JPH11244257A - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

磁気共鳴イメージング装置

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JPH11244257A
JPH11244257A JP10052341A JP5234198A JPH11244257A JP H11244257 A JPH11244257 A JP H11244257A JP 10052341 A JP10052341 A JP 10052341A JP 5234198 A JP5234198 A JP 5234198A JP H11244257 A JPH11244257 A JP H11244257A
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blood flow
magnetic field
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blood
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Abstract

(57)【要約】 【課題】異なる方向に流れる血流の画像を、方向を識別
して表示する血流描画機能を備えたMRI装置を提供す
る。 【解決手段】被検体の血流方向に対してほぼ直交して、
複数のスライス面を設定し、この複数スライス面を所定
の繰り返し時間TRでマルチスライス撮像する。この
際、複数のスライス面を第1の順序で励起する計測と、
第1の順序と逆の順序で同一のスライス面を励起する第
2の計測とを実行する。2つの計測で各スライス毎の2
種のデータ間を差分演算により、方向の相反する血流を
符号付で表示する。マルチスライス撮像の際、隣り合う
スライスを厚み方向に重なり合うように設定することに
より、静止部の信号を抑制し、差分処理後の血流画像の
コントラストを高めることができる。また撮像シーケン
スとして撮像時間の極めて短いEPI法をMRA計測シーケン
スとして利用することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、核磁気共鳴(以下
「NMR」と略記する)現象を利用して被検体の所望部位
の断層画像を得る磁気共鳴イメージング(以下「MRI」
と略記する)装置に関し、特に血管系の走行を描出する
際にその方向性を認識することの可能なMRI装置に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】MRI装置の撮像機能として、造影剤等
を使用することなく血流を描画するMRアンジオグラフィ
(以下MRAと略す)がある。MRI装置における代表的な
血流描画手法として、スライス面への流入効果を用いた
タイムオブフライト(TOF)法と、血流スピンがその移動
方向に印加された傾斜磁場により位相拡散を受けること
を利用した位相法とがあり、位相法には、血流スピンの
位相拡散を補償するシーケンス(リフェイズシーケン
ス)と位相拡散を助長して信号消去するシーケンス(デ
ィフェイズシーケンス)との差分をとることにより血流
描出するフェイズセンシティブ(PS)法と、血流スピン
に異なる位相回転を与える一対の傾斜磁場パルス(フロ
ーエンコードパルス)を用い、これらを交互に印加する
ことによって一対のデータを得、これらフローエンコー
ドデータの複素差分を取ることにより血流描出するフェ
イズコントラスト(PC)法とがある。
【0003】これら従来の血流描画手法は、それぞれ一
長一短があり、目的に応じて利用されている。例えば、
ある領域を短い繰り返し時間TRでRF照射(プリサチ
ュレーション)を行い、この領域に流入する血流信号が
高信号となることを利用する2D-TOF法の場合、撮像シー
ケンスとしてはグラディエントエコー法のような短TR
のシーケンスを採用する必要があり、EPIのような高速
シーケンスを採用できない。またプリサチュレーション
を行った領域にいずれの方向から流入する血流スピンも
高信号化されるので、動静脈分離を行うことができな
い。隣接する領域をプリサチュレーションする方法もあ
るが、この場合には動静脈のどちらか1方向の血流しか
