JPH11264031A - 焼結金属摩擦部材およびその製造方法 - Google Patents

焼結金属摩擦部材およびその製造方法

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JPH11264031A
JPH11264031A JP6522198A JP6522198A JPH11264031A JP H11264031 A JPH11264031 A JP H11264031A JP 6522198 A JP6522198 A JP 6522198A JP 6522198 A JP6522198 A JP 6522198A JP H11264031 A JPH11264031 A JP H11264031A
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JP
Japan
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powder
friction member
sintered metal
sintered
metal friction
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Withdrawn
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JP6522198A
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English (en)
Inventor
Keiji Ishibashi
恵二 石橋
Katsuyoshi Kondo
勝義 近藤
Yoshinobu Takeda
義信 武田
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高圧力での過酷な使用条件での耐久性と高い
摩擦係数を兼ね備えた焼結金属摩擦部材をて提供する。 【解決手段】 潤滑油中で相手部材と摩擦摺動して、そ
の接触界面で摩擦力を発生させる焼結金属摩擦部材は、
金属繊維4を備えるとともに、20体積%以上60体積
%以下の空孔率を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車のオート
マチック変速機用多板クラッチやマニュアル変速機用同
期リングなどの、潤滑油中で使用される摩擦摺動部品に
おいて利用される焼結金属摩擦部材に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】自動車のオートマチック変速機用多板ク
ラッチやマニュアル変速機用同期リングなどにおいて、
従来から使用される熱硬化性樹脂を用いた有機系摩擦材
またはパルプ繊維をベースとしたペーパー系摩擦材は、
潤滑油中で高い摩擦係数を発現する。しかしながら、高
温・高圧力の過酷な使用条件下では耐熱性が不足するた
めに焼けや摩耗等の問題が生じる。また、耐久性の要求
に対しても不十分である。
【0003】一方、高温下で焼付きや摩耗などの問題が
生じにくい摩擦材料としては、金属系のものが知られて
いる。金属系の摩擦材料では、耐久性、耐熱性の問題は
生じないが、潤滑油中で使用される場合には、有機系摩
擦材と比較して摩擦係数が低下するという問題が生じ
る。特に、摺動速度が高速度になった際に摩擦係数が大
きく低下する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年、摩擦摺動部品に
対する高トルク化の要求が高まっている。そのために、
高圧力の過酷な使用条件下での耐久性と高い摩擦係数を
兼ね備えた摩擦材料の開発が課題となる。
【0005】そこで、この発明は、上述のような課題を
解決するためになされたものであり、過酷な使用条件下
の耐久性と高い摩擦係数を兼ね備えた焼結金属摩擦部材
を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明の1つの局面に
従った焼結金属摩擦部材は、潤滑油中で相手部材と摩擦
摺動して、その接触界面で摩擦力を発生させる焼結金属
摩擦部材であって、金属繊維を備えるとともに、20体
積%以上60体積%以下の空孔率を有する。
【0007】このように構成された焼結金属摩擦部材に
おいては、空孔率が20体積%以上60体積%以下と大
きいため、相手部材と接触しても、その接触界面で油膜
が生じないため、大きな摩擦力を発生させることができ
る。また、金属繊維を含むため、金属繊維同士が絡み合
うことにより強度が低下することがない。
【0008】空孔の平均径は30μm以上200μm以
下であることが好ましい。焼結金属摩擦部材が相手部材
と接触する面において、空孔の割合が25面積%以上7
5面積%以下であることが好ましい。
【0009】焼結金属摩擦部材は、粉末内部に硬質粒子
が分散した硬質粒子分散型金属粉末をさらに備えること
が好ましい。
【0010】この発明の別の局面に従った焼結金属摩擦
部材は、潤滑油中で相手部材と摩擦摺動して、その接触
界面で摩擦力を発生させる焼結金属摩擦部材であって、
金属繊維と、粉末内部に硬質粒子が分散した硬質粒子分
散型金属粉末とを備える。
【0011】このように構成された焼結金属摩擦部材
は、金属繊維を含むため、この金属繊維により、焼結金
属摩擦部材内での空孔率が大きくなり、相手部材と接触
した場合にも油膜が生じず、大きな摩擦力を発生させる
ことができる。また、硬質粒子を硬質粒子分散型金属粉
末として焼結金属摩擦部材内に分散させることにより、
硬質粒子が焼結金属摩擦部材から脱落せず、高い摩擦係
数を発現させることができる。
【0012】硬質粒子分散型金属粉末の割合は40体積
%以上80体積%以下であることが好ましい。
【0013】焼結金属摩擦部材に対する硬質粒子の割合
は5重量%以上30重量%以下であることが好ましい。
【0014】硬質粒子のマイクロビッカース硬さが40
0以上であることが好ましい。固体潤滑剤として黒鉛、
二硫化モリブデン、フッ化カルシウム、二硫化タングス
テンおよび窒化ホウ素からなる群より選ばれた少なくと
も1種を含み、固体潤滑剤の割合は15体積%以下であ
ることが好ましい。
【0015】焼結金属摩擦部材は、銅を主成分とし、
錫、亜鉛およびニッケルからなる群より選ばれた少なく
とも1種を含む銅合金からなり、銅合金中の銅の割合は
60重量%以上95重量%以下であることが好ましい。
【0016】焼結金属摩擦部材は、リング状部材に固定
されて回転し、相手部材と接触することにより回転力を
