JPH11239874A - 金属部材の補修方法及び補修用溶接材料 - Google Patents

金属部材の補修方法及び補修用溶接材料

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JPH11239874A
JPH11239874A JP4386498A JP4386498A JPH11239874A JP H11239874 A JPH11239874 A JP H11239874A JP 4386498 A JP4386498 A JP 4386498A JP 4386498 A JP4386498 A JP 4386498A JP H11239874 A JPH11239874 A JP H11239874A
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Naoyuki Suzuki
直之 鈴木
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芳夫 前田
Kazuo Hiraoka
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Abstract

(57)【要約】 【課題】予熱処理や後熱処理などを特に施さなくても、
肉盛り溶接による補修後の引張残留応力の緩和、あるい
は積極的に圧縮残留応力の付与ができて疲労強度上に有
利な金属部材の補修方法及びそのための溶接材料を提供
することを課題とする。 【解決手段】溶接材料として、Cを0.025重量%、
Siを0.33重量%、Mnを0.703重量%、Ni
を10.0重量%、Crを10.0重量%、Moを0.
13重量%を含有する鉄合金を使用して、補修すべき部
分に肉盛り溶接による補修を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶や橋梁その他
の鋼構造物や鋳物製品に生じた表面欠陥の補修に有用な
金属部材の補修方法、及びその補修方法により前記補修
を行う際に用いられる溶接材料に係り、特に、溶接材料
を用いて補修を行う際に補修部の耐溶接割れ性および疲
労強度を向上できる金属部材の補修方法および金属部材
の補修用溶接材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】船舶,海洋構造物,ペンストック,橋梁
などの鋼構造物や鋳物製品に生じた疲労き裂や、意図し
ない表面欠陥部や工作ミスによる穴部などの補修すべき
箇所(以下、表面欠陥と称する)が存在するとき、その
箇所を一旦削除した後又はそのままの状態でその箇所に
肉盛り溶接を行うことにより補修する場合がある。この
補修溶接は、その補修すべき箇所に溶接金属を充填させ
て補修を行う。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、通常、肉盛り
溶接により補修を行うと、溶接部(補修部)近傍だけ
が、周辺部分に拘束された状態で且つ局部的に温度上昇
によって膨張し、続いて起こる冷却により収縮が生じ、
通常の溶接材料を使用した場合には、溶接部に引張残留
応力が導入される。
【0004】すなわち、上記溶接部に生じる引張残留応
力は、溶接後の溶接金属が冷却される際に熱収縮するこ
とに起因する。図1中破線は、低合金鋼の被溶接材に通
常の溶接材料を肉盛り溶接した際の、溶接後の冷却過程
における溶接金属の収縮状態を示すものであり、溶接金
属は、溶接後に図1中の破線の矢印方向に熱収縮する。
【0005】そして、従来の低合金鋼からなる溶接材料
を用いた場合、温度低下するに従い溶接金属は熱収縮し
て伸び(長さ)が小さくなるが、500℃付近で伸び
(長さ)が大きくなる領域が存在する。これは、500
