JP2001107141A - 溶接部靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管 - Google Patents
溶接部靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管Info
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 シーム溶接部の溶接部靱性に優れ、かつ炭酸
ガス環境および硫化水素環境における耐食性と耐応力腐
食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管を提供する。 【解決手段】 シーム溶接部の溶接金属の化学成分が、
重量%で、C :0.03% 以下、Si:1.0%以下、Mn:5.0%以
下、P :0.03% 以下、S :0.005%以下、N :300ppm以
下、Cr:10〜14% 、Ni:1.0 〜6.0%、酸素:500ppm以下
を含有し、母材の化学成分が、重量%で、C :0.03% 以
下、Si:1.0%以下、Mn:5.0%以下、P :0.03% 以下、S
:0.005%以下、N :300ppm以下、Cr:10〜14% 、Ni:
0.5 〜6.0%を含有するとともに、M=%Cr+1.3x%Mo-%Ni の
式で表されるM の値が14.0以下であり、シーム溶接後、
900 〜1000℃に加熱された後、5 ℃/ 秒以下で冷却さ
れ、その後550 〜650 ℃で焼き戻しが行われることを特
徴とする溶接部靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高ク
ロム溶接鋼管を用いる。
ガス環境および硫化水素環境における耐食性と耐応力腐
食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管を提供する。 【解決手段】 シーム溶接部の溶接金属の化学成分が、
重量%で、C :0.03% 以下、Si:1.0%以下、Mn:5.0%以
下、P :0.03% 以下、S :0.005%以下、N :300ppm以
下、Cr:10〜14% 、Ni:1.0 〜6.0%、酸素:500ppm以下
を含有し、母材の化学成分が、重量%で、C :0.03% 以
下、Si:1.0%以下、Mn:5.0%以下、P :0.03% 以下、S
:0.005%以下、N :300ppm以下、Cr:10〜14% 、Ni:
0.5 〜6.0%を含有するとともに、M=%Cr+1.3x%Mo-%Ni の
式で表されるM の値が14.0以下であり、シーム溶接後、
900 〜1000℃に加熱された後、5 ℃/ 秒以下で冷却さ
れ、その後550 〜650 ℃で焼き戻しが行われることを特
徴とする溶接部靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高ク
ロム溶接鋼管を用いる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、溶接部靭性と耐
硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管に関する。
硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管に関する。
【0002】
【従来の技術】炭酸ガスや硫化水素を含んだガスあるい
は石油の輸送用に用いられるパイプラインにおいては、
硫化物による応力腐食割れへの対策が必要である。そこ
で、通常の炭素鋼管を使用する場合は腐食抑制剤(イン
ヒビター)を併用し、あるいは、耐腐食性の高い2相ス
テンレス鋼管やクラッド鋼管が用いられている。しか
し、腐食抑制剤の使用は価格面ばかりか環境汚染の問題
がある。また、2相ステンレス鋼管やクラッド鋼管は材
料費が高いという問題がある。
は石油の輸送用に用いられるパイプラインにおいては、
硫化物による応力腐食割れへの対策が必要である。そこ
で、通常の炭素鋼管を使用する場合は腐食抑制剤(イン
ヒビター)を併用し、あるいは、耐腐食性の高い2相ス
テンレス鋼管やクラッド鋼管が用いられている。しか
し、腐食抑制剤の使用は価格面ばかりか環境汚染の問題
がある。また、2相ステンレス鋼管やクラッド鋼管は材
料費が高いという問題がある。
【0003】このような背景のもとに、比較的安価な材
料として、AISI( 米国鉄鋼協会)410鋼などがある。しか
し、この鋼は溶接性等に難点があり、また、硫化水素環
境における応力腐食割れの問題も残っている。
料として、AISI( 米国鉄鋼協会)410鋼などがある。しか
し、この鋼は溶接性等に難点があり、また、硫化水素環
境における応力腐食割れの問題も残っている。
【0004】そこで、溶接性を備え、しかも硫化水素環
境における耐応力腐食割れ性にも優れた材料やその製造
方法が、いくつか提案されている。例えば、特開昭55-2
1566号公報には、Mnを1.0 〜3.5%、Crを10〜13.5% 含む
マルテンサイト系ステンレス鋼が提案されている。同様
に、特開平4-99128 号公報にはCuを1.2 〜4.5%、Crを11
〜14% 含むマルテンサイト系ステンレス鋼、特開平4-26
8019号公報にはCoを1.1 〜4.0%、Crを11〜14% 含むマル
テンサイト系ステンレス鋼が提案されている。
境における耐応力腐食割れ性にも優れた材料やその製造
方法が、いくつか提案されている。例えば、特開昭55-2
1566号公報には、Mnを1.0 〜3.5%、Crを10〜13.5% 含む
マルテンサイト系ステンレス鋼が提案されている。同様
に、特開平4-99128 号公報にはCuを1.2 〜4.5%、Crを11
〜14% 含むマルテンサイト系ステンレス鋼、特開平4-26
8019号公報にはCoを1.1 〜4.0%、Crを11〜14% 含むマル
テンサイト系ステンレス鋼が提案されている。
【0005】また、特開平5-156408号公報にはCrを13〜
17% に高めたマルテンサイト系ステンレス鋼が提案さ
れ、特開平6-264192号公報にもCrを13〜17% に高めたマ
ルテンサイト系ステンレス鋼が提案されている。一方、
特開平6-306549号公報にはCrを10〜13% と低くしたマル
テンサイト系ステンレス鋼が提案されている。さらに、
特開平8-3642号公報には、Cu、Niを4.0%以下、Coを2.0%
以下、Mo、W を3.0%以下とするとともに、これらの元素
の含有量をある関係式により規定した電縫鋼管の製造方
法が提案されている。
17% に高めたマルテンサイト系ステンレス鋼が提案さ
れ、特開平6-264192号公報にもCrを13〜17% に高めたマ
ルテンサイト系ステンレス鋼が提案されている。一方、
特開平6-306549号公報にはCrを10〜13% と低くしたマル
テンサイト系ステンレス鋼が提案されている。さらに、
特開平8-3642号公報には、Cu、Niを4.0%以下、Coを2.0%
以下、Mo、W を3.0%以下とするとともに、これらの元素
の含有量をある関係式により規定した電縫鋼管の製造方
法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述の従来技術は、マ
ルテンサイト系ステンレス鋼管の溶接性、溶接部靭性お
よび耐硫化物腐食割れ性の向上を図る技術であるが、そ
の対象は母材部に限られており、溶接金属については考
慮されていない。また、溶接部靭性についても、母材の
化学成分の影響のみが検討されている。
ルテンサイト系ステンレス鋼管の溶接性、溶接部靭性お
よび耐硫化物腐食割れ性の向上を図る技術であるが、そ
の対象は母材部に限られており、溶接金属については考
慮されていない。また、溶接部靭性についても、母材の
化学成分の影響のみが検討されている。
【0007】例えば、特開昭55-21566号公報記載の技術
は、主として鋼板に関する技術であり、溶接鋼管のシー
ム溶接部については特に記載されていない。特開平4-99
128号公報および特開平4-268019号公報記載の技術は、
ラインパイプに関する技術であるが、溶接部靭性につい
ては溶接熱影響部の靱性のみが記載されており、溶接金
属の靭性については検討されていない。またこれらの技
術では、Cu、Coを添加する必要がある。これらの元素
は、溶接性と溶接部靱性が低いという問題がある。
は、主として鋼板に関する技術であり、溶接鋼管のシー
ム溶接部については特に記載されていない。特開平4-99
128号公報および特開平4-268019号公報記載の技術は、
ラインパイプに関する技術であるが、溶接部靭性につい
ては溶接熱影響部の靱性のみが記載されており、溶接金
属の靭性については検討されていない。またこれらの技
術では、Cu、Coを添加する必要がある。これらの元素
は、溶接性と溶接部靱性が低いという問題がある。
【0008】特開平5-156408号公報記載の技術では、溶
接性として割れ発生の有無のみが記載されている。ま
た、溶接鋼管の製造については記載されていない。特開
平6-264192号公報の技術では、溶接熱影響部の靱性が記
載されているが、溶接鋼管の製造については記載されて
いない。特開平6-306549号公報記載の技術は、厚肉の鋼
板に関する技術であり、溶接鋼管の製造についてはやは
り記載されていない。
接性として割れ発生の有無のみが記載されている。ま
た、溶接鋼管の製造については記載されていない。特開
平6-264192号公報の技術では、溶接熱影響部の靱性が記
載されているが、溶接鋼管の製造については記載されて
いない。特開平6-306549号公報記載の技術は、厚肉の鋼
板に関する技術であり、溶接鋼管の製造についてはやは
り記載されていない。
【0009】特開平8-3642号公報記載の技術は、電縫鋼
管の製造方法であり、材料が熱延板(薄板)である。従
って、板厚および材質の点で制限があり、厚鋼板におけ
る厚物や制御圧延材(材質)と同等の製品を得ることは
できない。
管の製造方法であり、材料が熱延板(薄板)である。従
って、板厚および材質の点で制限があり、厚鋼板におけ
る厚物や制御圧延材(材質)と同等の製品を得ることは
できない。
【0010】このように従来技術においては、シーム溶
接部を有する高クロム溶接鋼管の製造方法については、
検討されておらず、継目無鋼管と同じ化学成分で製造可
能とされている。従って、シーム溶接部、特に溶接金属
の化学成分や材質については、ほとんど解明されていな
かった。
接部を有する高クロム溶接鋼管の製造方法については、
検討されておらず、継目無鋼管と同じ化学成分で製造可
能とされている。従って、シーム溶接部、特に溶接金属
の化学成分や材質については、ほとんど解明されていな
かった。
