JPH11285094A - スピ―カ―振動板 - Google Patents

スピ―カ―振動板

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JPH11285094A
JPH11285094A JP1879199A JP1879199A JPH11285094A JP H11285094 A JPH11285094 A JP H11285094A JP 1879199 A JP1879199 A JP 1879199A JP 1879199 A JP1879199 A JP 1879199A JP H11285094 A JPH11285094 A JP H11285094A
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nonwoven fabric
speaker diaphragm
fiber
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thermosetting resin
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利秀 井上
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた音響特性を有し、かつ、製造効率に優
れたスピーカー振動板を提供すること。 【解決手段】 本発明のスピーカー振動板は、不織布に
少なくとも熱硬化性樹脂組成物を含浸し、成形および硬
化してなる。不織布は、タンパク質繊維を含有する繊維
材から形成され、熱硬化性樹脂組成物は、不飽和ポリエ
ステル樹脂を主剤として含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スピーカー振動板
に関する。より詳細には、本発明は、非常に優れた音響
特性を有し、かつ、製造効率に優れたスピーカー振動板
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、スピーカー振動板として、基
材に熱硬化性樹脂を含浸させ成形および硬化して得られ
るスピーカー振動板が知られている。基材としては、カ
ーボンファイバ(CF)、ガラスファイバ(GF)等の
剛直な強化繊維の平織り織布、またはCF、GF等のチ
ョップドファイバーを樹脂コートしてランダムに結合さ
せた不織布が知られている。含浸される熱硬化性樹脂
(マトリクス樹脂)としては、エポキシ樹脂が知られて
いる。基材に用いられるCF、GFは、大きな弾性率を
有するが、剛直で内部損失が極端に小さい。マトリクス
樹脂となるエポキシ樹脂は、靭性が小さく内部損失も小
さい。その結果、このような基材とマトリクス樹脂との
組み合わせによって得られるスピーカー振動板によれ
ば、大きく急峻な共振が発生する。そのため、このタイ
プのスピーカー振動板は、フルレンジスピーカーとして
用いるには不十分である。また、基材に織布を用いる場
合には、織布の織りの方向性(縦横の異方性)による物
性変化が生じやすい、成形時の目ズレが起きて特性が不
均一になる、という問題がある。
【0003】一方、熱可塑性樹脂繊維を熱プレスにより
融着して形成されるスピーカー振動板が提案されている
が、熱可塑性樹脂は弾性率が低いので高い物性(例え
ば、ヤング率)を得ることが困難である、あるいは、耐
熱性が不十分である等の問題がある。上記のような問題
点を解決するために、近年、高弾性率有機繊維からなる
不織布をマトリックス樹脂またはバインダーで結着した
ものが開発されており、内部損失等の特性を改善する試
みが盛んになってきている。ここで、このような高弾性
率有機繊維を不織布に形成する方法として、ケミカルボ
ンド法、ニードルパンチ法が知られている。さらに、必
要に応じて、マトリクス樹脂またはバインダーには、フ
ィラーが添加される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の高弾性
率有機繊維からなる不織布を用いる技術によれば、不織
布の強度が低くて取り扱いにくかったり、特性の不均一
化が起きたりする問題がある。さらに、不織布を形成す
るに際しては、ケミカルボンド法では、しわや亀裂が生
じやすいために音響特性が不十分であるという問題があ
り、ニードルパンチ法では、方向性による物性変化が生
じやすいという問題がある。さらに、従来のマトリクス
樹脂とフィラーの組み合わせでは、十分な内部損失が得
られず、かつ、密度が大きいという問題がある。しか
も、これらの振動板に用いられるマトリクス樹脂の作業
性が悪いことは、周知である。
【0005】本発明は、上記従来の課題を解決するため
になされたものであり、その目的とするところは、優れ
た音響特性を有し、かつ、製造効率に優れたスピーカー
振動板を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、不織布を
形成する繊維について鋭意検討した結果、タンパク質繊
維を用いて成形した不織布を用いることにより優れた音
響特性を有し、かつ、製造効率に優れたスピーカー振動
板が得られることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0007】本発明のスピーカー振動板は、不織布に熱
硬化性樹脂組成物を含浸し、成形および硬化してなり、
該不織布が、タンパク質繊維を含有する繊維材から形成
され、該熱硬化性樹脂組成物が、不飽和ポリエステル樹
脂を主剤として含む。本発明の別のスピーカー振動板
は、不織布からなる層を複数有し、該複数の不織布層に
熱硬化性樹脂組成物を含浸し、成形および硬化してな
り、該複数の不織布層の少なくとも1つが、タンパク質
繊維を含有する繊維材から形成された不織布からなり、
該熱硬化性樹脂組成物が、不飽和ポリエステル樹脂を主
剤として含む。好ましい実施態様においては、上記タン