可視化できない。
【0004】一方、PC法は、極性の異なるフローエンコ
ード位相像の位相差分を取ることにより動脈と静脈を分
離する手法も用いられているが、血流スピンの位相シフ
トがπを超える高速流では折返しアーチファクトの問題
がある他、シーケンスがフローリフェイズ型でないため
に、乱流や流速の変化に弱く、血管の欠損やアーチファ
クトを生じ易いという問題も有している。また血流速の
定量的計測を目的とした2次元のPC法では血管を含む
スライス厚を厚くできず、血管系の全体の走行を併せて
観察するのに適していないという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、動静
脈分離(血流の方向性の描出)が可能である新規な血流
描画機能を備えたMRI装置を提供することを目的とす
る。
【0006】また本発明は、EPIのような高速の撮像シ
ーケンスの適用が可能であり、これにより短い撮像時間
で血流描画を実現できるMRI装置を提供することを目
的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明によるMRI装置は、複数のスライス面につ
いて順次、高周波磁場照射による励起とエコー信号の計
測とを繰り返し、得られたエコー信号から血流画像を再
構成する機能を備え、この機能の実行において、複数の
スライス面を第1の順序で励起する第1の計測と、第1
の順序と逆の順序で励起する第2の計測とを実行し、各
スライスについてそれぞれ2種のデータを得、これら各
スライスの2種のデータ間の差分演算を行い、方向の相
反する血流からの信号を異なる符号のデータとして取得
する。
【0008】第1の計測において、複数のスライスを第
1の方向(方向Aとする)で順次励起していくと、その
方向Aに流れる血流は相対的に短い繰り返し時間で繰り
返し励起を受けることとなり、その血流スピンからの信
号は相対的に弱くなる。これに対し、逆方向(方向Bと
する)に流れる血流は相対的に繰り返し時間TRが長く
なり、そこからの信号強度は静止部とほぼ同じとなる。
次に第2の計測において、同じ複数のスライスを第1の
方向と逆方向Bに順次励起した場合には、上記の場合と
逆にB方向の血流からの信号が相対的に弱くなり、A方
向の血流からの信号が相対的に強くなる。従って、これ
ら2種の計測で得られたデータの差分を取ると、静止部
分は画素値(信号強度)0となり、血流では方向によっ
て符号の異なるデータを得ることができる。
【0009】この場合、隣接スライス面同士をオーバー
ラップさせながら順次励起していった場合には、静止部
についてはオーバーラップした部分について繰り返し励
起を受けることになるため、オーバーラップさせない場
合に比べ静止部の信号強度を抑制できる。これにより血
流部分の描出能を高めることができる。
【0010】尚、本発明において撮像シーケンスとして
は、グラディエントエコー系のシーケンスを採用するこ
とができ、同一スライスの多重の励起がなくても血流信
号を静止部に対して相対的高コントラストで描出できる
ため、1回の励起で複数のエコー信号を計測するマルチ
エコー(EPIを含む)シーケンスの採用も可能である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を添付図面
に基づいて詳細に説明する。
【0012】図8は本発明が適用されるMRI装置の全
体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、N
MR現象を利用して被検体の断層像を得るもので、図8
に示すように、静磁場発生磁石2と、傾斜磁場発生系3
と、送信系5と、受信系6と、信号処理系7と、シーケ
ンサ4と、中央処理装置(CPU)8とを備えている。
【0013】静磁場発生磁石2は、被検体1の周りにそ
の体軸方向または体軸と直交する方向に均一な静磁場を
発生させるもので、被検体1の周りのある広がりをもっ
た空間に永久磁石方式または常電導方式あるいは超電導
方式の磁場発生手段が配置されている。
【0014】傾斜磁場発生系3は、X,Y,Zの三軸方向に
巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイ
ルを駆動する傾斜磁場電源10とから成り、後述のシーケ
