JPH11283282A - 記録媒体製造用原盤の製造方法 - Google Patents

記録媒体製造用原盤の製造方法

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JPH11283282A
JPH11283282A JP7966598A JP7966598A JPH11283282A JP H11283282 A JPH11283282 A JP H11283282A JP 7966598 A JP7966598 A JP 7966598A JP 7966598 A JP7966598 A JP 7966598A JP H11283282 A JPH11283282 A JP H11283282A
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JP
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electron beam
resist
pattern
recording medium
master
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Withdrawn
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JP7966598A
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English (en)
Inventor
Shin Masuhara
慎 増原
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 信号記録領域内に所定の凹凸パターンが形成
されてなるとともに、当該凹凸パターンに占める凹部の
面積が凸部の面積より大きい記録媒体用基板の製造に使
用される記録媒体製造用原盤を精度良く製造できるよう
にする。 【解決手段】 先ず、支持体上に形成された感光層を電
子ビームによって露光して、所定の凹凸パターンに対応
した潜像を感光層に形成する。このとき、記録媒体用基
板の凸部に対応する部分を露光する。次に、感光層に形
成された潜像を現像することにより、感光層に凹凸パタ
ーンを形成する。次に、感光層に形成された凹凸パター
ンを転写して記録媒体製造用原盤を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、再生専用光ディス
ク、光磁気ディスク又は相変化型光ディスク等のような
記録媒体の基板を製造する際に使用される記録媒体製造
用原盤の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】情報信号が記録される記録媒体として、
光学的に記録及び/又は再生がなされる光ディスクがあ
る。なお、光ディスクには、例えば、情報信号に対応し
たピット列が形成されてなる再生専用光ディスクや、情
報信号の書き込みが可能な光磁気ディスク又は相変化型
光ディスク等がある。
【0003】このような光ディスクは、光学的に透明な
樹脂製のディスク基板を有しており、このディスク基板
上に情報信号が記録される領域である信号記録領域が形
成される。信号記録領域には、トラックに沿って連続的
に形成された溝であるグルーブや、多数のピットからな
るピット列が、トラック毎に所定のトラックピッチにて
スパイラル状又は同心円状に形成される。なお、従来の
光ディスクでは、ディスク基板の一方の面をグルーブや
ピット列が形成される信号記録面とし、他方の面を読み
取り面としている。すなわち、光ディスクから情報信号
を再生する際は、グルーブやピット列が形成されていな
い側を読み取り面とし、当該読み取り面の側からレーザ
光を照射するようにしている。
【0004】このような光ディスクにおいて、ディスク
基板の表面に形成されるグルーブやピット列等の凹凸パ
ターンの形状は、記録媒体としての性能を大きく左右す
る。したがって、高記録密度化を図るためには、凹凸パ
ターンをディスク基板に高精度に形成することが要求さ
れる。
【0005】このようなディスク基板を作製する際は、
先ず、支持体であるガラス原盤上に感光層となるレジス
トを塗布し、その後、レジストに対してトラックに沿っ
て露光ビームを照射していくことにより、当該レジスト
を露光する。これにより、所定の凹凸パターンに対応し
た潜像がレジストに形成される。なお、従来、このよう
なレジストの露光には、露光ビームとしてレーザ光を用
いるレーザカッティング装置が使用されており、レーザ
光を対物レンズによってレジスト上に集光することで、
レジストを露光するようにしている。
【0006】次に、レジストに形成された潜像を現像す
ることにより、レジストに凹凸パターンを形成する。次
に、凹凸パターンが形成されたレジスト上にNiメッキ
を施し、その後、当該Niメッキを剥離する。これによ
り、レジストに形成されていた凹凸パターンが転写され
たNiメッキからなる記録媒体製造用原盤、すなわちス
タンパが得られる。その後、このように形成されたスタ
ンパを型として、樹脂材料を射出成形する。これによ
り、所定の凹凸パターンが形成されてなるディスク基板
が作製される。
【0007】上述のようにディスク基板を作製する際に
使用されるレーザカッティング装置は、例えば、図21
に示すように、所定の波長のレーザ光を出射するレーザ
光源121と、レーザ光強度が所定の安定なレベルとな
るようにレーザ光強度を制御する記録光強度制御部12
2と、ガラス原盤110に塗布されたレジスト111に
照射されるレーザ光の強度を変調する光強度変調部12
3と、ビームスプリッタ124と、ビーム径を拡大する
ためのビームエキスパンダー125と、レーザ光をレジ
スト111上に集光する集光部126とから構成され
る。
【0008】レーザ光源121から出射されたレーザ光
は、記録光強度制御部122に入射し、記録光強度制御
部122によって光強度が制御される。この記録光強度
制御部122は、レーザ光源121の出力の不安定さを
除去し、レジスト111に照射されるレーザ光の光強度
を安定なものとするためのものであり、電気光学素子1
31と、アナライザー132と、ビームスプリッタ13
3と、フォトディテクタ134と、記録光パワー制御回
路135とを備えている。
【0009】そして、レーザ光源121からのレーザ光
は、電気光学素子131及びアナライザー132を透過
してビームスプリッタ133に入射し、当該ビームスプ
リッタ133によって透過光と反射光とに分離される。
そして、ビームスプリッタ133を透過した光は、フォ
トディテクタ134に入射し、当該フォトディテクタ1
34によってその光強度が検出される。フォトディテク
タ134は、検出したレーザ光の光強度のレベルを電圧
レベルに変換して、記録光パワー制御回路135に供給
する。記録光パワー制御回路135は、フォトディテク
タ134からの入力と基準電圧レベルRefとを比較し
て、電気光学素子131を透過してくるレーザ光の光強
度が常に一定となるように、電気光学素子131に電圧
を印加する。これにより、記録光強度制御部122から
出射されるレーザ光、即ちビームスプリッタ133によ
って反射されるレーザ光の光強度は、レーザ光源121
の出力が不安定であったとしても、常に安定なレベルと
なる。
【0010】そして、ビームスプリッタ133によって
反射され、記録光強度制御部122から出射したレーザ
光は、光強度変調部123に入射し、光強度変調部12
3によって光強度の変調がなされる。この光強度変調部
123は、第1の凸レンズ136と、光強度変調器13
7と、第2の凸レンズ138とを備えている。そして、
ビームスプリッタ133によって反射されたレーザ光
は、所定の焦点距離を有する第1の凸レンズ136によ
って集光された上で光強度変調器137に入射し、当該
光強度変調器137によって、所望する露光パターンに
対応するように光強度変調が施される。
【0011】光強度変調器137によって光強度変調が
施されたレーザ光は、所定の焦点距離を有する第2の凸
レンズ138に入射し、この第2の凸レンズ138によ
って平行光とされた上で、ビームスプリッタ124に入
射し、当該ビームスプリッタ124によって反射され
る。そして、ビームスプリッタ124によって反射され
たレーザ光は、ビームエキスパンダー125に入射す
る。ビームエキスパンダー125は、レーザ光のビーム
径を拡大するためのものであり、所定の焦点距離を有す
る第3の凸レンズ139と、所定の焦点距離を有する第
4の凸レンズ140とを備えている。このビームエキス
パンダー125において、第3の凸レンズ139と第4
の凸レンズ140との間隙を変化させると、ビームエキ
スパンダー125によるビーム径の拡大率が変化する。