パク質繊維は、外表面からセリシンが実質的に除去され
た天然絹繊維からなる絹糸である。好ましい実施態様に
おいては、上記絹糸のセリシン含有量は1重量%以下で
ある。好ましい実施態様においては、上記絹糸の維度は
0.8〜1.2デニールである。好ましい実施態様にお
いては、上記複数の不織布層は、上記絹糸から形成され
る不織布層と、高弾性率有機繊維から形成される不織布
層とを含む。好ましい実施態様においては、上記高弾性
率有機繊維はメタ型アラミド繊維である。好ましい実施
態様においては、本発明のスピーカー振動板は、上記絹
糸から形成される不織布層と、上記高弾性率有機繊維か
ら形成される不織布とを交互に有する。好ましい実施態
様においては、上記不織布はメッシュ状である。好まし
い実施態様においては、上記熱硬化性樹脂組成物は鱗状
鉱物を含有する。好ましい実施態様においては、上記鱗
状鉱物は黒鉛である。好ましい実施態様においては、上
記黒鉛は、4〜10μmの範囲の平均粒径を有する。好
ましい実施態様においては、上記鱗状鉱物は、上記不飽
和ポリエステル樹脂100重量部に対して20〜50重
量部の範囲で含有される。好ましい実施態様において
は、上記熱硬化性樹脂組成物は、マイクロバルーンをさ
らに含有する。好ましい実施態様においては、上記マイ
クロバルーンは、塩化ビニリデン-アクリロ ニトリルコ
ポリマーを主成分とする有機系マイクロバルーンまたは
ホウケイ酸ガラスを主成分とする無機系マイクロバルー
ンから選択される。好ましい実施態様においては、上記
マイクロバルーンは、上記不飽和ポリエステル樹脂10
0重量部に対して5〜20重量部の範囲で含有される。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明のスピーカー振動板は、不
織布に熱硬化性樹脂組成物を含浸し、成形および硬化し
てなる。この不織布は、タンパク質繊維を含有する繊維
材から形成される。すなわち、不織布はタンパク質繊維
のみから形成されてもよく、タンパク質繊維と他の繊維
とを含有する繊維材から形成されてもよい。タンパク質
繊維としては、代表的には、天然絹糸、羊毛が挙げられ
る。天然絹糸が特に好ましい。さらに好ましくは、絹糸
は、その外表面からセリシンが実質的に除去された天然
絹繊維からなる。ここで、「実質的に除去された」と
は、絹糸のセリシン含有量が1重量%以下であることを
意味する(なお、セリシンは、繭の状態で20%、生糸
で17〜18%絹糸に含有されていることが一般的に知
られている)。セリシンは、任意の適切な方法(例え
ば、弱アルカリ性の熱水による煮沸)により絹糸から除
去される。セリシンを除去した絹糸を用いることによ
り、きわめて優れた音響特性を有するスピーカー振動板
が得られる。好ましくは、絹糸の維度は0.8〜1.2
デニ−ル(繊維径が9.5〜11.7μm)である。こ
の範囲の太さの絹糸は、柔軟性、成形性および操作性に
優れ、高弾性率であり、かつ、不飽和ポリエステル樹脂
を良好に含浸させることができる。なお、上記他の繊維
としては、任意の適切な繊維(例えば、炭素繊維、ガラ
ス繊維)が用いられる。
【0009】不織布は、任意の適切な方法を用いて上記
繊維材から形成される。不織布の形成方法の代表例とし
ては、水などの液体または空気などの気体を用いる流体
絡合法、あるいは機械的に繊維材をランダムに絡ませる
方法などが挙げられる。弾性率の異方性が小さく成形性
が良好な不織布が得られるという点で、流体絡合法が好
ましい。例えば、上記繊維材を乾式法により空気流でラ
ンダムに配向させて集積層を作成し、次いで、水流絡合
法により該集積層の繊維同士を絡ませることにより不織
布が得られ得る。本発明に用いられる不織布の目付は目
的に応じて変化し得るが、代表的には30〜150g/
2で ある。水流絡合法などで得られる不織布として
は、多くの製品が市販されている。
【0010】別の実施態様においては、本発明のスピー
カー振動板は、不織布からなる層を複数有し、これら複
数の不織布層もまた、熱硬化性樹脂組成物により含浸お
よび硬化される。不織布の層の数は目的に応じて適宜設
定され得るが、代表的には3〜6層である。これら複数
の不織布層の少なくとも1つは、上記タンパク質繊維を
含有する繊維材から形成された不織布からなる。言い換
えれば、複数の不織布層すべてが上記繊維材から形成さ
れた不織布であってもよく、複数の不織布層の一部がそ
のような不織布であってもよい。好ましくは、これら複
数の不織布層は、上記絹糸から形成される不織布層(以
下、「絹糸不織布層」という。)と高弾性率有機繊維か
ら形成される不織布層(以下、「有機不織布層」とい
う。)とが積層されてなる。好ましくは、絹糸不織布層
と有機不織布層とは交互に積層される。なお、不織布を
積層する場合には、不織布の法線方向から見て不織布の
配向方向を適切な角度(例えば、30°)ずつずらせて
積層するのが好ましい(不織布においても方向性(異方
性)は完全には解消されないことに留意されたい)。ず
らす角度は、不織布の種類等に応じて適宜設定され得
る。不織布の配向方向をずらせて積層することにより、
不織布の繊維の配向性を互いに打ち消すことができ、そ
の結果、成形時の変形を防止することができる。
【0011】好ましくは、不織布(絹糸の場合も高弾性
率有機繊維の場合も)は、メッシュ状である。メッシュ
サイズ(例えば、網目の粗さ、網目の細孔の形状)は目
的に応じて適宜変化し得るが、例えば、#16メッシュ
を用いてメッシュ状不織布が作成され得る。上記高弾性
率有機繊維としては、メタ型アラミド繊維、パラ型アラ
ミド繊維等が挙げられる。メタ型アラミド繊維の代表例
としては、ポリメタフェニレンイソフタルアミドが挙げ
られる。パラ型アラミド繊維の代表例としては、コパラ
フェニレン-3,4'-オキシジフェニレンテレフタルアミ
ド、PPTA(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)
