JP2000096037A - 湿式用銅系焼結摩擦材およびその製造方法ならびにそれを用いた摩擦板 - Google Patents

湿式用銅系焼結摩擦材およびその製造方法ならびにそれを用いた摩擦板

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JP2000096037A
JP2000096037A JP26911398A JP26911398A JP2000096037A JP 2000096037 A JP2000096037 A JP 2000096037A JP 26911398 A JP26911398 A JP 26911398A JP 26911398 A JP26911398 A JP 26911398A JP 2000096037 A JP2000096037 A JP 2000096037A
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copper alloy
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Katsuyoshi Kondo
勝義 近藤
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16DCOUPLINGS FOR TRANSMITTING ROTATION; CLUTCHES; BRAKES
    • F16D23/00Details of mechanically-actuated clutches not specific for one distinct type
    • F16D23/02Arrangements for synchronisation, also for power-operated clutches
    • F16D23/025Synchro rings

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 潤滑油中で高い摩擦係数と良好な静動比を有
しかつ優れた耐摩耗性、耐焼付性を有している湿式用銅
系焼結摩擦材を提供する。 【解決手段】 湿式銅系焼結摩擦材は金属不織布と銅合
金粉末とを備える。金属不織布は、直径が10μm以上
500μm以下の銅合金系繊維が3次元的に絡み合って
おりかつ銅合金系繊維が交差する部分が焼結結合してい
る。銅合金粉末は金属不織布に結合している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、湿式用銅系焼結
摩擦材およびその製造方法ならびにそれを用いた摩擦板
に関し、特に、車両用オートマチックトランスミッショ
ン(AT)における湿式多段クラッチや、マニュアルト
ランスミッション(MT)におけるシンクロナイザーリ
ングなどに使用される湿式用銅系焼結摩擦材と、その製
造方法と、その摩擦材を用いた摩擦板に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来より湿式用摩擦材としては、たとえ
ば特開平3−140334号公報、特公平7−731号
公報、特許公報第2767197号に記載されたよう
な、紙(パルプ)により形成された不織布を基材とする
ペーパー摩擦材が主流であった。このペーパー摩擦材は
高い動摩擦係数を有し、かつ良好な静動比(停止直前の
最終動摩擦係数μ0 と動摩擦係数μd との比)を有して
いる。
【0003】しかしながら、エンジンの高出力化などに
より湿式用摩擦材への負荷が増大する傾向にあり、従来
のペーパー摩擦材では耐熱性・強度・耐摩耗性が、要求
に対して十分に耐えられなくなるといった問題が生じて
いる。
【0004】これに対して、たとえば特開平9−202
905号公報に記載されたような、金属粉末を成形・焼
結した金属焼結摩擦材では、高負荷条件下においても耐
熱性・強度・耐摩耗性などの特性は、要求される値を十
分満足する。しかし、高い動摩擦係数および良好な静動
比を発現しない。
【0005】また、たとえば特開平9−221553号
公報に記載されたように、カーボン粉末と樹脂系粉末と
の混合粉末を焼結固化して得たカーボン系焼結摩擦材
は、機械的特性・耐摩耗性・摩擦特性等は満足するもの
の、高価であるために実用化が困難であるという問題が
あった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明は、
上述のような問題点を解決するためになされたものであ
り、耐熱性、強度、耐摩耗性、高い動摩擦係数、良好な
静動比等を発現しかつコストの低い摩擦材とその摩擦材
を用いた摩擦板を提供することを目的とするものであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述のように、高負荷条
件下においても耐熱性・強度・耐摩耗性等に対する要求
特性を満足し、かつペーパー摩擦材と同等以上の高い動
摩擦係数および良好な静動比を有する湿式用摩擦材を経
済性よく創製することが強く望まれている。
【0008】そこで、本発明者は、上記の課題を克服す
るために研究した結果、ある適正範囲の直径を有する金
属繊維を3次元的に絡み合わせ、目付け量を管理した金
属不織布を基材とする金属焼結摩擦材において、気孔率
および気孔径を制御することによってペーパー摩擦材と
同等以上の高い動摩擦係数および良好な静動比を有する
ことを知見した。
【0009】また、本発明者らは、その金属不織布の骨
格ともいえる金属繊維の耐摩耗性や強度を向上させるた
めに特定の銅合金粉末を金属不織布に焼結結合させるこ
とで高負荷条件下においても十分に使用に耐え得る湿式
用銅系焼結摩擦材を創製できることを知見した。
【0010】これらの知見によりなされた本発明の湿式
用銅系焼結摩擦材は、直径が10μm以上500μm以
下の銅繊維または銅合金系繊維が3次元的に絡み合って
おり、かつ、銅繊維または銅合金系繊維が交差する部分
が焼結結合している金属不織布と、金属不織布に結合し
ている銅合金粉末とを備える。
【0011】このように構成された湿式用銅系焼結摩擦
材は、金属不織布と銅合金粉末とは銅または銅合金で構
成されているため、ペーパー摩擦材に比べて高い耐熱性
