JP2010037612A - 加工性に優れた高強度鋼管およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課 題】シーム部を有し、加工性に優れた高強度鋼管を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.5〜2.0%、Mn:1.0〜2.5%、P:0.020%以下、S:0.002%以下、Al:0.005〜0.08%、N:0.004%以下を含む組成と、シーム部の中心位置を基準に円周方向に±15°の範囲を除く領域の組織をマルテンサイト相が面積率で20〜60%含む組織とするとともに、さらに、該領域が、円周方向に450MPa以下の引張の残留応力を有し、さらに、該領域とそれ以外の領域との硬さ差ΔHVが、ビッカース硬さで250ポイント以下とする。この鋼管は、好ましくは、所定範囲のマルテンサイトを含む組織を有する鋼板を素材として、該素材に加工歪の付加が少ないロール成形工程、シームアニール工程等の製造工程を採用することにより得られる。加工歪の付加が少ないロール成形工程としては、ケージロール方式のロール成形方法や、成形フラワーを卵形形状とするロール成形方法が例示できる。これにより、引張強さ590MPa以上の高強度を有し、該高強度に適応した高い伸び値を有し、加工性に優れた高強度鋼管となる。
【選択図】なし
Description
4.0 ≧(tmin×HVmin)/(t0×HV0)≧0.94
(ここで、t0:全周の平均板厚(mm)、HV0:全周のビッカース硬さの平均値)
を満足する、鋼管になるとしている。これにより、板厚の不均一性および硬さの不均一性が抑制され、引張強さ:350MPa以上の高強度鋼管の全周拡管成形性が向上するとしている。しかし、特許文献2に記載された技術では、得られる鋼管はフェライト相を主体とする組織の鋼管であり、引張強さTSが590MPa以上、好ましくは780MPa以上、より好ましくは980MPa以上の高強度レベルの鋼管を安定して確保することは難しいという問題がある。
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)シーム部を有する鋼管であって、質量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.5〜2.0%、Mn:1.0〜2.5%、P:0.020%以下、S:0.002%以下、Al:0.005〜0.08%、N:0.004%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、前記シーム部の中心位置を基準に円周方向に15°〜345°の領域の組織がマルテンサイト相を体積率で20〜60%含む組織とを有することを特徴とする加工性に優れた高強度鋼管。
(3)(1)または(2)において、前記領域とそれ以外の領域との硬さ差ΔHVが、ビッカース硬さで250ポイント以下であることを特徴とする高強度鋼管。
(4)(1)または(2)において、前記領域とそれ以外の領域との硬さ差ΔHVが、ビッカース硬さで50ポイント以下であることを特徴とする高強度鋼管。
(6)(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.01〜0.02%を含有する組成を有することを特徴とする高強度鋼管。
(8)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記組成が不純物として、Ti、B、Nb、V、Cuのうちのいずれか1種以上を、質量%で、Ti:0.01%未満、B:0.0005%未満、Nb:0.005%未満、V:0.02%未満、Cu:0.08%未満に調整してなる組成であることを特徴とする高強度鋼管。
(11)(9)または(10)において、前記オープン管形状が、縦長の卵形形状としさらに曲げ戻して楕円形形状としたものであることを特徴とする高強度鋼管の製造方法。 (12)(9)ないし(11)のいずれかにおいて、前記ロール成形が、ケージロール方式のロール成形であることを特徴とする高強度鋼管の製造方法。
(14)(9)ないし(13)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、B:0.0005〜0.0020%、Nb:0.005〜0.03%、V:0.02〜0.20%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成を有することを特徴とする高強度鋼管の製造方法。
(16)(9)ないし(15)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.08〜0.25%を含有する組成を有することを特徴とする高強度鋼管の製造方法。
(17)(9)ないし(13)のいずれかにおいて、前記組成が不純物として、Ti、B、Nb、V、Cuのうちのいずれか1種以上を、質量%で、Ti:0.01%未満、B:0.0005%未満、Nb:0.005%未満、V:0.02%未満、Cu:0.08%未満に調整してなる組成であることを特徴とする高強度鋼管の製造方法。