等の芳香族ポリアミド繊維、PET(ポリエチレンテレ
フタレート)繊維が挙げられる。絹と繊維弾性率が近似
しているという点で、メタ型アラミド繊維が好ましい。
上記不織布に含浸される熱硬化性樹脂組成物は、不飽和
ポリエステル樹脂を主剤として含む。本発明において
は、目的に応じて任意の適切な不飽和ポリエステル樹脂
が用いられる。好ましくは、熱硬化性樹脂組成物は、フ
ィラーとして鱗状鉱物を含有する。鱗状鉱物の代表例と
しては、黒鉛、マイカ、タルクが挙げられる。導電性と
潤滑性とを有し、フィラーとしての分散性に優れるとい
う点で、黒鉛が好ましい。好ましくは、鱗状鉱物の平均
粒径(本発明においては、鱗の最長部の長さをいう)
は、4〜10μmである。平均粒径が4μm未満では、
フィラーとしての効果が不十分である場合が多い。平均
粒径が10μmを超えると、含浸の際にフィラーが不織
布繊維間に入り込めないので、効果的な補強ができない
場合が多い。鱗状鉱物は、不飽和ポリエステル樹脂10
0重量部に対して20〜50重量部の範囲で含有され
る。含有量が20重量部未満の場合には、ヤング率が不
十分である場合が多い。含有量が50重量部を超える
と、鱗状鉱物が不織布繊維間へ進入するのが困難とな
り、その結果、鱗状鉱物が不織布表面に堆積し剥離して
しまうので、鱗状鉱物を多量に含有させる意味がない。
好ましくは、熱硬化性樹脂組成物は、マイクロバルーン
をさらに含有する。ここで、マイクロバルーンとは中空
球体を総称する。マイクロバルーンは、無機系マイクロ
バルーンおよび有機系マイクロバルーンを包含する。無
機系マイクロバルーンは、代表的には、ホウケイ酸ガラ
スを主成分とする。有機系マイクロバルーンは、代表的
には、塩化ビニリデン-アクリロニトリルコポリマーを
主成分とする。このような無機系マイクロ バルーンの
真比重は0.3g/cm3程度、有機系マイクロバルー
ンの真比重は0.0 2g/cm3程度であり、いずれも
スピーカー振動板用フィラーとして適切である。マ イ
クロバルーンの粒径は、代表的には40〜60μmであ
る。マイクロバルーンは、不飽和ポリエステル樹脂10
0重量部に対して5〜20重量部の範囲で含有される。
含有量が5重量部未満の場合には、内部損失が不十分で
ある場合が多い。含有量が20重量部を超えると、ヤン
グ率が不十分である場合が多い。
【0012】さらに、上記熱硬化性樹脂組成物は、必要
に応じて、各種添加剤を含有する。このような添加剤の
代表例としては、硬化剤、低収縮化剤、顔料、補強材が
挙げられる。硬化剤としては、例えば、有機過酸化物な
どの硬化剤(重合開始剤)、ビニル単量体などの架橋剤
が挙げられる。低収縮化剤としては、例えば、熱可塑性
樹脂およびその溶液が挙げられる。顔料としては、目的
に応じて任意の適切な色種の顔料が用いられるが、スピ
ーカー振動板においては黒色顔料が用いられる場合が多
い。
【0013】補強材としては、例えば、雲母、炭素繊
維、ウィスカーが挙げられる。雲母の粒径は、目的(例
えば、得られる振動板の厚み)に応じて変化し得る。例
えば、目的とする振動板の厚みが0.3mmである場合
には、雲母の平均粒径は10μm程度、粒径分布は5〜
25μm程度が適切である。雲母の粒径は大きいほど弾
性率が大きくなるが、粒径が大きすぎると立体障害のた
め成形の際に不織布に均一に含浸されなくなる。その結
果、振動板の異なる部位での剛性が大きく異なってしま
い、振動板の音響特性に悪影響を及ぼす。雲母の添加量
は雲母の粒径等に応じて変化し得るが、音響特性を考慮
すると、平均粒径5μmの雲母の場合には、不飽和ポリ
エステル樹脂100重量部に対して15〜25重量部が
好ましい。理由は以下の通りである。雲母の添加量も多
いほど弾性率は大きくなり、また、平均粒径5μmの雲
母では樹脂100重量部に対して50重量部までは均一
に分散し得る。しかし、あまり多量に添加すると、振動
板の重量が増大し、かつ、立体障害のため成形の際に不
織布に均一に含浸されないで雲母が1か所に集まってし
まう。その結果、音響特性において音圧が低下し、か
つ、エネルギーが特定の周波数に集中してバランスが悪
くなってしまう。炭素繊維としては、ポリアクリロニト
リル(PAN)系またはピッチ系炭素繊維が用いられ
る。炭素繊維の繊維長は、40μm以下が有効である。
繊維長が40μmを超えると、炭素繊維が薄い振動板内
で均一に分散せず十分な物性(例えば、平滑性)が得ら
れにくい。ウィスカーとしては、代表的には、セラミッ
クウィスカー(例えば、硼酸アルミニウムウィスカー)
が用いられる。好ましくは、ウィスカーの長さは30μ
m以下、径は1.0μm以下である。ウィスカーがこの
サイズを超えると、ウィスカーが薄い振動板内で均一に
分散せず十分な物性(例えば、平滑性)が得られにく
い。
【0014】本発明のスピーカー振動板は、上記不織布
または不織布の積層体(製造方法の説明においては、単
に不織布という)を、上記熱硬化性樹脂組成物で含浸
し、金型で成形および硬化することにより得られる。以
下、本発明の振動板を備えたスピーカーの製造方法の一
例について説明する。図1は、本発明の振動板を備えた
スピーカーの成形工程を説明するための模式図である。
最初に、不織布1aが原料供給装置1から供給される。
代表的には、不織布1aは、供給装置1にロール状に巻
かれて準備され、工程の流れに応じて供給装置1から送
り出される。次に、成形時の変形を防止するために、送
り出された不織布1aの送り方向に対する両側部がクラ
ンプ2により移動可能に支持される。次に、樹脂供給ノ
ズル3aから不織布1aに熱硬化性樹脂組成物が供給さ
れ、樹脂供給ノズル3bから下側金型4bに熱硬化性樹
脂組成物が供給される。樹脂組成物は不織布1aの一方
の側のみに供給してもよいが、好ましくは図1に示すよ
うに、樹脂組成物は不織布1aの上側と下側の両方に供
給される。フィラー等が振動板の一方の側に偏在するこ
とが防止されるからである。次いで、樹脂組成物が供給
