JPH11286631A - カチオン電着塗料組成物 - Google Patents

カチオン電着塗料組成物

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JPH11286631A
JPH11286631A JP10089967A JP8996798A JPH11286631A JP H11286631 A JPH11286631 A JP H11286631A JP 10089967 A JP10089967 A JP 10089967A JP 8996798 A JP8996798 A JP 8996798A JP H11286631 A JPH11286631 A JP H11286631A
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JP
Japan
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coating composition
cationic electrodeposition
pigment
electrodeposition coating
cationic
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JP10089967A
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English (en)
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Tsutomu Shigenaga
勉 重永
Kozo Nasu
幸造 那須
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Mazda Motor Corp
Nippon Paint Co Ltd
Original Assignee
Mazda Motor Corp
Nippon Paint Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 無鉛化ないし低鉛化しても低温硬化性、平滑
性、耐食性および上塗り非黄変性に優れているカチオン
電着塗料組成物を提供すること。 【解決手段】 少なくともバインダー成分と顔料成分と
を含有するカチオン電着塗料組成物であって、該バイン
ダー成分が1級、2級又は/及び3級アミノ基含有エポ
キシ樹脂及びブロックポリイソシアネート硬化剤からな
り、該顔料成分が混合重量比90/10〜10/90の
トリポリリン酸アルミニウム及びリンモリブデン酸アル
ミニウム混合物でなる防錆顔料を含有し、硬化塗膜とし
た場合にその拡散パラメータ(Tc)が20〜60であ
り、ドロコート耐食性に優れた実質的に鉛を含まないカ
チオン電着塗料組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はカチオン電着塗料組
成物、さらに詳しくはカチオン性エポキシ樹脂をブロッ
クポリイソシアネート硬化剤で架橋することにより硬化
塗膜を形成するタイプのカチオン電着塗料組成物に関す
る。
【0002】エポキシ樹脂のエポキシ環にアミン等活性
水素化合物を反応させ、そのエポキシ基を開環してカチ
オン性基を導入したエポキシ樹脂およびブロックポリイ
ソシアネートを塗膜の樹脂成分としたカチオン電着塗料
は良く知られ、自動車ボディなどのプライマーとして広
く使用されている。硬化剤としてブロックした芳香族ポ
リイソシアネートを使用すると耐光性が低下するので、
それを避ける必要がある用途に対しては脂肪族または脂
環式ポリイソシアネート硬化剤が使用される。
【0003】また、電着塗料には鉛系の防錆顔料が添加
されるのが一般であるが、その環境への影響から無鉛化
ないし低鉛化が要望されている。ところが非黄変性のポ
リイソシアネート硬化剤を用いる系において無鉛化ない
し低鉛化すると塗膜性能、特に耐食性、耐候性が低下す
る欠点がある。
【0004】自動車は屋外で使用されるので、その塗膜
は風雨に晒され、塗膜表面には泥が付着する。一般に泥
はNa+、Cl-、及びSO4 2-のような電解質を含有す
る。かかる電解質は塗膜内部に拡散して被塗基材表面に
達し、基材を腐蝕させる。
【0005】特に、無鉛化ないし低鉛化された非黄変性
のポリイソシアネート硬化剤を用いる塗料系では、泥の
付着に起因する被塗基材の腐蝕が生じ易くなる。つま
り、この系では塗膜の表面に泥が付着した状態にしてお
くと、その部分の基材が容易に腐蝕し、ブリスターが発
生する、という問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
問題を解決するものであり、その目的とするところは、
非黄変性のポリイソシアネート硬化剤を用いる塗料系に
おいて、無鉛化ないし低鉛化しても低温硬化性、平滑
性、耐食性、上塗り非黄変性、及びドロコート耐食性に
優れているカチオン電着塗料組成物を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、少なくともバ