そして、このレーザカッティング装置では、ビームエキ
スパンダー125によるビーム径の拡大率を調整するこ
とにより、レジスト111上に集光されるレーザ光のス
ポット径を調整することが可能となっている。
【0012】ビームエキスパンダー125によりビーム
径が調整されたレーザ光は、集光部126に入射する。
集光部126は、レーザ光をレジスト111上に集光す
るためのものであり、対物レンズ142を備えている。
そして、対物レンズ142に入射したレーザ光は、当該
対物レンズ142によって集光されてレジスト111に
照射される。
【0013】なお、このレーザカッティング装置は、図
示していないが、レジスト111が塗布されたガラス原
盤110を保持し回転させるターンテーブルと、レーザ
光の照射位置をガラス原盤110の半径方向に移動させ
る移動機構とを備えている。そして、このレーザカッテ
ィング装置を用いてレジスト111を露光する際は、タ
ーンテーブルによって、レジスト111が塗布されたガ
ラス原盤110を回転させながら、移動機構によって、
レーザ光の照射位置をガラス原盤110の半径方向に一
回転あたり等距離ずつ移動させる。これにより、ガラス
原盤110上のレジスト111に、グルーブやピット列
に対応した潜像が一定のトラックピッチでスパイラル状
又は同心円状に形成される。
【0014】ところで、光ディスクに対しては、更なる
高記録密度化が要求されている。そして、光ディスクの
高記録密度化を図るには、より微少なピット、或いはよ
り細いグルーブを形成する必要がある。例えば、更なる
高記録密度化を図った次世代の光ディスクでは、情報信
号に対応したピット列の最短ピット長を0.2μm程度
にまで小さくすることが望まれている。
【0015】そして、このような微小なピット、或いは
より細いグルーブを実現するために、上述のようにレジ
ストの露光を行う露光工程において、露光ビームのスポ
ット径をより小さくすることが要求されている。ここ
で、露光ビームとしてレーザ光を用いた場合、その最小
スポット径dは、レーザ光の波長λと対物レンズの開口
数NAに依存し、下記式(1)で表される。
【0016】d=1.22×λ/NA ・・・(1) したがって、露光ビームとしてレーザ光を用いた場合、
当該露光ビームのスポット径を小さくするためには、レ
ーザ光の波長λを短くするか、対物レンズの開口数NA
を大きくすればよい。レーザ光の波長λに関しては、現
在のところ、遠紫外領域の250nm近辺までの短波長
化が検討されている。しかし、さらに短い波長において
は、室温連続発振するレーザ光源自体が開発されておら
ず、また、そのようなレーザ光源が開発されたとして
も、そのような短波長に対応する光学系やレジストの開
発も必要であり、実現は難しい。また、対物レンズの開
口数NAに関しては、既に理論上の限界値である1.0
にほぼ近いところで使用されており、向上の余地が殆ど
残っていない。
【0017】以上のように、レーザ光の波長λや開口数
NAにより最小スポット径dが規定される従来の光学系
では、スポット径の小径化がほぼ限界にまで達してしま
っている。そのため、従来の露光方法では、更なる高記
録密度化を図った次世代の光ディスクを作製することは
ほぼ不可能である。
【0018】そこで近年、電子線描画装置を用いて光の
限界を打破しようとする提案がなされている。これは、
露光工程においてレジストを露光する露光ビームとし
て、レーザ光よりもより細いビームの形成が可能である
電子ビームを使用しようというものである。電子ビーム
によるレジストの露光は、半導体の次世代リソグラフィ
技術としては既に開発が進んでいる。光ディスクの製造
への応用はまだ歴史が浅いものの、近い将来は本流の技
術となる可能性が高い。
【0019】そして、実際にレーザカッティング装置の
代わりに電子線描画装置を使用することにより、レーザ
カッティング装置を用いて作製されているDVD(商
標)に比べて、2.6倍の面密度を達成した光ディスク
が、1997年度春の応用物理学会等においてパイオニ
ア社より発表されている。それらの比較を表1に示す。
なお、DVDの作製に使用されるレーザカッティング装
置において、レーザ光の波長λは351nm、対物レン
ズの開口数NAは0.90である。
【0020】
【表1】
【0021】表1に示したように、露光ビームとして電
子ビームを使用した場合には、そのスポット径をレーザ
光を用いた場合よりも遥かに小さくすることができる。
したがって、電子線描画装置を用いることにより、飛躍
的な高記録密度化が期待できる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、電子線
描画装置の実用化にあたっては電子ビームの取り扱い
や、高真空中での機構系の問題など、様々な問題が残さ
れているのが現状である。そして、それらの問題の一つ
として、近接効果によって、パターン解像度が劣化した
り、パターン寸法に面内不均一性が生じたりするという
問題がある。以下、図22を参照して近接効果について
説明する。
【0023】基板151の上に形成されたレジスト15
2に入射した電子ビームEBは、レジスト分子によって
散乱され、図22中の矢印A1に示すように、レジスト
内で広がる。このような電子ビームEBの散乱は、一般
に前方散乱と呼ばれる。また、レジスト152を透過し
た電子ビームEBは、図22中の矢印A2に示すよう
に、基板151から180度以上の散乱角を持ってレジ
スト152の表面へ向けて跳ね返ってくる。このような
電子ビームEBの跳ね返りは、一般に後方散乱と呼ばれ
る。
【0024】なお、後方散乱では、前方散乱に比べて、
かなり広範囲にわたって電子が散乱する。したがって、
後方散乱によって散乱された電子は、かなり広範囲にわ
たって、いわばバックグラウンドノイズとしてレジスト
152を感光させることとなる。そして、後方散乱によ
って散乱された電子はバックグラウンドノイズとしてレ
ジスト152を感光させることとなるので、電子ビーム
EBが照射される領域の面積が大きいほど、後方散乱の
影響は顕著に現れることとなる。
【0025】そして、以上のような前方散乱及び後方散
乱に起因して発生する現象が近接効果と呼ばれる。具体
的には、レジスト152に入射した電子ビームEBは、
前方散乱及び後方散乱によって、描画したパターンの周
辺に位置するレジスト152を感光させてしまい、その
結果、パターン解像度の劣化や、パターン寸法の面内不
均一性などを生じさせる。そして、このような現象が近
接効果と呼ばれる。
【0026】なお、レーザ光で露光する場合も、周辺へ
の光の漏れ込みが生ずるが、その範囲はスポット内又は
スポットのごく近傍に限られており、レーザ光で露光す
る場合には、このような近接効果による影響が問題にな
るようなことは無かった。
【0027】これに対して、電子ビームの場合には、通
常、前方散乱や後方散乱による電子の広がりの範囲が電
子ビームのスポットに比べて大きくなってしまうため、
前方散乱や後方散乱によって、パターン解像度の劣化や
パターン寸法の面内不均一性などの問題が生じてしま
う。
【0028】なお、パターン解像度の劣化は、主に前方
散乱に起因する。電子ビームでレジストを露光して所定
パターンの描画を行うと、描画すべき領域だけでなく、
前方散乱によって散乱された電子より、描画すべき領域
の近傍のレジストまでも露光されてしまう。すなわち、
描画すべき領域における電子線照射量と、本来ならば照
射量がゼロであるべき他の領域における電子線照射量と
の差が小さくなってしまう。その結果、描画時のコント
ラストが低下して、解像度が劣化してしまう。
【0029】一方、パターン寸法にばらつきは、主に後
方散乱に起因する。後方散乱によって散乱された電子
は、いわばバックグラウンドノイズとしてレジストを感
光させることとなるが、このときに、単位面積あたりに
描画領域が占める比率(以下、パターン密度と称す
る。)が場所によって異なるようなパターンを描画しよ
うとすると、パターン密度の違いによって、パターン寸
法にばらつきが生じる。
【0030】すなわち、パターンが密の部分では、後方
散乱によって散乱される電子の散乱量が大きくなるた
め、パターンが粗の部分と比較して周辺レジストに蓄積
されるバックグランドノイズが大きくなる。その結果、
全面にわたって一定の強度の電子ビームにより露光した
場合、パターンが密の部分では、後方散乱によるバック
グラウンドノイズの分だけ合計の照射量が増加してお
り、形成されるパターンが大きくなる。一方、パターン
が粗の部分では、後方散乱によるバックグラウンドノイ
ズが少ないので、バックグラウンドノイズに起因するパ
ターンの拡大は少なくなる。その結果、パターンが密の
部分と粗の部分とで、パターン寸法にばらつきが生じ
る。
【0031】以上のような近接効果の影響は、半導体リ