まず、本発明鋼管の組成限定の理由について説明する。以下、とくに断らないかぎり、質量%は単に%で記す。
Cは、焼入れ性を増加させ、マルテンサイト相を生成しやすくする有効な元素であり、適正範囲のマルテンサイト分率に調整し、引張強さTS:590MPa以上を確保するため、0.05%以上の含有を必要とする。一方、0.25%を超えて含有される場合には、強度が増加しすぎて、伸びが低下し加工性が低下するとともに、水素起因の耐遅れ破壊性等の特性が低下する。このため、Cは0.05〜0.25%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.05〜0.20%である。
Siは、フェライト生成元素であり、本発明では0.5%以上積極的に含有させ、フェライト相の生成を促進し、優れた加工性の確保を図る。一方、2.0%を超える含有は、ペネトレーター等のシーム部欠陥が生成しやすくなり、シーム部の加工性が低下する。このため、Siは0.5〜2.0%に限定した。なお、加工性の観点から好ましくは1.0%以上である。
Mnは、焼入れ性を増加させ、マルテンサイト相を生成しやすくし、鋼の強度を増加させる元素であり、所望の強度を確保する観点から本発明では1.0%以上の含有を必要とする。一方、2.5%を超える含有は、伸び特性が低下する。このため、Mnは1.0〜2.5%の範囲に限定した。なお、更なる加工性と強度とをバランスよく確保するためには、Siとの相互作用の観点から、1.5%以上とすることが好ましい。
Pは、Sとともに、加工性、耐遅れ破壊性等を所望の範囲に維持するために、可能な限り低減することが望ましいが、0.020%までは許容できる。このため、Pは0.020%以下に限定した。なお、極端な低減は製鋼コストの高騰を招くため、経済的な生産という観点から0.001%以上とすることが好ましい。
Sは、Pとともに、加工性、耐遅れ破壊性等を所望の範囲に維持するために、可能な限り低減することが望ましいが、0.002%までは許容できる。このため、Sは0.002%以下に限定した。なお、極端な低減は製鋼コストの高騰を招くため、経済的な生産という観点から0.0005%以上とすることが好ましい。
Alは、脱酸剤として作用し、脱酸素のために溶湯中に添加され、スラグとして浮上し除去されるが、一部は溶湯中に固溶する。また、Alは、窒化物形成元素として作用し、窒素を固定する。このような脱酸剤として十分に機能させるためには、鋼中に、0.01%以上残存させることを必要とする。一方、0.08%を超えて含有すると、酸化物系介在物が増加し、加工時の割れ等の原因となり、加工性が低下する。このため、Alは0.005〜0.08%の範囲に限定した。
Nは、時効硬化を生じさせる元素であり、本発明では可能なかぎり低減することが望ましい。本発明では、窒化物形成元素であるAl等を所定の範囲に必須含有させるが、Al等の窒化物形成元素含有によって、時効硬化が問題ないレベルまで低下させるために、Nは0.004%以下に限定した。なお、製鋼技術の観点から、下限は0.0005%程度である。
B:0.0005〜0.0020%、Nb:0.005〜0.03%、V:0.02〜0.20%のうちから選ばれた1種または2種以上
B、Nb、Vはいずれも、優れた材質を確保するため、上記した元素の作用を補完する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
Nbは、結晶粒の微細化を介して、マルテンサイト分率を所定の範囲に調整する作用を補完する。また、Nbは炭化物、炭窒化物を形成し、析出強化により強度増加に寄与する。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが好ましいが、0.03%を超えて含有すると析出強化により強度が高くなりすぎて伸びが低下する場合がある。このため、含有する場合には、Nbは0.005〜0.03%の範囲に限定することが好ましい。
Tiは、窒素(N)と結合し、Nを固定して時効硬化の生起を抑制し、加工性の低下を防止する作用を補完する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、N含有量の最大値0.004%を全量固定できる0.02%を上限とした。
Cuは、耐食性と耐遅れ破壊性を向上する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには0.08%以上含有することが望ましい、一方、0.25%を超える含有は、熱間脆性を生じさせる。このため、含有する場合は0.08〜0.25%の範囲に限定することが好ましい。なお、Cuは、固溶するか、あるいは析出物として析出するが、析出する場合には、Cu−SとしてMnSの最外層を被覆するように析出する場合もある。
REM、Caはいずれも、介在物の形態制御を介して、加工性を向上させる元素であり、必要に応じて選択して含有できる。このような効果を得るためには合計で0.002%以上含有させることが望ましいが、合計で0.1%を超える含有は介在物量を増加させ、耐食性を低下させる。
