JPH11223815A - 液晶素子及びその製造方法、並びに配向膜又はその組成物 - Google Patents

液晶素子及びその製造方法、並びに配向膜又はその組成物

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JPH11223815A
JPH11223815A JP10025642A JP2564298A JPH11223815A JP H11223815 A JPH11223815 A JP H11223815A JP 10025642 A JP10025642 A JP 10025642A JP 2564298 A JP2564298 A JP 2564298A JP H11223815 A JPH11223815 A JP H11223815A
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fullerene skeleton
resin
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JP10025642A
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Kenichi Takahashi
賢一 高橋
Makoto Chisaki
誠 地崎
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 焼き付き並びにフリッカを抑えた高品位化な
液晶素子、及びその製造方法、並びに配向膜及びその組
成物を提供すること。 【解決手段】 電極12a、12b及び配向膜13a、
13bが設けられた一対の基体11a、11b間に液晶
14が配されている液晶素子において、配向膜13a、
13bに、Cn (但し、nは幾何学的に球状化合物を形
成し得る整数である。)で表されるフラーレン骨格から
なる化合物が配されていることを特徴とする、液晶素
子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電極及び配向膜が
設けられた一対の基体間に液晶が注入されている液晶素
子、及びその製造方法、並びに液晶を配向制御する配向
膜又はその組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、テレビジョンやコンピュータなど
と接続可能な各種ディスプレイにおいて、より軽量でか
つ低消費電力である画像装置(表示素子)が要求されて
おり、このような状況のもと、フラットディスプレイと
して、前述した要件を満足する液晶表示素子(LCD:
liquid crystal display)の研究、開発が盛んに行われ
ている。
【0003】現在使用されている一般的な液晶表示素子
としては、対向する2つの電極基板の表面でネマティッ
ク液晶分子の配列方向を90°にねじった構造のツイス
トネマティックモード(TN:twist nematic )を利用
した液晶素子、対向する2つの電極基板の表面でネマテ
ィック液晶分子の配列方向を180°〜300°にねじ
った構造のスーパーツイストネマティックモード(ST
N:super twist nematic )を利用した液晶素子などが
挙げられる。
【0004】上述した液晶表示素子は、軽量かつ低消費
電力を実現する優れたフラットパネルディスプレイであ
るものの、特に、長時間連続して駆動波形を印加する
と、焼き付きやフリッカが発生し、表示画像の品位が低
下する等の問題が生じることが指摘されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一般に、この焼き付き
並びにフリッカの発生は、液晶中に不純物として微量含
まれているイオン性化合物の挙動によるものであると言
われている。
【0006】このイオン性化合物の液晶中での挙動は、
以下のように考えられる。 1.温度上昇や電圧印加等によって、液晶中でイオン性
化合物の解離が促進されてイオン(荷電粒子)が生じ
る。 2.電圧印加によって生じた液晶中の電界に沿って、電
荷を有するイオンが移動する。 3.配向膜に達したイオンは、物理的ないし化学的に配
向膜に吸着する。 4.セルに印加される駆動波形が交流的なものであれ
ば、イオンの吸脱着等が繰り返し行われる。 5.解離したイオンの一部は再結合などによって、中性
の分子に戻る。
【0007】特に、上述したイオン性化合物、及び、イ
オン性化合物の解離によって生じるイオンの挙動に関し
て、対向する2つの電極基板について以下に示すような
非対称性が生じた場合、液晶と配向膜との界面にて、イ
オン性化合物やこれによって解離したイオンなどの挙動
にも非対称性が生じる。 (1)対向する2つの電極基板に関する構造上の非対称
性 例えば、TFT(thin film transistor)基板側とIT
O(indium tin oxide)基板側との非対称構造、反射型
セルなどにおける反射側基板と透過側の基板との非対称
構造など (2)対向する2枚の電極基板上の配向膜の作製上の諸
条件による非対称性 例えば、配向膜の膜厚、焼成条件、ラビング強度などに
よる非対称性 (3)印加波形の非対称性 一般に、液晶素子の駆動波形は矩形波等の交流波形を用
いるが、その駆動波形の非対称性
【0008】このような液晶素子に関する種々の非対称
性によって、特に液晶素子を連続駆動する場合、イオン
