JPH11286735A - 摩擦部材およびその製造方法 - Google Patents

摩擦部材およびその製造方法

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JPH11286735A
JPH11286735A JP10539098A JP10539098A JPH11286735A JP H11286735 A JPH11286735 A JP H11286735A JP 10539098 A JP10539098 A JP 10539098A JP 10539098 A JP10539098 A JP 10539098A JP H11286735 A JPH11286735 A JP H11286735A
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JP10539098A
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Katsuyoshi Kondo
勝義 近藤
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い摩擦摺動特性を有し、薄肉化が可能な摩
擦部材とその製造方法とを提供する。 【解決手段】 リンを含む鉄合金粉末と、硬質粒子と、
錫、亜鉛およびニッケルからなる群から選ばれる少なく
とも1つの金属とを含む原料混合粉末を金属製裏金上に
充填して焼結することにより、所定の空孔率を有する銅
系焼結合金を作製すると同時に、その銅系焼結合金と金
属製裏金とを固相拡散接合させて両者を一体化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は摩擦部材およびその
製造方法に関し、特に、クラッチやブレーキのような相
手材と摺動してトルクを伝達する際に用いるリング形状
の摩擦部材であって、摩擦摺動特性を発現する銅系焼結
合金の部分を薄肉化することが可能な摩擦部材およびそ
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】大気
中で使用される電磁クラッチや潤滑油中で使用される自
動変速機用湿式多板クラッチなどでは、従来、フェノー
ル系熱硬化樹脂やパルプ繊維に樹脂を含浸させた材料が
摩擦材として使用されてきた。しかし、高速および高荷
重といった過酷な使用条件のもとでは、これらの材料で
は耐熱性に欠けるために、使用過程で劣化して十分な耐
久性を得ることができなかった。そこで、これまでに本
発明者は、たとえば、「焼結摺動部材」(特開平7−1
02335号公報)において、耐熱性、耐摩耗性および
耐焼付性に優れた銅系焼結摩擦部材を提案し、クラッチ
材として過酷な条件下で適用しても十分な耐久性を有し
ていることを確認した。
【0003】一般に、クラッチ材はリング形状であり、
その厚さは0.5〜5mm程度である。そして、その外
径は小さいものでは20mmφ程度である。しかし、外
径が60mmφを超えるような比較的大きいクラッチも
多い。また、クラッチ材においては、相手材と摺動する
表層部分以外は摩擦摺動特性が要求されないため、可能
なかぎりクラッチ材を薄くすることにより経済的効果、
小型化および軽量化の効果が期待される。
【0004】しかしながら、従来の粉末冶金法により、
このような寸法および形状を有する銅系焼結摩擦材を作
製する場合には、比較的薄い圧粉成型体では強度が十分
ではないために搬送過程で割れが発生したり、また、銅
系焼結合金の強度が十分でないためにクラッチとして基
材(本体)に組み込む際に銅系焼結合金が破損するとい
った問題が発生した。
【0005】本発明は上記問題点を解決するためになさ
れたものであり、薄肉化が可能で、しかも摩擦摺動特性
に優れた銅系焼結合金を有する摩擦部材とその製造方法
を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは種々の実験
および検討を行なった結果、耐摩耗性および耐焼付性に
優れ、しかも高い摩擦係数を安定して有する比較的薄い
銅系焼結合金を有する摩擦部材とその製造方法を発明し
た。
【0007】本発明が対象とするトルク伝達用の摩擦部
材の平面構造を図1(a)に示す。また、リング状の金
属製裏金の一方の面に銅系焼結合金が接合された2層構
造の摩擦部材の断面構造を図1(b)に示す。さらに、
リング状の金属製裏金の両方の面に銅系焼結合金が焼結
された3層構造の摩擦部材の断面構造図1(c)に示
す。なお、図1(b)および(c)は、いずれも図1
(a)に示すA−Aにおける断面構造を示している。
【0008】本発明に係る摩擦部材の銅系焼結合金は、
図1(a)〜(c)に示すように、リング形状を有した
トルク伝達用の薄い摩擦材料を対象としている。そし
て、薄い銅系焼結合金を作製することに伴う圧粉成型体
や銅系焼結合金の強度低下の問題は、銅系焼結合金と金
属製裏金との一体化により解決することができる。ま
た、摩擦摺動特性については、その薄い銅系焼結合金の
部分においてその機能を発現することができる。しか
も、可能なかぎり銅系焼結合金を薄くすることにより、
経済性効果、小型化および軽量化の効果を実現すること
ができる。
【0009】本発明に係る摩擦部材およびその製造方法
の構成を以下に示す。本発明の1つの局面における摩擦
部材は、金属板と、その金属板の少なくとも一方の表面
上に拡散接合された銅系焼結合金とを備えている。銅系
焼結合金は、リンを含む鉄合金粉末と、硬質粒子と、
錫、亜鉛およびニッケルからなる群から選ばれる少なく
とも1つの金属とを含んで形成されている。金属板と銅
系焼結合金との接合界面には、リンを含む金属間化合物
が形成されている。
【0010】好ましくは、鉄合金粉末に対するリンの含
有量は5重量%以上30重量%以下である。
【0011】好ましくは、銅系焼結合金に対する鉄合金
粉末の含有量は1重量%以上10重量%以下である。
【0012】好ましくは、硬質粒子はマイクロビッカー
ス硬度400以上であり、銅系焼結合金に対するその硬
質粒子の含有量は5容積%以上30容積%以下である。
【0013】好ましくは、銅系焼結合金に対する錫の含
有量は3重量%以上20重量%以下であり、亜鉛の含有
量は5重量%以上40重量%以下であり、ニッケルの含
有量は5重量%以上40重量%以下である。
【0014】好ましくは、銅系焼結合金には空孔率20
容積%以下の空孔が形成されている。
【0015】好ましくは、銅系焼結合金には空孔率20
容積%以上60容積%以下の空孔が形成されている。
【0016】好ましくは、銅系焼結合金には、50μm
以上300μm以下の空孔径を有する空孔が15容積%