【0011】本発明は、これらの従来技術の問題点を解
決し、シーム溶接部の溶接部靱性に優れ、かつ炭酸ガス
環境および硫化水素環境における耐食性と耐応力腐食割
れ性に優れた高クロム溶接鋼管を提供することを目的と
する。
決し、シーム溶接部の溶接部靱性に優れ、かつ炭酸ガス
環境および硫化水素環境における耐食性と耐応力腐食割
れ性に優れた高クロム溶接鋼管を提供することを目的と
する。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の課題は以下の発明
により解決される。本件第1発明は、シーム溶接部の溶
接金属の化学成分が、重量%で、C :0.03% 以下、Si:
1.0%以下、Mn:5.0%以下、P :0.03% 以下、S :0.005%
以下、N :300ppm以下、Cr:10〜14% 、Ni:1.0 〜6.0
%、酸素:500ppm以下を含有し、母材の化学成分が、重
量%で、C :0.03% 以下、Si:1.0%以下、Mn:5.0%以
下、P :0.03% 以下、S :0.005%以下、N :300ppm以
下、Cr:10〜14% 、Ni:0.5 〜6.0%を含有するととも
に、M=%Cr+1.3x%Mo-%Ni の式で表されるM の値が14.0以
下であり、シーム溶接後、900 〜1000℃に加熱された
後、5 ℃/ 秒以下で冷却され、その後550 〜650 ℃で焼
き戻しが行われることを特徴とする溶接部靭性と耐硫化
物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管である。
により解決される。本件第1発明は、シーム溶接部の溶
接金属の化学成分が、重量%で、C :0.03% 以下、Si:
1.0%以下、Mn:5.0%以下、P :0.03% 以下、S :0.005%
以下、N :300ppm以下、Cr:10〜14% 、Ni:1.0 〜6.0
%、酸素:500ppm以下を含有し、母材の化学成分が、重
量%で、C :0.03% 以下、Si:1.0%以下、Mn:5.0%以
下、P :0.03% 以下、S :0.005%以下、N :300ppm以
下、Cr:10〜14% 、Ni:0.5 〜6.0%を含有するととも
に、M=%Cr+1.3x%Mo-%Ni の式で表されるM の値が14.0以
下であり、シーム溶接後、900 〜1000℃に加熱された
後、5 ℃/ 秒以下で冷却され、その後550 〜650 ℃で焼
き戻しが行われることを特徴とする溶接部靭性と耐硫化
物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管である。
【0013】この発明は、高クロム溶接鋼管の母材のみ
ならず、シーム溶接部に着目して、溶接部靭性と耐硫化
物腐食割れ性について鋭意検討することにより成され
た。その過程で、母材と溶接金属の化学成分を変化させ
て、靭性、炭酸ガス環境下での耐食性、硫化水素環境下
での耐硫化物応力腐食割れ性、溶接性を調査した。その
結果、発明の化学成分およびシーム溶接後の熱処理を施
すことにより、溶接部靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れ
た高クロム溶接鋼管を得ることができた。
ならず、シーム溶接部に着目して、溶接部靭性と耐硫化
物腐食割れ性について鋭意検討することにより成され
た。その過程で、母材と溶接金属の化学成分を変化させ
て、靭性、炭酸ガス環境下での耐食性、硫化水素環境下
での耐硫化物応力腐食割れ性、溶接性を調査した。その
結果、発明の化学成分およびシーム溶接後の熱処理を施
すことにより、溶接部靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れ
た高クロム溶接鋼管を得ることができた。
【0014】以下、化学成分の限定理由について説明す
る。 C :母材のC が0.03% を超えると、耐食性、 耐硫化物応
力腐食割れ性、 溶接熱影響部靭性、 ならびに溶接性が劣
化する。また、溶接金属のC が0.03% を超えると、 耐食
性、 耐硫化物応力腐食割れ性、 ならびに靭性の劣化をま
ねく。 従って、母材、 溶接金属ともにC 量を0.03% 以下
に規定する。
る。 C :母材のC が0.03% を超えると、耐食性、 耐硫化物応
力腐食割れ性、 溶接熱影響部靭性、 ならびに溶接性が劣
化する。また、溶接金属のC が0.03% を超えると、 耐食
性、 耐硫化物応力腐食割れ性、 ならびに靭性の劣化をま
ねく。 従って、母材、 溶接金属ともにC 量を0.03% 以下
に規定する。
【0015】Si:母材、 溶接金属ともに1.0%を超えてSi
を添加すると、 溶接性が劣化する。従って、 母材、 溶接
金属ともにSi量を1.0%以下に規定する。
を添加すると、 溶接性が劣化する。従って、 母材、 溶接
金属ともにSi量を1.0%以下に規定する。
【0016】Mn:母材、 溶接金属ともに5.0%を超えてMn
を添加すると、 溶接金属、 溶接熱影響部の靱性と耐硫化
物応力腐食割れ性が劣化する。 従って、 母材、 溶接金属
ともにMn量を5.0%以下に規定する。
を添加すると、 溶接金属、 溶接熱影響部の靱性と耐硫化
物応力腐食割れ性が劣化する。 従って、 母材、 溶接金属
ともにMn量を5.0%以下に規定する。
【0017】P :母材、 溶接金属ともにP が0.03% を超
えると、 溶接熱影響部の靱性と耐硫化物応力腐食割れ
性、 溶接性の劣化をまねく。 従って、 母材、 溶接金属と
もにP量を0.03% 以下に規定する。
えると、 溶接熱影響部の靱性と耐硫化物応力腐食割れ
性、 溶接性の劣化をまねく。 従って、 母材、 溶接金属と
もにP量を0.03% 以下に規定する。
【0018】S :母材、 溶接金属ともにS が0.005%を超
えると、 耐食性、 溶接性と耐硫化物応力腐食割れ性が劣
化する。 従って、 母材、 溶接金属ともにS 量を0.005%以
下に規定する。
えると、 耐食性、 溶接性と耐硫化物応力腐食割れ性が劣
化する。 従って、 母材、 溶接金属ともにS 量を0.005%以
下に規定する。
【0019】Cr:母材の良好な耐食性を得るためには、1
0%以上のCrの添加が必要である。 しかし、14%を超えて添
加すると、 溶接熱影響部の靱性と溶接性が劣化する。 従
って、 母材のCr量は10〜14% の範囲に規定する。 溶接金
属の良好な耐食性を得るためには、10%以上のCrの添加が
必要であり、 母材よりも添加量を多くすることが好まし
い。 しかし、14%を超えての添加は、 溶接部靱性と溶接性
の劣化をまねく。 従って、 溶接金属のCr量は10〜14% の
範囲に規定する。
0%以上のCrの添加が必要である。 しかし、14%を超えて添
加すると、 溶接熱影響部の靱性と溶接性が劣化する。 従
って、 母材のCr量は10〜14% の範囲に規定する。 溶接金
属の良好な耐食性を得るためには、10%以上のCrの添加が
必要であり、 母材よりも添加量を多くすることが好まし
い。 しかし、14%を超えての添加は、 溶接部靱性と溶接性
の劣化をまねく。 従って、 溶接金属のCr量は10〜14% の
範囲に規定する。
【0020】N :母材のN が300ppmを超えると、 溶接熱
影響部の靱性と、 耐硫化物応力腐食割れ性が劣化する。
従って、 母材のN 量を300ppm以下に規定する。 溶接金属
のNが300ppmを超えると、 靱性と耐硫化物応力腐食割れ
性が劣化する。 従って、 溶接金属のN 量を300ppm以下に
規定する。
影響部の靱性と、 耐硫化物応力腐食割れ性が劣化する。
従って、 母材のN 量を300ppm以下に規定する。 溶接金属
のNが300ppmを超えると、 靱性と耐硫化物応力腐食割れ
性が劣化する。 従って、 溶接金属のN 量を300ppm以下に
規定する。
【0021】Ni:母材では、 良好な溶接熱影響部の靱性
を得るために0.5%以上のNiを添加することが必要であ
る。 しかし、6.0% を超えて添加すると、 溶接熱影響部の
靱性と溶接性が劣化する。 従って、 母材のNi量を0.5 〜
6.0%の範囲に規定する。 溶接金属では、 良好な靱性と耐
硫化物応力腐食割れ性を得るために1.0%以上のNiが必要
である。 しかし、6.0% を超えて添加すると、 溶接性が劣
化する。 従って、 溶接金属のNi量を1.0 〜6.0%の範囲に
規定する。
を得るために0.5%以上のNiを添加することが必要であ
る。 しかし、6.0% を超えて添加すると、 溶接熱影響部の
靱性と溶接性が劣化する。 従って、 母材のNi量を0.5 〜
6.0%の範囲に規定する。 溶接金属では、 良好な靱性と耐
硫化物応力腐食割れ性を得るために1.0%以上のNiが必要
である。 しかし、6.0% を超えて添加すると、 溶接性が劣
化する。 従って、 溶接金属のNi量を1.0 〜6.0%の範囲に
規定する。
【0022】M 値:母材について、M=%Cr+1.3x%Mo-%Ni
の式で表されるM の値(M 値)が14.0を超えると、溶接
熱影響部の耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接熱影
響部の靱性が劣化する。 従って、 母材の良好な耐食性、
耐硫化物応力腐食割れ性を得るため、M 値を14.0以下に
規定する。
の式で表されるM の値(M 値)が14.0を超えると、溶接
熱影響部の耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接熱影
響部の靱性が劣化する。 従って、 母材の良好な耐食性、
耐硫化物応力腐食割れ性を得るため、M 値を14.0以下に
規定する。
【0023】酸素:溶接金属中の酸素が500ppmを超える
と、溶接金属の靭性が劣化する。従って、溶接金属中の
酸素量を500ppm以下に規定する。
と、溶接金属の靭性が劣化する。従って、溶接金属中の
酸素量を500ppm以下に規定する。
【0024】なお、残部はFeと不純物であるが、以上に
述べた以外の元素であれば、発明の目的を損なわない限
り不純物として含まれていてもよい。不純物には、スク
ラップから混入するもの、製鋼作業で混入するもの等が
あるが、通常作業で混入する限り不純物として含まれて
いても差し支えない。
述べた以外の元素であれば、発明の目的を損なわない限
り不純物として含まれていてもよい。不純物には、スク
ラップから混入するもの、製鋼作業で混入するもの等が
あるが、通常作業で混入する限り不純物として含まれて
いても差し支えない。
【0025】次に、シーム溶接後の熱処理について説明
する。900 〜1000℃に加熱した後、5 ℃/ 秒以下で冷
却:焼きならしは、溶接熱影響部の組織微細化による靭
