JPH11286704A - 摩擦部材およびその製造方法 - Google Patents

摩擦部材およびその製造方法

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JPH11286704A
JPH11286704A JP9015698A JP9015698A JPH11286704A JP H11286704 A JPH11286704 A JP H11286704A JP 9015698 A JP9015698 A JP 9015698A JP 9015698 A JP9015698 A JP 9015698A JP H11286704 A JPH11286704 A JP H11286704A
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JP
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alloy powder
powder
friction member
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sintering
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JP9015698A
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Katsuyoshi Kondo
勝義 近藤
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 焼結材と基材との十分な接合強度が得られ、
かつ、その焼結材が比較的高い空孔率を有する積層構造
の摩擦部材とその製造方法を提供する。 【解決手段】 焼結材用の原料粉末を成形して成形圧粉
体を形成する。基材上に所定の金属粉末および/または
合金粉末を含む中間接合層を形成する。その中間接合層
上に成形圧粉体を当接した状態で焼結することにより、
比較的高い空孔率を有する焼結材を作製するとともに、
その焼結材と基材とを拡散接合させて一体化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は摩擦部材およびその
製造方法に関し、特に、金属製基材の表面上に摩擦材と
しての焼結材が接合された積層構造の摩擦部材およびそ
の製造方法に関するものであり、マニュアルトランスミ
ッション(MT)に用いられるシンクロナイザリング、
オートマッチックトランスミッション(AT)に用いら
れる湿式多板クラッチ、または、カーエアコン用電磁ク
ラッチ等に適用される摩擦部材およびその製造方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】本発
明に関連する先行技術としては、たとえば、「摩擦体お
よび製造方法」(特開昭61−17723号公報)、
「摩擦もしくは滑り体を製造する方法および装置」(特
開平1−87702号公報)、「トルク伝達装置用摩擦
ライニング」(特開平8−35532号公報)、「シン
クロナイザ用摩擦材およびシンクロナイザリングの製造
方法」(特開平9−25527号公報)などがある。こ
れらの文献では、摩擦材を金属製基材の表面上に接合し
た摩擦部材が開示されている。摩擦材と金属製基材との
接合方法として、有機系接着剤による接合、電子ビーム
による溶接または焼結・拡散接合が用いられている。接
着剤による接合方法では、高温時に接着剤が劣化して接
合界面において摩擦材が剥離することがある。また、焼
結摩擦材が内周面に接合された2層構造の摩擦部材を創
製する場合には、粉末冶金法による焼結・拡散接合法を
適用することが経済的に優れている。
【0003】たとえば、上記の特開平9−25527号
公報では、鉄系合金あるいは銅系合金製シンクロナイザ
リング本体の内周面に、銅系焼結摩擦材を焼結により接
合し、一体化させる方法を提案している。この先行技術
の特徴は、焼結摩擦材の焼結温度よりも低い温度に固相
線を有し、または、その焼結温度よりも低い融点を持つ
金属および/または合金を用いていることである。具体