性化合物やイオン(カチオン、アニオン)の配向膜界面
における吸脱着平衡、並びに、液晶中でのイオン種の分
極状態が、対向する2つの電極基板間に非等価な状況を
作り出している。このような状況は、外部的にある極性
のバイアスV’を液晶セル間に印加したときの状況とほ
ぼ類似する。
【0009】即ち、液晶素子の駆動後、印加波形を切っ
たとしても、液晶セルにはバイアスV’が印加された状
態となり、ひいては、液晶分子は変位している状態を維
持することとなり、これが焼き付きと呼ばれる現象を引
き起こしている。
【0010】また、液晶セルに対称な矩形波形(振幅
V)を印加する場合、液晶内部にかかる有効電圧は、正
側でV+V’、負側で−V+V’となり、液晶セルに印
加される実効的な電圧が非対称になって、これによって
液晶分子がゆらつき、フリッカという形で観測されるこ
とになる。
【0011】つまり、焼き付き並びにフリッカという異
なる結果を見ているのだが、いずれも、液晶セル内部に
バイアスV’が印加された状態(セル内部に非設定電圧
を生じた状態)を反映していると言える。
【0012】
【発明に至る経過】上述したように、焼き付きやフリッ
カは、対向する2つの電極基板等の非対称性によること
が大きい。そこで、液晶素子の構造やこれに印加する駆
動波形に非対称性が生じないように、対向する2つの電
極基板を等価に作製すれば、或いは駆動波形を印加すれ
ば、焼き付きやフリッカを抑制できることになる。
【0013】しかしながら、製造工程上、対向する電極
基板をそれぞれ全く同じものとすることは困難を極め
る。特に、一方の基板にはTFT構造が付与されてお
り、他方では透明電極(例えばITOなど)だけという
ような場合であれば、その時点で全く違う構造を有する
ことになる。また、構造的には同じ電極基板を用いた場
合であっても、配向膜の塗布工程、焼成工程、ラビング
処理工程などを経ると、これに非対称性が生じる可能性
が大きくなることは容易に予想がつく。さらに、駆動波
形を厳密に対称にすることも困難である。
【0014】そこで、本発明者は、液晶素子の非対称性
を緩和させるために、液晶素子の構成材料に、不純物と
して液晶中に含まれるイオン等の非設定の挙動を抑制す
るクッション的役割(許容量)を保有させ、広い許容量
を呈させれば、液晶素子の連続駆動時等に発生する焼き
付きやフリッカを生じさせず、高品位な液晶素子が得ら
れると考えた。
【0015】特に、焼き付き並びにフリッカを低減させ
るという観点から見れば、不純物として含まれるイオン
等の配向膜界面での吸脱着などの相互作用が、広い許容
量を有することが望まれる。
【0016】そこで、配向膜における相互作用の許容量
を広くする手段としては、以下のような方法が考えられ
る。 (1)液晶中に含有される不純物としてのイオン性化合
物をなくす。 (2)配向膜にイオン性化合物によるイオンを吸着させ
ないようにする(吸着しても脱着を容易にする)。
【0017】しかしながら、(1)に関して、既に不純
物量はppmオーダー程度まで改善されているが、それ
でさえ、上述した焼き付きやフリッカ現象が生じてお
り、また、これ以上の不純物の除去は現実的には厳しい
と言わざるを得ない。
【0018】本発明は、上述した実情に鑑みてなされた
ものであり、その目的は、焼き付きやフリッカを抑制す
る高品位な液晶素子、及びその製造方法を提供すること
にある。さらに、本発明の他の目的は、前述した高品位
な液晶素子を実現するために用いる液晶の配向制御のた
めの配向膜又はその組成物を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、電極及
び配向膜が設けられた一対の基体間に液晶が配されてい
る液晶素子において、前記配向膜に、Cn (但し、nは
幾何学的に球状化合物を形成し得る整数である。)で表
されるフラーレン骨格からなる化合物が配されているこ
とを特徴とする、液晶素子(以下、本発明の液晶素子と
称する。)に係るものである。ここで上記の「配されて
いる」は、配向膜中に混合されている形態の他、配向膜
上に被着されている形態も含む概念である。
【0020】本発明の液晶素子によれば、電極及び配向
膜が設けられた一対の基体間に液晶が配されている液晶
素子において、前記配向膜に、Cn (但し、nは前述し
たものと同様である。)で表されるフラーレン骨格から
なる化合物が配されており、この化合物が、前記液晶中
に含まれるイオン性化合物の解離によって生じる荷電粒
子(以下、イオン又は不純物イオンと称する。)の配向
膜界面での相互作用を制御するので、特に、不純物イオ
ンが前記配向膜へ吸着しても、Cnの導電性の故に配向
膜へ吸着されたイオンの電荷を逃すことによって、上述
した非対称状態(非対称な吸脱着)を原因とするイオン
の分極による内部残留電界(残留電圧)の発生を抑制し
て、特に液晶素子の連続駆動時にも、焼き付きやフリッ
カ等を発生させず、高品位な液晶素子が得られる。
【0021】また、本発明の液晶素子は、従来公知の種
々の液晶素子に使用されていた配向膜を、全く別の材料
に転換するのではなく、前記フラーレン骨格からなる化
合物を、配向膜中或いは配向膜上に配することによっ
て、上述した新たな特性を付与させることが可能とな
る。これによって、配向膜を構成する材料(特に高分子
樹脂材料)を、それぞれの表示材料ごとに新たに開発す
る必要なく、本発明の液晶素子を作製するための製造工
程の変更を最小限にとどめることができる。
