JPH11294480A - カップリング - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 トルクの初期入力時の緩衝性や吸振性及びト
ルク伝達力の双方を満足するカップリングを提供する。 【解決手段】 トルクの初期入力においては駆動側接続
子１と従動側接続子２との間隔変化に伴って第一の連結
帯３又は４に初期引張力が作用すると、この時点では第
一の連結帯３又は４の外周側に巻き掛けられた第二の連
結帯５又は６には引張力が作用せず、このため捩り方向
バネ定数が低く、初期トルク入力における衝撃が有効に
緩和される。トルク増大によって駆動側接続子１と従動
側接続子２との相対変位量が所定値を超えて増大する
と、その時点で第二の連結帯４又は６もテンションがか
かって第一及び第二の連結帯４，６の双方に引張力が作
用するので、確実にトルクが伝達される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、駆動側の回転軸と
従動側の回転軸とを接続すると共に両軸間での伝達振動
を吸収するカップリングであって、特に、駆動側の回転
軸との接続子と従動側の回転軸との接続子が繊維束等の
無端状の連結帯を介して連結されたものに関する。

【０００２】

【従来の技術】この種のカップリングの典型的な従来例
が、例えば実開平３−７３７２４号公報に開示されてい
る。すなわち図５に示すように、複数の駆動側接続子ａ
及び従動側接続子ｂが円周方向交互に等間隔で配置さ
れ、円周方向に隣り合う駆動側接続子ａと従動側接続子
ｂとをそれぞれ適当な引張弾性を有するポリエステル糸
からなる無端の繊維束ｃをループ状に巻き掛けることに
よって連結し、これら駆動側接続子ａ、従動側接続子ｂ
及び繊維束ｃをゴム、合成樹脂等の環状の弾性材ｄに埋
設したものである。

【０００３】この構造のカップリングは、駆動側接続子
ａが駆動側回転軸の軸端のヨークに円周方向等間隔で配
置されたボルト（図示省略）によって前記駆動側回転軸
に取り付けられる一方、従動側接続子ｂが従動側回転軸
の軸端のヨークに円周方向等間隔で配置されたボルト
（図示省略）に取り付けられ、これによって、駆動側回
転軸の回転を従動側回転軸へ伝達すると共に、繊維束ｃ
及び弾性材ｄの変形特性によって、駆動側回転軸と従動
側回転軸の軸心の方向が異なる接続状態（こじり状態）
での回転伝達を許容し、かつ前記両軸間での伝達振動を
吸収するものである。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】この種のカップリング
は、トルクの初期入力に対しては捩り方向のバネ定数を
低くすることによって衝撃を有効に緩和し、しかも確実
にトルク伝達を行うといった性能を有するものであるこ
とが望ましい。しかしながら上記従来例のカップリング
によれば、捩り方向に対するバネ特性及びトルク伝達力
を繊維束ｃの引張弾性に依存しているため、ある一定の
特性しか出せず、したがって例えばトルクの初期入力に
対する緩衝性を向上させるために繊維束ｃの引張弾性に
よる捩り方向バネ定数を低く設定した場合は、トルク伝
達力も低下してしまうという問題が指摘される。

【０００５】本発明は、上記のような事情のもとになさ
れたもので、その主な技術的課題とするところは、トル
クの初期入力時の緩衝性や吸振性及びトルク伝達力の双
方を満足し、耐久性に優れたカップリングを提供するこ
とにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上述した技術的課題は、
本発明によって有効に解決することができる。すなわち
本発明に係るカップリングは、円周方向等間隔で交互に
配置されたそれぞれ複数かつ互いに同数の駆動側接続子
及び従動側接続子と、円周方向に隣り合う駆動側接続子
と従動側接続子に跨がって巻き掛けられてこれら駆動側
接続子と従動側接続子とを互いに連結する適当な引張弾
性を有する無端状の第一の連結帯と、円周方向に隣り合
う駆動側接続子と従動側接続子に跨がって前記第一の連
結帯と共に巻き掛けられ適当な引張弾性を有する無端状
の第二の連結帯と、これら駆動側接続子、従動側接続
子、第一及び第二の連結帯が埋設され円周方向に連続し
たエラストマ部材とを備え、駆動側と従動側との間の捩
り角度が所定角度未満では、前記第一及び第二の連結帯
のうちいずれか一方にのみ引張力が与えられ、前記捩り
角度が所定値を超えた時点で前記第一及び第二の連結帯
の双方に引張力が与えられるものである。

【０００７】本発明に係るカップリングの構成によれ
ば、初期トルクの入力によって駆動側と従動側との間に
捩り変位を生じると、その捩り角度が所定値未満では、
互いの間隔が増大しようとする駆動側接続子と従動側接
続子に巻き掛けられた第一及び第二の連結帯のうちいず
れか一方にのみ引張力が与えられ、他方の引張力が０で
あるため、捩り方向バネ定数が低くなり、前記初期トル
クの入力時における優れた緩衝性を奏する。また、入力
トルクの増大によって前記捩り角度が所定値を超えて増
大すると、その時点で前記第一及び第二の連結帯の双方
に引張力が与えられるので、トルク伝達力が増大して駆
動側と従動側との間の過大な捩り変位が抑制され、確実
なトルク伝達が行われる。

