JPH11286843A - 化繊ポリエステル繊維複合糸及びこの複合糸からなる織編物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 抗ピリング、スナッギング性が向上した清涼
で梳毛調のセルロース繊維複合ポリエステル繊維織編物
の提供。 【解決手段】 中空率１５〜３０％の中空異形断面を有
する単糸からなる伸度８０〜１５０％の高伸度シックア
ンドシンマルチフィラメント糸を鞘成分とし，セルロー
ス繊維を芯糸成分とする複合糸で構成した嵩高軽量ポリ
エステル繊維織編物。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、シックアンドシン
ポリエステルマルチフィメントとセルロ−ス繊維とから
なる複合糸及びシックアンドシンの色調差効果に加え
て、特に梳毛調タッチを有し、ドレープ性にも優れた化
繊ポリエステル複合系で構成した織編物に関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】ポリエステル繊維、ナイロン繊維等のマ
ルチフィラメント糸を太細を有する単糸で構成したシッ
クアンドシン糸は、太細部分で顕れる染色の温度差によ
る色調差混繊効果を有し、杢調の織編物の製造に用いら
れている。ポリエステル繊維等の熱可塑性合繊のシック
アンドシン糸の仮撚加工糸を用いることによる複合仮撚
加工効果と色調差効果とを併せ持つ織編物を得る試みも
公知である。

【０００３】フィラメント糸の混繊加工、複合仮撚加工
等による複合加工糸は、単糸形状乃至サイズ、熱収縮
性、捲縮性等の性質の異なるフィラメント糸を２種以上
組み合わせることによって、様々な色調、手触り、張り
や腰、嵩高性等の外観、質感を有する織編物を創造を可
能にすると共にナイロン、ポリエステル繊維等の化合繊
織編物の欠点を改良する手法として広く利用されてき
た。

【０００４】また、これまでのセルロース繊維とポリエ
ステルフィラメント糸、シックアンドシン糸の混繊糸乃
至仮撚糸は、残留伸度の低い（３０〜６０％）ポリエス
テルフィラメント糸、シックアンドシン糸を用いている
ため、混繊、仮撚、撚糸を行っても被覆層構造を形成せ
ず織物表面上にセルロース繊維を露出させてしまうので
スレ、アタリ等に弱いという欠点もある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、セル
ロース繊維の周りにシックアンドシンポリエステルマル
チフィラメント糸が被覆層を形成した構造を有する複合
糸を用いることにより、抗ピリング、スナッキング性が
向上し、清涼な風合いと梳毛調の外観と風合いを有する
化繊ポリエステル繊維織編物の提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明の目的は、中空率
１５〜３０％の中空で構成され、伸度８０〜１５０％を
有する高伸度のシックアンドシンポリエステルマルチフ
ィラメント糸を鞘糸とし、セルロース繊維を芯糸とする
混繊もしくは複合糸及びこの複合糸を用いた化繊ポリエ
ステル繊維織編物によって達成される。

【０００７】本発明において鞘糸として用いられるシッ
クアンドシンポリエステルマルチフィラメント糸は、伸
度が８０〜１５０％を有する中空率１５〜３０％の中空
断面を有する単糸で構成される高伸度シックアンドシン
ポリエステルマルチフィラメント糸である。本発明の高
伸度シックアンドシンポリエステルマルチフィラメント
糸は、構成フィラメント単糸が中空率１５〜３０％の中
空の断面を有するものでなければならない。ここで中空
率とは、単糸横断面の面積に占める中空ボイド部の百分
比であり、中空部を構成するボイドは１個であっても複
数個であってもよい。またこの単糸は、断面が丸断面、
異形断面のものであってもよい。単糸の断面が異型断面
であるとは、単糸の断面が短形、正方形、三角形（トラ
イローバルを含む）、Ｙ形状、十字形状等を代表例とす
る非円形のものであることをいう。異形形状は、三角形
（トライローバルを含む）もしくはＹ形状の断面である
ことが織物に優雅な光沢を与える上で好ましいことであ
る。