【0022】さらに、元来、配向膜の作用は、液晶分子
を一定方向に配向制御するために、その表面に傾斜を形
成してプレチルト角を設けること(界面規制又は配向制
御)にあるが、本発明の液晶素子によれば、配向膜本来
の働きである界面規制力を低下させることなく、配向膜
と不純物イオンとの相互作用を制御することができる。
また、液晶素子に要求されるしきい値電圧などの諸性能
も良好である。
【0023】また、本発明は、本発明の液晶素子を再現
性良く製造する方法として、電極及び配向膜が設けられ
た一対の基体間に液晶が配され、Cn (但し、nは幾何
学的に球状化合物を形成し得る整数である。)で表され
るフラーレン骨格を有する化合物が配されている液晶素
子を製造するに際し、前記フラーレン骨格を有する化合
物を前記基体上に塗布又は被着する、液晶素子の製造方
法(以下、本発明の製造方法と称する。)を提供するも
のである。ここで上記の「塗布又は被着する」とは、配
向膜材料を混合して塗布するか、或いは配向膜上に塗布
などで被着することを意味する。
【0024】さらに、本発明は、液晶を配向制御する配
向膜(配向制御膜)又はその組成物において、Cn (但
し、nは幾何学的に球状化合物を形成し得る整数であ
る。)で表されるフラーレン骨格を有する化合物を含有
することを特徴とする、配向膜又はその組成物(以下、
本発明の配向膜又はその組成物と称する。)を提供する
ものである。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明の液晶素子、本発明の製造
方法、及び本発明の配向膜又はその組成物(以下、これ
らを総称して本発明と称することがある。)において、
前記フラーレン骨格からなる化合物は、C60分子及び/
又はC70分子であることが望ましい。
【0026】但し、本発明において、前記フラーレン骨
格からなる化合物は、これらの分子に限定されるもので
はなく、例えば、C76分子、C78分子、C80分子、C84
分子などのいわゆる高次フラーレン分子を使用すること
もでき、また、フラーレンの重合体(2量体やそれ以上
の多量体)であってもよい。
【0027】これらのフラーレン骨格からなる化合物
は、液晶素子の配向膜に配されることによって、その導
電性のために液晶中の不純物イオンの電荷をにがす作用
を有していると考えられる。
【0028】なお、一般に、フラーレンは、高純度グラ
ファイトのアーク放電によって、まず、スス状の物質
(以下、フラーレンスーツと称する。)として得られる
が、このフラーレンスーツは、C60分子やC70分子等の
種々のフラーレン分子を含んでおり、また、このフラー
レンスーツは、適切な条件下では、フラーレン分子を約
10%又はそれ以上含むことがある。本発明において
は、このフラーレンスーツの状態で、後述する本発明の
製造方法に供してもよい。
【0029】また、一般に、フラーレン分子は、得られ
たフラーレンスーツから、トルエンや二硫化炭素等のπ
電子系の溶媒で抽出されるが、この抽出液を蒸発させた
段階で得られるフラーレンは粗製フラーレンと称される
ものであり、C60分子やC70分子の他、C76分子、C78
分子、C80分子、C84分子などの高次フラーレン分子を
含むものである。本発明においては、この粗製フラーレ
ンの状態で、後述する本発明の製造方法に供してもよ
い。
【0030】さらに、この粗製フラーレンは、例えばカ
ラムクロマトグラフィー等を用いて、単体のC60分子や
70分子として分離精製が可能である。
【0031】また、本発明において、前記配向膜は、そ
の主構成材料としての高分子樹脂と、前記フラーレン骨
格からなる化合物とからなる配向膜であることが望まし
い。但し、前記配向膜の主構成材料は前記高分子樹脂に
限定されるものではなく、無機物、界面活性剤、シラン
カップリング剤、クロム錯体などであってもよい。
【0032】但し、特に、配向膜の構成材料として高分
子樹脂を用いる場合、高分子樹脂と液晶中に不純物とし
て含まれるイオンとが相互作用し、このイオンが高分子
樹脂に吸着し易くなる。
【0033】従って、本発明の特徴的構成に基づいて、
前記フラーレン骨格からなる化合物を高分子樹脂からな
る配向膜に配することによって、特に、不純物としての
イオンが前記配向膜へ吸着するのを阻害すると同時に、
配向膜へ吸着されたイオンを安定化(特に中性化)し、
イオンの分極による内部残留電界の発生を抑制して、焼
き付きやフリッカ等を抑制した高品位な液晶素子を得る
ことができる。
【0034】前記高分子樹脂は、例えば、ポリイミド系
樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂からなる
群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であってよい。
【0035】また、高分子樹脂を用いた配向膜は、それ
自身が液晶分子を配向させる機能(界面規制力)を有し
ており、ほとんどの種類の液晶分子に良好な配向効果を
示し、他の配向方法に比べても、液晶分子の適合性が優
れており、さらに、基板表面の形状に依存することな
く、スピンコート法やロール塗布法、浸漬塗布法、スプ
レー塗布法などの手法に基づいて、均一な被膜を設けら
ることができるといった利点を有しており、最近では、
これらの樹脂を基体上に成膜し、これをラビング処理す
ることによって配向膜を形成する方法が主流である。