伝達することが好ましい。
【0017】金属繊維のアスペクト比は3以上30以下
であることが好ましい。この発明の1つの局面に従った
焼結金属摩擦部材の製造方法は、出発材料としてかさ密
度が0.8g/cm3 以上4.0g/cm3 以下の範囲
になる原料粉末を準備する工程と、原料粉末を焼結して
空孔率が20体積%以上60体積%以下の焼結体を得る
工程とを備える。
【0018】このような工程を備えた焼結金属摩擦部材
の製造方法においては、原料粉末のかさ密度を適正化し
ているため、この原料粉末から得られる焼結体の空孔率
が大きくなる。そのため、相手部材と接触した際に接触
界面に油膜が生じず、大きな摩擦力を発生させることが
できる焼結金属摩擦部材を提供することができる。
【0019】原料粉末はアスペクト比が3以上30以下
の金属繊維を含むことが好ましい。原料粉末は、粉末内
部に硬質粒子が分散した硬質粒子分散型金属粉末をさら
に含むことが好ましい。
【0020】原料粉末全体の重量W1 と金属繊維の重量
2 との比(W2 /W1 )が0.15以上0.6以下で
あることが好ましい。
【0021】この発明の別の局面に従った焼結金属摩擦
部材の製造方法は、アスペクト比が3以上30以下の金
属繊維と、粉末内部に硬質粒子が分散した硬質粒子分散
型金属粉末とを混合して出発材料としての原料粉末を準
備する工程と、原料粉末を焼結して焼結体を得る工程と
を備えることが好ましい。
【0022】このような工程を備えた焼結金属摩擦部材
の製造方法においては、出発原料内に金属繊維を含ませ
ているため、この出発原料を焼結して焼結体を得れば、
空孔率が大きい焼結金属摩擦部材を得ることができる。
これにより、相手部材と接触しても、その接触界面で油
膜が生じず大きな摩擦力を発生させることができる。ま
た、硬質粒子は、硬質粒子分散型金属粉末として出発材
料に含ませているため、空孔率が大きくなっても硬質粒
子の脱落という問題が発生せず、高い摩擦力を発生させ
ることができる。
【0023】硬質粒子分散型金属粉末はメカニカルアロ
イング法により製造されることが好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明者らは、摩擦係数を低下さ
せるのは、摺動界面の油膜であると考え、油膜を排除で
きる焼結材料の開発に着手した。具体的には、適正な空
孔率・空孔径を焼結体内に保有・分散させることで上述
の油を通過させて油膜を排除できる焼結摩擦材を発明し
た。その結果、潤滑油中で高い摩擦係数を有し、耐久性
に優れる焼結金属摩擦部材を見出した。このような効果
を発現する焼結金属摩擦部材は、金属繊維と、金属粉末
中に硬質粒子が均質に分散した硬質粒子分散型金属粉末
を固化してなる焼結材であること、および金属繊維を含
み、空孔率が20体積%以上60体積%以下であること
を特徴とするものである。
【0025】次に、本発明の焼結金属摩擦部材におい
て、上述のごとく材料設計した理由を以下に説明する。
【0026】(1) 空孔 空孔率、空孔径 摩擦部材を潤滑油中で使用する場合、油が摩擦部材と相
手部材の接触界面に存在して、その潤滑効果により摩擦
係数が低下する。潤滑油の油膜厚さは摩擦摺動条件によ
って変化し、押付け圧力が低下するほど、また摺動速度
が増加するほど油膜の厚さが増加する。これにより、摩
擦係数が低下する。
【0027】潤滑油中で摩擦摺動してトルクを発生させ
る機構において高い摩擦係数を発現させるためには、相
手部材と摩擦部材の接触界面での潤滑油を排除すること
が有効である。そのために、材料の空孔率と空孔径を適
正な範囲に調整することが有効である。
【0028】空孔率が増加することにより、材料内で潤
滑油が透過する経路が多くなり、潤滑油が透過しやすく
なる。また、潤滑油が焼結体の空孔を通過する際に、潤
滑油の粘性により抵抗が生じる。空孔径が大きくなるほ
ど抵抗は小さくなり、潤滑油が透過しやすくなる。本発
明者らは種々の実験を行なった結果、焼結体中の空孔
率、空孔径に関する適正範囲について以下の知見を得
た。
【0029】空孔率が20体積%よりも低い場合には、
潤滑油中の透過性能が低下し、そのため摩擦係数増加の
効果が小さい。空孔径が60体積%よりも大きい場合に
は、材料強度の低下が大きくなり、摩擦摺動時の耐摩耗
性が低下し、使用寿命の短命化の原因となり好ましくな
い。よって、空孔率は20体積%以上60体積%以下が
よく、より好ましくは、空孔率は40体積%以上50体
積%以下がよい。
【0030】また、空孔径が30μmよりも小さい場合
には、潤滑油の透過性能が低下する。
【0031】また、空孔径が200μmよりも大きい場
合には、材料強度の低下が大きくなり、摩擦摺動時の耐
摩耗性が低下する。よって、空孔径は30μm以上20
0μm以下が必要であり、より好ましくは50μm以上
160μm以下がよい。
【0032】 接触面の空孔量 接触面の空孔量は、実際に摩擦摺動時に相手材と接触す
る面積に影響を与えるので重要である。空孔量が25面
積%よりも小さい場合には、界面の潤滑油を排除する効
果が小さくなり摩擦係数が低下するので好ましくない。
空孔量が75面積%よりも大きい場合には、相手材との
接触面積が小さくなるために摩擦係数が低下する。よっ
て、摺動表面の空孔量は25面積%以上75面積%以下
がよい。
【0033】(2) 金属素地 組成 銅合金素地は、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ニッケル
(Ni)からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属
元素を5重量%以上40重量%以下含むのが好ましい。
ニッケル、錫および亜鉛はいずれも銅と合金を形成する
ため、素地の硬度、強度を増加させる効果を有する。
錫、ニッケル、亜鉛の含有量が5重量%未満の場合に
は、硬度、強度が低下するために、せん断応力に対する
摩擦材の抵抗力が小さくなり耐摩耗性が低下する。ま
た、錫、ニッケル、亜鉛の含有量が40重量%を超えた
場合には、焼結体の靱性が低下する。そのため、銅合金
素地には、錫、亜鉛およびニッケルからなる群より選ば
れた少なくとも1種の金属元素が5重量%以上40重量
%以下含まれることが好ましい。すなわち、銅合金中の
銅の割合は60重量%以上95重量%であることが好ま
しい。
【0034】 形態 金属素地を形成する原料としては、球状の粉末よりも、
アスペクト比が大きい金属繊維が好ましい。ここで、ア
スペクト比とは、ほぼ直方体の金属繊維において、一番