なお、不純物として、Ti、B、Nb、V、Cuのうちのいずれか1種以上を、質量%で、Ti:0.01%未満、B:0.0005%未満、Nb:0.005%未満、V:0.02%未満、Cu:0.08%未満に調整することが好ましい。本発明範囲の比較的低い強度レベルでは、Ti、B、Nb、V、Cuは可能な限り低減しておくことが、強度を過度に増加させないこと、伸びを低下させたいことという観点から望ましい。
本発明鋼管では、上記した組成を有し、さらにシーム部の中心位置を基準に円周方向に±15°の範囲を除く、円周方向に15°〜345°の領域が、マルテンサイト相を体積率で20〜60%含む組織を有する。なお、マルテンサイト相以外の残部は、主としてフェライト相からなる。マルテンサイト相が20%未満では、所望の強度を確保することができない。一方、マルテンサイト相が60%を超えると、延性の低下が著しくなり、所望の加工性が確保できなくなる。このため、マルテンサイト相の含有量を20〜60%に限定した。なお、好ましくはTS780MPa級では35%以下、TS980MPa級では45%以下、TS1180MPa級では60%以下である。マルテンサイト相量の測定方法は、とくに限定されないが、ビレラ液を主体とし塩化第二鉄等を添加した腐食液で研磨面を腐食し、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡等を用いて、組織を撮像してマルテンサイト相の面積率を測定し、体積率に換算することが好ましいが、それ以外の方法、例えば飽和磁化の測定、X線回析法によっても何等問題はない。なお、この場合は体積率で求められる。
鋼板をロール成形を用いて造管する場合や、その後、管をサイザーや矯正機等で処理する際に、鋼管には加工歪が付加される。必要以上に加工歪を付加されると、原板である鋼板(鋼帯)状態で有していた優れた特性が劣化し、鋼管状態の特性が低下し、所望の加工性に優れた鋼管を確保できなくなる。そのため、本発明鋼管では、円周方向の残留応力を引張の残留応力で450MPa以下に限定した。残留応力が、引張の残留応力で450MPaを超えると、鋼管の加工性が劣化する。なお、好ましくは250MPa以下である。
また、本発明鋼管では、上記した領域(シーム部の中心位置を基準に円周方向に±15°の範囲を除く、円周方向に15°〜345°の領域)とそれ以外の領域(シーム部の中心位置を基準に円周方向に±15°の範囲)との硬さ差ΔHVが、ビッカース硬さで250ポイント以下とすることが好ましく、より好ましくは50ポイント以下である。
母材部に比べて硬さの変化が大きいシーム部近傍では、硬さの測定は、試験力を小さくした測定を心がける必要がある。例えば、母材部では、荷重(試験力):5〜10kgfでもよいが、シーム部近傍では荷重(試験力):300〜500gf程度で測定することが好ましい。なお、シーム部近傍での硬さ測定では、エッチング等でビード部の位置を正確に把握してから行うという注意が肝要となる。
上記した組成を有する帯板形状の鋼板を素材として、該素材をオープン管形状にロール成形するロール成形工程と、該オープン管形状の両端面を接合しシーム部を有する管とする接合工程とを順次施して、鋼管とする。
素材として使用する鋼板は、上記した組成を有し、さらに、マルテンサイト相を体積率で20〜60%含み、好ましくはマルテンサイト相以外の残部が、主としてフェライト相からなる組織を有する鋼板である。鋼板は、上記した組成と上記した組織を有するものであれば、熱延板、冷延板いずれでもよいが、冷延板としたほうが、加工性の向上を達成しやすい。なお、熱延板は、熱延ままでもよいが、熱延後、さらに酸洗処理を施したものとすることが好ましい。
熱延板を酸洗し、さらに冷間圧延を施し冷延板としたのち、該冷延板に、連続焼鈍炉にて、750〜870℃の範囲に加熱し、均熱する均熱処理を施したのち、自然冷却し、ついで600〜730℃の温度から冷却を開始し、100℃/s以上の冷却速度で300℃以下の冷却停止温度まで急冷する冷却処理を施し、ついで、150〜500℃の温度範囲で過時効処理を施すことが好ましい。
自然冷却し、冷却開始温度を調整して、600〜730℃の温度から冷却を開始し、100℃/s以上の冷却速度で300℃以下の冷却停止温度まで急冷する冷却処理を施す。急冷の冷却速度は100℃/s以上とすることが好ましい。この急冷で、Cが濃縮されたγ相がマルテンサイト相に変態する。冷却開始温度、冷却速度と冷却停止温度との組合せで、マルテンサイト相分率を適正範囲に調整できる。冷却速度が100℃/s未満、あるいは冷却停止温度が300℃超えでは、所望のマルテンサイト相分率を確保できなくなる。なお、この冷却処理は、水または水系冷媒浴に鋼板を浸漬する処理とすることが、所定の冷却速度を確保するために重要となる。ミスト冷却やロール接触等による冷却では、所定の冷却速度を確保することが難しい場合が多い。また、ミスト冷却やロール接触等による冷却では、冷却速度が遅いことが多く、マルテンサイト相とフェライト相との二相組織に調整することが難しく、必然的にベイナイト相等が増加し、伸びの低下が顕著となる場合がある。
