい。そこで、所望の吐出口径を得るた
めに、高い出力のレーザ光を長時間照射して、貫通穴あ
け加工を行なっているけれども、高い出力のレーザ光を
長時間照射することは、樹脂ブランクに変形等の悪影響
を及ぼすために、形状精度のよい吐出口を形成すること
ができなかった。
【0017】そのため、レーザ光を照射することによ
り、厚く成形された吐出口プレートを薄く削る加工がで
きれば、大きな面積を有する吐出口の形成が容易に行な
えるようになる。しかし、吐出口プレートをレーザ光に
より薄く削る場合、吐出口プレート上の領域別にそれぞ
れの化学的な表面性状を変化させることが必要となる。
そのため、レーザ光により吐出口プレートを薄く削る工
程に加えて、吐出口プレート全面に撥水層を形成する工
程、および、その撥水層の一部に対しレーザ光を照射し
て、撥水層を吐出口プレート表面ごと削り取り親水性を
発現させる工程等が、必要となる。
【0018】また、レーザ光によりブランクに吐出口と
なる穴の形成を施した後に、吐出口周辺部に付着する副
生成物により、表面エネルギーが上昇する問題を解決す
るためにも別の工程が必要となる。
【0019】このように副生成物を除去するために、特
に、加熱処理を施し、副生成物を除去する方法では、1
20℃1時間という高温かつ長時間の処理が必要とな
る。また、超音波洗浄や超音波水流による手法の場合
は、処理後ブランクを乾燥させる工程が必要であるとと
もに僅かな超音波発生条件の変動で吐出口となる微細な
穴を形成した吐出口プレートにクラックが入り製品機能
上問題となる。洗浄粘着テープを用いてブランクの表面
に付着した副生成物を除去する場合も、副生成物除去専
用の工程を設ける必要が生じる。また、レジストを予め
塗布しておきレーザ光により加工した後に現像しレジス
トごと副生成物を除去する手法においてもレジストの現
像および洗浄の工程が必要となる。
【0020】また、エキシマレーザによりブランクに吐
出口の形成を行なう際に、レーザ光が出射してくる側の
面に、エキシマレーザ光を照射する手法では、吐出口プ
レートを薄く削り、加工の際発生する副生成物の吐出口
周辺への付着は防ぐことができるが、吐出口プレート表
面を予め撥水処理した撥水層も削ることになるため、吐
出口近傍にある樹脂の表面エネルギーが上昇し、液体と
ブランクのインタラクトが強まる。すなわち、液体噴射
記録ヘッドの不具合である不吐出や印字よれの原因とな
り、製品機能上問題となった。
【0021】このような厚く成形された吐出口プレート
に開口面積の大きな吐出口を容易に形成する手法を開発
するためには、吐出口プレートをレーザ光で薄く削る必
要があり、そのため、薄く削った吐出口プレートの表面
エネルギーを部分的に変化させなければならない。この
ように、厚い吐出口プレートにレーザ光で吐出口を形成
する場合、いくつかの別の工程を設ける必要があった。
そのため製品製造のスループットが著しく低下するとい
う未解決の課題があった。
【0022】そこで、本発明は、上記の従来技術の有す
る未解決の課題に鑑みてなされたものであって、ブラン
クの吐出口プレートに対しレーザ光を照射し、吐出口プ
レートを薄く削る加工を行なうと同時に、吐出口プレー
トの表面エネルギーを部分的に変化させ、液滴の吐出の
安定化を特別な工程を設けることなく実現し、製品製造
のスループットを向上させることができる液体噴射記録
ヘッドの製造方法、ならびに該製造方法により製造され
印字特性の良好な液体噴射記録ヘッドを提供することを
目的とするものである。
【0023】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法は、コヒー
レントなレーザ光を光源とし、マスクを使用し、該マス
クの像を光学系を用いて加工対象としての粗成形品に投
影し、液流路となる溝および吐出口となる穴を一括アブ
レーション加工する液体噴射記録ヘッドの製造方法にお
いて、前記加工対象が有する吐出口プレートの出射側に
なる面にレーザ光を照射し、吐出口プレートを薄く削る
加工を施すことを特徴とする。
【0024】そして、本発明の液体噴射記録ヘッドの製
造方法においては、吐出口プレートの出射側になる面に
レーザ光を照射し、吐出口プレートの表面性状を変化さ
せることが好ましい。
【0025】また、本発明の液体噴射記録ヘッドの製造
方法においては、吐出口プレートの出射側になる面へ照
射するレーザ光として、吐出口が一括アブレーションに
より貫通加工された後に、該吐出口を通過してくるレー
ザ光を用いることができ、また、レーザ発振器と加工対
象との間に設けられた光学系内に置かれたレーザマスク
における反射光を用いることができ、あるいはまた、吐
出口を一括アブレーション加工するために照射するレー
ザ光とは別のレーザ発振器から照射されるレーザ光を用
いることもできる。
【0026】本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法に
おいては、吐出口プレートの出射側になる面へのレーザ
光の照射を、レーザ光による吐出口の一括アブレーショ
ン加工が完了する前から、あるいは一括アブレーション
加工が完了した後に、行なうことができる。
【0027】さらに、本発明の液体噴射記録ヘッドの製
造方法においては、吐出口プレートの出射側になる面に
レーザ光を照射するとともに、酸素ガスまたはテトラフ
ルオロメタン等のフッ素原子を構造中にもつガス状分子
を吹き付けて加工し、吐出口プレートの表面性状を変化
させることが好ましい。
【0028】そして、本発明の液体噴射記録ヘッドの製
造方法においては、コヒーレントなレーザ光の光源とし
ては紫外線レーザが好適であり、エキシマレーザまたは
YAGレーザが適している。
【0029】上記目的を達成するため、本発明の液体噴
射記録ヘッドは、請求項1ないし13のいずれか1項記
載の液体噴射記録ヘッドの製造方法によって製造された
ことを特徴とする。
【0030】
【作用】本発明によれば、加工対象にレーザ光を照射し
吐出口となる穴を一括アブレーション加工する際に、吐
出口プレートの出射側になる面(液体吐出面)にレーザ
光を照射し、吐出口プレートを薄く削る加工処理、吐出
口プレートの表面性状を変化させる処理および吐出口形
成時に発生する副生成物の吐出口近傍への付着を防止す
る処理を施すことにより、吐出口開口面積を大きくする
ことができ、これにより、飛翔される液滴は大きく、か
つその飛翔液滴の吐出方向は安定し、そして印字につい
ても良好な結果を得ることができる。また、従来特別な
工程で行なっていた副生成物の除去や吐出口周辺部の表
面性状の変化を、吐出口加工と同時に行なえるため、製
品製造のスループットが向上し、製品の製造コストを低
減することができる。
【0031】さらに、上記の加工処理とともに酸素ガス
あるいはフッ素原子を構造中に有するガス状分子を吹き
付けることにより、吐出口プレートの削り取った部分の
中の特定の局部的な部位の表面性状を変化させることが
でき、液滴の吐出を安定させることができ、良好な印字
特性を得ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づ
いて説明する。
【0033】図1は、本発明の液体噴射記録ヘッドの製
造方法を適用する液体噴射記録ヘッドを説明するもので
あり、液体噴射記録ヘッドは、吐出エネルギー発生素子
としての電気熱変換素子1bを複数有する基板1(図1
の(c)参照)と樹脂製天板2(図1の(b)参照)と
から構成され、樹脂製天板2は、共通液室2cと記録液
受け口2eと液流路形成面2dからなる天板本体2aお
よび吐出口2gを形成する吐出口プレート2bを有する
樹脂製の粗成形品である(天板)ブランク2o(図1の
(a))を公知の射出成形等によって一体成形し、この
天板ブランク2oの液流路形成面2dに対してレーザ光
の照射による溝加工によって液流路2fを形成し、さら
に吐出口プレート2bに対してレーザの照射による穴加
工によって液流路2fに連通する吐出口2gを形成して
作製されている。このようにして得られた樹脂製天板2
を、表面1aに吐出エネルギー発生素子としての電気熱