長い辺の長さをL1 、二番目に長い辺の長さをL2 とし
たときのL1 /L2 の値をいう。アスペクト比の大きな
原料を用いた場合には、多孔質焼結体の強度が増加する
ことにより、耐摩耗性が向上する。硬質粒子の分散した
複合粉末により硬質粒子を複合することなく金属繊維の
みで金属繊維を形成する際には、アスペクト比は2.5
以上30以下である。
【0035】この焼結金属摩擦部材は、低圧力の比較的
弱い摺動条件で使用される。アスペクト比が2.5未満
の際には、強度増加の効果が小さい。また、アスペクト
比が30を超える場合には、複合材の均質分散性、流動
性の低下により偏析のない均一な焼結体の製造が困難と
なる。
【0036】厳しい摺動条件で使用される機構に適用す
る焼結金属摩擦部材においては、金属素地中に硬質粒子
の分散した複合粉末により、金属繊維と硬質粒子を複合
させる。この場合には、アスペクト比は3以上30以下
が必要である。アスペクト比が3未満の場合には、強度
向上の効果が小さい。また、アスペクト比が30を超え
る場合には、複合材の均質分散性、流動性の低下により
偏析のない均一な焼結体の製造が困難となる。そのた
め、アスペクト比は3以上30以下が必要であり、さら
にこのましくは、5以上20以下がよい。
【0037】(3) 硬質粒子 硬質粒子は以下の効果を発現させるために添加する。
【0038】(a) 摩擦摺動した際に相手材との凝着
の発生を防止し、耐焼付性を増加させる効果。
【0039】(b) 摩擦材の摩耗を減少させ、耐摩耗
性を増加させる効果。(c) 相手材表面と直接接触し
て摩擦係数を増加させる効果。
【0040】 種類 摩擦係数増加の効果のために、硬質粒子のマイクロビッ
カース硬度は400以上であることが望ましい。そのた
めに、鉄系金属間化合物、酸化物粒子、窒化物粒子、炭
化物粒子、シリコン粒子、モリブデン粒子などを用いる
ことができる。硬質粒子が上述の機能を発現するために
は、金属素地から硬質粒子が脱落するのを抑制する必要
がある。脱落抑制のためには、図1で示すように金属素
地2中に硬質粒子3が分散した硬質粒子分散型金属粉末
1(複合粉末)を形成し、図2で示すように金属繊維4
の素地と焼結結合させて焼結体5を形成することが有効
である。上述の硬質粒子のうち、鉄系金属間化合物は、
被削性に優れるために効果がある。なお、図3で示すよ
うに合金粉末6と硬質粒子3を混合しただけでは、硬質
粒子3が焼結体から脱落しやすくなる。
【0041】 大きさ 硬質粒子の径が20μmよりも大きい場合には、相手材
との摺動面で硬質粒子が相手材と部分的に接触するため
に、摩擦係数の変動が大きくなる。摩擦係数の変動は振
動の原因となり、好ましくない。そのため、硬質粒子の
径は20μm以下がよく、さらに好ましくは10μm以
下がよい。
【0042】 含有量 硬質粒子の含有量が5体積%よりも少ない場合には、摩
擦摺動面に存在する硬質粒子の量が少なくなるために、
摩擦係数の増加や焼付防止などの効果が小さい。また、
硬質粒子の含有量が30体積%よりも多い場合には、摩
擦部材の機械的強度、熱伝導性に劣る。そのため、硬質
粒子の含有量は5体積%以上30体積%以下がよく、さ
らに好ましくは、15体積%以上25体積%以下がよ
い。
【0043】(4) 硬質粒子分散型金属粉末と金属繊
維の複合比率 上述の金属繊維と硬質粒子分散型金属粉末の混合比率
は、硬質粒子分散型金属粉末の割合が40体積%以上8
0体積%以下となることが好ましい。硬質粒子分散型金
属粉末の割合が80体積%よりも多い場合には、金属繊
維による多孔体の高強度化の効果が小さくなり好ましく
ない。また、硬質粒子分散型金属粉末の割合が40体積
%よりも小さい場合には、硬質粒子による摩耗・焼付抑
制の効果が小さい。以上より、硬質粒子分散型金属粉末
の割合は40体積%以上80体積%がよく、さらに好ま
しくは、50体積%以上75体積%以下がよい。
【0044】(5) 固体潤滑剤 固体潤滑剤は、相手材との摺動界面に潤滑膜を形成して
摩耗を抑制し、摩擦係数の変動を小さくする効果があ
る。潤滑油中で使用される場合には、オイルによる潤滑
効果があるために必要に応じて複合化する。潤滑剤とし
ては、グラファィト、MoS2 、CaF2 、WS2 、B
Nなどを用いることができる。本発明の焼結金属摩擦部
材においては、潤滑剤の含有量が15体積%を超えると
摩擦材の機械的強度が低下するので好ましくない。した
がって、潤滑剤の含有量は15体積%以下がよい。
【0045】なお、上述の焼結金属摩擦部材の空孔率、
空孔径を本発明が規定する適正範囲内に調整して、摩擦
界面の潤滑油を排除することにより、摩擦係数を向上さ
せる材料設計は、金属素地として銅系の合金とした場合
に限定されるものでない。鉄、アルミニウム、チタンな
どの他の金属の合金により素地を構成するものにおいて
も有効である。
【0046】次に、本発明における焼結金属摩擦部材
(銅系焼結摩擦材)の製造方法に関する具体的な条件に
ついて以下に詳細に説明する。
【0047】(1) 原料粉末の充填密度 粉末冶金法により焼結体を製造する際には、原料粉末の
充填密度を適正な範囲に調整することにより、焼結体の
空孔率を上述の適正範囲内に調整することができる。発
泡などの工程を設けずに原料粉末を固化する際には、原
料粉末の充填密度により焼結体の密度の下限値が規定さ
れる。すなわち、空孔率の上限値が規定される。さら
に、原料粉末を加圧による圧縮などにより緻密にするこ
とで焼結体の相対密度を増加させることができる。すな
わち、空孔率を減少させて強度を向上させることができ
る。
【0048】発泡などの多孔化工程は、高コスト化の要
因となり、また使用できる原料粉末が限定されるために
好ましない。充填密度の低い原料粉末を用いることによ
り、発泡などの工程を設けずに焼結体の空孔率を増加さ
せることができる。低充填密度原料としては、繊維粉末
などを用いることが好ましい。
【0049】本発明で用いる混合粉末の充填密度の適正
範囲としては、0.8g/cm3 以上4.0g/cm3
以下がよい。充填密度が0.8g/cm3 未満の場合に
は、原料を型内に均一に充填することが困難になり、そ
のために焼結体中に大きな空孔が生じて均一な焼結体が
得られないという問題が生じる。充填密度が4.0g/
cm3 よりも大きい場合には、所望の空孔率を有するこ
とが困難であり、また、多孔体の強度低下の問題が生じ
る。よって、混合粉末の充填密度は、0.8g/cm3
以上4.0g/cm3 以下がよい。
【0050】金属素地を形成する原料粉末として金属繊
維のみを用いる際には、金属繊維のアスペクト比は2.