・強度・耐摩耗性を有する。また、金属不織布が基材と
なっているため、潤滑油の透過性能がよい。そのため、
相手材と接触したときに接触界面に形成される油膜が排
除または減少し、高い動摩擦係数および良好な静動比を
発現する。さらに、金属不織布と銅合金粉末とは銅また
は銅合金で構成されるためコストも低くなる。
【0012】また、銅合金粉末は、3重量%以上20重
量%以下のSn、5重量%以上40重量%以下のZnお
よび5重量%以上40重量%以下のNiからなる群より
選ばれた少なくとも一種を含み、かつ、マイクロビッカ
ース硬度が300以上の硬質粒子を5重量%以上35重
量%以下含み、残部が銅と不可避的不純物であることが
好ましい。
【0013】銅合金粉末は、0.2重量%以上2重量%
以下のPを含み、残部が銅と不可避的不純物であること
が好ましい。
【0014】また、湿式用銅系焼結摩擦材の気孔率が3
0体積%以上90体積%以下であることが好ましい。
【0015】全気孔数の60%以上の気孔が10μm以
上300μm以下の気孔径を有することが好ましい。
【0016】湿式用銅系焼結摩擦材は、焼結摩擦材全体
に対して10重量%以下の黒鉛を含むことが好ましい。
【0017】この発明に従った湿式用銅系焼結摩擦材の
製造方法は、直径が10μm以上500μm以下の銅繊
維または銅合金系繊維が3次元的に絡み合っている金属
不織布中に銅合金粉末を分散させる工程と、銅合金粉末
が分散した金属不織布を不活性雰囲気中または真空中で
温度850℃以上1080℃以下で加熱・焼結する工程
とを備える。
【0018】このような工程に従えば、金属不織布とそ
の金属不織布に結合した銅合金粉末とを有する湿式用銅
系焼結摩擦材を確実に製造することができる。
【0019】また、金属不織布の目付け量は400g/
2 以上3000g/m2 以下であることが好ましい。
【0020】また、金属不織布を加熱・焼結する工程
は、温度950℃以上1020℃以下で金属不織布を加
熱・焼結することを含むことが好ましい。
【0021】また、湿式用銅系焼結摩擦材の製造方法
は、加熱・焼結された金属不織布を加圧・圧縮する工程
をさらに備えることが好ましい。
【0022】湿式用銅系焼結摩擦材の製造方法は、加熱
・焼結された金属不織布にフェノール系樹脂、アクリル
系樹脂およびエポキシ系樹脂からなる群より選ばれた少
なくとも一種を含浸させる工程をさらに備えることが好
ましい。
【0023】この発明に従った摩擦板は、コアプレート
の上に上述の湿式用銅系焼結摩擦材が固着されたもので
ある。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態と、
この発明の特徴および作用・効果について説明する。
【0025】[1] 金属不織布を基材とする湿式用銅
系焼結摩擦材の構造 ATF(Automatic Transmission Fluid)、MTF(Ma
nual Transmission Fluid )あるいはギアオイルなどの
潤滑油中で高い動摩擦係数および良好な静動比を有する
ためには、摩擦材と相手材との接触界面において潤滑油
膜を形成させずに可能な限りに摩擦材の摺動表面を相手
材表面に接触させることが有効である。
【0026】そのためには、摩擦材が潤滑油を透過させ
る機能を有することが望ましい。具体的には、連続気孔
を含む多孔質構造を有する透過性に優れた焼結摩擦材を
創製することが有効である。一例として、特開平6−3
13250号公報や特開平6−313251号公報に記
載されたような金属不織布を使用することも考えられ
る。しかし、このような材料では、金属繊維のみからな
るために、高負荷条件下における耐熱性・強度・耐摩耗
性などの要求特性を満足することは困難であった。
【0027】そこで、本発明者らは、高い潤滑油透過性
能を有する多孔質構造からなる銅系金属不織布におい
て、金属繊維同士を強固に焼結・結合させるとともに、
金属繊維の直径を適正範囲に管理し、さらには金属不織
布の骨格ともいえる金属繊維の耐摩耗性や強度を向上さ
せるために、特定の組成・成分を有する銅合金粉末を焼
結・結合させることにより金属不織布全体の耐摩耗性・
耐熱性・強度を大幅に改善できることを見い出した。
【0028】またさらに、本発明者らは、銅系金属繊維
を3次元的に絡み合わせた金属不織布の目付け量を管理
し、このような金属不織布を用いた焼結摩擦材の気孔率
および気孔径を制御することでペーパー摩擦材と同等以
上の高い動摩擦係数および良好な静動比を発現できるこ
とを見い出した。
【0029】すなわち、この発明に従った摩擦材を図面
に基づいて説明すると、図1で示すように、銅系焼結摩
擦材11は、銅または銅合金繊維12により構成される
銅不織布と、この銅不織布に焼結結合した銅合金粉末1
0により構成される。銅合金粉末10は後述するよう
に、硬質粒子分散型の銅合金粉末か銅−リン系合金粉末
である。また、銅または銅合金繊維12に接触するよう
に黒鉛粉末13が設けられている。銅または銅合金繊維
12が交差する部分12aでは、銅または銅合金繊維1
2同士が強固に焼結・結合している。
【0030】本発明の湿式用銅系焼結摩擦材に関する具
体的な構成については上述したとおりであるが、それぞ
れの要素の作用・効果について、以下に説明する。
【0031】(1) 銅系金属不織布の特性 銅系金属繊維の直径 本発明では、直径が10μm以上500μm以下の銅繊
維または銅合金繊維を出発原料とした銅系金属不織布を
用いる。直径が10μm未満の場合、たとえ、後述する
ような特定の合金粉末を銅系繊維に焼結・結合させたと
しても繊維の耐摩耗性や強度を十分に向上させることが
できず、摩擦材として使用できない。一方、直径が50
0μmを超える銅系繊維を用いる場合、繊維の直径が大
きいために不織布として銅系繊維を3次元的に均一に絡
み合わせることが困難となり、金属不織布中に空孔(気
孔)が均一に分散しなくなるといった問題が生じる。
【0032】特に、本発明では銅系繊維の強度を確保
し、かつ金属不織布をより経済性よく創製するために、
用いる銅系繊維の直径は40μm以上250μm以下が
より好ましい。また、銅系金属繊維の長さは、不織布を
構成するために適切な長さである5cm以上10cm以
