JPH11230254A

JPH11230254A - 免震装置

Info

Publication number: JPH11230254A
Application number: JP4099898A
Authority: JP
Inventors: Tetsushirou Inoue; 哲士朗井上
Original assignee: Taisei Corp
Current assignee: Taisei Corp
Priority date: 1998-02-09
Filing date: 1998-02-09
Publication date: 1999-08-27

Abstract

(57)【要約】【課題】水平変位を原位置に戻す復元力機構と地震入
力エネルギーを消費する減衰機構との双方を有し、かつ
製造が容易であるとともに、構造が簡易で経済性にも優
れる、すべり支承による免震装置を提供する。【解決手段】下部構造１に凹曲面を上方に向けて固定
された第１のレール２と、上部構造３に凹曲面を下方に
向けるとともに第１のレール２と交差する方向に固定さ
れた第２のレール４と、これら第１および第２のレール
２、４間に当該第１および第２のレールに沿って摺動自
在に介装されたスライド部材５とを備えてなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、各種の免震構造物
において上部構造と下部構造との間に介装される免震装
置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、各種の構造物において、当該構造
物の基礎部分や中間階層等に免震装置を介装することに
より、地震等によって地盤から構造物に伝播しようとす
る振動を減衰させて、構造物の躯体に生じる応力や変形
を少なくするような様々な免震構造が開発されている。
従来よりこのような免震構造物に使用される免震装置と
しては、大別して積層ゴム支承系、すべり支承系あるい
は転がり支承系のものが知られており、一種類の免震装
置によって、あるいは複数種の免震装置を組合わせるこ
とにより、上記免震構造物が構成されている。

【０００３】ここで、上記すべり支承系の免震装置は、
基礎等の下部構造上に取り付けられた平板状のすべり板
と、上部構造の下面に固定されるとともに、上記すべり
板上を摺動自在に設けられたテフロン等の素材からなる
すべり材とから概略構成されたものであり、地震時に下
部構造が水平変位した際に、上記すべり材がすべり板上
を摺動し、この摺動時に発生する摩擦力によって、上部
構造に作用しようとする水平地震力を減衰させて、上部
構造の健全性を確保するものである。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
すべり支承による免震装置にあっては、地震時発生時に
上部構造と下部構造との間に水平変位が発生した際に、
すべり材を原位置に戻すための復元力機構として、別途
ゴムブロックやコイルばね等の装置が必要になるという
問題点があった。また、すべり材が平板状のすべり板状
を摺動するために、すべり板として地震時に想定される
上下部構造間の水平変位の２倍以上の寸法のものを用い
る必要があり、当該すべり板が大型化するとともに、こ
れに対応して基礎等の下部構造におけるすべり材の取付
部分も大きな寸法に設定しなければならないという問題
点があった。

【０００５】一方、このようなすべり支承による他の免
震装置として、上記すべり材を凹状の球面に加工し、す
べり材が当該球面上を変位する球面すべり支承を用いた
免震装置が開発されている。この免震装置によれば、地
震時における上下部構造間の相対変位によって、すべり
材がすべり板の底面から球面上を移動すると、その位置
エネルギーによって上記すべり材が再び原点（すべり板
の底面）に戻ろうとする復元力が得られるため、別途復
元力機構を設ける必要がないという利点がある。

【０００６】しかしながら、上記球面すべり支承による
免震装置にあっても、球面状のすべり板として、ほぼ平
板状のものと同様の寸法のものが必要になるうえ、当該
すべり板やすべり材の摺動面を球面に加工するに際し
て、高寸法精度の鋳型を用いた精密鋳造や、さらにはボ
ールエンドミル等を用いた三次元ＮＣ工作機による高精
密切削加工などを行なう必要があるために、製作コスト
の高騰化を招いて経済的でないという問題点があった。

【０００７】本発明は、上記従来のすべり支承による免
震装置が有する課題を有効に解決すべくなされたもの
で、水平変位を原位置に戻す復元力機構と地震入力エネ
ルギーを消費する減衰機構との双方を有し、かつ製造が
容易であるとともに、構造が簡易で経済性にも優れる、
すべり支承による免震装置を提供することを目的とする
ものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】請求項１に記載の本発明
に係る免震装置は、下部構造に凹曲面を上方に向けて固
定された第１のレールと、上部構造に凹曲面を下方に向
けるとともに第１のレールと交差する方向に固定された
第２のレールと、これら第１および第２のレール間に当
該第１および第２のレールに沿って摺動自在に介装され
たスライド部材とを備えてなることを特徴とするもので
あり、さらに請求項２に記載の発明は、上記凹曲面が凹
円弧曲面であることを特徴とするものである。

