JPH11241132A - 高耐食性アルミニウム合金製ブレージングシート - Google Patents

高耐食性アルミニウム合金製ブレージングシート

Info

Publication number
JPH11241132A
JPH11241132A JP4806998A JP4806998A JPH11241132A JP H11241132 A JPH11241132 A JP H11241132A JP 4806998 A JP4806998 A JP 4806998A JP 4806998 A JP4806998 A JP 4806998A JP H11241132 A JPH11241132 A JP H11241132A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
intermediate layer
brazing
core material
corrosion
potential
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP4806998A
Other languages
English (en)
Inventor
Susumu Saisho
晋 齋所
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shinko Alcoa Yuso Kizai KK
Original Assignee
Shinko Alcoa Yuso Kizai KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shinko Alcoa Yuso Kizai KK filed Critical Shinko Alcoa Yuso Kizai KK
Priority to JP4806998A priority Critical patent/JPH11241132A/ja
Publication of JPH11241132A publication Critical patent/JPH11241132A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐食性を更に一層向上することができ、これ
により、熱交換器の長寿命化を可能にする高耐食性アル
ミニウム合金製ブレージングシートを提供する。 【解決手段】 高耐食性アルミニウム合金製ブレージン
グシートは、アルミニウム合金板材からなる心材と、前
記心材の少なくとも一方の面上に配置された中間層と、
前記心材及び中間層からなる合せ板の外側両面上に配置
されたアルミニウム合金製ろう材と、を有する。このブ
レージングシートは、ろう付後に、中間層の板厚中央か
ら中間層の板厚の25%の距離だけ両側に離間した位置
までの領域で、最も電位が卑となっている。そして、最
も卑となる電位と心材の電位との電位差ΔEが50乃至
300mVである。また、ろう材の電位は心材の電位よ
りも卑であると共に、中間層の電位よりも貴である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車のラジエー
タ、ヒータコア及びオイルクーラ等のように、アルミニ
ウム合金を腐食させる危険性がある水系媒体の通路を有
する製品に使用されるブレージングシートに関し、特
に、ろう付によって製造された後の製品の耐食性を高
め、熱交換器の長寿命化を図った高耐食性アルミニウム
合金製ブレージングシートに関する。
【0002】
【従来の技術】近時、自動車用等の熱交換器の分野にお
いては、アルミニウム合金製のブレージングシートが広
く使用されている。特に、アルミニウム合金を腐食させ
る危険性がある水系媒体の通路を有する製品に使用され
るブレージングシートとしては、従来より、心材の両面
にろう材を配置した3層構造のブレージングシート、又
は心材の水系媒体通路側となる一方の面上に犠牲陽極層
を配置すると共に、心材の他方の面上にろう材を配置し
た3層構造のブレージングシートがある。また、熱交換
器を製造するためのろう付加熱時に、ろう材の成分であ
るSiが心材に拡散されることを防止するために、心材
の水系媒体通路側となる面上又は心材の両面上に犠牲陽
極層又は中間層を配置し、これらの両面上にろう材を配
置した4層又は5層構造のブレージングシートもある。
【0003】更に、ラジエータに使用される電縫管用の
ブレージングシートとしては、例えば、心材の両面上に
ろう材を配置したブレージングシートが公知である(特
開平2−50934号公報等)。また、心材の水系媒体
通路側となる一方の面上に犠牲陽極を配置すると共に、
他方の面上にろう材を配置したブレージングシートが開
示されている(特開昭59−74284号公報等)。更