ンサ4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場
電源10を駆動することにより、X,Y,Zの三軸方向の傾斜
磁場Gx,Gy,Gzを被検体1に印加するようになっている。
この傾斜磁場の加え方により被検体1に対するスライス
面を設定することができる。
【0015】シーケンサ4は、被検体1の生体組織を構
成する原子の原子核に核磁気共鳴を起こさせる(励起す
る)高周波磁場(RF)パルスをある所定のパルスシー
ケンスで繰り返し印加するもので、CPU8の制御で動
作し、被検体1の断層像のデータ収集に必要な種々の命
令を、送信系5及び傾斜磁場発生系3及び受信系6に送
るようになっている。
【0016】送信系5は、シーケンサ4から送り出され
るRFパルスにより被検体1の生体組織を構成する原子
の原子核に核磁気共鳴を起こさせるためにRF磁場を照
射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅
器13と送信側の高周波コイル14aとから成り、高周波発
振器11から出力された高周波パルスをシーケンサ4の命
令にしたがって変調器12で振幅変調し、この振幅変調さ
れたRFパルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体
1に近接して配置された高周波コイル14aに供給するこ
とにより、電磁波が被検体1に照射されるようになって
いる。
【0017】受信系6は、被検体1の生体組織の原子核
の核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を
検出するもので、受信側の高周波コイル14bと増幅器15
と直交位相検波器16とA/D変換器17とから成り、送信側
の高周波コイル14aから照射された電磁波による被検体
1の応答の電磁波(NMR信号)は被検体1に近接して配置
された高周波コイル14bで検出され、増幅器15及び直交
位相検波器16を介してA/D変換器17に入力してディジタ
ル量に変換され、さらにシーケンサ4からの命令による
タイミングで直交位相検波器16によりサンプリングされ
た二系列の収集データとされ、その信号が信号処理系7
に送られるようになっている。
【0018】信号処理系7は、CPU8と、磁気ディス
ク18及び磁気テープ19等の記録装置と、CRT等のディス
プレイ20とから成り、CPU8でフーリエ変換、補正係
数計算像再構成等の処理を行い、任意断面の信号強度分
布あるいは複数の信号に適当な演算を行って得られた分
布を画像化してディスプレイ20に断層像として表示する
ようになっている。なお、図8において、送信側及び受
信側の高周波コイル14a、14bと傾斜磁場コイル9は、被
検体1の周りの空間に配置された静磁場発生磁石2の磁
場空間内に設置されている。
【0019】次にこのような構成におけるMRI装置に
おいて、シーケンサ4の実行する血流描画のための撮像
シーケンスについて説明する。
【0020】図1は本発明のMRI装置によって撮像さ
れる領域を模式的に示した図で、本発明においては、被
検体の目的とする血管A、Bを含む撮像領域について血
管にほぼ直交するようにスライス面を設定し、これら複
数のスライス面について2つの異なる順序でマルチスラ
イス撮像を行う。
【0021】マルチスライス撮像は、図2(a)に示す
ように、1つのスライスについての繰り返し時間TR内
に、順次各スライスについてRFパルスによる励起とエ
コー信号計測を繰り返し、これを位相エンコードステッ
プを変化させながら繰り返す。尚、図2(a)では約1
回半の繰り返ししか示していないが、各スライスについ
て画像再構成に必要な位相エンコード数のエコー信号を
計測するまで撮像シーケンスが繰り返される。
【0022】また図中、撮像シーケンスの詳細は示して
いないが、例えば、1回のRFパルス照射によるスライ
ス選択励起後、傾斜磁場の反転によって1つのエコー信
号を発生させるグラディエントエコー法による撮像シー
ケンス(図2(a))や、1回のRFパルス照射による
スライス選択励起後、ブリップ状の位相エンコード傾斜
磁場を印加しながら読み出し傾斜磁場の極性を複数回、
反転させて、複数(図では簡単のために2個のみ示して