以上60容積%以下形成されている。
【0017】また好ましくは、銅系焼結合金には、その
空孔が35容積%以上50容積%以下形成されている。
【0018】好ましくは、銅系焼結合金は、黒鉛、二硫
化モリブデン、二硫化タングステンおよび窒化ホウ素か
らなる群から選ばれる少なくとも1つの潤滑成分を含
み、銅系焼結合金に対するその潤滑成分の含有量は10
重量%以下である。
【0019】好ましくは、硬質粒子は、鉄系金属間化合
物、酸化物系セラミックスおよび窒化物系セラミックス
からなる群から選ばれた少なくとも1つからなる。
【0020】金属板は、鉄、銅、チタンおよびそれらの
合金からなる群から選ばれた1つの金属からなる。
【0021】好ましくは、銅系焼結合金と接する金属板
の表面には、ニッケル、錫、銅、亜鉛、コバルトおよび
銀からなる群から選ばれるいずれかのめっき層が形成さ
れている。
【0022】好ましくは、金属板は所定の外径と内径と
を有するリング形状であり、その外径をD、その内径を
dとしたときに、D≧20mmおよびd≧D/4を満た
している。
【0023】本発明の他の局面における摩擦部材の製造
方法は以下の工程を備えている。所定寸法の金属板およ
びその金属板を挿入するための凹部が設けられた型を準
備する。リンを含有する鉄合金粉末と、硬質粒子と、
錫、亜鉛およびニッケルからなる群から選ばれる少なく
とも1つの金属を含む銅合金粉末とを準備する。鉄合金
粉末と硬質粒子と銅合金粉末とを混合して銅系混合粉末
を準備する。金属板を前記型内の凹部に挿入する。金属
板上の型内に、銅系混合粉末を充填する。銅系混合粉末
が充填された型を焼結することにより、銅系焼結合金を
生成するとともに、銅系焼結合金と金属板とを拡散接合
する。
【0024】好ましくは、銅系混合粉末は、黒鉛、二硫
化モリブデン、二硫化タングステン、および窒化ホウ素
からなる群から選ばれる少なくとも1つの潤滑成分を1
0重量%以下含んでいる。
【0025】好ましくは、金属板を型内の凹部に挿入す
る前に、銅系混合粉末を型内の凹部に充填する工程を含
んでいる。
【0026】好ましくは、鉄合金粉末に対するリンの含
有量は5重量%以上30重量%以下である。銅系混合粉
末に対する鉄合金粉末の含有量は1重量%以上10重量
%以下である。硬質粒子はマイクロビッカース硬度40
0以上であり、銅系混合粉末に対する硬質粒子の含有量
は5容積%以上30容積%以下である。銅系混合粉末に
対する錫の含有量は3重量%以上20重量%以下であ
り、亜鉛の含有量は5重量%以上40重量%以下であ
り、ニッケルの含有量は5重量%以上40重量%以下で
ある。
【0027】好ましくは、銅系混合粉末を充填する工程
と焼結工程との間に、金属板上に充填された状態にある
銅系混合粉末を加圧する工程を含んでいる。
【0028】好ましくは、焼結工程は、温度700℃以
上1050℃以下のもとで、不活性ガスもしくは還元性
ガスの雰囲気または真空中にて行なわれる。
【0029】好ましくは、焼結工程の後に、銅系焼結合
金を加圧する工程を含んでいる。また好ましくは、銅系
焼結合金を加圧した後に、銅系焼結合金を、温度700
℃以上のもとで、不活性ガスもしくは還元性ガスの雰囲
気または真空中にて再焼結する工程を含んでいる。
【0030】好ましくは、金属板の表面に、予めニッケ
ル、錫、銅、亜鉛、コバルトおよび銀からなる群から選
ばれるいずれかのめっき層を形成する工程を含んでい
る。
【0031】次に、本発明に係る摩擦部材およびその製
造方法の特徴、作用および効果について詳細に説明す
る。
【0032】トルク伝達用の摩擦部材について 本発明に係るトルク伝達用の摩擦部材には、大気中など
の乾式条件下、または、潤滑油やグリース等の液体・半
固体潤滑成分が存在する湿式条件下における優れた摩擦
摺動特性が要求される。そしてさらに、薄肉化に伴う高
い生産性、経済性および軽量化を実現するための優れた
機械的特性(強度)が要求される。
【0033】具体的には、摩擦摺動特性に関しては、相
手材と摩擦摺動した際に、銅系焼結合金が摩耗損傷しな
いこと、銅系焼結合金が相手材を攻撃しないこと、およ
び焼付現象、凝着現象、鳴き、びびり、振動等の不快現
象を発生させないことが要求される。
【0034】一方、軽量化および経済性の観点から可能
なかぎり銅系焼結合金の肉厚は薄いことが望ましいが、
上述したように、銅系焼結合金の薄肉化を進めると製造
工程における圧粉成型体のハンドリングの問題や、銅系
焼結合金を基材(本体)に組み込む際に銅系焼結合金が
破損するといった問題が生じる。したがって、機械的特
性(強度)に関しては、これを防止し得る強度を有する
摩擦部材が要求される。
【0035】そして、本発明者はこれらの2つの特性を
同時に満足するために、摩擦摺動特性は銅系焼結合金に
より、機械的特性は基材となる金属製裏金により、それ
ぞれ役割を分担させるような材料設計を提案した。すな
わち、本発明者は薄い金属製裏金上に比較的薄い銅系焼
結合金が接合された2層または3層構造の摩擦部材が有
効であることを見いだした。
【0036】次に、金属製裏金と銅系焼結合金の特性、
両者の一体化接合法を含めた製造工程について、以下に
詳細に説明する。
【0037】多層構造の摩擦部材の寸法および形状につ
いて 上述したように、電磁クラッチや自動変速機用クラッチ
などに用いられる摩擦部材の厚さは0.5〜5mm程度
であり、通常1〜2mm程度が主流である。しかも、そ
のほとんどはその外径が60mmφを超えるリング形状
である。このため、製造過程における圧粉成型体の強度
低下に伴うハンドリング性の低下や、銅系焼結合金の強
度低下に伴う組立時の割れ、破損等の問題が発生する。
逆に、銅系焼結合金の厚さが5mmを超えるようなリン
グ形状であれば、従来の粉末冶金法により銅系焼結合金
のみの単層構造の摩擦部材を作製しても上記問題は発生
しない。
【0038】したがって、厚さが5mm以下のような比
較的薄い銅系焼結合金を創製する場合には、後述するよ
うな金属製裏金に銅系焼結合金を接合させた多層構造を
採用することにより上記の問題を解決することができ
る。
【0039】また、摩擦部材の寸法に関して、外径Dが
20mmφより大きく、しかも、内径dがD/4より大
きい場合では、後述するような空孔率を有する銅系焼結
合金では十分な強度を得ることが困難である。したがっ
て、D≧20mm、d≧D/4を満足するようなリング
形状の摩擦部材を創製する場合には、本発明による多層
構造の摩擦部材を適用することが有効である。
【0040】ただし、経済性の観点からは、摩擦部材に
おける銅系焼結合金の比率をできるかぎり小さくするこ
とが望ましい。たとえば、摩擦部材の厚さが5mmを超