変換素子1bを複数有する基板1に位置合わせして接合
し、液体噴射記録ヘッドを作製している。
【0034】このような溝加工および穴加工に用いるレ
ーザ加工装置は、図2に示すように、コヒーレントなレ
ーザ光Lを発生する光源となるレーザ発振器10と、レ
ーザ発振器10から照射されるレーザ光Lの発振電圧や
発振周波数を変更させるコントローラ11、溝加工用お
よび/または穴加工用の開口パターンを有するマスク1
2と、レーザ光Lの光軸方向前後自由にマスクを移動さ
せる移動駆動装置13と、この移動駆動装置13を制御
するコントローラ14と、前記マスク12の開口パター
ンを被加工物W(天板ブランク2o)に投影するための
投影光学系15と、レーザ光Lの光軸のまわりに投影光
学系15を回転させる回転駆動装置16と、この回転駆
動装置16を制御するコントローラ17を備えている。
被加工物W(天板ブランク2o)は、コントローラ19
によって制御される移動ステージ18によってレーザ光
Lの光軸(X軸)に垂直な平面(YZ平面)内で位置決
めされる。
【0035】マスク12として、液流路を形成するため
の溝加工用の開口パターンを有するもの、吐出口を形成
するための穴加工用の開口パターンを有するもの、ある
いは液流路を形成するための溝加工用と吐出口を形成す
るための穴加工用の両方の開口パターンを有するもの等
を用いることができる。
【0036】マスク12の移動駆動装置13は、ステッ
ピングモータあるいはサーボモータ等のモータを用いた
駆動機構を有しており、コントローラ14により、マス
ク12をレーザ光Lの光軸上、溝加工用および/または
穴加工用の開口パターン配列方向(Y軸)、またはレー
ザ光Lの光軸を中心とする回転方向に自由に任意の方向
へミクロン単位の精度で、動かすことができる。また、
マスク12の移動についても、ある一定速度での連続移
動あるいはある間欠をおいての移動を必要に応じて選択
することができる。
【0037】また、コンピュータ等を用いることで、レ
ーザ発振器10および各移動駆動装置13、16、18
を制御するためのコントローラ11、14、17、19
を一つにまとめて制御してもよい。
【0038】マスク12を通過した液流路形成用または
吐出口形成用のレーザ光Lは、被加工物Wである天板ブ
ランク2o(以下、単にブランク2oともいう。)を瞬
時にアブレーション加工する。このとき、所望する加工
寸法および加工ピッチの溝や穴を得るために、そして吐
出口の所望の開口面積を得るために、さらに加工時間を
短くするために、単位時間当たり高いエネルギー密度の
レーザ光を照射する必要がある。例えば、単位時間当た
り1J/cm2 のレーザエネルギー密度で、レーザ発振
周波数を200Hzとしたレーザ光で加工した場合、数
秒間のレーザ照射で大きな面積を有した吐出口の加工が
完了となる。なお、このようなレーザ加工装置を用い
て、レーザ光をブランクに対して照射して吐出口となる
穴を加工する際には、副生成物が発生する。
【0039】図3は、図1に図示する天板の吐出口プレ
ート2bを拡大して示し、本発明の液体噴射記録ヘッド
の製造方法に基づいて吐出口が加工されている状態を図
示する概略図である。
【0040】図3において、Lは図2に図示するレーザ
加工装置における吐出口形成用のレーザ光、Mは吐出口
プレートの吐出表面を削り取るためのレーザ光であり、
21は天板の吐出口プレートであり、液体吐出表面側に
はレーザ加工前に撥水層22が形成されている。撥水剤
としてサイトップ(商品名、旭ガラス(株)製)を用
い、吐出口プレート21にサイトップを塗布した後、1
20℃で1時間熱処理し、撥水層22を形成した。23
はレーザ光Lの照射によって加工形成される吐出口であ
り、24は吐出口プレート21のレーザ光Mによって除
去された部位で、25はレーザ光M照射用のレーザマス
クである。
【0041】本実施例においては、吐出口プレート21
の撥水層22が形成されていない面側からマスク(図3
には図示しない)を通過したレーザ光Lを入射させて、
レーザ光Lの照射によりアブレーション加工し、吐出口
プレート21に吐出口23を形成する。そして、その際
に、レーザ光Mを、吐出口形成用レーザ光Lの出射側と
なる面側、すなわち撥水層22を設けた吐出面側からマ
スク25を介して吐出口を形成する部位の吐出口プレー
ト21の吐出面に照射する。このレーザ光Mの照射によ
り吐出口プレート21の吐出面の表面が薄く削られる。
【0042】これにより、吐出口23を形成する部位の
吐出口プレート21の吐出面が削られるために、吐出口
23を形成する部位の吐出口プレート21は薄くなり、
樹脂成形により吐出口プレート21が厚く形成されてい
ても、レーザ光Lにより大きな開口面積を有する吐出口
23を加工することができる。
【0043】そこで、このように加工された天板を用い
て液体噴射記録ヘッドを製作し、これをプリンタに装着
して、吐出液滴の観察ならびに記録紙への記録を行なっ
たところ、吐出口プレート部を薄く削る加工処理を施さ
ない従来の液体噴射記録ヘッドに対して、吐出口の開口
面積が大きいために飛翔される液滴が大きく、吐出方向
が安定し、また印字についても良好な結果が得られた。
【0044】次に、図2に図示するレーザ加工装置によ
り吐出口を加工する際に、吐出口プレートの吐出面に対
してレーザ光を照射して吐出口プレートの表面性状を変
化させる態様を図4に基づいて説明する。
【0045】図4は、図1に図示する天板の吐出口プレ
ート2bを拡大して示し、吐出口が加工されている状態
を図示する概略図である。
【0046】図4において、Lは吐出口形成用のレーザ
光、Nは吐出口プレートの表面性状を変化させる処理用
のレーザ光であり、26は吐出口プレート21における
レーザ光Nによってその表面性状が変化した部位で、2
7はレーザ光N照射用のレーザマスクである。なお、図
中21、22、23は図3に図示する実施例と同様な部
材であり、それぞれ吐出口プレート、撥水層、吐出口で
ある。
【0047】レーザマスク27を通過したレーザNの照
射により、レーザ光が照射された部位の吐出口プレート
表面26を酸化させ、あるいはその部位26の表面粗さ
を変化させることで、吐出口プレートの表面エネルギー
を高める、すなわち、表面の親水性を向上させることが
できる。またレーザ光Nが照射された部位26の吐出口
23に対する相対位置は、レーザマスク27により任意
に設定することができる。すなわち、吐出口23周辺部
において、その表面エネルギーを上昇させることがレー
ザマスク27を用いることで容易に行なえる。さらに、
表面エネルギーを異にする領域の寸法は、レーザマスク
を種々作製しておくことで容易に変更可能である。
【0048】以上の構成により、レーザ光により吐出口
プレートを薄く削る追加工を行なった際も、吐出口プレ
ート上の領域別の化学的な表面性状を変化させることが
可能となる。
【0049】次に、本発明の他の実施例を図5に基づい
て説明する。
【0050】図5は、図1に図示する天板の吐出口プレ
ート2bを拡大して示し、吐出口が加工されている状態
を図示する概略図である。
【0051】図5において、Lは吐出口形成用のレーザ
光、Oはレーザ光Lを光学手段を用いて折り返し、吐出
口プレートの吐出面の削りおよび表面性状変化に用いる
レーザ光であり、21、22、23はそれぞれ前述の実
施例のものと同様の吐出口プレート、撥水層、吐出口で
あり、28はレーザ光Oを通過させるレーザマスク、2
9はレーザ光Lを折り返す光学プリズム、30は光学プ
リズム29により折り返されたレーザ光を吐出口プレー
ト21方向に反射させる反射ミラー、31はレーザ光O
による削り取られた吐出口プレートの吐出面の部位であ
り、レーザ光Oによりその表面性状が変化させられてい
る。
【0052】本実施例においては、図2に図示するレー
ザ加工装置により吐出口23を加工する際に、レーザ光
Lにより吐出口プレート21の吐出口23が貫通し始め
ると同時に、貫通したレーザ光Lを光学プリズム29お
よび反射ミラー30等の光学的手段を用いて折り返し、
レーザマスク28を介してレーザ光Oを吐出口プレート
21の吐出面に対して照射する。このようにレーザマス