性の改善や溶接残留応力の除去のために実施する。焼入
れのような冷却速度が5 ℃/ 秒を超える熱処理の場合、
シーム溶接部が著しく硬化するため、焼き入れ直後に溶
接割れが発生する。一般的に、焼きならし時の冷却速度
は5 ℃/ 秒以下であり、焼入れ時のような著しい硬化減
少は認められない。従って、シーム溶接後には、まず焼
きならすこととし、焼きならし温度はオーステナイト単
相となる900 〜1000℃に規定する。
する。900 〜1000℃に加熱した後、5 ℃/ 秒以下で冷
却:焼きならしは、溶接熱影響部の組織微細化による靭
性の改善や溶接残留応力の除去のために実施する。焼入
れのような冷却速度が5 ℃/ 秒を超える熱処理の場合、
シーム溶接部が著しく硬化するため、焼き入れ直後に溶
接割れが発生する。一般的に、焼きならし時の冷却速度
は5 ℃/ 秒以下であり、焼入れ時のような著しい硬化減
少は認められない。従って、シーム溶接後には、まず焼
きならすこととし、焼きならし温度はオーステナイト単
相となる900 〜1000℃に規定する。
【0026】550 〜650 ℃にて焼き戻し:本発明が対象
とするマルテンサイト主体の組織では、焼きならしまま
でも未だに硬く低靭性であるため、焼き戻しによる母材
および溶接部の靭性の向上が必要である。焼き戻し温度
は、550 ℃未満では靭性向上の効果が小さく、650 ℃を
超えるとα→γ変態が進行し、靭性劣化が起こるため、
焼き戻し温度は550 〜650 ℃とした。
とするマルテンサイト主体の組織では、焼きならしまま
でも未だに硬く低靭性であるため、焼き戻しによる母材
および溶接部の靭性の向上が必要である。焼き戻し温度
は、550 ℃未満では靭性向上の効果が小さく、650 ℃を
超えるとα→γ変態が進行し、靭性劣化が起こるため、
焼き戻し温度は550 〜650 ℃とした。
【0027】本件第2発明は、シーム部の溶接金属の化
学成分が、本件第1発明に記載の化学成分に加えて、重
量%で、Mo:4.0%以下、Cu:2.0%以下、Co:1.0%以下、
W :1.0%以下、Nb:0.10% 以下、V :0.10% 以下、Ti:
0.10% 以下、Zr:0.10% 以下、B :50ppm 以下、Ca:50
ppm 以下のうち1 種以上を含有し、母材の化学成分が、
本件第1発明に記載の化学成分に加えて、重量%で、M
o:4.0%以下、Cu:2.0%以下、Co:1.0%以下、W :1.0%
以下、Nb:0.10% 以下、V :0.10% 以下、Ti:0.10% 以
下、Zr:0.10% 以下、B :50ppm 以下、Ca:50ppm 以下
のうち1 種以上を含有するとともに、本件第1発明に記
載のM の値が14.0以下であり、シーム溶接後、900 〜10
00℃に加熱された後、5 ℃/ 秒以下で冷却され、その後
550 〜650℃で焼き戻しが行われることを特徴とする溶
接部靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼
管である。
学成分が、本件第1発明に記載の化学成分に加えて、重
量%で、Mo:4.0%以下、Cu:2.0%以下、Co:1.0%以下、
W :1.0%以下、Nb:0.10% 以下、V :0.10% 以下、Ti:
0.10% 以下、Zr:0.10% 以下、B :50ppm 以下、Ca:50
ppm 以下のうち1 種以上を含有し、母材の化学成分が、
本件第1発明に記載の化学成分に加えて、重量%で、M
o:4.0%以下、Cu:2.0%以下、Co:1.0%以下、W :1.0%
以下、Nb:0.10% 以下、V :0.10% 以下、Ti:0.10% 以
下、Zr:0.10% 以下、B :50ppm 以下、Ca:50ppm 以下
のうち1 種以上を含有するとともに、本件第1発明に記
載のM の値が14.0以下であり、シーム溶接後、900 〜10
00℃に加熱された後、5 ℃/ 秒以下で冷却され、その後
550 〜650℃で焼き戻しが行われることを特徴とする溶
接部靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼
管である。
【0028】この発明は、本件第1発明の化学成分にさ
らに次の化学成分を加えて強度、靭性の向上を図るもの
である。以下、化学成分の限定理由について説明する。
らに次の化学成分を加えて強度、靭性の向上を図るもの
である。以下、化学成分の限定理由について説明する。
【0029】Mo、Cu、Co、W :母材、溶接金属ともに目
標の強度に応じて、これらの元素を添加してもよい。し
かし、Moは4.0%、Cuは2.0%、Coは1.0%、W は1.0%をそれ
ぞれ超えて添加すると、溶接金属あるいは溶接熱影響部
の靱性および溶接性が劣化する。従って、母材、溶接金
属ともに、これらの元素の添加量を、Moは4.0%以下、Cu
は2.0%以下、Coは1.0%以下、W は1.0%以下にそれぞれ規
定する。
標の強度に応じて、これらの元素を添加してもよい。し
かし、Moは4.0%、Cuは2.0%、Coは1.0%、W は1.0%をそれ
ぞれ超えて添加すると、溶接金属あるいは溶接熱影響部
の靱性および溶接性が劣化する。従って、母材、溶接金
属ともに、これらの元素の添加量を、Moは4.0%以下、Cu
は2.0%以下、Coは1.0%以下、W は1.0%以下にそれぞれ規
定する。
【0030】Nb、V 、Ti、Zr:母材、溶接金属ともにこ
れらの元素の微量添加により、溶接金属あるいは溶接熱
影響部の靱性と耐硫化物応力腐食割れ性が向上する。し
かし、いずれも0.10% を超えて添加すると、かえって溶
接熱影響部の靱性が低下し、耐硫化物応力腐食割れ性が
劣化する。従って、母材、溶接金属ともに、Nb、V 、T
i、Zrの添加量をそれぞれ0.10% 以下に規定する。
れらの元素の微量添加により、溶接金属あるいは溶接熱
影響部の靱性と耐硫化物応力腐食割れ性が向上する。し
かし、いずれも0.10% を超えて添加すると、かえって溶
接熱影響部の靱性が低下し、耐硫化物応力腐食割れ性が
劣化する。従って、母材、溶接金属ともに、Nb、V 、T
i、Zrの添加量をそれぞれ0.10% 以下に規定する。
【0031】Ca:母材、溶接金属ともにCaは硫化物の形
態を制御し、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる。し
かし、50ppm を超えて添加すると、かえって耐硫化物応
力腐食割れ性、溶接性の劣化をまねく。従って、母材、
溶接金属ともに、Ca量を50ppm 以下に規定する。
態を制御し、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる。し
かし、50ppm を超えて添加すると、かえって耐硫化物応
力腐食割れ性、溶接性の劣化をまねく。従って、母材、
溶接金属ともに、Ca量を50ppm 以下に規定する。
【0032】B :母材、溶接金属ともにB は靭性を向上
させる。しかし、50ppm を超えて添加すると、かえって
溶接金属あるいは溶接熱影響部の靱性の低下、ならびに
溶接性の劣化をまねく。従って、母材、溶接金属ともに
B 量を50ppm 以下に規定する。
させる。しかし、50ppm を超えて添加すると、かえって
溶接金属あるいは溶接熱影響部の靱性の低下、ならびに
溶接性の劣化をまねく。従って、母材、溶接金属ともに
B 量を50ppm 以下に規定する。
【0033】本件第1発明及び本件第2発明は、シーム
溶接後に焼きならしおよび焼戻し処理を行うことによ
り、溶接金属及び母材のC が0.03% 以下、溶接金属の酸
素含有量が500ppm以下、また溶接金属及び母材のN 含有
量が300ppm以下の組成で優れた特性を有する、溶接部靭
性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管の発
明であるが、溶接金属及び母材のC を0.02% 以下に、溶
接金属の酸素含有量を300ppm以下に、溶接金属及び母材
のN 含有量を200ppm以下に下げることにより、シーム溶
接後の熱処理を行わなくても、溶接ままで、溶接部靭性
と耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管を得る
ことができるのが本件第3発明及び本件第4発明であ
る。
溶接後に焼きならしおよび焼戻し処理を行うことによ
り、溶接金属及び母材のC が0.03% 以下、溶接金属の酸
素含有量が500ppm以下、また溶接金属及び母材のN 含有
量が300ppm以下の組成で優れた特性を有する、溶接部靭
性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管の発
明であるが、溶接金属及び母材のC を0.02% 以下に、溶
接金属の酸素含有量を300ppm以下に、溶接金属及び母材
のN 含有量を200ppm以下に下げることにより、シーム溶
接後の熱処理を行わなくても、溶接ままで、溶接部靭性
と耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管を得る
ことができるのが本件第3発明及び本件第4発明であ
る。
【0034】本件第3発明は、シーム溶接部の溶接金属
の化学成分が、重量%で、C :0.02% 以下、Si:1.0%以
下、Mn:5.0%以下、P :0.03% 以下、S :0.005%以下、
N :200ppm以下、Cr:10〜14% 、Ni:1.0 〜6.0%、酸
素:300ppm以下を含有し、母材の化学成分が、重量%
で、C :0.02% 以下、Si:1.0%以下、Mn:5.0%以下、P
:0.03% 以下、S :0.005%以下、N :200ppm以下、C
r:10〜14% 、Ni:0.5 〜6.0%を含有するとともに、M=%
Cr+1.3x%Mo-%Ni の式で表されるM の値が14.0以下であ
ることを特徴とする、溶接部靭性と耐硫化物腐食割れ性
に優れた高クロム溶接鋼管である。
の化学成分が、重量%で、C :0.02% 以下、Si:1.0%以
下、Mn:5.0%以下、P :0.03% 以下、S :0.005%以下、
N :200ppm以下、Cr:10〜14% 、Ni:1.0 〜6.0%、酸
素:300ppm以下を含有し、母材の化学成分が、重量%
で、C :0.02% 以下、Si:1.0%以下、Mn:5.0%以下、P
:0.03% 以下、S :0.005%以下、N :200ppm以下、C
r:10〜14% 、Ni:0.5 〜6.0%を含有するとともに、M=%
Cr+1.3x%Mo-%Ni の式で表されるM の値が14.0以下であ
ることを特徴とする、溶接部靭性と耐硫化物腐食割れ性
に優れた高クロム溶接鋼管である。
【0035】この発明は、高クロム溶接鋼管の母材のみ