ソグラフィの分野で既に問題となっているが、これは、
記録媒体製造用原盤を製造する際にも必ず生ずる問題で
ある。すなわち、このような近接効果の影響が、光ディ
スク等の記録媒体の高記録密度化の大きな障害となる。
特にパターン寸法のばらつきは、記録媒体から得られる
再生信号に大きな影響を与えるため、面内の全ての場所
で誤差を数nm以内に抑えることが望まれる。
【0032】本発明は、以上のような従来の実情に鑑み
て提案されたものであり、近接効果の影響を抑え、記録
媒体製造用原盤を精度良く製造できるようにすることを
目的としている。
【0033】
【課題を解決するための手段】本発明に係る記録媒体製
造用原盤の製造方法は、信号記録領域内に所定の凹凸パ
ターンが形成されてなるとともに、当該凹凸パターンに
占める凹部の面積が凸部の面積より大きい記録媒体用基
板の製造に使用される記録媒体製造用原盤の製造方法で
ある。そして、支持体上に形成された感光層を露光し
て、所定の凹凸パターンに対応した潜像を感光層に形成
する露光工程と、上記露光工程により感光層に形成され
た潜像を現像することにより、感光層に凹凸パターンを
形成する現像工程と、上記現像工程により感光層に形成
された凹凸パターンを転写して記録媒体製造用原盤を製
造する転写工程とを有し、上記露光工程において感光層
を露光する際に、上記凸部に対応する部分を露光するこ
とを特徴とする。なお、上記露光工程においては、電子
ビームを用いて感光層を露光することが好ましい。
【0034】本発明を適用して製造された記録媒体製造
用原盤を用いて作製される記録媒体用基板は、凹凸パタ
ーンに占める凹部の面積が凸部の面積より大きい記録媒
体用基板である。そして、本発明に係る記録媒体製造用
原盤の製造方法では、露光工程において感光層を露光す
る際に、上記凸部に対応する部分を露光するようにして
いる。したがって、露光工程において感光層を露光する
際に上記凹部に対応する部分を露光するような方法に比
べて、本発明に係る記録媒体製造用原盤の製造方法で
は、描画領域面積が小さくて済む。したがって、本発明
に係る記録媒体製造用原盤の製造方法では、露光工程に
おいて、バックグラウンドノイズとなる後方散乱の影響
を軽減することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】まず、本発明を適用して製造された記録媒
体製造用原盤を用いて作製される記録媒体について説明
する。なお、以下の説明では、記録媒体として光ディス
クを例に挙げて説明するが、本発明において対象となる
記録媒体は、信号記録領域内に所定の凹凸パターンを有
していればよく、例えば磁気ディスク等であってもよ
い。
【0037】図1に示すように、本発明を適用して製造
された記録媒体製造用原盤を用いて作製される光ディス
ク1は、ディスク基板2を有しており、このディスク基
板2の上に記録層が形成されてなり、更に、当該記録層
上に紫外線硬化樹脂等からなる保護層が形成されてな
る。
【0038】ここで、ディスク基板2は、光ディスク1
の信号記録領域3に相当する位置に所定の凹凸パターン
が形成されてなる。具体的には、ディスク基板2には、
例えば、図2に示すように、トラックに沿って溝状の凹
部であるグルーブ4が形成される。なお、隣接するグル
ーブ4の間の部分は、ランド6となる。或いは、ディス
ク基板2には、例えば、図3に示すように、情報信号に
対応した凸部であるピット5が形成される。
【0039】そして、このディスク基板2は、情報信号
の記録がなされる信号記録領域内において、凹凸パター
ンに占める凹部の面積が、当該凹凸パターンに占める凸
部の面積よりも大きくなっている。すなわち、例えば、
図2に示すように、ディスク基板2にグルーブ4及びラ
ンド6が形成されている場合、グルーブ4の部分の面積
が、ランド6の部分の面積よりも大きくなっている。ま
た、例えば、図3に示すように、ディスク基板2にピッ
ト5が形成されている場合、ピット以外の部分の面積
が、ピット5の部分の面積よりも大きくなっている。
【0040】また、図示していないが、例えば、ディス
ク基板2には、グルーブ4及びランド6が形成されると
ともに、グルーブ4の部分に凸状のピット5が形成され
ていてもよい。このような場合には、ランド6及びピッ
ト5以外の部分の面積の合計が、ランド6及びピット5
の部分の面積の合計よりも大きくなされる。
【0041】そして、このディスク基板2の上には、記
録及び/又は再生に必要な記録層が形成されている。具
体的には、光ディスク1が相変化型光ディスクである場
合には、例えば、相変化記録膜及び光反射膜等が記録層
として形成される。また、光ディスク1が光磁気ディス
クである場合には、例えば、垂直磁気記録膜及び光反射
膜等が記録層として形成される。また、光ディスク1が
情報信号を示すピット列が予め形成されてなる再生専用
光ディスクである場合には、例えば、光反射膜が記録層
として形成される。
【0042】このような光ディスク1において、ディス
ク基板2にグルーブ4及びランド6が形成されている場
合は、例えば、グルーブ4を記録エリアとし、グルーブ
4の間の部分であるランド6をトラッキング用光反射エ
リアとする。このような方式は、グルーブ記録方式と呼
ばれている。また、例えば、グルーブ4の間の部分であ
るランド6を記録エリアとし、グルーブ4をトラッキン
グ用光反射エリアとしてもよい。このような方式は、ラ
ンド記録方式と呼ばれている。また、例えば、グルーブ
4とランド6の両方を記録エリアとしてもよい。このよ
うな方式は、ランド・グルーブ記録方式と呼ばれてい
る。ランド・グルーブ記録方式では、記録密度をランド
記録やグルーブ記録の約2倍にまで増大することが可能
となる。
【0043】なお、光ディスク1は、ディスク基板2に
グルーブ4及びランド6が形成されずに、情報信号を示
すピット5だけが予め形成されてなる再生専用光ディス
クであってもよい。この場合は、ピット5をトラッキン
グ用回折格子としても用いる。すなわち、再生専用光デ
ィスクでは、情報信号を示すピット5からの回折光に基
づいてトラッキング制御を行う。ただし、再生専用光デ
ィスクにおいても、グルーブ4やランド6を形成して、
グルーブ4やランド6をトラッキング用光反射エリアと
することも可能である。
【0044】そして、光ディスク1では、例えば、ディ
スク基板2の一方の面をグルーブ4やピット5が形成さ
れる信号記録面2aとし、他方の面を読み取り面2bと
する。すなわち、光ディスク1から信号を再生する際
は、グルーブ4やピット5が形成されていない側を読み
取り面2bとし、当該読み取り面2bの側からレーザ光
を照射する。
【0045】すなわち、光ディスク1から情報信号を再
生するときは、光ディスク1を回転させながら、光学ピ
ックアップからのレーザ光を光ディスク1に対して読み
取り面2bの側から照射し、その反射光を検出する。そ
して、光ディスク1が、相変化型光ディスクである場合
や、情報信号を示すピット5が予め形成されてなる再生
専用光ディスクである場合には、反射光の強度変化を検
出することにより、情報信号を再生する。また、光ディ
スク1が光磁気ディスクである場合には、反射光のカー
回転角の変化を検出することにより、情報信号を再生す
る。
【0046】また、光ディスク1に情報信号を記録する
ときは、光ディスク1を回転させながら、光学ピックア
ップからのレーザ光を光ディスク1に対して読み取り面
2bの側から照射する。このとき、光ディスク1が相変
化型光ディスクの場合には、記録すべき情報信号に対応
させて強度変調を施したレーザ光を照射する。これによ
り、レーザ光が照射された領域に、情報信号が記録され
る。また、光ディスク1が光磁気ディスクの場合には、
情報信号を記録しようとする領域にレーザ光を照射する
とともに、レーザ光が照射されている領域に磁界を印加
する。このとき、記録すべき情報信号に対応させてレー
ザ光又は磁界に対して強度変調を施す。これにより、磁
界が印加されるとともにレーザ光が照射された領域に、
情報信号が記録される。
【0047】以上のような光ディスク1の基板となるデ
ィスク基板2は、グルーブ4及びランド5やピット5に
対応した凹凸パターンが形成されてなる記録媒体製造用
原盤を型として、樹脂材料を射出成形することにより得
られる。すなわち、記録媒体製造用原盤を型として樹脂
材料を射出成形することにより、記録媒体製造用原盤に
形成されている凹凸パターンが転写されてなるディスク
基板2が作製される。ここで、ディスク基板2の材料
は、樹脂材料に限定されるものではないが、成形性やコ
スト等を考慮すると、プラスチック等の樹脂材料が好適
である。
【0048】なお、記録媒体製造用原盤に形成されてい
る凹凸パターンを転写してディスク基板2を作製する方
法は、射出成形以外の方法でもよく、例えば、加熱して