に、心材の水系媒体通路側となる一方の面上に犠牲陽極
を配置すると共に、他方の面上に中間層及びろう材を順
次配置したブレージングシートも開示されている(特開
平4−36600号公報)。
【0004】なお、一般的に、従来のブレージングシー
トにおいては、心材としてJISA3003合金材、ろ
う材としてAl−Si系合金材又はAl−Si−Mg系
合金材が使用されており、犠牲陽極又は中間層としてJ
IS 7072合金材等のAl−Zn系合金材又はAl
−Zn−Mg系合金材が使用されている。
【0005】また、オイルクーラ用のブレージングシー
トにおいては、中間層としてAl−Zn系合金材が使用
されており、ろう材としてAl−Si−Zn系合金が使
用されたものが記載されている(社団法人自動車技術
会,JSAE1996年秋季大会,学術講演会前刷集,
No.966,pp.97−100)。このブレージン
グシートは、従来の犠牲層を有する3層構造のブレージ
ングシートと比較して、犠牲層と心材との電位差を大き
くしているので、Znの犠牲防食効果が高められて、耐
食性を向上させることができる。
【0006】このように、アルミニウム合金材を腐食さ
せる虞がある水系媒体の通路側にろう材を配置する必要
がある場合には、心材と水系媒体の通路側となるろう材
との間に、犠牲層又は中間層を配置して4層又は5層構
造のブレージングシートを作製することにより、熱交換
器の耐食性を向上させることができる。
【0007】4層又は5層構造のブレージングシートに
おいては、例えば、ろう材及び中間層にZnを添加する
と、ろう付後におけるろう材中のZn濃度を高い状態で
維持することができ、ろう材の表面と心材との電位差が
所定値以上となるように確保される。このように、Zn
による犠牲陽極効果を高めることにより、ブレージング
シート表面の腐食がその表面に平行な方向に広がるの
で、シートの厚さ方向への浸食が抑制されて、耐食性を
向上させることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、Znに
よって犠牲陽極効果が高められたブレージングシートを
使用した場合においても、ろう材中のZn含有量、中間
層中のZn含有量及び心材中のCu含有量のバランスが
適切に規制されていないと、ろう材と中間層との間及び
中間層と心材との間の電位差を適切に確保することがで
きないことがある。このような場合に、使用環境によっ
ては、ろう材の自己消耗速度の増大により早期に腐食が
進行することがあるので、高耐食性ブレージングシート
を安定して得ることが困難となる。
【0009】また、Znによる犠牲陽極効果が低下した
後には、シートの厚さ方向に腐食が早期に進展すること
があるので、このようなブレージングシートを長期間使
用することが困難となる。
【0010】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、耐食性を更に一層向上することができ、こ
れにより、熱交換器の長寿命化を可能にする高耐食性ア
ルミニウム合金製ブレージングシートを提供することを
目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る高耐食性ア
ルミニウム合金製ブレージングシートは、アルミニウム
合金板材からなる心材と、前記心材の少なくとも一方の
面上に配置された中間層と、前記心材及び中間層からな
る合せ板の外側両面上に配置されたアルミニウム合金製
ろう材と、を有するブレージングシートにおいて、ろう
付後に、前記中間層の板厚中央から前記中間層の板厚の
25%の距離だけ両側に離間した位置までの領域で、最
も電位が卑となり、この最も卑となる電位と前記心材の
電位との電位差ΔEが50乃至250mVであると共
に、前記ろう材の電位は前記心材の電位よりも卑であ
り、前記中間層の電位よりも貴であることを特徴とする
高耐食性アルミニウム合金製ブレージングシート。
【0012】前記心材はCu:0.3乃至0.8重量%
及びMn:0.8乃至1.5重量%を含有し、残部がA
l及び不可避的不純物からなり、前記中間層はZn:
0.5乃至5重量%を含有し、残部がAl及び不可避的
不純物からなり、前記中間層に接する前記ろう材はS
i:7乃至13重量%及びZn:0.5乃至5重量%を
含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることが
好ましい。
【0013】本発明においては、中間層の中央近傍で最
も電位が卑となっており、この電位と心材の電位との電
位差が規定されている。そうすると、ろう材の表面から
腐食が進行しても、中間層の中央近傍でブレージングシ
ート表面に平行な方向に腐食が進行するので、シートの