的には、Cu−P系合金、Cu−Sn系合金、Cu−Z
n系合金またはSnなどを用いている。これらの合金を
用いることは、実質的には焼結温度において液相が生じ
ることを意味している。焼結前の成形体が、このような
金属および/または合金成分を含有することによって、
焼結時に溶融した成分が毛細管現象により摩擦材とシン
クロナイザリング本体との接合界面に移動する。そし
て、その溶融成分によって接合界面における濡れ性が高
まり、相互拡散が生じることにより、シンクロナイザリ
ング本体と焼結摩擦材との接合が確実となる。
【0004】しかしながら、同文献では、焼結材の原料
混合粉末が、焼結摩擦材と金属製基材との界面において
液相を生成させる金属および/または合金成分を含有し
ているために、焼結過程において生じた液相によって、
粉末同士の拡散・焼結が進行する。このため、本発明が
規定する20容積%以上の高い空孔率を有する焼結材を
作製することが困難であった。
【0005】本発明は上記問題点を解決するためになさ
れたものであり、1つの目的は、基材と所望の高い空孔
率を有する焼結材とを拡散接合させた摩擦部材を提供す
ることであり、他の目的は、そのような摩擦部材の製造
方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、種々の実験
および検討を行なった結果、比較的高い空孔率を有する
焼結材を作製すると同時に、この焼結材を金属製基材の
表面に接合した積層構造の摩擦部材とその製造方法を発
明するに至った。
【0007】そこで、先行技術の1つである特開平9−
25527号公報に開示された発明と本発明との差異お
よび本発明の作用効果について以下に説明する。
【0008】図1(a)に本発明による製造方法の一例
を示し、図1(b)に、比較のために同文献による製造
方法を示す。上述したように、同文献では、焼結材の焼
結温度よりも低い温度に固相線を有し、または、その焼
結温度よりも低い融点を持つ金属成分および/または合
金成分を事前に原料粉末に配合するとともに、その原料
粉末を成形固化した圧粉体を基材に当接させた状態で焼
結する。その結果、成形圧粉体においては粉末同士が焼
結するが、同時に、金属成分および/または合金成分が
焼結時に溶融し、その液相成分が毛細管現象により焼結
材と基材との界面に移動して、界面の濡れ性が高まって
相互拡散が生じることにより基材と焼結材とが接合され
る。しかしながら、この方法では、成形圧粉体中におい
ても、焼結時に液相成分が生成するために、通常の固相
拡散による原料粉末間の焼結現象に比べて拡散現象が進
行して、たとえば、空孔率20容積%を超えるような空
孔を焼結材中に確保することが困難となる。
【0009】一方、本発明では、焼結材の比較的高い空
孔率を確保するために、上記の金属成分および/または
合金成分を焼結材の原料粉末には混合せず、焼結材と基
材との接合界面にのみ上記の金属成分および/または合
金成分を存在させる方法を見出した。具体的には、図1
(a)に示すように、基材と圧粉成形体との接触界面に
上記の金属成分および/または合金成分を有する粉末を
中間接合層として介在させるとともに、焼結時にその液
相を生じさせて基材と焼結材との界面において相互拡散
を起こすことにより両者を拡散接合する。この方法によ
れば、焼結材中には液相は生成しないために、通常の固
相拡散による焼結現象が進行し、その結果、焼結材は上
記の比較的高い空孔率を有することができる。
【0010】次に、本発明に係る摩擦部材とその製造方
法に関する構成を以下に示す。本発明の1つの局面にお
ける摩擦部材は、金属からなる基材と、その基材の表面
上に中間接合層を介在させて接合された焼結材とを備
え、その中間接合層は、焼結材を形成する際の焼結条件
によって、液相が生じる金属粉末または合金粉末から形
成されている。
【0011】好ましくは、焼結材には、空孔率20容積
%以上60容積%以下の空孔が形成されている。
【0012】好ましくは、焼結材には、50μm以上3
00μm以下の空孔径を有する空孔が15容積%以上6
0容積%以下形成されている。
【0013】また好ましくは、焼結材には、その空孔が
35容積%以上50容積%以下形成されている。