軟化させた樹脂材料に記録媒体製造用原盤を押し付ける
ことにより凹凸パターンを転写する、いわゆる熱転写方
法を用いてもよい。また、記録媒体製造用原盤上にフォ
トポリマーを塗布した後、紫外線を照射してフォトポリ
マーを硬化させ、その後、当該フォトポリマーを剥離す
ることで、凹凸パターンが転写されたディスク基板2を
作製する、いわゆる2P法を用いてもよい。
【0049】このようにディスク基板2の作製に使用さ
れる記録媒体製造用原盤を製造する際は、先ず、図4に
示すように、表面を十分平坦に研磨して洗浄したガラス
原盤10を用意する。そして、このガラス原盤10の上
に、図5に示すように、電子ビームに感光するレジスト
11を塗布する。ここで、レジスト11の膜厚は、ディ
スク基板2に形成されるランド6やピット5の最大高さ
に対応するように形成することが好ましく、具体的に
は、例えば0.1μm程度とする。
【0050】次に、露光工程として、後述する電子線描
画装置を用いて、図6に示すように、対物レンズ12に
よって集光された電子ビーム13をレジスト11に照射
する。このとき、電子ビーム13の照射は、ガラス原盤
10を回転させるとともに、電子ビーム13の照射位置
を半径方向に移動させながら行う。すなわち、電子ビー
ム13の照射位置は、ガラス原盤10の一回転あたりに
所定のトラックピッチPに相当する量だけ移動するよう
に連続して移動させる。これにより、所定のトラックピ
ッチPにて、スパイラル状にレジスト11が露光され、
露光された部分に、ランド6やピット5の潜像14がレ
ジスト11に形成されることとなる。なお、同心円状に
露光するときには、電子ビーム13の照射位置を、ガラ
ス原盤10を一回転させる毎に所定のトラックピッチP
に相当する量だけ移動するように、断続的に移動させれ
ばよい。
【0051】このように潜像14を形成する際に、トラ
ックに沿って連続的に形成されるランド6に対応した潜
像を形成するときには、電子ビーム13の照射を連続し
て行う。また、ピット5に対応した潜像を形成するとき
には、ピット列が示す情報信号に対応するように、電子
ビーム13に対して強度変調を施して、電子ビーム13
の照射を断続的に行う。
【0052】次に、露光工程で露光されたレジスト11
をアルカリ性現像液等で現像する。これにより、レジス
ト11に凹凸パターンが形成される。具体的には、例え
ば、図7に示すように、ディスク基板2に形成されるラ
ンド6に対応した凹部15と、ディスク基板2に形成さ
れるグルーブ4に対応した凸部16とが形成される。或
いは、例えば、図8に示すように、ディスク基板2に形
成されるピット5に対応した凹部17が形成される。
【0053】次に、レジスト11に形成された凹凸パタ
ーンを転写することにより、所定の凹凸パターンが形成
された記録媒体製造用原盤を得る。具体的には、例え
ば、図9に示すように、レジスト11の上にNi等のメ
ッキを施し、メッキ層18を形成する。その後、このメ
ッキ層18を剥離することにより、レジスト11に形成
されていた所定パターンの凹凸が転写された記録媒体製
造用原盤が得られる。
【0054】つぎに、上記露光工程で使用される電子線
描画装置について、具体的な構成例を挙げて詳細に説明
する。
【0055】電子線描画装置は、例えば、図10に示す
ように、電子ビームを発生し集束させて出射する電子ビ
ーム出射部21と、レジスト11が上面に塗布されたガ
ラス原盤10を回転駆動させる回転駆動機構22と、図
中矢印Aに示すようにガラス原盤10を回転駆動機構2
2ごと平行移動させる平行移動機構23とを備え、これ
ら全体が、設置場所の外部振動を除去するための除振テ
ーブル24の上に載置されてなる。
【0056】なお、図示していないが、電子ビーム出射
部21、回転駆動機構22及び平行移動機構23は、コ
ンピュータ制御装置に接続されており、当該コンピュー
タ制御装置によって、それらの動作は制御される。すな
わち、コンピュータ制御装置によって電子ビーム出射部
21が制御されることにより、例えば、電子ビームのオ
ン/オフ、集束された電子ビームのスポット径の調整、
電子ビームの偏向動作等が制御される。また、コンピュ
ータ制御装置によって回転駆動機構22が制御されるこ
とにより、ガラス原盤10の回転速度等が制御される。
また、コンピュータ制御装置によって平行移動機構23
が制御されることにより、ガラス原盤10の移動速度等
が制御される。
【0057】上記電子線描画装置において、電子ビーム
出射部21は、例えばランタンヘキサボライド(LaB
6)を用いてなる電子銃25と、電子銃25から出射さ
れた電子ビームを集束するためのコンデンサーレンズ2
6と、電子ビームのオン/オフを切り換えるためのブラ
ンキング電極27と、アパーチャ28と、電子ビームを
偏向動作させるためのビーム偏向電極29と、レジスト
11に入射する電子ビームのスポット径を調整するため
のフォーカス調整レンズ30と、電子ビームを集束させ
るための対物レンズ31とを備えており、これらが高真
空に排気された筐体32の内部に配されてなる。なお、
コンデンサーレンズ26、フォーカス調整レンズ30及
び対物レンズ31は、いわゆる静電レンズ又は電磁レン
ズであり、電子ビームに対して電界又は磁界を印加する
ことにより、電子ビームの経路を制御する。
【0058】そして、レジスト11を電子ビームによっ
て露光する際は、上記電子ビーム出射部21の電子銃2
5から電子ビームを出射させる。電子銃25から出射さ
れた電子ビームは、コンデンサーレンズ26によって集
束された上で、ブランキング電極27の間を通って、ア
パーチャ28に達する。ここで、ブランキング電極27
は、電子ビームの強度変調を行うためのものである。換
言すれば、ブランキング電極27は、レジスト11に照
射する電子ビームのオン/オフを切り換えるためのもの
である。
【0059】具体的には、ブランキング電極27に対し
て電圧を印加していない場合には、電子ビームの少なく
とも一部がアパーチャ28の開口部を通過するように
し、また、ブランキング電極27に対して電圧を印加し
た場合には、ブランキング電極間の電界によって電子ビ
ームが偏向し、電子ビーム全体がアパーチャ28の開口
部から外れるようにする。その結果、ブランキング電極
27に対して電圧を印加していない場合、アパーチャ2
8の開口部を電子ビームが通過して、電子ビーム出射部
21から電子ビームが出射し、また、ブランキング電極
27に対して電圧を印加した場合、アパーチャ28によ
って電子ビームが遮られ、電子ビーム出射部21から電
子ビームが出射しなくなる。
【0060】そして、ブランキング電極27に対して電
圧を印加していない場合、電子ビームはアパーチャ28
の開口部を通過し、その後、電子ビームは、ビーム偏向
電極29の間を通過する。ここで、ビーム偏向電極29
は、電子ビームを偏向動作させるためのものである。す
なわち、この電子線描画装置では、レジスト11を露光
する際に、ビーム偏向電極29によって電子ビームに対
して電界を印加することにより、電子ビームを偏向させ
ることが可能となっている。例えば、光ディスクには、
ランド6やグルーブ4を蛇行させることでランド6やグ
ルーブ4にアドレス情報を付加したものもあり、このよ
うな光ディスクを作製する場合に、ビーム偏光電極29
を用いて電子ビームを偏向させる。
【0061】そして、ビーム偏向電極29の間を通過し
た電子ビームは、フォーカス調整用レンズ30及び対物
レンズ31によって所定のスポット径となるように集束
された上で、電子ビーム出射部21から出射される。そ
して、レジスト11を電子ビームによって露光する際
は、このように電子ビーム出射部21から出射された電
子ビームが、ガラス原盤10の上に塗布されたレジスト
11に入射することとなる。
【0062】ここで、レジスト11が塗布されたガラス
原盤10は、回転駆動機構22に取り付けられる。回転
駆動機構22は、ガラス原盤10が載置され固定される
ターンテーブルと、ターンテーブルを回転駆動するエア
スピンドルとを備えている。このエアスピンドルは、例
えば3600rpm程度にまでターンテーブルを高速に
回転させることが可能となっているとともに、その回転
速度を高精度に制御することが可能となっていることが
好ましい。具体的には、例えば、光学式ロータリーエン
コーダーを用いたサーボ機構により、1回転当たり10
-7以下の回転ジッターとなるように、エアスピンドルの
回転速度を制御する。そして、回転駆動機構22は、エ
アスピンドルによってターンテーブルを所定の回転速度
で回転駆動することにより、ターンテーブル上に載置さ
れたガラス原盤10を回転駆動する。
【0063】この回転駆動機構22は、いわゆるリニア
モーター型エアスライド装置からなる平行移動機構23
に取り付けられている。そして、この電子線描画装置
は、平行移動機構23により、図中矢印Aに示すよう