下とすることが好ましい。
【0033】 不織布の目付け量 本発明では、目付け量が400g/m2 以上3000g
/m2 以下の銅系不織布を用いる。不織布の目付け量は
金属不織布を原料とする焼結摩擦材の気孔率および気孔
径に大きく関係している。そのため、目付け量を適正範
囲に管理することは本発明の焼結摩擦材の優れた摩擦摺
動特性を発現させるための重要な因子である。
【0034】具体的には、銅系不織布の目付け量が40
0g/m2 未満の場合、不織布中において銅系繊維同士
が焼結・結合する箇所(結合点)が少ないため、不織布
の強度・耐摩耗性が低下し、湿式用摩擦材として十分使
用できない。
【0035】一方、銅系不織布の目付け量が3000g
/m2 を超える場合、本発明が規定する30体積%以上
の気孔率を有する焼結摩擦材を創製することが困難とな
る。その結果、高い動摩擦係数および良好な静動比を得
ることができなくなる。
【0036】特に、本発明では、銅系不織布の目付け量
を800g/m2 以上1500g/m2 以下に管理する
ことで、適正な気孔率および気孔径を確保でき、かつ銅
系繊維の使用量を低減することでより安価に焼結摩擦材
を創製することができることを見い出した。
【0037】(2) 焼結摩擦材の特性 気孔率および気孔径 摩擦材中の気孔率および気孔径は潤滑油中で相手材と摩
擦摺動してトルクを伝達する際に、潤滑油を摩擦材中の
連続(連結)空孔を介して透過させることは、摺動界面
において潤滑油膜を排除し、より高い摩擦係数および良
好な静動比を発現させるための重要な因子である。
【0038】本発明の湿式用銅系焼結摩擦材中の気孔率
は30体積%以上90体積%以下である。気孔率が30
体積%未満の場合、摺動界面において十分に潤滑油の排
除ができないために高い動摩擦係数を発現することが困
難となる。
【0039】一方、気孔率が90体積%を超える場合、
焼結摩擦部材の強度・耐摩耗性が低下するとともに、相
手材と実際に接触する摩擦材の摩擦面積が少なくなるた
めに動摩擦係数が低下するといった問題が生じる。
【0040】特に、本発明者らは、潤滑油を適度に透過
させて相手材との摺動界面で潤滑油膜を除去し、かつ相
手材と接触する摩擦面積を増加させることでより高い動
摩擦係数を発現するためには、気孔率は50体積%以上
75体積%以下であることが好ましいことを見い出し
た。
【0041】本発明の湿式用銅系焼結摩擦材中の気孔率
に関して、全気孔数の60%以上の気孔が10μm以上
300μm以下の気孔径を有していることが好ましい。
気孔径が10μm未満の空孔が全気孔数中の40%を超
えると、摩擦材における潤滑油の透過性能が低下するた
めに十分に潤滑油膜を排除する効果が得られず、その結
果、動摩擦係数が低下する。
【0042】一方、気孔径が300μmを超える空孔が
全気孔数中の40%を超えると、焼結摩擦材の強度・耐
摩耗性が低下する。なお、気孔径の測定に際しては、た
とえば水銀ポリシメータなどを使用して測定することが
可能である。
【0043】 銅系合金粉末(銅合金粉末) 前述したように、本発明の銅系焼結摩擦材が従来の金属
不織布を基材としたものと大きく異なる特徴の1つは、
以下に示すようなある特定の組成・成分を有する銅系合
金粉末の少なくとも一方が銅系不織布繊維に焼結・結合
していることである。
【0044】(a) 硬質粒子分散型銅系合金粉末 この銅系合金粉末は、図2で示すように、銅合金からな
る銅系素地2中に硬質粒子3が均質に分散して銅系合金
粉末10を構成している。つまり、銅系合金粉末10
は、その内部に硬質粒子3を含有する複合粉末である。
【0045】具体的には、銅系合金粉末全体に対して3
重量%以上20重量%以下のスズ(Sn)、5重量%以
上40重量%以下の亜鉛(Zn)および5重量%以上4
0重量%以下のニッケル(Ni)の少なくとも一種と、
マイクロビッカース硬度300以上の硬さを有する硬質
粒子を5重量%以上35重量%以下含有し、残部が銅と
不可避的不純物、すなわち実質的に銅である硬質粒子分
散型複合銅合金粉末である。
【0046】このような粉末は内部に硬質粒子を有する
ことで相手材と摩擦摺動した際、耐摩耗性や耐焼付性を
向上させる効果がある。また、素地中にSn、Ni、Z
n等を含有することで耐摩耗性や硬度を向上させる効果
がある。中でも亜鉛は硫黄(S)を含む潤滑油中におけ
る銅の硫化腐食を抑制する効果がある。
【0047】上述の適正含有量を下回る場合には、それ
ぞれの効果が十分に得られない。また、適正含有量を上
回る場合にも、それぞれの効果はさらに向上することな
く、粉末が高価になるために経済性の問題が生じる。
【0048】硬質粒子の硬さに関して、耐摩耗性や耐焼
付性を向上させるためには、マイクロビッカース硬度で
300以上の硬さを有することが好ましい。相手材への
攻撃性なども考慮すると、マイクロビッカース硬度で6
00以上1000以下の硬さであることがより好まし
い。成分としては、たとえばFeMo、FeCr、Fe
Tiなどの金属間化合物粒子や、AlNやアルミナなど
のセラミックス粒子が硬質粒子の成分となることが好ま
しい。
【0049】また、このような複合粉末を作製する方法
としては、メカニカルアロイング法やメカニカルグラン
ディング法のような、素地を構成する銅系粉末と上述の
硬質粒子の粉末とを適正な成分比率に配合し、この混合
粉末をボールミルやアトライタなどの高エネルギ粉砕装
置により機械的な混合・粉砕・合金化処理を施す方法が
ある。
【0050】(b) Cu−P系合金粉末 銅合金粉末にリン(P)を含有させることで、銅合金粉
末と不織布の銅系繊維との焼結性を向上させることがで
きる。その結果、銅合金粉末と銅系繊維との結合力が増
加し、摩擦摺動時において金属不織布繊維から銅系合金
粉末の脱落を抑制することができる。リンの含有量は銅
系合金粉末全体に対して0.2重量%以上2重量%以下
であることが望ましい。リンの含有量が0.2重量%未
満であれば、十分に銅系合金粉末と銅系繊維が結合しな
い。リンの含有量が2重量%を超えても結合力は向上せ
ずかえって粉末が高価になるために経済性の問題が生じ
る。
【0051】なお、上述の硬質粒子分散型銅系合金粉末
とCu−P系合金粉末はいずれか一方または両方を用い