インダー成分と顔料成分とを含有するカチオン電着塗料
組成物であって、該バインダー成分が1級、2級又は/
及び3級アミノ基含有エポキシ樹脂及びブロックポリイ
ソシアネート硬化剤からなり、該顔料成分が混合重量比
90/10〜10/90のトリポリリン酸アルミニウム
及びリンモリブデン酸アルミニウム混合物でなる防錆顔
料を含有し、硬化塗膜とした場合にその拡散パラメータ
(Tc)が20〜60であり、ドロコート耐食性に優れ
た実質的に鉛を含まないカチオン電着塗料組成物を提供
するものであり、そのことにより上記目的が達成され
る。
【0008】ここで、「ドロコート耐食性」とは、泥の
付着に起因する被塗基材の腐蝕が生じ難い塗膜の性質を
いう。また、「実質的に鉛を含まない」とは、環境に悪
影響を与えるような量で鉛を含まないことをいう。具体
的には非黄変性のポリイソシアネート硬化剤を用いるカ
チオン電着塗料組成物中、希釈塗料(電着浴へ加えられ
る状態)の鉛イオン濃度が800ppm、好ましくは5
00ppmを越える量で鉛を含まないことをいう。
【0009】
【発明の実施の形態】カチオン電着塗料組成物は、一般
に、バインダー成分、顔料成分、溶剤及び種々の添加剤
等を含有する。バインダー成分は官能基を有するカチオ
ン性樹脂とこれを硬化させる硬化剤とを含む。本発明で
はカチオン性樹脂としてはカチオン性エポキシ樹脂を用
い、硬化剤としてはブロックポリイソシアネートを用い
る。
【0010】カチオン性エポキシ樹脂 本発明で用いる1級、2級又は/及び3級アミノ基含有
エポキシ樹脂は、一般にカチオン性エポキシ樹脂と呼ば
れるものに含まれる。このカチオン性エポキシ樹脂は、
特開昭54−4978号、同昭56−34186号など
に記載されている公知の樹脂でよい。
【0011】カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、
ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカ
チオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、
または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環
し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性
水素化合物で開環して製造される。
【0012】ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例は
ビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ
樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828
(油化シェルエポキシ(株)、エポキシ当量180〜1
90)、エピコート1001(同、エポキシ当量450
〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3
000〜4000)などがあり、後者の市販品としては
エピコート807、(同、エポキシ当量170)などが
ある。
【0013】また、本出願人の特開平5−306327
号に開示されているように、オキサゾリドン環を鎖中に
含んでいるエポキシ樹脂から出発してもよい。これらの
エポキシ樹脂は、開環後0.3〜4.0meq/gのア
ミン当量となるように、より好ましくはそのうちの5〜
50%が1級アミノ基が占めるように活性水素化合物で
開環するのが望ましい。
【0014】カチオン性基を導入し得る活性水素化合物
としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、
スルフィド及び酸混合物がある。本発明の1級、2級又
は/及び3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するため
には1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチ
オン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
【0015】具体例としては、ブチルアミン、オクチル
アミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチ
ルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミ
ン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩
酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエ
チルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチ
ルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミン
のジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミ
ンがある。アミン類は複数のものを併用して用いてもよ
い。
【0016】エポキシ環を開環するために使用し得る他
の活性水素化合物としては、フェノール、クレゾール、
ノニルフェノール、ニトロフェノールなどのモノフェノ
ール類;ヘキシルアルコール、2−エチルヘキサノー
ル、ステアリルアルコール、エチレングリコールまたは
プロピレングリコールのモノブチル−またはモノヘキシ
ルエーテルなどのモノアルコール類;ステアリン酸およ
びオクチル酸などの脂肪族モノカルボン酸類;グリコー
ル酸、ジメチロールプロピオン酸、ヒドロキシピバリン
酸、乳酸、クエン酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン
酸;およびメルカプトエタノールなどのメルカプトアル
カノールが挙げられる。
【0017】硬化剤 本発明の硬化剤で使用するイソシアネートは、脂肪族ポ
リイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートである
ことが好ましい。具体的には、ヘキサメチレンジイソシ
アネート、水添TDI、水添MDI、水添XDI、IP
DI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナート
メチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボル
ナンジイソシアネートとも称される。)等の脂肪族ジイ
ソシアネート又は脂環式ジイソシアネート、それらの二
量体(ビウレット)、三量体(イソシアヌレート)等が
挙げられる。そして、これらをエチレングリコール、プ
ロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサ
ントリオールなどの脂肪族多価アルコールとNCO/O
H比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリ
マーをブロックしたものを硬化剤として使用する。
【0018】ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付
加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると
遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
【0019】ブロック剤の具体例には、フェノール、ク
レゾール、キシレノール、クロロフェノールおよびエチ
ルフェノールなどのフェノール系ブロック剤;ε−カプ
ロラクタム、δ−パレロラクタム、γ−ブチロラクタム
およびβ−プロピオラクタムなどのラクタム系ブロック
剤;アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンなどの活
性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プ
ロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレン
グリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモ
ノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエー
テル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロ
ピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコ
ール、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジア
セトンアルコール、乳酸メチルおよび乳酸エチルなどの
アルコール系ブロック剤;ホルムアルドキシム、アセト
アルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシ
ム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム
などのオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘ
キシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフ
ェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノー
ルなどのメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベン
ズアミドなどの酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド
およびマレイン酸イミドなどのイミド系ブロック剤;イ
ミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾー
ル系ブロック剤;ピラゾール系ブロック剤;及びトリア
ゾール系ブロック剤等を挙げることができる。このう
ち、低温硬化(160℃以下)を望む場合には、ラクタ
ム系およびオキシム系ブロック剤を使用するのが良い。
【0020】顔料成分 カチオン電着塗料組成物には一般に顔料を含有させる。
本発明のカチオン電着塗料組成物にも通常用いられる顔
料を含有させる。かかる顔料の例としては、チタンホワ
イト、カーボンブラック及びベンガラのような着色顔
料、カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カル
シウム、マイカ、クレー及びシリカのような体質顔料、
リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カ
ルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、ト
リポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブ
デン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリン
モリブデン酸アルミニウムのような防錆顔料等が挙げら
れる。
【0021】但し、例えば、塩基性ケイ酸鉛、塩基性硫
酸鉛、鉛丹、及びシアナミド鉛のような鉛系防錆顔料は
使用しないか、または使用しても希釈塗料(電着浴へ加
えられる状態)の鉛イオン濃度が800ppm以下好ま
しくは500ppm以下となるような量で使用すべきで
ある。鉛イオン濃度が高いと環境に有害であるばかりで
なく、平滑性が低下することがある。
【0022】本発明のカチオン電着塗料組成物には特に
防錆顔料を含有させる。防錆顔料は全顔料成分に対して
3〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の量で用い
る。
【0023】好ましい防錆顔料はトリポリリン酸アルミ
ニウム及びモリブデン酸アルミニウムである。これらは
混合して用いることが好ましい。イオン化速度に差があ
る2種の防錆顔料を組み合わせることにより防錆効果が
高まるからである。その混合割合は重量比で90/10
〜10/90、好ましくは60/40〜40/60とす
る。
【0024】顔料を電着塗料の成分として用いる場合、
一般に顔料を予め高濃度で水性媒体に分散させてペース
ト状にする。顔料は粉体状であるため、カチオン電着塗
料で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困
難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散
ペーストという。
【0025】顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散用樹
脂と共に水性媒体中に分散させて調製する。顔料分散樹
脂としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分
子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級ス
ルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチ
オン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水
や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔
料は10〜30重量部、水性媒体は70〜90重量部の
固形分比で用いる。
【0026】これらの成分を混合した後、混合物を顔料
が所定の均一な粒径となるまで分散させる。分散には通
常分散装置を用いる。例えば、ボールミルやサンドグラ
インドミル等を用いる。顔料分散ペーストに含まれる顔
料の粒径は、通常15μm以下である。
【0027】電着塗料 本発明のカチオン電着塗料は、上に述べたカチオン性エ
ポキシ樹脂、硬化剤、及び顔料分散ペーストを中和剤を
含む水性媒体中に分散することによって調製される。中
和剤は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような
無機酸または有機酸である。その量は少なくとも20
%、好ましくは30〜60%の中和率を達成する量であ
る。
【0028】硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキ
シ樹脂中の1級、2級又は/及び3級アミノ基、水酸基
等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与
えるのに十分でなければならず、一般に樹脂の硬化剤に
対する固形分重量比で表して一般に90/10〜50/
50、好ましくは80/20〜65/35の範囲であ
る。