された不織布1aを熱プレスすることにより、樹脂組成
物が圧延されて不織布1a全体に含浸され、含浸樹脂が
半硬化する(一次成形)。その後、型抜きと外周切断が
行われ、スピーカー振動板5が得られる。
【0015】加熱温度および加熱時間(硬化時間)は熱
硬化性樹脂の種類に応じて適宜変化し得るが、代表的に
は、加熱温度は80〜120℃、加熱時間は1〜3分間
である。プレス圧および金型クリアランスもまた、熱硬
化性樹脂の種類または量、不織布の種類または密度、あ
るいは目的の振動板の厚み等に応じて適宜変化し得る。
本発明における代表的なプレス圧は10〜40kg/c
2であり、金型クリアランス(得られる振動板の厚み
に対応する)は、0.5〜1.2mmである。一方、エ
ッジ材11aがエッジ原料供給装置11から供給され
る。エッジ材11aもまた、供給装置11にロール状に
巻かれて準備され、工程の流れに応じて供給装置11か
ら送り出される。次に、切断刃12により適切な長さに
エッジ材11aが切断される。その後、下側金型13b
と上側金型13aとにより熱プレスすることにより成形
が行われ、さらに型抜きと内外周切断とが行われ、エッ
ジ部14が得られる。加熱温度、加熱時間、プレス圧お
よび金型クリアランスは、エッジ材の種類や目的とする
エッジ部のタイプに応じて適宜設定され得る。次いで、
スピーカー振動板5とエッジ部14とが上側金型6aと
下側金型6bとの間にセットされ、熱プレスにより熱硬
化性樹脂が完全硬化するとともに、振動板とエッジ部と
の一体化が行われる(二次成形)。加熱温度、加熱時
間、プレス圧および金型クリアランスは、任意の適切な
条件に設定され得る。最後に、型抜きおよび中心穴切断
が行われ、スピーカー7が得られる。
【0016】上記の実施態様においては、樹脂組成物の
塗布方法として、金型により圧延する方法を説明した
が、スプレー塗布やブレード塗布などの方法も適用され
得る。なお、上述したように、樹脂組成物を不織布の両
面に塗布するのが好ましい(特に、樹脂組成物が鱗状鉱
物(例えば、黒鉛)を含有する場合に、その効果が顕著
である)。理由は次の通りである。樹脂組成物を不織布
の両面に塗布することにより、強度の高い黒鉛層が成形
時に不織布の両表面に形成される。不織布が成形時に黒
鉛層でサンドイッチされることにより、不織布に若干存
在する強度異方性が成形後には減少する。さらに、強度
の強い黒鉛層が両面に存在することにより、内部損失と
ヤング率とが共に改善される。また、上記の実施態様に
おいては、振動板の熱硬化性樹脂を一次成形と二次成形
とにより二段階で硬化させる場合について説明したが、
予めエッジ部を作製しておけば、振動板の硬化、成形、
およびエッジ部との一体化を同時に行うことができる。
本発明のスピーカ振動板は、任意のスピーカー(例え
ば、低音用、中音用、高音用のスピーカ)に用いること
ができる。振動板の形状もまた、任意の適切な形状(例
えば、コーン状、ドーム状、平板状)が採用され得る。
【0017】以下、本発明の作用について説明する。本
発明によれば、タンパク質繊維を含有する繊維材から不
織布を形成することにより、非常に優れた音響特性を有
するスピーカー振動板が得られる。タンパク質繊維は振
動減衰能力に優れ、基音、倍音および3倍音を明確に分
離することができるからである。しかも、本発明におい
ては、この不織布を不飽和ポリエステル樹脂組成物で含
浸することにより、タンパク質繊維の優れた特性を維持
しつつ、非常に優れた作業性でスピーカー振動板を製造
することができる。不飽和ポリエステル樹脂は、従来の
スピーカー振動板に用いられる含浸樹脂(例えば、エポ
キシ樹脂)に比べて、(i)硬化速度が格段に速 く、(ii)
低粘度で、(iii)低温での成形が可能であり、(iv)プリ
プレグ化が不要であり 、(v)添加剤の添加が容易である
という利点を有するからである。加えて、従来の含浸
樹脂(エポキシ樹脂)の代表的な硬化温度(例えば、1
50℃)ではタンパク質繊維は劣化してしまうので、従
来の含浸樹脂とタンパク質繊維とを組み合わせて用いる
ことはきわめて困難であったが、低温で硬化可能な不飽
和ポリエステル樹脂はタンパク質繊維と組み合わせて用
いることができる。以上のように、本発明によれば、タ
ンパク質繊維と不飽和ポリエステル樹脂とを組み合わせ
て用いることにより、非常に優れた音響特性を有するス
ピーカー振動板を非常に高い製造効率で得ることができ
る。好ましい実施態様によれば、上記タンパク質繊維と
して、外表面からセリシンが実質的に除去された天然絹
繊維からなる絹糸が用いられる。このような絹糸を用い
ることにより、音響特性がさらに改善され得る。理由は
次の通りである。絹糸は、セリシンに覆われたほぼ三角
形の断面形状を有するフィブロイン繊維からなる。フィ
ブロイン繊維自体は、成形加工時に密に結束されやすい
性質を有し、かつ、柔軟で高弾性率を有する。しかし、
通常の絹糸のようにセリシンがフィブロイン繊維を覆っ
て外表面に存在すると、セリシンが接着剤のように作用
してフィブロインを束ねてしまい、成形加工時に密に結
束することを阻害してしまう。従って、セリシンを除去
することにより、フィブロイン繊維がセリシンに立体的
に妨害されることなく結束して密に成形されるので、得
られる不織布の弾性率が顕著に向上し、同時に、フィブ
ロイン繊維(タンパク質繊維)が有する優れた振動減衰
能力効果を十分かつ効率的に発揮させることができる。
さらに、このようにして得られる不織布が密に結束した
構造を有することにより、同量の熱硬化性樹脂を含浸さ
せた場合に、通常の不織布に比べて繊維体積比率を高く
することができる。その結果、得られる振動板におい
て、柔軟で高弾性率というフィブロイン繊維の特性がよ
り効果的に現れるので、弾性率が高く音響特性に優れた
スピーカー振動板が得られる。絹糸のセリシン含有量が
1重量%以下となるまでセリシンを除去すれば、上記作
用を十分に発揮させることができる。絹糸の維度が0.