厚さ方向への腐食の進行は一旦停止する。その後、所定
の期間が経過すると、再びシートの厚さ方向への腐食が
進行する。しかし、中間層と心材との界面近傍に腐食が
到達すると、この腐食はシート表面に平行な方向に進行
するので、シートの厚さ方向への腐食は停止する。この
ように、本発明においては、2段階で腐食が停止される
ので、従来のブレージングシートと比較して耐食性が向
上し、このブレージングシートを使用して作製された熱
交換器を長寿命化することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】本願発明者等は、アルミニウム合
金製の心材と中間層との間の電位差及び中間層とろう材
との間の電位差を適切に規制して、第1段階として中間
層の板厚中央近傍で腐食を停止させ、第2段階として中
間層と心材との界面近傍で腐食を停止させることによ
り、腐食の心材への進行を抑制することができることを
見い出した。
【0015】以下、本発明の実施例に係る高耐食性アル
ミニウム合金製ブレージングシートについて、添付の図
面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の実施例
に係るブレージングシートを示す断面図である。心材2
の一方の面上に中間層3が配置されており、この中間層
3の上及び心材2の他方の面上にろう材4a及び4bが
配置されている。このようにして、4層構造のブレージ
ングシート1が構成されている。
【0016】このように構成されたブレージングシート
における心材2、中間層3及びろう材4aの電位につい
て、以下に説明する。図2は縦軸に腐食電位をとり、横
軸にブレージングシート表面からの距離をとって、本発
明において規定するろう材、中間層及び心材の腐食電位
を示すグラフ図である。なお、図2中において、破線5
aは中間層3の板厚中央を示し、破線5bは中間層3の
板厚中央から心材2側又はろう材4a側に中間層3の板
厚の25%の距離だけ離間した位置を示す。
【0017】図2に示すように、本発明においては、中
間層3の板厚中央から心材2側又はろう材4a側に中間
層3の板厚の25%の距離だけ離間した位置までの領域
Rで、腐食電位が最も卑となっている。また、この腐食
電位は心材2側に近づくにつれて高くなり、心材2の腐
食電位と、最も卑となった位置の腐食電位との間の電位
差ΔEが50乃至250mVとなるように、中間層3及
び心材2の電位が制御されている。更に、ろう材4aの
電位が心材2の電位よりも卑となるように、ろう材4a
及び心材2の電位が制御されている。
【0018】図3は縦軸に腐食深さをとり、横軸に時間
をとって、本実施例に係るブレージングシート及び従来
のブレージングシートの腐食状況を示すグラフ図であ
る。なお、図3において、本実施例に係るブレージング
シートの腐食状況を実線6、従来のブレージングシート
の腐食状況を実線7で示し、ブレージングシートの表面
から中間層と心材との界面までの深さを破線8で示す。
従来のブレージングシートに対して腐食試験を実施する
と、実線7に示すように、時間の経過に伴ってシート表
面から中間層と心材との界面近傍まで腐食が進行する。
次に、中間層と心材との界面近傍において、シート表面
に平行な方向に腐食が進行し、シートの厚さ方向への腐
食の進行が抑制される。その後、犠牲防食効果が低下す
ると、再びシートの厚さ方向に腐食が進行して、この腐
食は心材に到達する。
【0019】一方、本実施例のブレージングシートに対
して腐食試験を実施すると、シートの表面から中間層の
中央近傍までは、従来のブレージングシートと同様に腐
食が進行する。しかし、本実施例においては、中間層3
の板厚の中央近傍で最も電位が卑となっているので、第
1段階として、この中央近傍においてシート表面に平行
な方向に腐食が進行する。従って、実線6に示すよう
に、第1段階においてシートの厚さ方向への腐食の進行
が抑制される。
【0020】その後一定期間が経過して、Znによる犠
牲防食効果が低下すると、腐食は再びシートの厚さ方向
に進行する。しかし、本発明においては、最も電位が卑
となる位置(中間層3の中央近傍)の腐食電位と心材の
腐食電位との電位差ΔEが適切に規制されているので、
第2段階として、中間層と心材との界面近傍でシート表
面に平行な方向に腐食が進行する。従って、第2段階に
おいて、再びシートの厚さ方向への腐食の進行が抑制さ
れる。
【0021】図3に示すように、例えば、従来のブレー
ジングシートの腐食状況と本実施例のブレージングシー
トの腐食状況とを比較すると、t1時間後の腐食状況は
いずれのブレージングシートも心材の内部にまで腐食が
到達していない。一方、t2時間後においては、比較例
のブレージングシートの腐食は心材まで到達している