℃付近にてマルテンサイト変態が生じ、このマルテンサ
イト変態にともなう溶接金属の膨張が発生するためであ
る。このマルテンサイト変態が終了すると、再び熱収縮
のみが起こり温度が下がるにつれて伸びが小さくなる。
溶接金属が凝固点から約600℃程度まで冷却される際
には、溶接金属の降伏応力が低いので、塑性変形を伴い
ながら冷却され、そのため、収縮により生ずる引張残留
応力は、この塑性変形により緩和される。しかし、約6
00℃からの冷却過程での収縮では、溶接金属の降伏応
力が大きいために、塑性変形が起こりにくく引張残留応
力が導入されることとなる。
【0006】このように、通常の溶接材料を用いた肉盛
り溶接で生じる溶接金属には、引張残留応力を緩和させ
る作用がなく、また、従来においては、溶接材料の特定
によって補修後の引張残留応力を緩和させるという発想
もなかったため、単に溶接材料の肉盛りにより補修を行
うだけでは、補修後の溶接金属の冷却過程における収縮
に起因する溶接割れを防止したり、溶接部近傍に導入さ
れる大きな引張残留応力を緩和することができないの
で、補修の前後で予熱処理や後熱処理などを施す必要が
あるという問題がある。
【0007】しかも、上記予熱処理や後熱処理を追加し
ても、必ずしも上記引張残留応力が十分に緩和するとは
限らない。そこで、本発明は、上記のような問題点に着
目してなされたもので、必ずしも予熱処理や後熱処理な
どを施さないでも、溶接材料を用いて補修した後の引張
残留応力の緩和、あるいは積極的に圧縮残留応力の付与
が可能な金属部材の補修方法及びそのための補修用溶接
材料を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明のうち請求項1に記載の金属部材の補修方法
は、金属部材に生じた表面欠陥を該表面欠陥に溶接材料
を肉盛り溶接することにより補修する金属部材の補修方
法において、前記肉盛り溶接により生成する溶接金属
に、溶接後の冷却過程でマルテンサイト変態を起こさ
せ、前記溶接金属が室温において該マルテンサイト変態
の開始時よりも膨張している状態とすることを特徴とす
るものである。
【0009】鉄合金は先に述べたように、冷却過程にお
いて、マルテンサイト変態が生じると、マルテンサイト
変態開始からある程度温度が降下するまでの間に一旦膨
張する。
【0010】本発明においては、溶接により生成する溶
接金属に、溶接後の冷却過程でマルテンサイト変態を起
こさせ、しかも室温において該マルテンサイト変態の開
始時よりも膨張している状態とすることにより、冷却過
程で溶接金属および溶接部近傍に生じる溶接割れの防
止、および引張残留応力を緩和、あるいは、引張残留応
力に代えて圧縮残留応力を付与することができる。
【0011】次に請求項2に記載の金属部材の補修方法
は、請求項1に記載の補修方法に対して、前記溶接材料
としてマルテンサイト変態開始温度が250℃未満17
0℃以上の鉄合金を使用することを特徴とするものであ
る。
【0012】図1に、本発明に係る溶接材料の変態特性
(図1中、実線)を従来の溶接材料の変態特性(図1
中、破線)と比較して示す。本発明においては、マルテ
ンサイト変態の開始温度が250℃未満170℃以上と
なる鉄合金を溶接材料として使用することで、溶接金属
のマルテンサイト変態による膨張量を大きくすることが
でき、且つ、該膨張量の大きな状態が室温付近となっ
て、溶接金属の冷却過程終了時には、当該溶接金属がマ
ルテンサイト変態開始時よりも膨張している状態とな
る。
【0013】このため、本願発明によれば、当該膨張に
より圧縮残留応力が導入されて、溶接後の溶接金属の冷
却過程における収縮応力に起因する溶接割れが発生せ
ず、さらに補修後の溶接継手の疲労強度が向上する。