いる)のエコー信号を計測するマルチショット或いはシ
ングルショットEPIシーケンス(図2(b))を採用す
ることができる。マルチショットEPIの場合には、図2
(b)に示すシーケンスを位相エンコードのオフセット
量を変化させながら繰り返す。また図2では簡単のため
にスライス1〜5までしか示していないが、TR時間内
に数10程度のスライス数を計測することができる。
【0023】このようなマルチスライス撮像を、第1の
計測では図1中最下のスライス1から順に最上のスライ
スNまで、例えば人体の場合足方から頭方へ、励起/計
測を行い、第2の計測ではその逆に上のスライスNから
下のスライス1まで順次励起/計測を行う。
【0024】このように順次スライスを励起していった
場合に、第1の計測では、励起順方向に流れる血管A内
の血流はスライス1からスライス2、スライス3へと移
動していく際に、繰り返し時間TRよりかなり短い間隔
で多重励起を受けることになり、信号強度が低下する。
これに対して、励起順と逆方向に流れる血管B内の血流
は、励起の繰り返し時間は静止部のTRとほぼ同じであ
って、血管Aに対し相対的長TRとなる。即ち、信号は
相対的に高強度となる。
【0025】一方、第2の計測では、スライスの励起順
が逆になるため第1の計測とは全く逆に血管Aからの信
号が高信号となり、血管Bからの信号が低信号となる。
【0026】このことを図3を参照して更に説明する。
まずスライス間でオーバーラップがない場合を考える
(図3(a))。スライス1で励起された血流Aは、次
に励起されるスライス2側に移動するが、この血流が次
に励起されるまでの時間(実効的繰り返し時間eTR)
は血流の速度vによって異なり、次のようになる。
【0027】血流速度vが比較的速く、 v≧2D/(TR/N) (式中、Dはスライスの厚さ、TRは設定繰り返し時
間、NはTR内で励起されるスライス数を表す。以下同
じ)を満たす場合には、スライス1を励起した後、スラ
イス2を励起するまでに血流Aは既に次のスライス3か
ら先へ移動しているため、実効的TR(eTR)は eTR=∞ となり、多重励起による信号強度の低下はない。血流速
度vが、 D/(TR/N)≦v<2D/(TR/N) の場合には、スライス2励起時にスライス1内で励起さ
れた血流の全部又は一部がスライス2内にあることにな
るので、スライス2内に存する血流については、 eTR=TR/N スライス3以降へ移動した血流については、 eTR=∞ となる。異なる実効的eTRの信号割合いは血流速度v
に応じて異なり、vが小さくなるほどTR/Nとなる割
合が増す。血流速度v=D/(TR/N)の場合の血流
はすべてeTRが最短の(TR/N)となる。信号強度
はスライス内各血流スピンのeTRに相関する信号強度
を位相を含め存在割合で加算したものとなる。
【0028】また血流速度vが遅い場合、即ち v<D/(TR/N) の場合には、スライス2に流入した血流については eTR=TR/N となり、スライス1に残留している血流については、そ
の実効的eTRはほぼ設定TRと等しくなる。この場合
にも信号強度はこれら実効的eTRの信号の割合の荷重
平均となる。
【0029】このように血流Aでは、v≧2D/(TR
/N)の場合を除き、実効的eTRがTR/Nとなる血
流の割合に応じた信号低下を生じる。
【0030】一方、逆方向に流れる血流Bでは、スライ
ス2にはスライス3側からの励起を受けていない血流が
流入することになるので、その実効的eTRは∞であ
る。従って信号の低下はない。また静止部では各スライ
スは直前のスライスの励起によって励起されることはな
いので、実効的繰り返し時間eTRは設定TRとほぼ同
じとなる。
【0031】このようにスライス間のオーバーラップが
ない場合には、血流Aのみが血流速度vに依存した多重
励起を受ける。従って血流速度を考慮して、スライス厚
さD及びスライス数Nを設定することにより、血流Aの
信号のみを効果的に抑制することができる。
【0032】次に隣接するスライスが図3(b)に示す
ように所定のインターバルP(オーバーラップ量=D−
P)で順次励起される場合を考える。この場合には血流
Aの速度が、 v≧(D+P)/(TR/N) の場合には、スライス1を励起した後、スライス2を励
起するまでに血流Aは既に次のスライス3から先へ移動