【０００８】

【発明の実施の形態】図１は本発明に係るカップリング
の好ましい一実施形態を軸心と直交する平面で切断して
示すものであり、図２は軸心を通る平面で切断して示す
ものである。なお、以下の説明において「円周方向」と
は前記軸心（カップリングの軸心）を中心とする円周の
方向のことである。

【０００９】図１及び図２に示すカップリングにおい
て、参照符号１は円周方向１２０°間隔で三個配置され
た円筒状の駆動側接続子、参照符号２はこの駆動側接続
子１，１の間の各中間位置すなわち前記駆動側接続子１
とは６０°異なる位相で円周方向１２０°間隔で三個配
置された円筒状の従動側接続子、参照符号３，４は、そ
れぞれ円周方向に隣り合う駆動側接続子１と従動側接続
子２に跨がって巻き掛けられてこれら駆動側接続子１と
従動側接続子２とを互いに連結する、適当な引張弾性を
有する無端状の第一の連結帯、参照符号５，６は前記第
一の連結帯３，４の外周側を囲むように巻き掛けられ適
当な引張弾性を有する無端状の第二の連結帯、参照符号
７はこれら駆動側接続子１、従動側接続子２、第一の連
結帯３，４及び第二の連結帯５，６を埋設した、円周方
向に連続した環状のエラストマ部材である。

【００１０】図２に示すように、駆動側接続子１及び従
動側接続子２は、その軸心が当該カップリングの軸心と
平行になるように配置されている。また、駆動側回転軸
の軸端のヨーク（図示省略）に接続される駆動側接続子
１はその軸方向一端がエラストマ部材７の一端面から突
出し（突出端部１ａ）、従動側回転軸の軸端のヨーク
（図示省略）に接続される従動側接続子２は前記突出端
部１ａと反対側の端部２ａがエラストマ部材７の他端面
から突出している。

【００１１】駆動側接続子１及び従動側接続子２におけ
るエラストマ部材７への埋設部分の外周面には、それぞ
れスリーブ８１及びその軸方向両端部に固定された断面
略Ｕ字形の一対のカラー８２，８２からなる糸巻き金具
８が装着されている。そして第一の連結帯３及びその外
周の第二の連結帯５は、駆動側接続子１に装着された糸
巻き金具８のカラー８２，８２と、従動側接続子２に装
着された糸巻き金具８のカラー８２，８２に巻き掛けら
れ、その円周方向隣の第一の連結帯４及び第二の連結帯
６は、駆動側接続子１に装着された糸巻き金具８のスリ
ーブ８１の外周面におけるカラー８２，８２の間の部分
と、従動側接続子２に装着された糸巻き金具８のスリー
ブ８１の外周面におけるカラー８２，８２の間の部分に
巻き掛けられている。

【００１２】すなわち、互いに円周方向６０°間隔で交
互に配置された各駆動側接続子１と各従動側接続子２
は、二束の第一の連結帯３，３及びその各外周の第二の
連結帯５，５と、一束の第一の連結帯４及びその外周の
第二の連結帯６とによって、円周方向交互に連結されて
いる。図３に拡大して示すように、第一の連結帯３，４
は例えばポリエステル糸やケプラー（商標名）等の合成
繊維からなる無端状の繊維の束であり、第二の連結帯
５，６は無端ベルト状の合成樹脂、あるいは前記ケプラ
ー等の合成繊維の束等で構成される。

【００１３】第二の連結帯５，６は、前記第一の連結帯
３，４よりも弛く巻かれており、このため、第一の連結
帯３，４に初期引張力がかかった状態では第二の連結帯
５，６に作用する引張力が０であり、第二の連結帯５，
６には、駆動側と従動側との捩り角度が所定値を超えた
時点で初期引張力が作用するようになっている。

【００１４】エラストマ部材７には、各駆動側接続子１
と各従動側接続子２の中間位置に窓部７ａが形成されて
いる。この窓部７ａは、当該カップリングの製造におい
て、予め駆動側接続子１、従動側接続子２、第一の連結
帯３，４及び第二の連結帯５，６を組み付けた金型内に
未加硫エラストマ材料を充填する際に、その注入圧力に
よる第一の連結帯３，４及び第二の連結帯５，６の不安
定な挙動を生じにくくするために、前記金型内に設けた
突出部により形成されたものである。したがって、上記
実施形態によるカップリングは、円周方向における一部
の連結帯への負荷の集中が有効に抑制され、耐久性が向
上する。また、前記窓部７ａは、エラストマ部材７の捩
り方向バネ定数を低減して振動絶縁性や緩衝性を向上さ
せるといった作用を奏する。

