JP2001246495A - 溶接材料および溶接継手の製造方法 - Google Patents
溶接材料および溶接継手の製造方法Info
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Abstract
熱を施すことなく低温割れを防止でき、さらに溶接継手
の耐疲労特性に優れ、また溶接金属の強度を適正に調整
できる、溶接材料および溶接継手の製造方法を提案する
とともに、溶接低温割れを防止した溶接継手を提案す
る。 【解決手段】 溶接材料は、C:0.20%以下、Cr: 6.0
〜16.0%、Ni: 6.0〜16.0%を含有し、さらにSi:1.0
%以下、Mn:2.5 %以下を含む組成で、マルテンサイト
変態開始温度(Ms 点)が 170℃未満0℃以上の鉄基合
金を使用する。このような溶接材料を用いて、低合金鋼
材を被溶接材として、溶接し、溶接金属が、C:0.20%
以下、Cr: 3.0〜13.0%、Ni: 3.0〜13.0%を含有し、
マルテンサイト変態開始温度(Ms 点)が 360℃以下50
℃以上、好ましくは170 ℃未満50℃以上の鉄合金組成を
有する溶接継手とする。
Description
槽、建設機械等の大型鋼構造物の溶接に用いて好適な溶
接材料に係り、とくに溶接継手部の耐溶接割れ性改善、
耐疲労特性の改善に関する。
や貯槽、建設機械等の大型鋼構造物においては、軽量化
の目的から使用鋼材の高強度化が要望されている。これ
ら鋼構造物に使用される鋼材には、主としてCr、Ni、Mo
等の合金元素が10質量%未満、好ましくは 5.0質量%未
満含有された、いわゆる低合金鋼が使用され、その強度
は、引張強さ:290MPa〜1180MPa の範囲を有している。
じ、低合金鋼のなかでも高強度の鋼材を使用すると、溶
接の際に低温割れが多発する場合がある。この高強度鋼
材の溶接継手に発生する低温割れの主因は、溶接中に溶
接金属に溶解した水素であり、この水素は冷却中に拡散
して、とくに溶接熱により硬化した止端部、ルート部な
どの応力集中部に集まり、割れを発生させる。溶接金属
に溶解した拡散性水素が多いほど、また応力が高いほど
低温割れが発生しやすく、拡散性水素量が多いほど低い
応力で低温割れが発生することはよく知られている。低
温割れ発生の限界曲線を模式的に図2に示す。
回避するために、従来から、 溶接時に予熱を行うこと、 溶接直後に適正な後熱を行うこと、 低水素系の溶接材料を使用すること、などが行われて
おり、さらには、被溶接材である鋼材についても、 C等を低減して低炭素当量として溶接硬化性を低減し
た鋼材、 PCM値を低減して低温割れ感受性を低減した鋼材等
が、採用されている。
うことは大変な作業でありかつ多大な時間を要し、溶接
作業コストの高騰や、溶接作業能率の低下を招く。ま
た、780MPa級以上の高張力鋼では、強度確保のため合金
元素を多量添加しており、低水素系溶接材料を用いても
なお、溶接低温割れ防止の観点から、溶接時の予熱を必
須としている。
−253860号公報には、全溶着金属のMs 点が 400℃以下
で、Ni: 7.5〜12.0重量%およびH:2重量ppm 以下と
したソリッドワイヤを使用し、ワイヤ供給速度を5〜40
g/min として、 760〜980 N/mm2 級の高張力鋼をTIG
溶接する溶接方法が提案されている。この溶接方法によ
れば、50mmを超える極厚の 760〜980 N/mm2 級の高張力
鋼においても、室温における溶接割れの発生を防止でき
るとしている。
により生成する溶接金属を、溶接後の冷却過程でマルテ
ンサイト変態を起こさせ、室温において該マルテンサイ
ト変態の開始時よりも膨張している状態とする溶接方法
が開示されている。その際、溶接材料として、マルテン
サイト変態開始温度が 250℃未満 170℃以上の鉄合金を
使用すると記載されている。
9−253860号公報に記載された技術では、TIG溶接に
限定され、それ以外の拡散性水素が2重量ppm 以上と多
くなる溶接方法では、依然として、溶接割れを防止する
ために予熱を必要とするという問題があった。また、特
開平11-138290 号公報に記載された技術では、溶接金属
の強度が被溶接材の強度にくらべ高くなり、いわゆるオ
ーバーマッチングの問題がある。
し、 490〜1180MPa 級高張力鋼の溶接継手を、予熱を施
すことなく低温割れを防止でき、さらに溶接継手の疲労
強度を高め、また溶接金属の強度を適正に調整できる、
溶接材料および溶接継手の製造方法を提案するととも
に、溶接低温割れを防止した溶接継手を提案することを
目的とする。
課題を達成するため、 490〜1180MPa 級高張力鋼を、各
種溶接材料を用いて溶接し、低温割れ、溶接継手部の疲
労強度、溶接金属の強度におよぼす要因および低温割れ
の防止方法について、鋭意考究した。その結果、低温割
れの発生を防止し、溶接継手の疲労強度を向上させるた
めには、溶接金属を、溶接後の冷却過程でマルテンサイ
ト変態を生じ、室温まで冷却したのちにマルテンサイト
変態開始時にくらべ膨張状態となる、温度−伸び曲線
(熱膨張曲線)を有するような組成とすることが肝要で
あることに想到した。
の冷却過程でマルテンサイト変態を生じ、しかも常温
で、マルテンサイト変態開始時よりも膨張状態となるこ
とにより、冷却過程で溶接金属に発生した引張残留応力
を緩和すること、あるいは引張残留応力に代えて圧縮残
留応力とすることができることを見い出した。そして、
これにより、溶接熱で硬化する止端部やルート部へ引張
応力が集中することを防止して、溶接継手部の疲労強度