5以上30以下がよい。アスペクト比が2.5未満の場
合には、多孔体の高強度化の効果が小さく、そのために
摩擦摺動時に摩耗するという問題が生じる。アスペクト
比が30を超えると、原料粉末の均質分散性、流動性の
低下により偏析のない均一な焼結体の製造が困難とな
る。そのため、アスペクト比は2.5以上30以下であ
る必要がある。
【0051】より厳しい摺動条件で使用する際には、硬
質粒子の脱落を防止するために硬質粒子分散型金属粉末
を適用することが必要となる。硬質粒子分散型金属粉末
と金属繊維とを焼結することで、これらを結合させる。
この際には、金属繊維のアスペクト比は3以上30以下
であることが必要である。
【0052】(2) 硬質粒子分散型金属粉末の製造方
硬質粒子分散型金属粉末の素地を形成する銅または銅合
金粉末と、硬質粒子とを所定の割合で配合した後に機械
的合金化法(メカニカルアロイング法)、機械的混合法
(メカニカルグラインディング法)に代表される粉末の
機械的混合、粉砕、合金化処理を行なうことが有効であ
る。この方法により硬質粒子をより微細に粉砕すること
ができ、しかも銅系粉末の素地中に微細に粉砕された硬
質粒子を均一に分散させることができる。銅粉末素地中
に隙間なく硬質粒子を分散させることにより、複合化を
行なわない従来の混合法による焼結摩擦材と比較して銅
素地と硬質粒子の結合が強固となり、摩擦摺動時の硬質
粒子の脱落が抑制される。また、硬質粒子の微細化によ
り摩擦係数の変動が小さくなり、異音や振動が抑制され
る。
【0053】(3) 混合 硬質粒子分散型金属粉末、金属繊維および必要に応じて
潤滑剤を所定の割合で混合し、均一に混合・攪拌して得
られる混合粉末を出発原料とする。混合、攪拌には、V
型ミキサー、ニーダー、ボールミルなどの混合機を用い
ることができる。
【0054】(4) 固化 粉末を固化する方法としては、以下の方法を用いること
ができる。
【0055】 金型成形により圧粉体を形成した後焼
結工程により固化する方法。 粉末を型内に充填した後に通電して加圧焼結する方
法。
【0056】上述の2つの方法について以下に説明す
る。 成形・焼結法 (i) 成形 混合粉末を出発原料として、これを型押成形することに
より、圧粉体を形成する。低密度成形体を製造するため
に、成形圧力は0.5×103 〜4×103 kgf/c
2 で行なうことが好ましい。
【0057】(ii) 焼結 焼結温度は700℃以上1000℃以下であることが好
ましい。本発明による銅系摩擦材料は温度700℃より
も低い温度で焼結を完全に進行させるためには、焼結時
間が長くなって経済性の問題が生じる。したがって、経
済性を損なうことなく焼結を進行させるためには、70
0℃以上の焼結温度が望ましい。他方、焼結温度が10
00℃を超える場合には、粉末により形成した成形体中
に液相が生成し、焼結体が収縮する。その結果、寸法精
度が低下するという欠点がある。そのため、焼結温度は
1000℃以下であることが望ましい。また、本発明の
摩擦材は、非酸化性雰囲気または還元性雰囲気で焼結す
る必要がある。焼結雰囲気が非酸化性雰囲気または還元
性雰囲気でない場合には、銅粉末の表面に酸化被膜が形
成されて焼結性が著しく阻害される。その結果として焼
結体の強度や耐摩耗性の低下を招く。
【0058】 通電加圧焼結 混合粉末を型内に充填した後加圧するとともに通電加熱
する工程において、粉末の焼結を進行させることができ
る。この方法では、粉末の充填密度に近い状態で粉末間
の接触部の結合反応を進行させることができるために高
空孔率を保持して焼結を進行させることができる。
【0059】また、通電をパルス波形とすることによ
り、さらに粉末の結合反応を進行させることができる。
なぜなら、金属表面の絶縁層の電界が集中した際にプラ
ズマが発生し、そのために粉末界面が局所的に高温にな
り、短時間で焼結が進行するという効果があるからであ
る。
【0060】通電加圧焼結工程の後に熱処理工程を設け
ることにより摩擦材の焼結を促進し、焼結体の強度およ
び耐摩耗性を向上させることができる。
【0061】また、通電加圧焼結はバッチ処理であり生
産量が少ないために、焼結進行のために長時間の処理を
行なうことは生産性の観点から好ましくない。そのた
め、後工程で熱処理を行なうことにより、生産性を損な
うことなく焼結摩擦材を製造することができる。熱処理
温度は、上述の焼結工程と同様に700℃以上1000
℃以下であることが好ましい。また、熱処理雰囲気は、
非酸化性雰囲気または還元性雰囲気である必要がある。
【0062】
【実施例】(実施例1)CuとSnの重量比がCu:S
n=90:10の合金粉末と、硬質粒子(FeMo)と
を重量比が80:20となるように配合し、振動型ボー
ルミルによりメカニカルアロイング処理を施した。これ
により、FeMo硬質粒子が銅合金素地中に分散した組
織を有する硬質粒子分散型金属粉末としての複合銅合金
粉末を得た。複合銅合金粉末中の硬質粒子の平均径は2
0μmであり、硬質粒子のマイクロビッカーズ硬度は8
20であった。
【0063】アスペクト比が10であり、CuとSnの
重量比がCu:Sn=90:10である金属繊維と上述
の複合銅合金粉末とを体積比で50:50となるように
配合して混合粉末を形成した。混合粉末を内径30mm
のカーボン型内に充填した。空孔率はカーボン型の体積
と粉末量で調整した。空孔径は原料粉末の大きさおよび
密度により調整した。
【0064】このようにするこにとより、表1に示す空
孔率と空孔径を有する原料体を形成した。この原料体を
面圧300kgf/cm2 で加圧圧縮するとともに窒素
雰囲気中で温度700℃で2分間通電加熱した。これに
より得られた焼結体を窒素雰囲気中で温度900℃で1
時間熱処理した。
【0065】潤滑油にMTF、相手材にSCM420浸
炭材を用いて焼結体の摩擦摺動特性を以下の3種類の条