ならず、シーム溶接部に着目して、溶接部靭性と耐硫化
物腐食割れ性について鋭意検討することにより成され
た。その過程で、母材と溶接金属の化学成分を変化させ
て、靭性、炭酸ガス環境下での耐食性、硫化水素環境下
での耐硫化物応力腐食割れ性、溶接性を調査した。その
結果、発明の化学成分とすることにより、溶接部靭性と
耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管を得るこ
とができた。
ならず、シーム溶接部に着目して、溶接部靭性と耐硫化
物腐食割れ性について鋭意検討することにより成され
た。その過程で、母材と溶接金属の化学成分を変化させ
て、靭性、炭酸ガス環境下での耐食性、硫化水素環境下
での耐硫化物応力腐食割れ性、溶接性を調査した。その
結果、発明の化学成分とすることにより、溶接部靭性と
耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管を得るこ
とができた。
【0036】以下、化学成分の限定理由について説明す
る。 C :母材のC が0.02% を超えると、耐食性、 耐硫化物応
力腐食割れ性、溶接熱影響部靭性、ならびに溶接性が劣
化する。また、溶接金属のC が0.02% を超えると、耐食
性、耐硫化物応力腐食割れ性、ならびに靭性の劣化をま
ねく。 従って、母材、 溶接金属ともにC 量を0.02% 以下
に規定する。
る。 C :母材のC が0.02% を超えると、耐食性、 耐硫化物応
力腐食割れ性、溶接熱影響部靭性、ならびに溶接性が劣
化する。また、溶接金属のC が0.02% を超えると、耐食
性、耐硫化物応力腐食割れ性、ならびに靭性の劣化をま
ねく。 従って、母材、 溶接金属ともにC 量を0.02% 以下
に規定する。
【0037】Si:母材、 溶接金属ともに1.0%を超えてSi
を添加すると、 溶接性が劣化する。従って、 母材、 溶接
金属ともにSi量を1.0%以下に規定する。
を添加すると、 溶接性が劣化する。従って、 母材、 溶接
金属ともにSi量を1.0%以下に規定する。
【0038】Mn:母材、 溶接金属ともに5.0%を超えてMn
を添加すると、 溶接金属、 溶接熱影響部の靱性と耐硫化
物応力腐食割れ性が劣化する。 従って、 母材、 溶接金属
ともにMn量を5.0%以下に規定する。
を添加すると、 溶接金属、 溶接熱影響部の靱性と耐硫化
物応力腐食割れ性が劣化する。 従って、 母材、 溶接金属
ともにMn量を5.0%以下に規定する。
【0039】P :母材、 溶接金属ともにP が0.03% を超
えると、 溶接熱影響部の靱性と耐硫化物応力腐食割れ
性、 溶接性の劣化をまねく。 従って、 母材、 溶接金属と
もにP量を0.03% 以下に規定する。
えると、 溶接熱影響部の靱性と耐硫化物応力腐食割れ
性、 溶接性の劣化をまねく。 従って、 母材、 溶接金属と
もにP量を0.03% 以下に規定する。
【0040】S :母材、 溶接金属ともにS が0.005%を超
えると、 耐食性、 溶接性と耐硫化物応力腐食割れ性が劣
化する。 従って、 母材、 溶接金属ともにS 量を0.005%以
下に規定する。
えると、 耐食性、 溶接性と耐硫化物応力腐食割れ性が劣
化する。 従って、 母材、 溶接金属ともにS 量を0.005%以
下に規定する。
【0041】N :母材のN が200ppmを超えると、 溶接熱
影響部の靱性と、 耐硫化物応力腐食割れ性が劣化する。
従って、 母材のN 量を200ppm以下に規定する。 溶接金属
のNが200ppmを超えると、 靱性と耐硫化物応力腐食割れ
性が劣化する。 従って、 溶接金属のN 量を200ppm以下に
規定する。
影響部の靱性と、 耐硫化物応力腐食割れ性が劣化する。
従って、 母材のN 量を200ppm以下に規定する。 溶接金属
のNが200ppmを超えると、 靱性と耐硫化物応力腐食割れ
性が劣化する。 従って、 溶接金属のN 量を200ppm以下に
規定する。
【0042】Cr:母材の良好な耐食性を得るためには、1
0%以上のCrの添加が必要である。 しかし、14%を超えて添
加すると、 溶接熱影響部の靱性と溶接性が劣化する。 従
って、 母材のCr量は10〜14% の範囲に規定する。 溶接金
属の良好な耐食性を得るためには、10%以上のCrの添加が
必要であり、 母材よりも添加量を多くすることが好まし
い。 しかし、14%を超えての添加は、 溶接部靱性と溶接性
の劣化をまねく。 従って、 溶接金属のCr量は10〜14% の
範囲に規定する。
0%以上のCrの添加が必要である。 しかし、14%を超えて添
加すると、 溶接熱影響部の靱性と溶接性が劣化する。 従
って、 母材のCr量は10〜14% の範囲に規定する。 溶接金
属の良好な耐食性を得るためには、10%以上のCrの添加が
必要であり、 母材よりも添加量を多くすることが好まし
い。 しかし、14%を超えての添加は、 溶接部靱性と溶接性
の劣化をまねく。 従って、 溶接金属のCr量は10〜14% の
範囲に規定する。
【0043】Ni:母材では、 良好な溶接熱影響部の靱性
を得るために0.5%以上のNiを添加することが必要であ
る。 しかし、6.0% を超えて添加すると、 溶接熱影響部の
靱性と溶接性が劣化する。 従って、 母材のNi量を0.5 〜
6.0%の範囲に規定する。 溶接金属では、 良好な靱性と耐
硫化物応力腐食割れ性を得るために1.0%以上のNiが必要
である。 しかし、6.0% を超えて添加すると、 溶接性が劣
化する。 従って、 溶接金属のNi量を1.0 〜6.0%の範囲に
規定する。
を得るために0.5%以上のNiを添加することが必要であ
る。 しかし、6.0% を超えて添加すると、 溶接熱影響部の
靱性と溶接性が劣化する。 従って、 母材のNi量を0.5 〜
6.0%の範囲に規定する。 溶接金属では、 良好な靱性と耐
硫化物応力腐食割れ性を得るために1.0%以上のNiが必要
である。 しかし、6.0% を超えて添加すると、 溶接性が劣
化する。 従って、 溶接金属のNi量を1.0 〜6.0%の範囲に
規定する。
【0044】M 値:母材について、M=%Cr+1.3x%Mo-%Ni
の式で表されるM の値(M 値)が14.0を超えると、溶接
熱影響部の耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接熱影
響部の靱性が劣化する。 従って、 母材の良好な耐食性、
耐硫化物応力腐食割れ性を得るため、M 値を14.0以下に
規定する。
の式で表されるM の値(M 値)が14.0を超えると、溶接
熱影響部の耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接熱影
響部の靱性が劣化する。 従って、 母材の良好な耐食性、
耐硫化物応力腐食割れ性を得るため、M 値を14.0以下に
規定する。
【0045】酸素:溶接金属中の酸素が300ppmを超える
と、溶接金属の靭性が劣化する。従って、溶接金属中の
酸素量を300ppm以下に規定する。
と、溶接金属の靭性が劣化する。従って、溶接金属中の
酸素量を300ppm以下に規定する。
【0046】なお、残部はFeと不純物であるが、以上に
述べた以外の元素であれば、発明の目的を損なわない限
り不純物として含まれていてもよい。不純物には、スク
ラップから混入するもの、製鋼作業で混入するもの等が
あるが、通常作業で混入する限り不純物として含まれて
いても差し支えない。
述べた以外の元素であれば、発明の目的を損なわない限
り不純物として含まれていてもよい。不純物には、スク
ラップから混入するもの、製鋼作業で混入するもの等が
あるが、通常作業で混入する限り不純物として含まれて
いても差し支えない。
【0047】本件第4発明は、シーム部の溶接金属の化
学成分が、本件第3発明に記載の化学成分に加えて、重
量%で、Mo:4.0%以下、Cu:2.0%以下、Co:1.0%以下、
W :1.0%以下、Nb:0.10% 以下、V :0.10% 以下、Ti:
0.10% 以下、Zr:0.10% 以下、B :50ppm 以下、Ca:50
ppm 以下のうち1 種以上を含有し、母材の化学成分が、
本件第3発明に記載の化学成分に加えて、重量%で、M
o:4.0%以下、Cu:2.0%以下、Co:1.0%以下、W :1.0%
以下、Nb:0.10% 以下、V :0.10% 以下、Ti:0.10% 以
下、Zr:0.10% 以下、B :50ppm 以下、Ca:50ppm 以下
のうち1 種以上を含有するとともに、本件第3発明に記
載のM の値が14.0以下であることを特徴とする、溶接部
靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管で
ある。
学成分が、本件第3発明に記載の化学成分に加えて、重
量%で、Mo:4.0%以下、Cu:2.0%以下、Co:1.0%以下、
W :1.0%以下、Nb:0.10% 以下、V :0.10% 以下、Ti:
0.10% 以下、Zr:0.10% 以下、B :50ppm 以下、Ca:50
ppm 以下のうち1 種以上を含有し、母材の化学成分が、
本件第3発明に記載の化学成分に加えて、重量%で、M
o:4.0%以下、Cu:2.0%以下、Co:1.0%以下、W :1.0%
以下、Nb:0.10% 以下、V :0.10% 以下、Ti:0.10% 以
下、Zr:0.10% 以下、B :50ppm 以下、Ca:50ppm 以下
のうち1 種以上を含有するとともに、本件第3発明に記
載のM の値が14.0以下であることを特徴とする、溶接部
靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管で
ある。
【0048】この発明は、本件第3発明の化学成分にさ
らに次の化学成分を加えて強度、靭性の向上を図るもの
である。以下、化学成分の限定理由について説明する。
らに次の化学成分を加えて強度、靭性の向上を図るもの
である。以下、化学成分の限定理由について説明する。
【0049】Mo、Cu、Co、W :母材、溶接金属ともに目
標の強度に応じて、これらの元素を添加してもよい。し
かし、Moは4.0%、Cuは2.0%、Coは1.0%、W は1.0%をそれ
ぞれ超えて添加すると、溶接金属あるいは溶接熱影響部
の靱性および溶接性が劣化する。従って、母材、溶接金
属ともに、これらの元素の添加量を、Moは4.0%以下、Cu
は2.0%以下、Coは1.0%以下、W は1.0%以下にそれぞれ規
定する。
標の強度に応じて、これらの元素を添加してもよい。し
かし、Moは4.0%、Cuは2.0%、Coは1.0%、W は1.0%をそれ
ぞれ超えて添加すると、溶接金属あるいは溶接熱影響部