に、ガラス原盤10が載置された回転駆動機構全体をガ
ラス原盤10の半径方向に移動操作することが可能とな
っている。ここで、平行移動機構23は、その移動量を
高精度に制御することが可能となっていることが好まし
い。具体的には、例えば、平行移動機構23にレーザス
ケールを取り付け、当該レーザスケールによって移動量
を測定しながら回転駆動機構22の移動操作を行うこと
により、その移動操作を数nm以下の送り精度にて行う
ようにする。
【0064】ところで、一般に電子ビームは、伝播中に
他の原子や分子に衝突すると、当該衝突により散乱さ
れ、拡がりを持ったエネルギー損失を被る。したがっ
て、電子銃25から出射された電子ビームの経路は、高
真空とされていることが望ましい。そこで、上述したよ
うに電子ビーム出射部21の筐体32の内部を排気し
て、電子銃25の近傍を10-6Pa程度以下の超高真空
に保持することが好ましく、更には、回転駆動機構22
及び平行移動機構23をも筐体33の中に配置して、そ
の筐体33の内部も10-3Pa程度以下の真空度に保持
することが好ましい。
【0065】ところで、以上のような電子線描画装置を
用いてレジストを露光する際は、上述したように近接効
果が問題となる。そこで、電子線描画装置を用いてレジ
ストを露光する際は、近接効果による悪影響を軽減する
ための対策を図る必要がある。以下、その対策について
詳細に説明する。
【0066】<電子ビーム加速電圧値の制限>レジスト
に電子ビームを入射させたときの電子の散乱距離は、電
子ビームの加速電圧に大きく依存する。そして、加速電
圧が高くなるほど、前方散乱による電子の散乱距離(以
下、前方散乱距離と称する。)が小さくなり、後方散乱
による電子の散乱距離(以下、後方散乱距離と称す
る。)が大きくなる。逆に、加速電圧が低くなるほど、
前方散乱距離が大きくなり、後方散乱距離が小さくな
る。
【0067】このように、電子ビームの加速電圧に依存
して、レジストに電子ビームを入射させたときの電子の
散乱距離が変化するので、加速電圧の大きさに依存し
て、近接効果による影響が変化する。したがって、電子
線描画装置を用いてレジストを露光する際は、加速電圧
の大きさを、近接効果による悪影響が最小となるように
設定することが望ましい。
【0068】以下、このような観点に基づいて、現在実
用化されている電子線描画装置を加速電圧の高低によっ
て3つのクラスに分類し、電子の散乱距離の違い及びそ
の違いに伴う近接効果の違いを考察した結果について説
明する。
【0069】まず、加速電圧と前方散乱距離及び後方散
乱距離との関係を表2に示す。なお、表2に示した前方
散乱距離及び後方散乱距離の値は、レジスト厚が0.5
μmの場合のデータである。前方散乱距離は、レジスト
厚にも依存しており、レジスト厚が薄くなるほど前方散
乱距離は小さくなる。そして、記録媒体製造用原盤の作
製という用途において、レジスト厚は0.05〜0.1
μm程度とすることが想定されるので、記録媒体製造用
原盤の作製時における電子の前方散乱距離は、表2に示
す値よりも小さくなっていることが予想される。ただ
し、前方散乱距離が小さいことは好ましいことである
し、また、レジスト厚が異なっていても加速電圧と電子
の散乱距離との関係についての傾向は同じであると考え
られるので、ここでは、レジスト厚が0.5μmの場合
のデータに基づいて考察を進めた。
【0070】
【表2】
【0071】表2に示すように、加速電圧が10kV以
下と小さい場合、後方散乱距離は非常に小さい。しか
も、加速電圧が小さいので、前方散乱に比較して、後方
散乱による散乱電子数は非常に少ない。したがって、加
速電圧が小さい場合には、後方散乱距離の影響は考えな
くてよい。すなわち、加速電圧が小さい場合には、パタ
ーン密度が場所によって異なるようなパターンを描画し
たとしても、後方散乱に起因するパターン寸法のばらつ
きは殆ど生じない。換言すれば、加速電圧が10kV以
下ならば、後方散乱による周辺パターンからの影響は無
視できるほど小さく、周辺パターン露光時の後方散乱に
起因するパターン寸法のばらつきは殆ど起こらない。
【0072】しかし、加速電圧が小さいと、前方散乱の
影響が大きく、レジスト厚が0.5μmの場合には、表
2に示すように、前方散乱距離が0.3μm以上にもな
ってしまう。そのため、加速電圧が小さいと、ビーム自
体がもともとの径よりも大きく広がってしまい、解像度
が劣化してしまう。ただし、上述したように、記録媒体
製造用原盤の作製という用途において、レジスト厚は
0.05〜0.1μm程度と薄いので、前方散乱距離は
0.3μmよりは小さくなっているはずで、解像度の劣
化が著しく起こることはないと予想される。
【0073】また、加速電圧が20kV〜40kV程度
の場合には、表2からも分かるように、前方散乱の影響
は加速電圧が10kV以下の場合に比べて小さくなる
が、後方散乱の影響が無視できない程度にまで大きくな
ってしまう。すなわち、加速電圧を20kV〜40kV
程度とした場合には、後方散乱によって、電子ビームス
ポットの周囲が1〜5μm程度の範囲にわたって感光さ
れてしまう。そのため、加速電圧が20kV〜40kV
程度の場合には、パターン密度が場所によって異なるよ
うなパターンを描画した場合に、周辺パターンからの後
方散乱の影響が無視できず、周辺パターン露光時の後方
散乱に起因してパターン寸法にばらつきが生じてしま
う。
【0074】また、加速電圧が50kV以上と大きい場
合には、表2からも分かるように、前方散乱の影響はほ
ぼ無視できる。一方、後方散乱距離は、加速電圧が20
kV〜40kV程度の場合よりも更に大きくなる。しか
し、このときの後方散乱距離は、記録媒体製造用原盤の
作製という用途において想定されるパターン寸法に対し
て十分に大きいので、後方散乱によるバックグラウンド
ノイズの分布は、少なくともパターン周辺では一様とみ
なすことができる。具体的には、後方散乱距離が10μ
mにもなるような場合には、少なくとも数十μm角程度
の領域内では、後方散乱によるバックグラウンドノイズ
の均一性は維持される。
【0075】そして、後方散乱によるバックグラウンド
ノイズの分布が、パターン周辺において一様とみなすこ
とができるならば、後述するように、後方散乱によるバ
ックグラウンドノイズを予め見積もって、電子線照射量
を補正することが可能となる。すなわち、加速電圧が十
分に大きい場合には、後方散乱によるバックグラウンド
ノイズを予め見積もって、電子線照射量を補正すること
により、後方散乱による影響を軽減することができる。
【0076】以上のように加速電圧によって近接効果の
影響は様相を異にするが、加速電圧を20kV〜40k
V程度にすると、上述したように前方散乱と後方散乱の
両方の影響が大きく現れるので、加速電圧を20kV〜
40kV程度とするのは避けるべきである。したがっ
て、加速電圧は、所望するパターンに応じて、10kV
以下又は50kV以上に設定することが好ましい。すな
わち、ビーム径に対してパターン寸法が十分大きく、多
少の解像度劣化が問題にならないような場合には、10
kV以下の低加速電圧とすることが好ましく、また、高
解像度が要求される場合には、後方散乱の影響は除外す
るように電子線照射量の補正を行うなどの処置を施した
上で、50kV以上の高加速電圧とすることが好まし
い。
【0077】<電子線照射量の補正>50kV以上の高
加速電圧で描画する場合には、上述したように、電子の
後方散乱がバックグラウンドノイズとなるため、電子ビ
ームを照射した箇所だけでなく、その周辺のレジストも
感光されてしまい、その結果、パターン密度によってパ
ターン寸法にばらつきが生じてしまう。
【0078】例えば、パターンが密の部分では、後方散
乱によって散乱される電子の散乱量が大きくなるため、
パターンが粗の部分と比較して周辺レジストに蓄積され
るバックグランドノイズが大きくなる。その結果、全面
にわたって電子ビーム強度を一定にして露光した場合、
パターンが密の部分では、後方散乱によるバックグラウ
ンドノイズの分だけ合計の照射量が増加して、形成され
るパターンが大きくなる。一方、パターンが粗の部分で
は、後方散乱によるバックグラウンドノイズが少ないの
で、バックグラウンドノイズに起因するパターンの拡大
は少なくなる。その結果、パターンが密の部分と粗の部
分とで、パターン寸法にばらつきが生じる。
【0079】このように、パターン密度が不均一である
と、個々のパターン寸法が部分部分でばらつくことにな
る。光ディスクのように、ピットの大きさのばらつきが
再生信号のジッターとなり、再生信号特性に重大な悪影
響を及ぼすものにおいて、このようなパターン寸法のば
らつきは致命的であり、理想的にはピットの長さ及び幅
ともに、せいぜい10nm以内のばらつきに抑えること
が望まれる。