【０００８】本発明で用いられる鞘糸は、いわゆる半延
伸もしくはＰＯＹ（パーシャリーオリエンテッドヤー
ン）といわれる、ポリエチレンテレフタレート等の繊維
形成性ポリエステルを溶融押出紡糸して２０００〜４５
００ｍ／分、好ましくは２０００〜３５００ｍ／分の速
度で引取ることによって得られる高伸度の前配向もしく
は半配向ポリエステルマルチフィラメント糸にシックア
ンドシン加工を適用した調製されれたものである。適用
されるシックアンドシン加工は、通常この高伸度マルチ
フィラメント糸をを熱（ホット）ピンもしくは熱（ホッ
ト）プレートに通して、延伸倍率１．１〜１．６倍で延
伸した後、オーバーフィードの下で弛緩熱処理する方法
であることができる。シックアンドシン加工における熱
ピンまたは熱プレートの温度は、５０〜１５０℃の範囲
で選ばれる。シックアンドシン糸のフィラメント単糸の
シック部及びシン部の所望長さは、熱ピン（熱プレー
ト）と延伸倍率を選ぶことにより調整される。

【０００９】シックアンドシン糸におけるフィラメント
単糸のシック部及びシン部の長さは、１〜２０ｃｍ、好
ましくは２〜１５ｃｍであって、シック部の長さがシン
部の長さよりも大きいことが必要である。シックアンド
シン糸において、そのフィラメント単糸のシック部が染
色によりシン部よりも濃く染まる。シックアンドシン糸
の伸度は、８０〜１５０％、単糸フィラメントの繊度は
２〜６デニール（ｄ）好ましくは２〜５ｄが選ばれる。
単糸の繊度が２ｄ未満もしくは６ｄを超える場合はシッ
クアンドシンの顕れ方が粗く複合糸が外観、色調効果が
粗野になり、織編物にした場合の清涼感が著しく劣るの
で好ましくない。

【００１０】本発明で用いられるセルロース繊維とは、
銅アンモニア法レーヨン、ビスコースレーヨン等がよ
く、単糸繊度が１〜４デニールで全繊度が３０〜１５０
デニールのマルチフィラメント糸が最適である。このよ
うなセルロース繊維を芯糸として用いることにより、複
合糸に吸湿性、ドレープ性、制電性等の効果が得られ、
高伸度のシックアンドシンポリエステルマルチフィラン
ト糸が被覆層を形成した複合糸が構造が形成され、セル
ロース繊維の対スレ性を向上させることができる。

【００１１】本発明において、鞘糸及び芯糸による混繊
複合糸もしくは仮撚複合糸における鞘糸と芯糸の混合比
は、１５：８５〜８０：２０、好ましくは３０：７０〜
７５：２５である。混繊複合糸、仮撚複合糸等の本発明
の複合糸は、トータル繊度が７５〜３００デニールの範
囲、伸度２０〜４０％が適当である。混繊複合糸は、鞘
糸と芯糸とをダブリング（引揃える）するか、あるいは
別々に混繊手段にフィードして調製される。この際、芯
糸に対して、鞘糸を等しいフィード速度とするか約１０
％以下程度のオーバーフィードで混繊する。混繊手段
は、エア混繊が適当で、インターレース混繊、タスラン
型混繊を手段として用いるのが適当である。このように
して得られた混繊糸を撚糸、仮より法を適用することに
より表面層がシックアンドシン糸のリッチな層で被覆さ
れた２層構造複合糸が得られる。

【００１２】仮撚複合糸は、鞘糸と芯糸を前記の混繊方
法（弛緩熱処理を省く）を適用して得られた混繊糸もし
くは鞘糸と芯糸とをダブリングして仮撚手段にフィード
して調製される。仮撚スピナ方式、摩擦方式及び旋回流
方式の仮撚手段を適用し、０．５〜５％のオーバーフィ
ードで前記の糸を仮撚加工する。かくして、表面層がシ
ックアンドシンポリエステルマルチフィラメント糸のリ
ッチな層で被覆された２層構造仮撚捲縮糸が得られる。

【００１３】本発明の化繊ポリエステル繊維からなる織
編物は、前記した混繊糸もしくは複合仮撚糸を経、緯糸
として、汎用の織機、製織法で平織、綾織、朱子織の他
これらの変化織織物に製織することにより調製される。
本発明の織物の織密度は、織物の組織、混繊糸、複合糸
の繊度、残留沸水収縮率によるが、綾織物の場合、糸の
繊度、残留収縮率をそれぞれ１５０ｄ、１３％とした場
合、経及び緯密度は、それぞれ６０〜２００本／２．５
４ｃｍ及び５０〜１２０本／２．５４ｃｍに設定するこ
とが織物に適度なドレープ性を保持する上での目安とな
る。