ることが望ましい。これらの銅系合金粉末を金属不織布
の銅系繊維に焼結・結合させるためには、以下の方法を
用いることができる。
【0052】まず、不織布にスプレー状の粘着性バイン
ダを塗布する。次に、上述の粉末を塗布することで不織
布の表面および内部の繊維上に均一に粉末を結合させ
る。この状態で所定の雰囲気および温度範囲で加熱・焼
結することで粉末と銅系繊維間で拡散現象を促進させて
両者を金属的に結合させることができる。
【0053】 黒鉛 本発明の銅系焼結摩擦材は、必要に応じて摩擦材全体に
対して10重量%以下の黒鉛を含有する。黒鉛は粉末ま
たは単繊維(ファイバ)として添加することで低滑り速
度において相手材とスムーズに摩擦摺動することで振動
・音の発生を抑制し、また静摩擦係数の上昇を抑えるこ
とで良好な静動比を発現することができる。黒鉛の含有
率が10重量%を超えてもその効果はなく、一般的には
黒鉛の含有量は2重量%以上5重量%以下の範囲内とす
ることが好ましい。
【0054】[2] 湿式用銅系焼結摩擦材の製造方法 本発明による湿式用銅系焼結摩擦材の製造方法は、前述
したように、まず、所定の直径を有する銅合金系繊維を
所定の目付け量で絡み合わせて得た金属(銅合金系不織
布)を出発原料として準備する。そして、この銅合金系
不織布の表面および内部の繊維上に、上述したような硬
質粒子分散型複合銅合金粉末および/またはCu−P系
合金粉末の少なくとも一方あるいは両方を塗布・付着さ
せる。
【0055】ただし、これらの粉末を塗布するに際して
は、事前に不織布繊維の表面に粘着性のバインダを塗布
しておき、その上に粉末を塗布する。この状態で銅合金
系不織布全体を不活性ガス雰囲気または真空中で温度8
50℃以上1080℃以下で加熱・焼結することによ
り、繊維上に塗布した銅合金粉末と銅合金系繊維との拡
散結合を進行させることで両者を強固に結合させること
ができる。
【0056】さらに、必要に応じて、焼結摩擦材の気孔
率または厚みを調整するためにプレスやロール圧延等で
不織布を加圧・圧縮することも可能である。また、銅合
金系繊維同士の結合力を向上させるために、焼結後にフ
ェノール系樹脂、アクリル系樹脂またはエポキシ系樹脂
のいずれかを焼結摩擦材全体に含浸させることも有効で
ある。
【0057】焼結温度が850℃未満であれば、銅合金
系繊維と上述の複合銅合金粉末またはCu−P合金粉末
との間で十分な拡散現象が進行しない。このような状態
で摩擦材料として使用すると、相手材と摺動した際に、
これらの銅合金粉末が繊維から脱落し、摩擦材の耐摩耗
性、耐焼付性が大幅に低下するといった問題が生じる。
【0058】一方、焼結温度が1080℃を超えると、
銅合金系繊維または銅合金粉末が液相を生成するため
に、所定の気孔率を確保することが困難となる場合があ
る。また、焼結摩擦材自身が顕著に収縮するといった問
題も生じる。特に、銅合金系繊維と銅合金粉末間での十
分な拡散結合力を確保し、かつ焼結工程での消費電力を
抑えて経済性よく摩擦材を製造するためには、焼結温度
を950℃以上1020℃以下に管理することがより好
ましい。
【0059】また、加熱・焼結雰囲気に関しては、銅合
金系不織布および銅合金粉末の酸化を抑制する観点か
ら、窒素、水素、アンモニア混合ガスなどの不活性雰囲
気または真空中で焼結を行なうことが望ましい。
【0060】
【実施例】(実施例1)表1に示す直径(繊維径)を有
する銅繊維(長さ95mm以上100mm以下)を3次
元的に絡み合わせて所定の目付け量を有する銅不織布
(形状:縦100mm×横100mm×厚み4〜6m
m)を準備した。
【0061】この繊維上に結合させる銅合金粉末として
粉末Aと粉末Bを用意した。粉末Aは硬質粒子分散型銅
合金粉末であり、粉末全体に対して20重量%の硬質粒
子(FeMo)と10重量%のSnとを含有し、残部が
銅である。また、硬質粒子であるFeMoの硬さはマイ
クロビッカース硬度で平均値が794(最小値640で
あり、最大値974)である。硬質粒子の平均粒径は8
μmであり、硬質粒子は銅合金粉末の素地中に均一に分
散している。
【0062】粉末Bは粉末に対して0.5重量%のリン
(P)と3重量%のスズ(Sn)とを含有し、残部が銅
である。上述の銅不織布に、スプレーにより粘着性バイ
ンダを噴霧・塗布し、続いて粉末Aと粉末Bとを重量基
準で1:1の比率で混合した混合粉末をバインダに塗布
して銅不織布の表面および内部の銅繊維上に均一に混合
粉末を分散させた。なお、混合粉末の塗布量は、銅不織
布全体に対して10重量%とした。
【0063】次に、混合粉末を塗布した不織布を窒素ガ
ス雰囲気中で温度450℃で1時間の脱バインダ処理を
行ない、続けて同一雰囲気で温度を950℃として1時
間加熱焼結処理を施した。これにより、不織布を構成す
る銅繊維同士を焼結結合させるとともに、銅繊維上に分
散している粉末Aおよび粉末Bを銅繊維に拡散結合させ
た。
【0064】得られた銅合金系不織布を、その厚み方向
に圧力15〜250kgf/cm2の種々の条件で圧縮
することにより気孔率・気孔分布の異なる銅系焼結摩擦
材(厚み:0.45mm以上0.85mm以下)を作製
した。なお、水銀ポロシメータにより気孔率および気孔
径分布の測定を行ない、全気孔数の60%以上の気孔に
ついて、その気孔径の範囲を整理した結果を表1に示
す。
【0065】
【表1】
【0066】表1中「全気孔数60%以上の気孔径範
囲」がたとえば「88〜204」であれば、気孔径が8
8μm以上204μm以下の気孔が、全気孔数の60%
以上を占めることをいう。以上の表でも同様である。
【0067】次に、上述の工程に従って作製した銅系焼
結摩擦材を直径φが60mmの円盤(ディスク)に加工
した。また、外径φが45mm、内径φが35mmのS
35C(JIS)鋼材製リングを準備した。
【0068】リングオンディスク式摩擦試験機を用いて
潤滑油(ATF)中で摩擦試験を行なった。リングオン
ディスク式摩擦試験機について説明する。図3を参照し
て、リングオンディスク式摩擦試験機100は、回転台
102と、固定台104とを有する。回転台102にデ
ィスク状の銅系焼結摩擦材103を固定し、固定台10