【0014】なお、溶接金属のマルテンサイト変態開始
温度は、補修すべき被溶接材の化学組成及び溶接材料の
化学組成に左右されるので、例えば、溶接材料のマルテ
ンサイト変態開始温度が250℃未満170℃以上とな
るように溶接材料の化学組成を調整することにより、溶
接金属のマルテンサイト変態開始温度を250℃未満1
70℃以上に設定することは可能である。
【0015】ここで、上記マルテンサイト変態開始点の
温度を250℃未満としたのは、マルテンサイト変態開
始温度が高くなるほど当該変態による膨張量が小さく、
しかも、変態膨張の最大点が室温よりも高い温度となる
ために、その後の室温までの冷却過程で再度熱収縮が生
じ、これにより変態膨張の効果を十分に得ることができ
ないからである(上記図1中の破線参照)。
【0016】また、マルテンサイト変態開始温度を17
0℃以上としたのは、マルテンサイト変態開始温度が1
70℃未満ではマルテンサイト変態が開始しても冷却過
程終了までの変態膨張量が小さく、上記変態膨張の効果
を十分に得ることができないからである。
【0017】次に、請求項3に記載した発明は、請求項
1または請求項2に記載した金属部材の補修方法に用い
る溶接材料であって、C,Cr,Ni,Si,Mn,M
oおよびNbの含有量を下記(1)式を満たすように調
整した鉄合金であることを特徴とする金属部材の補修用
溶接材料を提供するものである。
【0018】 170 ≦ 719 −795 ×C(重量%)−23.7×Cr(重量%) −26.5×Ni(重量%)−35.55 ×Si(重量%) −13.25 ×Mn(重量%)−23.7×Mo(重量%) −11.85 ×Nb(重量%)< 250 ・・・(1) 一般に鉄鋼材料のマルテンサイト変態開始温度(Ms
点)は化学組成の影響を受けることが知られている。村
田らは、溶接学会論文集、第9巻(1991)第1号
「応力緩和におよぼす合金元素および変態温度の影響」
において、Ms点と各種合金元素の含有量との関係につ
いて、 Ms(℃)=719−26.5×Nieq−23.7×Creq Nieq=30×C(重量%)+0.5×Mn(重量%) Creq=Cr(重量%)+Mo(重量%)+1.5×Si(重量%) +0.5×Nb(重量%) なる式を得ている。
【0019】前述のように、補修部の使用温度が室温で
ある場合、マルテンサイト変態開始温度が250℃未満
170℃以上の鉄合金を溶接材料として使用すること
で、溶接金属のマルテンサイト変態による膨張量を大き
くすることができ、且つ、該膨張量の大きな状態が室温
付近となって、溶接金属の冷却過程終了時には、当該溶
接金属がマルテンサイト変態開始時よりも膨張している
状態となる。このため、当該膨張により、冷却過程にお
ける収縮量が小さくなって溶接割れが防止され、さらに
は、圧縮残留応力が導入されて、溶接金属の冷却過程で
生じる引張残留応力を低減する。この結果、溶接後の補
修部の疲労強度が向上する。
【0020】したがって、上式により、Ms点が250
℃未満170℃以上となるように鉄合金のC,Cr,N
i,Si,Mn,MoおよびNbの含有量を調整すれ
ば、溶接割れが発生せず、しかも補修部の疲労強度を向
上させることが可能な溶接材料を得ることができる。
【0021】次に、請求項4に記載した発明は、請求項
3に記載した溶接材料に対して、Cを0.10重量%以
下、Crを8.0〜13.0重量%、Niを5.0〜1
2.0重量%含有することを特徴とするものである。
【0022】ここで、Cの含有量は、溶接性を確保し、
マルテンサイトの硬さを下げるために少ない方が好まし
く、溶接割れを生じさせないためには0.1重量%以
下、好ましくは0.06重量%以下とするのが好まし
い。
【0023】また、上記マルテンサイト変態開始温度