【０００９】請求項１または２に記載の免震装置におい
ては、地震時に上部構造が下部構造に固定された第１の
レールの延在方向に相対変位すると、スライド部材が上
記第１のレールに沿って摺動する。他方、上部構造がこ
れに固定された第２のレールの延在方向に相対変位した
場合には、上記スライド部材は第２のレールに沿って摺
動する。そして、上部構造が、第１のレールおよび第２
のレールの延在方向と異なる方向に相対変位した場合に
は、スライド部材が第１および第２のレールに沿って摺
動してこれに追従する。そして、スライド部材が第１お
よび／または第２のレール上をすべる際に、その摩擦力
によって地震力が減衰される。

【００１０】この際に、上記第１および第２のレール
は、ともに凹曲面状に形成されているため、スライド部
材の移動に伴って上下部構造が相対的な振り子運動を行
ない、上部構造の自重によってスライド部材に原位置に
戻ろうとする復元力が作用する。したがって、上記免震
装置にあっては、水平変位を原位置に戻す復元力機構と
地震入力エネルギーを消費する減衰機構との双方を有す
るため、別途復元力機構やダンパー等を設ける必要がな
い。

【００１１】また、この免震装置に設定される固有周期
は、凹曲面における曲率半径によって決定され、建物重
量に依存しないため、第１および第２のレールの凹曲面
における曲率半径を適宜選択することにより、建物の特
性によって第１および第２のレールの各延在方向に、互
いに異なる固有周期を設定することも可能になる。しか
も、この免震装置によれば、第１および第２のレール
が、各々一方向にのみスライド部材の移動を許容する構
成であるため、各レールを帯状の小さなものにすること
ができ、よってこれを固定する構造物の取付部分も小さ
くすることが可能になる。

【００１２】さらに、上記免震装置においては、第１の
レールおよび第２のレールをそれぞれ二次元的に凹曲面
状に加工すればよいため、曲げロールや二次元の切削加
工といった簡便な加工によって容易に製作することがで
き、製造コストの低廉化を図ることが可能である。ちな
みに、このような凹曲面としては、各種の滑らかな曲面
が適用可能であるが、特に請求項２に記載の発明のよう
に、円弧曲面によって形成すれば、加工が一層容易であ
るとともに、上述した固有周期の設定が容易になる。

【００１３】

【発明の実施の形態】図１〜図３は、本発明に係る免震
装置の一実施形態を示すもので、この免震装置は、基礎
（下部構造）１に固定された第１のレール２と、上部構
造３に第１のレール２と直交する方向に固定された第２
のレール４と、これら第１および第２のレール２、４間
に摺動自在に介装されたスライド部材５とを備えたもの
である。ここで、第１のレール２は、一面が凹円弧曲面
状に形成された帯状の部材で、その凹円弧曲面を上方に
向けてボルト６を介して上記基礎１に固定されている。
そして、この第１のレール２の両側縁部には、上記凹円
弧曲面に沿って対向する側壁２ａ、２ａが形成されてい
る。他方、第２のレール４は、一面に同様の凹円弧曲面
が形成された帯状の部材で、その凹円弧曲面を下方に向
けてボルト７により上部構造３に固定されており、この
第２のレール４にも同様の側壁４ａ、４ａが一体に形成
されている。

【００１４】そして、これら第１および第２のレール
２、４の側壁２ａ、４ａ間に、スライド部材５が配設さ
れている。これにより、スライド部材５は、互いのレー
ル２、４の凹円弧曲面に沿って摺動自在に設けられてい
る。これら第１および第２のレール２、４の凹円弧曲面
およびスライド部材５の摺動面は、それぞれステンレス
材、クロムメッキ、テフロン、フッ素樹脂（ＰＴＦＥ）
材、ポリアセタール等の所望の摩擦減衰力が得られるよ
うな摩擦係数をもつ組合わせから選択されている。