8〜1.2デニールの範囲であれば、上記の柔軟性およ
び弾性率が特に良好であり、不織布に成形する際の成形
性も特に良好となる。さらに、このような細い繊維を用
いて形成された不織布は空間部分が大きいので、不飽和
ポリエステル樹脂を優れた作業性で容易に含浸させるこ
とができる。
【0018】本発明の別の局面においては、複数の不織
布層を設けることにより、不織布層と不織布層との間に
樹脂が入り込む。そのため、繊維密度の大きな層(不織
布層)と繊維密度の小さな層(不織布層間に入り込んだ
樹脂層)とが積層物の厚み方向に形成される。その結
果、得られるスピーカー振動板の厚み方向に繊維密度の
大きな層同士のズレが起こるので、内部損失を大きくす
ることができる。好ましい実施態様によれば、絹糸不織
布層と有機不織布層とを設けることにより、スピーカー
振動板の表面に絹糸の優れた音響特性を付与すると同時
に、高弾性率有機繊維の優れた引張強度に起因する優れ
た形状保持性および機械的強度を振動板全体に付与する
ことができる。絹糸不織布層と有機不織布層とを交互に
設けることにより、振動板の音響特性および機械的強度
がさらに改善され得る。好ましい実施態様によれば、上
記不織布をメッシュ状とすることにより、振動板成形時
の所望でない変形を防止することができる。詳細は以下
の通りである。不織布は、その製法に起因して不可避的
に2以上の強度縦横比を有するので、このような強度異
方性に起因して、振動板成形時に所望でない変形(歪)
が生じる。例えば、振動板をコーン形状に成形する場合
には、不織布は通常20%程度伸ばされるが、強度の縦
横比が2以上であると不織布は均一に伸ばされないの
で、歪みが生じる。従って、不織布の強度の縦横比をで
きるだけ1に近づけるのが重要である。不織布をメッシ
ュ状に形成すると、メッシュを構成する細孔が成形時
(伸長時)の応力を緩和し、かつ、不織布の伸縮の大部
分を担う。その結果、成形時の不均一な変形が顕著に防
止される。実際に、不織布を20%程度伸長させても、
強度の縦横の差はほとんど認められない(縦横比がほぼ
1である)ことが確認されている。好ましい実施態様に
よれば、熱硬化性樹脂組成物に鱗状鉱物を添加すること
により、ヤング率、内部損失および成形時の変形の均一
性を向上させることができる。鱗状鉱物は、針状フィラ
ーに比べて異方性が小さいので成形時の歪みが小さく、
かつ、球状フィラーに比べて摩擦が大きいので内部損失
が大きくなる。さらに、鱗状鉱物はフィラーとしての分
散性にも優れているので、ヤング率の改善にも有効であ
る。好ましくは、鱗状鉱物は黒鉛である。黒鉛は炭素の
結晶で層状構造を有し、導電性とともに潤滑性を有して
いるので、滑り性および分散性が特に優れている。例え
ば、熱硬化性樹脂組成物を不織布にコーティングしてプ
レス成形する場合には、コーティングされた樹脂組成物
は熱プレス時に金型で圧縮されることにより不織布表面
から内部に浸透し、背面に達すると外側にはみ出して硬
化する。このような場合にも、黒鉛の滑り性および分散
性はきわめて良好である。好ましい実施態様によれば、
熱硬化性樹脂組成物はマイクロバルーンをさらに含有す
る。マイクロバルーンを用いることにより、本発明の振
動板の優れた特性を維持しつつ軽量化を図ることができ
る。代表的には、マイクロバルーンは、塩化ビニリデン
-アク リロニトリルコポリマーを主成分とする有機系マ
イクロバルーンまたはホウケイ酸ガラスを主成分とする
無機系マイクロバルーンである。これらのマイクロバル
ーンは特に優れた分散性を有するので、他の添加剤との
併用がきわめて容易である。従って、目的に応じた広範
囲な配合が可能となる。
【0019】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれら実施例には限定されない。
【0020】(実施例1)絹の短繊維(繊維長58m
m、1.2デニール、以下同じ)を乾式法により空気流
でランダムに配向させて集積層を作成した後、さらに水
流絡合法により繊維同士を機械的に絡ませて秤量150
g/m2の不織布を作成した。この不織布に、下記表1
に示す不 飽和ポリエステル溶液aを約125〜150
g/m2の密度で塗布し、110℃で1分 間熱プレス成
形して、口径16cm、厚さ0.23mmのスピーカー
振動板を得た。得られた振動板について、通常の方法
で、ヤング率、密度、比弾性率、内部損失および繊維堆
積比率を測定した。測定結果を、後述の実施例2〜4お
よび比較例1〜3の結果と併せて下記表2に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】(実施例2)弱アルカリ性の熱水で煮沸す
る精錬を行いセリシン含有量を1%以下とした絹糸を用
いたこと以外は実施例1と同様にしてスピーカー振動板
を得た。得られた振動板を実施例1と同様の測定に供し
た。結果を上記表2に示す。
【0024】(比較例1)PETの短繊維(繊維長38
mm)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてスピー
カー振動板を得た。得られた振動板を実施例1と同様の