しているため、実効的eTRは eTR=∞ となり、多重励起による信号強度の低下はない。血流速
度vが、 P/(TR/N)≦v<(D+P)/(TR/N) の場合には、スライス2励起時にスライス1内で励起さ
れた血流の全部又は一部がスライス2内にあり、スライ
ス2内に存する血流については、 eTR=TR/N となり、多重励起を受ける。他の部分はスライス3以降
に移動しており、 eTR=∞ となる。この場合にも多重励起を受ける血流の割合い
は、血流速度vに応じて異なり、信号強度はこの割合で
加算したものとなる。
【0033】また血流速度vが非常に遅く、 v<P/(TR/N) の場合には、その実効的eTRは静止部とほぼ同じと見
做すことができる。従ってスライス間のオーバーラップ
がある場合にも、血流Aは、非常に速い場合を除き、少
なくとも一部の血流が血流速度に応じた多重励起を受
け、その割合で決まる信号強度の低下がある。
【0034】一方、逆方向に流れる血流Bでは、血流速
度vが v≧(D−P)/(TR/N) の場合には、実効的eTR=∞となるが、 v<(D−P)/(TR/N) の場合はオーバーラップ部にあるか否か、血流の上流の
スライスか否かにより異なった励起を受けることにな
る。即ち、あるスライスで励起されて逆方向に移動する
際に、オーバーラップ部に残っている部分は、それ以降
の励起時に励起されることになるので、その実効的eT
Rは TR/N<eTR<TR となる。一方、非オーバーラップ部にある部分は、1位
相エンコードステップ前の繰り返し時間で、それより上
流側のスライスを励起したときに励起された血流が流入
している場合があり、その場合実効的eTRは、 eTR=nTR/N (nは、TR、N、v、Pによって決まる整数で、Nよ
り小さい)となる。但し上流側のスライスでは、そのよ
うに前の位相エンコードステップで励起された血流の流
入はないので、この場合には実効的eTRは、eTR=
∞となる。血流Bについては、このような3つの実効的
eTRによる信号の荷重平均が信号強度となるが、これ
ら実効的eTRは、いずれもTR/Nに比べ長いので、
血流Aのような多重励起による信号抑制は生じない。
【0035】静止部では、スライス1とスライス2がオ
ーバーラップしていない部分(図中、斜線部分)は、直
前のスライスの励起によって励起されていないので、実
効的繰り返し時間eTRは設定TRとほぼ同じである
が、オーバーラップ部分は eTR=TR/N となり、多重励起を受ける。従ってオーバーラップ量を
適当に設定することにより、静止部の信号強度を抑制で
き、血流A、静止部、血流Bの順に信号強度を異ならせ
ることができ、後述する差分処理後の血流画像のコント
ラストを上げることができる。尚、オーバーラップ量が
多すぎると撮像領域全体をカバーするためのスライス枚
数が増えるため、最終的に撮像時間の延長を招くことに
なるとともに、遅い血流の飽和を招くことになるので、
オーバーラップ量はスライス厚の20〜80%程度、好適に
は50%以下とする。但し、体幹部の動脈等ではオーバー
ラップ量を増しても構わない。
【0036】次にこのように血流の方向により信号強度
を異ならせた計測で得られたデータから画像再構成する
手段について説明する。
【0037】上述の2種のマルチスライス撮影を行うこ
とにより、各スライスについて図4に示すように1組の
画像データを得ることができる。同一スライスについて
得られた1組の画像は、一方(第1の計測で得られた画
像)は血管Aは低信号で、血管Bが高信号で描出されて
おり、他方(第2の計測で得られた画像)は血管Aは低
信号で、血管Bが高信号で描出されている。
【0038】次にこれら1組のデータ同士で差分(例え
ば第1の計測で得られた画像データから第2の計測で得
られた画像データを引く)を行う。差分は、各々を画像
再構成した後に複素データ又は絶対値の差分を行っても
よく、或いは再構成前の信号データを用いた複素差分後
に再構成を行っても構わない。これにより静止部を消去
し、血管のみの画像が得られる。この際、血管の画素値
は血流の方向によって符号が異なったものとなる。上記
差分処理は各スライス毎に行われ、これによりスライス
数分の差分像が生成される。
【0039】次に得られた差分像を投影処理することに