ク28を通過したレーザ光Oの照射により、レーザ光O
が照射された部位の吐出口プレート21の吐出面31が
削られ、同時に削り取られた部位の表面性状を変化させ
る。
【0053】したがって、樹脂成形により吐出口プレー
トが厚く成形されていても、大きな開口面積を有する吐
出口23を加工することができる。また、この折り返し
レーザ光Oを吐出口プレート21に照射することで、吐
出口プレート21の削り取られた部位31の表面を酸化
させ、また吐出口プレート21の一部分を削り落とすた
め、表面粗さが変化する。すなわち、吐出口プレートの
表面エネルギーが高まる。これにより、吐出口プレート
の表面の親水性を向上させることができる。
【0054】さらに、折り返しレーザ光Oを吐出口プレ
ート21に照射することで、レーザ光Lにより、吐出口
23を形成するときに発生する副生成物が吐出口23の
周辺部に付着することを防止できる。
【0055】加えて、折り返しレーザ光Oが照射された
部位31の吐出口23に対する相対位置は、レーザマス
ク28により任意に設定することができる。すなわち、
吐出口23周辺部は、表面エネルギーを低くしておき、
その外周部のみ表面エネルギーを上昇させることがレー
ザマスク28を用いることで容易に行なえる。さらに、
表面エネルギーが違う領域の寸法は、レーザマスクを種
々作製しておくことで容易に変更可能である。
【0056】さらに、本発明の他の実施例を図6に基づ
いて説明する。
【0057】図6において、Lはレーザ発振器10から
発振された吐出口形成用のレーザ光、Pはレーザ光Lが
通過する光学系の途中に設置されたマスク12の反射レ
ーザ光であって、光学手段を用いて、吐出口プレートの
吐出口面を照射するように導き、吐出口プレート削りお
よび表面性状変化に用いるレーザ光である。21、2
2、23はそれぞれ前述の実施例のものと同様の吐出口
プレート、撥水層、吐出口であり、28はレーザ光Pを
通過させるマスクである。32はレーザ発振器10から
発振されたレーザ光Lを吐出口23を形成するために吐
出口プレート21に対して照射するための光学レンズ系
であり、33(33a、33b、33c)はレーザマス
ク12から反射されたレーザ光Pを吐出口プレート21
表面へ導くための光学レンズ系である。
【0058】図6に図示する実施例においては、図2に
図示するレーザ加工装置により吐出口を加工する際に、
光学レンズ系32の途中に設置されているレーザマスク
12の反射光を用い、その反射レーザ光を光学レンズ系
33a、33b、33c等の光学手段により、吐出口プ
レート21の吐出表面に対して照射する。このようにレ
ーザマスク12により反射されて光学レンズ系33a、
33b、33c等を経てレーザマスク28を通過したレ
ーザ光Pの照射により、レーザ光Pが照射された部位の
吐出口プレート21の吐出面の一部31は削り落とさ
れ、同時に吐出口プレートの表面性状が変化する。
【0059】したがって、樹脂成形により吐出口プレー
トが厚く成形されていても、レーザ光が照射された部位
の吐出口プレート表面31は削られて薄くなり、大きな
開口面積を有する吐出口23を加工することができる。
また、レーザマスク12で反射されたレーザ光Pを吐出
口プレート21の吐出面側に照射することで、吐出口プ
レートの削り取られた部位31の表面を酸化させ、また
吐出口プレート21の一部分31を削り落とすため、表
面粗さが変化する。すなわち、吐出口プレート21の表
面エネルギーが高まる。これにより、吐出口プレートの
表面の親水性を向上させることができる。
【0060】さらに、レーザマスク12で反射されたレ
ーザ光Pを吐出口プレート21の吐出面側に照射するこ
とで、レーザ光Lにより吐出口23を形成するときに発
生する副生成物が吐出口23の周辺部に付着することを
防止できる。
【0061】加えて、レーザ光Pが照射された部位31
の吐出口23に対する相対位置は、レーザマスク28に
より任意に設定することができる。すなわち、吐出口2
3周辺部は、表面エネルギーを低くしておき、その外周
部のみ表面エネルギーを上昇させることがレーザマスク
28を用いることで容易に行なえる。さらに、表面エネ
ルギーが違う領域の寸法は、レーザマスクを種々作製し
ておくことで容易に変更可能である。
【0062】また、本発明のさらに他の実施例を図7に
基づいて説明する。
【0063】図7において、Lはレーザ発振器10から
発振された吐出口形成用のレーザ光であり、Qは吐出口
形成用のレーザ発振器10から発振されたレーザ光Lを
分割したレーザ光であって、吐出口プレート削りおよび
表面性状変化に用いるレーザ光である。21、22、2
3はそれぞれ前述の実施例のものと同様の吐出口プレー
ト、撥水層、吐出口であり、28はレーザ光Qを通過さ
せるレーザマスクである。32はレーザ発振器10から
発振されたレーザ光Lを吐出口23を形成するために吐
出口プレート21に対して照射するための光学レンズ系
であり、34はレーザ発振器10から発振されたレーザ
光を分割するための光学手段であり、35(35a、3
5b、35c)は光学手段34により分割されたレーザ
光Qを吐出口プレート21表面へ導くための光学レンズ
系である。
【0064】図7に図示する実施例において、図2に図
示するレーザ加工装置により吐出口を加工する際に、吐
出口形成用のレーザ発振器10から発振されるレーザ光
Lを光学手段34により分割し、この分割したレーザ光
Qを光学レンズ系35a、35b、35cにより、吐出
口プレート21の吐出表面に対して照射する。このよう
に分割されてレーザマスク28を通過したレーザ光Qの
照射により、レーザ光Qが照射された部位の吐出口プレ
ートの吐出面の一部31が削られ、同時に吐出口プレー
トの表面性状を変化させる。
【0065】したがって、樹脂成形により吐出口プレー
トが厚く成形されていても、レーザ光Qが照射された部
位の吐出口プレート表面31は削られて薄くなり、大き
な開口面積を有する吐出口23を加工することができ
る。
【0066】また、光学手段34で分割されたレーザ光
Qを吐出口プレート21の吐出面側に照射することで、
吐出口プレートの表面を酸化させ、また吐出口プレート
21の一部分31を削り落とすため、表面粗さが変化す
る。すなわち、吐出口プレート21の表面エネルギーが
高まる。これにより、吐出口プレート21表面の親水性
を向上させることができる。
【0067】さらに、光学手段34で分割されたレーザ
光Qを吐出口プレート21に照射することで、レーザ光
Lにより、吐出口23を形成するときに発生する副生成
物が吐出口23の周辺部に付着することを防止できる。
【0068】加えて、レーザ光Qが照射された部位31
の吐出口23に対する相対位置は、レーザマスク28に
より任意に設定することができる。すなわち、吐出口2
3周辺部は、表面エネルギーを低くしておき、その外周
部のみ表面エネルギーを上昇させることがレーザマスク
28を用いることで容易に行なえる。さらに、表面エネ
ルギーが違う領域の寸法は、レーザマスクを種々作製し
ておくことで容易に変更可能である。
【0069】以上のように、図5、図6および図7に図
示する実施例に基づいてそれぞれ加工した天板を用いて
液体噴射記録ヘッドを製作し、これらをプリンタに装着
して、吐出液滴の観察ならびに記録紙への記録を行なっ
た。その結果、全ての実施例のものにおいて、吐出口周
辺部の吐出口プレートの表面を削り落とす処理および表
面エネルギー変化処理を施さない液体噴射記録ヘッドに
対して、吐出口開口面積が大きいため、飛翔される液滴
が大きく、さらに飛翔液滴の吐出方向が安定し、印字に
ついても良好な結果を得た。
【0070】次に、本発明の他の実施例を図8に基づい
て説明する。
【0071】図8において、Lはレーザ発振器10から
発振された吐出口形成用のレーザ光であり、Rは吐出口
形成用のレーザ発振器10とは異なる別の光源36から
発振されたレーザ光であって、吐出口プレート削りおよ
び表面性状変化に用いるレーザ光である。21、22、
23はそれぞれ前述の実施例のものと同様の吐出口プレ
ート、撥水層、吐出口であり、28はレーザ光Rを通過