ロール成形工程は、ケージロール方式のロール成形とすることが好ましい。ケージロール方式のロール成形方法によれば、使用する成形ロールの径が小さく、かつ成形ロール群の間隔が短いため、余分な塑性加工を付加する必要がなく、特性の劣化が少なく鋼板特性に近い、鋼管特性を保持することができる。これに対し、例えば、ブレークダウン方式のロール成形では、大きな成形ロールを数段使用し、ロール群間隔も長いため、スプリングバックによる戻りを加味して成形する必要があり、付加される加工歪も多くなり、鋼板特性からの劣化が大きくなる。
これら素材に、ケージロール方式のロール成形によりオープン管形状に成形するロール成形工程、該オープン管の両端部を電縫溶接により接合する接合工程、絞り加工により断面形状を調整するサイザー工程を順次施し、あるいはさらにシーム部に誘導加熱装置によるシームアニール処理を施すシームアニール工程を、さらに矯正機により曲げを矯正する矯正工程を経て、表2に示す寸法の鋼管とした。
ロール成形工程では、図2(b)に示すCBR方式のロール成形で、成形フラワーが図1に示す、縦長の卵形形状となるように成形し、曲げ戻して(押し潰す方向に歪を加えて)楕円形形状に成形した。なお、一部では比較として、ブレークダウン方式のロール成形を行った。
得られた各鋼管から、試験片を採取し、組織観察、引張試験、残留応力測定、硬さ測定、扁平試験をそれぞれ実施した。試験方法はつぎのとおりである。
(1)組織観察
得られた鋼管のシーム部中心位置を基準にして円周方向に180°離れた位置から、組織観察用試験片を採取した。板厚の1/2 T位置面を研磨し、ビレラ液を主体とし塩化第二鉄を添加した腐食液で研磨面を腐食し、走査型電子顕微鏡(1000〜2000倍)で組織を観察し、撮像して、マルテンサイト相の分率(面積%)を求めた。なお、一部の鋼管については、飽和磁化測定による方法で求めた。得られた値を母材部(シーム部の中心位置を基準に円周方向に基準に円周方向に±15°の範囲を除く、15°〜345°の領域)のマルテンサイト相分率とした。なお、この値は素材(鋼板)の状況を反映しているものとみなせる。
(2)引張試験
得られた鋼管から、シーム部中心位置を基準にして円周方向に±90°の位置に試験片の中心がくるように、かつ引張方向が管軸方向となるように、JIS 12号試験片(弧状試験片)、あるいはASTM弧状試験片(サブサイズ)を採取し、JIS Z 2201の規定、JIS Z 2241の規定あるいはASTM A370-97aの規定に準拠して引張試験を実施し、鋼管母材部の引張特性(YS、TS、El)を求めた。TSとElとの関係から加工性を評価した。すなわち、TS:590MPa級の場合はElが20%以上、TS:780MPa級ではElが15%以上、TS:980MPa級ではElが12%以上、TS:1270MPa級ではElが12%以上、となる場合を、それぞれ加工性:○(良好)とした。それ以外の場合を加工性:×とした。
(3)残留応力測定
得られた鋼管から試験片(鋼管:長さ250mm)を採取し、シーム部の中心位置に、歪ゲージを添付し、円周方向の残留応力を測定した。鋼管ままの状態での歪ゲージの値と、切断した後の歪ゲージの値との差から、残留応力を算出する、いわゆる、歪ゲージ法で残留応力を測定した。
(4)硬さ測定
得られた鋼管の、シーム部の中心位置を基準に円周方向に180°の位置の母材部から母材部硬さ測定用試験片を、またシーム部の中心位置を基準に円周方向に±15°の範囲内からシーム部を含むシーム部硬さ測定用試験片を、それぞれ採取した。
(5)扁平試験
一部の得られた鋼管から、試験片(外径Dmmφ×長さ50〜100mm)を採取し、図3に示す要領で押し治具2と受け治具3の間にセットし、押し治具2を変形高さh(mm)となるように下降させて、試験片(鋼管)を扁平化した。なお、図3に示すように、シーム部が押し治具2から90°離れた位置となるように、試験片(鋼管)をセットした。扁平化率は、h/Dで0.3となるように設定した。試験片長さは100mmを基準とし、試験機の能力に応じて50mm以上の適当な長さを選択した。50mm以上であれば試験結果への影響がないことを確認している。試験後、割れの有無を目視で調査し、割れなしの場合を、シーム部が健全であると判断し、合格とした。なお、試験片は、試験前にシーム部を含む±15mmの範囲を軽く研磨して、目視判定が容易となるように配慮した。また、試験後に、試験片(鋼管)での肉厚変化を、超音波肉厚計で全周に亘り調査し、肉厚の変化率が15%超えの場合を×、15%以下の場合を○として、局部変形性の有無を評価した。
なお、鋼管No.2(本発明例)は、ロール成形をブレークダウン(BD)方式としたため、残留応力がやや高くなり、強度も高く、他の本発明例に比べ伸びElがやや低下している。しかし、接合方法は本発明例(鋼管No.1、No.3)と同じであるため、特にシーム部と母材部との硬さの差ΔHVは他の本発明例とほぼ同じである。