えるようなものであっても、金属製裏金の厚さを厚くす
ることにより銅系焼結合金の厚さを薄く設定することが
でき、より安価に摩擦部材を製造することができる。し
たがって、本発明の摩擦部材では、その厚さが5mmを
超えるようなものであってもトルク伝達用の摩擦部材と
して適用でき、優れた経済性を得ることができる。
【0041】金属製裏金について 後述するように、金属製裏金を含む多層構造の摩擦部材
を作製する際は、銅合金粉末を金属製裏金上に充填した
状態で700℃以上の炉内で加熱することから、金属製
裏金には、700℃以上の加熱によって特性劣化がない
ことが望まれる。このような観点から、本発明では、
鉄、銅、チタンおよびそれらの合金からなる群から選ば
れた1つの金属を用いる。特に、経済性の観点からSP
CC鋼板のような打ち抜き鋼板を用いることが好まし
い。
【0042】銅系焼結合金について 銅系焼結合金では、金属製裏金との高い結合性、優れた
摩擦摺動特性(耐摩耗性および高い摩擦係数)が要求さ
れる。
【0043】(a) 金属製裏金との結合性 銅系焼結合金には、相手材と摺動する際に、金属製裏金
から剥離しないことが要求される。そこで、本発明者
は、銅系焼結合金を作製する焼結過程において、銅系焼
結合金と金属製裏金とを拡散接合法により同時に一体化
させることを提案した。そしてさらに、本発明者はこれ
を促進させるために銅系合金粉末中にPを含む鉄合金
(以下「Fe−P系合金」と記す。)粉末を添加するこ
とが有効であることを見いだした。
【0044】Fe−P系合金粉末に含まれるPにより、
銅系焼結合金中のCu成分との間でCu−P系金属間化
合物が生成され、金属製裏金に含まれるFe、Cuまた
はTiのそれぞれの成分との間で(Fe、Cu、Ti)
−P系金属間化合物や、(Fe、Ti)−Cu−P系化
合物が生成される。これにより、銅系焼結合金と金属製
裏金との接合界面における濡れ性が改善され、相互固相
拡散による両者の一体化接合が促進される。
【0045】このとき、特に、銅系焼結合金に対するF
e−P系合金粉末の含有量が1重量%よりも小さい場合
には、十分に固相拡散接合を促進させることができな
い。一方、10重量%を超えてFe−P系合金粉末を混
合しても、固相拡散接合はあまり促進されず、高価なF
e−P系合金粉末を添加するために、かえって経済性の
問題が生じる。したがって、銅系焼結合金中のFe−P
系合金粉末の含有量は1重量%以上10重量%以下であ
ることが望ましい。
【0046】また、そのFe−P系合金粉末では、Fe
−P系合金粉末に対するPの含有量が5重量%以上30
重量%以下である場合に、上述した固相拡散接合の促進
効果がある。Pの含有量が5重量%未満の場合では、銅
系焼結合金中に含有させるFe−P系合金粉末の比率を
10重量%を超えて増加させる必要がある。しかしなが
ら、この場合には、Fe−P系合金粉末は他の原料粉末
に比べて効果であるために、経済性の問題が生じる。一
方、Pの含有量が30重量%を超える場合では、そのF
e−P系合金粉末を製造する過程においてPの蒸発が顕
著になるために、その蒸発分を考慮して予め多量のPを
添加する必要が生じ、経済性の問題が生じる。したがっ
て、本発明では、Fe−P系合金中のPの含有量は5重
量%以上30重量%以下であることが望ましい。
【0047】ただし、銅系焼結合金の原料粉末全体に対
しては、Pの含有量が0.3重量%以上である必要があ
る。上述したように、相互拡散現象はFe−P系合金粉
末中のP成分により進行する。このため、Pの成分の含
有量が0.3重量%未満の場合には、銅系焼結合金と金
属製裏金との接合界面を十分に濡らすができない。この
ため、相互拡散が確実に進行しないために十分な接合強
度が得られないといった問題が生じる。したがって、銅
系焼結合金の原料粉末におけるPの含有量は、全体の
0.3重量%以上であることが好ましい。
【0048】(b) 銅系焼結合金の摩擦摺動特性 (b−1) 合金組成 相手部材と摺動する銅系焼結合金の耐摩耗性、耐焼き付
性および相手攻撃性を改善するためには、銅系焼結合金
はマイクロビッカース硬度400以上の硬さを有する硬
質粒子を体積基準で5容積%以上30容積%以下含有し
ていることが望ましい。また、銅系焼結合金の素地を構
成する銅合金は、錫、亜鉛およびニッケルからなる群か
ら選ばれる少なくとも1つの金属を含有していることが
望ましく、銅系焼結合金に対するスズの含有量は3重量
%以上20重量%以下であり、亜鉛の含有量は5重量%
以上40重量%以下であり、ニッケルの含有量は5重量
%以上40重量%以下であることがより好ましい。
【0049】銅系焼結合金に含まれる硬質粒子の硬さが
マイクロビッカース硬度400未満である場合や、その
含有量が5容積%より少ない場合では、銅系焼結合金の
十分な耐摩耗性を得ることが困難である。一方、硬質粒
子の含有量が30容積%を超えて添加されても、耐摩耗
性は顕著に向上することはなく、かえって研削性等の機
械加工性が低下するといった問題が生じる。このような
硬質粒子としては、FeCr、FeMo、FeAl、F
eSi、FeTi、FeWなどの鉄系金属間化合物が有
効である。また、Al2 3 、MgO2 、SiO2 、C
2 3 、TiO2 、ZrO2 などの酸化物系セラミッ
クスやAlN、Si3 4 などの窒化物系セラミックス
が有効である。なお、SiCなどの炭化物系セラミック
ス粒子は著しく硬いために相手材を攻撃したり、機械加
工性が低下するといった問題が生じるために、本発明に
係る摩擦部材の銅系焼結合金ではその使用を避けた。
【0050】さらに、硬質粒子が摺動時に銅系焼結合金
中から脱落することを抑制するために、たとえば、以下
のような処理を施すことが有効である。すなわち、セラ
ミックス粒子の表面に銅めっき被膜処理を施すととも
に、そのようなセラミックス粒子を含む銅系合金粉末を
焼結することにより、セラミックス粒子表面の銅めっき
層が銅系焼結合金の素地と反応して、セラミックス粒子
を銅系焼結合金中に強固に保持することができる。ま
た、鉄系金属間化合物やセラミックス粒子などの硬質粒
子と銅系焼結合金の素地を形成する銅系粉末とを混合
し、これをボールミルやアトライターなどの高エネルギ
粉砕装置によりメカニカルアロイング処理を施すことに
より、10μm以下の微細に粉砕された硬質粒子が銅系
合金粉末中の素地に分散した硬質粒子分散型複合金属粉
末が得られる。そしてこれを成形および焼結することに
より、硬質粒子を銅系焼結合金の素地中に強固に保持す
ることができる。
【0051】銅系焼結合金の素地を構成する銅合金に含
有される成分において、錫は高温における相手材との耐
焼き付性を向上させる効果がある。亜鉛とニッケルは銅