を向上させ、さらに、拡散性水素が止端部やルート部へ
拡散、集中することを防止して、予熱を行うことなく、
低温割れを阻止できるという知見を得た。
な溶接金属の変態特性を検討した結果、温度−伸び曲線
(熱膨張曲線)において、マルテンサイト変態により伸
びが膨張に転ずる温度、すなわち変態開始直後における
伸びの最低点の温度から50℃までの温度範囲の線膨張量
が長さ1mm当たり2×10-3〜8×10-3mmの範囲となった
際に溶接割れ率がゼロになることを見いだした。
オーステナイトを適量残留させることにより、上記した
溶接金属の特性を維持しつつ、溶接金属の強度を適正範
囲に調整することができ、溶接金属の強度が高くなるた
めに生じるオーバーマッチング度合いが大きくなること
を防止できることを見いだした。上記したような組成の
溶接金属とするためには、溶接材料以外に、被溶接材か
らの希釈を考慮する必要があり、被溶接材として低合金
鋼の組成に応じ、溶接材料の組成、および溶接入熱等の
溶接条件を調整して、溶接することが肝要となる。溶接
材料としては、マルテンサイト変態開始温度(Ms 点)
が 170℃未満0℃以上となる組成とすることにより、通
常の鋼構造物の適用溶接条件の範囲内では、十分である
ことを見いだした。
に検討を加え完成されたものである。すなわち、本発明
は、質量%で、C:0.20%以下、Cr: 6.0〜16.0%、N
i:6.0 〜16.0%を含有し、マルテンサイト変態開始温
度(Ms 点)が 170℃未満0℃以上の組成を有する鉄基
合金であることを特徴とする溶接材料であり、また、本
発明では、前記組成が、C、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nbの
含有量を次(1)式 0≦ 719-795C-35.55Si-13.25Mn-23.7Cr-26.5Ni-23.7Mo-11.85Nb<170 ……(1) (ここに、C 、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有
量(質量%)) を満足するように調整されることが好ましい。また、本
発明では、前記各組成が、質量%で、C:0.20%以下、
Cr: 6.0〜16.0%、Ni: 6.0〜16.0%を含有し、さらに
Si: 1.0%以下、Mn: 2.5%以下を含み、あるいはさら
にMo: 4.0%以下、Nb: 1.0%以下の1種または2種を
含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成である
ことが好ましい。また、本発明では、前記組成が、さら
に伸び−温度曲線においてマルテンサイト変態により変
態開始直後に伸びが膨張に転ずる温度から50℃までの温
度範囲の線膨張量が、長さ1mm当たり2×10-3〜8×10
-3mmとなる組成であることが好ましい。
材同士を溶接し溶接継手とする溶接継手の製造方法にお
いて、前記被溶接材を低合金鋼材とし、前記溶接により
形成される溶接金属が、C:0.20質量%以下、Cr: 3.0
〜13.0質量%、Ni: 3.0〜13.0質量%を含有する鉄合金
組成で、かつ 360℃以下50℃以上のマルテンサイト変態
開始温度(Ms 点)を有するように、前記低合金鋼材の
組成に応じ、前記溶接材料の組成、溶接条件を調整する
ことを特徴とする溶接継手の製造方法である。また、第
2の本発明では、前記溶接金属の組成が、次(2)式 50≦ 719-795C-35.55Si-13.25Mn-23.7Cr-26.5Ni-23.7Mo-11.85Nb<360 …(2) (ここに、C 、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有
量(質量%)) を満足するように調整することが好ましい。また、第2
の本発明では、前記溶接金属のマルテンサイト変態開始
温度(Ms 点)が、 170℃未満50℃以上とするのが好ま
しく、また、第2の本発明では、前記溶接金属が、C、
Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nbの含有量を次(3)式 50≦ 719-795C-35.55Si-13.25Mn-23.7Cr-26.5Ni-23.7Mo-11.85Nb<170 ……(3) (ここに、C 、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有
量(質量%)) を満足するように調整することが好ましい。また、第2
の本発明では、前記溶接金属が、溶接後の冷却過程でマ
ルテンサイト変態を起こし、室温において該マルテンサ
イト変態の開始時より膨張した状態となることが好まし
い。また、第2の本発明では、前記溶接が予熱なしで行
うのが好ましく、また、前記溶接を多層盛溶接とするこ
とが好ましく、また前記多層盛溶接の初層溶接および/
または最終溶接により形成される溶接金属の組成が、前
記(2)式、または(3)式を満足するのが好ましい。
また、第2の本発明では、前記各溶接金属の線膨張量
が、各溶接金属の温度−伸び曲線においてマルテンサイ
ト変態により変態開始直後に伸びが膨張に転ずる温度か
ら50℃までの温度範囲で、長さ1mm当たり2×10-3〜8
×10-3mmであることが好ましい。
材同士を溶接した溶接継手であって、前記被溶接材を低
合金鋼材とし、前記溶接により形成された溶接金属が、
C:0.20質量%以下、Cr: 3.0〜13.0質量%、Ni: 3.0
〜13.0質量%を含有する鉄合金組成で、かつ 360℃以下