【0036】なお、前記高分子樹脂に対して、前記フラ
ーレン骨格からなる化合物は、0.1重量%以上、1
0.0重量%以下含有されていることが望ましい。
【0037】即ち、前記高分子樹脂と、前記フラーレン
骨格からなる化合物との比率は、使用する高分子樹脂
や、フラーレン骨格からなる化合物の種類などにより異
なるが、通常、高分子樹脂の重量に対するフラーレン骨
格からなる化合物の重量の比率で、0.1重量%以上、
10.0重量%以下とすることが好ましく、1重量%以
上、5重量%以下とすることがさらに望ましい。
【0038】この比率が低すぎると(即ち、0.1重量
%未満であると)、フラーレン骨格からなる化合物と不
純物イオンとの相互作用を十分に発揮できず、この不純
物イオンが配向膜に帯電した状態で吸着することにな
り、また、この比率が高すぎると(即ち、10.0重量
%を越えると)、配向膜の本来の機能である液晶分子を
一定方向に配向する機能(界面規制力)等が不十分にな
る傾向にある。
【0039】また、本発明においては、基板上に設けら
れた高分子樹脂等の前記配向膜が、布などで一方向に擦
って溝が形成される、いわゆるラビング処理されている
ことが望ましい。なお、基板表面上に特定の方向に整列
する被着物又は溝等を設けて、液晶分子の長軸方向を物
理的に規制する手段としては、一酸化ケイ素からなる配
向膜を斜方蒸着して形成する方法や、凹凸形状が表面に
形成された転写型を押し付けて膜表面に凹凸形状を転
写、形成する手法を用いることもできる。
【0040】また、本発明においては、前記フラーレン
骨格からなる化合物が、配向膜上に直接に被着されてい
てもよい。即ち、前述した高分子樹脂等からなる配向膜
用塗膜を形成した後、ラビング処理の前或いは後で、蒸
着等の手法により、配向膜用塗膜上にフラーレン骨格か
らなる化合物を被着させ、配向膜を形成することもでき
る。
【0041】また、本発明においては、上述したフラー
レン骨格からなる化合物が配された配向膜は、以下に示
す種々の方法により得ることができる。
【0042】例えば、配向膜を構成する高分子樹脂等の
材料を溶解した水溶液もしくは非水溶液に、フラーレン
骨格からなる化合物を均一に溶解させ、スピンコート法
等により、塗布厚が被塗布面で均一になるように塗布し
た後、加熱等により溶媒を除去して配向膜用塗膜を形成
し、さらにその後に、必要に応じて焼成処理、ラビング
処理等を行うことによって、前記基体上に、高分子樹脂
等の主構成材料と、フラーレン骨格からなる化合物とか
らなる配向膜を形成できる。
【0043】なお、この方法においては、用いる非水溶
液、高分子樹脂の種類、並びにフラーレンの濃度(相対
濃度)等によっては、高分子樹脂中にフラーレン骨格か
らなる化合物が溶解した状態のものが得られる場合や、
フラーレン骨格からなる化合物の一部又は全部が微結晶
化した状態のものが得られる。
【0044】また、これと同様な過程にて、フラーレン
骨格からなる化合物を、配向膜を構成する材料を溶解し
た溶液中に均一に溶解した溶液を使用するのではなく、
微結晶化したフラーレンを均一に分散した状態の溶液を
用いることもできる。
【0045】また、配向膜を構成する高分子樹脂等の材
料のみを溶解した溶液を用いて基体上に配向膜用の塗膜
を形成した後、フラーレン骨格からなる化合物を均一に
溶解、或いは均一に分散した溶液を公知の塗布等によっ
て前記塗膜上に塗布し、さらに、加熱等により溶媒を除
去することによって、前記配向膜用塗膜上に、フラーレ
ン骨格からなる化合物からなる薄膜を成膜して実質的に
2重構造の配向膜を形成し、この後、焼成処理、ラビン
グ処理を行ってもよい。
【0046】ここで、フラーレン骨格からなる化合物、
特にC60分子やC70分子を溶解させる溶媒としては、π
電子系を有する極性の低い溶媒を使用することが望まし
く、例えば、二硫化炭素、トルエン、ベンゼン、オルト
ジクロルベンゼン等の溶媒を使用できる。
【0047】また、前述した実質的に2重構造の配向膜
を形成する方法において、ラビング処理前に、前述した
実質的に2重構造の配向膜を形成するのではなく、配向
膜を構成する高分子樹脂等の材料のみを溶解した溶液を
用いて基体上に配向膜用の塗膜を形成し、これを焼成処
理、ラビング処理した後に、フラーレン骨格からなる化
合物を均一に溶解(或いは均一に分散)した溶液を塗布
することによって、実質的に2重構造の配向膜を形成す
ることもできる。
【0048】また、実質的に2重構造の配向膜を形成す
るに際し、配向膜を構成する高分子樹脂等の材料のみを
溶解した溶液を用いて基体上に配向膜用の塗膜を形成し
た後、蒸着法などの乾式な被着法に基づいて、フラーレ
ン骨格からなる化合物からなる薄膜を成膜して、2重構
造の配向膜を形成することもできる。
【0049】さらに、高分子樹脂等を配向膜の構成材料
としないような、例えば、配向制御層としてSiOを斜
方蒸着によって基板上に形成したものについても、上述
した塗布法や被着法を適用することによって、フラーレ
ン骨格からなる化合物からなる薄膜を有する配向膜を形
成することが可能である。特に、SiOの斜方蒸着膜が
本来有している配向規制力を保持できる程度に、その表
面を本発明に基づく配向膜又はその組成物で覆ってやれ
ば、高い液晶配向力と高品位な特性とを両立できる。
【0050】また、本発明の製造方法においては、必要
に応じて、配向膜のラビング処理後等に、純水、水溶