合金の耐熱性と耐腐食性を向上させる効果がある。それ
ぞれの元素は上記の範囲内で添加されることが好まし
く、それぞれの範囲の下限値より少ない場合には、上述
した効果が十分に得られない。また、規定範囲の上限値
を超えて添加しても上記の効果は顕著には向上せず、か
えって銅合金素地の硬化や靱性低下といった問題が生じ
る。
【0052】また、本発明に係る摩擦部材を高速および
高荷重条件のもとで使用する場合には、鳴き、びびり、
振動等の不快現象を抑制する必要がある。このような問
題を解消するためには、銅系焼結合金は、黒鉛、二硫化
モリブデン(MoS2 )、二硫化タングステン(W
2 )および窒化ホウ素(BN)からなる群から選ばれ
る少なくとも1つの潤滑成分を含有していることが有効
である。これらの潤滑成分の添加量を増やすことにより
上述した不快現象を抑制することが可能である。しかし
ながら、過剰の潤滑成分の添加は、銅系焼結合金におい
て銅系混合粉末同士の結合性(焼結性)を阻害するた
め、得られた銅系焼結合金の強度または耐摩耗性の低下
が発生する。このため、本発明では、これらの潤滑成分
の含有量の上限値を銅系焼結合金に対して10重量%と
設定した。
【0053】(b−2) 空孔率 本発明者は、摩擦部材の使用される環境および条件によ
り、その銅系焼結合金の空孔率を適正な値に管理するこ
とが有効であることを見いだした。
【0054】すなわち、相手材との摺動界面に液体また
は半固体状の潤滑成分が存在しない場合(乾式条件下)
では、銅系焼結合金中の空孔率は20容積%以下である
ことが望ましい。また、相手材との摺動界面に液体また
は半固体状の潤滑成分が存在する場合(湿式条件・潤滑
条件)では、銅系焼結合金中の空孔率は20容積%以上
60容積%以下であることが望ましい。さらに、銅系焼
結合金には、空孔径50μm以上300μm以下の空孔
が15容積%以上60容積%以下形成されていることが
望ましく、35容積%以上50容積%以下形成されてい
ることがより望ましい。
【0055】まず、乾式条件下で使用する際の銅系焼結
合金中の空孔率の設定理由について説明する。銅系焼結
合金が空孔を有することにより、銅系焼結合金の防振効
果(周波数減衰特性)が向上し、鳴き、びびり、振動等
の不快現象の抑制効果が得られる。しかし、空孔が増加
するに従い、銅系焼結合金の素地を構成する銅系粉末同
士の結合性(焼結性)が低下し、銅系焼結合金の耐摩耗
性や機械的特性が低下する。したがって、両者を満足す
るためには、銅系焼結合金の空孔率は20容積%以下で
あることが望ましい。なお、銅系焼結合金中に空孔が存
在する場合には、フェノール系樹脂またはエポキシ系樹
脂等の樹脂成分を含浸することにより、銅系焼結合金の
防振効果をさらに向上させることができる。その結果、
本発明者は摺動時に発生する振動が減衰および吸収でき
ることを見いだした。その空孔率は、原料粉末の充填
率、見掛け密度、焼結温度または銅系焼結合金を再圧縮
する際の圧力などによって制御および管理することがで
きる。
【0056】次に、湿式条件・潤滑条件のもとで使用す
る際の銅系焼結合金中の空孔率の設定理由について説明
する。潤滑油中で使用する場合には、相手材との摺動界
面に油膜が形成されるために、摩擦係数μは、通常、
0.04〜0.08となる。しかしながら、本発明者
は、銅系焼結合金中に分散する空孔の量および大きさを
適正化することにより、摺動界面における潤滑油を空孔
を介して摺動界面から除去し、油膜の形成を阻止して摩
擦係数を向上できることを見いだした。すなわち、銅系
焼結合金中に適正な量および大きさの空孔を保有および
分散させることにより、摺動界面に存在する潤滑油が銅
系焼結合金中を透過する現象を利用して摺動界面におけ
る油膜の形成を阻止して、摩擦係数の向上とともに摺動
条件(速度・荷重)に対して安定した摩擦係数を発現で
きることを見いだした。しかしながら、銅系焼結合金が
比較的大きな空孔を多数含有すれば、潤滑油の透過性能
は向上するが、逆に、銅系焼結合金の強度および耐摩耗
性が低下したり、また、相手材の表面と実際に接続する
領域(実接触面積)が減少するために、摩擦係数が低下
するといった問題が生じる。そこで、本発明者は、潤滑
油の透過性能、銅系焼結合金の耐摩耗性、強度および摩
擦係数の低下の抑制をすべて満足させるための空孔率の
適正化を行なった。その結果、本発明者は、銅系焼結合
金中の空孔率は20容積%以上60容積%以下であるこ
とが望ましいことが判った。また、発明者は、空孔径が
50μm以上300μm以下の空孔の空孔率は15容積
%以上60容積%以下であることが望ましく、より望ま
しくは35容積%以上50容積%以下であることが判っ
た。空孔率が20容積%未満の場合、または、空孔径が
50μm以上300μm以下の空孔の空孔率が15容積
%未満の場合には、潤滑油の透過性が十分ではないため
に、高い摩擦係数が安定して得られない。一方、空孔率
が60容積%を越える場合、または、空孔径が50μm
以上300μm以下の空孔の空孔率が60容積%を越え
る場合には、耐摩耗性や銅系焼結合金の強度の低下を招
く。
【0057】なお、この場合も空孔率は原料粉末の充填
率、見掛け密度、焼結温度または銅系焼結合金を再圧縮
する際の圧力などにより制御および管理することが可能
である。また、空孔径は原料粉末の大きさおよび形状に
より上記の適正範囲内に管理することが可能である。
【0058】金属製裏金と銅系焼結合金とを備えた多層
構造の摩擦部材の製造方法について本発明に係る多層構
造の摩擦部材の製造方法について図2を用いて説明す
る。図2を参照して、まず、所定の形状および寸法のリ
ング状の裏金用の金属板を準備する。この金属板を挿入
することができる大きさの凹部を1つ以上有する型を準
備する。その型の凹部の底に裏金用金属板を1枚ずつ挿
入する。凹部に挿入した裏金用金属板の上に、所定の組
成を有する銅系焼結合金用の原料混合粉末を給粉および
充填する。なお、裏金用金属板の両面に銅系焼結合金が
接合された3層構造の摩擦部材を得る場合には、型の凹
部に予め原料混合粉末を所定の量だけ給粉した後に、裏
金を挿入し、その裏金の上に再度原料混合粉末を給粉お
よび充填する。ここで、用いる型の凹部の深さと裏金用
金属板の厚さが一定であれば、裏金用金属板を挿入した
状態における型の凹部の深さは一定となるので、その凹
部に充填される原料混合粉末の重量は常に一定となる。
その結果、得られる銅系焼結合金の厚さも一定に管理で
きる効果が得られる。またこのとき、型内に充填する原
料混合粉末の見かけ密度(AD値)を制御することによ
り、加熱焼結後の銅系焼結合金中の空孔率を20容積%
以上60容積%以下の範囲で管理することができる。な