より領域全体の投影血管像を作成する。血管の一部分を
それぞれ部分的に含む連続した多数枚の二次元画像から
投影像を得る方法としては、公知の手法として光線軌跡
法による最大値投影法(MIP)或いは最小値投影法
(MinIP)があるが、ここでは最大値投影法と最小
値投影法を組合せて両方向の血管を描画する。
【0040】上述したように差分像は符号の異なるデー
タが含まれており、単純にMIP処理或いはMinIP処理を行
った場合、一方の方向の血管しか描画できないことにな
る。そこで次のような処理を行う。まず図5(a)に示
すように正負両方に閾値αを設定し、絶対値が閾値α以
下は血管以外の組織と見做し0レベル若しくはαとし灰
色で表示する。閾値を超えるものについては血管と見做
し、値が正の場合には例えば白色とし、負の場合には黒
色とする。ここで光軸上に閾値を超える正の信号と負の
信号が重なった場合には、正負の絶対値の大きい方を表
示する方法(図5(b))か、正負いずれか優先するも
のを予め決めておき、この設定に従い、一方を表示する
方法(同図(c))のいずれかを採用することができ
る。いずれの方法とするかは診断上の必要性を考慮して
任意に選択することができる。(b)の方法は、信号値
の高い血管を優先的に描画させる場合に好適であり、
(c)の方法は動脈、静脈のいずれかを優先的に描画さ
せる場合に好適である。
【0041】尚、血流の方向表示は、上述した白黒表示
の他、値が正の場合を赤、値が負の場合を青とするよう
な、2つの値に色相的に区別できるそれぞれの色相を付
与するカラー表示等により識別可能にしてもよい。また
上述の投影処理は、従来の投影処理と同様、投影の方向
は冠状断、矢状断、軸横断の方向など任意に設定するこ
とができ、更に図6に示すように、ある軸Cを中心とし
て回転させて、たとえば±45°程度角度のついた投影か
ら、5°〜10°おきに投影像を作成し、それらを動画像
として表示することも可能である。これにより血管の前
後関係等奥行き、血管の構造を認識することができ、上
述した(b)または(c)の方法を選択することによっ
て隠れてしまった血管についても他の方向から確認する
ことができる。
【0042】以上説明したように、本発明のMRI装置
は、マルチスライス撮像を実行する際に、励起順方向に
流れる血流のスピンは多重励起を受け低信号化すること
を利用し、励起順の異なる2つの計測で得られたデータ
の差分により、血流信号を方向によって符号の異なるデ
ータとして取得するものである。この場合、図1におい
て最初に励起されるスライス1についてみると、このス
ライス1に流入してくる励起順方向の血流は多重励起を
受けていないため、低信号化しない。同様に第2の計測
で最初に励起されるスライスNについても励起順方向の
血流の信号は低信号化しない。従って励起順の異なる2
つの計測の差分を取った場合、最初と最後のスライス
1、Nについては血流方向の差が不明瞭となる。
【0043】このような撮像領域両端における不明瞭な
部分をなくすために、最初と最後のスライスのデータを
削除してもよいが、より好適には最初に励起されるスラ
イスに隣接する領域を予めRF照射することにより飽和
(プリサチュレーション)しておくことが好ましい。
【0044】撮像シーケンスにプリサチュレーションを
加えた実施例を図7に示す。この実施例でも、撮像領域
を目的とする血管A、Bに略直交する複数のスライスに
分けてマルチスライス撮影し、この際、スライスの励起
順序の異なる第1の計測と第2の計測を実施することは
図1の実施例と同様であるが、本実施例では第1の計測
でマルチスライス撮影する際に、最初に励起されるスラ
イス1に隣接する領域S1(図中、下側の領域)をRF
照射し、この領域のスピンを飽和させておく。第1の計
測終了後、第2の計測を開始する場合にも最初に励起さ
れるスライスnに隣接する領域S2(図中、上側の領
域)を同様にプリサチュレーションし、スピンを飽和さ
せる。
【0045】隣接領域をプリサチュレーションした後、
スライス1(或いはスライスN)を励起した場合、ここ
には飽和した領域S1(或いは領域S2)からの血流スピ
ンが流れ込んでくるため、血流からの信号を低信号化す
ることができる。これにより撮影領域の両端のスライス
において、血管Aと静止部及び血管Bとの信号の差が明