液、非水溶媒、非水溶液等を用いて、その表面を洗浄処
理することが望ましい。
【0051】上述した手法に基づいて透明電極を有する
基体上に配向膜が形成された後は、種々の構成の液晶素
子に適するように、前記基体を対向配置し、セル組み工
程、液晶注入工程等を経て、本発明の特徴的構成を有す
る液晶素子が作製される。
【0052】次に、本発明に基づく液晶素子の構成例を
図1を参照に説明する。
【0053】図1に示す液晶素子は、例えば、単純マト
リックス方式に構成され、光学的に透明なガラス基板1
1a、11b上に、透明電極12a、12bが、遮光部
16と透明電極とがストライプを形成するように、エッ
チングによってパターニングされ、互いにマトリックス
状に交差したデータ電極(カラム電極)12aと走査電
極(ロウ電極)12bとして形成されており、透明電極
12a、12bを有する基板11a、11bは、スペー
サ15を介して所定の間隙をおいて対向配置されてい
る。
【0054】さらに、各透明電極12a、12b上には
それぞれ、配向膜13a、13bが形成されており、ま
た、前記間隙間には、液晶14として例えば、TN(ツ
イストネマチック)液晶が配されている。
【0055】なお、配向膜13a及び13bは、本発明
に基づいて、不純物イオンと相互作用するフラーレン骨
格からなる化合物が配されている。但し、上述したよう
に、前記フラーレン骨格からなる化合物は、配向膜を構
成する材料中に含まれていてもよいし、若しくは、実質
的に2重構造の配向膜を構成していてよい。
【0056】また、本発明において、前記液晶は、ツイ
ストネマチック液晶に限定されるものではなく、例え
ば、カイラルスメクチックC液晶と非カイラルスメクチ
ックC液晶とからなる強誘電性液晶(FLC:ferroele
ctric liquid crystal)、その他の公知のピリミジン
系、ビフェニル系、フェニルベンゾエート系等のカイラ
ススメクチックC液晶(強誘電性液晶)や、公知のビフ
ェニル系、ターフェニル系、3環シクロヘキシル系、シ
クロヘキシルフェニル系、ビフェニルシクロヘキサン
系、シクロヘキシルエタン系、エステル系、ピリミジン
系、ピリダジン系、エタン系、ジオキサン系等の非カイ
ラルスメクチック液晶(強誘電性液晶)などを1種若し
くは複数種用いてもよい。また、前記液晶は反強誘電性
液晶であってもよい。もちろん、前記液晶は、上述した
液晶材料以外の公知のネマチック液晶、コレステリック
液晶、スメクチック液晶などを用いてよい。
【0057】また、上述の透明電極としては、ITO透
明電極以外にも、酸化スズ、酸化インジウム等の透明電
極を使用でき、また、透明基板、スペーサ、シール材等
の液晶素子の構成材料も公知の材料を使用できる。
【0058】さらに、上述した液晶素子は、液晶ディス
プレイ(液晶表示素子)、光シャッタ、光スイッチ、光
ブラインド等の光学装置に適用でき、さらに、電気光学
素子等と組み合わせて、液晶プリズム、液晶レンズ、光
路切替えスイッチ、光変調器、位相回折格子、A/D変
換器、光ロジック回路等にも使用できる。
【0059】また、本発明においては、対向する一対の
基板に設けられた一対の配向膜(例えば、図1における
配向膜11a及び11b)を本発明の特徴的構成に基づ
く配向膜とすることが望ましいが、一方の配向膜のみ
(例えば、図1における配向膜11aのみ)を本発明の
特徴的構成に基づく配向膜としてもよい。
【0060】また、本発明は、例えば図2(A)及び
(B)に示すように、アクティブ方式の光透過型の強誘
電性液晶光変調型表示素子にも適用することが可能であ
る。
【0061】この構造においては、まず、透明ガラス基
板1a上には、コモン電極としての透明電極(例えばI
TO)1bが全面にべた付けで形成されている。また、
基板1aに対向する他方の透明ガラス基板1bは、透明
電極(例えばITO)9からなる駆動電極が設けてあ
り、この電極がTFT(薄膜トランジスタ)からなる制
御ゲート素子8によって画素毎に駆動し、制御回路7に
よる信号電圧のオン、オフによって、入射光5を透過光
6として透過したり、或いは遮断するように構成されて
いる。
【0062】そして、各透明電極1b及び9上にはそれ
ぞれ、本発明に基づく配向膜として、高分子膜中に前記
フラーレン骨格からなる化合物が混合されるか、或い
は、SiOの斜方蒸着膜1c及び2上にフラーレン骨格
からなる化合物が形成されてなる配向膜を有しており、
また、基板1aと基板1dとは、スペーサ3を介して所
定の間隙をおいて対向配置されていて、この間隙間に、
強誘電性液晶4が配されている。
【0063】一般に、このように一方の基板構造と他方
の基板構造とがそれぞれ異なる(即ち、非対称構造の)
液晶素子は、その非対称性(特に、液晶配向膜形状の非
対称性)から、液晶素子の駆動時には、不純物として液
晶中に含まれるイオンが特定の配向膜界面にかたよる傾
向があり、これが焼き付きやフリッカの原因となると考
えられる。
【0064】そこで、このような非対称構造の液晶素子
に対して、本発明を適用すれば、液晶素子内に非設定の
電界(特に、内部残留電界)を生じさせる不純物イオン
の配向膜界面での相互作用を制御して、焼き付きやフリ
ッカを抑制し、高品位な液晶素子を得ることができる。
【0065】即ち、本発明は、非対称構造の液晶素子と
して、図示省略するが、反射型の液晶素子(一方の基板
に反射膜が配されている構造を有するもの)や、一方の