測定に供した。結果を上記表2に示す。
【0025】(実施例3)実施例2の絹糸を用いて秤量
30g/m2の不織布を作成し、これらの不織布をその
方向が平面視で30度ずつずれるように5層積層した積
層不織布を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ス
ピーカー振動板を得た。得られた振動板を実施例1と同
様の測定に供した。結果を上記表2に示す。
【0026】(実施例4)実施例3の積層不織布に、上
記表1に示す不飽和ポリエステル溶液bを約125〜1
50g/m2の密度で塗布したこと以外は実施例1と同
様にして、スピーカー振動板を 得た。得られた振動板
を実施例1と同様の測定に供した。結果を上記表2に示
す。 (比較例2)不織布をニードルパンチ法で作成したこと
以外は実施例1と同様にしてスピーカー振動板を得た。
得られた振動板を実施例1と同様の測定に供した。結果
を上記表2に示す。 (比較例3)絹の短繊維(繊維長58mm)を乾式法に
より空気流でランダムに配向させて集積層を作成した
後、さらに水流絡合法により繊維同士を機械的に絡ませ
て秤量150g/m2の不織布を作成した。この不織布
の両面に、エポキシ樹脂からなるプリプレグシート 3
層(約150g/m2)を熱転写して不織布プリプレグ
シートを作成した。このシー トを150℃で15分間
熱プレスしてスピーカー振動板を得た。得られた振動板
を実施例1と同様の測定に供した。結果を上記表2に示
す。上記表2から明らかなように、絹糸を用いた実施例
1〜4の振動板は、比較例1〜3の振動板に比べて、ヤ
ング率および内部損失がいずれも優れている。さらに、
実施例2〜4の結果から、セリシンを除去した絹糸を用
いると、ヤング率および内部損失がさらに向上すること
がわかる。また、実施例3および4の結果から、積層不
織布を用いると、繊維堆積比率および内部損失が顕著に
向上することがわかる。実施例1〜4と比較例3との比
較から明らかなように、不飽和ポリエステル樹脂を用い
る本発明の実施例によれば、エポキシ樹脂を用いる場合
に比べてはるかに短時間で熱プレス成形が可能であるこ
とがわかる。従って、本発明のスピーカー振動板は、エ
ポキシ樹脂を用いる振動板に比べて格段に製造効率に優
れることがわかる。さらに、本発明によれば、エポキシ
樹脂を用いる場合に比べてはるかに低温で熱プレス成形
が可能であるため、絹糸に悪影響を及ぼすことがない。
その結果、ヤング率、比弾性率および内部損失が、エポ
キシ樹脂を用いる比較例3に比べて顕著に優れている。
絹糸は、120℃で分解が始まり130℃以上でアンモ
ニアが発生し始めるので、エポキシ樹脂を用いて熱プレ
スする場合には、絹の特性が劣化してしまうからであ
る。加えて、本発明によれば、比較例3に比べて、製造
時の操作性が格段に向上する。エポキシ樹脂は低温で高
粘度であるため、定量を含浸させるためには複雑な操作
(例えば、離型紙にドクターブレードで一定厚さに塗布
して半硬化させること:Bステージ化)を取り扱い困難
な状況で行わなければならないのに対し、本発明ではそ
のような操作は必要ないからである。さらに、低温での
成形を余儀なくされる場合には、エポキシ樹脂に各種添
加剤を添加するのは困難であるので、エポキシ樹脂を用
いた場合には目的に応じた特性の向上を図るのが困難で
あることもわかった。
【0027】(実施例5)秤量35g/m2としたこと
以外は実施例2と同様にして絹糸不織布を作成した。一
方、メタ型アラミド繊維(帝人(株)製:コーネック
ス、繊維長38mm)を用いたこと以外は実施例1と同
様にして不織布(秤量70g/m2)を作成した。2つ
の絹糸不織 布層と該2つの層に挟まれるアラミド不織
布層とからなる3層の積層不織布を作成し、以後の手順
は実施例1と同様にしてスピーカー振動板を得た。得ら
れた振動板について、通常の方法で、ヤング率、密度、
比弾性率および内部損失を測定した。さらに、以下の式
から変形率を求めた: {(長径−短径)/(正規寸法)}×100 ここで、長径および短径は、成形時の変形によって楕円
となった振動板の長径および短径である。これらの結果
を、後述の実施例6〜9の結果と併せて下記表3に示
す。
【0028】
【表3】
【0029】(実施例6)メタ型アラミド繊維の代わり
にパラ型アラミド繊維(東レ・デュポン(株)製:ケブラ
ー、繊維長38mm)を用いたこと以外は実施例5と同
様にしてスピーカー振動板を得た。得られた振動板を実
施例5と同様の測定に供した。結果を上記表3に示す。
【0030】(実施例7)メタ型アラミド繊維の代わり
にPET繊維を用いたこと以外は実施例5と同様にして
スピーカー振動板を得た。得られた振動板を実施例5と
同様の測定に供した。結果を上記表3に示す。
【0031】(実施例8)#16メッシュの受け網を用
いて、メタ型アラミド繊維を水流絡合させてメッシュ状
不織布を作成した。このメッシュ状不織布を用いたこと
以外は実施例5と同様にしてスピーカー振動板を得た。
得られた振動板を実施例5と同様の測定に供した。結果
を上記表3に示す。
【0032】(実施例9)不飽和ポリエステル樹脂溶液
aの代わりに不飽和ポリエステル樹脂溶液bを用いたこ