50℃以上のマルテンサイト変態開始温度(Ms 点)を有
し、さらに、該溶接金属が室温においてマルテンサイト
変態の開始時よりも膨張した状態の温度−伸び曲線を示
す組成とすることを特徴とする溶接継手であり、また、
第3の本発明では、前記溶接金属が、C:0.20質量%以
下、Cr: 3.0〜13.0質量%、Ni: 3.0〜13.0質量%を含
有し、さらにSi: 1.0質量%以下、Mn:2.5質量%以下
を含み、あるいはさらにMo: 4.0質量%以下、Nb: 1.0
質量%以下の1種または2種を含み残部Feおよび不可避
的不純物からなる鉄合金組成を有することが好ましい。
また、第3の本発明では、前記溶接金属の組成が、C、
Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nbの含有量を前記(2)式を満足
するように調節することが好ましい。また、第3の本発
明では、前記溶接金属のマルテンサイト変態開始温度
(Ms 点)が、 170℃未満50℃以上とするのが好まし
い。また、第3の本発明では、前記溶接金属が、C、S
i、Mn、Cr、Ni、Mo、Nbの含有量を前記(3)式を満足
するように調整することが好ましい。また、第3の本発
明では、前記各溶接金属の線膨張量が、各溶接金属の温
度−伸び曲線においてマルテンサイト変態により変態開
始直後に伸びが膨張に転ずる温度から50℃までの温度範
囲で、長さ1mm当たり2×10-3〜8×10-3mmであること
が好ましい。
イト変態開始温度(Ms 点)が 170℃未満0℃以上の組
成を有する鉄基合金からなる。Ms 点が 170℃以上で
は、溶接金属のマルテンサイト変態による膨張量が多く
なるが、溶接金属の強度が被溶接材である低合金鋼材の
強度にくらべ高くなりすぎる。一方、Ms 点が0℃未満
では、冷却過程における溶接金属のマルテンサイト変態
による膨張効果が十分でなく、耐低温割れ性の改善、疲
労強度の増加が少ない。このようなことから、溶接材料
を、マルテンサイト変態開始温度(Ms 点)が 170℃未
満0℃以上の組成を有する鉄基合金に限定した。これに
より、耐低温割れ性が改善し、溶接継手の疲労強度が増
加する。
以上とすることにより、室温の溶接金属中に残留オース
テナイトが適量存在するようになり、合金元素の多量添
加による強度の異常増加を抑制でき、溶接金属を適正な
強度とすることができる。これにより、溶接金属への応
力集中を防止できる。つぎに、Ms 点が 170℃未満0℃
以上となる、本発明の溶接材料組成について説明する。
なお、本発明における溶接材料の化学成分、Ms 点は、
JIS Z 3111の規定に準拠して作製した溶着金属について
の値とする。
下、Cr: 6.0〜16.0質量%、Ni: 6.0〜16.0質量%を含
有する組成を有する鉄基合金で、好ましくは、さらにS
i: 1.0質量%以下、Mn: 2.5質量%以下を含み、ある
いはさらにMo: 4.0質量%以下、Nb: 1.0質量%以下の
うちの1種または2種を含み、残部Feおよび不可避的不
純物からなる組成を有する。(以下、質量%は%と記
す。) C:0.20%以下 Cは、マルテンサイトの硬さを増加し、溶接硬化性を増
大し低温割れを助長する元素であり、できるだけ低減す
るのが望ましく,溶接割れの観点から0.20%以下、好ま
しくは0.10%以下とする。
あり、本発明の溶接材料としては重要な元素の一つであ
り、 6.0%以上の含有を必要とする。Crの含有量が 6.0
%未満では、マルテンサイト変態開始温度を 170℃未満
とするために高価なNiの多量添加、および加工性を劣化
させる元素の多量添加を必要とし、経済性、製造性の観
点から問題がある。一方、Crの含有量が16.0%を超える
と、溶接金属にフェライトが現出し、靱性の点で好まし
くない。このようなことから溶接材料のCr含有量を 6.0
〜16.0%とする。
ンサイト変態開始温度(Ms 点)を 170℃未満と低温と
するために重要な元素である。このようなことから、本
発明では、Niは 6.0%以上含有させる必要がある。一
方、16.0%を超える多量の含有量は、溶接材料を高価な
ものとし経済的に不利となる。
せる作用を有し、Ms点低下のためには多く含有させる
ほうが好ましい。しかし、 1.0%を超えて含有すると、
加工性が低下し、溶接材料の製造性が低下する。このた
め、Siは 1.0%以下とするのが好ましい。
ると、加工性が低下し、溶接材料の製造性が低下する。
このため、Mnは 2.5%以下に調整するのが好ましい。本
発明では、さらにMo: 4.0%以下、Nb: 1.0%以下のう
ちの1種または2種を含有できる。
で、添加することができるが、 4.0%を超えて含有する
と、加工性が低下し、溶接材料の製造性が低下する。こ
のため、Moは 4.0%以下とするのが好ましい。Nbは、マ
ルテンサイト変態開始温度(Ms 点)を低下させる作用
を有し、Ms点低下のためには多く含有させるほうが好
ましい。しかし、 1.0%を超えて含有すると、加工性が
低下し、溶接材料の製造性が低下する。このため、Nbは
1.0%以下に限定するのが好ましい。
純物である。不可避的不純物としては、N: 0.050%以
下、O: 0.080%以下、P: 0.010%以下、S: 0.010
%以下が許容される。なお、溶接材料には耐食性の観点
からCuめっきを施してもよいのはいうまでもない。本発
明の溶接材料は、上記した組成範囲で、かつC、Si、M