基板にVSLI(very large scale integrated circui
t )回路や、MOS型制御ゲート回路などが設けられた
透過型の液晶素子等に適用することが特に望ましく、焼
き付きやフリッカなどを十分に抑制できる。
【0066】
【実施例】以下、本発明を具体的な実施例について説明
するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではな
い。
【0067】実施例1〜5、および比較例1 <液晶表示素子の作製>溶媒〔γ−ブチロラクトン(7
0〜90重量%)と、N−メチルピロリドン(5〜20
重量%)と、キシレン(10〜25重量%)とからなる
混合溶媒〕中に、高分子樹脂として可溶性ポリイミドの
前駆体であるポリアミック酸(日産化学社製SE749
2)と、C60分子とを均一に溶解した。なお、C60分子
の濃度は、高分子樹脂の重量に対して0.1重量%(実
施例1)、0.5重量%(実施例2)、1.0重量%
(実施例3)、5.0重量%(実施例4)、10.0重
量%(実施例5)とした。
【0068】次いで、前記各種C60濃度の溶液を、IT
Oからなる透明電極が設けられたガラス基板上にスピン
コート法によって均質な膜厚になるように成膜し、液晶
表示素子〔テストセル(ダミーセル)〕を作製した。
【0069】次いで、これを大気雰囲気下、250℃に
て1時間焼成を行った。室温まで冷却後、コットン系バ
フ材を用いてラビング処理を行った。なお、この際の配
向膜の厚みは、約300〜1000Å程度であった。ま
た、ラビングの抑え込み量(ラビング量)は0.5mm
とした。
【0070】次いで、対向する電極基板を同様な条件で
作製し、ラビング方向を90°ねじった状態で、セル間
隔6.5±0.2μ程度のセルを作製し、このセルにツ
イストネマチック(TN)系液晶(メルクジャパン社製
MJ955708)を注液した。液晶分子の注入後、注
液口を紫外線硬化樹脂を用いて封止し、液晶表示素子を
作製した。
【0071】<配向膜界面におけるイオンの分極状況の
測定>得られた実施例1〜5の液晶表示素子について、
配向膜界面におけるイオン性化合物の分極状況(内部残
留電界又は残留電圧)を測定した。測定は残留DC法、
フリッカ消去法に基づいて行った。
【0072】・残留DC法 所定の温度で周波数30Hz、しきい値電圧以上の振幅
を有するオフセット電圧0Vの矩形波を15分間、液晶
セル間に印加する。その直後100ms間、DC=0V
を印加し、回路上のセル電極間短絡状態にする。その
後、理論上、開回路にして、そのセル電極間電圧の推移
をモニターする。この時間−電圧曲線において、t=0
における電圧の値を外掃したものをパラメータとする。
この値の絶対値が大きいほど、波形の印加によって配向
膜界面における不純物イオンの挙動に基づく内部電界が
生じていることを示す。
【0073】・フリッカ消去法 所定の温度で周波数30Hz、透過率50%となる振幅
の矩形波を印加したときの電気光学特性を偏光顕微鏡並
びに光電子増倍管、オシロスコープ等を用いて、フリッ
カが生じているのを確認し、それを消去するのに必要な
オフセット電圧を印加する。このオフセット電圧の値を
パラメータとする。この値の絶対値が大きいほど、波形
の印加によって配向膜界面における不純物イオンの挙動
に基づく内部電界が生じていることを示す。
【0074】なお、残留DC法やフリッカ消去法によっ
て測定された内部残留電界(残留電圧)が少ないこと
は、前述したように、液晶素子の連続駆動時の焼き付き
やフリッカなどが少ないことを示す。
【0075】上述した実施例1〜5の液晶表示素子を用
い、残留DC法、フリッカ消去法に基づいて内部残留電
界を測定した結果を、下記の表1及び図3に示す。な
お、対向する一対の基板、及びこの基板間に設けられた
配向膜は、それぞれ等価な条件で成膜、ラビングしたも
のである。
【0076】また、比較として、C60分子を含まない以
外は、実施例1等と同様にして、液晶素子(比較例1)
を作製し、これについての各測定も行った。
【0077】 *但し、「フリッカ消去法」における「−」は、フリッカがほとんど見られなか ったことを意味する。
【0078】表1及び図3から、0.1重量%以上、1
0.0重量%以下(好ましくは1以上、5重量%以下)
のC60分子を前記高分子樹脂に含有させることによっ
て、内部残留電界は顕著に減少する傾向があり、液晶表
示素子の連続駆動時にも、焼き付きやフリッカの発生が
抑えられた高品位な液晶表示素子となっていることが分
かる。
【0079】なお、このときの液晶表示特性であるしき
い値電圧、並びにプレチルト角に関しては、C60分子を
含有させなていない状態のもの(比較例1)とほぼ同程
度であり、上述した濃度範囲では、表示特性には実質的
な影響を及ぼさないことが確認された。
【0080】特に、図3からC60分子の高分子樹脂に対
する酸合量(添加量)が0.1重量%未満であると、上
述したC60分子による作用が不十分となる傾向にあるこ
とが分かる。また、その配合量が10重量%を越える
と、液晶分子の配向に乱れが生じ、更に、下記表Aに示
すように、電圧保持率が低下する傾向にあった。また、
特に高温で電圧を印加すると、電流が流れ易くなる傾向
にある(つまり、分解が起きている可能性がある)こと
が分かった。
【0081】ここで、C60分子の高分子樹脂に対する添
加量を0重量%、1.0重量%、5.0重量%、10.