お、見かけ密度を調整する以外に、銅系焼結合金中の空
孔率を制御する手法として、たとえば、原料混合粉末を
型内に充填した状態でプレスなどにより加圧および圧縮
することが有効である。この場合には、10容積%以上
60容積%以下の範囲で空孔率を調整することができ
る。さらに、焼結後の再圧縮工程における加圧力を制御
することにより、焼結後に10容積%以下の空孔率を有
する緻密な銅系焼結合金を作製することができる。
【0059】次に、型内に裏金用金属板と原料混合粉末
を充填した状態で、型全体を700℃以上1050℃以
下に加熱された焼結炉に搬入して加熱および保持するこ
とにより、銅系合金粉末同士を焼結するとともに、銅系
焼結合金と裏金用金属板とを拡散接合により一体化させ
る。このとき、銅系焼結合金と裏金用金属板との拡散接
合は、前述したFe−P系合金粉末中のP成分によって
促進される。また、銅系焼結合金と金属板との結合強度
をより向上させるためには、銅系焼結合金と接する側の
裏金用金属板の表面に、ニッケル、錫、銅、亜鉛、コバ
ルトおよび銀からなる群から選ばれるいずれかのめっき
層を事前に形成することも有効である。
【0060】焼結条件に関して詳細に説明する。焼結炉
内は不活性ガスもしくは還元性ガスの雰囲気または真空
に制御することが望ましく、このような雰囲気の中で7
00℃以上1050℃以下の温度にて加熱および保持す
ることにより銅系焼結合金が創製されると同時に、その
銅系焼結合金と裏金用金属板との一体化接合も可能とな
る。焼結温度が700℃未満では、原料混合粉末同士が
十分に焼結および結合しないために必要とする耐摩耗性
を有する銅系焼結合金が得られない。一方、焼結温度が
1050℃を超えると、原料混合粉末同士の焼結および
結合が顕著に進行して銅系焼結合金が著しく収縮するた
めに、得られた多層構造の摩擦部材において、反りや変
形などの問題が生じる。また、焼結雰囲気について、上
記以外の、たとえば大気中などで焼結を行なった場合に
は、原料混合粉末において酸化現象が生じて、十分に焼
結および結合が進行しない。このため、必要とする耐摩
耗性を有する銅系焼結合金が得られない。
【0061】さらに、焼結過程において、原料混合粉末
および裏金用金属板と型との間に金属結合、すなわち、
拡散および焼結現象が生じてはいけない。このような現
象を防止するために、型の材質として、カーボン、WC
系の超硬合金、SiC、Si4 3 、Al2 3 、Zr
2 などのセラミックスを用いることが有効である。
【0062】また、上記の焼結過程の後に、加圧および
圧延等によって銅系焼結合金中の空孔率を10容積%以
下に調整することが可能である。たとえば、得られた多
層構造の摩擦部材をプレス加圧成型またはロール圧延等
を施すことにより、銅系焼結合金中の空孔率を10容積
%以下にまで低減することができ、より緻密な銅系焼結
合金を創製することができる。
【0063】さらに、その加圧および圧延等の処理の後
に、再度、700℃以上に保持された不活性ガスもしく
は還元性ガスの雰囲気または真空中にて多層構造の摩擦
部材を加熱および保持することにより、銅系焼結合金の
強度および耐摩耗性をさらに向上することができる。こ
の場合、700℃未満では十分な焼結現象が進行しない
ために銅系焼結合金の強度または耐摩耗性の改善効果が
十分ではない。また、不活性ガス雰囲気もしくは還元性
ガスの雰囲気または真空中以外のもとで焼結を行なった
場合には、銅系焼結合金中の旧粉末粒界において酸化現
象が進行するために、銅系焼結合金の強度および耐摩耗
性の改善効果が十分ではない。
【0064】
【実施例】実施例1 型としてカーボン製の型を準備した。金属製裏金として
リング状の鋼板(めっき層を有さないSPCC材/板厚
0.3mm、外径D=80mmφ、内径d=70mm
φ)を準備した。その鋼板をカーボン製の型内に挿入し
た。そして、下の表1に示された合金組成を有する銅系
焼結合金の原料混合粉末をリング状の鋼板上に給粉およ
び充填した。これを窒素雰囲気中で温度900℃、時間
1時間の焼結を行なうことにより、リング状の鋼板と銅
系焼結合金とを拡散接合させた2層構造の摩擦部材を作
製した。また、再圧縮および再焼結を行なうことによ
り、銅系焼結合金の空孔率を5容積%以上6容積%以下
に調整した。得られた2層構造の摩擦部材からチップ形
状の試験片を採取し、図3に示すチップオンディスク式
摩擦試験機を用いて、乾式条件のもとで摩擦摺動特性を
評価した。チップ形状の試験片では、相手材と摺動する
側に銅系焼結合金を配置させ、相手のディスク材として
SCM420浸炭材を使用した。また、摩擦試験の条件
を、加圧力1MPa、滑り速度3m/s、時間30分と
した。試験後の摩耗損傷量(銅系焼結合金と相手材)を
表1に示す。なお、表1では、合金組成は体積基準で表
わされた硬質粒子を除き、他は重量基準で表示されてい
る。
【0065】
【表1】
【0066】本発明例(No.1〜10)および比較例
(No.11〜15)では、銅系焼結合金が含有する硬
質粒子の硬さは580〜820MHv(マイクロビッカ
ース硬度)であり、本発明の規定する適正範囲を満足し
ている。比較例(No.17)の銅系焼結合金が含有す
る硬質粒子のみが330MHvであり、適正範囲を下回
る値を有している。
【0067】表1に示されているように、適正範囲の合
金組成を有する銅系焼結合金と裏金としての鋼板とを拡
散接合させた2層構造の摩擦部材である本発明例(N
o.1〜10)では、その摩擦摺動性能を評価したとこ
ろ、安定した摩擦係数を発現し、銅系焼結合金および相
手材の両者において、顕著な摩耗損傷や凝着現象が生じ
ることがなく良好な特性が得られることが確認された。
【0068】一方、比較例(No.11〜16)では、
次のような問題が確認された。比較例(No.11)で
は、銅系焼結合金中の硬質粒子が3.0容積%であり、
このために、摺動時に凝着摩耗現象が発生した。比較例
(No.12)では、銅系焼結合金の硬質粒子の含有量
が2.0容積%であり、このために、摺動時に凝着摩耗
現象が生じた。比較例(No.13)では、銅系焼結合
金が硬質粒子を含有しないために、摺動時に凝着摩耗現
象が生じた。比較例(No.14)では、銅系焼結合金
の素地が純銅であるために、摺動時に凝着摩耗現象が生
じた。比較例(No.15)では、銅系焼結合金がFe
−P系合金粉末を含有しないために、裏金と銅系焼結合
金との接合強度が十分に得られなかった。その結果、チ
ップ摩耗試験片を作製する過程で裏金と銅系焼結合金と
の接合界面で剥離が生じ、試験片を作製することができ
なかった。比較例(No.16)では、銅系焼結合金が
固体の潤滑成分を含有しないために、本発明例(No.