4にリング状の鋼材製のリング材105を載置した。矢
印106で示す方向に加圧力10kgf/cm2 (一
定)を加え、リング材105の中央部105aでの滑り
速度を10、20、50、100、200cm/sec
とし、各速度で5分間保持して低速度側からステップ状
に速度を増加させた。各速度における動摩擦係数の平均
値およびその幅(最大値と最小値)、摩耗損傷量、摺動
面の損傷状況(凝着の有無等)を評価した。その結果を
表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】本発明例であるサンプル1〜8は、適正な
直径を有する銅繊維により構成され、かつ本発明が推奨
する目付け量を有する銅不織布から作製される。また、
所定の条件下で得られた銅系焼結摩擦材は適正な気孔率
および気孔分布(全気孔の60%以上の気孔が10μm
以上300μm以下の気孔径である)を有する。その結
果、摩擦試験において滑り速度が変化する条件下でも安
定した高い摩擦係数を有する。また、各速度における摩
擦係数の変動幅が平均値の1%以下と極めて小さいこと
が確認できた。また、焼結摩擦材自身の摩耗損傷や相手
鋼材への攻撃もなく、良好な摺動面であることも確認さ
れた。
【0071】一方、比較例であるサンプル9〜15で
は、以下のような問題が生じた。 サンプル9 銅繊維径が8μmと小さく、また目付け量が350g/
2 と小さいために摩擦試験中に焼結材が摩耗し、相手
リング材に凝着した。その結果、見掛け上動摩擦係数が
増加した。
【0072】サンプル10 銅繊維径が8μmと小さく、また目付け量が350g/
2 と小さいために摩擦試験中に焼結材が摩耗し、相手
リング材に凝着した。その結果、見掛け上動摩擦係数が
増加した。
【0073】サンプル11 繊維径が575μmと大きいために摩擦材中の気孔分布
が不均一となった。その結果、潤滑油の透過性能が低下
し高速度域において動摩擦係数が顕著に低下した。
【0074】サンプル12 繊維径が750μmと大きいために所定の不織布を作製
することができなかった。
【0075】サンプル13 高圧力で圧縮した結果、焼結摩擦材中の気孔率が22体
積%と小さくなった。その結果、摺動界面における油膜
を十分に除去できず、摩擦係数が低下するとともに、高
速度域において動摩擦係数がさらに低下した。
【0076】サンプル14 高圧力で圧縮した結果、焼結摩擦材中の気孔率が18体
積%と小さくなった。その結果、摺動界面における油膜
を十分に除去できず、摩擦係数が低下するとともに、高
速度域において動摩擦係数がさらに低下した。
【0077】サンプル15 目付け量が3500g/m2 と大きい銅不織布を用いた
ために、得られた焼結摩擦材中の気孔率が14体積%と
小さくなった。その結果、摺動界面における油膜を十分
に除去できず、摩擦係数が低下するとともに高速度域に
おいて動摩擦係数がさらに低下した。
【0078】(実施例2)直径φが50μmの銅繊維
(長さ95mm〜100mm)を3次元的に絡み合わせ
て作製した目付け量1000g/m2 の銅不織布(形
状:縦100mm×横100mm×厚み4.5mm)を
準備した。また、この銅不織布の繊維上に結合させる銅
合金粉末として、表3に示すような組成を有する銅合金
粉末を準備した。銅合金粉末全体を100重量%とした
ときの各元素の含有量を重量基準で表示しており残部は
銅と不可避的不純物、すなわち、実質的に銅である。そ
して、上述の銅不織布に、スプレーにより粘着性バイン
ダを噴霧・塗布した後、銅合金粉末をバインダに塗布し
て銅不織布の表面および内部の銅繊維上に均一に銅合金
粉末を分散させた。なお、粉末の塗布量は銅不織布全体
に対して15重量%とした。これを窒素ガス雰囲気中で
温度450℃で1時間脱バインダ処理を行ない、続けて
同一雰囲気で温度980℃で1時間の加熱焼結処理を施
した。これにより、不織布を構成する銅繊維同士を焼結
結合させると同時に、銅繊維上に分散している銅合金粉
末を銅繊維に拡散接合させた。そして、得られた銅合金
系不織布をその厚み方向に圧力30kgf/cm2 で圧
縮することにより銅系焼結摩擦材を作製した。また、水
銀ポロシメータにより気孔率および気孔径分布の測定を
行ない、全気孔の60%以上の気孔についてその気孔径
の範囲を整理した結果を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】次に、作製した銅系焼結摩擦材を直径φが
60mmの円盤(ディスク)に加工した。また、外径φ
が45mm、内径φが35mmのS35C(JIS)の
鋼材製リングを準備した。このディスクとリングを用い
てリングオンディスク式摩擦試験機で潤滑油(ATF)
中で摩擦試験を行なった。試験条件について、加圧力:
10kgf/cm2 (一定)、リングの中央部での滑り
速度:10、20、50、100、200cm/sec
とし、各速度で5分間保持して低速度側からステップ状
に速度を増加する方式とした。各速度における動摩擦係
数の平均値およびその幅(最大値−最小値)、摩耗損傷
量、摺動面の損傷状況(凝着の有無等)を評価した。そ
の結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】表4より、本発明例であるサンプル21〜
25は、適正な直径を有する銅繊維により構成され、か
つ本発明が推奨する目付け量を有する銅不織布に対し
て、適正な合金組成を有する銅合金粉末を焼結結合させ
て得られる。また、本発明の銅系焼結摩擦材は適正な気
孔率および気孔分布(全気孔の60%以上が10μm以
上300μm以下の気孔径である)を有している。その
結果、摩擦試験において滑り速度が変化する条件下にお
いても安定した高い摩擦係数を有していた。
【0083】また、各速度における摩擦係数の変動幅が
平均値の1%以下と小さかった。さらに、焼結摩擦材自
身の摩耗損傷や相手材への攻撃もなく良好な摺動面であ
ることが確認された。また、繊維上に結合させる銅合金
粉末が適正量のP(リン)を含有する場合、その粉末が
Sn、Zn、Niなどの元素を含有することで焼結摩擦
材の耐摩耗性がさらに向上することも確認された。
【0084】一方、比較例であるサンプル26〜29に
おいては以下のような問題が生じた。