件で評価できるチップオンディスク型摩擦試験機を用意
した。
【0066】条件A:加圧力50kgf/cm2 、周速
度10、20、60、100、150、200cm/s
各速度で5分間保持 条件B:加圧力50kgf/cm2 、周速度100cm
/sで30分間保持 条件C:加圧力10kgf/cm2 、周速度100cm
/sで30分間保持 なお、条件Aは速度依存性を評価するためのものであ
る。また、条件Cは通常の使用条件、条件AおよびBは
条件Cよりも高圧力であり過酷な条件である。
【0067】本実施例においては、条件Aで焼結体の摩
擦摺動特性の評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】サンプル1〜7では、空孔率および空孔径
の調整により相手材と摩擦材との接触界面での潤滑油を
排除することができ、その結果、良好な摩擦摺動特性が
得られた。
【0070】サンプル8では、空孔径が小さいために油
膜排除の効果が低下する。そのため、通常使用される速
度範囲では大きい摩擦係数が得られるが、高速度ではわ
ずかに摩擦係数が低下した。サンプル9では、空孔径が
大きいために材料強度が低下し、摩耗量が増加した。
【0071】他のサンプルでは以下のような問題が発生
した。 サンプル10 空孔率が低いために潤滑油の透過性能の効果が小さく摩
擦係数が低下した。特に高速度域で潤滑油膜の厚さが増
加するため摩擦係数低下の効果が大きい。
【0072】サンプル11 空孔率および空孔径ともに小さいために潤滑油透過の効
果が小さく、摩擦係数が大きく低下した。
【0073】サンプル12 空孔率が大きいために、材料の摩耗量が増加した。
【0074】サンプル13 空孔率および空孔径ともに大きいために、材料の摩耗量
が大きく増加した。
【0075】(実施例2)CuとSnの重量比がCu:
Sn=90:10の合金粉末と硬質粒子FeMoを重量
比で80:20となるように配合し、振動型ボールミル
によりメカニカルアロイング処理を行ない硬質粒子分散
型金属粉末を得た。CuとSnの重量比がCu:Sn=
90:10であり、アスペクト比が10である金属繊維
と上述の金属粉末とを体積基準で50:50となるよう
に混合して混合粉末を形成した。この混合粉末を通電加
圧焼結により固化し、得られた焼結体を窒素雰囲気中で
温度900℃で1時間熱処理した。その結果、表2に示
す空孔面積率の焼結体が得られた。この焼結体の摺動特
性を上述の条件Aで評価した。その結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】サンプル21〜24では空孔率が適正であ
り、さらに摩擦界面の空孔量が適正な範囲になる。その
ために、空孔により潤滑油が排除される効果が大きく、
広い速度範囲の摺動条件で境界潤滑状態が形成されるた
めに安定した高い摩擦係数が得られた。
【0078】他のサンプルでは以下のような問題が発生
した。 サンプル25 空孔面積が小さいために摩擦界面の潤滑油排除の効果が
小さく、そのためわずかに摩擦係数が低下した。
【0079】サンプル26 摩擦材の接触面積が小さいために、摩擦係数が低下し
た。また、接触面積が小さいことにより材料の接触部に
かかる圧力が増加するとともに、材料の摩耗量がわずか
に増加した。
【0080】サンプル27 空孔率および空孔面積率ともに小さいために潤滑油排除
の効果が不十分であり、摩擦係数が大きく低下した。
【0081】サンプル28 空孔率および空孔面積率ともに大きいために摩耗量が大
きく増加した。
【0082】(実施例3)CuとSnの重量比がCu:
Sn=90:10の合金粉末と硬質粒子FeMoを配合
し、振動型ボールミルによりメカニカルアロイング処理
を行ない、硬質粒子分散型金属粉末を得た。アスペクト
比が10であり、CuとSnの重量比がCu:Sn=9
0:10である金属繊維と上述の硬質粒子分散型金属粉
末とを銅合金と硬質粒子の割合が表3に示す比率となる
ように混合した。
【0083】内径30mmのカーボン製の型内に銅めっ
きを施した厚さ1mmの鉄板を配置した。この鉄板の上
に混合粉末を充填した。空孔率はカーボンの型の体積と
粉末量で調整し、空孔率は40体積%であった。混合粉
末を面圧300kgf/cm 2 で加圧圧縮するととも
に、窒素雰囲気中で温度700℃で2分間通電加熱し
た。これにより、粉末が焼結されるのと同時に銅めっき
を施した鉄板と焼結体が接合した。得られた焼結体を窒
素雰囲気中で温度900℃で1時間熱処理した。
【0084】得られた焼結体の摩擦摺動特性を上述の条
件BおよびCにより評価した。その結果を表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】表3より、摩擦部材として通常使用される
条件である評価条件Cでは、いずれも良好な摩擦特性が
得られた。過酷な使用条件である条件Bにおいて、サン
プル31〜34では、硬質粒子による耐摩耗性向上の効
果により、良好な摩擦摺動特性が得られた。
【0087】他のサンプルについては以下のような問題
が発生した。 サンプル35 銅合金の量が少なく素地の結合が不十分になるために耐
摩耗性に劣る。
【0088】サンプル36 硬質粒子量が少なく硬質粒子による摩擦係数増加の効果
や摩耗抑制の効果が小さい。そのため焼結体の摩擦係数
が小さく、耐摩耗性に劣る。
【0089】(実施例4)表4に示す組成の粉末と硬質
粒子FeMoを配合し、振動ボールミルによりメカニカ
ルアロイング処理を行ない、硬質粒子分散型金属粉末を
得た。硬質粒子分散型金属粉末とアスペクト比が10の
金属繊維とを混合して混合粉末を形成した。混合粉末の
空孔率が25体積%となるように内径30mmのカーボ
ン製の型内に混合粉末を充填した。混合粉末を面圧30
0kgf/cm2 で加圧圧縮するとともに、窒素雰囲気