n、Cr、Ni、Mo、Nbを含有量を次(1)式 0≦ 719-795C-35.55Si-13.25Mn-23.7Cr-26.5Ni-23.7Mo-11.85Nb<170 ……(1) (ここに、C 、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有
量(質量%))を満足するように調整するのが好まし
い。なお、本発明においては、(1)式における各元素
のうち、含有しない元素がある場合には、その元素量を
0として(1)式を計算するものとする。(以下、
(2)式、(3)式の場合にも同様とする。)上記した
(1)式を満足させるように、溶接材料の組成を調整す
ることにより、耐低温割れ性を向上させ、さらに溶接継
手の疲労強度を増加させ、溶接金属の異常な強度増加を
抑制することができる。(1)式を満足しない場合にお
いても耐溶接割れ性および疲労強度を確保できる場合が
あるが、溶接金属の強度が大きく増加することによるオ
ーバーマッチングが生じる。
線において、マルテンサイト変態により伸びが膨張に転
ずる温度、すなわち変態開始直後に伸びが最低となる温
度から50℃までの温度範囲で線膨張量が、長さ1mm当た
り2×10-3〜8×10-3mmとなる組成を有するのが好まし
い。なお、本発明における溶接材料の線膨張量は、JIS
Z 3111の規定に準拠して作製した溶接金属についての値
とする。
当たり2×10-3mm未満あるいは、8×10-3mmを超える
と、溶接部に引張残留応力が残留し、割れが発生しやす
くなる。つぎに、本発明の溶接継手は、上記した組成の
溶接材料を用い、被溶接材同士を溶接することにより作
製される。
して、低合金鋼を用いる。低合金鋼は、20mm厚以上の 4
90〜980MPa級高張力鋼材が好適であり、なかでも、75mm
厚以上の極厚490MPa級高張力鋼材および 590〜1180MPa
級高張力鋼材が好適である。ただし本発明に用いられる
これら低合金鋼材の組成については、とくに限定する必
要はなく、通常公知の鋼材いずれもが適用可能である。
の組成、および溶接方法、溶接条件を調整して、適正組
成の溶接金属を形成する。本発明の溶接継手の製造にあ
たっては、被覆アーク溶接、(メタル)ガスアーク溶
接、サブマージアーク溶接、FCWなど各種溶接法がい
ずれも好適に適用できる。また、継手形状は、荷重非伝
達型十字溶接継手、角回し溶接などの隅肉溶接継手、突
き合わせ溶接継手など、船舶、海洋構造物、ペンストッ
ク、橋梁、貯槽、建設機械等の大型構造物に用いられる
継手形状がいずれも好適である。
属について説明する。本発明の溶接継手における溶接金
属は、温度−伸び曲線、すなわち熱膨張曲線が室温にお
いてマルテンサイト変態の開始時よりも膨張した状態の
温度−伸び曲線を示す。本発明の溶接継手における溶接
金属の温度−伸び曲線の一例を図1に示す。本発明の溶
接金属(実線)は、冷却過程においてマルテンサイト変
態を生じ、そのマルテンサイト変態による膨張で、室温
において、マルテンサイト変態開始時より膨張した状態
となるものである。このような組成の溶接金属とするこ
とにより、溶接継手には、冷却時の収縮による引張応力
を緩和するか、あるいは圧縮応力が残留することにな
る。一方、本発明の範囲を外れる溶接金属(点線)で
は、マルテンサイト変態開始温度Ms 点が高く、マルテ
ンサイト変態による膨張が少ないため、室温において
は、変態後の冷却で収縮した状態となる。なお、本発明
における溶接金属の変態挙動は、通常の熱膨張による伸
びの温度変化を連続的に測定して得られる、温度−伸び
曲線(熱膨張曲線)を作成して求めるものとする。
には、被溶接材、溶接材料および溶接条件により得られ
る溶接金属の組成を、マルテンサイト変態開始温度(M
s 点)が 360℃以下50℃以上となる組成とする必要があ
る。Ms 点が 360℃を超えると、マルテンサイト変態に
よる膨張量が少なくなるとともに、変態膨張の最大点が
室温より高くなりすぎるため、変態後の冷却により再度
熱収縮が生じ、これにより引張残留応力が発生するよう
になり、耐低温割れ性が低下する。また、Ms点が50℃
未満では、冷却過程におけるマルテンサイト変態による
膨張効果が十分でなく、耐低温割れ性が改善が少ない。
このようなことから、溶接金属の組成を、溶接金属のマ
ルテンサイト変態開始温度(Ms 点)が 360℃以下50℃
以上となる組成に限定した。これにより、耐低温割れ性
が改善できる。なお、耐低温割れ性をさらに改善するた
めには、溶接金属のMs 点は 170℃未満50℃以上とする
のがより好ましい。
なっても、温度−伸び曲線においてマルテンサイト変態
により変態開始直後に伸びが膨張に転ずる温度(図1:
T点)から50℃までの温度範囲での、溶接金属の線膨張
量が、長さ1mm当たり2×10 -3mm未満では、溶接熱影響
部に引張残留応力がかかるため低温割れが生じる。一
方、上記したT点から50℃までの温度範囲で、溶接金属
の線膨張量が、長さ1mm当たり8×10-3mm超では、溶接
金属のルート部に引張残留応力が発生し、溶接金属にお
いて割れが生じる。このようなことから、溶接金属の温
度−伸び曲線においてマルテンサイト変態により変態開
始直後に伸びが膨張に転ずる温度(T点)から50℃まで
の温度範囲での溶接金属の線膨張量が、長さ1mm当たり
2×10-3〜8×10-3mmの範囲とすることが好ましい。
変態開始温度(Ms 点)を有する溶接金属となるには、
溶接金属の組成を、C:0.20質量%以下、Cr: 3.0〜1
3.0質量%、Ni: 3.0〜13.0質量%を含有する鉄合金組
成で、好ましくは、さらにSi:1.0質量%以下、Mn: 2.