させるレーザマスクである。32はレーザ発振器10か
ら発振されたレーザ光Lを吐出口23を形成するために
吐出口プレート21に対して照射するための光学レンズ
系であり、37(37a、37b)はレーザ発振器36
から発振されたレーザ光Rを吐出口プレート21表面へ
照射するための光学レンズ系である。
【0072】図8に図示する実施例において、図2に図
示するレーザ加工装置により吐出口を加工する際に、吐
出口形成用のレーザ発振器10とは別のレーザ発振器3
6から発振されるレーザ光Rを光学レンズ系37a、3
7bを経て吐出口プレート21の吐出面に対し照射する
ようにし、レーザマスク28を通過したレーザ光Rの照
射により、このレーザ光が照射された部位の吐出口プレ
ート表面31を削りとり、同時に吐出口プレートの表面
性状を変化させる。
【0073】したがって、樹脂成形により吐出口プレー
トが厚く成形されていても、レーザ光Qが照射された部
位の吐出口プレート21の表面31は削られて薄くな
り、大きな開口面積を有する吐出口23を加工すること
ができる。
【0074】また、レーザ光Rを吐出口プレート21の
吐出面側に照射することで、吐出口プレートの表面を酸
化させ、また吐出口プレート21の一部分31を削り落
とすため、表面粗さが変化する。すなわち、吐出口プレ
ート21の表面エネルギーが高まる。これにより、吐出
口プレート21表面の親水性を向上させることができ
る。
【0075】さらに、レーザ光Rを吐出口プレート21
に照射することで、レーザ光Lにより、吐出口23を形
成するときに発生する副生成物が吐出口23の周辺部に
付着することを防止できる。
【0076】加えて、レーザ光Rが照射された部位31
の吐出口23に対する相対位置は、レーザマスク28に
より任意に設定することができる。すなわち、吐出口2
3周辺部は、表面エネルギーを低くしておき、その外周
部のみ表面エネルギーを上昇させることがレーザマスク
28を用いることで容易に行なえる。さらに、表面エネ
ルギーが違う領域の寸法は、レーザマスクを種々作製し
ておくことで容易に変更可能である。
【0077】そして、このように加工された天板を用い
て液体噴射記録ヘッドを製作し、これをプリンタに装着
して、吐出液滴の観察ならびに記録紙への記録を行なっ
た。その結果、吐出口周辺部の吐出口プレートの表面を
削り落とす処理および表面エネルギー変化処理を施さな
い液体噴射記録ヘッドに対して、吐出口開口面積が大き
いため、飛翔される液滴が大きく、さらに飛翔液滴の吐
出方向が安定し、印字についても良好な結果を得た。
【0078】ところで、図2に図示するレーザ加工装置
により吐出口を加工する際に、上述した図6、図7、あ
るいは図8に図示する実施例のように、レーザ光の照射
による吐出口の加工が完了する前から、吐出口形成用の
レーザ光の照射とは反対側の吐出口プレートの吐出面に
対してレーザ光を照射して、吐出口プレートの一部を削
り、吐出口プレートを薄くする処理と、吐出口プレート
の表面性状を変化させる処理を施すことができる。
【0079】このように、吐出口形成の加工と同時に、
吐出口プレートを削る加工および吐出口プレートの表面
性状を変化させる加工、さらに吐出口近傍に付着する副
生成物を防止する加工が行なえるため、全ての加工処理
に必要な時間を短縮することができる。これにより、液
体噴射記録ヘッドの製造のスループットが向上し、製造
コスト低減に大きく貢献できる利点がある。
【0080】また、図2に図示するレーザ加工装置によ
り吐出口を加工する際に、レーザ光の照射による吐出口
の加工が完了した後に、吐出口形成用のレーザ光の照射
とは反対側の吐出口プレートの吐出面に対して他の手段
を用いてレーザ光を照射して、吐出口プレートの一部を
削り、吐出口プレートを薄くする処理と、吐出口プレー
トの表面性状を変化させる処理を施すこともできる。こ
のようにすることにより、吐出口の加工形成の後に、吐
出口プレートを削る加工および吐出口プレートの表面性
状を変化させる加工、さらに吐出口近傍に付着する副生
成物を防止する加工を行なうため、吐出口形成時に発生
する副生成物の妨害を受けることなく、これら全ての処
理を確実に行なうことができる。
【0081】さらに、本発明の別の実施例を図9に基づ
いて説明する。
【0082】本実施例は、前述した実施例に基づいて、
図2に図示するレーザ加工装置による吐出口の加工、吐
出口プレートの吐出面に対しレーザ光を照射し、吐出口
プレートを削る加工、吐出口プレートの表面性状を変化
させる処理、吐出口形成時に発生する副生成物の吐出口
近傍への付着を防止する処理を施した後に、あるいは同
時に、酸素ガスを吐出口プレートの吐出面に対し吹き付
けながらレーザ光を照射し、吐出口近傍にある特定部位
における吐出口プレートの表面性状を変化させる処理を
施すものである。
【0083】図9において、Lはレーザ発振器から発振
された吐出口形成用のレーザ光であり、Sは吐出口プレ
ート削りおよび/または表面性状変化処理に用いるレー
ザ光である。21、22、23および24は、それぞれ
前述の実施例のものと同様の吐出口プレート、撥水層、
吐出口、およびレーザ光により削り取られた部位であ
る。そして、40は吐出口プレートの吐出面に対し酸素
ガスを吹き付けるためのガスノズルであり、41は吐出
口プレートに対して吹き付けている酸素ガス分子であ
り、42は酸素ガスの吹き付けによりその表面エネルギ
ーがより一層高まった、すなわち親水性が向上させられ
た、特定部位であり、43は前述した実施例等で示した
レーザマスクとは異なった開口寸法および開口位置を有
するレーザマスクであって、前述した実施例にしたがっ
て、吐出口プレートを削る処理、その表面性状を変化さ
せる処理、さらに吐出口形成時に発生する副生成物の付
着を防止する処理を施した部位の中の特定の部位にレー
ザ光Sが照射されるように、前述した実施例等に示した
レーザマスク25、28に比べて、レーザ光通過用の開
口部が狭く形成されている。
【0084】図9に図示する実施例においては、先ず、
前述した実施例にしたがって、吐出口プレートを削る処
理、その表面性状を変化させる処理、さらに吐出口形成
時に発生する副生成物の付着を防止する処理を施した
後、引き続いて、図9に示す処理を行なうものであり、
レーザマスク43を通過したレーザ光Sを、既に削りと
られて表面性状を変化させさらに吐出口形成時に発生す
る副生成物を防止する処理がなされた部位24の中の特
定の局部的な部位42だけにレーザマスク43を介して
照射するようにし、そしてレーザ光Sを照射する際に、
ガスノズル40から酸素ガスを加工部に吹き付ける。す
ると、吐出口プレート上でレーザ光Sが照射された特定
部位42だけ、その表面エネルギーが高くなる。すなわ
ち、親水性が向上する。このようにすることにより、吐
出口周辺部の局部的な表面性状を変化させることが可能
となる。
【0085】レーザ光Sが照射された部位42の吐出口
23に対する相対位置は、レーザマスク43により任意
に設定することができる。すなわち、吐出口23周辺部
は、表面エネルギーを低くしておき、その外周部の特定
部のみ表面エネルギーを上昇させることがレーザマスク
43を用いることで容易に行なえる。さらに、表面エネ
ルギーが違う領域の寸法は、レーザマスクを種々作製し
ておくことで容易に変更可能である。
【0086】そこで、このように加工された天板を用い
て液体噴射記録ヘッドを製作し、これをプリンタに装着
して、吐出液滴の観察ならびに記録紙への記録を行なっ
たところ、吐出口周辺部の吐出口プレートの表面を削り
落とす処理および表面エネルギー変化処理を施さない液
体噴射記録ヘッドに対して、吐出口開口面積が大きいた
め飛翔される液滴が大きく、さらに飛翔液滴の吐出方向
が安定し、また印字についても良好な結果を得た。
【0087】次に、本発明のさらに他の実施例を図10
に基づいて説明する。
【0088】本実施例は、前述した実施例に基づいて、
図2に図示するレーザ加工装置による吐出口の加工、吐
出口プレート表面に対しレーザ光を照射し、吐出口プレ
ートを削る加工、吐出口プレートの表面性状を変化させ