中で温度700℃で2分間通電加熱して焼結体を得た。
得られた焼結体を窒素雰囲気中で温度800〜950℃
で熱処理した。
【0090】この焼結体の摩擦摺動特性を条件Bおよび
Cにより評価した。硬度はロックウェル硬度のFスケー
ルで評価した。評価結果を表4に示す。
【0091】
【表4】
【0092】摩擦部材として通常使用される条件である
条件Cでは、いずれも良好な摩擦特性が得られた。過酷
な使用条件である条件Bにおいて、サンプル41〜46
では、銅合金の硬さおよび靱性が適正な範囲であるため
に摩耗の問題が生じず、良好な摩擦摺動特性が得られ
た。
【0093】他のサンプルについては以下のような問題
が発生した。 サンプル47 固溶により銅合金が硬くなり、靱性が低下した。そのた
め、摩耗が増加するという問題が生じた。
【0094】サンプル48 焼結体の硬度が低いために、摩擦摺動時に摩耗が増加す
るという問題が生じた。
【0095】(実施例5)CuとSnの重量比がCu:
Sn=90:10の合金粉末と硬質粒子FeMoとを重
量比で80:20となるように配合し、振動型ボールミ
ルによりメカニカルアロイング処理を行ない硬質粒子分
散型金属粉末を得た。アスペクト比が2、3、5、1
0、20、30および40のそれぞれの金属繊維と上述
の硬質粒子分散型金属粉末とを体積基準で50:50と
なるように混合して混合粉末を形成した。混合粉末を通
電加圧焼結により焼結固化した。焼結体の空孔率は30
体積%であった。得られた焼結体を窒素雰囲気中で温度
900℃で1時間熱処理した後に条件BおよびCで摩擦
摺動特性を評価した。その結果を表5に示す。
【0096】
【表5】
【0097】摩擦部材として通常使用される条件である
評価条件Cでは、いずれも良好な摩擦特性が得られた。
過酷な使用条件である評価条件Bにおいて、サンプル5
1〜55では、いずれも金属繊維による多孔体の高強度
化の効果により良好な焼結体が得られた。
【0098】他のサンプルでは以下のような問題が発生
した。 サンプル56 アスペクト比が小さいため焼結体の硬度が低下し、その
ために摩耗が増加した。
【0099】サンプル57 金属繊維と硬質粒子分散型金属粉末とを混合する際に偏
析が生じ、均質な焼結体が得られなかった。そのため摩
耗が増加した。
【0100】(実施例6)CuとSnの重量比がCu:
Sn=90:10の合金粉末と硬質粒子FeMoを配合
し、振動型ボールミルによりメカニカルアロイング処理
を行ない、硬質粒子分散型金属粉末を得た。アスペクト
比が10であり、CuとSnの重量比がCu:Sn=9
0:10である金属繊維と上述の硬質粒子分散型金属粉
末(複合粉末)とを表6に示す体積比で混合して混合粉
末を形成した。混合粉末を金型成形して圧粉体を成形し
た後に、この圧粉体を窒素雰囲気中で温度900℃で1
時間焼結して焼結体を得た。この焼結体の摩擦摺動特性
を条件BおよびCで評価した。その結果を表6に示す。
【0101】
【表6】
【0102】摩擦部材として通常使用される条件である
条件Cでは、いずれも良好な摩擦特性が得られた。過酷
な使用条件である条件Bにおいて、サンプル61〜65
では、金属繊維と硬質粒子分散型金属粉末の量が適正で
あるために、良好な摩擦摺動特性が得られた。すなわ
ち、金属繊維による多孔体の高強度化および複合粉末中
の硬質粒子による摩耗抑制の効果である。
【0103】他のサンプルでは以下のような問題が発生
した。 サンプル66 硬質粒子分散型金属粉末の量が少ないために硬質粒子の
量が少なくなり摩耗が増加した。
【0104】サンプル67 金属繊維の量が少ないために多孔体の高強度化の効果が
小さく、摩耗が増加した。
【0105】(実施例7)CuとSnの重量比がCu:
Sn=90:10の合金粉末と硬質粒子FeAlを配合
し、振動型ボールミルによりメカニカルアロイング処理
を行ない、硬質粒子分散型金属粉末を得た。硬質粒子分
散型金属粉末と組成が重量比でCu:Sn=90:10
でアスペクト比が10の金属繊維と、潤滑剤としてのグ
ラファイトとをさまざまな割合で混合し、混合粉末を形
成した。この混合粉末をカーボン製の型内に充填し、混
合粉末の空孔率が35体積%となるようにした。混合粉
末を面圧300kgf/cm2 で加圧圧縮するとともに
窒素雰囲気中で温度700℃で2分間通電加熱して焼結
体を得た。この焼結体を窒素雰囲気中で温度800℃で
熱処理した。焼結体の摩擦摺動特性を評価条件Bおよび
Cで評価した。評価結果と得られた焼結体の組成とを表
7に示す。
【0106】
【表7】
【0107】摩擦部材として通常使用される条件である
評価条件Cでは、いずれも良好な摩擦特性が得られた。
過酷な使用条件である評価条件Bにおいて、サンプル7
1〜73については潤滑剤の量が適正であり良好な摩擦
摺動特性が得られた。
【0108】サンプル74については、金属繊維と硬質
粒子分散型金属粉末との合計の割合が減少するために耐
摩耗性に劣るという問題が発生した。
【0109】(実施例8)CuとSnの重量比がCu:
Sn=90:10の合金粉末と硬質粒子FeMoを配合
し、振動型ボールミルによりメカニカルアロイング処理
行ない、硬質粒子分散型金属粉末を得た。硬質粒子分散
型金属粉末と表8に示すアスペクト比の金属繊維と、グ
ラファィトを混合し、表8に示すかさ密度の混合粉末を
得た。
【0110】外径70mm、内径55mmのリング形状
の断面を有するカーボン製の型内に混合粉末を充填し
た。この混合粉末を通電加圧焼結法において焼結・固化
して焼結体を得た。銅めっきを施した鋼板上に焼結体を
載置し、窒素雰囲気中で温度850℃で1時間熱処理し
た。この際に、銅めっき板と焼結体の接合を行なった。
銅めっき板の形状は外周部が円形であり内周部にギアが
形成されており、外径が70mm、内周部の径はギアの
凹部が45mm、ギアの凸部が35mm、厚さは1mm