の靱性および溶接性が劣化する。従って、母材、溶接金
属ともに、これらの元素の添加量を、Moは4.0%以下、Cu
は2.0%以下、Coは1.0%以下、W は1.0%以下にそれぞれ規
定する。
【0050】Nb、V 、Ti、Zr:母材、溶接金属ともにこ
れらの元素の微量添加により、溶接金属あるいは溶接熱
影響部の靱性と耐硫化物応力腐食割れ性が向上する。し
かし、いずれも0.10% を超えて添加すると、かえって溶
接熱影響部の靱性が低下し、耐硫化物応力腐食割れ性が
劣化する。従って、母材、溶接金属ともに、Nb、V 、T
i、Zrの添加量をそれぞれ0.10% 以下に規定する。
れらの元素の微量添加により、溶接金属あるいは溶接熱
影響部の靱性と耐硫化物応力腐食割れ性が向上する。し
かし、いずれも0.10% を超えて添加すると、かえって溶
接熱影響部の靱性が低下し、耐硫化物応力腐食割れ性が
劣化する。従って、母材、溶接金属ともに、Nb、V 、T
i、Zrの添加量をそれぞれ0.10% 以下に規定する。
【0051】Ca:母材、溶接金属ともにCaは硫化物の形
態を制御し、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる。し
かし、50ppm を超えて添加すると、かえって耐硫化物応
力腐食割れ性、溶接性の劣化をまねく。従って、母材、
溶接金属ともに、Ca量を50ppm 以下に規定する。
態を制御し、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる。し
かし、50ppm を超えて添加すると、かえって耐硫化物応
力腐食割れ性、溶接性の劣化をまねく。従って、母材、
溶接金属ともに、Ca量を50ppm 以下に規定する。
【0052】B :母材、溶接金属ともにB は靭性を向上
させる。しかし、50ppm を超えて添加すると、かえって
溶接金属あるいは溶接熱影響部の靱性の低下、ならびに
溶接性の劣化をまねく。従って、母材、溶接金属ともに
B 量を50ppm 以下に規定する。
させる。しかし、50ppm を超えて添加すると、かえって
溶接金属あるいは溶接熱影響部の靱性の低下、ならびに
溶接性の劣化をまねく。従って、母材、溶接金属ともに
B 量を50ppm 以下に規定する。
【0053】
【発明の実施の形態】この発明の鋼の溶製は、転炉、電
気炉、その他、化学成分を発明の範囲内に制御できる製
造方法であれば、いずれの方法を用いてもよい。溶製さ
れた鋼は、ラインパイプ用鋼として用いるため、スラブ
等の形状に鋳造する。その後、熱間圧延により鋼板を製
造すれば、ラインパイプ用の鋼板が得られる。熱間圧延
は、厚板ミルで製造すればよいが、幅狭でもよい場合
(小径パイプ用)はホットストリップミルで製造しても
よい。
気炉、その他、化学成分を発明の範囲内に制御できる製
造方法であれば、いずれの方法を用いてもよい。溶製さ
れた鋼は、ラインパイプ用鋼として用いるため、スラブ
等の形状に鋳造する。その後、熱間圧延により鋼板を製
造すれば、ラインパイプ用の鋼板が得られる。熱間圧延
は、厚板ミルで製造すればよいが、幅狭でもよい場合
(小径パイプ用)はホットストリップミルで製造しても
よい。
【0054】鋼管のシーム溶接方法は、サブマージアー
ク溶接が高能率、高作業性の点で好ましいが、その他の
溶接方法であっても、溶接金属の化学成分が発明の範囲
を満たせば、良好な溶接金属の靱性、耐硫化物応力腐食
割れ性、溶接性を得ることができる。
ク溶接が高能率、高作業性の点で好ましいが、その他の
溶接方法であっても、溶接金属の化学成分が発明の範囲
を満たせば、良好な溶接金属の靱性、耐硫化物応力腐食
割れ性、溶接性を得ることができる。
【0055】
【実施例】[実施例1]種々の化学成分の鋼を溶製し、
熱間圧延により鋼板を製造した。鋼板(母材)の化学成
分を、表1にM 値とともに示す。表1の鋼A 〜I は発明
鋼、鋼J 〜R は比較鋼をそれぞれ示す。
熱間圧延により鋼板を製造した。鋼板(母材)の化学成
分を、表1にM 値とともに示す。表1の鋼A 〜I は発明
鋼、鋼J 〜R は比較鋼をそれぞれ示す。
【0056】
【表1】
【0057】次いで、これらの鋼板を鋼管に成形し、シ
ーム溶接を行い溶接鋼管を製造した。鋼管のシーム溶接
部の溶接金属の化学成分を、表2に示す。
ーム溶接を行い溶接鋼管を製造した。鋼管のシーム溶接
部の溶接金属の化学成分を、表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】表2の鋼A1〜I1(末尾1 )は発明鋼で、化
学成分は母材・溶接金属とも発明範囲内である。鋼A2〜
I2(末尾2 )およびI3は比較鋼で、母材は発明範囲内で
あるが溶接金属が発明範囲を外れている。また、J1〜O1
は比較鋼で、溶接金属は発明範囲内に調製したが、母材
は前述の表1のように発明範囲外(比較鋼)である。さ
らに、P1〜R1も比較鋼で、母材、溶接金属とも発明範囲
外である。
学成分は母材・溶接金属とも発明範囲内である。鋼A2〜
I2(末尾2 )およびI3は比較鋼で、母材は発明範囲内で
あるが溶接金属が発明範囲を外れている。また、J1〜O1
は比較鋼で、溶接金属は発明範囲内に調製したが、母材
は前述の表1のように発明範囲外(比較鋼)である。さ
らに、P1〜R1も比較鋼で、母材、溶接金属とも発明範囲
外である。
【0060】さらに、これらシーム溶接後の鋼管に熱処
理を施した。表3 の末尾がa の鋼管には、発明範囲であ
る950 ℃に加熱して30分保持後1 ℃/ 秒で冷却して焼き
ならした後、600 ℃に加熱して30分保持して焼き戻しを
施した(表3では熱処理の欄にN-T として記載)。末尾
がb の鋼管には、発明範囲外である950 ℃に加熱して30
分保持後30℃/ 秒で冷却して焼き入れした後、600 ℃に
加熱して30分保持して焼き戻しを(表3ではQ-T として
記載)、もしくは950 ℃に加熱して30分保持後1 ℃/ 秒
で冷却する焼きならしのみ(表3ではN として記載)を
施した。
理を施した。表3 の末尾がa の鋼管には、発明範囲であ
る950 ℃に加熱して30分保持後1 ℃/ 秒で冷却して焼き
ならした後、600 ℃に加熱して30分保持して焼き戻しを
施した(表3では熱処理の欄にN-T として記載)。末尾
がb の鋼管には、発明範囲外である950 ℃に加熱して30
分保持後30℃/ 秒で冷却して焼き入れした後、600 ℃に
加熱して30分保持して焼き戻しを(表3ではQ-T として
記載)、もしくは950 ℃に加熱して30分保持後1 ℃/ 秒
で冷却する焼きならしのみ(表3ではN として記載)を
施した。
【0061】
【表3】
【0062】これらの鋼管について、耐食性、耐硫化物
応力腐食割れ性、溶接性、溶接熱影響部の靱性を調べ
た。耐食性の調査は、炭酸ガス飽和の人工海水中での腐
食試験により行った。耐硫化物応力腐食割れ性の調査
は、炭酸ガスと硫化水素の混合ガスを飽和させた人工海
水中での応力腐食割れ試験により行った。
応力腐食割れ性、溶接性、溶接熱影響部の靱性を調べ
た。耐食性の調査は、炭酸ガス飽和の人工海水中での腐
食試験により行った。耐硫化物応力腐食割れ性の調査
は、炭酸ガスと硫化水素の混合ガスを飽和させた人工海
水中での応力腐食割れ試験により行った。
【0063】溶接性の試験は、シーム溶接を行い、溶接
欠陥、溶接割れの有無で評価した。溶接部熱影響部の靱
性については、シーム溶接部の溶接部熱影響部からVノ
ッチシャルピー試験片を切り出して衝撃試験を行った。
溶接金属の靱性についても同様の試験を行った。
欠陥、溶接割れの有無で評価した。溶接部熱影響部の靱
性については、シーム溶接部の溶接部熱影響部からVノ
ッチシャルピー試験片を切り出して衝撃試験を行った。
溶接金属の靱性についても同様の試験を行った。
【0064】これらの試験結果を、化学成分とともに表
3に示す。ここで、母材と溶接金属の化学成分(および
M 値)については、発明の範囲外の元素のみ×印で示し
てある。試験結果については、良好なもの、即ち目標特
性を達成したものを、○印で示してある。溶接性は、鋼
管のシーム溶接を行った場合に、溶接欠陥、溶接割れが
起こらなかったものを良好(○印)とした。溶接熱影響
部の靱性(表では、HAZ 靭性)および溶接金属の靱性
は、-20 ℃での吸収エネルギが50J 以上のものをそれぞ
れ良好(○印)とした。
3に示す。ここで、母材と溶接金属の化学成分(および
M 値)については、発明の範囲外の元素のみ×印で示し
てある。試験結果については、良好なもの、即ち目標特
性を達成したものを、○印で示してある。溶接性は、鋼
管のシーム溶接を行った場合に、溶接欠陥、溶接割れが
起こらなかったものを良好(○印)とした。溶接熱影響
部の靱性(表では、HAZ 靭性)および溶接金属の靱性
は、-20 ℃での吸収エネルギが50J 以上のものをそれぞ
れ良好(○印)とした。
【0065】耐食性は、腐食速度が0.1mm/year以下、耐
硫化物応力腐食割れ性(表では、耐SSC 性)は、720 時
間の浸漬試験で割れが生じなかったものをそれぞれ良好
(○印)とした。溶接部強度は、溶接継手引張試験の破
断位置が母材のものを良好(○印)、溶接金属のものを
不良(×印)とした。
硫化物応力腐食割れ性(表では、耐SSC 性)は、720 時
間の浸漬試験で割れが生じなかったものをそれぞれ良好
(○印)とした。溶接部強度は、溶接継手引張試験の破
断位置が母材のものを良好(○印)、溶接金属のものを
不良(×印)とした。
【0066】表3に示されるように、母材、溶接金属、
熱処理とも発明範囲を満たす発明鋼管A1a 〜I1a は、十
分な耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接性、溶接熱
影響部の靱性、溶接部強度を示している。
熱処理とも発明範囲を満たす発明鋼管A1a 〜I1a は、十
分な耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接性、溶接熱
影響部の靱性、溶接部強度を示している。
【0067】母材、溶接金属は発明範囲内であるが、熱
処理が発明範囲を外れている比較鋼管A1b 、C1b 、D1b
、F1b 、H1b は、いずれも目標特性に到達していな
い。熱処理が焼き入れ、焼き戻しである鋼管A1b 、F1b
、H1b は、溶接性が十分ではない。熱処理が焼きなら
しままである鋼管C1b 、D1b は、溶接熱影響部の靭性お
よび溶接金属の靭性が十分でない。
処理が発明範囲を外れている比較鋼管A1b 、C1b 、D1b
、F1b 、H1b は、いずれも目標特性に到達していな
い。熱処理が焼き入れ、焼き戻しである鋼管A1b 、F1b
、H1b は、溶接性が十分ではない。熱処理が焼きなら