【0029】電着塗料は、ジラウリン酸ジブチルスズ、
ジブチルスズオキサイドのようなスズ化合物や、通常の
ウレタン開裂触媒を含むことができる。鉛を実質的に含
まないため、その量はブロックポリイソシアネート化合
物の0.1〜5重量%とすることが好ましい。
【0030】電着塗料は、水混和性有機溶剤、界面活性
剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、及び顔料などの常用の
塗料用添加剤を含むことができる。
【0031】本発明のカチオン電着塗料組成物は当業者
に周知の方法で基材に電着塗装され、硬化塗膜を形成す
る。得られる硬化塗膜は架橋密度が高く、耐候性、耐光
性、耐食性等に優れる。
【0032】本発明のカチオン電着塗料組成物は、塗膜
を架橋するための触媒として鉛を実質的に含まない非黄
変性のポリイソシアネート硬化剤を用いる塗料系である
にもかかわらず、特に優れたドロコート耐食性を示し、
泥付着に起因する塗膜のブリスターの発生を効果的に抑
制する。
【0033】本発明のカチオン電着塗料組成物で得た硬
化塗膜は動的粘弾性測定から求められる架橋密度が1.
2〜2.0×10-3mol/cc、好ましくは1.5〜
2.0×10-3mol/ccである。本発明のカチオン
電着塗料組成物は鉛を実質的に含まないため架橋密度を
上げて腐蝕性イオンの塗膜内部への透過を抑制する必要
があり、上記の範囲であれば適切に腐蝕性イオンの塗膜
内部への透過を抑制できるからである。
【0034】また、この硬化塗膜の動的Tgは110〜
140℃、好ましくは120〜130℃である。動的T
gがかかる範囲であると使用環境において塗膜が軟化す
ることはなく、ドロコート耐食性が維持されるからであ
る。
【0035】また、本発明のカチオン電着塗料組成物で
得た硬化塗膜の拡散パラメータは20〜60、好ましく
は30〜50である。拡散パラメータは塗膜中に溶液が
浸透して拡散する程度を示す指標であり、硬化塗膜の架
橋密度に関係する特性値である。
【0036】つまり、まず電着塗装した塗装板の塗膜面
を溶液に浸し、塗装板と溶液との間に直流電圧をかけ
る。電気抵抗を経時的に測定すると、ある時点で抵抗が
著しく低下する。これは、溶液が電気分解してイオンと
なり、そのイオンが塗膜の表層から塗膜を通過して被塗
物まで拡散した状態であることを示す。この電圧の印加
から抵抗が低下するまでの時間を拡散パラメータ(T
c)という。
【0037】拡散パラメータの測定方法は、川井均、山
本隆、尼子宏、「色材」、47(1974)第396頁
左欄下から第24行〜第398頁左欄第12行に記載さ
れている。本文献の当該部分は本明細書に援用する。
【0038】拡散パラメータの測定において、本発明で
は、被塗基材としてSPC材を用い、これに10μmの
厚さに電着塗装し、160℃で10分間乾燥させた塗装
板を試料として用いる。また、容量比1/3で混合した
水/メタノールを溶液として用いる。
【0039】図1に示すように塗装板100の塗膜10
1上にシリコンゴムパッキング102、102’を介し
て白金のリング状電極103、及びテフロンリング10
4を固定する。この装置を空気恒温層に入れ、±0.1
℃以内の精度で35℃に温調する。
【0040】被塗基材105と白金電極103との間に
直流電圧を加え、リング内に容量比1/3で混合した水
/メタノールを入れ、この時点からの電流変化をケース
レー社製610℃エレクトロメーター106で測定し、
記録計107で記録する。塗装板の表面温度は、銅−コ
ンスタンタン熱電対(PHILIPS,PR6452
A)(非表示)を貼り付けて測定する。
【0041】塗膜の比抵抗(Ω・cm)を時間(mi
n)に対して表したプロットにおいて、傾斜が最初に変
化する時間がTcとなる。
【0042】
【実施例】以下の製造例および実施例は、限定でなく例
示目的のみで与えられる。これらにおいて「部」および
「%」は特記しない限り重量基準による。
【0043】製造例1 カチオン性エポキシ樹脂の合成 攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロート
を取り付けたフラスコにビスフェノールA型エポキシ樹
脂(エポキシ当量188)752.0部、メタノール7
7.0部、メチルイソブチルケトン200.3部および
ジラウリン酸ジブチルスズ0.3部を仕込み、室温で攪
拌し均一溶液とし、2,4−/2,6−トリレンジイソ
シアネート80/20(重量比)混合物174.2部を
50分間かけて滴下すると発熱により系内の温度が70
℃に達した。IRスペクトルはイソシアネートに基づく
2280cm-1の吸収の消失およびウレタンのカルボニ
ル基に基づく1730cm-1の吸収を示した。
【0044】N,N−ジメチルベンジルアミン2.7部
を加えた後、系内を120℃まで昇温し、副生するメタ
ノールをデカンターを用いて留去させながらエポキシ当
量が463に達するまで反応を行った。IRスペクトル
はウレタンのカルボニル基に基づく1730cm-1の吸
収の消失およびオキサゾリドン環のカルボニル基に基づ