鋼管No.10(比較例)は、マルテンサイト分率(残留γ、ベイナイトを含む)が所定範囲を低く外れており、強度とくに降伏強さYSが低下している。これは残留γが多量に存在しているためである。また、鋼管No.10(比較例)は大きな伸びEl値を示すが、これは残留γが、塑性変形を受けてマルテンサイト変態を起こすことによる。残留γの存在は、造管時の成形加工のばらつきの原因となり、円周方向に材質ばらつきを有する鋼管となる懸念がある。特に、管を局部的に変形する際に問題となる可能性が高い。
2 押し治具
3 受け治具
Claims (13)
- シーム部を有する鋼管であって、質量%で、
C:0.05〜0.25%、 Si:0.5〜2.0%、
Mn:1.0〜2.5%、 P:0.020%以下、
S:0.002%以下、 Al:0.005〜0.08%、
N:0.004%以下
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、前記シーム部の中心位置を基準に円周方向に15°〜345°の領域の組織がマルテンサイト相を面積率で20〜60%含む組織であることを特徴とする加工性に優れた高強度鋼管。 - 前記領域が、円周方向に450MPa以下の引張の残留応力を有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼管。
- 前記領域とそれ以外の領域との硬さ差ΔHVが、ビッカース硬さで250ポイント以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度鋼管。
- 前記領域とそれ以外の領域との硬さ差ΔHVが、ビッカース硬さで50ポイント以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度鋼管。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、
Ti:0.01〜0.02%、B:0.0005〜0.0020%、Nb:0.005〜0.03%、V:0.02〜0.20%、Cu:0.08〜0.25%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の高強度鋼管。 - 前記組成が不純物として、Ti、B、Nb、V、Cuのうちのいずれか1種以上を、質量%で、Ti:0.01%未満、B:0.0005%未満、Nb:0.005%未満、V:0.02%未満、Cu:0.08%未満に調整してなる組成であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の高強度鋼管。
- 帯板形状の鋼板を素材として、該素材をオープン管形状にロール成形するロール成形工程と、該オープン管形状の両端面を接合しシーム部を有する管とする接合工程とを有する鋼管の製造方法であって、
前記鋼板が、質量%で、
C:0.05〜0.25%、 Si:0.5〜2.0%、
Mn:1.0〜2.5%、 P:0.020%以下、
S:0.002%以下、 Al:0.005〜0.08%、
N:0.004%以下
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、マルテンサイト分率が体積率で20〜60%である組織とを有することを特徴とする高強度鋼管の製造方法。 - 前記鋼板が、冷延板焼鈍を施された冷延鋼板であることを特徴とする請求項7に記載の高強度鋼管の製造方法。
- 前記ロール成形が、ケージロール方式のロール成形であることを特徴とする請求項7または8に記載の高強度鋼管の製造方法。
- 前記オープン管形状が、縦長の卵形形状としさらに曲げ戻して楕円形形状としたものであることを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の高強度鋼管の製造方法。
- 前記接合工程に引続いて、シーム部をオーステナイト単相温度域、または二相温度域、またはフェライト温度域まで加熱するシームアニール処理を行うシームアニール工程を施すことを特徴とする請求項7ないし10のいずれかに記載の高強度鋼管の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、
Ti:0.01〜0.02%、B:0.0005〜0.0020%、Nb:0.005〜0.03%、V:0.02〜0.20%、Cu:0.08〜0.25%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成を有することを特徴とする請求項7ないし11のいずれかに記載の高強度鋼管の製造方法。 - 前記組成が不純物として、Ti、B、Nb、V、Cuのうちのいずれか1種以上を、質量%で、Ti:0.01%未満、B:0.0005%未満、Nb:0.005%未満、V:0.02%未満、Cu:0.08%未満に調整してなる組成であることを特徴とする請求項7ないし11のいずれかに記載の高強度鋼管の製造方法。
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