る処理、吐出口形成時に発生する副生成物の吐出口近傍
への付着を防止する処理を施した後に、あるいは同時
に、フッ素原子を構造中に有するガス状分子を吐出口プ
レートに対し吹き付けながらレーザ光を照射し、吐出口
近傍にある特定部位における吐出口プレートの表面性状
を変化させる処理を施すものである。
【0089】図10において、Lはレーザ発振器から発
振された吐出口形成用のレーザ光であり、Tは吐出口プ
レート削りおよび/または表面性状変化処理に用いるレ
ーザ光である。21、22、23および24はそれぞれ
前述の実施例のものと同様の吐出口プレート、撥水層、
吐出口、およびレーザ光により削り取られた部位であ
る。そして、50は吐出口プレートの吐出面に対しフッ
素原子を構造中に有するガス状分子を吹き付けるための
ガスノズルであり、51は吐出口プレートに対して吹き
付けているフッ素原子を構造中に有するガス状分子であ
り、52はフッ素原子を構造中に有するガス状分子の吹
き付けによりその表面エネルギーがより一層低くなっ
た、すなわち疎水性が向上させられた、特定部位であ
り、53は第1の実施例で示したレーザマスクとは異な
った開口寸法および開口位置を有するレーザマスクであ
って、前述した実施例にしたがって、吐出口プレートを
削る処理、その表面性状を変化させる処理、さらに吐出
口形成時に発生する副生成物の付着を防止する処理を施
した部位の中の特定の部位にレーザ光Tが照射されるよ
うに、前述した実施例に示したレーザマスク25、28
に比べて、レーザ光通過用の開口部が狭く形成されてい
る。
【0090】図10に図示する実施例においては、先
ず、前述した実施例にしたがって、吐出口プレートを削
る処理、その表面性状を変化させる処理、さらに吐出口
形成時に発生する副生成物の付着を防止する処理を施し
た後、引き続いて、図10に示す処理を行なうものであ
り、レーザマスク53を通過したレーザ光Tを、既に削
りとられて表面性状の変化および副生成物の付着を防止
する処理がなされた部位24の中の特定の部位52だけ
にレーザマスク53を介して照射するようにし、そして
レーザ光Tを照射する際に、ガスノズル50からフッ素
原子を構造中に有するガス状分子51を加工部に吹き付
ける。すると、吐出口プレート上でレーザ光Tが照射さ
れた特定部位52だけ、その表面エネルギーが低くな
る。すなわち、疎水性が向上する。このようにすること
により、吐出口周辺部の局部的な表面性状を変化させる
ことが可能となる。
【0091】レーザ光Tが照射された部位52の吐出口
23に対する相対位置は、レーザマスク53により任意
に設定することができる。すなわち、吐出口23周辺部
における特定部を表面エネルギーをさらに低くさせるこ
とがレーザマスク53を用いることで容易に行なえる。
さらに、表面エネルギーが違う領域の寸法は、レーザマ
スクを種々作製しておくことで容易に変更可能である。
【0092】そこで、このように加工された天板を用い
て液体噴射記録ヘッドを製作し、これをプリンタに装着
して、吐出液滴の観察ならびに記録紙への記録を行なっ
たところ、吐出口周辺部の吐出口プレートの表面を削り
落とす処理および表面エネルギー変化処理を施さない液
体噴射記録ヘッドに対して、吐出口開口面積が大きいた
め飛翔される液滴が大きく、さらに飛翔液滴の吐出方向
が安定し、また印字についても良好な結果を得た。
【0093】また、フッ素原子を構造中に有するガス状
分子として、テトラフルオロメタン(分子式CF4 )を
用いることができる。このテトラフルオロメタンは、加
工に用いるレーザ光の一部が照射されると、反応性の高
いフッ素原子を発生させる。そのフッ素原子は吐出口プ
レート上の吐出口周辺部を化学的に表面修飾、すなわち
フッ素化、するため、吐出口プレートの表面エネルギー
は低下し、吐出口近傍の吐出口プレート表面は安定した
撥水性を示す。また、テトラフルオロメタンは、非常に
安定した分子であり、常温常圧において気体であるため
に取扱いが容易である。そのため液体噴射記録ヘッドの
製造工程への導入も行ないやすい。
【0094】このようなテトラフルオロメタンを用いて
加工処理を行なった天板を用いて液体噴射記録ヘッドを
製作して吐出液滴の観察ならびに記録紙への記録を行な
ったところ、図10に図示する実施例と同様の効果を得
ることができた。
【0095】また、以上に説明した実施例において、図
2に図示するレーザ加工装置による吐出口の加工、吐出
口プレート表面に対しレーザ光を照射し、吐出口プレー
トを削る加工、吐出口プレートの表面性状を変化させる
処理、吐出口形成時に発生する副生成物の吐出口近傍へ
の付着を防止する処理、さらに、酸素ガスあるいはフッ
素原子を構造中に有するガス状分子を吹き付け、吐出口
プレートを削った部分の中の特定の部位の表面性状を変
化させる処理を施すことに用いるコヒーレントなレーザ
光源として、エキシマレーザを用いて加工を行なった。
【0096】ここで、本実施例に用いられるエキシマレ
ーザ光について説明する。エキシマレーザは、紫外光を
発振可能なレーザであり、高強度のエネルギーを出力で
き、単色性が良く、指向性があり、短パルス発振がで
き、さらに、レンズで集光することによりエネルギー密
度を非常に大きくできる利点を有している。すなわち、
エキシマレーザ発振器は希ガスとハロゲンの混合気体を
放電励起することで、短パルス(15〜35ns)の紫
外光を発振できる装置であり、Kr−F、Xe−Cl、
Ar−Fレーザ等がよく用いられる。これらの発振エネ
ルギーは数100mj/パルスであり、パルス繰り返し
周波数は30〜1000Hzである。
【0097】このエキシマレーザ光のような高輝度の短
パルス紫外光をポリマー樹脂表面に照射すると、照射部
が瞬間的にプラズマ発光と衝撃音を伴なって分解、飛散
する所謂、Ablative Photodecomposition(APD)過
程が生じ、この過程によってポリマー樹脂の加工が可能
となる。
【0098】このようなエキシマレーザによる加工精度
と他のレーザによるそれとを比較した場合、例えば、ポ
リイミドフィルムにエキシマレーザ(KrFレーザ)を
用いてレーザ光を照射すると、ポリイミドフィルムの光
吸収波長がUV領域にあるため、きれいな穴をあけるこ
とができるが、UV領域にない従来のYAGレーザでは
穴があくもののエッジ面が荒れ、赤外線であるCO2
ーザでは穴の周囲にクレータができてしまう。
【0099】そこで、エキシマレーザ光であるKrFレ
ーザを用いて加工した天板を用いて液体噴射記録ヘッド
を製作し、これをプリンタに装着して、吐出液滴の観察
ならびに記録紙への記録を行なったところ、エキシマレ
ーザのもつ優れた加工特性により、飛翔液滴の吐出方向
が安定し、また印字についても良好な結果を得た。
【0100】さらにまた、図2に図示するレーザ加工装
置による吐出口の加工、吐出口プレート表面に対しレー
ザ光を照射し、吐出口プレートを削る加工、吐出口プレ
ートの表面性状を変化させる処理、吐出口形成時に発生
する副生成物の吐出口近傍への付着を防止する処理、お
よび、酸素ガスあるいはフッ素原子を構造中に有するガ
ス状分子を吹き付け、吐出口プレートを削った部分の中
の特定の部位の表面性状を変化させる処理を施すことに
用いるコヒーレントなレーザ光源として、YAGレーザ
の第4高調波を用いて加工を行なうこともできる。
【0101】一般に、YAGレーザは、1068nmの
波長をもつレーザとして知られている。しかし、光学結
晶を透過したYAGレーザの第4高調波は、紫外線領域
である268nmの波長のレーザ光を発振する。そこ
で、本実施例ではこのYAGレーザの第4高調波を用い
て加工を行なった。
【0102】このYAGレーザの第4高調波を用いて加
工を行なうと、レーザ光源のメンテナンスが比較的容易
であり、さらに、エキシマレーザのようなレーザガスが
必要でないためメンテナンスに要するコストおよび時間
が軽減できる。これにより、液体噴射記録ヘッド製造の
スループットが向上し、製造コスト低減に貢献できる。
【0103】以上の各実施例に説明したように、レーザ
加工装置により吐出口を加工する際に、吐出口プレート