く1750cm-1の吸収の出現を示した。
【0045】p−ノニルフェノール220.0部および
メチルイソブチルケトン83.3部を加え125℃の温
度を保持しながらエポキシ当量が1146に達するまで
反応を行った。系内の温度が110℃になるまで冷却
し、アミノエチルエタノールアミンのケチミン(79重
量%のメチルイソブチルケトン溶液)47.2部、ジエ
タノールアミン42.0部、N−メチルエタノールアミ
ン30.0部およびメチルイソブチルケトン17.3部
を加えた後、昇温し、120℃で2時間反応させた。こ
のようにして不揮発分80%のカチオン性エポキシ樹脂
を得た。
【0046】製造例2 硬化剤1の合成 攪拌機、冷却器、窒素導入管、温度計および滴下ロート
を取り付けたフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネ
ートのイソシアヌレート型三量体(コロネートHX、日
本ポリウレタン社)199部、メチルイソブチルケトン
32部、およびジブチルスズジラウレート0.2部を秤
取し、50℃まで昇温した。外部から冷却して温度を5
0℃に保ちながらメチルエチルケトオキシム87部を2
時間かけて滴下した。滴下終了後70℃に昇温し、この
温度を保ちながらIR分析によりNCO基が消失するま
で反応させ、脂肪族ブロックポリイソシアネート硬化剤
を得た。
【0047】製造例3 硬化剤2の合成 攪拌機、冷却器、窒素導入管、温度計および滴下ロート
を取り付けたフラスコに、2,5−および2,6−ビス
(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘ
プタン(三井東圧社製、NCO当量=103)723
部、メチルイソブチルケトン333部、およびジブチル
スズシラウレート0.01を秤取し、70℃まで昇温し
た。均一に溶解した後、メチルエチルケトオキシム61
0部を2時間かけて滴下した。滴下終了後反応温度70
℃を保持したままIR分析によりNCO基が消失するま
で反応させ、脂環式ブロックポリイソシアネート硬化剤
を得た。
【0048】製造例4 顔料分散ペーストの調製 エポキシ当量450のビスフェノール型エポキシ樹脂に
2−エチルヘキノールハーフブロック化イソホロンジイ
ソシアネートを反応させ、1−(2−ヒドロキシエチル
チオ)−2−プロパノールおよびジメチロールプロピオ
ン酸で3級スルホニウム化した顔料分散用樹脂ワニス1
25.0部(スルホニウム化率70.6%、樹脂固形分
60%)、イオン交換水400.0部、カーボンブラッ
ク3.0部、カオリン250部、二酸化チタン187
部、および混合重量比50/50のトリポリリン酸アル
ミニウム及びリンモリブデン酸アルミニウムの混合物で
なるリン酸系防錆顔料60部をサンドグライドミルに入
れ、粒度が10μm以下になるまで分散して顔料分散ペ
ーストを得た。
【0049】実施例1 製造例1で得たカチオン性エポキシ樹脂75部と製造例
2で得た脂肪族ブロックポリイソシアネート硬化剤25
部を均一に混合し、その後エチレングリコールモノ−2
−エチルヘキシールエーテルを固形分に対して3%にな
るように添加した。これに氷酢酸を加えて中和率43.
0%になるように中和し、さらにイオン交換水を加えて
ゆっくり希釈した。そして固形分が36.0%になるよ
うに減圧下でメチルイソブチルケトンを除去し、メイン
エマルションを調製した。
【0050】次にメインエマルション200.0部、製
造例4で得た顔料分散ペースト460.0部、イオン交
換水2252.0部、固形分に対し1%のジブチルスズ
オキサイドを混合し、固形分20.0%のカチオン電着
塗料を調製した。
【0051】得られたカチオン電着塗料を、リン酸亜鉛
処理した冷延鋼板及び亜鉛ニッケル鋼板に乾燥膜厚が1
0±2μmとなるように電着塗装し、その後160℃で
10分間焼付けを行い、硬化塗膜を得た。得られた硬化
塗膜を以下の様にして評価した。結果を表3に示す。
【0052】硬化塗膜の評価法 (1)拡散パラメータ 得られた塗装板を用いて、上述の方法により測定した。 (2)動的Tg及び架橋密度 東洋ボールドウィン社製動的粘弾性測定機「バイブロン
DDVII」を使用した。
【0053】(3)ドロコート耐食性 Na+、Ca2+、Cl-、SO4 2-イオンを約15%含有す
る泥を厚さ約0.3〜0.6mmとなるように塗装板の
硬化塗膜に塗布し、乾燥させた。
【0054】このサンプルを塩水噴霧6時間、乾燥3時
間、及び湿潤14時間という条件を繰り返すモードにて
試験した。
【0055】その後、硬化塗膜上の泥を洗浄して落と
し、塗膜の表面の状態を目視で評価した。
【0056】評価基準はブリスターの発生面積に応じて
以下の表1の通りとした。
【0057】
【表1】ブリスター発生面積 評価 0〜15% ◎(極めて良好) 16〜30% ○(良好) 31〜80% △(やや不良)81〜100% ×(不可)
【0058】(4)耐光性 スガ試験機社製WEL−SUN−HC型サンシャインウ
ェザーメーターを使用した。試験時間は100時間とし
た。
【0059】評価基準はグロス保持率に応じて以下の表