が、本実施例の腐食は中間層と心材との界面で止まって
いる。このように、本実施例においては、中間層及び心
材の電位が適切に制御されているので、2段階で腐食の
進行を防止することができ、これにより、従来のブレー
ジングシートと比較して、その寿命を更に一層長くする
ことができる。
【0022】なお、最も電位が卑となる位置における腐
食電位(最卑腐食電位)と心材の腐食電位との電位差Δ
Eが50mV未満であると、腐食を停止させる犠牲防食
効果を十分に得ることができない。一方、ΔEが250
mVを超えると、早期に腐食が進行するので、シートの
耐食性が低下して、このシートを使用して作製した熱交
換器の寿命が短くなる。従って、本発明においては、最
も電位が卑となる位置における腐食電位と心材の腐食電
位との電位差ΔEは50乃至250mVとする。
【0023】また、最も電位が卑となる位置が、中間層
の中央からその板厚の25%を超えて心材側又はろう材
側に離間している場合、ろう材と中間層との間又は中間
層と心材との間における電位勾配が緩やかになる。これ
により、犠牲防食効果を十分に得られないことがあり、
このようなブレージングシートを使用した熱交換器の長
期間の使用が困難となる。従って、本発明においては、
中間層の板厚中央から、中間層の板厚の25%の距離だ
け心材側又はろう材側に離間した位置までの領域で、腐
食電位が最も卑となるようにする。
【0024】このように、本発明においては、中間層及
び心材の電位等を適切に規定することにより、高耐食性
のブレージングシートを得ることができる。これらの電
位を適切に規定する手段としては、ろう材中のZn含有
量、中間層中のZn含有量並びに心材中のCu含有量及
びMn含有量を適切に規定する方法がある。これによ
り、より一層確実に安定して高耐食性のブレージングシ
ートを得ることができる。以下、本発明に係る高耐食性
アルミニウム合金製ブレージングシートにおける心材、
中間層及びろう材中に含有される化学成分及び組成限定
理由について説明する。
【0025】心材中のCu含有量:0.3乃至0.8重
量% Cuはマトリクス中に固溶して、心材の強度を向上させ
ると共に、電位を貴とする効果を有する。心材中のCu
含有量が心材全重量あたり0.3重量%未満であると、
中間層と心材との間の電位差を十分に確保することがで
きず、中間層の犠牲防食効果が低下するので、ブレージ
ングシートの耐食性が低下する。一方、心材中のCu含
有量が0.8重量%を超えると、ろう材が心材を浸食す
るエロージョンの発生が著しく増加する。従って、心材
中のCu含有量は心材全重量あたり0.3乃至0.8重
量%とすることが好ましい。
【0026】心材中のMn含有量:0.8乃至1.5重
量% Mnは心材の強度を向上させると共に、心材の電位を貴
として、耐食性を向上させる効果を有する元素である。
心材中のMn含有量が心材全重量あたり0.8重量%未
満であると、心材の電位を貴とする効果が低減するの
で、中間層と心材との間の電位差を十分に確保すること
ができない。これにより、中間層の犠牲防食効果が低下
するので、ブレージングシートの耐食性が低下する。一
方、心材中のMn含有量が1.5重量%を超えると、粗
大な化合物が晶出されるので素材の加工性が著しく低下
する。また、心材中に1.5重量%を超えてMnを添加
しても、電位を貴とする効果はそれ以上向上しない。従
って、心材中のMn含有量は心材全重量あたり0.8乃
至1.5重量%とする。
【0027】中間層中のZn含有量:0.5乃至5.0
重量% Znは電位を卑とする効果を有する元素であり、本発明
においては、心材と中間層との電位のバランスを制御す
るために、中間層に適正量のZnを添加する。これは、
中間層と心材との電位差が小さすぎると、中間層が犠牲
陽極層として作用せず、心材が早期に腐食して消耗する
ので、ブレージングシートの耐食性が低下して、これを
使用した熱交換器の寿命が短くなるからである。従っ
て、本発明においては、中間層にZnを添加して、中間
層と心材との電位差が所定の値以上となるように、中間
層の電位を制御する。
【0028】中間層中のZn含有量が中間層全重量あた
り0.5重量%未満であると、中間層と心材との間の電
位差が小さくなりすぎて、中間層が犠牲陽極層として十
分に作用しない。一方、中間層中のZn含有量が5.0
重量%を超えると、中間層の強度及び硬度が極めて高く
なるので、中間層の圧延性及び成形性が心材の圧延性及
び成形性と著しく異なったものとなる。その結果、ブレ
ージングシートの圧延及び成形加工等が困難になる。ま
た、中間層中のZn含有量が5.0重量%を超えると、
心材と中間層との間の電位差が大きくなりすぎて、中間
層が早期に腐食して消耗するので、ブレージングシート
の耐食性が低下する。従って、中間層中のZn含有量は