しままである鋼管C1b 、D1b は、溶接熱影響部の靭性お
よび溶接金属の靭性が十分でない。
【0068】母材は発明範囲内であるが溶接金属が発明
範囲を外れている比較鋼管A2a 〜I2a およびI3a は、い
ずれも目標特性に到達していない。溶接金属のC 、W 、
酸素量が高い鋼管A2a は、溶接性、溶接熱影響部の靱
性、耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性
が十分でない。溶接金属のMn、Co、酸素量が高くてCr量
が低い鋼管B2a は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食
性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分で
ない。溶接金属のNi、Cu、Ti量が高い鋼管C2a は、溶接
性、溶接熱影響部の靱性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶
接金属の靱性が十分でない。溶接金属のS 、Ni、Cr、Zr
量が高い鋼管D2a は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐
食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分
でない。溶接金属のP 、Ni、Mo、V 量が高い鋼管E2a
は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐硫化物応力腐食割
れ性、溶接金属の靱性が十分でない。溶接金属のSi、N
i、N 量が高い鋼管F2a は、溶接性、溶接熱影響部の靱
性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分で
ない。溶接金属のNb、B 、酸素量が高い鋼管G2a は、溶
接性、溶接熱影響部の靱性、耐硫化物応力腐食割れ性、
溶接金属の靱性が十分でない。溶接金属のCa量が高く、
溶接金属のNi量が低い鋼管H2a は、溶接性、耐硫化物応
力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分でない。溶接金属
の酸素量が高い鋼管I2a は、溶接金属の靭性が十分でな
い。溶接金属のNi、酸素量が高い鋼管I3a は、溶接性、
溶接金属の靱性が十分でない。
範囲を外れている比較鋼管A2a 〜I2a およびI3a は、い
ずれも目標特性に到達していない。溶接金属のC 、W 、
酸素量が高い鋼管A2a は、溶接性、溶接熱影響部の靱
性、耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性
が十分でない。溶接金属のMn、Co、酸素量が高くてCr量
が低い鋼管B2a は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食
性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分で
ない。溶接金属のNi、Cu、Ti量が高い鋼管C2a は、溶接
性、溶接熱影響部の靱性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶
接金属の靱性が十分でない。溶接金属のS 、Ni、Cr、Zr
量が高い鋼管D2a は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐
食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分
でない。溶接金属のP 、Ni、Mo、V 量が高い鋼管E2a
は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐硫化物応力腐食割
れ性、溶接金属の靱性が十分でない。溶接金属のSi、N
i、N 量が高い鋼管F2a は、溶接性、溶接熱影響部の靱
性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分で
ない。溶接金属のNb、B 、酸素量が高い鋼管G2a は、溶
接性、溶接熱影響部の靱性、耐硫化物応力腐食割れ性、
溶接金属の靱性が十分でない。溶接金属のCa量が高く、
溶接金属のNi量が低い鋼管H2a は、溶接性、耐硫化物応
力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分でない。溶接金属
の酸素量が高い鋼管I2a は、溶接金属の靭性が十分でな
い。溶接金属のNi、酸素量が高い鋼管I3a は、溶接性、
溶接金属の靱性が十分でない。
【0069】また、溶接金属は発明範囲内であるが、母
材が発明範囲外である比較鋼管J1a〜O1a については、
いずれも目標特性に到達していない。母材のC 、Ni、W
量が高い鋼管J1a 、母材のMn、Co量が高くCr量が低い鋼
管K1a は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫
化物応力腐食割れ性が十分でない。母材のCu、Nb、Zr量
が高い鋼管L1a は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐硫
化物応力腐食割れ性が十分でない。母材のS 、Cr、Mo量
が高い鋼管M1a は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食
性、耐硫化物応力腐食割れ性が十分でない。母材のP 、
V 量が高い鋼管N1a 、母材のSi、N 量が高い鋼管O1a
は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐硫化物応力腐食割
れ性が十分でない。
材が発明範囲外である比較鋼管J1a〜O1a については、
いずれも目標特性に到達していない。母材のC 、Ni、W
量が高い鋼管J1a 、母材のMn、Co量が高くCr量が低い鋼
管K1a は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫
化物応力腐食割れ性が十分でない。母材のCu、Nb、Zr量
が高い鋼管L1a は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐硫
化物応力腐食割れ性が十分でない。母材のS 、Cr、Mo量
が高い鋼管M1a は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食
性、耐硫化物応力腐食割れ性が十分でない。母材のP 、
V 量が高い鋼管N1a 、母材のSi、N 量が高い鋼管O1a
は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐硫化物応力腐食割
れ性が十分でない。
【0070】母材、溶接金属とも発明範囲外である鋼管
P1a 〜R1a は、いずれも目標特性に到達していない。母
材のTi量、M 値が高く、溶接金属のNi量が低い鋼管P1a
は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫化物応
力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分でない。母材のCa
量、M 値が高く、溶接金属のNi、酸素量が高い鋼管Q1a
は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫化物応
力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分でない。母材のB
量、M 値が高く、溶接金属の酸素量が高い鋼管R1a は、
溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫化物応力腐
食割れ性、溶接金属の靱性が十分でない。
P1a 〜R1a は、いずれも目標特性に到達していない。母
材のTi量、M 値が高く、溶接金属のNi量が低い鋼管P1a
は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫化物応
力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分でない。母材のCa
量、M 値が高く、溶接金属のNi、酸素量が高い鋼管Q1a
は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫化物応
力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分でない。母材のB
量、M 値が高く、溶接金属の酸素量が高い鋼管R1a は、
溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫化物応力腐
食割れ性、溶接金属の靱性が十分でない。
【0071】[実施例2]種々の化学成分の鋼を溶製
し、熱間圧延により鋼板を製造した。鋼板(母材)の化
学成分を、表4にM 値とともに示す。表4の鋼A 〜I は
発明鋼、鋼J 〜R は比較鋼をそれぞれ示す。
し、熱間圧延により鋼板を製造した。鋼板(母材)の化
学成分を、表4にM 値とともに示す。表4の鋼A 〜I は
発明鋼、鋼J 〜R は比較鋼をそれぞれ示す。
【0072】
【表4】
【0073】次いで、これらの鋼板を鋼管に成形し、シ
ーム溶接を行い溶接鋼管を製造した。鋼管のシーム溶接
部の溶接金属の化学成分を、表5に示す。溶接後に熱処
理は行わなかった。
ーム溶接を行い溶接鋼管を製造した。鋼管のシーム溶接
部の溶接金属の化学成分を、表5に示す。溶接後に熱処
理は行わなかった。
【0074】
【表5】
【0075】表5の鋼管A1〜I1(末尾1 )は発明鋼管
で、化学成分は母材・溶接金属とも発明範囲内である。
鋼管A2〜I2(末尾2 )およびI3は比較鋼管で、母材は発
明範囲内であるが溶接金属が発明範囲を外れている。ま
た、J1〜O1は比較鋼管で、溶接金属は発明範囲内に調製
したが、母材は前述の表4のように発明範囲外(比較
鋼)である。さらに、P1〜R1も比較鋼管で、母材、溶接
金属とも発明範囲外である。
で、化学成分は母材・溶接金属とも発明範囲内である。
鋼管A2〜I2(末尾2 )およびI3は比較鋼管で、母材は発
明範囲内であるが溶接金属が発明範囲を外れている。ま
た、J1〜O1は比較鋼管で、溶接金属は発明範囲内に調製
したが、母材は前述の表4のように発明範囲外(比較
鋼)である。さらに、P1〜R1も比較鋼管で、母材、溶接
金属とも発明範囲外である。