瞭となり、血流捕捉能力を上げることができる。
【0046】このようなプリサチュレーションは、撮像
シーケンスの如何に関わらず行うことができ、図2
(a)及び(b)に示すマルチスライスシーケンスの前
段に領域S1又はS2のプリサチュレーション工程を挿入
すればよい。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のMRI装
置によれば、血流描画機能としてスライス励起順序が逆
転した二種のマルチスライス撮像を行い、これらの差分
を行うことにより、方向の異なる血流を極性の異なる信
号として描画することが可能となる。またマルチスライ
ス撮像として、一回のスライス励起で画像再構成に必要
な全位相エンコード分のエコーを計測するEPIを採用
することができ、これにより10秒以下程度の極めて短時
間で血流画像を得ることができる。
【0048】更に本発明のMRI装置では、従来のPC法
で問題となる乱流の影響を受けにくく、動静脈の重なり
に対しても明確に血流の方向を識別可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のMRI装置により実行されるMRアンジ
オグラフィ計測法の概念を示す説明図
【図2】(a)及び(b)は、それぞれシーケンサが実
行する撮像シーケンスの実施例を示す図
【図3】本発明によるMRアンジオグラフィ計測法の原理
を説明する図
【図4】本発明のMRI装置における画像処理の一実施
例を示す図
【図5】本発明のMRI装置における投影処理を説明す
る図
【図6】本発明のMRI装置における画像処理の一実施
例を示す図
【図7】本発明のMRI装置により実行されるMRアンジ
オグラフィ計測法の他の実施例を示す図
【図8】本発明が適用されるMRI装置の全体構成を示
す図
【符号の説明】
1…被検体、2…静磁場発生装置、3…傾斜磁場発生系、4
…シーケンサ、5…送信系、6…受信系、7…信号処理
系、8…CPU、9…傾斜磁場コイル、10…傾斜磁場電源、1
4a…送信側の高周波コイル、14b…受信側の高周波コイ
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年2月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正内容】
【0037】上述の2種のマルチスライス撮影を行うこ
とにより、各スライスについて図4に示すように1組の
画像データを得ることができる。同一スライスについて
得られた1組の画像は、一方(第1の計測で得られた画
像)は血管Aは低信号で、血管Bが高信号で描出されて
おり、他方(第2の計測で得られた画像)は血管は低
信号で、血管が高信号で描出されている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】被検体を収容し得る空間に静磁場を発生す
    る静磁場発生手段と、前記静磁場に傾斜を与える傾斜磁
    場を発生する傾斜磁場発生手段と、前記被検体の生体組
    織を構成する原子の原子核に核磁気共鳴を起こさせる高
    周波パルスをある所定のパルスシーケンスで繰り返し印
    加する送信系と、前記核磁気共鳴により放出されるエコ
    ー信号を検出する受信系と、この受信系で検出したエコ
    ー信号を用いて画像再構成演算を行う信号処理系と、得
    られた画像を表示する手段と、前記傾斜磁場発生手段と
    前記送信系と前記受信系と前記信号処理系の動作を制御
    する制御系とを有した磁気共鳴イメージング装置におい
    て、 前記制御系は、所定の繰り返し時間で前記複数のスライ
    スを第1の順序で繰り返し励起する第1の計測と、同一
    の繰り返し時間で前記複数のスライスを第1の順序と逆
    の順序で繰り返し励起する第2の計測とを各々別々に実
    行し、各スライスについてそれぞれ2種のデータを得、
    前記信号処理系により、これら各スライスの2種のデー
    タ間の差分演算を行い、方向の相反する血流からの信号
    を異なる符号のデータとして取得することを特徴とする
    磁気共鳴イメージング装置。
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