の吐出面に対しレーザ光を照射して、吐出口プレートを
削る加工処理、吐出口プレートの表面性状を変化させる
処理、吐出口形成時に発生する副生成物の吐出口近傍へ
の付着を防止する処理、さらに、酸素ガスあるいはフッ
素原子を構造中に有するガス状分子を吹き付け、吐出口
プレートを削った部分の中の特定の部位の表面性状を変
化させる処理等の処理のいずれか、もしくはすべてを施
すことにより加工した天板を用いて液体噴射記録ヘッド
を製作することにより、吐出口開口面積が大きいため飛
翔される液滴が大きく、さらに飛翔液滴の吐出方向が安
定し、また印字についても良好な結果を得ることがで
き、また、従来別工程で行なっていた副生成物の除去や
表面性状の変化を、吐出口加工と同時に行なえるため、
製品製造のスループットが向上し、製品の製造コストを
低減することができる。
【0104】また、本発明は、特に液体噴射記録方式の
中で熱エネルギーを利用して飛翔液滴を形成し、記録を
行なう、いわゆるインクジェット記録方式の記録ヘッ
ド、記録装置において、優れた効果をもたらすものであ
る。
【0105】その代表的な構成や原理については、例え
ば、米国特許第4723129号明細書、同第4740
796号明細書に開示されており、本発明はこれらの基
本的な原理を用いて行なうものが好ましい。この記録方
式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のい
ずれにも適用可能である。
【0106】この記録方式を簡単に説明すると、記録液
(インク)が保持されているシートや液流路に対応して
配置されている吐出エネルギー発生素子である電気熱変
換体に駆動回路より吐出信号を供給する、つまり、記録
情報に対応して記録液(インク)に核沸騰現象を越え、
膜沸騰現象を生じるような急速な温度上昇を与えるため
の少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、
熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜
沸騰を生じさせる。このように記録液(インク)から電
気熱変換体に付与する駆動信号に一対一に対応した気泡
を形成できるため、特にオンデマンド型の記録法には有
効である。この気泡の成長、収縮により吐出口を介して
記録液(インク)を吐出させて、少なくとも一つの滴を
形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適
切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性に優
れた記録液(インク)の吐出が達成でき、より好まし
い。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4
463359号明細書、同第4345262号明細書に
記載されているようなものが適している。なお、上記熱
作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313
124号明細書に記載されている条件を採用すると、さ
らに優れた記録を行なうことができる。
【0107】記録ヘッドの構成としては、上述の各明細
書に開示されているような吐出口、液流路、電気熱変換
体を組み合わせた構成(直線状液流路又は直角液流路)
の他に、米国特許第4558333号明細書、米国特許
第4459600号明細書に開示されているように、熱
作用部が屈曲する領域に配置された構成を持つものにも
本発明は有効である。
【0108】加えて、複数の電気熱変換体に対して、共
通するスリットを電気熱変換体の吐出口とする構成を開
示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギー
の圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開
示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成
を有するものにおいても本発明は有効である。
【0109】さらに、本発明が有効に利用される記録ヘ
ッドとしては、記録装置が記録可能である被記録媒体の
最大幅に対応した長さのフルラインタイプの記録ヘッド
がある。このフルラインヘッドは、上述した明細書に開
示されているような記録ヘッドを複数組み合わせること
によってフルライン構成にしたものや、一体的に形成さ
れた一個のフルライン記録ヘッドであってもよい。
【0110】加えて、装置本体に装着されることで、装
置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給
が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あ
るいは記録ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッ
ジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効で
ある。
【0111】また、記録ヘッドに対する回復手段や予備
的な補助手段を付加することは、記録装置を一層安定に
することができるので好ましいものである。これらを具
体的に挙げれば、記録ヘッドに対しての、キャッピング
手段、クリーニング手段、加圧または吸引手段、電気熱
変換体あるいはこれとは別の加熱素子、あるいはこれら
の組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を
行なう予備吐出モード手段を付加することも安定した記
録を行なうために有効である。
【0112】さらに、記録装置の記録モードとしては黒
色等の主流色のみを記録するモードだけではなく、記録
ヘッドを一体的に構成したものか、複数個の組み合わせ
で構成したものかのいずれでもよいが、異なる色の複色
カラーまたは、混色によるフルカラーの少なくとも一つ
を備えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0113】以上の説明においては、インクを液体とし
て説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクで
あって、室温で軟化もしくは液体となるもの、あるい
は、インクジェットにおいて一般的に行なわれている温
度調整の温度範囲である30℃以上70℃以下の温度範
囲で軟化もしくは液体となるものでもよい。すなわち、
使用記録信号付与時にインクが液状をなすものであれば
よい。加えて、積極的に熱エネルギーによる昇温をイン
クの固形状態から液体状態への態変化のエネルギーとし
て使用せしめることで防止するか、または、インクの蒸
発防止を目的として放置状態で固化するインクを用いる
かして、いずれにしても熱エネルギーの記録信号に応じ
た付与によってインクが液化してインク液状として吐出
するものや記録媒体に到達する時点ではすでに固化し始
めるもの等のような、熱エネルギーによって初めて液化
する性質のインクの使用も可能である。このような場合
インクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開
昭60−71260号公報に記載されるような、多孔質
シート凹部または貫通孔に液状または固形物として保持
された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形
態としてもよい。上述した各インクに対して最も有効な
ものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0114】さらに加えて、インクジェット記録装置の
形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出
力端末として用いられるものの他、リーダ等と組み合わ
せた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミ
リ装置の形態を採るものであってもよい。