【0080】そして、このようなパターン寸法のばらつ
きを抑えるには、パターン密度に応じて電子線照射量を
補正してやればよい。
【0081】電子線照射量の補正を行うにあたっては、
先ず、周辺パターン露光時の後方散乱による電子によっ
てレジストに蓄積される、ある地点でのバックグラウン
ドノイズを、周辺パターンそれぞれの大きさと電子線照
射量の設定値とから計算する。そして、このように計算
されたバックグラウンドノイズを考慮して、各露光箇所
において電子線照射量の合計が一定となるように、各露
光箇所における電子線照射量を、もともとの設定値から
適当量だけ補正してやる。これにより、後方散乱による
バックグラウンドノイズの影響を軽減して、パターン寸
法のばらつきを抑えることが可能となる。
【0082】しかし、上述のような電子線照射量の補正
を厳密に行うには、膨大な計算量が必要となるため、実
際上は困難である。そこで、露光対象となる領域を微小
なグリッドに分割して、グリッド単位で電子線照射量を
補正するようにしてもよい。
【0083】グリッド単位で電子線照射量を補正する場
合には、先ず、図11に示すように、露光対象となる領
域を微小なグリッドに分割し、各グリッド毎に描画領域
が占める面積率を求める。なお、図11は、露光対象と
なる領域の一部を拡大し、当該領域が微小なグリッドに
分割された状態を示している。また、図12に1グリッ
ドを拡大した図を示す。図12では、描画領域を斜線を
施して示しており、この描画領域の部分に電子ビームが
照射されることとなる。そして、描画領域が占める面積
率とは、描画領域が占める面積と、その他の領域が占め
る面積との比率のことである。なお、電子ビームが照射
される描画領域は、ディスク基板に形成される凸部(す
なわちピットやランド)に相当する部分となる。
【0084】ここで、グリッドの大きさは、電子線照射
量の補正を精度良く行うためには小さいほど好ましい
が、グリッドを小さくしてグリッド数を多くすると、グ
リッド数の増加に対して2乗の割合で計算量が増加して
しまう。したがって、グリッドの大きさは、電子線照射
量補正のための演算処理を行う演算処理装置の処理能力
に応じて決定するようにする。
【0085】そして、以上のように露光対象となる領域
を微小なグリッドに分割した上で、各グリッド毎に算出
した上記面積率に基づいて、グリッド単位で他のグリッ
ドからの後方散乱の寄与を求める。そして、その結果に
基づいて、グリッド単位で電子線照射量の補正量を計算
する。
【0086】なお、他のグリッドからの後方散乱の寄与
を求めるにあたっては、後方散乱の影響が及ぶ範囲につ
いてだけ考慮すればよく、全グリッドからの後方散乱の
寄与を求める必要はない。すなわち、他のグリッドから
の後方散乱の寄与を求めるにあたっては、電子線照射量
の補正量の計算の対象となっているグリッド(以下、補
正対象グリッドと称する。)を中心とした一定の領域
(以下、計算対象領域と称する。)に含まれるグリッド
についてだけ、補正対象グリッドに対する後方散乱の寄
与を求めればよい。具体的には、計算対象領域の大きさ
が後方散乱距離の3倍以上であれば、十分に精度良く電
子線照射量の補正が可能であり、したがって、例えば、
後方散乱距離が10μm程度の場合には、計算対象領域
を50×50μm程度とすればよい。
【0087】以上のような計算を行うことにより、後方
散乱によるバックグラウンドノイズの影響を打ち消すの
に必要な補正量を、グリッド単位で求めることができ
る。そして、レジストに電子ビームを照射して露光する
際は、以上のように算出したグリッド単位での補正量に
基づいて、グリッド単位で電子線照射量を補正する。こ
れにより、後方散乱によるバックグラウンドノイズの影
響を軽減して、パターン寸法のばらつきを抑えることが
可能となる。
【0088】ところで、以上のようなグリッド単位での
電子線照射量補正の手法を、光ディスクのピット列パタ
ーンに応用する際は、当該ピット列パターンを2次元の
配列に並べ替えた上で、上述のような計算を行うことが
好ましい。光ディスクにおいて、通常、ピット列パター
ンはスパイラル状又は同心円状とされるので、そのまま
の状態でグリッド毎の面積率を求めるのは困難である。
そこで、ピット列パターンを2次元の配列に並べ替えた
上で、上述のような計算を行うようにする。これによ
り、電子線照射量の補正量の算出に要する計算量を大幅
に削減することができる。
【0089】また、通常、ピット列パターンは、ピット
長によらず幅が一定である。このような場合、ディスク
径方向におけるピット列パターンの占有率は、ピット幅
/トラックピッチで求まり、全グリッドにおいて一定で
ある。換言すれば、露光パターンが、幅が一定なピット
列パターンの場合、グリッドの面積率を求めるには、グ
リッド内に含まれる各ピットのピット長のみを求めれば
よく、面積率はそれに比例することとなる。
【0090】<凹凸を反転させて露光>上述のような電
子線照射量の補正により、パターン形状のばらつきの問
題には対処できるが、電子線照射量の補正を行ったとし
ても、後方散乱によるバックグラウンドノイズの蓄積に
よる解像度劣化の問題は依然として残る。
【0091】このような解像度の劣化を抑えるには、後
方散乱によるバックグラウンドノイズをできるだけ減ら
せばよい。そして、後方散乱によるバックグラウンドノ
イズをできるだけ減らすには、電子ビームの照射量自体
を減らせばよい。すなわち、後方散乱によるバックグラ
ウンドノイズの影響を抑えるには、電子ビームが照射さ
れる描画領域をできるだけ少なくすればよい。
【0092】例えば、レジスト面内において描画領域が
占める面積率(以下、描画面積率sと称する。)が50
%を越えると、急速に解像度が劣化していくことが経験
的に知られている。したがって、後方散乱によるバック
グラウンドノイズの影響を抑えるには、描画面積率を5
0%未満に抑えることが望まれる。
【0093】ところで、ピット列が形成される光ディス
クにおいては、通常、トラック方向(Tangential方向)
におけるピット占有率が約1/2になるように記録信号
が構成される。また、通常、ディスク径方向(Radial方
向)におけるピット占有率(すなわちピット幅/トラッ
クピッチ)は、約1/3程度とされる。したがって、ピ
ット列が形成されている部分において、ピットの部分が
占める面積率は1/6程度である。
【0094】そして、従来、記録媒体製造用原盤を作製
する際は、ディスク基板の凹部に対応する部分を露光す
るようにしていた。したがって、ピットがディスク基板
に対して凹状に形成される場合には、ピット列が形成さ
れている部分における描画面積率sは1/6程度とな
る。この場合は、描画面積率sが十分に小さいので、後
方散乱によるバックグラウンドノイズが少なく、解像度
の劣化は少なくて済む。
【0095】しかし、従来の記録媒体製造用原盤の製造
方法では、図3に示したようにピット5がディスク基板
2に対して凸状に形成されている場合には、ピット以外
の部分を露光することとなり、描画面積率sが5/6程
度にもなってしまう。この場合は、描画面積率sが大き
いので、後方散乱によるバックグラウンドノイズが大き
く、解像度の劣化が問題となる。
【0096】なお、図1に示したような光ディスク1
は、図13に示すように、ピット5が形成されたディス
ク基板2の上に数十nm〜数百nm程度の膜厚の記録層
2cが形成され、更に記録層2cの上に保護層2dが形
成されてなる。このような光ディスク1に対して保護層
2dが形成された側から再生光を照射した場合には、ピ
ット5が記録層2cに覆われている分だけ、再生光から
見たピット5の幅t1が、ディスク基板2に形成された
ピット5の幅t2よりも大きく見えることとなる。した
がって、ディスク基板2にピット5を凸状に形成する場
合には、ピット5が記録層2cによって覆われることを
考慮して、ピット5を小さめに形成しておく必要があ
る。そのため、このような場合には、ピット列が形成さ
れている部分における描画面積率sが5/6よりも更に
大きくなってしまい、その結果、後方散乱によるバック
グラウンドノイズが非常に大きくなり、解像度の劣化が
非常に大きな問題となる。
【0097】一方、グルーブはトラック方向(Tangenti
al方向)に連続するように形成されるので、グループが
形成された光ディスクにおいては、グループ幅とトラッ
クピッチとの比(グループ幅/トラックピッチ)がその
まま描画面積率sとなる。グルーブは、通常、光磁気デ
ィスクや相変化型光ディスク等のように情報信号の書き
込みが可能な光ディスクに形成されるが、グルーブの幅
は、再生信号特性の要求に応じて細いものから太いもの
まで様々である。そのため、従来、グルーブに対応する
部分を露光する際の描画面積率sは、0%<s<100
%の全ての範囲を取りうる可能性があり、グルーブの幅