【００１５】上記実施形態によるカップリングは、従来
技術によるカップリングと同様、各駆動側接続子１がそ
れぞれに挿通したボルト（図示省略）によって、駆動側
回転軸の軸端のヨークに円周方向１２０°間隔で取り付
けられる一方、各従動側接続子２がそれぞれに挿通した
ボルト（図示省略）によって、前記駆動側回転軸の軸端
と相対する従動側回転軸の軸端のヨークに円周方向１２
０°間隔で取り付けられる。これによって、駆動側回転
軸の回転を第一の連結帯３，４及び第二の連結帯５，６
を介して従動側回転軸へ伝達すると共に、第一の連結帯
３，４，第二の連結帯５，６及びエラストマ部材７の変
形特性によって、駆動側回転軸と従動側回転軸の軸心の
方向が異なる状態（こじり方向）での回転伝達を許容
し、かつ前記両軸間での伝達振動を吸収するものであ
る。

【００１６】図４の特性線図に示すように、本実施形態
によるカップリングは、捩り角度が所定角度α，−α未
満である場合には捩りバネ定数が低く、前記角度α，−
αを超える捩り角度では捩りバネ定数が高くなる二段特
性を有する。

【００１７】すなわちこれを更に詳細に説明すると、初
期トルクの入力においては駆動側接続子１と従動側接続
子２との間隔が変化しようとするのに伴って、第一の連
結帯３又は４に初期引張力が作用すると、この時点では
前記第一の連結帯４の外周側に巻き掛けられた第二の連
結帯５又は６には引張力が作用しておらず、このため捩
り方向バネ定数が低く、前記初期トルクの入力における
衝撃が有効に緩和される。また、その後のトルク増大に
よって前記捩り角度が所定角度を超えて増大し、すなわ
ち駆動側接続子１と従動側接続子２との相対変位量が所
定値を超えて増大すると、その時点で前記第二の連結帯
５又は６もテンションがかかった状態になって第一の連
結帯３又は４及び第二の連結帯５又は６の双方に引張力
が作用するので、トルク伝達力が増大して駆動側接続子
１と従動側接続子２との間の過大な捩り変位が抑制さ
れ、確実にトルクが伝達される。

【００１８】なお、本発明は、図示の実施形態によって
限定的に解釈されるものではない。例えば、駆動側接続
子１と従動側接続子２の配置間隔は必ずしも図示のよう
に円周方向六等配である必要はなく、装着対象の軸フラ
ンジの仕様等に対応して決定されるものである。また、
第二の連結帯５又は６に初期引張力が作用する捩り角度
α，−αは、第一の連結帯３，４と第二の連結帯５，６
の長さによって任意に設定可能である。

【００１９】

【発明の効果】本発明のカップリングによると、次のよ
うな効果が実現される。まず、初期トルクの入力に対し
ては第一及び第二の連結帯のうちの一方にのみ引張力が
作用するので捩り方向のバネ定数が低くなって衝撃を有
効に緩和し、トルクが所定値を超えて上昇した場合は第
一及び第二の連結帯の双方に引張力が作用することによ
って確実にトルク伝達を行うことができる。また、駆動
側接続子と従動側接続子の過大な相対変位が抑制される
ので耐久性を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るカップリングの好ましい一実施形
態を、軸心と直交する平面で切断して示す部分的な断面
図である。

【図２】上記実施形態を、軸心を通る平面で切断して示
す部分的な断面図である。

【図３】図２の一部を拡大して示す断面図である。

【図４】上記実施形態による特性を示す特性線図であ
る。

【図５】従来技術によるカップリングの一例を、軸心と
直交する平面で切断して示す断面図である。

【符号の説明】

１ 駆動側接続子 ２ 従動側接続子 ３，４ 第一の連結帯 ５，６ 第二の連結帯 ７ エラストマ部材 ７ａ 窓部 ８ 糸巻き金具 ８１ スリーブ ８２ カラー

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 円周方向等間隔で交互に配置されたそれ
   ぞれ複数かつ互いに同数の駆動側接続子（１）及び従動
   側接続子（２）と、 円周方向に隣り合う駆動側接続子（１）と従動側接続子
   （２）に跨がって巻き掛けられてこれら駆動側接続子
   （１）と従動側接続子（２）とを互いに連結する適当な
   引張弾性を有する無端状の第一の連結帯（３，４）と、 円周方向に隣り合う駆動側接続子（１）と従動側接続子
   （２）に跨がって前記第一の連結帯（３，４）と共に巻
   き掛けられ適当な引張弾性を有する無端状の第二の連結
   帯（５，６）と、 これら駆動側接続子（１）、従動側接続子（２）、第一
   の連結帯（３，４）及び第二の連結帯（５，６）が埋設
   され円周方向に連続したエラストマ部材（７）とを備
   え、 駆動側と従動側との間の捩り角度が所定角度未満では、
   前記第一の連結帯（３，４）及び第二の連結帯（５，
   ６）のうちいずれか一方にのみ引張力が与えられ、前記
   捩り角度が所定値を超えた時点で前記第一の連結帯
   （３，４）及び第二の連結帯（５，６）の双方に引張力
   が与えられることを特徴とするカップリング。