5質量%以下を含み、あるいはさらにMo: 4.0質量%以
下、Nb: 1.0質量%以下のうちの1種または2種を含み
残部Feおよび不可避的不純物からなる鉄合金組成とす
る。(以下、質量%は%と記す。) Cは、マルテンサイトの硬さを増加し、溶接硬化性を増
大し低温割れを助長する元素であり、できるだけ低減す
るのが望ましく、溶接割れの観点から0.20%以下、好ま
しくは0.12%以下とする。
とする元素であり、本発明の溶接金属としては重要な元
素の一つであり、 3.0%以上の含有を必要とする。Crの
含有量が 3.0%未満では、マルテンサイト変態開始温度
を 360℃以下とするには、溶接材料に高価なNiの多量添
加、および溶接材料の加工性を劣化させる元素の多量添
加を必要とし、経済性、製造性の観点から問題がある。
一方、Crの含有量が13.0%を超えると、溶接金属にフェ
ライトが現出し、靱性の点で好ましくない。このような
ことから溶接金属のCr含有量を 3.0〜13.0%とする。
あり、マルテンサイト変態開始温度(Ms 点)を 360℃
以下と低温とするために重要な元素である。このような
ことから、本発明では、Niは 3.0%以上含有させる必要
がある。一方、13.0%を超える多量の含有量は、溶接材
料を高価なものとし経済的に不利となる。さらに、Si
は、マルテンサイト変態開始温度(Ms 点)を低下させ
る作用を有し、Ms 点低下のためには多く含有させるほ
うが好ましい。しかし、Siは脱酸剤として溶接材料から
主として供給され、溶接金属にSiを 1.0%を超えて含有
させるためには、溶接材料の製造における加工性が低下
する。このため、Siは 1.0%以下に調整するのが好まし
い。
るが、 2.5%を超えて含有させるためには、溶接材料の
製造時における加工性が低下する。このため、Mnは 2.5
%以下に調整するのが好ましい。本発明では、さらにM
o、Nbのうちの1種または2種を含有できる。Moは、溶
接金属の耐食性を向上させる目的として、添加すること
ができるが、4.0%を超えて含有させるためには、溶接
材料の加工性が低下する。このため、Moは 4.0%以下と
するのが好ましい。
点)を低下させる作用を有し、Ms点低下のためには多
く含有させるほうが好ましい。しかし、 1.0%を超えて
含有させるためには、溶接材料の製造における加工性が
低下する。このため、Nbは 1.0%以下に限定するのが好
ましい。上記した以外の元素については、とくに限定さ
れないが、V、Cu、REM をそれぞれ 0.5%以下含有する
ことは許容される。なお、上記した元素以外に被溶接
材、溶接材料に含有される元素が不可避的に含有されて
もなんら問題はない。
C、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nbの含有量を次(2)式 50≦ 719-795C-35.55Si-13.25Mn-23.7Cr-26.5Ni-23.7Mo-11.85Nb<360 ……(2) (ここに、C 、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有
量(質量%))を満足するように調整するのがより好ま
しい。なお、本発明においては、(2)式における各元
素のうち、含有しない元素がある場合には、その元素量
を0として(2)式を計算するものとする。
からは、次(3)式 50≦ 719-795C-35.55Si-13.25Mn-23.7Cr-26.5Ni-23.7Mo-11.85Nb<170 ……(3) (ここに、C 、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有
量(質量%))を満足するのがより好ましい。
させるように、溶接金属の組成を調整することにより、
耐低温割れ性が向上する。(2)式あるいは(3)式を
満足しない場合には、溶接金属のマルテンサイト変態に
よる膨張が少なく、溶接継手に生じる引張残留応力の緩
和が少なく、あるいは圧縮残留応力の発生が見られず、
耐低温割れ性が劣る。
て、溶接材料を用いて被溶接材同士を溶接し溶接継手と
するが、上記した組成、特性の溶接金属が形成されるよ
うに低合金鋼材の組成に応じ、溶接材料の組成、溶接入
熱等の溶接条件を調整する。つぎに、各種継手形状の溶
接継手の製造方法について、図面を参照して説明する。
図3には、端部を所定の開先形状(ここではX開先)に
加工した被溶接材11の端部同士を対向させ、この開先内
に多くの層を重ねるように積層する多層盛溶接により溶
接継手を作製した例を示す。被溶接材の板厚に応じて、
積層数は決定されることはいうまでもない。図3の場合
には、極厚材であるため、板厚中央を境にして両側から
積層するのが好ましく、両面に溶接最終層10が形成され
る。なお、一方向から積層してもよいことはいうまでも
ない。
属をそれぞれ、上記した 360℃以下50℃以上、好ましく
は 170℃未満50℃以上のマルテンサイト変態開始温度
(Ms点)を有する組成の溶接金属になるように調整す