2の通りとした。
【0060】
【表2】グロス保持率 評価 100〜90% ◎(極めて良好) 89〜80% ○(良好) 79〜60% △(可)59〜 0% ×(不可)
【0061】実施例2〜9及び比較例1〜4 表3及び4に示す組成でカチオン電着塗料を調製するこ
と以外は実施例1と同様にして硬化塗膜を得、評価し
た。結果を表3及び4に示す。
【0062】
【表3】 実施例 1 2 3 4 5 6 7 [バインダー成分] エポキシ樹脂 75 70 70 70 70 70 70 硬化剤1(脂肪族NCO) 25 30 30 30 30 30 30 硬化剤2(脂環式NCO) − − − − − − − [防錆顔料]トリホ゜リリン 酸アルミ 50 50 50 50 50 50 90 リンモリフ゛テ゛ン 酸アルミ 50 50 50 50 50 50 10 含有量/全顔料(%) 3 3 6 12 20 20 12 [評価結果] 拡散パラメータ 21 39 41 42 43 43 43 架橋密度(x10-3mol/cc) 1.2 1.6 1.6 1.6 1.6 1.6 1.6 動的Tg(℃) 121 127 126 126 127 126 127 ドロコート耐食性 ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ 耐光性 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
【0063】
【表4】 実施例 比較例 8 9 1 2 3 4 [バインダー成分] エポキシ樹脂 70 60 50 75 75 90 硬化剤1(脂肪族NCO) − 40 50 25 25 10硬化剤2(脂環式NCO) 30 − − − − − [防錆顔料]トリホ゜リリン 酸アルミ 50 50 50 100 0 50リンモリフ゛テ゛ン 酸アルミ 50 50 50 0 100 50含有量/全顔料(%) 12 12 6 3 3 6 [評価結果] 拡散パラメータ 42 60 73 21 21 10 架橋密度(x10-3mol/cc) 1.6 2.0 2.4 1.1 1.1 0.7 動的Tg(℃) 127 127 142
121 121 105 ドロコート耐食性 ◎ ○ × × × ×耐光性 ○ ○ ○ ○ ○ ○
【0064】
【発明の効果】無鉛化ないし低鉛化しても低温硬化性、
平滑性、耐食性および上塗り非黄変性に優れているカチ
オン電着塗料組成物が提供された。本発明のカチオン電
着塗料組成物で得られる硬化塗膜はドロコート耐食性及
び耐光性に特に優れる。
【0065】すなわち、塗膜の拡散パラメータを制御す
ることにより泥に含まれる腐蝕性物質の基材への透過を
抑制し、基材表面における腐蝕反応を抑制することによ
り、ブリスターの発生及び拡大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 塗膜の拡散パラメータの測定方法の一態様を
示す模式断面図である。
【符号の説明】
100…塗装板、 101…塗膜、 102、102’…シリコンゴムパッキング、 103…白金のリング状電極、 104…テフロンリング、 105…被塗基材、 106…エレクトロメーター、 107…記録計。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともバインダー成分と顔料成分と
    を含有するカチオン電着塗料組成物であって、該バイン
    ダー成分が1級、2級又は/及び3級アミノ基含有エポ
    キシ樹脂及びブロックポリイソシアネート硬化剤からな
    り、該顔料成分が混合重量比90/10〜10/90の
    トリポリリン酸アルミニウム及びリンモリブデン酸アル
    ミニウム混合物でなる防錆顔料を含有し、硬化塗膜とし
    た場合にその拡散パラメータ(Tc)が20〜60であ
    り、ドロコート耐食性に優れた実質的に鉛を含まないカ
    チオン電着塗料組成物。
  2. 【請求項2】 前記防錆顔料が顔料成分中3〜30重量
    %の量で存在する請求項1記載のカチオン電着塗料組成
    物。
  3. 【請求項3】 硬化塗膜とした場合に、動的粘弾性測定
    から求められる架橋密度が1.5〜2.0×10-3mo
    l/ccであり、動的Tgが110〜140℃である請
    求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
  4. 【請求項4】 前記1級、2級又は/及び3級アミノ基
    含有エポキシ樹脂とブロックポリイソシアネート硬化剤
    との重量比が80/20〜60/40の範囲である請求
    項1記載のカチオン電着塗料組成物。
  5. 【請求項5】 前記ブロックポリイソシアネート硬化剤
    が脂肪族ブロックポリイソシアネート又は脂環式ブロッ
    クポリイソシアネートでなる請求項1記載のカチオン電
    着塗料組成物。
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