【0076】これらの鋼管について、耐食性、耐硫化物
応力腐食割れ性、溶接性、溶接熱影響部の靱性を調べ
た。耐食性の調査は、炭酸ガス飽和の人工海水中での腐
食試験により行った。耐硫化物応力腐食割れ性の調査
は、炭酸ガスと硫化水素の混合ガスを飽和させた人工海
水中での応力腐食割れ試験により行った。
応力腐食割れ性、溶接性、溶接熱影響部の靱性を調べ
た。耐食性の調査は、炭酸ガス飽和の人工海水中での腐
食試験により行った。耐硫化物応力腐食割れ性の調査
は、炭酸ガスと硫化水素の混合ガスを飽和させた人工海
水中での応力腐食割れ試験により行った。
【0077】溶接性の試験は、シーム溶接を行い、溶接
欠陥、溶接割れの有無で評価した。溶接部熱影響部の靱
性については、溶接部熱影響部からVノッチシャルピー
試験片を切り出して衝撃試験を行った。溶接金属の靱性
についても同様の試験を行った。
欠陥、溶接割れの有無で評価した。溶接部熱影響部の靱
性については、溶接部熱影響部からVノッチシャルピー
試験片を切り出して衝撃試験を行った。溶接金属の靱性
についても同様の試験を行った。
【0078】これらの試験結果を、化学成分とともに表
6に示す。ここで、母材と溶接金属の化学成分(および
M 値)については、発明の範囲外の元素のみ×印で示し
てある。試験結果については、良好なもの、即ち目標特
性を達成したものを、○印で示してある。溶接性は、鋼
管のシーム溶接を行った場合に、溶接欠陥、溶接割れが
起こらなかったものを良好(○印)とした。溶接熱影響
部の靱性(表では、HAZ 靭性)および溶接金属の靱性
は、-20 ℃での吸収エネルギが50J 以上のものをそれぞ
れ良好(○印)とした。
6に示す。ここで、母材と溶接金属の化学成分(および
M 値)については、発明の範囲外の元素のみ×印で示し
てある。試験結果については、良好なもの、即ち目標特
性を達成したものを、○印で示してある。溶接性は、鋼
管のシーム溶接を行った場合に、溶接欠陥、溶接割れが
起こらなかったものを良好(○印)とした。溶接熱影響
部の靱性(表では、HAZ 靭性)および溶接金属の靱性
は、-20 ℃での吸収エネルギが50J 以上のものをそれぞ
れ良好(○印)とした。
【0079】耐食性は、腐食速度が0.1mm/year以下、耐
硫化物応力腐食割れ性(表では、耐SSC 性)は、720 時
間の浸漬試験で割れが生じなかったものをそれぞれ良好
(○印)とした。溶接部強度は、溶接継手引張試験の破
断位置が母材のものを良好(○印)、溶接金属のものを
不良(×印)とした。
硫化物応力腐食割れ性(表では、耐SSC 性)は、720 時
間の浸漬試験で割れが生じなかったものをそれぞれ良好
(○印)とした。溶接部強度は、溶接継手引張試験の破
断位置が母材のものを良好(○印)、溶接金属のものを
不良(×印)とした。
【0080】
【表6】
【0081】表6のように、母材、溶接金属とも発明範
囲を満たす発明鋼管A1〜I1(末尾1)は、十分な耐食
性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接性、溶接熱影響部の
靱性、溶接部強度を示している。
囲を満たす発明鋼管A1〜I1(末尾1)は、十分な耐食
性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接性、溶接熱影響部の
靱性、溶接部強度を示している。
【0082】母材は発明範囲内であるが溶接金属が発明
範囲を外れている比較鋼管A2〜I2(末尾2 )およびI3
は、いずれも目標特性に到達していない。溶接金属のC
、W 、酸素量が高い鋼管A2は、溶接性、溶接熱影響部
の靱性、耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の
靱性が十分でない。溶接金属のMn、Co、酸素量が高くて
Cr量が低い鋼管B2は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐
食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分
でない。溶接金属のNi、Cu、Ti量が高い鋼管C2は、溶接
性、溶接熱影響部の靱性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶
接金属の靱性が十分でない。溶接金属のS 、Ni、Cr、Zr
量が高い鋼管D2は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食
性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分で
ない。溶接金属のP 、Ni、Mo、V 量が高い鋼管E2は、溶
接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫化物応力腐食
割れ性、溶接金属の靱性が十分でない。溶接金属のSi、
Ni、N量が高い鋼管F2は、溶接性、溶接熱影響部の靱
性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分で
ない。溶接金属のNb、B 、酸素量が高い鋼管G2は、溶接
性、溶接熱影響部の靱性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶
接金属の靱性が十分でない。溶接金属のCa量が高く、溶
接金属のNi量が低い鋼管H2は、溶接性、耐硫化物応力腐
食割れ性、溶接金属の靱性が十分でない。溶接金属の酸
素量が高い鋼管I2は、溶接金属の靭性が十分でない。溶
接金属のNi、酸素量が高い鋼管I3は、溶接性、溶接金属
の靱性が十分でない。
範囲を外れている比較鋼管A2〜I2(末尾2 )およびI3
は、いずれも目標特性に到達していない。溶接金属のC
、W 、酸素量が高い鋼管A2は、溶接性、溶接熱影響部
の靱性、耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の
靱性が十分でない。溶接金属のMn、Co、酸素量が高くて
Cr量が低い鋼管B2は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐
食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分
でない。溶接金属のNi、Cu、Ti量が高い鋼管C2は、溶接
性、溶接熱影響部の靱性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶
接金属の靱性が十分でない。溶接金属のS 、Ni、Cr、Zr
量が高い鋼管D2は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食
性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分で
ない。溶接金属のP 、Ni、Mo、V 量が高い鋼管E2は、溶
接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫化物応力腐食
割れ性、溶接金属の靱性が十分でない。溶接金属のSi、
Ni、N量が高い鋼管F2は、溶接性、溶接熱影響部の靱
性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分で
ない。溶接金属のNb、B 、酸素量が高い鋼管G2は、溶接
性、溶接熱影響部の靱性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶
接金属の靱性が十分でない。溶接金属のCa量が高く、溶
接金属のNi量が低い鋼管H2は、溶接性、耐硫化物応力腐
食割れ性、溶接金属の靱性が十分でない。溶接金属の酸
素量が高い鋼管I2は、溶接金属の靭性が十分でない。溶
接金属のNi、酸素量が高い鋼管I3は、溶接性、溶接金属
の靱性が十分でない。
【0083】また、溶接金属は発明範囲内であるが、母
材が発明範囲外である比較鋼管J1〜O1については、いず
れも目標特性に到達していない。母材のC 、Ni、W 量が
高い鋼管J1、母材のMn、Co量が高くCr量が低い鋼管K1
は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫化物応
力腐食割れ性が十分でない。母材のCu、Nb、Zr量が高い
鋼管L1は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐硫化物応力
腐食割れ性が十分でない。母材のS 、Cr、Mo量が高い鋼
管M1は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫化
物応力腐食割れ性が十分でない。母材のP 、V 量が高い
鋼管N1、母材のSi、N 量が高い鋼管O1は、溶接性、溶接
熱影響部の靱性、耐硫化物応力腐食割れ性が十分でな
い。
材が発明範囲外である比較鋼管J1〜O1については、いず
れも目標特性に到達していない。母材のC 、Ni、W 量が
高い鋼管J1、母材のMn、Co量が高くCr量が低い鋼管K1
は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫化物応
力腐食割れ性が十分でない。母材のCu、Nb、Zr量が高い
鋼管L1は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐硫化物応力
腐食割れ性が十分でない。母材のS 、Cr、Mo量が高い鋼
管M1は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫化
物応力腐食割れ性が十分でない。母材のP 、V 量が高い
鋼管N1、母材のSi、N 量が高い鋼管O1は、溶接性、溶接
熱影響部の靱性、耐硫化物応力腐食割れ性が十分でな
い。
【0084】母材、溶接金属とも発明範囲外である鋼管
P1〜R1は、いずれも目標特性に到達していない。母材の
Ti量、M 値が高く、溶接金属のNi量、P 値およびQ 値が
低い鋼管P1は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、
耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分でな
い。母材のCa量、M 値が高く、溶接金属のNi、酸素量お
よびP 値が高い鋼管Q1は、溶接性、溶接熱影響部の靱
性、耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性
および溶接強度が十分でない。母材のB 量、M 値が高
く、溶接金属の酸素量が高くQ 値が低い鋼管R1は、溶接