1〜10)に比べて耐摩耗性が劣っていることが確認さ
れた。比較例(No.17)では、銅系焼結合金の硬質
粒子の硬さが330MHvであり、このために、摺動時
に凝着摩耗現象が生じた。
【0069】実施例2 実施例1の表1に示された本発明例(No.3)の組成
と同じ組成を有する銅系焼結合金を、焼結後に再圧縮お
よび再焼結(800℃×30分/窒素雰囲気)を施すこ
とにより、表2に示す空孔率を有する銅系焼結合金を作
製した。この銅系焼結合金からチップ形状の試験片を採
取するとともに、相手材であるS10C鋼材からディス
ク試験片を採取し、これらの摩擦試験片を用いて加圧力
1MPa、滑り速度2.0m/sの条件のもとで大気中
にて30分のチップオンディスク摩擦試験を行なった。
なお、本発明例(No.6)では、その銅系焼結合金の
空孔中にエポキシ系樹脂を含浸させたものを作製した。
【0070】試験後の摩耗損傷量(銅系焼結合金および
相手材)、試験過程における摩擦係数の平均値、摩擦係
数の最大値と最小値との差(Δμ)を表2に示す。な
お、Δμとは摩擦係数の安定性を意味しており、この値
が小さいほど安定した摩擦係数を有しているといえる。
また、ここで用いた硬質粒子の硬さは695MHv(マ
イクロビッカース硬度)であり、本発明が規定する適正
範囲を満足している。
【0071】
【表2】
【0072】表2に示されているように、所定の空孔率
を有する銅系焼結合金を備えた本発明例(No.1〜
6)では、相手材との間で凝着摩耗が発生することな
く、安定した高い摩擦係数を有していることが確認され
た。特に、本発明例(No.6)の場合のように、樹脂
を含有することにより摩擦係数の安定性を向上(Δμ値
を低減)できることが確認された。
【0073】一方、比較例(No.7、8)では次のよ
うな問題が確認された。比較例(No.7)では、空孔
率が23容積%であり、このために銅系焼結合金に亀裂
が発生し、その結果、摺動面の一部で凝着摩耗が発生し
た。比較例(No.8)では、空孔率が27容積%であ
り、このために銅系焼結合金に亀裂が発生し、その結
果、摺動面の一部で凝着摩耗が発生した。
【0074】実施例3 型としてセラミックス製の型を準備した。金属製裏金と
してリング状の鋼板(めっき層を有さないSPCC材/
板厚0.5mm、外径D=105mmφ、内径d=90
mmφ)を準備した。そのセラミックス製の型内にリン
グ状の鋼板を挿入した後に、表3に示された合金組成を
有する銅系焼結合金の原料混合粉末を充填した。これを
窒素雰囲気中で温度850℃、時間1時間の焼結を施す
とともに、再圧縮および再焼結(750℃×1時間/窒
素雰囲気中)を施すことにより、リング状の鋼板と銅系
焼結合金(外径105mmφ、内径90mmφ、厚さ1
mm)とを拡散接合させた2層構造のリング状の摩擦部
材を作製した。用いたFe−P系合金粉末(平均粒径3
0〜65μm)の合金組成および原料混合粉末に対する
リンの含有量をそれぞれ重量基準で表3に示した。表3
に示された青銅系複合粉末とは、振動型ボールミルを用
いてメカニカルアロイング処理を施して得られた粉末で
あり、平均粒径7μm、最大粒径22μmの硬質粒子F
eMo(硬度860〜1120マイクロビッカース硬
度)が青銅系粉末の素地中に均一に分散した硬質粒子分
散型複合粉末である。なお、FeMoの含有量は体積基
準で示されている。以上のようにして得られた銅系焼結
合金の空孔率は5容積%以上7容積%以下であった。そ
して、銅系焼結合金と裏金との接合界面における剪断力
を測定した。その結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】所定の組成を有する原料混合粉末を適正な
条件のもとで固化し得た2層構造の摩擦部材である本発
明例(No.1〜5)では、特に所定の組成を有するF
e−P系合金粉末を含有することによって、裏金である
鋼板と銅系焼結合金との接合界面において十分な接合強
度を有していることが確認された。
【0077】一方、比較例(No.6〜9)では、次の
ような問題が確認された。比較例(No.6)では、銅
系焼結合金の原料混合粉末が含有するリンの量が適正値
よりも少ないために、鋼板と銅系焼結合金との接合界面
において十分な剪断剥離力が得られなかった。比較例
(No.7)では、Fe−P系合金粉末を適正範囲の上
限値10重量%を超えて添加したが、接合界面における
接合強度は大きく増加せず、高価なFe−P系合金粉末
を多く添加することによって経済性の問題が生じた。比
較例(No.8)では、Fe−P系合金粉末中のリンの
含有量を適正範囲の上限値30重量%を超えて添加した
が、接合界面における接合強度は大きく増加せず、リン
を多量に含有する高価なFe−P系合金粉末を使用する
ことによる経済性の問題が生じた。比較例(No.9)
では、銅系焼結合金の原料混合粉末がFe−P系合金粉
末を含有しないために、鋼板と銅系焼結合金との接合界
面において十分な剪断剥離力が得られなかった。
【0078】実施例4 実施例1の表1に示された本発明例(No.9)の組成
と同じ組成を有する銅系焼結合金を、焼結後に再圧縮お
よび再焼結(800℃×1時間/窒素雰囲気)を施すこ
とにより、表4に示すような空孔率および平均空孔径を
有する銅系焼結合金を作製した。このとき、空孔率は再
圧縮時の加圧力により調整した。空孔径は原料混合粉末
中の銅系粉末の粒径(粒度分布)および再圧縮時の加圧
力により調整した。それぞれの銅系焼結合金からチップ
形状の試験片を採取し、SCM415浸炭鋼材からディ
スク試験片を採取し、チップオンディスク式摩擦試験機
を用いて、加圧力を45MPa(一定)として、滑り速
度2.0m/s〜0.2m/sの範囲内において高速度
域から低速度域に変化させた場合の潤滑油(ATF)中
における摩擦係数μの速度依存性を評価した。また、試
験後の摩耗損傷量(銅系焼結合金および相手材)、各速
度における摩擦係数の推移および摩擦係数の最大値と最
小値との差(Δμ)を評価した。これらの結果を表4に
示す。Δμは摩擦係数の速度依存性を意味しており、そ
の値が小さいほど速度変化に対して安定した摩擦係数を
有しており、湿式多板クラッチとして優れた性能を有し
ているといえる。なお、ここで用いた硬質粒子の硬さは
1015MHv(マイクロビッカース硬度)であり、本
発明が規定する適正範囲を満足している。
【0079】
【表4】
【0080】表4に示されているように、所定の空孔率
および平均空孔径を有する銅系焼結合金を備えた本発明
例(No.1〜8)では、摩耗損傷することなく、また
相手材との凝着摩耗を伴うことなく、潤滑油中において
高い摩擦係数を有していることが判明した。特に、本発
明が規定する適正範囲内において空孔率または空孔径が
大きくなるに従って、摩擦係数μは増加し、一方Δμの
値は減少し、これにより速度依存性が少なく安定した摩
擦係数を発現できることが確認された。
【0081】一方、比較例(No.9〜12)では次の
ような問題が確認された。比較例(No.9)では、空
孔率が4容積%であり、このために、摺動界面において
潤滑油を十分に透過することができず、その結果、摩擦
係数の低下およびΔμの値の増加が認められた。比較例
(No.10)では、空孔率が8容積%であり、このた
めに、摺動界面において潤滑油を十分に透過することが