【0085】サンプル26 リンを全く含有しない銅粉末であるため、銅粉末と銅不
織布繊維および不織布繊維同士が十分に焼結結合せず摩
擦試験中に焼結摩擦材が摩耗し、相手リング材に凝着し
た。そして見掛け上動摩擦係数が増加・変動した。
【0086】サンプル27 粉末中のPの含有量が0.08重量%と少ないために銅
粉末と銅不織布繊維および不織布繊維同士が十分に焼結
・結合せず、試験中に焼結摩擦材が摩耗し、相手リング
材に凝着した。そして、見掛け上動摩擦係数が増加・変
動した。
【0087】サンプル28 粉末中のPの含有率が0.12重量%と少ないために銅
粉末と銅不織布繊維および不織布繊維同士が十分に焼結
結合せず、摩擦試験中に焼結摩擦材が摩耗し、相手リン
グ材に凝着した。そして、見掛け上動摩擦係数が増加・
変動した。
【0088】(実施例3)直径φが50μmの銅繊維
(長さ95mm〜100mm)を3次元的に絡み合わせ
て作製した、目付け量1000g/m2 の銅不織布(形
状:縦100mm×横100mm×厚さ4.5mm)を
準備した。また、この銅不織布の繊維上に結合させる銅
合金粉末として、表5で示すような組成を有する銅合金
粉末を準備した。銅合金粉末全体を100重量%とした
ときの各成分の含有量を重量基準で表示しており、残部
は実質的に銅である。硬質粒子の硬さはマイクロビッカ
ース硬度(MHv)で表示している。また、硬質粒子は
銅合金粉末の素地(粉末の内部)に均一に分散してい
る。
【0089】なお、このような硬質粒子分散型複合粉末
の製造方法として、所定量の硬質粒子と銅合金粉末また
は銅粉末と各元素粉末との混合粉末をボールミル内で混
合・粉砕・合金化処理を行なうメカニカルアロイング法
を適用した。
【0090】そして、上述の銅不織布に、スプレーによ
り粘着性バインダを噴霧・塗布した後、硬質粒子分散型
複合粉末を塗布して銅不織布の表面および内部の銅繊維
上に均一に分散させた。なお、粉末の塗布量は銅不織布
全体に対して15重量%とした。これを窒素ガス雰囲気
中で温度450℃で1時間の脱バインダ処理を行なっ
た。続けて同一雰囲気で温度980℃で1時間の加熱焼
結処理を施した。
【0091】これにより、不織布を構成する銅繊維同士
を焼結結合させると同時に銅繊維上に分散している銅合
金粉末を銅繊維に拡散接合させた。
【0092】そして、得られた銅合金系不織布をその厚
み方向に圧力30kgf/cm2 で圧縮することによ
り、銅系焼結摩擦材を作製した。なお、水銀ポロシメー
タにより気孔率および気孔径分布の測定を行ない。全気
孔の60%以上の気孔の気孔径の範囲を整理した結果に
ついて表5に示す。
【0093】
【表5】
【0094】作製した銅系焼結摩擦材を直径φが60m
mの円盤(ディスク)に加工した。また、外径φが45
mmで内径φが35mmのS35C(JIS)鋼材製リ
ングを準備した。このディスクとリングを用いてリング
オンディスク式摩擦試験機で潤滑油(ATF)中で摩擦
試験を行なった。試験条件について、加圧力:10kg
f/cm2 (一定)、リングの中央部での滑り速度:1
0、20、50、100、200cm/secとし、各
速度で5分間保持して低速度側からステップ状に速度を
増加する方式とした。
【0095】各速度における動摩擦係数の平均値および
その幅(最大値−最小値)、摩耗損傷量、摺動面の損傷
状況(凝着の有無等)を評価した。その結果を表6に示
す。
【0096】
【表6】
【0097】表6より、本発明例であるサンプル31〜
37は、適正な直径を有する銅繊維により構成され、か
つ本発明が推奨する目付け量を有する銅不織布に対し
て、適正な合金組成および適正な硬度を有する硬質粒子
を有する硬質粒子分散型複合銅合金粉末を焼結結合させ
て得られる。また、本発明の銅系焼結摩擦材は適正な気
孔率および気孔分布(全気孔の60%以上が10μm以
上300μm以下の気孔径である)を有している。その
結果、摩擦試験において滑り速度が変化する条件下にお
いても安定した高摩擦係数を有している。
【0098】また、各速度における摩擦係数の変動幅が
平均値の1%以下と小さい。さらに、焼結摩擦材自身の
摩耗損傷や相手材への攻撃もなく良好な摺動面であるこ
とが確認された。一方、比較例であるサンプル38〜4
5においては以下のような問題が生じた。
【0099】サンプル38 Snの含有率が1重量%と少ないために摩擦試験中に焼
結摩擦材が摩耗し、見掛け上動摩擦係数が増加・変動し
た。
【0100】サンプル39 Snの含有率が25重量%と多いために摩擦試験中に焼
結摩擦材が相手鋼材を攻撃して相手材が摩耗損傷した。
その結果、見掛け上動摩擦係数が増加・変動した。
【0101】サンプル40 Znの含有率が45重量%と多いために摩擦試験中に焼
結摩擦材が相手鋼材を攻撃して相手材が摩耗損傷した。
その結果、見掛け上動摩擦係数が増加・変動した。
【0102】サンプル41 Niの含有率が45重量%と多いために摩擦試験中に焼
結摩擦材が相手鋼材を攻撃して相手材が摩耗損傷した。
その結果、見掛け上動摩擦係数が増加・変動した。
【0103】サンプル42 硬度が1595MHvと非常に硬い硬質粒子(SiC)
を含有した更新粒子分散型複合銅合金粉末を用いたた
め、摩擦試験中に焼結摩擦材が相手鋼材を著しく攻撃し
て相手材が摩耗損傷した。その結果、見掛け上動摩擦係
数が増加・変動した。
【0104】サンプル43 硬度が300MHvを下回る(硬度が224MHv)鉄
粉末を硬質粒子として用いたため、摩擦試験中に焼結摩
擦材が摩耗して相手リング材に凝着した。その結果、見
掛け上動摩擦係数が増加・変動した。
【0105】サンプル44 硬質粒子分散型複合銅合金粉末における硬質粒子の含有
率が3重量%と少ないために摩擦試験中に焼結摩擦材が
著しく摩耗した。その結果、見掛け上動摩擦係数が増加
・変動した。
【0106】サンプル45 硬質粒子分散型複合銅合金粉末における硬質粒子の含有
率が40重量%と多いために摩擦試験中に焼結摩擦材が
相手鋼材を攻撃して相手材が摩耗損傷した。その結果、
見掛け上動摩擦係数が増加・変動した。
【0107】(実施例4)直径φが45μmの銅繊維
(長さ95mm〜100mm)を3次元的に絡み合わせ
て作製した、目付け量1000g/m2 の銅不織布(形