は、C,Cr,Ni,Si,Mn,MoおよびNbの含
有量を調整することにより変化させることができるが、
これら元素のうちCrおよびNiは含有量を増加させて
も、製造工程における加工性にさほど影響を及ぼさない
ため、CrおよびNi含有量を増加させてマルテンサイ
ト変態開始温度を調整することが好ましい。
【0024】ここで、Crの含有量を8.0重量%以上
としたのは、8.0重量%未満である場合、マルテンサ
イト変態開始温度を250℃未満とするためには、高価
なNiや、溶接材料の製造時の加工性を劣化させるその
他の成分を多量に含有させる必要が生じるためである。
また、13.0重量%以下としたのは、13.0重量%
を超えると溶接金属の組織にフェライト組織が出現して
好ましくないからである。
【0025】また、Niの含有量を5.0〜12.0重
量%に規制したのは、5.0%重量未満では、マルテン
サイト変態開始温度を250℃未満とするために溶接材
料の製造時の加工性を劣化させるその他の成分を多量に
含有させる必要が生じる。また、Niは高価な元素であ
り多量に添加するのは経済的にも好ましくないので、N
i含有量の上限値は12.0%とした。
【0026】次に、請求項5に記載した発明は、請求項
4に記載の溶接材料に対して、Siを0.2〜1.0重
量%、Mnを0.4〜2.5重量%、Moを4.0重量
%以下、Nbを1.0重量%以下含有することを特徴と
するものである。
【0027】ここで、Siの含有量を0.2〜1.0重
量%としたのは、Siは脱酸材として添加されるため
0.2重量%は必要であり、1.0重量%を超えると溶
接材料製造工程における加工性が低下するためである。
【0028】同様に、Mnの含有量を0.4〜2.5重
量%としたのは、Mnは脱酸材として添加されるため
0.4重量%以上は必要であり、2.5重量%を超える
と溶接材料製造工程における加工性が低下するためであ
る。
【0029】また、Moは溶接部耐食性を持たせるため
に添加することができるが、4.0重量%を超えると溶
接材料製造工程における加工性が低下するため、Moの
含有量を4.0重量%以下とした。
【0030】また、Nbはマルテンサイト変態開始温度
を低下させる効果があるために添加することができる
が、Nb含有量が1.0重量%を超えると溶接材料製造
工程における加工性が低下するため、Nbの含有量を
1.0重量%以下とした。
【0031】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図面
を参照しつつ説明する。本実施形態は、HT780MP
aクラスの鋼板からなる鋼構造物表面1に疲労き裂2
(図2参照)が発生したとき疲労き裂部をはつった後、
そこを溶接材料によって肉盛りすることによる補修であ
る。補修部の鋼板は、板厚:20mm、板幅:240m
m、長さ:800mmで、ビード長さ:150mmの溶
接を行った。符号5は溶接金属を示す。
【0032】溶接材料としては、Cを0.025重量
%、Siを0.33重量%、Mnを0.703重量%、
Niを10.0重量%、Crを10.0重量%、Moを
0.13重量%を含有する鉄合金を使用する。この溶接
材料は、マルテンサイト変態開始点Msの温度は約19
0℃であり、図1中実線に示すようなマルテンサイト変
態特性を備えている。
【0033】なお、Moを含有するのは耐食性を持たせ
るためであり、また、従来の溶接材料においては、上記
添加物のうちNiおよびCrは、添加されていないか、
添加されていても、Ni含有量が3.0重量%未満で、
且つMn含有量が1.0重量%未満程度の微量しか添加
されていない。
【0034】そして、補修すべき疲労き裂に沿って肉盛
り溶接を行う。上記補修により補修部(溶接部)に生じ
た溶接線に直交する方向残留応力(σy)の溶接線に直