性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫化物応力腐食割
れ性、溶接金属の靱性が十分でない。
P1〜R1は、いずれも目標特性に到達していない。母材の
Ti量、M 値が高く、溶接金属のNi量、P 値およびQ 値が
低い鋼管P1は、溶接性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、
耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性が十分でな
い。母材のCa量、M 値が高く、溶接金属のNi、酸素量お
よびP 値が高い鋼管Q1は、溶接性、溶接熱影響部の靱
性、耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性、溶接金属の靱性
および溶接強度が十分でない。母材のB 量、M 値が高
く、溶接金属の酸素量が高くQ 値が低い鋼管R1は、溶接
性、溶接熱影響部の靱性、耐食性、耐硫化物応力腐食割
れ性、溶接金属の靱性が十分でない。
【0085】
【発明の効果】本発明では、母材ならびにシーム溶接部
の化学成分およびこれらの成分元素の間の関係を規定す
ることにより、母材の材料特性とともに溶接金属の材料
特性を向上させることができる。その結果、母材ならび
にシーム溶接部の靭性に優れ、炭酸ガス環境下での耐食
性と硫化水素環境下での耐硫化物応力腐食割れ性にも優
れた高Crラインパイプ用鋼管を安価に提供することが
できる。
の化学成分およびこれらの成分元素の間の関係を規定す
ることにより、母材の材料特性とともに溶接金属の材料
特性を向上させることができる。その結果、母材ならび
にシーム溶接部の靭性に優れ、炭酸ガス環境下での耐食
性と硫化水素環境下での耐硫化物応力腐食割れ性にも優
れた高Crラインパイプ用鋼管を安価に提供することが
できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 遠藤 茂 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K042 AA06 AA24 BA02 BA07 BA09 CA02 CA03 CA04 CA05 CA07 CA08 CA09 CA10 CA11 CA12 CA13 CA15 DA02 DA04 DC02 DE05
Claims (4)
- 【請求項1】 シーム溶接部の溶接金属の化学成分が、
重量%で、C :0.03% 以下、Si:1.0%以下、Mn:5.0%以
下、P :0.03% 以下、S :0.005%以下、N :300ppm以
下、Cr:10〜14% 、Ni:1.0 〜6.0%、酸素:500ppm以下
を含有し、母材の化学成分が、重量%で、C :0.03% 以
下、Si:1.0%以下、Mn:5.0%以下、P :0.03% 以下、S
:0.005%以下、N :300ppm以下、Cr:10〜14% 、Ni:
0.5 〜6.0%を含有するとともに、M=%Cr+1.3x%Mo-%Ni の
式で表されるM の値が14.0以下であり、シーム溶接後、
900 〜1000℃に加熱された後、5 ℃/ 秒以下で冷却さ
れ、その後550 〜650 ℃で焼き戻しが行われることを特
徴とする溶接部靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高ク
ロム溶接鋼管。 - 【請求項2】 シーム部の溶接金属の化学成分が、請求
項1に記載の化学成分に加えて、重量%で、Mo:4.0%以
下、Cu:2.0%以下、Co:1.0%以下、W :1.0%以下、Nb:
0.10% 以下、V :0.10% 以下、Ti:0.10% 以下、Zr:0.
10% 以下、B:50ppm 以下、Ca:50ppm 以下のうち1 種
以上を含有し、母材の化学成分が、請求項1に記載の化
学成分に加えて、重量%で、Mo:4.0%以下、Cu:2.0%以
下、Co:1.0%以下、W :1.0%以下、Nb:0.10% 以下、V
:0.10% 以下、Ti:0.10% 以下、Zr:0.10% 以下、B
:50ppm 以下、Ca:50ppm 以下のうち1 種以上を含有
するとともに、請求項1に記載のM の値が14.0以下であ
り、シーム溶接後、900 〜1000℃に加熱された後、5 ℃
/ 秒以下で冷却され、その後550 〜650 ℃で焼き戻しが
行われることを特徴とする溶接部靭性と耐硫化物腐食割
れ性に優れた高クロム溶接鋼管。 - 【請求項3】 シーム溶接部の溶接金属の化学成分が、
重量%で、C :0.02% 以下、Si:1.0%以下、Mn:5.0%以
下、P :0.03% 以下、S :0.005%以下、N :200ppm以
下、Cr:10〜14% 、Ni:1.0 〜6.0%、酸素:300ppm以下
を含有し、母材の化学成分が、重量%で、C :0.02% 以
下、Si:1.0%以下、Mn:5.0%以下、P :0.03% 以下、S
:0.005%以下、N :200ppm以下、Cr:10〜14% 、Ni:
0.5 〜6.0%を含有するとともに、M=%Cr+1.3x%Mo-%Ni の
式で表されるM の値が14.0以下であることを特徴とす
る、溶接部靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム
溶接鋼管。 - 【請求項4】 シーム部の溶接金属の化学成分が、請求
項3に記載の化学成分に加えて、重量%で、Mo:4.0%以
下、Cu:2.0%以下、Co:1.0%以下、W :1.0%以下、Nb:
0.10% 以下、V :0.10% 以下、Ti:0.10% 以下、Zr:0.
10% 以下、B:50ppm 以下、Ca:50ppm 以下のうち1 種
以上を含有し、母材の化学成分が、請求項3に記載の化
学成分に加えて、重量%で、Mo:4.0%以下、Cu:2.0%以
下、Co:1.0%以下、W :1.0%以下、Nb:0.10% 以下、V
:0.10% 以下、Ti:0.10% 以下、Zr:0.10% 以下、B
:50ppm 以下、Ca:50ppm 以下のうち1 種以上を含有
するとともに、請求項3に記載のM の値が14.0以下であ
ることを特徴とする、溶接部靭性と耐硫化物腐食割れ性
に優れた高クロム溶接鋼管。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27977499A JP2001107141A (ja) | 1999-09-30 | 1999-09-30 | 溶接部靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27977499A JP2001107141A (ja) | 1999-09-30 | 1999-09-30 | 溶接部靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001107141A true JP2001107141A (ja) | 2001-04-17 |
Family
ID=17615740
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP27977499A Pending JP2001107141A (ja) | 1999-09-30 | 1999-09-30 | 溶接部靭性と耐硫化物腐食割れ性に優れた高クロム溶接鋼管 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2001107141A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103243273A (zh) * | 2013-06-03 | 2013-08-14 | 西南石油大学 | 采用同种材料锥面焊接式抗硫化氢腐蚀钻杆及其加工工艺 |
EP3460087A4 (en) * | 2016-05-20 | 2019-11-06 | Nippon Steel Corporation | STEEL BAR FOR DOWNHOLE ELEMENT AND DOWNHOLE ELEMENT |
US11772207B2 (en) | 2019-09-20 | 2023-10-03 | Lincoln Global, Inc. | High chromium creep resistant weld metal for arc welding of thick walled steel members |
US11772206B2 (en) | 2019-09-20 | 2023-10-03 | Lincoln Global, Inc. | High chromium creep resistant weld metal for arc welding of thin walled steel members |
-
1999
- 1999-09-30 JP JP27977499A patent/JP2001107141A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103243273A (zh) * | 2013-06-03 | 2013-08-14 | 西南石油大学 | 采用同种材料锥面焊接式抗硫化氢腐蚀钻杆及其加工工艺 |
EP3460087A4 (en) * | 2016-05-20 | 2019-11-06 | Nippon Steel Corporation | STEEL BAR FOR DOWNHOLE ELEMENT AND DOWNHOLE ELEMENT |
US10995394B2 (en) | 2016-05-20 | 2021-05-04 | Nippon Steel Corporation | Steel bar for downhole member, and downhole member |
US11772207B2 (en) | 2019-09-20 | 2023-10-03 | Lincoln Global, Inc. | High chromium creep resistant weld metal for arc welding of thick walled steel members |
US11772206B2 (en) | 2019-09-20 | 2023-10-03 | Lincoln Global, Inc. | High chromium creep resistant weld metal for arc welding of thin walled steel members |
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