【0115】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
レーザ光の照射による穴加工によって樹脂製天板に液体
を吐出する吐出口を形成する際に、吐出口プレートの吐
出面に対しレーザ光を照射して、厚く成形された吐出口
プレートの吐出口周辺部を削り落とし、吐出口近傍の吐
出口プレートの表面性状を変化させ、さらに吐出口形成
時に発生する副生成物の吐出口近傍への付着を防止する
ことができ、従来において、大きな開口面積を有する吐
出口を形成することが難しく、吐出口周辺部の局部的な
表面性状を変化させることができず、さらに副生成物が
吐出口周辺に付着してその表面エネルギーが上昇し印字
特性が悪くなるという従来の課題を解決することができ
る。
【0116】さらに、吐出口の開口面積を大きく形成す
ることができるため、飛翔される液滴が大きく、さらに
飛翔液滴の吐出方向が安定し、また印字特性も良好な液
体噴射記録ヘッドを製造することができ、また、従来別
工程で行なっていた副生成物の除去や局部的な表面性状
の変化を吐出口加工工程と同時に行なえるため、液体噴
射記録ヘッド製造のスループットが向上し、製造コスト
を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法を適用
する液体噴射記録ヘッドを説明する図であり、(a)は
液体噴射記録ヘッドにおける樹脂成形された天板ブラン
クの斜視図であり、(b)は同じく液流路および吐出口
が加工形成された天板の斜視図であり、(c)は液体噴
射記録ヘッドにおいて樹脂製天板に接合される基板の斜
視図である。
【図2】本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法に適用
するレーザ加工装置の概略的な構成図である。
【図3】本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法の一実
施例に基づいて加工される吐出口プレートの加工態様を
図示する概略図である。
【図4】本発明の他の実施例に基づいて加工される吐出
口プレートの加工態様を図示する概略図である。
【図5】本発明の他の実施例に基づいて加工される吐出
口プレートの加工態様を図示する概略図である。
【図6】本発明のさらに他の実施例に基づいて加工され
る吐出口プレートの加工態様を図示する概略図である。
【図7】本発明のさらに他の実施例に基づいて加工され
る吐出口プレートの加工態様を図示する概略図である。
【図8】本発明の他の実施例に基づいて加工される吐出
口プレートの加工態様を図示する概略図である。
【図9】本発明の別の実施例に基づいて加工される吐出
口プレートの加工態様を図示する概略図である。
【図10】本発明のさらに別の実施例に基づいて加工さ
れる吐出口プレートの加工態様を図示する概略図であ
る。
【図11】液体噴射記録ヘッドの基本的態様を樹脂製天
板の一部を破断して示す模式的な斜視図である。
【図12】吐出口プレートのほぼ全面にわたって撥水処
理された液体噴射記録ヘッドの概略的な斜視図である。
【図13】吐出口プレートに撥水処理および親水処理が
施された液体噴射記録ヘッドの概略的な斜視図である。
【符号の説明】
1 基板 1b 電気熱変換素子 2 (樹脂製)天板 2a 本体部分 2b 吐出口プレート 2f 液流路 2g 吐出口 2o (天板)ブランク 10 レーザ光源 12 (レーザ)マスク 15 投影光学系 16 回転駆動装置 18 移動ステージ 21 吐出口プレート 22 撥水層 23 吐出口 24 削り取られた部位 25、27、28 (レーザ)マスク 31 削り取られた部位 40 ガスノズル 41 酸素ガス 50 ガスノズル 51 ガス状分子 L (吐出口形成用)レーザ光 M〜T (吐出面照射用)レーザ光 W 被加工物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古川 雅朗 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 後藤 顕 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 伊東 美紀 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コヒーレントなレーザ光を光源とし、レ
    ーザマスクを使用し、該レーザマスクの像を光学系を用
    いて加工対象としての粗成形品に投影し、吐出口となる
    穴を一括アブレーション加工する液体噴射記録ヘッドの
    製造方法において、前記加工対象が有する吐出口プレー
    トの出射側になる面にレーザ光を照射し、吐出口プレー
    トを薄く削る加工を施すことを特徴とする液体噴射記録
    ヘッドの製造方法。
  2. 【請求項2】 吐出口プレートの出射側になる面にレー
    ザ光を照射し、吐出口プレートの表面性状を変化させる
    ことを特徴とする請求項1記載の液体噴射記録ヘッドの
    製造方法。
  3. 【請求項3】 吐出口プレートの出射側になる面へのレ
    ーザ光の照射を、吐出口が一括アブレーションにより貫
    通加工された後に、該吐出口を通過してくるレーザ光で
    行なうことを特徴とする請求項1または2記載の液体噴
    射記録ヘッドの製造方法。
  4. 【請求項4】 吐出口プレートの出射側になる面へ照射
    するレーザ光は、吐出口を一括アブレーション加工する
    ためにレーザ光を発振するレーザ発振器と同一のレーザ
    発振器から照射されるものであることを特徴とする請求
    項1ないし3のいずれか1項記載の液体噴射記録ヘッド
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 吐出口プレートの出射側になる面へ照射
    するレーザ光は、レーザ発振器と加工対象との間に設け
    られた光学系内に置かれたレーザマスクにおける反射光
    であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1
    項記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  6. 【請求項6】 吐出口プレートの出射側になる面へ照射
    するレーザ光は、吐出口を一括アブレーション加工する
    ために照射するレーザ光とは別のレーザ発振器から照射
    されるものであることを特徴とする請求項1ないし3の
    いずれか1項記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  7. 【請求項7】 吐出口プレートの出射側になる面へのレ
    ーザ光の照射を、レーザ光による吐出口の一括アブレー
    ション加工が完了する前から行なうことを特徴とする請
    求項1ないし6のいずれか1項記載の液体噴射記録ヘッ
    ドの製造方法。
  8. 【請求項8】 吐出口プレートの出射側になる面へのレ
    ーザ光の照射を、レーザ光による吐出口の一括アブレー
    ション加工が完了した後に行なうことを特徴とする請求
    項1ないし6のいずれか1項記載の液体噴射記録ヘッド
    の製造方法。
  9. 【請求項9】 吐出口プレートの出射側になる面にレー
    ザ光を照射するとともに、酸素ガスを吹き付けて加工
    し、吐出口プレートの表面性状を変化させることを特徴
    とする請求項1ないし8のいずれか1項記載の液体噴射
    記録ヘッドの製造方法。
  10. 【請求項10】 吐出口プレートの出射側になる面にレ
    ーザ光を照射するとともに、フッ素原子を構造中にもつ
    ガス状分子を吹き付けて加工し、吐出口プレートの表面
    性状を変化させることを特徴とする請求項1ないし8の
    いずれか1項記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  11. 【請求項11】 加工対象に吹き付けるガスがテトラフ