と以外は実施例8と同様にしてスピーカー振動板を得
た。得られた振動板を実施例5と同様の測定に供した。
結果を上記表3に示す。上記表3から明らかなように、
実施例5〜9のスピーカー振動板はいずれも優れた特性
を有していることがわかる。例えば、メタ型アラミド繊
維を用いた実施例5の振動板は変形率に特に優れ、パラ
型アラミド繊維を用いた実施例6の振動板はヤング率お
よび比弾性率に特に優れている。なお、絹繊維のヤング
率は8.8〜13.8×1010dyn/cm2であるの
に対し てメタ型アラミド繊維のヤング率は、7.3×
1010dyn/cm2、パラ型アラミド 繊維のヤング率
は、5.8×1011dyn/cm2であるので、ヤング
率の近似した繊維を用いた不織布同士を組み合わせて各
種特性のバランスに優れた振動板を得るという観点から
は、パラ型アラミド繊維が好ましい。ちなみにPET繊
維のヤング率は、1.23×1011dyn/cm2であ
る。なお 、メタ型アラミド繊維を用いて3層とした実
施例5は、絹繊維を用いて5層とした実施例3とほぼ同
等な物性が得られるとともに、積層数を減少させること
ができ、スピーカー振動板製造の際の作業性を向上させ
ることができる。また、成形時の変形率に関して、メッ
シュ状不織布を使った場合に特に変形が少なく、好まし
いことがわかる。
【0033】(実施例10)絹の短繊維(繊維長58m
m)を乾式法により空気流でランダムに配向させて集積
層を作成した後、さらに水流絡合法により繊維同士を機
械的に絡ませて秤量30g/m2 の不織布を作成した。
この不織布を6層積層し、積層体の両面に、上記表1に
示す不飽和ポリエステル溶液cを約125〜150g/
2の密度で塗布し、振動板形状のマッ チドダイ金型を
用いて110℃で1分間熱プレス成形した。その結果、
口径20cm、厚さ0.35mmのスピーカー振動板を
得た。得られた振動板について、通常の方法で、ヤング
率、密度、比弾性率、内部損失および縦横比を測定し
た。これらの結果を、後述の実施例11および比較例4
〜5の結果と併せて下記表4に示す。さらに、不飽和ポ
リエステル溶液cにおける鱗状黒鉛の含有量を変化させ
て振動板を作成し、それらのヤング率を測定した。黒鉛
含有量とヤング率との関係を図2に示す。
【0034】
【表4】
【0035】(比較例4)上記表1に示す不飽和ポリエ
ステル溶液dを用いたこと以外は実施例10と同様にし
てスピーカー振動板を得た。得られた振動板を実施例1
0と同様の測定に供した。結果を上記表4に示す。
【0036】(実施例11)不飽和ポリエステル溶液c
の塗布密度を約60〜75g/m2としたこと以外は実
施 例10と同様にしてスピーカー振動板を得た。得ら
れた振動板を実施例10と同様の測定に供した。結果を
上記表4に示す。
【0037】(比較例5)上記表1に示す不飽和ポリエ
ステル溶液eを用いたこと以外は実施例10と同様にし
てスピーカー振動板を得た。得られた振動板を実施例1
0と同様の測定に供した。結果を上記表4に示す。表4
において実施例10および11と比較例4とを比較する
と明らかなように、鱗状黒鉛を用いることにより、ヤン
グ率および内部損失がいずれも顕著に向上する。実施例
10および11と比較例5とを比較すると明らかなよう
に、鱗状黒鉛の粒径が大きすぎる場合には、鱗状黒鉛を
含有してもあまり効果がないことがわかる。さらに、図
2から明らかなように、黒鉛の含有量は、不飽和ポリエ
ステル樹脂100重量部に対して20〜50重量部が好
ましいことがわかる。 (実施例12)絹の短繊維(繊維長58mm)を乾式法
により空気流でランダムに配向させて集積層を作成した
後、さらに水流絡合法により繊維同士を機械的に絡ませ
て秤量30g/m2 の不織布を作成した。この不織布を
6層積層し、積層体の両面に、上記表1に示す不飽和ポ
リエステル溶液fを約60〜75g/m2の密度で塗布
し、振動板形状のマッチド ダイ金型を用いて110℃
で1分間熱プレス成形した。その結果、口径20cm、
厚さ0.35mmのスピーカー振動板を得た。得られた
振動板について、通常の方法で、ヤング率、密度、比弾
性率および内部損失を測定した。これらの結果を、後述
の実施例13〜16の結果と併せて下記表5に示す。
【0038】
【表5】
【0039】(実施例13)上記表1に示す不飽和ポリ
エステル溶液gを用いたこと以外は実施例12と同様に
してスピーカー振動板を得た。得られた振動板を実施例
12と同様の測定に供した。結果を上記表5に示す。さ
らに、不飽和ポリエステル溶液gにおける中空球体(マ
イクロバルーン)の含有量を変化させて振動板を作成
し、それらのヤング率および内部損失を測定した。バル
ーン含有量とヤング率との関係を図3(a)に、バルー
ン含有量と内部損失との関係を図3(b)に示す。
【0040】(実施例14)上記表1に示す不飽和ポリ
エステル溶液hを用いたこと以外は実施例12と同様に
してスピーカー振動板を得た。得られた振動板を実施例
12と同様の測定に供した。結果を上記表5に示す。
【0041】(実施例15)上記表1に示す不飽和ポリ
エステル溶液iを用いたこと以外は実施例12と同様に