状:縦100mm×横100mm×厚み4.5mm)を
準備した。
【0108】また、この銅不織布の繊維上に硬質粒子分
散型複合銅合金粉末と黒鉛粒子(平均粒径:120μ
m)を塗布・分散させた状態で焼結した。この銅合金粉
末の組成は銅合金粉末全体を100重量%としたとき、
Snの含有率が10重量%であり、硬質粒子としてのF
eMoの含有率が25重量%であり、残部が実質的に銅
である。また、硬質粒子としてのFeMoの硬度は79
4MHvである。また、黒鉛粒子の含有率は表7に示す
とおりであり、焼結摩擦材全体に対する重量基準で表示
した。
【0109】得られた銅合金系不織布を、その厚み方向
に圧力25kgf/cm2 で圧縮することにより銅系焼
結摩擦材を作製した。作製した銅系焼結摩擦材を直径φ
が60mmの円盤(ディスク)に加工した。また、外径
φが45mmで内径φが35mmのS35C(JIS)
鋼材製リングを準備した。
【0110】このディスクとリングを用いてリングオン
ディスク式摩擦試験機で潤滑油(ATF)中で摩擦試験
を行なった。試験条件について、加圧力:10kgf/
cm 2 (一定)、リングの中央部での滑り速度:10、
20、50、100、200cm/secとし、各速度
で5分間保持して低速度側からステップ状に速度を増加
させる方式とした。各速度における動摩擦係数の平均値
およびその変動幅(最大値−最小値)を測定した。摩擦
係数の安定性を評価するためにK値=(変動幅/動摩擦
係数の平均値)×100%としてK値を用いて整理した
結果を表7に示す。
【0111】
【表7】
【0112】いずれも本発明例であるが、サンプル51
で示す黒鉛を添加していない焼結摩擦材における動摩擦
係数の安定性(K値)に対して、黒鉛を添加することで
K値は低下する傾向にある。特に、低速度域でのK値の
低減効果がある。つまり、潤滑油膜が形成されにくくな
る低速度域において、黒鉛粉末の潤滑効果によって摩擦
係数の変動幅(K値)が低減することがわかる。
【0113】(実施例5)直径φが45μmの銅繊維
(長さ95mm〜100mm)を3次元的に絡み合わせ
て作製した、目付け量が1000g/m2 の銅不織布
(形状:縦100mm×横100mm×厚み4.5m
m)を準備した。
【0114】また、この銅不織布の繊維上に硬質粒子分
散型複合銅合金粉末を塗布・分散させた状態で焼結・結
合した。この銅合金粉末の組成は、銅合金粉末全体を1
00重量%とするとき、Snの含有率が10重量%、硬
質粒子としてのFeMoの含有率が25重量%であり、
残部が実質的に銅であった。また、硬質粒子としてのF
eMoの硬度は794MHvであった。
【0115】得られた銅合金系不織布を、その厚み方向
に圧力25kgf/cm2 で圧縮した後、表8に示すよ
うな有機系樹脂を摩擦材中に含浸させることにより、銅
系焼結摩擦材を作製した。
【0116】作製した銅系焼結摩擦材を直径φが60m
mの円盤(ディスク)に加工した。また、外径φが45
mmで内径φが35mmのS35C(JIS)鋼材製リ
ングを準備した。
【0117】このディスクとリングを用いてリングオン
ディスク式摩擦試験機で潤滑油(ATF)中で摩擦試験
を行なった。試験条件について、加圧力:5kgf/c
2(一定)、リングの中央部での滑り速度:10、2
0、50、100、200cm/secとし、各速度で
5分間保持して低速度側からステップ状に速度を増加さ
せる方式とした。各速度における動摩擦係数の平均値お
よびその変動幅(最大値−最小値)を測定した。摩擦係
数の安定性を評価するために、K値=(変動幅/動摩擦
係数の平均値)×100%としてこのK値を用いて整理
した結果を表8に示す。
【0118】
【表8】
【0119】いずれのサンプルも本発明例であるが、本
試験条件のように比較的低加圧力を付与する場合には、
サンプル61で示す有機系樹脂を含浸しない場合では動
摩擦係数の安定性(K値)は劣化する(K値が増加す
る)。
【0120】これに対して、表8で示す種々の樹脂を含
浸させることにより、たとえ低い加圧力を付加する場合
であっても低速度域におけるK値は低下する。つまり、
摩擦材の摺動面が相手材と均一に接触しやすくなるため
であり、摩擦材が樹脂を含浸することでいわゆるフィッ
ト性が大幅に改善されたためである。
【0121】(実施例6)直径φが45μmの銅繊維
(長さ95mm〜100mm)を3次元的に絡み合わせ
て作製した、目付け量が1000g/m2 の銅不織布
(形状:縦100mm×横100mm×厚み4.5m
m)を準備した。この銅不織布に粘着性バインダを噴霧
し、このバインダに硬質粒子分散型複合銅合金粉末を塗
布することで不織布表面および内部の銅繊維上に銅合金
粉末を分散させた。
【0122】続いて、これを窒素ガスと水素ガスの混合
雰囲気で表9で示す条件で加圧・焼結を行ない、その厚
み方向に圧力25kgf/cm2 の条件で圧縮した。得
られた焼結摩擦材の表面および内部における銅繊維と銅
合金粉末との結合状態を走査型電子顕微鏡(SEM:Sc
anning Electron Microscope)により観察した。その結
果を表9に示す。
【0123】
【表9】
【0124】本発明例であるサンプル71〜74では、
適正な焼結条件のもとで焼結摩擦材を創製したため、不
織布中の銅繊維同士が強固に結合すると同時に銅合金粉
末は銅繊維と良好な拡散現象により強固に結合してい
る。一方、比較例であるサンプル75〜77については
以下のような問題が生じた。
【0125】サンプル75 焼結温度が800℃と低いために銅繊維同士が十分に結
合しなかった。また、銅合金粉末が銅繊維と十分に結合
していないためには摩擦材から大部分の銅合金粉末が脱
落した。
【0126】サンプル76 焼結温度が1150℃と高いために銅繊維の一部および
銅合金粉末が溶融した。
【0127】サンプル77 大気中で焼結を行なったために銅繊維が顕著に酸化し、
圧縮過程で銅繊維が破損した。
【0128】以上、この発明について説明したが、ここ
で示した実施の形態と実施例はさまざまに変形すること
が可能である。
【0129】今回開示された実施の形態と実施例はすべ
ての点で例示であって制限的なものではないと考えられ