がランドの幅よりも広い場合には、描画面積率sが50
%を越えてしまっていた。このように、従来の露光方法
では、グルーブの幅が広い場合に、描画面積率sが50
%を越えてしまようなことがあり、そのような場合に
は、後方散乱によるバックグラウンドノイズが大きく、
解像度の劣化が問題となっていた。
【0098】そこで、本発明では、ディスク基板に形成
される凹凸パターンに占める凹部の面積が凸部の面積よ
り大きい場合には、露光工程において、凸部に対応する
部分を露光するようにする。すなわち、例えば、図3に
示したように、凸状のピット5が形成されてなるディス
ク基板2を作製する際に、ピット5以外の部分(すなわ
ち凹部)の面積が、ピット5(すなわち凸部)の面積よ
りも大きい場合には、露光工程において、ピット5に対
応する部分を露光するようにする。或いは、例えば、図
2に示したように、グルーブ4が形成されてなるディス
ク基板2を作製する際に、グルーブ4(すなわち凹部)
の占める面積が、ランド6(すなわち凸部)の占める面
積よりも大きい場合には、露光工程において、ランド6
に対応する部分を露光するようにする。
【0099】このように、本発明では、凹部に対応する
部分を露光したのでは描画面積率sが50%を越えてし
まうような場合に、凸部に対応する部分を露光するよう
にする。これにより、描画面積率sが50%未満とな
る。その結果、後方散乱によるバックグラウンドノイズ
が小さくなり、解像度の劣化が抑えられる。
【0100】ところで、本発明を適用してディスク基板
の凸部に対応する部分を露光するようにした場合には、
記録媒体製造用原盤を作製する際に、凹凸を反転させる
必要がある。以下、その方法について説明する。
【0101】凹凸を反転させるには、例えば、レジスト
のネガポジ極性を反転させておけばよい。レジストに
は、露光された部分が現像時に可溶となるポジ型と、露
光されていない部分が現像時に可溶となるネガ型とがあ
る。そこで、電子ビームによって描画した部分がディス
ク基板上で凹凸のどちらになるかを考慮した上で、描画
面積率sが50%以下になるように、ネガ型のレジスト
を使用するか、ポジ型のレジストを使用するかを決定す
ればよい。具体的には、従来、記録媒体製造用原盤を製
造する際はポジ型のレジストが使用されていたが、本発
明を適用してディスク基板の凸部に対応する部分を露光
する場合は、ネガ型のレジストを使用するようにすれば
よい。
【0102】なお、従来のG線やI線対応の光露光用レ
ジストでは、ネガ型は解像度で劣るため光ディスク用途
に使用された例は殆ど無いが、電子線露光用のレジスト
では、例えば住友化学製の「NEB−22」など、ネガ
型であっても解像度が十分に高いものが市販されてお
り、ネガ型のレジストの光ディスク用途への利用も問題
はない。
【0103】また、凹凸を反転させるには、レジストに
形成された凹凸パターンをもとにしてディスク基板を作
製するまでの転写プロセスを、従来よりも奇数回だけ増
やしたり減らしたりすることによっても可能である。
【0104】具体的には、図2に示したようにグルーブ
4及びランド6が形成されてなるディスク基板2や、図
3に示したようにピット5が形成されてなるディスク基
板2を作製する際は、先ず、図14に示すように、ガラ
ス原盤10の上に形成されたレジスト11を電子ビーム
13によって露光し、所望する凹凸パターンに対応した
潜像14を形成する。このとき、レジスト11にはポジ
型のものを使用し、ディスク基板2に形成される凸部に
対応した部分、すなわちピット5やランド6に対応した
部分を露光する。
【0105】次に、図15に示すように、潜像14が形
成されたレジスト11を現像して、レジスト11に凹凸
パターンを形成する。なお、ここでは、レジスト11と
してポジ型のものを使用し、ディスク基板2に形成され
る凸部に対応した部分を露光しているので、ディスク基
板2に形成される凸部に対応した部分、すなわちピット
5やランド6に対応した部分のレジスト11が除去され
る。
【0106】次に、図16(a)に示すように、凹凸パ
ターンが形成されたレジスト11の上にNi等からなる
メッキ層18を形成し、その後、図16(b)に示すよ
うに、当該メッキ層18を剥離する。そして、このよう
に剥離されたメッキ層18が、レジスト11に形成され
ていた凹凸パターンが転写されてなる記録媒体製造用原
盤(以下、マスタースタンパ41と称する。)となる。
なお、ここまでの工程については、図4乃至図9を用い
て説明した通りである。
【0107】次に、図17(a)に示すように、マスタ
ースタンパ41の凹凸パターンが形成された面上に、剥
離被膜42を形成する。この剥離被膜42は、この後の
工程で形成されるメッキ層43のマスタースタンパ41
からの剥離性を向上させるためのものであり、例えば、
重クロム酸溶液によってマスタースタンパ41の表面を
酸化することによって形成される。
【0108】次に、図17(b)に示すように、剥離被
膜42が形成されたマスタースタンパ41の上にNi等
からなるメッキ層43を形成し、その後、図17(c)
に示すように、当該メッキ層43を剥離する。そして、
このように剥離されたメッキ層43が、マスタースタン
パ41に形成されていた凹凸パターンが転写されてなる
記録媒体製造用原盤(以下、マザースタンパ44と称す
る。)となる。
【0109】そして、以上のように得られたマザースタ
ンパ44を、ディスク基板2を作製するための原盤とし
て使用する。すなわち、図18に示すように、マザース
タンパ44に形成された凹凸パターンを樹脂材料等に転
写することにより、ディスク基板2を作製する。
【0110】このように作製されたディスク基板2で
は、電子ビーム照射位置に対応する部分が凸となる。す
なわち、以上のようにマザースタンパ44を作製し、当
該マザースタンパ44の凹凸パターンをディスク基板2
に転写するようにすれば、本発明を適用して描画面積率
sを50%以下としても、従来ならば描画面積率sを5
0%以上として作製したものと等しい凹凸パターンを有
するディスク基板2を作製することができる。
【0111】しかも、以上のようなスタンパ転写プロセ
スを行った場合には、マスタースタンパ41から複数枚
のマザースタンパ44を作製することもできる。換言す
れば、レジスト11の1回の露光により多数の記録媒体
製造用原盤を作製することができる。これは、特にディ
スク基板2を大量に生産するような場合に非常に好適で
ある。
【0112】<電子ビームのスポット径の調整>図19
に示すように、電子ビームによってレジストを露光した
ときに形成される露光パターンの線幅Lは、電子線照射
量が増加するほど広くなっていくが、露光パターンの線
幅Lが電子ビームのスポットの直径(以下、スポット径
φと称する。)に近づくにつれ、電子線照射量を増やし
たときの露光パターンの線幅Lの広がり方は鈍くなって
くる。
【0113】すなわち、露光パターンの線幅Lが電子ビ
ームのスポット径φに近い場合、形成される露光パター
ンの線幅Lは、電子線照射量の変化に対して鈍感にな
る。したがって、電子ビームのスポット径φを所望する
露光パターンの線幅Lに近い値に設定しておけば、後方
散乱によるバックグラウンドノイズに大小があっても、
パターン形状のばらつきが生じ難くなる。したがって、
電子ビームでレジストを露光する際は、電子ビームのス
ポット径φを十分に小さくし、且つ電子線照射量を十分
に大きくして、電子ビームのスポット径φと露光パター
ンの線幅Lとが一致するようにしておくことが好まし
い。
【0114】なお、電子ビームのスポット径φは、電子
線光学系による調整によって大きく変化させることがで
きる。具体的には、例えば、図20に示すように、電子
線光学系にコンデンサーレンズを2つ用意し、それらの
オン/オフを切り換えることにより、電子ビームのスポ
ット径φの大小を変化させることが可能である。すなわ
ち、図20(a)に示すように、第1のコンデンサーレ
ンズ51をオフ、第2のコンデンサーレンズ52をオン
とすることにより、対物レンズ53によって電子ビーム
が集束されたときのスポット径φが小さくなり、また、
図20(b)に示すように、第1のコンデンサーレンズ
51をオン、第2のコンデンサーレンズ52をオフとす
ることにより、対物レンズ53によって電子ビームが集
束されたときのスポット径φが大きくなる。なお、図2
0に示した例では、スポット径φを段階的に調整するこ
ととなるが、電子線光学系にズームレンズ光学系を設け
ることにより、スポット径φを連続的に調整することも
可能である。
【0115】そして、電子線描画装置の場合には、レー
ザカッティング装置に比べてスポット径φを遥かに小さ
くすることが可能であり、具体的には、スポット径φを
10nm程度にまで絞ることも可能である。一方、ディ
スク基板に形成されるピットやランド及びグルーブ等か