中間層全重量あたり0.5乃至5.0重量%とする。
【0029】ろう材中のZn含有量:0.5乃至5.0
重量% 本発明においては、ろう材と中間層との電位バランスを
制御するために、ろう材に対しても適正量のZnを添加
する。これは、中間層とろう材との電位差が大きすぎる
と、中間層及びろう材のいずれか一方が早期に腐食して
消耗するので、ブレージングシートの耐食性が低下し
て、これを使用した熱交換器の寿命が短くなるからであ
る。従って、本発明においては、ろう材にZnを添加し
て、ろう材と中間層との間の電位差が所望の範囲となる
ように、ろう材の電位を制御する。
【0030】ろう材中のZn含有量がろう材全重量あた
り0.5重量%未満であると、中間層とろう材との間の
電位差が若干大きくなりやすく、ろう材と中間層との電
位バランスによっては、中間層が早期に腐食して消耗す
ることがある。一方、ろう材中のZn含有量が5.0重
量%を超えると、ろう材の強度及び硬度が極めて高くな
るので、ろう材の圧延性及び成形性が中間層の圧延性及
び成形性と著しく異なったものとなる。その結果、ブレ
ージングシートの圧延及び成形加工等が困難になる。ま
た、ろう材中のZn含有量が5.0重量%を超えると、
ろう材の自己消耗速度が上昇するので、ブレージングシ
ートの耐食性が低下して、これを使用した熱交換器の寿
命が短くなる。従って、ろう材中のZn含有量はろう材
全重量あたり0.5乃至5.0重量%とする。
【0031】ろう材中のSi含有量:7乃至13重量% ろう材中のSiはAlと共存することにより、ろう材を
低融点にする効果を有する。従って、Siは良好な流動
性を有するろう材を得るための基本成分である。ろう材
中のSi含有量がろう材全重量あたり7重量%未満であ
ると、ろう材の融点が高くなるので、所定の流動性を得
ることができず、ろう付性が低下する。一方、ろう材中
のSi含有量が13重量%を超える場合であっても、同
様にろう材の融点が高くなるので、所定の流動性を得る
ことができない。また、ろう材中のSi含有量が13重
量%を超えると、粗大な初晶Siが生成されて、ろう材
の加工性が阻害される。従って、ろう材中のSi含有量
はろう材全重量あたり7乃至13重量%とする。
【0032】ところで、アルミニウム合金からなる心材
とろう材との間に犠牲陽極層として配置する中間層につ
いては、その1層の厚さがブレージングシートの板厚の
3%未満であると、犠牲陽極層として腐食を停止する効
果を十分に得ることができないことがある。一方、中間
層の厚さの合計がブレージングシートの板厚の30%を
超えると、相対的に心材の厚さが減少するので、ブレー
ジングシートとして要求される所定の強度を得ることが
困難となる。従って、心材の一方の面上に中間層が配置
され、この外側両面上にろう材が配置された4層構造の
ブレージングシートの場合には、このブレージングシー
トの板厚に対する中間層の厚さの割合(クラッド率)
は、3乃至30%とすることが好ましい。また、心材の
両面上に中間層が配置され、この外側両面上にろう材が
配置された5層以上の構造を有するブレージングシート
の場合には、中間層1層あたりの厚さがブレージングシ
ートの板厚の3%以上とし、中間層の厚さの合計がブレ
ージングシートの板厚の30%以下とすることが好まし
い。
【0033】なお、図1に示す4層構造のブレージング
シートを製造した場合に、中間層3に接するろう材4a
に対しては、上述の如く、ろう材中にZnを添加するこ
とによってろう材と中間層との間の電位差を適切に制御
する必要がある。しかし、心材2の他方の面上に配置さ
れたろう材4bとしては、ブレージングシートの使用環
境によっては、Znが添加されていないAl−Si系合
金(例えば、JIS4000系)からなるろう材等を使
用することができる。
【0034】また、本発明に係る高耐食性アルミニウム
合金製ブレージングシートは、図1に示す構造に限定さ
れず、心材2とろう材4bとの間に中間層が配置された
5層構造であってもよい。このような構造の場合には、
いずれのろう材についても、上述の如く組成を制御する
ものとする。
【0035】
【実施例】以下、本発明に係る高耐食性アルミニウム合
金製ブレージングシートの実施例についてその比較例と
比較して具体的に説明する。
【0036】先ず、種々の化学組成を有する心材用アル
ミニウム合金、中間層用アルミニウム又はアルミニウム
合金及びろう材用アルミニウム合金の鋳塊を作製し、種
々の組み合わせによってこれらを加工することにより、
図1に示す4層構造で0.6mmの厚さであるブレージ
ングシートを作製した。但し、ろう材のクラッド率は全
て10%とし、中間層の厚さは全体の厚さの20%とし
た。心材用アルミニウム合金、中間層用アルミニウム又
はアルミニウム合金及びろう材用アルミニウム合金の化