るのが好ましい。これにより、溶接金属に生じる引張残
留応力が変態膨張により緩和されるか、あるいは圧縮応
力が残留するようになり、耐低温割れ性が改善される。
この際、先に置かれた溶接金属がマルテンサイト変態開
始温度(Ms 点)以上のうちに次の層を重ねることが好
ましい。
に示すように、少なくとも、初層溶接あるいはさらに最
終層溶接により形成される溶接金属のみ上記した組成の
溶接金属になるように調整してもよい。これにより、予
熱、後熱を必要としなくても、低温割れの発生は防止さ
れる。初層あるいは最終層以外の溶接金属を、上記した
組成、特性の溶接金属とすることは必ずしも必要でな
い。
接金属のうち、少なくとも初層または最終層をマルテン
サイト変態により変態開始直後に伸びが膨張に転ずる温
度から50℃までの温度範囲で、溶接金属の線膨張量が長
さ1mm2×10-3〜8×10-3mmの範囲とすることが望まし
い。この溶接金属の線膨張量を、上記した範囲内とする
ことにより耐溶接割れ感受性が改善される。
溶接継手を作製する場合も有効である。この場合も、溶
接金属が上記した本発明範囲の組成となるように、溶接
材料、溶接条件を調整するのが好ましい。これにより、
低温割れの発生は防止できる。また、本発明は、隅肉溶
接、円周溶接、補修溶接である肉盛り溶接等の場合にも
適用できることはいうまでもない。
せを例示する。まず、被溶接材として、 C:0.05〜0.20%、Si:0.05〜0.30%、Mn:0.50〜1.50
%、Cr:3%以下、Ni:3%以下、Mo:1%以下を含
み、さらにCu: 0.5%以下、Nb: 0.020%以下、V:0.
02%以下、Ti:0.02%以下、P: 0.020%以下のうちの
1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不
純物からなる780MPa級高張力鋼材を用いる場合は、溶接
材料として、被覆アーク溶接の場合には、JIS Z 3111の
規定による溶着金属の組成が、C:0.20%以下、Si:1.
00%以下、Mn: 2.0%以下、Cr:3〜13%、Ni:3〜13
%を含み、さらにMo: 1.0%以下、Nb:0.10%以下、T
i:0.05%以下、V:0.10%以下、Cu: 0.5%以下のう
ちの1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避
的不純物からなる溶接材料を使用し、5〜50kJ/cm の入
熱で溶接するのが好ましく、ガスアーク溶接の場合に
は、5〜100kJ/cmの入熱で溶接するのが好ましい。
(鋼板)を被溶接材として、表2に示す組成(JIS Z 31
11に準拠して測定した溶着金属の組成)を溶接材料を用
いて、表3に示す溶接条件で、JIS Z 3158の規定に準拠
した試験片を用いて溶接割れ性を調査した。溶接割れ性
の試験条件は、温度:30℃、相対湿度:80%、温
度:20℃、相対湿度:60%の雰囲気中で行い、予熱は実
施しなかった。試験繰り返し数を3とし、溶接部に発生
した割れをJIS Z 3158の規定に準拠して割れの有無、割
れ率を測定した。
れた溶着金属から熱膨張試験片(3 φ×12mm)を採取し
て、温度−伸び曲線を求め、マルテンサイト変態により
変態膨張直後に伸びが膨張に転ずる温度から50℃までの
長さ1mm当たりの線膨張量を測定し、表2に示す。
生は認められなかった。一方、比較例では、厳しい試験
条件であるの場合には割れが発生した。 (実施例2)表1に組成を示す低合金鋼材(鋼板)を被
溶接材として、表2に示す組成(JIS Z 3111に準拠して
測定した溶着金属の組成)の溶接材料の一部を用いて、
表5に示す溶接条件(予熱、後熱なし)で、図3、図4
に示す、突合わせ溶接継手、十字溶接継手(継手長さ
0.5m)を製作した。
発生状況を表面観察により調査した。また、各溶接継手
について、母材部硬さ、および溶接金属部硬さ(溶接金
属断面の平均硬さ)を測定した。なお、溶接金属中の残
留オーステナイト量をX線回折法により測定した。さら
に、これら溶接継手から、疲労試験片を採取し、室温大
気中で一方向片振り引張疲労試験を実施し、 200万回の
疲労強度を求めた。
験片を採取し、温度−伸び曲線を測定し、溶接後の冷却
過程でのマルテンサイト変態挙動を調査し、室温におけ
る状態が、マルテンサイト変態開始より膨張した状態か
どうかを評価した。マルテンサイト変態開始時より膨張
した状態の場合を○、収縮した状態の場合を×として評
価した。
強度も高く、耐溶接低温割れ性、耐疲労特性に優れてい
ることがわかる。また、本発明例では、溶接金属の室温
における状態が、マルテンサイト変態開始時より膨張し
た状態となっている。さらに、本発明例では、溶接金属
の残留オーステナイト量が多く、そのため、溶接金属の
硬さが低く、母材強度との強度差は少なくなって、溶接
金属強度の著しい増加が抑制されている。これに対し
て、本発明の範囲を外れる比較例では、溶接割れの発生
はなく、また疲労強度も高く、耐溶接低温割れ性、耐疲
