JPH11323675A - 多重撚糸機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 糸を内外で同心的に旋回させる内側，外側の
回転案内手段を備える多重撚糸機において、回転案内手
段の振動を防止する。 【解決手段】内側の回転ケース１０及び外側の回転ケー
ス２０を、上下端部で回転可能に支持すると共に上下に
分割可能に構成し、内外の回転ケース１０，２０上部を
支持する支持部材４０に糸を送りだす導糸路４１を形成
する。内外の各回転ケース１０，２０の回転状態が安定
化し振動を起こすことがなくなるから、撚糸機の高速運
転が可能となり、撚糸時間の短縮化を図ることができ
る。また、回転ケース１０，２０の内面に沿って糸Ｘの
送りを案内するから、糸Ｘに作用ずるバルーンテンショ
ンが低減化すると共に、内外で旋回する糸の相互干渉が
無くなるから、糸切れや糸絡みの発生を防止することが
できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、糸を内外で同心的
に旋回させることにより、この糸に撚りを与える多重撚
糸機の改良に関し、詳しくは、糸を内外で旋回させる回
転案内手段の回転状態を安定させることを目的とする。

【０００２】

【従来の技術】同心回転するように配設した二つの回転
案内手段で、給糸パッケージから解舒した糸を内外で同
心的に旋回させることにより、一工程で四重の撚りを糸
に与えることの可能な多重撚糸機が従来提案されてい
る。そして本出願人は、従来の多重撚糸機において、バ
ルーンテンションの低減化を目的として、糸の旋回と案
内とを兼ねる同心回転可能な内外二重の回転ポットを用
いた多重撚糸機を開発し、すでに出願済である。かかる
多重撚糸機は、中央部に収納した給糸パッケージを静止
状態に保持し、内外の回転ポットを同心回転させること
により、１工程で糸に四重の撚りを与えることができる
ようになされている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】前記多重撚糸機に用い
られている従来の回転ポットは、有底無蓋の円筒形を成
し、その底部中央で回転可能に支持され、上部は開放さ
れている。このため、撚糸工程中に回転ポットが振動を
起こすおそれがあり、それ故、内外の回転ポットが接触
したりする等の問題を引き起こす可能性があるので、高
速回転が困難である。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、糸を内外で旋
回させる回転案内手段の振動を防止し、回転状態を安定
させることを目的とするものである。本発明に係る多重
撚糸機の特徴とするところは、給糸パッケージから解舒
した糸を内側において旋回させる内側の回転ケースと、
前記糸を外側において旋回させる外側の回転ケースとが
同心的に配置され、前記内外の回転ケースは回転可能に
上下が支持されると共に、前記内外の回転ケースそれぞ
れの上部を支持する支持部材に前記糸を送りだす導糸路
が形成されていることである。

【０００５】かかる構成により、糸を旋回させる内外の
回転ケースは、その上下両方において回転可能に支持さ
れるから、回転状態が安定化し、高速回転させても振動
するおそれがない。内外の回転ケースにより、糸を内側
で旋回させる空間と、糸を外側で旋回させる空間とが区
画されるので、内外を旋回する糸どうしの干渉が無くな
る。内外を旋回する糸は、各回転ケースの内面に沿って
移動するから、バルーンテンションが抑制される。

【０００６】前記多重撚糸機において、前記内外の回転
ケースを、上下に分割可能な構成としてもよい。回転ケ
ースを上下に分割可能としたので、回転ケース内部への
給糸パッケージの収納及び糸通しの作業が容易である。

【０００７】さらに前記多重撚糸機において、内外の回
転ケースそれぞれの上半部と前記支持部材とを一体的に
昇降可能に構成することができる。支持部材を昇降移動
させることで、回転ケースの上半部の分離・接合を行う
ことができるから、給糸パッケージ収納後の回転ケース
の接合が確実になる。

【０００８】なお、前記外側の回転ケースの上半部を、
上へ向かって先細りの形態に形成してもよい。撚糸され
た糸は、外側の回転ケース上半部の内面に沿って移動
し、支持部材に設けた導糸路から外部へ送りだされる。
従って、外側の回転ケース上半部を先細りとして糸のバ
ルーン形状に近いものとすれば、糸に作用するバルーン
テンションの増加を抑えることができる。