学組成を、夫々、下記表1、2及び3に示す。なお、下
記表1乃至3に示す組成の残部は、Al及び不可避的不
純物である。
【0037】次いで、得られたブレージングシートを切
断して、幅が200mm、長さが220mmの矩形板と
し、この矩形板の表面の全面に、市販の非腐食性フラッ
クスを5g/m2 となるように塗布した。次に、この
矩形板を、その長手方向を垂直にして吊り下げ、酸素濃
度が200ppm以下の雰囲気中において595℃の温
度で5分間保持することにより、矩形板のろう付熱処理
を実施した。
【0038】その後、得られたろう付熱処理材を切断し
て、幅が50mm、長さが60mmの矩形片とし、耐食
試験面の端部から中央寄りの5mmの位置までの四辺部
と、裏面全面をシールテープによってシールして、耐食
試験用試験片を作製した。
【0039】耐食試験については、耐食試験用試験片を
OY水(Cl−:195重量ppm、SO42−:60
重量ppm、Cu2+:1重量ppm及びFe3+:3
0重量ppmの水溶液)に浸漬した後、80℃の温度に
おける8時間の保持と室温における16時間の保持とを
1サイクルとして、90サイクル及び200サイクル連
続して繰り返すものとした。そして、腐食部の断面を顕
微鏡写真により観察し、浸食深さを測定することによ
り、耐食性を評価した。
【0040】また、前記ろう付熱処理材を切断して、幅
が20mm、長さが70mmの短冊片とし、5重量%の
NaOH水溶液中で所望の板厚までエッチングした。次
に、このエッチング材の試験面に10mm×10mmの
領域を残して、他の四辺部と裏面全面をシールテープに
よってシールして腐食電位測定試験片を作製した。その
後、参照電極としてAg/AgCl電極を使用して、大
気放置した5重量%のNaCl水溶液中で前記測定試験
片を30分間静置した後、この試験片の腐食電位を測定
した。なお、測定した腐食電位のろう付表面からの位置
については、エッチング材の断面を顕微鏡によって観察
することにより確認した。
【0041】本実施例において使用した心材、中間層及
びろう材の組み合わせ、各層における腐食電位並びに最
卑腐食電位と心材の腐食電位との電位差ΔEを下記表4
及び5に示し、最卑腐食電位位置及び耐食性の評価結果
を下記表6乃至9に示す。但し、下記表6乃至9に示す
最卑電位位置及び腐食深さにおいては、ろう付後のろう
材の表面からの距離で示している。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】
【表7】
【0049】
【表8】
【0050】
【表9】
【0051】上記表1乃至9に示すように、実施例N
o.1乃至15は、最卑腐食電位の位置、電位差ΔEが
本発明の範囲内であるので、耐食性試験を200サイク
ル実施した後でも腐食が中間層内で停止した。このよう
に、中間層の中央近傍及び中間層と心材との界面近傍で
2段階の腐食の停止が起こるので、ブレージングシート
の耐食性を向上させることができ、これを使用した熱交
換器を長寿命化することができる。
【0052】なお、実施例No.1乃至15の耐食性
(腐食深さ)をグラフで示すと、図3の実線6に示すよ
うに、中間層の中央近傍及び中間層と心材との界面で腐
食の進行が停止する。従って、90サイクル(t1)の
耐食性試験及び200サイクル(t2)の耐食性試験を
実施した後でも、腐食が心材に到達することを防止する
ことができた。
【0053】一方、比較例No.16乃至18及び20
は電位差ΔEは本発明の範囲内であり、90サイクルま
での腐食試験では腐食は中間層中で停止した。しかし、
比較例No.16は心材中のCu含有量が本発明の下限
未満であり、比較例No.17は心材中のCu含有量が
本発明の上限を超えており、比較例No.18は心材中
のMn含有量が本発明の下限未満であって、これらの最
卑腐食電位の位置はいずれも本発明の範囲から心材側に
外れている。従って、心材と中間層との間における電位
勾配が緩やかになって、中間層の犠牲防食効果が十分に
得られず、特に、比較例No.17は電位差ΔEが本発
明範囲の上限を超えているので、自己消耗速度が増大
し、いずれも200サイクルの腐食試験によって腐食が
心材に到達した。また、比較例No.20は中間層中の
Zn含有量が本発明範囲の下限未満であり、最卑腐食電
位の位置は本発明の範囲からろう材側に外れている。従
って、ろう材と中間層との間における電位勾配が緩やか
になって、中間層の犠牲防食効果が十分に得られず、2
00サイクルの腐食試験によって腐食が心材に到達し
た。
【0054】比較例No.19は90サイクルまでの腐
食試験では腐食は中間層中で停止するが、中間層のZn
含有量が本発明の下限未満であり、電位差ΔEが本発明