【００１５】次に、図４〜図８に基づいて、上記構成か
らなる免震装置の作用について説明する。先ず、図４お
よび図５に示すように、地震時に上部構造３が図中矢印
で示す基礎１に固定された第１のレール２の延在方向に
相対変位すると、スライド部材５が第１のレール２に沿
って摺動する。他方、図６および図７に示すように、上
部構造３がこれに固定された第２のレール４の延在方向
に相対変位した場合には、スライド部材５が第２のレー
ル４に沿って摺動する。したがって、図８に示すよう
に、上部構造３が、図中矢印で示すように第１のレール
２および第２のレール４の延在方向と異なる方向に相対
変位した場合には、スライド部材５が第１および第２の
レール２、４に沿って摺動してこれに追従する。

【００１６】そして、第１および第２のレール２、４
は、ともにスライド部材５の摺動面が凹曲面状に形成さ
れているため、スライド部材５の移動に伴って上下部構
造１、３が相対的な振り子運動を行ない、この結果上部
構造３の自重によってスライド部材５に原位置である凹
曲面の底部に戻ろうとする復元力が作用する。

【００１７】このように、上記免震装置によれば、水平
変位を原位置に戻す復元力機構と地震入力エネルギーを
消費する減衰機構との双方を有するため、従来の平板状
のすべり板を用いたもののように、別途復元力機構やダ
ンパー等を設ける必要がない。しかも、第１および第２
のレール２、４は、それぞれ曲げロールや二次元の切削
加工といった簡便な加工によって容易に製作することが
できるために、従来の球面すべり支承を用いた免震装置
と比較して、その製造コストを大幅に低減化させること
ができる。さらに、上記免震装置に設定される固有周期
は、凹曲面における曲率半径によって決定され、建物重
量に依存しないため、第１および第２のレール２、４の
凹曲面における曲率半径を適宜選択することにより、建
物の特性によって第１および第２のレール２、４の各延
在方向に、互いに異なる固有周期を設定することもでき
る。

【００１８】加えて、上記免震装置にあっては、第１お
よび第２のレール２、４が、各々一方向にのみスライド
部材５の移動を許容する構成であるため、各レール２、
４を帯状のものにすることができ、よってこれを固定す
る上下部構造１、３の取付部分も小さくすることができ
る。なお、本発明に係る免震装置は、上述した実施の形
態の他、例えば耐振装置としてＴＭＤ（周期同調質量型
ダンパー）の支持部に用いることにより、下部構造物に
おけるＸ、Ｙ両方向の固有周期に同調させることも可能
である。

【００１９】

【発明の効果】以上説明したように、請求項１または２
に記載の免震装置によれば、地震時に上部構造が下部構
造に対して相対変位した際に、スライド部材が第１およ
び／または第２のレールに沿って摺動することによりこ
れに追従し、両者の摩擦力によって当該地震力を減衰さ
せることができるとともに、さらにスライド部材の移動
に伴って上下部構造が相対的な振り子運動を行ない、こ
の結果上部構造の自重によってスライド部材に原位置に
戻ろうとする復元力機構を有するため、別途復元力機構
やダンパー等を設ける必要がない。

【００２０】加えて、第１および第２のレールが、各々
一方向にのみスライド部材の移動を許容する構成である
ため、各レールを帯状の小さなものにすることができ、
よってこれを固定する構造物の取付部分も小さくするこ
とができるうえに、さらに第１のレールおよび第２のレ
ールをそれぞれ二次元的に凹曲面状に加工すればよいた
め、簡便な加工によって容易に製作することができ、製
造コストの低廉化を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の免震装置の一実施形態を示す平面図で
ある。

【図２】図１のＩＩ−ＩＩ線視断面図である。

【図３】図１のＩＩＩ−ＩＩＩ線視断面図である。

【図４】上部構造が第１のレールの延在方向に変位した
状態を示す平面図である。

【図５】図４の縦断面図である。

【図６】上部構造が第２のレールの延在方向に変位した
状態を示す平面図である。

【図７】図６の縦断面図である。

【図８】上部構造が第１および第２のレールの延在方向
と交差する方向に変位した状態を示す平面図である。

【符号の説明】

１基礎（下部構造）２第１のレール３上部構造４第２のレール２ａ、４ａ側壁５スライド部材

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】下部構造に凹曲面を上方に向けて固定さ
れた第１のレールと、上部構造に凹曲面を下方に向ける
とともに上記第１のレールと交差する方向に固定された
第２のレールと、これら第１および第２のレール間に当
該第１および第２のレールに沿って摺動自在に介装され
たスライド部材とを備えてなることを特徴とする免震装
置。
【請求項２】上記凹曲面は、凹円弧曲面であることを
特徴とする請求項１に記載の免震装置。