【0014】好ましくは、焼結材は焼結時に液相を生じ
ない焼結材料からなる。好ましくは、中間接合層の焼結
時において生じた液相は、中間接合層と焼結材との接合
界面近傍における焼結材の空孔へ入り込んでいる。
【0015】好ましくは、合金粉末は、Cu−P系合金
粉末、Cu−Sn−P系合金粉末、Cu−Al−P系合
金粉末、Fe−P系合金粉末またはFe−Cu−P系合
金粉末、Al−P系合金粉末、Al−Cu系合金粉末、
Al−Sn系合金粉末、Al−Cu−P系合金粉末およ
びAl−Sn−P系合金粉末からなる群から選ばれたい
ずれかの合金粉末である。
【0016】本発明の他の局面における摩擦部材の製造
方法は、以下の工程を備えている。金属からなる基材を
準備する。基材の表面上に、所定の金属粉末または合金
粉末からなる中間層を形成する。焼結材用原料粉末から
なる成形体を中間層上に配置する。中間層を構成する粉
末中に液相が生じ、かつ、成形体を構成する粉末中に液
相が生じない条件にて焼結する。
【0017】好ましくは、焼結の条件として、中間層を
構成する粉末中に液相が生じる最低の温度をT1とし、
前記成形体を構成する粉末中に液相が生じない最高温度
をT2とすると、焼結温度は温度T1よりも高く、温度
T2よりも低い。
【0018】好ましくは、成形体を中間層に配置するの
に先立ち、成形体を仮焼結する工程をさらに備えてい
る。
【0019】好ましくは、中間層を配置する工程は、基
材の表面上に所定の金属粉末または合金粉末を塗布した
後に、塗布された金属粉末または合金粉末を加圧する工
程を含んでいる。
【0020】好ましくは、中間層を配置する工程は、所
定の金属または合金粉末と有機溶媒または有機バインダ
とを混合して得られたスラリーを、基材の表面上に塗布
する工程を含んでいる。
【0021】好ましくは、中間層を配置する工程は、基
材の表面上に有機物を塗布した後に、所定の金属または
合金粉末を塗布する工程を含んでいる。
【0022】好ましくは、所定の金属または合金粉末
は、Cu−P系合金粉末、Cu−Sn−P系合金粉末、
Cu−Al−P系合金粉末、Fe−P系合金粉末、Fe
−Cu−P系合金粉末、Al−P系合金粉末、Al−C
u系合金粉末、Al−Sn系合金粉末、Al−Cu−P
系合金粉末およびAl−Sn−P系合金粉末からなる群
から選ばれたいずれかの合金粉末である。
【0023】次に、本発明に係る摩擦部材とその製造方
法の特徴について詳細に説明する。 基材について 基材に用いる材質としては、鉄系合金、銅系合金、アル
ミニウム系合金およびチタン系合金のうちのいずれの合
金であってもよく、また、溶解法、鋳造法、粉末冶金法
のいずれの方法により作製されてものでもよい。ただ
し、焼結時の焼結温度よりも高い温度に固相線を有する
金属、または、その焼結温度よりも高い融点をもつ金属
からなる必要がある。これは、焼結過程において、基材
が顕著に変形または溶融することを回避するためであ
る。
【0024】焼結材について 本発明の摩擦部材に適用する焼結材としては、銅系焼結
材、鉄系焼結材およびアルミニウム焼結材のうちのいず
れかの焼結材である。その焼結材に含まれる合金成分等
に関する制約はなく、たとえば、Cu−Sn系、Cu−
Zn系、Fe−Cu−C系、Fe−Ni−Cr系、Fe
−Cu−Ni−Mo系、Al−Si系、Al−Fe系、
Al−Si−Fe系などの公知の焼結材料を適用するこ
とができる。また、焼結時の雰囲気については、焼結時
の酸化現象を抑制する観点から、不活性ガス、還元性ガ
ス若しくは非酸化性ガスの雰囲気または真空が好まし
い。また、焼結温度は、焼結材中に液相が生じない温度
である必要がある。
【0025】焼結材中の空孔に関しては、本発明の対象
製品の1つである湿式焼結摩擦材において重要な役割を
有する。本発明者は、ギア油やATF油などの潤滑油が
使用される湿式環境下において、焼結材がクラッチやブ
レーキとして使用される際に、高い摩擦係数を発現させ
るためには、空孔を介して潤滑油を透過させることによ
り潤滑油膜を排除することが有効であり、そのために
は、焼結材が特定の範囲内の空孔率を有していること、
または、特定の大きさの空孔を適正量有していることが
有効であることを見出した。具体的には、焼結材全体に