【００１４】製織後、織物はリラックス熱処理した後、
必要に応じてリラックスの前後にアルカリ減量を所望の
減量率で行う。この場合、アルカリ減量は反発性を損な
わない程度で行われ、１５％以下程度の範囲から選ばれ
る。次いで、織物の染色が汎用の方法により分散染料及
び直接染料を用いて行われる。分散染色の染色温度は、
やや低温度（１０５〜１２０℃）で行うことにより杢調
効果を高めることができる。

【００１５】また、本発明の織編物は、用途、使用形態
により吸水剤、撥水剤、蓄熱剤、紫外線遮断あるいは吸
水剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤などの各種
加工による付加機能が施されてもよい。編物は、径編、
丸編物及び横編物であることができる。丸編物の場合、
編ゲージは、２８から２０ゲージが好ましく、組織は、
ニット、タック、フェルトのループ構造の他、これらを
組み合わせた変化組織によって調製できる。横編物の場
合、編ゲージは１８ゲージ以下であれば良く組織につい
ても丸編同様で、さらに、給糸本数を増やしても前述し
た外観、風合等の効果が発現する製品が得られる。

【００１６】

【作用】本発明の化繊複合ポリエステル繊維複合糸から
なる織編物の梳毛感、軽量嵩高効果は、中空糸で構成さ
れる高伸度シックアンドシンポリエステルマルチフィラ
メントのシックアンドシン糸が被覆表面層の糸で織物を
構成することで得られている。織物に清涼性、ドレープ
性を与えているのは、セルロース繊維が芯糸に配置した
２層構造の混繊糸もしくは複合糸の作用によるものであ
る。梳毛感は、シックアンドシンマルチフィラメント糸
を構成する高中空率の異形断面単糸に形成される不規則
なシックアンドシン構造の形成作用による。この不規則
なシックアンドシン構造の形成作用は、仮撚時の緊張変
形によって単糸断面形状が更に複雑に変形しており、こ
のさらなる断面変形が糸内、単糸間に微細な空気層を形
成し、梳毛感を与えている。そして軽量、嵩高効果は、
構成単糸高中空糸と異形断面単糸の嵩高、軽量化作用に
よる。そして鞘部のポリエステル繊維と芯部のセルロー
ス繊維と異色に染色することにより織物全体に立体感を
与えている。

【００１７】以下、実施例をあげて本発明を更に具体的
に説明する。

【００１８】

【実施例】実施例中、織物の染色は、液流染色法により
下記染色条件で行った。 ポリエステル繊維の染色 分散染料使用、染色温度１１０℃ セルロース繊維の染色 直接染料使用、染色温度８０℃ 染色浴 浴比１：５０ 〔実施例１〕芯糸に７５ｄ／４５ｆのキュプラマルチフ
ィラメント糸を使用し、鞘糸に伸度１２０％、沸水収縮
率７３％のＰＯＹ三角断面中空（中空率：２２％）糸
（６０ｄ／１２ｆ）を８０℃のホットピンを通して、延
伸倍率１．３倍に延伸後、１３０℃の中空ヒーター中で
１．３倍で熱弛緩処理を行うことによって調製した高伸
度シックアンドシンポリエステルマルチフィラメント糸
を用いた。このシックアンドシン糸は、伸度１２０％、
沸水収縮率３％を示し、シック部が平均で５ｃｍと極め
て長く、シン部長が約１ｃｍのランダムに顕れたもので
あった。

【００１９】芯糸と前記のシックアンドシン糸を混繊し
た後、ヒーター温度１５０℃、撚り吸う２４５０Ｔ／
Ｍ、フィード率０％で仮撚加工を行った。得られた混繊
仮撚糸は芯糸の周りにシックアンドシン糸が極めて強調
されて被覆層構造を形成した複合構造仮撚加工糸であっ
た。この複合糸をダブルツイスター撚糸機にて１２００
Ｔ／Ｍ撚糸することにより、更に芯糸の周りにシックア
ンドシン糸が極めて強調されて被覆層構造を形成した化
繊複合ポリエステル繊維複合構造加工糸となった。