範囲の下限未満であるので、中間層による犠牲防食効果
が十分に得られず、中間層の中央近傍で腐食の進行が一
旦停止した後に、早期に腐食が進行した。比較例No.
21は心材中のMn含有量が本発明範囲の上限を超えて
おり、心材中にAl−Mn系の粗大な化合物を晶出した
ので、心材の熱間圧延時の耳割れ状況が著しく劣化し
て、量産性が不十分となった。
【0055】比較例No.22及び23は中間層のZn
含有量が本発明範囲の上限を超えているので、中間層の
強度及び硬度が極めて高くなって、クラッド層間で圧延
性及び成形性等が著しく異なるものとなり、圧延加工す
ることができなかった。比較例No.24はろう材中の
Zn含有量が本発明範囲の上限を超えているので、ろう
材の強度及び硬度が極めて高くなって、クラッド層間で
圧延性及び成形性等が著しく異なるものとなり、圧延加
工することができなかった。比較例No.25及び26
はろう材中のSi含有量が本発明の範囲から外れている
ので、ろう材の融点が高くなって、ろう付することがで
きなかった。従って、比較例No.22乃至26につい
ては、耐食性試験を実施しなかった。比較例No.27
はろう材中のZn含有量が本発明範囲の下限未満である
ので、200サイクルの腐食性試験で腐食が芯材に到達
した。
【0056】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
心材と中間層中の最卑腐食電位との電位差ΔE及び最卑
腐食電位の位置を適切に規定しているので、ブレージン
グシートの耐食性を向上させることができ、これを使用
した熱交換器を長寿命化することができる。また、心
材、中間層及びろう材の組成を適切に規定すると、より
一層安定して耐食性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るブレージングシートを示
す断面図である。
【図2】縦軸に腐食電位をとり、横軸にブレージングシ
ート表面からの距離をとって、本発明において規定する
ろう材、中間層及び心材の腐食電位を示すグラフ図であ
る。
【図3】縦軸に腐食深さをとり、横軸に時間をとって、
本実施例に係るブレージングシート及び従来のブレージ
ングシートの腐食状況を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1;ブレージングシート 2;心材 3;中間層 4a、4b;ろう材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F28F 19/06 F28F 19/06 B 21/08 21/08 B

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム合金板材からなる心材と、
    前記心材の少なくとも一方の面上に配置された中間層
    と、前記心材及び中間層からなる合せ板の外側両面上に
    配置されたアルミニウム合金製ろう材と、を有するブレ
    ージングシートにおいて、 ろう付後に、前記中間層の板厚中央から前記中間層の板
    厚の25%の距離だけ両側に離間した位置までの領域
    で、最も電位が卑となり、この最も卑となる電位と前記
    心材の電位との電位差ΔEが50乃至250mVである
    と共に、前記ろう材の電位は前記心材の電位よりも卑で
    あり、前記中間層の電位よりも貴であることを特徴とす
    る高耐食性アルミニウム合金製ブレージングシート。
  2. 【請求項2】 前記心材はCu:0.3乃至0.8重量
    %及びMn:0.8乃至1.5重量%を含有し、残部が
    Al及び不可避的不純物からなり、前記中間層はZn:
    0.5乃至5重量%を含有し、残部がAl及び不可避的
    不純物からなり、前記中間層に接する前記ろう材はS
    i:7乃至13重量%及びZn:0.5乃至5重量%を
    含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを
    特徴とする請求項1に記載の高耐食性アルミニウム合金
    製ブレージングシート。
JP4806998A 1998-02-27 1998-02-27 高耐食性アルミニウム合金製ブレージングシート Pending JPH11241132A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4806998A JPH11241132A (ja) 1998-02-27 1998-02-27 高耐食性アルミニウム合金製ブレージングシート

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4806998A JPH11241132A (ja) 1998-02-27 1998-02-27 高耐食性アルミニウム合金製ブレージングシート