【０００９】

【発明の実施の形態】〔第１の実施形態〕図１に、本発
明に係る多重撚糸機（以下、単に「撚糸機」と言う）Ｔ
の一例を示す。この撚糸機Ｔは、糸Ｘを内側で旋回させ
る内側の回転ケース１０と、外側で旋回させる外側の回
転ケース２０とを、互いに逆方向に同心回転させるタイ
プである。当該撚糸機Ｔの構造は次の如くである。

【００１０】内側の回転ケース１０は、上下に分割し得
る上半部１０Ａと下半部１０Ｂとより構成される。下半
部１０Ｂは、有底無蓋の略円筒状に形成され、底部１５
の中央部分に導糸路１２が形成されたディスク部１３を
有し、該ディスク部１３の上面中央部には、ボビンホル
ダー３１をベアリングを介して回転自在に支持するシャ
フト部１１が立設されると共に、上面周縁部に案内フラ
ンジ１８が形成されている。ディスク部１３の下面中央
部には接続筒部１６が設けられ、その凹部１４内に、外
側回転ケース２０のシャフト部２７がベアリングＣを介
して内装されている。接続筒部１６の下端部にはフラン
ジ部１７が形成され、該フランジ部１７の周縁部に、磁
石Ｒと引き合う磁石ｒが取着されている。

【００１１】一方、内側回転ケース１０の上半部１０Ａ
は、円錐状もしくは半球状、またはこれらに類似の先細
り形状に形成され、その上端部において、支持部材４０
にベアリングＣを介して取り付けられる。従って当該上
半部１０Ａは、支持部材４０に対し回転自在に支持され
る。

【００１２】糸Ｘを外側で旋回させる外側の回転ケース
２０もまた、上下に分割可能に構成された上半部２０Ａ
と下半部２０Ｂとより成り、上半部２０Ａは円錐状又は
半球状等の先細り形状に形成され、下半部２０Ｂは有底
無蓋の円筒状に形成されている。前記上半部２０Ａは、
その上端部が支持部材４０に取着されており、上半部２
０Ａと支持部材４０とが一体的に回転するよう構成され
ている。下半部２０Ｂの底部２１には導糸路２６を有す
るディスク部２２が一体的に設けられている。当該ディ
スク部２２の上面中央部に中空のシャフト部２７が立設
され、該シャフト部２７によって、内側の回転ケース１
０の下半部１０Ｂを、ベアリングＣを介して回転自在に
支持している。またディスク部２２の上面周縁部には、
案内フランジ２８が形成されている。ディスク部２２の
下面中央部には、ベルトＢ₂ により回転駆動されるプー
リー部２３を備えた中空のスピンドル部２４が設けられ
ている。該スピンドル部２４は、フレームＦ等へナット
６１で固定した軸受具６０により、ベアリングを介して
回転自在に支持されている。前記スピンドル部２４内の
通気路２５は、前記導糸路２６に連通するよう形成さ
れ、軸受具６０に設けた下端開口部６２から供給される
圧縮空気を、上記通気路２５を通じて、前記導糸路２６
へ吹き込むように構成されている。さらにスピンドル部
２４には、ベルトＢ₁ により回転駆動されるプーリー筒
体７０が、ベアリングを介して回転自在に装着され、該
プーリー筒体７０の上端部には、前記磁石ｒと引き合う
磁石Ｒを周縁部に取着したフランジ部７１が形成されて
いる。

【００１３】なお、内外の各回転ケース１０，２０の内
面に糸Ｘが接触するから、上下の分割部の内面側には、
段差がなるべく形成されないようにすることが望まし
い。あるいは上記分割部を、糸Ｘと決して接触すること
の無い位置に設けてもよい。

【００１４】内外の各回転ケース１０，２０の素材は、
強度と耐磨耗性とを備え、軽量で且つ非磁性であること
が望ましく、これには、アルミニウム，ステンレス鋼等
の非磁性金属や、合成樹脂、セラミック等の非金属材料
が考えられる。加工性とコストを考慮すると、合成樹脂
が好ましく、特に熱硬化性のフェノール樹脂，ユリア樹
脂，ポリエステル樹脂等は、機械加工性が良好であるう
え、摩擦係数を減らすためバフ等による研磨処理を表面
に施して滑面化するのが容易である。さらにガラスクロ
スその他の布を芯材としたりガラス繊維を樹脂材料に混
入したりして、回転ケース１０，２０を強度の大きいＦ
ＲＰ製とすることも妨げない。