0重量%及び15.0重量%としたものについて、その
電圧保持率(%)の測定結果を下記の表Aに示す。
【0082】
【0083】なお、前記電圧保持率の測定は、30Hz
矩形波信号の半周期ごとに幅64μsのゲートを開けて
電圧がセルにかかるようにして、それ以外の時間域で
は、回路を開回路状態にし、矩形波信号の振幅V0 に対
して次のゲートが開くまでのセルの電圧保持量を測定し
たものである。 電圧保持率=V’/V0 ×100(%) (但し、V’は、前記矩形波の半周期における終端部の
振幅を示し、V0 は、前記矩形波の半周期における初期
の振幅を示すものである。)
【0084】実施例6、7、および比較例2、3 次に、液晶表示素子の作製上のバラつきを想定して、対
向する2つの電極基板の焼成温度、ラビング強度を非対
称性にした組み合わせたもの(電極基板Aと電極基板B
とを組み合わせたセル)を作製し、その効果を確認し
た。なお、この際に用いた配向膜は、前記高分子樹脂に
60分子を1.0重量%含有させたものである。また、
対向させる電極基板の焼成温度並びにラビング強度を非
等価にした以外は、実施例1と同様に、液晶表示素子を
作製した。
【0085】これらの液晶表示素子について、実施例1
と同様にして、残留DC法、フリッカ消去法に基づいて
内部残留電界を測定した。その測定結果を、下記の表2
及び図4に示す。
【0086】また、比較として、C60分子を含有しない
以外は実施例6と同様の条件で作製した液晶表示素子を
比較例2とし、同様に、C60分子を含有しない以外は実
施例7と同様の条件で作製した液晶表示素子を比較例3
とした。
【0087】 *但し、「フリッカ消去法」における「−」は、フリッカがほとんど見られなか ったことを意味する。
【0088】表2及び図4から、対向する電極基板を非
等価な条件で作製したセルにおいて、特に、配向膜にC
60分子を含有した実施例6及び7の液晶表示素子は、比
較例2及び3の液晶表示素子に比べて残留電界が顕著に
減少していることがわかり、C60分子を配向膜に含有さ
せることによって、作製上の非等価性を緩和し、高品位
な液晶表示素子となることが分かる。
【0089】実施例8、比較例4 液晶表示素子の構造上の非対称性を想定して、一方のガ
ラス基板に設けられているITO透明電極上に、誘電体
層としてSiO2 層をスパッタリング法に基づいて層厚
10μmに形成し、その上に、前記高分子樹脂にC60
子を1.0重量%含有した配向膜を成膜した。なお、配
向膜の焼成温度並びにラビング強度は、実施例3と同等
に作製した。
【0090】また、他方の電極基板は、ITO透明電極
上に直接に、前記高分子樹脂にC60分子を1.0重量%
含有する配向膜用塗膜を成膜し、実施例3と同様にして
作製した。
【0091】また、比較として、C60分子を含有しない
以外は、電極基板構造、並びに焼成温度、ラビング強度
を実施例8と同様にして、液晶表示素子を作製した。こ
れを比較例4とする。
【0092】これらの液晶表示素子について、実施例1
と同様に、残留DC法、フリッカ消去法に基づいて内部
残留電界を測定した結果を、下記の表3及び図5に示
す。
【0093】 *但し、「フリッカ消去法」における「−」は、フリッ
カがほとんど見られなかったことを意味する。
【0094】表3及び図5から、対向する電極基板が非
等価なセル構造の液晶表示素子である場合、実施例8の
液晶表示素子は、配向膜中に所定濃度のC60分子を含有
しているので、比較例4の液晶表示素子に比べて、残留
電界が顕著に減少していることがわかった。即ち、C60
分子を配向膜に含有させることによって、構造上の非等
価性を緩和し、高品位な液晶表示素子となることが分か
る。
【0095】なお、このように、液晶セルに構造上の非
対称性があるものとしては、例えば、ITO−アルミニ
ウム金属反射膜、ITO−高誘電体反射膜などを有する
反射型の液晶表示素子が構造非対称性を有する典型例と
して挙げられ、また、このような反射膜を有する構造非
対称な液晶表示素子であっても、本実施例と同様に優れ
た効果を示す。
【0096】実施例9 前記高分子樹脂に含有するフラーレンとして、C60分子
とC70分子との混合物(C60の存在比が約90%のも
の)を用いた以外は、実施例8と同様にして、配向膜組
成物、並びに非対称構造の液晶表示素子を作製した。こ
の液晶表示素子について、実施例1と同様に、残留DC
法、フリッカ消去法に基づいて内部残留電界を測定した
結果を、下記の表4及び図5に示す。
【0097】 *但し、「フリッカ消去法」における「−」は、フリッ
カがほとんど見られなかったことを意味する。
【0098】この結果から、実施例8等のように、C60
分子とC70分子との混合物を用いた場合も、配向膜添加
物としてC60単体のみを使用した場合とほぼ同程度の効
果を有しており、残留電界を抑制して焼き付きやフリッ
カの少ない高品位な液晶表示素子となることがわかる。
【0099】実施例10 溶媒(γ−ブチロラクトン(70〜90重量%)とN−
メチルピロリドン(10〜30重量%)とからなる混合
溶媒)中に、前記高分子樹脂と微結晶状態のC60分子
(1.0重量%)とを分散させた以外は、実施例8と同
様に、非対称構造の液晶表示素子を作製した。この液晶
表示素子について、実施例1と同様に、残留DC法、フ
リッカ消去法に基づいて内部残留電界を測定した結果
を、下記の表5及び図5に示す。
【0100】 *但し、「フリッカ消去法」における「−」は、フリッ
カがほとんど見られなかったことを意味する。
【0101】この結果から、実施例8のように、C60
子単体を高分子樹脂中に均一に溶解した状態で配向膜を
成膜した場合と同様に、微結晶のC60分子を分散させた
溶液を用いて配向膜を形成した場合でも、残留電界を抑
制して焼き付きやフリッカの少ない高品位な液晶表示素
子となることがわかる。
【0102】
【発明の作用効果】本発明の液晶素子によれば、電極及
び配向膜が設けられた一対の基体間に液晶が配されてい
る液晶素子において、前記配向膜に、前記フラーレン骨
格からなる化合物が配されており、この化合物が、不純
物として前記液晶中に含まれるイオン性化合物の解離に
よって生じる荷電粒子の配向膜界面での相互作用を制御
するので、特に、不純物イオンが前記配向膜へ吸着して
も、前記フラーレン骨格からなる化合物の導電性の故に
配向膜へ吸着されたイオンの電荷を逃すことによって、
非対称性を原因とするイオンの分極による内部残留電界
の発生を抑制して、特に液晶素子の連続駆動時にも、焼
き付きやフリッカ等を発生させず、高品位な液晶素子が
得られる。
【0103】また、本発明の製造方法によれば、本発明
の液晶素子を再現性良く製造できると共に、連続駆動時
にも、焼き付きやフリッカ等を発生させず、高品位な液
晶素子を製造できる。
【0104】さらに、本発明の配向膜及びその組成物に
よれば、前記液晶中に含有されている荷電粒子に対して
相互作用する前記フラーレン骨格からなる化合物を含有
しているので、これを液晶素子の配向膜に適用する場
合、液晶中の不純物イオンと相互作用するために、対向
する配向膜界面でのイオン吸脱着作用を制御すると同時
に、そのイオンの分極の非対称性を改善でき、その際、
液晶分子と配向膜との相互作用に大きな影響を与えるこ