対して20容積%以上60容積%以下の空孔を有してい
ること、または、空孔径50μm以上300μm以下の
空孔を、焼結材全体に対して、15容積%以上60容積
%以下、より好ましくは、35容積%以上50容積%以
下有していることが有効であることを見出した。これに
より、焼結材が潤滑油を透過させる透過性能が向上す
る。このような多くの連結空孔中を潤滑油が透過するこ
とによって、焼結材と相手材との摺動界面に存在する油
膜を破壊および除去することができる。その結果、焼結
材が相手材と摺動する際の滑り速度や押付圧力の変化に
対しても安定して高い摩擦係数を発現することができ
る。
【0026】その空孔率が60容積%を超える場合、ま
たは、空孔径50μm以上300μm以下の空孔の空孔
率が60容積%を超える場合には、耐摩耗性が低下す
る。また、空孔率が増加するために相手材との実接触面
積が減少するために、摩擦トルクが減少して、高い摩擦
係数を得ることができなくなる。また、空孔率が20容
積%を下回る場合、または、空孔径50μm以上300
μm以下の空孔の空孔率が15容積%を下回る場合に
は、摺動界面における油膜の除去および破壊が十分に行
なわれず、その結果、摩擦係数が低下する。特に、高速
度域では、摩擦係数の低下に加えて摩擦係数が変動する
といった問題が生じる。
【0027】このような高い空孔率を確保するために
は、たとえば、びびり振動切削法などによって得られる
曲線を有する短繊維粉末やカール状粉末などの比較的見
掛け密度(充填率)の小さい原料粉末、または、直径2
00μmを超えるような粗粒な真球状粉末を原料粉末に
用いることや、プレス成形などの公知の成形方法に従っ
て成形面圧を制御することによって管理することができ
る。
【0028】中間接合層について 図1(a)に示したように、焼結材中に高い空孔率を確
保するために、焼結時の条件により液相が生じる金属粉
末または合金粉末を原料粉末には配合させず、接合界面
にのみ存在させている。具体的には、そのような金属粉
末または合金粉末として、焼結時の焼結温度よりも低い
温度に固相線を有するもの、または、焼結温度よりも低
い融点をもつものを適用することができる。これを中間
接合層として介在させ、焼結時にその液相を生成させて
基材と焼結材との間で相互拡散を生じさせることにより
両者を接合する方法を、発明者は見出した。また、焼結
時に生じた液相は、中間接合層と焼結材との界面近傍に
おける焼結材の空孔へ入り込んでいる。このような機能
を発現することができる金属成分または合金成分とし
て、本発明では、銅系成分として、Cu−P系、Cu−
Sn−P系、Cu−Zn−P系、Cu−Al−P系成分
を適用し、鉄系成分として、Fe−P系、Fe−Cu−
P系成分を適用し、アルミニウム系成分として、Al−
P系、Al−Cu系、Al−Sn系、Al−Cu−P
系、Al−Sn−P系成分等を適用している。
【0029】本発明に係る中間接合層を用いて基材と焼
結材とを積層した摩擦部材を作製する方法として、図2
に示す2つの工程に分離することができる。
【0030】図2(a)では、焼結材となる圧粉成形体
を作製し、その圧粉成形体を所定の条件下で仮焼結する
ことにより空孔率20容積%以上の焼結材を作製する。
一方、基材においては、その基材の表面上に焼結時に液
相を生成する金属粉末あるいは合金粉末からなる中間接
合層を形成する。そして、この中間接合層に焼結材を当
接させて積層構造とし、その状態で焼結することにより
焼結材と基材とを拡散接合させる。
【0031】一方、図2(b)では、焼結材となる圧粉
成形体を作製し、(a)と同様に、基材には、その基材
の表面上に焼結時に液相を生成する金属粉末または合金
粉末からなる中間接合層を形成する。この中間接合層に
圧粉成形体を当接させることで積層構造とし、その状態
で焼結して圧粉成形体より焼結材を創製すると同時に、
拡散現象により焼結材と基材とを接合させる。
【0032】また、中間接合層の形成方法として、たと
えば、金属粉末および/または合金粉末を基材上に塗布
および充填した状態で加圧することにより中間接合層
(圧粉体層)を形成する方法(方法A)、金属粉末およ
び/または合金粉末を有機溶媒または有機バインダに混