【００１５】支持部材４０は、その上端部が、適宜のフ
レーム５０等に、ベアリングＣを介して回転可能に支持
されている。そして、外側回転ケース２０から送られて
くる糸Ｘを外部へ送りだすための導糸路４１が形成され
ている。

【００１６】給糸パッケージＰを収納するパッケージカ
バー３０の中央部に、給糸パッケージＰのボビン３３を
保持するボビンホルダー３１が立設され、当該ボビンホ
ルダー３１の下部に形成した収納凹部３４内へ、内側の
回転ケース１０のシャフト部１１をベアリングを介して
挿着することにより、前記パッケージカバー３０及びボ
ビンホルダー３１が回転自在に保持される。パッケージ
カバー３０の底部周縁側には磁石ｇが設けられ、該磁石
ｇと、フードＨに取着した磁石Ｇとの間に発生する引力
により、給糸パッケージＰを静止状態に保持するような
されている。ボビンホルダー３１の上端部には、フライ
ヤー８０と、解舒した糸Ｘの案内具８１とが設けられて
いる。

【００１７】以上の如く構成される撚糸機Ｔにおいて、
給糸パッケージＰから解舒した糸Ｘは、以下のように糸
掛けされる。まず糸Ｘは、給糸パッケージＰからフライ
ヤー８０で案内具８１へ受け渡され、案内具８１により
折り返されたのち、内側回転ケース１０の内面に沿って
当該回転ケース１０の底部１５に設けた導糸路１２まで
導かれる。そして、この導糸路１２から外側回転ケース
２０底部の導糸路２６を挿通したのち、外側回転ケース
２０の内面に案内されて立ち上がり、上部に設けられた
支持部材４０の導糸路４１を通って外部のワインダー
（図示せず）等へ送給される。

【００１８】糸Ｘを、内側回転ケース１０底部の導糸路
１２から、外側回転ケース２０底部の導糸路２６を挿通
させる作業は、前記軸受部６０の下端開口部６２からス
ピンドル部２４の通気路２５内へ圧縮空気を吹き込むこ
とにより簡単に行うことができる。上記通気路２５は、
ディスク部２２の導糸路２６が湾曲して径方向の直線部
へ移行する部位に接続され、且つ、圧縮空気の噴き出し
方向がディスク部２２の外周方向となるように設定され
ている。このため、圧縮空気を通気路２５から導糸路２
２へ吹き込むと、導糸路２６の上流側と下流側との間で
圧力差が生じ、その結果、内側回転ケース１０の導糸路
１２内が負圧となる。それ故、内側回転ケース１０の導
糸路１２の始端から外側回転ケース２０の導糸路２６末
端へ至る径路に、糸通し用空気の流れを生み出すことが
できるので、糸の挿通が簡単である。

【００１９】前記の如く構成される撚糸機Ｔは、ベルト
Ｂ₁ でプーリー筒体７０を回転駆動することにより、磁
石Ｒ，ｒ間に働く引力で内側の回転ケース１０が回転
し、ベルトＢ₂ でプーリー部２３を通じスピンドル部２
４を回転駆動することにより、外側の回転ケース２０が
回転する。従って、ベルトＢ₁ ，Ｂ₂ を異なる方向へ駆
動することにより、内外各回転ケース１０，２０を互い
に逆方向へ回転させることが可能である。しかるに磁石
Ｇ，ｇ間の引力により、給糸パッケージＰは静止状態に
保持される。それ故、本実施形態の撚糸機Ｔは、前述の
如き糸掛け状態において、給糸パッケージＰを静止さ
せ、内側回転ケース１０と外側回転ケース２０とを互い
に逆方向に同心回転させることにより、内外各回転ケー
ス１０，２０の１回転あたり、四重の撚りを糸に与える
ことできる。なお、ベルトＢ₁ ，Ｂ₂の駆動速度を調節
して、内側と外側の回転ケース１０，２０の回転比を変
更することにより、撚り数を任意に変更することも可能
である。

【００２０】本発明に係る撚糸機Ｔの内側回転ケース１
０及び外側回転ケース２０は、底部のみならず、上端部
においても回転可能に支持されている。このため、回転
ケース１０，２０の回転状態が安定化し、撚糸工程中に
振動を生ずるおそれがなくなるので、高速回転が可能と
なる。

【００２１】また、従来は、回転案内手段の底部のみを
回転可能に支持する構造であったので、内側の回転案内
手段の振動発生を抑えるため、その底部を回転可能に支
持するベアリングが２個必要であったが、本発明では、
内側の回転ケース１０の上下端部を枢支するので、底部
側のベアリングＣは１個のみでよくなる。その結果、内
側回転ケース１０の底部１５と外側回転ケース２０の底
部２１との距離を縮めることができるので、多重バルー
ンの発生を阻止できる。