労特性は本発明例と同等であるが、残留オーステナイト
量が少なく、溶接金属の硬さが高く、母材強度との強度
差は大きくなり、オーバーマッチングの度合いが大きく
なっている。 (実施例3)表7に示す組成の低合金鋼材(鋼板)を被
溶接材として、表8に示す組成(JIS Z 3111に準拠して
測定した溶着金属の組成)を溶接材料を用いて、表9に
示す溶接条件で、JIS Z 3158の規定に準拠した試験片を
用いて溶接割れ性を調査した。
%、温度:20℃、相対湿度:60%の2条件の雰囲気中
で行い、予熱は実施しなかった。ついで、形成された溶
接金属の組成分析をビード中央部付近で実施した。試験
繰り返し数を3とし、溶接部に発生した割れをJIS Z 31
58の規定に準拠して割れの有無、割れ率を測定した。さ
らに、形成された溶接金属から熱膨張試験片を採取し、
温度−伸び曲線を求め、マルテンサイト変態により変態
開始直後に伸びが膨張に転ずる温度から50℃までの長さ
1mm当たりの線膨張量を測定した。
なしでも低温割れの発生は認められなかった。一方、本
発明範囲を外れる比較例では、試験条件の場合にも割
れの発生が認められた。(2)式を満足する本発明例
は、条件の厳しい試験条件でも低温割れの発生は認め
られなかった。また、本発明例である溶接継手No.3-18
〜No.3-21 は、線膨張量が5.8 ×10-3〜7.1 ×10-3mm/
長さ1mmと大きく、耐溶接割れ性の顕著な改善と一致す
る。 (実施例4)表7に組成を示す低合金鋼材(鋼板)の一
部を被溶接材として、表8に組成(JIS Z 3111に準拠し
て測定した溶着金属の組成)を示す溶接材料の一部を用
いて、表11に示す溶接条件(予熱、後熱なし)で、図
3、図4に示す、突合わせ溶接継手、十字溶接継手(継
手長さ 0.5m)を製作した。これらの溶接継手につい
て、溶接部の割れ発生状況を表面観察により調査した。
なお、一部の継手については、初層と最終層を本発明の
範囲の溶接金属とした。その結果を表12に示す。
った。
力鋼材の溶接においても、予熱を行うことなく、低温割
れを防止でき、溶接作業の能率向上に寄与でき、産業上
格段の効果を奏する。また、耐疲労特性に優れ、さらに
溶接金属強度の著しい増加を抑制できる溶接金属への応
力集中を回避でき、鋼構造物の施工が容易になるという
効果もある。
線を模式的に示す説明図である。
図である。
の1例を示す説明図である。
を示す説明図である。
Claims (18)
- 【請求項1】 質量%で、 C:0.20%以下、 Cr: 6.0〜16.0%、 Ni: 6.0〜16.0% を含有し、マルテンサイト変態開始温度(Ms 点)が 1
70℃未満0℃以上の組成を有する鉄基合金であることを
特徴とする溶接材料。 - 【請求項2】 前記組成が、C、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、
Nbの含有量を下記(1)式を満足するように調整された
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接材料。 記 0≦ 719-795C-35.55Si-13.25Mn-23.7Cr-26.5Ni-23.7Mo-11.85Nb<170 ……(1) ここに、C 、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有量
(質量%) - 【請求項3】 前記組成が、質量%で、 C:0.20%以下、 Cr: 6.0〜16.0%、 Ni: 6.0〜16.0% を含有し、さらに Si: 1.0%以下、 Mn: 2.5%以下 を含み、あるいはさらにMo: 4.0%以下、Nb: 1.0%以
下の1種または2種を含み、残部Feおよび不可避的不純
物からなる組成であることを特徴とする請求項1または
2に記載の溶接材料。 - 【請求項4】 前記組成が、温度−伸び曲線においてマ
ルテンサイト変態により変態開始直後に伸びが膨張に転
ずる温度から50℃までの温度範囲での線膨張量が、長さ
1mm当たり2×10-3〜8×10-3mmとなる組成であること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の溶接
材料。 - 【請求項5】 溶接材料を用いて被溶接材同士を溶接し
溶接継手とする溶接継手の製造方法において、前記被溶
接材を低合金鋼材とし、前記溶接により形成される溶接
金属が、C:0.20質量%以下、Cr: 3.0〜13.0質量%、
Ni: 3.0〜13.0質量%を含有する鉄合金組成で、かつ 3
60℃以下50℃以上のマルテンサイト変態開始温度(Ms
点)を有するように、前記低合金鋼材の組成に応じ、前
記溶接材料の組成、溶接条件を調整することを特徴とす
る溶接継手の製造方法。 - 【請求項6】 前記溶接金属の組成が、下記(2)式を
満足することを特徴とする請求項5に記載の溶接継手の