してスピーカー振動板を得た。得られた振動板を実施例
12と同様の測定に供した。結果を上記表5に示す。
【0042】(実施例16)上記不飽和ポリエステル溶
液aを用いたこと以外は実施例12と同様にしてスピー
カー振動板を得た。得られた振動板を実施例12と同様
の測定に供した。結果を上記表5に示す。表5から明ら
かなように、実施例12〜16のスピーカー振動板はい
ずれも優れた特性を有していることがわかる。さらに、
マイクロバルーンを用いることにより、優れたヤング
率、比弾性率または内部損失を維持しつつ低密度化(軽
量化)が可能になることがわかる。図3(a)および
(b)から明らかなように、ヤング率と内部損失とのバ
ランスを考慮すると、バルーン含有量は5〜20重量部
の範囲が好ましいことがわかる。
【0043】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、タンパ
ク質繊維と不飽和ポリエステル樹脂とを組み合わせて用
いることにより、非常に優れた音響特性を有するスピー
カー振動板を非常に高い製造効率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の振動板を備えるスピーカーの製造工程
を説明するための模式図
【図2】熱硬化性樹脂組成物中の黒鉛含有量とヤング率
との関係を示すグラフ
【図3】(a)は、熱硬化性樹脂組成物中のマイクロバ
ルーンの含有量とヤング率との関係を示すグラフ;
(b)は、熱硬化性樹脂組成物中のマイクロバルーンの
含有量と内部損失との関係を示すグラフ
【符号の説明】
1a 不織布 5 スピーカー振動板 7 スピーカー 14 エッジ部

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 不織布に熱硬化性樹脂組成物を含浸し、
    成形および硬化してなるスピーカー振動板であって、 該不織布が、タンパク質繊維を含有する繊維材から形成
    され、該熱硬化性樹脂組成物が、不飽和ポリエステル樹
    脂を主剤として含む、スピーカー振動板。
  2. 【請求項2】 不織布からなる層を複数有し、該複数の
    不織布層に熱硬化性樹脂組成物を含浸し、成形および硬
    化してなるスピーカー振動板であって、 該複数の不織布層の少なくとも1つが、タンパク質繊維
    を含有する繊維材から形成された不織布からなり、 該熱硬化性樹脂組成物が、不飽和ポリエステル樹脂を主
    剤として含む、スピーカー振動板。
  3. 【請求項3】 前記タンパク質繊維が、外表面からセリ
    シンが実質的に除去された天然絹繊維からなる絹糸であ
    る、請求項1または2に記載のスピーカー振動板。
  4. 【請求項4】 前記絹糸のセリシン含有量が1重量%以
    下である、請求項3に記載のスピーカー振動板。
  5. 【請求項5】 前記絹糸の維度が0.8〜1.2デニー
    ルである、請求項3または4に記載のスピーカー振動
    板。
  6. 【請求項6】 前記複数の不織布層が、前記絹糸から形
    成される不織布層と、高弾性率有機繊維から形成される
    不織布層とを含む、請求項2〜5のいずれかに記載のス
    ピーカー振動板。
  7. 【請求項7】 前記高弾性率有機繊維がメタ型アラミド
    繊維である、請求項6に記載のスピーカー振動板。
  8. 【請求項8】 前記絹糸から形成される不織布層と、前
    記高弾性率有機繊維から形成される不織布とを交互に有
    する、請求項6または7に記載のスピーカー振動板。
  9. 【請求項9】 前記不織布がメッシュ状である、請求項
    1〜8のいずれかに記載のスピーカー振動板。
  10. 【請求項10】 前記熱硬化性樹脂組成物が鱗状鉱物を
    含有する、請求項1〜9のいずれかに記載のスピーカー
    振動板。
  11. 【請求項11】 前記鱗状鉱物が黒鉛である、請求項1
    0に記載のスピーカー振動板。
  12. 【請求項12】 前記黒鉛が、4〜10μmの範囲の平
    均粒径を有する、請求項11に記載のスピーカー振動
    板。
  13. 【請求項13】 前記鱗状鉱物が、前記不飽和ポリエス
    テル樹脂100重量部に対して20〜50重量部の範囲
    で含有される、請求項10に記載のスピーカー振動板。
  14. 【請求項14】 前記熱硬化性樹脂組成物が、マイクロ
    バルーンをさらに含有する、請求項10に記載のスピー
    カー振動板。
  15. 【請求項15】 前記マイクロバルーンが、塩化ビニリ
    デン-アクリロニトリルコ ポリマーを主成分とする有機
    系マイクロバルーンまたはホウケイ酸ガラスを主成分と
    する無機系マイクロバルーンから選択される、請求項1
    4に記載のスピーカー振動板。
  16. 【請求項16】 前記マイクロバルーンが、前記不飽和
    ポリエステル樹脂100重量部に対して5〜20重量部
    の範囲で含有される、請求項14に記載のスピーカー振
    動板。
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