【００２２】回転ケース１０，２０によって、糸Ｘが内
側で旋回する領域と外側で旋回する領域とが分離区画さ
れる。従って、内外を旋回する糸Ｘどうしの相互干渉
や、糸Ｘと磁石との接触を無くすことができる。さら
に、給糸パッケージＰから解舒した糸Ｘは、撚糸工程
中、回転ケース１０，２０の内面に沿って移動が案内さ
れるので、内外の回転ケース１０，２０それぞれの上半
部１０Ａ，２０Ａの形状を、バルーン形状に近い先細り
形状とすることにより、バルーンテンションを下げるこ
とができる。依って、糸切れや糸絡みの問題が解消され
る。

【００２３】〔第２の実施形態〕図示は省略するが、内
側及び外側の各回転ケース１０，２０の上端部を回転可
能に支持する支持部材４０を、その回転軸に沿って昇降
させる昇降手段を設け、当該支持部材４０と一体的に各
回転ケース１０，２０の上半部１０Ａ，２０Ａも昇降す
るように構成してもよい。この場合、支持部材４０が上
昇したときには、各回転ケース１０，２０の上半部１０
Ａ，２０Ａと下半部１０Ｂ，２０Ｂとの間に、給糸パッ
ケージＰの収納又は交換が可能なスペースが形成される
ように設定する。かかる構成により、昇降手段で支持部
材４０を上昇させれば、内外の各回転ケース１０，２０
が上下に２分割されるので、給糸パッケージＰの収納作
業又は交換作業を簡単に行うことができる。また、支持
部材４０を上昇位置から下降させることにより、内外の
各回転ケース１０，２０の上半部１０Ａ，２０Ａと下半
部１０Ｂ，２０Ｂとを確実に接合することができ、しか
も堅固な接合状態を得ることができる。

【００２４】その他、本発明の実施形態は前掲のものに
限定されることはなく、状況に応じた適宜の変更を施す
ことを妨げない。

【００２５】

【発明の効果】本発明によれば、多重撚糸機における内
側，外側の各回転ケースの上下端部を回転可能に支持し
たから、回転状態が安定化し、撚糸工程中に回転ケース
が振動を起こすことがない。それ故、撚糸機の高速運転
が可能となり、撚糸時間の短縮化を図ることができる。
また、回転ケースの内面に沿って糸の送りを案内するか
ら、糸に作用ずるバルーンテンションが低減化すると共
に、内外で旋回する糸の相互干渉が無くなるから、糸切
れや糸絡みの発生を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の１実施形態を示す多重撚糸機の正面
断面図である。

【符号の説明】

Ｔ…多重撚糸機 Ｂ₁ ，Ｂ₂ …ベルト Ｃ…ベアリング
Ｐ…給糸パッケージＧ，ｇ…磁石 Ｒ，ｒ…磁石 Ｘ
…糸 １０…内側の回転ケース １０Ａ…上半部 １０
Ｂ…下半部 １５…底部 ２０…外側の回転ケース ２
０Ａ…上半部 ２０Ｂ…下半部 ２１…底部 ２６…導糸路 ３０…パ
ッケージカバー ３１…ボビンホルダー ３３…ボビン
４０…支持部材 ４１…導糸路 ８０…フライヤー
８１…案内具

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 給糸パッケージから解舒した糸を内側に
   おいて旋回させる内側の回転ケースと、前記糸を外側に
   おいて旋回させる外側の回転ケースとが同心的に配置さ
   れ、前記内外の回転ケースは回転可能に上下が支持され
   ると共に、前記内外の回転ケースそれぞれの上部を支持
   する支持部材に前記糸を送りだす導糸路が形成されてい
   ることを特徴とする多重撚糸機。
2. 【請求項２】 前記内外の回転ケースは上下に分割可能
   に構成されている請求項１に記載の多重撚糸機。
3. 【請求項３】 内外の回転ケースそれぞれの上半部と前
   記支持部材とが、一体的に昇降可能に構成されている請
   求項２に記載の多重撚糸機。
4. 【請求項４】 前記外側の回転ケースの上半部を、上へ
   向かって先細りの形態に形成した請求項１乃至３のいず
   れかに記載の多重撚糸機。