である。この焼結体を外径70mm、内径55mm、厚
さ2.5mmとし、鋼板と接合した状態で鋼板のギア部
に回転力をかけて焼結体の摩擦摺動特性を評価した。評
価条件は上述の条件Bとした。評価結果を表8に示す。
【0111】
【表8】
【0112】サンプル81〜85では、かさ密度が適正
であり、原料の偏析が生じずに多孔質焼結体が製造でき
るため、良好な摩擦摺動特性が得られた。
【0113】他のサンプルでは以下のような問題が生じ
た。 サンプル86 かさ密度が低いために原料の均一な充填が困難であり、
焼結体中に粗大な空孔が生じて均質な焼結体が得られな
かった。
【0114】サンプル87 かさ密度が高いために多孔質焼結体の強度が低下し、摩
耗が増加した。
【0115】(実施例9)CuとSnの重量比がCu:
Sn=90:10の合金粉末と硬質粒子FeMoを配合
し、振動型ボールミルによりメカニカルアロイング処理
を行ない、硬質粒子分散型金属粉末を得た。硬質粒子分
散型金属粉末と2種類の金属繊維(A、B)と球状粉
(アトマイズ粉末)とセラミックス粒子(シリカ粉末)
とを必要に応じて混合し、表9で示す組成の混合粉末を
得た。混合粉末を通電加圧において焼結・固化し、得ら
れた焼結体を窒素雰囲気中で温度850℃で1時間熱処
理した。
【0116】熱処理後の焼結体の摩擦摺動特性を条件B
およびCにより評価した。その結果を表9に示す。
【0117】
【表9】
【0118】通常の摺動条件である条件Cでは、硬質粒
子として硬質粒子分散型金属粉末でなくセラミックスを
用いた場合にも硬質粒子の脱落の問題が生じない。この
際には、金属繊維のアスペクト比が小さいものを用いる
ことができる。金属繊維の適用による多孔体の高強度化
の効果により、摩耗の問題が生じず油膜排除の効果を発
現することができ、良好な摩擦摺動特性が得られた。
【0119】より過酷な条件である条件Bでは、硬質粒
子の脱落が問題となるために、硬質粒子分散型金属粉末
が必要となる。この場合は、サンプル93では、硬質粒
子が脱落するために、耐摩耗性が低下するという問題が
生じた。
【0120】他のサンプルでは以下のような問題が生じ
た。 サンプル94 金属繊維のアスペクト比が小さいため金属繊維による多
孔体の高強度化の効果が小さい。そのため、摩耗量が増
加した。
【0121】サンプル95 空孔率が低いために、油膜排除の効果が小さく、そのた
め摩擦係数が低下した。
【0122】サンプル96 球状粉末を用いたために多孔体の高強度化の効果が生じ
ず、そのために摩耗量が増加した。
【0123】(実施例10)CuとSnの重量比がC
u:Sn=90:10の合金粉末と硬質粒子FeMoを
配合し、振動型ボールミルによりメカニカルアロイング
処理を行ない、硬質粒子分散型金属粉末を得た。アスペ
クト比が10であり、CuとSnの重量比がCu:Sn
=90:10である金属繊維と、硬質粒子分散型金属粉
末と、固体潤滑剤としてのグラファイトを混合し、表1
0で示す組成の混合粉末を得た。また、混合粉末全体の
重量W1 と金属繊維の重量W2 との比(W2 /W1 )を
表10に示す。混合粉末を通電加圧して焼結・固化した
後、得られた焼結体を窒素雰囲気中で温度850℃で1
時間熱処理した。この焼結体の摩擦摺動特性を条件Bお
よびCにより評価した。その結果を表10に示す。
【0124】
【表10】
【0125】摩擦部材として通常使用される条件である
条件Cでは、いずれも良好な摩擦特性が得られた。過酷
な使用条件である条件Bにおいて、サンプル101〜1
06では、金属繊維の適用による多孔体の高強度化の効
果および硬質粒子分散型金属粉末により脱落を抑制した
硬質粒子による焼付・摩耗抑制の効果により、摩耗の問
題が生じずに油膜排除の効果を発現することができ、良
好な摩擦摺動特性が得られた。
【0126】他のサンプルでは以下のような問題が生じ
た。 サンプル107 金属繊維の量が少ないため強度増加の効果が小さい。そ
のため、摩耗量が増加した。
【0127】サンプル108 複合粉末の量が少ないために、硬質粒子の量が少なくな
り、硬質粒子による摩耗・焼付の抑制の効果が減少す
る。そのために、摩耗が増加するという問題が生じた。
【0128】(実施例11)アスペクト比が15であ
り、クロムを2重量%、ニッケルを2重量%、銅を4重
量%、炭素を0.05重量%含み、残部が鉄である鉄系
の金属繊維を内径30mmのカーボン製の型内に充填し
た。これを面圧400kgf/cm2 で加圧圧縮すると
ともに窒素雰囲気中で温度900℃で2時間通電加熱し
て焼結体を得た。得られた焼結体を窒素雰囲気中で温度
1100℃で1時間熱処理し、表11で示す空孔率を得
た。なお、この空孔率はカーボン製の型の体積と粉末量
で調整した。潤滑油MTF中でのこの焼結体の摩擦摺動
特性を条件Cで評価した。その結果を表11に示す。
【0129】
【表11】
【0130】表11より、全てのサンプルにおいて摩擦
材と相手材との接触界面での潤滑油を排除することがで
き、その結果、良好な摩擦摺動特性が得られた。
【0131】(実施例12)アスペクト比が4であり、
AlとSiの重量比がAl:Si=85:15である金
属繊維を内径30mmのカーボン製の型内に充填し、面
圧400kgf/cm2 で加圧圧縮するとともに、窒素
雰囲気中で温度350℃で2分間通電加熱し焼結体を得
た。得られた焼結体を窒素雰囲気中で温度490℃で1
時間熱処理して、表12に示す空孔率を得た。なお、こ
の空孔率はカーボン製の型の体積と粉末量で調整した。
潤滑油MTF中でのこの焼結体の摩擦摺動特性を条件C
で評価した。その結果を表12に示す。
【0132】
【表12】
【0133】表12より、すべてのサンプルにおいて、
焼結体中の空孔率を調整したため、相手材と摩擦材との
接触界面での潤滑油を排除することができ、その結果、
良好な摩擦摺動特性が得られた。
【0134】