となく、配向規制力を維持できる、従って、液晶素子の
連続駆動時における焼き付き並びにフリッカと呼ばれる
現象が生じない液晶素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶素子の一構造例を示す概略断面図
である。
【図2】同、液晶素子を適用した強誘電性液晶光変調型
表示素子(TFT透過型)の一部破断斜視図(A)及び
他の例の一部破断斜視図(B)である。
【図3】フラーレン骨格からなる化合物の種類及び添加
量による残留電圧の変化を示すグラフである。
【図4】液晶表示素子の作製上のバラつきによる非対称
性の影響を示すグラフである。
【図5】同、基板構造の非対称性及びフラーレン分子の
種類を変化させた時のの影響を示すグラフである。
【符号の説明】
1a、1d…ガラス基板、1b、9…ITO透明電極、
1c、2…SiO配向膜、3…スペーサ、4…強誘電性
液晶、5…入射光、6…透過光、7…制御回路、8…制
御ゲート電極(TFT型)、11a、11b…基板、1
2a、12b…電極、13a、13b…配向膜、14…
液晶、15…スペーサ、16…遮光部

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電極及び配向膜が設けられた一対の基体
    間に液晶が配されている液晶素子において、 前記配向膜に、Cn (但し、nは幾何学的に球状化合物
    を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン骨格
    からなる化合物が配されていることを特徴とする、液晶
    素子。
  2. 【請求項2】 前記フラーレン骨格からなる化合物がC
    60分子及び/又はC70分子である、請求項1に記載した
    液晶素子。
  3. 【請求項3】 前記配向膜が、高分子樹脂と前記フラー
    レン骨格からなる化合物とからなる、請求項1に記載し
    た液晶素子。
  4. 【請求項4】 前記高分子樹脂に対して、前記フラーレ
    ン骨格からなる化合物が0.1重量%以上、10重量%
    以下含有されている、請求項3に記載した液晶素子。
  5. 【請求項5】 前記高分子樹脂が、ポリイミド系樹脂、
    ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群よ
    り選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項3に記
    載した液晶素子。
  6. 【請求項6】 前記配向膜がラビング処理されている、
    請求項1に記載した液晶素子。
  7. 【請求項7】 前記フラーレン骨格からなる化合物が配
    向膜上に被着されている、請求項1に記載した液晶素
    子。
  8. 【請求項8】 電極及び配向膜が設けられた一対の基体
    間に液晶が配され、Cn (但し、nは幾何学的に球状化
    合物を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン
    骨格を有する化合物が配されている液晶素子を製造する
    に際し、 前記フラーレン骨格を有する化合物を前記基体上に塗布
    又は被着する、液晶素子の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記配向膜の構成材料と前記フラーレン
    骨格を有する化合物とを溶媒中に溶解及び/又は分散さ
    せ、得られた配向膜用溶液を成膜する工程を経て前記配
    向膜を形成する、請求項8に記載した液晶素子の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 前記成膜後にラビング処理を施す、請
    求項9に記載した液晶素子の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記フラーレン骨格を有する化合物を
    配向膜上に直接に成膜する、請求項8に記載した液晶素
    子の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記フラーレン骨格を有する化合物と
    して、C60分子及び/又はC70分子を用いる、請求項8
    に記載した液晶素子の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記配向膜を、高分子樹脂と前記フラ
    ーレン骨格を有する化合物とからなる配向膜とする、請
    求項8に記載した液晶素子の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記高分子樹脂に対して、前記フラー
    レン骨格を有する化合物を、0.1重量%以上、10重
    量%以下含有させる、請求項13に記載した液晶素子の
    製造方法。
  15. 【請求項15】 前記高分子樹脂として、ポリイミド系
    樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂からな
    る群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いる、請求
    項13に記載した液晶素子。
  16. 【請求項16】 液晶を配向制御する配向膜又はその組
    成物において、Cn(但し、nは幾何学的に球状化合物
    を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン骨格
    を有する化合物を含有することを特徴とする、配向膜又
    はその組成物。
  17. 【請求項17】 前記フラーレン骨格を有する化合物が
    60分子及び/又はC70分子である、請求項16に記載
    した配向膜又はその組成物。
  18. 【請求項18】 高分子樹脂と前記フラーレン骨格を有
    する化合物とからなる、請求項16に記載した配向膜又
    はその組成物。
  19. 【請求項19】 前記高分子樹脂に対して、前記フラー
    レン骨格を有する化合物が0.1重量%以上、10重量
    %以下含有されている、請求項18に記載した配向膜又
    はその組成物。
  20. 【請求項20】 前記高分子樹脂が、ポリイミド系樹
    脂、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる
    群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項1
    8に記載した配向膜又はその組成物。
  21. 【請求項21】 前記高分子樹脂と前記フラーレン骨格
    を有する化合物とからなる配向膜がラビング処理されて
    いる、請求項18に記載した配向膜又はその組成物。
  22. 【請求項22】 前記フラーレン骨格を有する化合物が
    配向膜上に被着されている、請求項16に記載した配向
    膜又はその組成物。
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