らなる凹凸パターンの幅は、最小でも50nm程度であ
る。したがって、電子ビームでは、そのスポット径φ
を、ディスク基板に形成される凹凸パターンに比較して
充分に小さく絞ることが可能である。
【0116】ただし、電子線描画装置でレジストを露光
する際に、電子ビームのスポット径φを小さくすると、
単位時間当たりの電子照射量が小さくなるので、描画に
要する時間が増加してしまう。しかも、電子ビームのス
ポット径φを小さくした場合には、1回の走査で露光さ
れる領域が小さくなるので、描画に要する時間が更に増
加する傾向にある。すなわち、例えば、1回の走査で露
光される部分の線幅が、ピットの線幅の半分の場合だ
と、1つのピットに対応した領域を露光するのに2回の
走査が必要となり、その分だけ描画に要する時間が増加
してしまう。
【0117】以上のように、電子ビームのスポット径φ
を小さくしすぎると、描画に要する時間が増加してしま
うが、製造時のスループットを向上させるためには、描
画時間はできるだけ短いほうが好ましく、必要以上に描
画時間を長くすることは避けたい。そこで、十分な解像
度とパターン形状の均一性とを確保しながら、不必要に
描画時間を増やさないために、電子ビームのスポット径
φは、ディスク基板に形成される凹凸パターンの最小線
幅L’に一致していることが好ましい。
【0118】すなわち、描画時間をできるだけ短くし、
且つ、優れたパターン形状を得るためには、電子ビーム
のスポット径φとディスク基板に形成される凹凸パター
ンの最小線幅L’とを等しくし、且つ、電子ビームのス
ポット径φと露光パターンの線幅Lとが一致するように
電子線照射量を十分に大きくすればよい。
【0119】なお、電子ビームのスポット径φを段階的
にしか調整できないような電子線描画装置では、電子ビ
ームのスポット径φを、ディスク基板に形成される凹凸
パターンの最小幅L’に正確に一致させることができな
い場合がある。しかし、そのような場合であっても、電
子ビームのスポット径φと、ディスク基板に形成される
凹凸パターンの最小幅L’とを、できるだけ近づけてお
くことが好ましい。具体的には、少なくとも、電子ビー
ムのスポット径φと、ディスク基板に形成される凹凸パ
ターンの最小幅L’との関係が、下記式(2)を満たし
ていることが望まれる。
【0120】 0.7×L’≦φ≦1.1×L’ ・・・(2) スポット径φと、ディスク基板に形成される凹凸パター
ンの最小幅L’との関係が、上記式(2)を満たしてい
れば、記録媒体製造用原盤の製造という用途において
は、十分な解像度とパターン形状の均一性とを達成する
ことが可能である。
【0121】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明に係
る記録媒体製造用原盤の製造方法では、露光工程におい
て、バックグラウンドノイズとなる後方散乱の影響を軽
減することができる。したがって、本発明によれば、近
接効果の影響を抑え、記録媒体製造用原盤を精度良く製
造することが可能となる。したがって、本発明によれ
ば、記録媒体の更なる高記録密度化を実現することが可
能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光ディスクの一例を示す斜視図である。
【図2】ディスク基板のグルーブが形成されている部分
を拡大して示す図である。
【図3】ディスク基板のピットが形成されている部分を
拡大して示す図である。
【図4】ガラス原盤を示す図である。
【図5】ガラス原盤上にレジストを塗布した状態を示す
図である。
【図6】レジストを露光する露光工程を示す図である。
【図7】レジストにグルーブ及びランドに対応した凹凸
が形成された状態を示す図である。
【図8】レジストにピット列に対応した凹凸が形成され
た状態を示す図である。
【図9】レジスト上にメッキ層を形成した状態を示す図
である。
【図10】電子線描画装置の一構成例を示す図である。
【図11】露光対象となる領域を微小なグリッドに分割
した状態を示す図である。
【図12】1つのグリッドを拡大した図であり、電子ビ
ームが照射される描画領域と、電子ビームが照射されな
い領域とを示す図である。
【図13】ディスク基板上に記録層及び保護層が形成さ
れた状態を示す断面図である。
【図14】レジストを電子ビームによって露光する電子
線描画工程を示す図である。
【図15】レジストに形成された潜像を現像した状態を
示す図である。
【図16】マスタースタンパの作製工程を示す図であ
り、図16(a)は、凹凸パターンが形成されたレジス
ト上にメッキ層を形成した状態を示す図であり、図16
(b)は、メッキ層を剥離する工程を示す図である。
【図17】マザースタンパの作製工程を示す図であり、
図17(a)は、マスタースタンパ上に剥離被膜を形成
した状態を示す図であり、図17(b)は、剥離被膜が
形成されたマスタースタンパ上にメッキ層を形成した状
態を示す図であり、図17(c)は、メッキ層を剥離す
る工程を示す図である。
【図18】マザースタンパに形成された凹凸パターンを
ディスク基板に転写する基板転写工程を示す図である。
【図19】電子ビームによってレジストを露光したとき
に形成される露光パターンの線幅Lと、電子線照射量と
の関係を示す図である。
【図20】電子線光学系の切り換えによるスポット径の
変化の一例を示す図であり、図20(a)は、第1のコ
ンデンサーレンズをオフ、第2のコンデンサーレンズを
オンとすることにより、電子ビームのスポット径φを小
さくした状態を示す図であり、図20(b)は、第1の
コンデンサーレンズをオン、第2のコンデンサーレンズ
をオフとすることにより、電子ビームのスポット径φを
大きくした状態を示す図である。
【図21】レーザーカッティング装置の一例を示す図で
ある。
【図22】近接効果を説明するための図である。
【符号の説明】
1 光ディスク、 2 ディスク基板、 3 信号記録
領域、 4 グルーブ、 5 ピット、 6 ランド、
10 ガラス原盤、 11 レジスト、 21 電子
ビーム出射部、 22 回転駆動機構、 23 平行移
動機構、 24除振テーブル、 25 電子銃、 26
コンデンサーレンズ、 27 ブランキング電極、
28 アパーチャ、 29 ビーム偏向電極、 30
フォーカス調整レンズ、 31 対物レンズ、 32,
33 筐体

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 信号記録領域内に所定の凹凸パターンが
    形成されてなるとともに、当該凹凸パターンに占める凹
    部の面積が凸部の面積より大きい記録媒体用基板の製造
    に使用される記録媒体製造用原盤の製造方法であって、 支持体上に形成された感光層を露光して、所定の凹凸パ
    ターンに対応した潜像を感光層に形成する露光工程と、 上記露光工程により感光層に形成された潜像を現像する
    ことにより、感光層に凹凸パターンを形成する現像工程
    と、 上記現像工程により感光層に形成された凹凸パターンを
    転写して記録媒体製造用原盤を製造する転写工程とを有
    し、 上記露光工程において感光層を露光する際に、上記凸部
    に対応する部分を露光することを特徴とする記録媒体製
    造用原盤の製造方法。
  2. 【請求項2】 上記露光工程において、電子ビームを用
    いて感光層を露光することを特徴とする請求項1記載の
    記録媒体製造用原盤の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記感光層を、ネガ型のレジストによっ
    て形成することを特徴とする請求項1記載の記録媒体製
    造用原盤の製造方法。
JP7966598A 1998-03-26 1998-03-26 記録媒体製造用原盤の製造方法 Withdrawn JPH11283282A (ja)

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002023379A (ja) * 2000-07-10 2002-01-23 Sony Corp 光ディスク、露光装置および露光方法
JP2005032837A (ja) * 2003-07-08 2005-02-03 Canon Inc 荷電粒子描画方法及び該方法を用いたデバイス製造方法
JP2009048119A (ja) * 2007-08-22 2009-03-05 Ricoh Co Ltd 描画装置、描画方法及び描画プログラム
JPWO2007116741A1 (ja) * 2006-03-28 2009-08-20 パイオニア株式会社 記録システム、記録装置及び記録制御信号生成装置

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