製造方法。 記 50≦ 719-795C-35.55Si-13.25Mn-23.7Cr-26.5Ni-23.7Mo-11.85Nb<360 ……(2) ここに、C 、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有量
(質量%) - 【請求項7】 前記溶接金属のマルテンサイト変態開始
温度(Ms 点)が、170℃未満50℃以上であることを特
徴とする請求項5に記載の溶接継手の製造方法。 - 【請求項8】 前記溶接金属が、C、Si、Mn、Cr、Ni、
Mo、Nbの含有量を下記(3)式を満足するように調整さ
れたことを特徴とする請求項7に記載の溶接継手の製造
方法。 記 50≦ 719-795C-35.55Si-13.25Mn-23.7Cr-26.5Ni-23.7Mo-11.85Nb<170 ……(3) ここに、C 、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有量
(質量%) - 【請求項9】 前記溶接金属が、溶接後の冷却過程でマ
ルテンサイト変態を起こし、室温において該マルテンサ
イト変態の開始時より膨張した状態となることを特徴と
する請求項5ないし8のいずれかに記載の溶接継手の製
造方法。 - 【請求項10】 前記溶接金属が、温度−伸び曲線にお
いてマルテンサイト変態により変態開始直後に伸びが膨
張に転ずる温度から50℃までの温度範囲で、長さ1mm当
たり2×10-3〜8×10-3mmの線膨張量を有することを特
徴とする請求項5ないし9のいずれかに記載の溶接継手
の製造方法。 - 【請求項11】 前記溶接が多層盛溶接であることを特
徴とする請求項5ないし10のいずれかに記載の溶接継手
の製造方法。 - 【請求項12】 前記多層盛溶接の初層溶接あるいはさ
らに最終溶接により形成される溶接金属の組成が、下記
(2)式、または(3)式を満足することを特徴とする
請求項11に記載の溶接継手の製造方法。 記 50≦ 719-795C-35.55Si-13.25Mn-23.7Cr-26.5Ni-23.7Mo-11.85Nb<170 ……(3) 50≦ 719-795C-35.55Si-13.25Mn-23.7Cr-26.5Ni-23.7Mo-11.85Nb<360 ……(2) ここに、C 、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有量
(質量%) - 【請求項13】 溶接材料を用いて被溶接材同士を溶接
した溶接継手であって、前記被溶接材を低合金鋼材と
し、前記溶接により形成された溶接金属が、C:0.20質
量%以下、Cr: 3.0〜13.0質量%、Ni: 3.0〜13.0質量
%を含有する鉄合金組成で、かつ 360℃以下50℃以上の
マルテンサイト変態開始温度(Ms 点)を有し、さら
に、該溶接金属が室温においてマルテンサイト変態の開
始時よりも膨張した状態の温度−伸び曲線を示す組成と
することを特徴とする溶接継手。 - 【請求項14】 前記溶接金属が、温度−伸び曲線にお
いてマルテンサイト変態により変態開始直後に伸びが膨
張に転ずる温度から50℃までの温度範囲で、長さ1mm当
たり2×10-3〜8×10-3mmの線膨張量を有することを特
徴とする請求項13に記載の溶接継手。 - 【請求項15】 前記溶接金属の組成が、C、Si、Mn、
Cr、Ni、Mo、Nbの含有量を下記(2)式を満足するよう
に調節されたことを特徴とする請求項13または14に記載
の溶接継手。 記 50≦ 719-795C-35.55Si-13.25Mn-23.7Cr-26.5Ni-23.7Mo-11.85Nb<360 ……(2) ここに、C 、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有量
(質量%) - 【請求項16】前記溶接金属のマルテンサイト変態開始
温度(Ms 点)が、170℃未満50℃以上であることを特
徴とする請求項13または14に記載の溶接継手。 - 【請求項17】 前記溶接金属が、C、Si、Mn、Cr、N
i、Mo、Nbの含有量を下記(3)式を満足するように調
整されたことを特徴とする請求項15に記載の溶接継手。 記 50≦ 719-795C-35.55Si-13.25Mn-23.7Cr-26.5Ni-23.7Mo-11.85Nb<170 ……(3) ここに、C 、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Nb:各元素の含有量
(質量%) - 【請求項18】 前記溶接金属が、C:0.20質量%以
下、Cr: 3.0〜13.0質量%、Ni: 3.0〜13.0質量%を含
有し、さらにSi: 1.0質量%以下、Mn: 2.5質量%以下
を含み、あるいはさらにMo: 4.0質量%以下、Nb: 1.0
質量%以下の1種または2種を含み残部Feおよび不可避
的不純物からなる鉄合金組成を有することを特徴とする
請求項13〜16のいずれかに記載の溶接継手。
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