合した液体(スラリー)を基材上に塗布することにより
中間接合層を形成する方法(方法B)、粘着性を有する
液体、半液体または固体からなる有機物を予め基材上に
塗布した後、金属粉末および/または合金粉末を散布お
よび塗布することにより中間接合層を形成する方法(方
法C)などがある。方法B、方法Cにおいて用いる有機
溶媒、有機バインダまたは有機物が焼結後に焼結材と基
材との接合界面に残存すると、焼結材と基材との接合強
度が低下するために、焼結温度以下で熱分解する必要が
ある。また、方法Bでは、ポリビニルアルコール(PV
A)の水溶液に、金属粉末および/または合金粉末を混
合および分散させておき、これを基材上に薄く塗布する
方法も有効である。さらに、方法Cでは、たとえば、ス
プレー糊のようなミスト状の粘着性有機物を基材上に塗
布しておき、この上に金属粉末および/または合金粉末
を散布および塗布する方法も簡便である。
【0033】
【実施例】実施例1 下の表1に示す3種類の焼結材(A〜C)と基材(I〜
III)を準備した。焼結材と基材との接合界面に、表
1に示された金属粉末または合金粉末からなる中間接合
層を形成した。その後、表1に示された焼結温度(窒素
雰囲気)にて1時間加熱することにより積層構造の摩擦
部材を作製した。得られた摩擦部材のせん断強度を測定
した結果を表1に示す。なお、表1では焼結材の合金組
成は重量%、空孔率は容積%で示されている。また、中
間接合層の形成に際しては、基材の接合面側に有機物を
含む合成ゴム系接着剤(295℃で熱分解する)をスプ
レーにより塗布し、その上に、所定の金属粉末または合
金粉末を塗布することにより中間接合層を形成した。
【0034】
【表1】
【0035】表1に示されているように、適正条件を満
足する中間接合層を設けた本発明例(No.1〜5)で
は、加熱および焼結により、焼結材と基材との良好な接
合性が得られていることが確認された。
【0036】一方、比較例(No.6〜9)では、中間
層を有さないために、加熱および焼結工程を施しても、
焼結材と基材とを接合することができないことがわかっ
た。なお、加熱および焼結工程による接合を施した場合
でも、摩擦部材における焼結材の空孔率は接合前の空孔
率と変化なく、20容積%を超える値を有することが確
認された。
【0037】実施例2 焼結材の原料混合粉末として、下の表2に示された3種
類(A〜C)の原料混合粉末を準備し、それぞれの圧粉
成形体(空孔率36容積%)を作製した。表2に示す材
質からなる金属製の基材(I〜III)を準備した。次
に、金属製の基材の上に圧粉成形体を当接して加熱およ
び焼結を施すことにより焼結材を作製するとともに、焼
結材と基材との接合を試みた。なお、焼結の際には、基
材の接合面側には、表2に記載された金属粉末または合
金粉末からなる中間接合層を形成し、その中間接合層の
上に圧粉成形体を当接させた状態で加熱および焼結を施
した。そして、表2に示された焼結温度(N2 +H2
混合ガス雰囲気)にて1時間加熱することにより積層構
造の摩擦部材を作製した。得られた摩擦部材のせん断強
度を測定した結果を表2に示す。なお、原料混合粉末の
合金組成は重量%で表示されている。また、中間接合層
の形成に際しては、基材の接合面上に中間接合層用の粉
末を塗布するとともに、面圧1t/cm2 にて加圧する
ことにより中間接合層を形成した。
【0038】
【表2】
【0039】表2に示されているように、適正条件を満
足する中間接合層を設けた本発明例(No.1〜6)で
は、加熱および焼結により、焼結材を得ると同時に焼結
材と基材との良好な接合性が得られることが確認され
た。
【0040】一方、比較例(No.7〜9)では、中間
接合層を有さないために、加熱および焼結工程を施して
も焼結材と基材とを接合することができないことがわか
った。また、積層構造の摩擦部材が得られたとしても、
その接合強度は低いことがわかった。
【0041】なお、表2に示された20容積%を超える
空孔率を有する圧粉成形体を用いて、加熱および焼結工
程による接合を施した場合でも、積層構造の摩擦部材に
おける焼結材の空孔率は圧粉成形体の空孔率と大きく変
化することはなく、20容積%を超える値を有すること