るべきである。本発明の範囲は上述した説明ではなくて
特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等
の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが
意図される。
【0130】
【発明の効果】この発明による湿式用銅系焼結摩擦材は
潤滑油中において高い摩擦係数と良好な静動比を有し、
かつ優れた耐摩耗性・耐焼付性を有している。そのた
め、車両用オートマチックトランスミッション(AT)
における湿式多段クラッチやマニュアルトランスミッシ
ョン(MT)におけるシンクロナイザーリングなどに使
用される湿式用焼結摩擦材として適用できる。しかも、
本発明の製造方法によれば、それを経済性よく提供でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に従った湿式用銅系焼結摩擦系の模式
図である。
【図2】銅系焼結摩擦材中の銅系粉末の模式図である。
【図3】リングオンディスク式摩擦試験機の模式図であ
る。
【符号の説明】
2 粉末素地 3 硬質粒子 10 銅系合金粉末 11 銅系焼結摩擦材 12 銅または銅合金繊維 12a 結合部 13 黒鉛
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 9/06 C22C 9/06 F16D 13/62 F16D 13/62 A 23/06 23/06 D 69/02 69/02 D

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 直径が10μm以上500μm以下の銅
    繊維または銅合金系繊維が3次元的に絡み合っており、
    かつ、前記銅繊維または銅合金系繊維が交差する部分が
    焼結結合している金属不織布と、 前記金属不織布に結合している銅合金粉末とを備えた、
    湿式用銅系焼結摩擦材。
  2. 【請求項2】 前記銅合金粉末は、3重量%以上20重
    量%以下のSn、5重量%以上40重量%以下のZnお
    よび5重量%以上40重量%以下のNiからなる群より
    選ばれた少なくとも一種を含み、かつ、マイクロビッカ
    ース硬度が300以上の硬質粒子を5重量%以上35重
    量%以下含み、残部が銅と不可避的不純物である、請求
    項1に記載の湿式用銅系焼結摩擦材。
  3. 【請求項3】 前記銅合金粉末は、0.2重量%以上2
    重量%以下のPを含み、残部が銅と不可避的不純物であ
    る、請求項1または2に記載の湿式用銅系焼結摩擦材。
  4. 【請求項4】 気孔率が30体積%以上90体積%以下
    である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の湿式用銅
    系焼結摩擦材。
  5. 【請求項5】 全気孔数の60%以上の気孔が10μm
    以上300μm以下の気孔径を有する、請求項1〜4の
    いずれか1項に記載の湿式用銅系焼結摩擦材。
  6. 【請求項6】 焼結摩擦材全体に対して10重量%以下
    の黒鉛を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の湿
    式用銅系焼結摩擦材。
  7. 【請求項7】 直径が10μm以上500μm以下の銅
    繊維または銅合金系繊維が3次元的に絡み合っている金
    属不織布中に銅合金粉末を分散させる工程と、 前記銅合金粉末が分散した前記金属不織布を不活性雰囲
    気中または真空中で温度850℃以上1080℃以下で
    加熱・焼結する工程とを備えた、湿式用銅系焼結摩擦材
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記金属不織布の目付け量は400g/
    2 以上3000g/m2 以下である、請求項7に記載
    の湿式用銅系焼結摩擦材の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記金属不織布を加熱・焼結する工程
    は、温度950℃以上1020℃以下で前記金属不織布
    を加熱・焼結することを含む、請求項7または8に記載
    の湿式用銅系焼結摩擦材の製造方法。
  10. 【請求項10】 加熱・焼結された前記金属不織布を加
    圧・圧縮する工程をさらに備える、請求項7〜9のいず
    れか1項に記載の湿式用銅系焼結摩擦材の製造方法。
  11. 【請求項11】 加熱・焼結された前記金属不織布にフ
    ェノール系樹脂、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂
    からなる群より選ばれた少なくとも一種を含浸させる工
    程をさらに備える、請求項7〜10のいずれか1項に記
    載の湿式用銅系焼結摩擦材の製造方法。
  12. 【請求項12】 コアプレートの表面に請求項1〜6の
    いずれか1項の記載の湿式用銅系焼結摩擦材が固着され
    た摩擦板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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GB2395721A (en) * 2002-10-14 2004-06-02 Miba Frictec Gmbh A friction lining
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RU2757878C1 (ru) * 2021-03-23 2021-10-22 Государственное Научное Учреждение Институт Порошковой Металлургии Имени Академика О.В. Романа Состав спеченного фрикционного материала на основе меди

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