交する方向での分布を図3に示す。なお、溶接線方向に
も残留応力σxは生じるが、補修した疲労き裂が再発生
する場合にそれを支配する方向の応力であるσyで評価
したものを図3に示した。
【0035】本発明に基づく溶接材料を用いた場合の溶
接金属は、冷却過程で190℃程度まで冷却されるとマ
ルテンサイト変態を起こし、その後の冷却過程で膨張し
最大に膨張した室温近傍で冷却過程が終了する(図1の
実線参照)。この結果、溶接金属および図3に示すよう
に溶接部近傍に圧縮残留応力が付与される。また、この
ように溶接金属および溶接部近傍に圧縮残留応力が付与
されるため、溶接金属および溶接部近傍での溶接割れは
発生しない。
【0036】一方、従来の溶接材料を用いた場合の溶接
金属は、冷却過程で収縮する(図1の点線参照)。この
結果、溶接金属および図3に示すように溶接部近傍に引
張残留応力が付与される。また、このように溶接金属お
よび溶接部近傍に引張残留応力が付与されるため、溶接
金属および溶接部近傍での溶接割れが発生するおそれが
ある。
【0037】ここで、上記実施形態では、き裂に対する
補修を例に説明しているが、凹部や小孔等の形状の破損
箇所の補修についても、上記補修溶接は採用できる。ま
た、鋼構造物を例に説明しているが、図4に示す鋳造製
品3に生じた引巣部4の補修に、上記補修溶接を採用し
ても構わない。
【0038】また、上記本願発明の基づく補修を行うと
共に、予熱処理又は後熱処理を追加して、さらに補修部
の溶接割れの防止や疲労強度の向上を図ってもよい。
【0039】
【実施例】第1の実施例は、上記実施形態に基づき、表
1に示す化学組成の溶接材料を用いて、鋼板に疲労き裂
が発生したときの溶接材料の肉盛りによる補修を想定し
たものである。すなわち、Cが0.11重量%、Siが
0.24重量%、Mnが0.97重量%、Niが1.0
重量%、Crが0.47重量%、Moが0.31重量%
からなる鋼板に対し、補修溶接(鋼板は、板厚:20m
m、板幅:240mm、長さ:800mmで、ビード長
さ:150mm)を行い、片振り疲労試験(応力比R=
0)を実施した。
【0040】その結果を表2に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】表2の結果から、試験材No.1〜6は、
溶接材料としてマルテンサイト変態温度が170℃以上
250℃未満の範囲内にある溶接材料A〜Fを用いるこ
とにより、従来の溶接材料Lを用いた試験材No.12
の場合よりも疲労強度が向上していることがわかる。
【0044】特に、試験材No.1の溶接材料のよう
に、本願発明の範囲でマルテンサイト変態温度が低い場
合には疲労強度が大きく向上していることが分かる。ま
た、試験材No.7〜No.11のように、溶接材料と
してNiやCrを含有したものを用いても、溶接材料が
請求項3に記載の本発明の範囲から外れたものである
と、疲労強度が向上しないことがわかる。
【0045】このとき、試験材No.7,9,10およ
びNo.11に示すように溶接材料G,I,JおよびK
を使用した場合、表1からわかるようにマルテンサイト
変態開始温度Ms点が250℃以上であるため、マルテ
ンサイト変態後の冷却過程において溶接金属が収縮して
疲労強度が向上しないことがわかる。
【0046】また、試験材No.9に示すように溶接材
料Iを使用した場合、マルテンサイト変態開始温度Ms
点が室温よりも低いため、溶接後室温までの冷却過程に
おいて溶接金属のマルテンサイト変態が生じないため大
きな引張残留応力が生じて疲労強度が向上しないことが
分かる。
【0047】次に、第2の実施例は、Cが0.11重量
%、Siが0.24重量%、Mnが0.97重量%、N
iが1.0重量%、Crが0.47重量%、Moが0.