【発明の効果】この発明では、潤滑油中で使用される焼
結摩擦部材において、金属繊維と、金属粉末中に硬質粒
子が均質に分散された硬質粒子分散型金属粉末を固形し
てなる焼結体とし、または金属繊維を含み、空孔率が体
積基準で20%以上60%以下としている。これによ
り、高速度で摺動した際にも摩擦材と相手材の接触界面
の潤滑油を排除することができるために高い摩擦係数を
発現し、また、摩耗の問題の生じない耐久性に優れた良
好な摩擦材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に従った硬質粒子分散型金属粉末(複
合粉末)の模式図である。
【図2】硬質粒子分散型金属粉末と金属繊維とが焼結結
合した状態を示す模式図である。
【図3】従来の合金粉末と硬質粒子が混合された状態を
示す模式図である。
【符号の説明】
1 硬質粒子分散型金属粉末 2 金属素地 3 硬質粒子 4 金属繊維
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F16C 33/14 F16C 33/14 A

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 潤滑油中で相手部材と摩擦摺動して、そ
    の接触界面で摩擦力を発生させる焼結金属摩擦部材であ
    って、 金属繊維を備えるとともに、20体積%以上60体積%
    以下の空孔率を有する、焼結金属摩擦部材。
  2. 【請求項2】 前記空孔の平均径は30μm以上200
    μm以下である、請求項1に記載の焼結金属摩擦部材。
  3. 【請求項3】 前記焼結金属摩擦部材が前記相手部材と
    接触する面において、前記空孔の割合が25面積%以上
    75面積%以下である、請求項1または2に記載の焼結
    金属摩擦部材。
  4. 【請求項4】 粉末内部に硬質粒子が分散した硬質粒子
    分散型金属粉末をさらに備える、請求項1〜3のいずれ
    か1項に記載の焼結金属摩擦部材。
  5. 【請求項5】 潤滑油中で相手部材と摩擦摺動して、そ
    の接触界面で摩擦力を発生させる焼結金属摩擦部材であ
    って、 金属繊維と、 粉末内部に硬質粒子が分散した硬質粒子分散型金属粉末
    とを備える、焼結金属摩擦部材。
  6. 【請求項6】 前記硬質粒子分散型金属粉末の割合は4
    0体積%以上80体積%以下である、請求項5に記載の
    焼結金属摩擦部材。
  7. 【請求項7】 前記焼結金属摩擦部材に対する前記硬質
    粒子の割合は5重量%以上30重量%以下である、請求
    項5または6に記載の焼結金属摩擦部材。
  8. 【請求項8】 前記硬質粒子のマイクロビッカース硬さ
    が400以上である、請求項5〜7のいずれか1項に記
    載の焼結金属摩擦部材。
  9. 【請求項9】 固体潤滑剤として黒鉛、二硫化モリブ
    デン、フッ化カルシウム、二硫化タングステンおよび窒
    化ホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種を含
    み、 前記固体潤滑剤の割合は15体積%以下である、請求項
    1〜8のいずれか1項に記載の焼結金属摩擦部材。
  10. 【請求項10】 前記焼結金属摩擦部材は、銅を主成分
    とし、錫、亜鉛およびニッケルからなる群より選ばれた
    少なくとも1種を含む銅合金からなり、 前記銅合金中の銅の割合は60重量%以上95重量%以
    下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の焼結金
    属摩擦部材。
  11. 【請求項11】 リング状部材に固定されて回転し、相
    手部材と接触することにより回転力を伝達する、請求項
    1〜10のいずれか1項に記載の焼結金属摩擦部材。
  12. 【請求項12】 前記金属繊維のアスペクト比は3以上
    30以下である、請求項1〜11のいずれか1項に記載
    の焼結金属摩擦部材。
  13. 【請求項13】 出発材料としてかさ密度が0.8g/
    cm3 以上4.0g/cm3 以下の範囲になる原料粉末
    を準備する工程と、 前記原料粉末を焼結して空孔率が20体積%以上60体
    積%以下の焼結体を得る工程とを備えた、焼結金属摩擦
    部材の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記原料粉末は、アスペクト比が3以
    上30以下の金属繊維を含む、請求項13に記載の焼結
    金属摩擦部材の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記原料粉末は、粉末内部に硬質粒子
    が分散した硬質粒子分散型金属粉末をさらに含む、請求
    項13または14に記載の焼結金属摩擦部材の製造方
    法。
  16. 【請求項16】 前記原料粉末全体の重量W1 と前記金
    属繊維の重量W2 との比(W2 /W1 )が0.15以上
    0.6以下である、請求項15に記載の焼結金属摩擦部
    材の製造方法。
  17. 【請求項17】 アスペクト比が3以上30以下の金属
    繊維と、粉末内部に硬質粒子が分散した硬質粒子分散型
    金属粉末とを混合して出発材料としての原料粉末を準備
    する工程と、 前記原料粉末を焼結して焼結体を得る工程とを備えた、
    焼結金属摩擦部材の製造方法。
  18. 【請求項18】 前記硬質粒子分散型金属粉末はメカニ
    カルアロイング法により製造される、請求項17に記載
    の焼結金属摩擦部材の製造方法。
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