できず、その結果、摩擦係数の低下およびΔμの値の増
加が認められた。比較例(No.11)では、空孔径5
0μm以上300μm以下の空孔の空孔率が5容積%で
あり、このために、摺動界面において潤滑油を十分に透
過させることができず、その結果、摩擦係数の低下およ
びΔμの値の増加が認められた。比較例(No.12)
では、空孔径50μm以上300μm以下の空孔の空孔
率が9容積%であり、このために、摺動界面において潤
滑油を十分に透過させることができず、その結果、摩擦
係数の低下およびΔμの値の増加が認められた。
【0082】実施例5 型としてカーボン製の型を準備した。金属製裏金として
リング形状の鋼板(めっき層を有さないSPCC材/板
厚0.5mm、外径D=105mmφ、内径d=90m
mφ)を準備した。このリング形状の鋼板カーボン製の
型内に挿入した。その後、表1の本発明例(No.4)
に示された組成と同じ組成を有する銅系焼結合金の原料
混合粉末を充填した。そして、図4に示された各製造工
程に基づいて、鋼板と銅系焼結合金とを拡散接合させた
2層構造の摩擦部材を作製した。銅系焼結合金からチッ
プ形状の試験片を採取するとともに、S35C鋼材から
ディスク形状試験片を採取し、これらの摩擦試験片を用
いて加圧力1MPa、滑り速度1.5m/sの条件のも
とで大気中にて30分間のチップオンディスク摩擦試験
を行なった。各工程における製造条件および得られた銅
系焼結合金の空孔率、摩擦試験後のチップ側(銅系焼結
合金)の摩耗量(摩耗厚み)の測定結果を表5に示す。
【0083】
【表5】
【0084】表5に示されているように、適正な条件下
で作製した本発明例(No.1〜8)では、銅系焼結合
金の摩耗量が小さく、十分な耐摩耗性を有していること
が確認された。また、原料混合粉末を型内に充填した後
に焼結する工程(工程A)によって得られた銅系焼結合
金に比べて、原料混合粉末の充填後に加圧成型する工程
(工程B)、焼結後に再圧縮する工程(工程C)、再圧
縮後さらに再焼結する工程(工程D)、工程Bと工程D
とを組合せた工程Eによって得られた銅系焼結合金で
は、空孔率が低減していることが判明した。また、再焼
結により強度がさらに向上したために、銅系焼結合金の
摩耗損傷量がさらに低減することが判明した。
【0085】一方、比較例(No.9〜13)では次の
ような問題が確認された。比較例(No.9)では、焼
結温度が670℃であり、このために十分に焼結が進行
せず、顕著な摩耗が生じた。また、鋼板と銅系焼結合金
との拡散接合が十分に進行せず、部分的に剥離している
のが確認された。比較例(No.10)では、焼結温度
が670℃であり、このために十分に焼結が進行せず、
たとえ、予め原料混合粉末を加圧成型しても、得られた
銅系焼結合金では顕著な摩耗損傷が生じた。比較例(N
o.11)では、焼結温度が650℃であり、このため
に十分に焼結が進行せず、たとえ、焼結後に再加圧して
も得られた銅系焼結合金では顕著な摩耗損傷が生じた。
比較例(No.12)では、銅系焼結合金を再圧縮した
後に再加熱する際に、大気中で行なったために銅系焼結
合金内で酸化現象が進行し、このために銅系焼結合金に
顕著な摩耗損傷が生じた。比較例(No.13)では、
焼結温度が1100℃であり、このために液相が流出
し、銅系焼結合金が変形するとともに、2層構造の摩擦
部材に反りが生じた。なお、比較例(No.14)で
は、窒素雰囲気中、温度650℃、時間1時間の条件に
て再焼結を行なったが、焼結温度が適正値よりも低いた
めに銅系焼結合金の強度はさらに向上することはなく、
たとえば、本発明例(No.2)と比較しても、摩耗損
傷量に大きな差異は認められなかった。
【0086】実施例6 型としてカーボン製の型を準備した。金属製裏金として
リング形状の鋼板(めっき層を有さないSPCC材/板
厚0.5mm、外径D=107mmφ、内径d=93m
mφ)を準備した。このリング形状の鋼板を型内に挿入
した。その後、表1の本発明例(No.4)に示された
組成と同じ組成を有する原料混合粉末を充填した。その
後、図4に示された製造工程(工程D)に基づいて、鋼
板と銅系焼結合金とを拡散接合させたリング状の2層構
造の摩擦部材(全厚みh=1.2mm)を作製した。得
られた摩擦部材の接合界面近傍の走査型電子顕微鏡(S
EM)による2次電子像写真を図5(a)に示す。この
写真に示されているように、厚さ0.5mmのSPCC
鋼板上に厚さ約0.7mmの銅系焼結合金が拡散接合し
ている。そして、図5(b)に示された図5(a)の接
合界面近傍の拡大写真からもわかるように、その接合界
面では隙間はなく、拡散接合により良好な接合面が形成
されていることがわかる。
【0087】今回開示された実施例はすべての点の例示
であって制限的なものではないと考えられるべきであ
る。本発明の範囲は上記で説明した範囲ではなく、特許
請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意
味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図さ
れる。
【0088】
【発明の効果】本発明による摩擦部材およびその製造方
法では、相手材と摺動する銅系焼結合金が金属製裏金の
表面に拡散接合されている。これにより、銅系焼結合金
を容易に薄肉化することができ、その結果、摩擦部材の
軽量化および低コスト化を実現することができる。ま
た、リンを含む鉄合金粉末を含有することにより、接合
界面における接合強度が高められる。また、銅系焼結合
金が所定の空孔率を有することにより、高い摩擦係数を
発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る多層構造の摩擦部材の構
造を示し、(a)はその平面構造を示し、(b)は2層
構造の場合の断面構造を示し、(c)は3層構造の場合
の断面構造を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る2層構造の摩擦部材の製
造工程を示す図である。
【図3】本発明の実施例におけるチップオンディスク式
摩擦試験方法を示す図である。
【図4】本発明の実施例に係る摩擦部材の製造方法の5
つの例を示す図である。
【図5】本発明の実施例に係る摩擦部材の接合界面にお
ける断面構造を示し、(a)はその接合界面の断面SE
M写真であり、(b)はその部分拡大写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22C 9/06 C22C 9/06 F16D 69/00 F16D 69/00 B 69/02 69/02 F 69/04 69/04 M

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属板と、 前記金属板の少なくとも一方の表面上に拡散接合された
    銅系焼結合金とを備え、 前記銅系焼結合金は、 リンを含む鉄合金粉末と、 硬質粒子と、 錫、亜鉛およびニッケルからなる群から選ばれる少なく
    とも1つの金属とを含んで形成され、 前記金属板と前記銅系焼結合金との接合界面には、リン
    を含む金属間化合物が形成された、摩擦部材。
  2. 【請求項2】 前記鉄合金粉末に対する前記リンの含有