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11241132A true JPH11241132A (ja) 1999-09-07

Family

ID=12793071

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP4806998A Pending JPH11241132A (ja) 1998-02-27 1998-02-27 高耐食性アルミニウム合金製ブレージングシート

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11241132A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7255932B1 (en) * 2002-04-18 2007-08-14 Alcoa Inc. Ultra-longlife, high formability brazing sheet
CN102814597A (zh) * 2012-06-19 2012-12-12 银邦金属复合材料股份有限公司 一种钎焊用钎料4045铝合金

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7255932B1 (en) * 2002-04-18 2007-08-14 Alcoa Inc. Ultra-longlife, high formability brazing sheet
CN102814597A (zh) * 2012-06-19 2012-12-12 银邦金属复合材料股份有限公司 一种钎焊用钎料4045铝合金

Similar Documents

Publication Publication Date Title
RU2553133C2 (ru) Алюминиевый лист для высокотемпературной пайки с высокой прочностью и превосходными коррозионными характеристиками
CN101146921B (zh) 铝合金板及用其形成的热交换器
JP2564190B2 (ja) ろう付け用アルミニウム合金複合材
JP3734302B2 (ja) ろう付熱交換器用アルミニウム合金製ブレージングシート
MX2010005357A (es) Lamina para soldadura fuerte de aleaciones de aluminio para tubos delgados.
EP1409187A2 (en) Brazing sheet
JP7262476B2 (ja) アルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法
JP5068981B2 (ja) アルミニウム合金クラッド材
JPH06182581A (ja) 熱交換器ろう付用アルミニウム合金ろう材および熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシート
JPS6248743B2 (ja)
JPH1161306A (ja) 熱交換器用アルミニウム合金複合材
JPH07179969A (ja) アルミニウム合金製熱交換器用複合ブレージングシート
JP3788737B2 (ja) 高耐食性ブレージングシート
JP5019797B2 (ja) 犠牲陽極材およびアルミニウム合金複合材
JPH11241132A (ja) 高耐食性アルミニウム合金製ブレージングシート
JP3794820B2 (ja) 高耐食性アルミニウム合金製ブレージングシート
JPH11209837A (ja) 熱交換器用犠牲防食アルミニウム合金及びこれを用いた熱交換器用アルミニウム合金複合材
JPH09291328A (ja) ろう付用アルミニウム合金複合部材及びろう付方法
JP3749089B2 (ja) 犠牲防食アルミニウム合金板及びその複合材
JP4596618B2 (ja) 熱交換器用高耐食性アルミニウム合金複合材及び熱交換器用防食アルミニウム合金
JP2842667B2 (ja) A1熱交換器用高強度高耐食性a1合金クラッド材
JP2009167509A (ja) アルミニウム合金クラッド材
JP2005224851A (ja) アルミニウム合金製ブレージングシート
JP2001162394A (ja) 高耐食アルミニウム合金製ブレージングシート、その製造方法及びそれを使用したろう付け方法
JPH06184686A (ja) 熱交換器用高強度高耐食性アルミニウム合金ブレージングシート