が確認された。
【0042】実施例3 S35C鋼材からなる金属製の基材上に、有機バインダ
とCu−Sn−P粉末(融点765℃)を混合したスラ
リー状ペーストを塗布して中間接合層を作製した。この
中間接合層上に、下の表3に示す空孔率を有する銅系焼
結材(Cu−10重量%Sn−15%重量FeCr−1
重量%Cr/重量%表示)を当接させた後、窒素ガス雰
囲気中にて温度850℃、時間1時間の加熱および焼結
処理を施すことにより、基材上に銅系焼結材が接合され
た積層構造の摩擦部材を作製した。この積層構造の摩擦
部材からチップ形状の摩耗試験片を採取した。そして、
図3に示すようなチップオンディスク式摩擦試験機を用
いて、潤滑油(ATF)中における摩耗試験片の摩擦摺
動特性を評価した。なお、相手のディスク材はS10C
鋼材とし、加圧力10kgf/cm2 、滑り速度0.2
〜2m/secとして試験を実施した。摩擦試験過程の
各速度における平均摩擦係数μの変化と摩擦係数の変動
幅Δμ(最大平均摩擦係数−最小平均摩擦係数)を下の
表3に示す。本試験では、各滑り速度において5分間保
持している。積層構造の摩擦部材の接合に関する条件
は、本発明が規定する適正条件を満足しており、十分に
高い接合強度を有していることが確認された。また、焼
結材中の平均空孔径が50μm以上80μm以下である
ことが確認された。
【0043】
【表3】
【0044】表3に示されているように、本発明例(N
o.1〜3)では、銅系焼結材の空孔率が30容積%を
超えるために、潤滑油中で摺動しても相手材との摺動界
面における潤滑油が空孔を透過することにより厚い油膜
が形成されることがなく、その結果、滑り速度が変化し
ても高い摩擦係数が安定して得られ、MTのシンクロナ
イザリング用摩擦材やAT用湿式多板クラッチ材として
十分に使用できることがわかった。
【0045】一方、比較例(No.4〜6)では、空孔
率が20容積%を下回ると、摩擦係数の速度依存性(Δ
μ)が大きくなり、しかも、空孔率の低下とともに摩擦
係数の値も低下することが判明した。
【0046】実施例4 S35C鋼材からなる金属製の基材上に、有機バインダ
とCu−Sn−P粉末(融点765℃)を混合したスラ
リー状ペーストを塗布して中間接合層を作製した。この
中間接合層上に、表4に示す空孔径および空孔率を有す
る鉄系焼結材(Fe−0.8%C−0.4%Si−0.
2%Cr/重量%表示)を当接させた後、窒素ガス雰囲
気中にて温度900℃、時間1時間の加熱および焼結処
理を施すことにより、基材上に鉄系焼結材が接合された
積層構造の摩擦部材を作製した。この積層構造の摩擦部
材からチップ形状の摩耗試験片を採取した。そして、図
3に示すようなチップオンディスク式摩擦試験機を用い
て、潤滑油(ATF)中における摩耗試験片の摩擦摺動
特性を評価した。なお、相手のディスク材はSCM41
5鋼材(浸炭処理)とし、加圧力50kgf/cm2
滑り速度0.4〜2m/secとして試験を実施した。
摩擦試験過程の各速度における平均摩擦係数μの変化と
摩擦係数の変動幅Δμ(最大平均摩擦係数−最小平均摩
擦係数)を表4に示す。本試験では、各滑り速度におい
て5分間保持している。積層構造の摩擦部材の接合に関
する条件は、本発明が規定する適正条件を満足してお
り、十分に高い接合強度を有していることが確認され
た。
【0047】
【表4】
【0048】表4に示されているように、本発明例(N
o.1〜4)では、空孔径50μm以上300μm以下
の空孔を20容積%以上60容積%以下の適性範囲内で
保有している。このため、潤滑油中で摺動しても相手材
との摺動界面における潤滑油が空孔を透過することによ
り厚い油膜が形成されることがなく、その結果、滑り速
度が変化しても高い摩擦係数が安定して得られ、MTの
シンクロナイザリング用摩擦材やAT用湿式多板クラッ
チ材として十分に使用できることがわかった。
【0049】一方、比較例(No.5、6)では、空孔
径50μm以上300μm以下の空孔の空孔率が20容
積%を下回るために、摩擦係数の速度依存性(Δμ)が
大きくなり、しかも、空孔率の低下とともに摩擦係数の
値も低下することが判明した。また、比較例(No.