    ルオロメタンであることを特徴とする請求項10記載の
    液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  12. 【請求項12】 コヒーレントなレーザ光の光源は、紫
    外線レーザであることを特徴とする請求項1ないし11
    のいずれか1項記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  13. 【請求項13】 コヒーレントなレーザ光の光源は、エ
    キシマレーザ、またはYAGレーザであることを特徴と
    する請求項1ないし11のいずれか1項記載の液体噴射
    記録ヘッドの製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項1ないし13のいずれか1項記
    載の液体噴射記録ヘッドの製造方法によって製造された
    ことを特徴とする液体噴射記録ヘッド。
  15. 【請求項15】 吐出口から液体を吐出するために利用
    される熱エネルギーを発生する電気熱変換素子が設けら
    れていることを特徴とする請求項14記載の液体噴射記
    録ヘッド。
JP9367899A 1997-12-26 1997-12-26 液体噴射記録ヘッドおよびその製造方法 Pending JPH11188882A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9367899A JPH11188882A (ja) 1997-12-26 1997-12-26 液体噴射記録ヘッドおよびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9367899A JPH11188882A (ja) 1997-12-26 1997-12-26 液体噴射記録ヘッドおよびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11188882A true JPH11188882A (ja) 1999-07-13

Family

ID=18490483

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9367899A Pending JPH11188882A (ja) 1997-12-26 1997-12-26 液体噴射記録ヘッドおよびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11188882A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003257655A (ja) * 2001-12-26 2003-09-12 Seiko Epson Corp 撥水化処理の方法、薄膜形成方法及びこの方法を用いた有機el装置の製造方法、有機el装置、電子機器
KR100444582B1 (ko) * 2002-09-30 2004-08-16 삼성전자주식회사 리퀴드젯 가이드형 레이저를 이용한 잉크젯 프린트 헤드제조방법
JP2007331127A (ja) * 2006-06-12 2007-12-27 Ricoh Co Ltd 液滴吐出装置、画像形成装置、画像形成方法および液滴吐出装置の製造方法
TWI386269B (zh) * 2010-05-27 2013-02-21 Mitsubishi Electric Corp 雷射加工方法及雷射加工機

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003257655A (ja) * 2001-12-26 2003-09-12 Seiko Epson Corp 撥水化処理の方法、薄膜形成方法及びこの方法を用いた有機el装置の製造方法、有機el装置、電子機器
KR100444582B1 (ko) * 2002-09-30 2004-08-16 삼성전자주식회사 리퀴드젯 가이드형 레이저를 이용한 잉크젯 프린트 헤드제조방법
JP2007331127A (ja) * 2006-06-12 2007-12-27 Ricoh Co Ltd 液滴吐出装置、画像形成装置、画像形成方法および液滴吐出装置の製造方法
TWI386269B (zh) * 2010-05-27 2013-02-21 Mitsubishi Electric Corp 雷射加工方法及雷射加工機

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR19980080812A (ko) 잉크젯 프린터 노즐판
JP3032021B2 (ja) インクジェット記録装置
US20020062563A1 (en) Method for processing discharge port of ink jet head, and method for manufacturing ink jet head
US7559144B2 (en) Method for making an inkjet head
JP2633943B2 (ja) インクジェット記録ヘッドおよび該ヘッドの製造方法
JP3095795B2 (ja) インクジェット記録ヘッドおよび該ヘッドの製造方法
JP3127570B2 (ja) インクジェットヘッドの製造方法
JP3183033B2 (ja) インク噴射装置のノズルプレートの製造方法
JPH11188882A (ja) 液体噴射記録ヘッドおよびその製造方法
US20030007028A1 (en) Method for manufacturing ink discharge port of ink jet recording head, and ink jet recording head provided with the ink discharge port manufactured by such method of manufacture
KR100374274B1 (ko) 잉크 제트 기록 헤드 제조 방법, 이러한 방법에 의해제조된 잉크 제트 기록 헤드 및 레이저 가공 방법
JPH10278279A (ja) プリントヘッドの製造方法
EP0900660B1 (en) A method for manufacturing liquid jet recording heads and a head manufactured by such method of manufacture
US20030134444A1 (en) Methods for forming features in polymer layers
JP2001010056A (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出方法、および液体吐出記録装置
JPH11138822A (ja) 液体噴射記録ヘッドの製造方法および該製造方法により製造された液体噴射記録ヘッド
US6668454B2 (en) Method for manufacturing a liquid-discharging recording head
JP3086146B2 (ja) インクジェット記録ヘッドおよびその製造方法、レーザ加工装置ならびにインクジェット記録装置
JP2764418B2 (ja) インクジェット記録ヘッドの製造方法および該方法によって製造されたインクジェット記録ヘッド
JPH05124196A (ja) インクジエツト記録ヘツドの製造方法
JP3571953B2 (ja) インクジェット記録ヘッド、その製造方法およびインクジェット記録装置
JPH08127125A (ja) レーザ加工方法およびレーザ加工装置並びに該方法および装置により形成されたインクジェット記録ヘッド
JP2001150686A (ja) インクジェットプリンタヘッド製造方法
JP3285041B2 (ja) インクジェットヘッドの製造方法
JP3207683B2 (ja) フォトマスクおよびこれを用いたインクジェット記録ヘッドの製造方法