【００２０】この複合構造加工糸を用いてレピア織機に
て製織し、上記の条件で染色し、ドビー織物を得た。こ
の織物（経糸密度１２４本／２．５４ｃｍ、緯糸密度６
３本／２．５４ｃｍ）は、織物表面にシックアンドシン
糸のシック部（濃く）が長く表現された外観、立体感の
ある色調と優れたドレープ性を呈し、軽量で清涼感に富
む織物が得られた。

【００２１】〔実施例２〕芯糸に７５ｄ／４５ｆのキュ
プラマルチフィラメント糸を使用し、鞘糸に伸度１２０
％、沸水収縮率７３％のＰＯＹ三角断面中空（中空率：
２２％）糸（６０ｄ／１２ｆ）を８０℃のホットピンを
通して、延伸倍率１．３倍に延伸後、１３０℃の中空ヒ
ーター中で１．５倍で熱弛緩処理を行うことによって調
製した高伸度シックアンドシンマルチフィラメント糸を
用いた。このシックアンドシックマルチフィラメント糸
は、ランダムにシック部（平均長５ｃｍ）とシン部（平
均長１ｃｍ）を有する単糸で構成され、伸度１２０％、
沸水収縮率が３％のシック部極めて長いシックアンドシ
ン糸であった。

【００２２】芯糸と前記のシックアンドシン糸をフィー
ド率−０．５％でエアー混繊した。この加工糸をダブル
ツイスター撚糸機にて１２００Ｔ／Ｍ撚糸することによ
り芯糸の周りにシックアンドシン糸が極めて強調されて
被覆層構造を形成した複合構造加工糸となった。この複
合構造加工糸を用いてレピア織機にて製織し、上記の条
件で染色し、ドビー織物を得た。この織物（経糸密度１
２９本／２．５４ｃｍ、緯糸密度６０本／２．５４ｃ
ｍ）は、織物表面にシックアンドシン糸のシック部（濃
く）が長く表現された外観、立体感をもった色調を呈
し、軽量で清涼感に富んだ梳毛調のドレープ性の優れた
織物であった。

【００２３】

【発明の効果】本発明は、中空の単糸で構成される高伸
度シックアンドシンポリエステルマルチフィラメントを
鞘部とし、セルロース繊維を芯部に配置することによ
り、シックアンドシックマルチフィラントで芯部のセル
ロース繊維を包み被覆した２層構造の混繊複合糸、複合
仮撚糸を得ることができた。この化繊複合ポリエステル
繊維複合糸を用いることによって、色調の多様化が可能
な清涼で梳毛感、ドレープ性に優れる化繊複合ポリエス
テル織編物を提供することができる。本発明の複合糸は
ポリエステルフィラメント糸が芯のセルロース繊維を包
んで被覆層を形成しているので、その織編物の抗ピリン
グ、耐擦れ性、スナッキング性が著しく優れている。

【００２４】本発明の複合糸からなる織編物は、その特
異な風合いを活して、婦人用アウター（ジャケット、ス
カート、パンツ等）に有用である。

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 中空率が１５〜３０％の中空の単糸で構
   成され、伸度８０〜１５０％を有するシックアンドシン
   ポリエステルマルチフィラメント糸を鞘糸成分とし、セ
   ルロース繊維を芯糸として形成された化繊ポリエステル
   繊維複合糸。
2. 【請求項２】 シックアンドシンポリエステルマルチフ
   ィラメント糸が無撚状態で複合糸の被覆層構造を形成し
   てなる請求項１の化繊ポリエステル繊維複合糸。
3. 【請求項３】 複合糸が複合仮撚糸である請求項１記載
   の化繊ポリエステル繊維複合糸。
4. 【請求項４】 中空率１５〜３０％の中空の単糸で構成
   される伸度８０〜１５０％を有するシックアンドシンポ
   リエステルマルチフィラメント糸を鞘糸成分とし、セル
   ロース繊維を芯糸として形成された複合糸で構成した化
   繊ポリエステル繊維複合織編物。
5. 【請求項５】 シックアンドシンポリエステルマルチフ
   ィラメント糸が無撚状態で複合糸の被覆層構造を形成し
   てなる請求項４の化繊ポリエステル繊維複合織編物。
6. 【請求項６】 複合糸が複合仮撚糸である請求項４記載
   の化繊ポリエステル繊維複合織編物。