    量は5重量%以上30重量%以下である、請求項1記載
    の摩擦部材。
  3. 【請求項3】 前記銅系焼結合金に対する前記鉄合金粉
    末の含有量は1重量%以上10重量%以下である、請求
    項1または2に記載の摩擦部材。
  4. 【請求項4】 前記硬質粒子はマイクロビッカース硬度
    400以上であり、前記銅系焼結合金に対する前記硬質
    粒子の含有量は5容積%以上30容積%以下である、請
    求項1〜3のいずれかに記載の摩擦部材。
  5. 【請求項5】 前記銅系焼結合金に対する前記錫の含有
    量は3重量%以上20重量%以下であり、前記亜鉛の含
    有量は5重量%以上40重量%以下であり、前記ニッケ
    ルの含有量は5重量%以上40重量%以下である、請求
    項1〜4のいずれかに記載の摩擦部材。
  6. 【請求項6】 前記銅系焼結合金には空孔率20容積%
    以下の空孔が形成されている、請求項1〜5のいずれか
    に記載の摩擦部材。
  7. 【請求項7】 前記銅系焼結合金には空孔率20容積%
    以上60容積%以下の空孔が形成されている、請求項1
    〜5のいずれかに記載の摩擦部材。
  8. 【請求項8】 前記銅系焼結合金には、50μm以上3
    00μm以下の空孔径を有する空孔が15容積%以上6
    0容積%以下形成されている、請求項1〜5のいずれか
    に記載の摩擦部材。
  9. 【請求項9】 前記銅系焼結合金には、前記空孔が35
    容積%以上50容積%以下形成されている、請求項8記
    載の摩擦部材。
  10. 【請求項10】 前記銅系焼結合金は、黒鉛、二硫化モ
    リブデン、二硫化タングステン、および窒化ホウ素から
    なる群から選ばれる少なくとも1つの潤滑成分を含み、 前記銅系焼結合金に対する前記潤滑成分の含有量は10
    重量%以下である、請求項1〜9のいずれかに記載の摩
    擦部材。
  11. 【請求項11】 前記硬質粒子は、鉄系金属間化合物、
    酸化物系セラミックスおよび窒化物系セラミックスから
    なる群から選ばれた少なくとも1つからなる、請求項1
    〜10のいずれかに記載の摩擦部材。
  12. 【請求項12】 前記金属板は、鉄、銅、チタンおよび
    それらの合金からなる群から選ばれた1つの金属からな
    る、請求項1〜11のいずれかに記載の摩擦部材。
  13. 【請求項13】 前記銅系焼結合金と接する前記金属板
    の表面には、ニッケル、錫、銅、亜鉛、コバルトおよび
    銀からなる群から選ばれるいずれかのめっき層が形成さ
    れている、請求項1〜12のいずれかに記載の摩擦部
    材。
  14. 【請求項14】 前記金属板は所定の外径と内径とを有
    するリング形状であり、 前記外径をD、前記内径をdとしたときに、 D≧20mmおよびd≧D/4 を満たす、請求項1〜13のいずれかに記載の摩擦部
    材。
  15. 【請求項15】 所定寸法の金属板および前記金属板を
    挿入するための凹部が設けられた型を準備する工程と、 リンを含有する鉄合金粉末と、硬質粒子と、錫、亜鉛お
    よびニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1つの
    金属を含む銅合金粉末とを準備する工程と、 前記鉄合金粉末と前記硬質粒子と前記銅合金粉末とを混
    合して銅系混合粉末を準備する工程と、 前記金属板を前記型内の凹部に挿入する工程と、 前記金属板上の前記型内に、前記銅系混合粉末を充填す
    る工程と、 前記銅系混合粉末が充填された前記型を焼結することに
    より、銅系焼結合金を生成するとともに、前記銅系焼結
    合金と前記金属板とを拡散接合する焼結工程とを備えた
    摩擦部材の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記銅系混合粉末は、黒鉛、二硫化モ
    リブデン、二硫化タングステン、および窒化ホウ素から
    なる群から選ばれる少なくとも1つの潤滑成分を10重
    量%以下含む、請求項15記載の摩擦部材の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記金属板を前記型内の凹部に挿入す
    る前に、前記銅系混合粉末を前記型内の凹部に充填する
    工程を含む、請求項15または16に記載の摩擦部材の
    製造方法。
  18. 【請求項18】 前記鉄合金粉末に対する前記リンの含
    有量は5重量%以上30重量%以下であり、 前記銅系混合粉末に対する前記鉄合金粉末の含有量は1
    重量%以上10重量%以下であり、 前記硬質粒子はマイクロビッカース硬度400以上であ
    り、前記銅系混合粉末に対する前記硬質粒子の含有量は
    5容積%以上30容積%以下であり、 前記銅系混合粉末に対する前記錫の含有量は3重量%以
    上20重量%以下であり、前記亜鉛の含有量は5重量%
    以上40重量%以下であり、前記ニッケルの含有量は5
    重量%以上40重量%以下である、請求項14〜17の
    いずれかに記載の摩擦部材の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記銅系混合粉末を充填する工程と前
    記焼結工程との間に、前記金属板上に充填された状態に
    ある前記銅系混合粉末を加圧する工程を含む、請求項1
    5〜18のいずれかに記載の摩擦部材の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記焼結工程は、温度700℃以上1
    050℃以下のもとで、不活性ガスもしくは還元性ガス
    の雰囲気または真空中にて行なわれる、請求項15〜1
    9のいずれかに記載の摩擦部材の製造方法。
  21. 【請求項21】 前記焼結工程の後に、前記銅系焼結合
    金を加圧する工程を含む、請求項15〜20のいずれか
    に記載の摩擦部材の製造方法。
  22. 【請求項22】 前記銅系焼結合金を加圧する工程の後
    に、前記銅系焼結合金を、温度700℃以上のもとで、
    不活性ガスもしくは還元性ガスの雰囲気または真空中に
    て再焼結する工程を含む、請求項21記載の摩擦部材の
    製造方法。
  23. 【請求項23】 前記金属板の表面に、予めニッケル、
    錫、銅、亜鉛、コバルトおよび銀からなる群から選ばれ
    るいずれかのめっき層を形成する工程を含む、請求項1
    5〜22のいずれかに記載の摩擦部材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002220631A (ja) * 2001-01-24 2002-08-09 Taiho Kogyo Co Ltd リン青銅複合焼結材
WO2016190403A1 (ja) * 2015-05-28 2016-12-01 曙ブレーキ工業株式会社 高速鉄道車両用焼結摩擦材とその製造方法

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