31重量%からなる鋼板、及びCが0.28重量%、S
iが0.48重量%、Mnが0.97重量%、Niが
1.8重量%、Crが0.6重量%、Moが0.25重
量%からなる鋳物製品に存在する,意図しない表面欠陥
部および工作ミスによる穴部についての補修を想定した
ものである。
【0048】すなわち、鋼板および鋳物製品に図5に示
すように開先加工後に肉盛り溶接(補修部の板材6は、
板厚:20mm、板幅:240mm、長さ:250mm
で、ビ―ド長さ:100mm)を行い、溶接金属5およ
び溶接部近傍の溶接割れの発生の有無をカラーチェック
を行い調査した。
【0049】その結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】表3のうち、本発明範囲から外れた試験材
No.7〜12は、母材の種類によらず溶接後の溶接金
属の冷却過程における収縮応力によって割れが発生して
いるのに対して、本発明範囲内である試験材No.1〜
6は、母材の種類によらず溶接後の溶接金属の冷却過程
においてマルテンサイト変態を起こして膨張し、最大に
膨張した室温近傍で冷却過程が終了するため、収縮応力
による割れは発生しないことが分かる。
【0052】この結果、本発明に基づいて補修を行った
場合には、補修後,肉盛り溶接面を機械加工によって仕
上げることにより、完全に欠陥のない平面を得ることが
できた。
【0053】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明に基づ
く補修を行った場合、補修時に特別な熱処理を施さなく
ても、マルテンサイト変態膨張を有効に利用すること
で、溶接材料の肉盛りにより生じた溶接金属の冷却過程
における収縮応力に起因する溶接割れが防止され、さら
に溶接部(補修部)における引張残留応力が低減する。
この結果、補修後の補修部の疲労強度が向上するという
効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係わる溶接材料(実線)
および従来の溶接材料(破線)の変態特性を示す図であ
る。
【図2】本発明の実施の形態に係わる補修溶接を示す図
である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる溶接材料よび従来
の溶接材料を用いた肉盛り溶接における溶接部近傍の残
留応力分布を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係わる鋳物製品の引巣部
の補修に採用する例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係わる溶接材料よび従来
の溶接材料を用いた開先加工後の肉盛り溶接を説明する
図であり、(a)はその平面図を、(b)はそのA−A
断面図をそれぞれ示している。
【符号の説明】
1 鋼構造物表面 2 疲労き裂 3 鋳物製品 4 引巣部 5 溶接金属 Ms マルテンサイト変態開始点 y 溶接部からの距離 σy 溶接線と直交する方向の残留応力 σx 溶接線方向への残留応力
フロントページの続き (72)発明者 久保 高宏 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 太田 昭彦 茨城県つくば市千現1丁目2番1号 科学 技術庁金属材料技術研究所内 (72)発明者 鈴木 直之 茨城県つくば市千現1丁目2番1号 科学 技術庁金属材料技術研究所内 (72)発明者 前田 芳夫 茨城県つくば市千現1丁目2番1号 科学 技術庁金属材料技術研究所内 (72)発明者 平岡 和雄 茨城県つくば市千現1丁目2番1号 科学 技術庁金属材料技術研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属部材に生じた表面欠陥を該表面欠陥
    に溶接材料を肉盛り溶接することにより補修する金属部
    材の補修方法において、 前記肉盛り溶接により生成する溶接金属に、溶接後の冷
    却過程でマルテンサイト変態を起こさせ、前記溶接金属
    が室温において該マルテンサイト変態の開始時よりも膨
    張している状態とすることを特徴とする金属部材の補修
    方法。
  2. 【請求項2】 前記溶接材料としてマルテンサイト変態
    開始温度が250℃未満170℃以上の鉄合金を使用す
    ることを特徴とする請求項1に記載した金属部材の補修
    方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載した金属
    部材の補修方法に用いる溶接材料であって、C,Cr,
    Ni,Si,Mn,MoおよびNbの含有量を下記
    (1)式を満たすように調整した鉄合金であることを特
    徴とする金属部材の補修用溶接材料。 170 ≦ 719 −795 ×C(重量%)−23.7×Cr(重量%) −26.5×Ni(重量%)−35.55 ×Si(重量%) −13.25 ×Mn(重量%)−23.7×Mo(重量%) −11.85 ×Nb(重量%)< 250 ・・・(1)
  4. 【請求項4】 Cを0.10重量%以下、Crを8.0
    〜13.0重量%、Niを5.0〜12.0重量%含有
    することを特徴とする請求項3に記載された金属部材の
    補修用溶接材料。
  5. 【請求項5】 Siを0.2〜1.0重量%、Mnを
    0.4〜2.5重量%、Moを4.0重量%以下、Nb
    を1.0重量%以下含有することを特徴とする請求項4
    に記載された金属部材の補修用溶接材料。
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