7)では、空孔径50μm以上300μm以下の空孔の
空孔率が60容積%を超えるために、顕著な摩耗損傷が
生じ、その結果、摩耗粉の噛み込みにより凝着現象が誘
発されて、摩擦係数が増大することが判明した。
【0050】今回開示された実施例はすべての点で例示
であって制限的なものではないと考えられるべきであ
る。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の
範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およ
び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図され
る。
【0051】
【発明の効果】本発明に係る摩擦部材およびその製造方
法によれば、潤滑油などの湿式環境下においても高い摩
擦係数を発現することができ、マニュアルトランスミッ
ションに用いられるシンクロナイザリングやオートマッ
チックトランスミッションに用いられる湿式多板クラッ
チ、または、カーエアコン用電磁クラッチなどに適用で
き、しかも、これらを経済性よく製造することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】積層構造の摩擦部材の製造方法を示し、(a)
は、本発明に係る製造方法を示し、(b)は、従来の製
造方法を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る摩擦部材の製造方法を示
し、(a)は、その第1の製造方法を示し、(b)は、
その第2の方法を示す図である。
【図3】チップオンディスク式摩擦試験方法を示す図で
ある。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F16D 69/02 F16D 69/02 Z

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属からなる基材と、 前記基材の表面上に中間接合層を介在させて接合された
    焼結材とを備え、 前記中間接合層は、前記焼結材を形成する際の焼結条件
    によって、液相が生じる金属粉末または合金粉末から形
    成された、摩擦部材。
  2. 【請求項2】 前記焼結材には、空孔率20容積%以上
    60容積%以下の空孔が形成されている、請求項1記載
    の摩擦部材。
  3. 【請求項3】 前記焼結材には、50μm以上300μ
    m以下の空孔径を有する空孔が15容積%以上60容積
    %以下形成されている、請求項1記載の摩擦部材。
  4. 【請求項4】 前記焼結材には、前記空孔が35容積%
    以上50容積%以下形成されている、請求項3記載の摩
    擦部材。
  5. 【請求項5】 前記焼結材は焼結時に液相を生じない焼
    結材料からなる、請求項1〜4のいずれかに記載の摩擦
    部材。
  6. 【請求項6】 前記中間接合層の焼結時において生じた
    液相は、前記中間接合層と前記焼結材との接合界面近傍
    における前記焼結材の空孔へ入り込んでいる、請求項1
    〜5のいずれかに記載の摩擦部材。
  7. 【請求項7】 前記合金粉末は、Cu−P系合金粉末、
    Cu−Sn−P系合金粉末、Cu−Al−P系合金粉
    末、Fe−P系合金粉末またはFe−Cu−P系合金粉
    末、Al−P系合金粉末、Al−Cu系合金粉末、Al
    −Sn系合金粉末、Al−Cu−P系合金粉末およびA
    l−Sn−P系合金粉末からなる群から選ばれたいずれ
    かの合金粉末である、請求項1〜6のいずれかに記載の
    摩擦部材。
  8. 【請求項8】 金属からなる基材を準備する工程と、 前記基材の表面上に、所定の金属粉末または合金粉末か
    らなる中間層を形成する工程と、 焼結材用原料粉末からなる成形体を前記中間層上に配置
    する工程と、 前記中間層を構成する粉末中に液相が生じ、かつ、前記
    成形体を構成する粉末中に液相が生じない条件にて焼結
    する工程とを備えた、摩擦部材の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記焼結の条件として、前記中間層を構
    成する粉末中に液相が生じる最低の温度をT1とし、前
    記成形体を構成する粉末中に液相が生じない最高温度を
    T2とすると、 焼結温度は、前記温度T1よりも高く、前記温度T2よ
    りも低い、請求項8記載の摩擦部材の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記成形体を前記中間層に配置するの
    に先立ち、前記成形体を仮焼結する工程をさらに備え
    た、請求項8または9に記載の摩擦部材の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記中間層を配置する工程は、前記基
    材の表面上に所定の前記金属粉末または合金粉末を塗布
    した後に、塗布された前記金属粉末または合金粉末を加
    圧する工程を含む、請求項8〜10のいずれかに記載の
    摩擦部材の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記中間層を配置する工程は、所定の
    前記金属または合金粉末と有機溶媒または有機バインダ
    とを混合して得られたスラリーを、前記基材の表面上に
    塗布する工程を含む、請求項8〜10のいずれかに記載
    の摩擦部材の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記中間層を配置する工程は、前記基
    材の表面上に有機物を塗布した後に、所定の前記金属ま
    たは合金粉末を塗布する工程を含む、請求項8〜10の
    いずれかに記載の摩擦部材の製造方法。
  14. 【請求項14】 所定の前記金属または合金粉末は、C
    u−P系合金粉末、Cu−Sn−P系合金粉末、Cu−
    Al−P系合金粉末、Fe−P系合金粉末、Fe−Cu
    −P系合金粉末、Al−P系合金粉末、Al−Cu系合
    金粉末、Al−Sn系合金粉末、Al−Cu−P系合金
    粉末およびAl−Sn−P系合金粉末からなる群から選
    ばれたいずれかの合金粉末である、請求項8〜13のい
    ずれかに記載の摩擦部材の製造方法。
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