JPH11223225A - シンクロナイザリングの製造方法 - Google Patents

シンクロナイザリングの製造方法

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JPH11223225A
JPH11223225A JP10154730A JP15473098A JPH11223225A JP H11223225 A JPH11223225 A JP H11223225A JP 10154730 A JP10154730 A JP 10154730A JP 15473098 A JP15473098 A JP 15473098A JP H11223225 A JPH11223225 A JP H11223225A
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JP
Japan
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weight
synchronizer ring
ring
quenching
hardness
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JP10154730A
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English (en)
Inventor
Kiyoshi Hirakawa
清 平川
Masao Takeda
昌夫 竹田
Yoshitaka Hayashi
善貴 林
Makoto Maebotoke
誠 前佛
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NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
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Publication date
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16DCOUPLINGS FOR TRANSMITTING ROTATION; CLUTCHES; BRAKES
    • F16D23/00Details of mechanically-actuated clutches not specific for one distinct type
    • F16D23/02Arrangements for synchronisation, also for power-operated clutches
    • F16D23/025Synchro rings

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  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Mechanical Operated Clutches (AREA)
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  • Heat Treatment Of Articles (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 シンクロナイザリングの製造コストの低減を
図る。 【解決手段】 所定の組成を有する高炭素帯鋼にプレス
加工並びに機械加工を施して所望の形状にした後、表面
硬化の為の熱処理を施す。この熱処理は、単なる焼き入
れ・焼き戻しとする。浸炭焼き入れに比べてコストが低
く、処理に伴う変形も少ない為、加工コストの低減を図
れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明に係るシンクロナイ
ザリングの製造方法は、自動車、トラクタ、フォークリ
フト用手動変速機、或はパワーテイクアウト機構のシン
クロ機構に組み込むシンクロナイザリングの製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】手動変速機にはシンクロ機構を組み込ん
で、変速操作時にドライブシャフトと変速ギヤとを同期
して回転させる様にしている。この様なシンクロ機構に
はシンクロナイザリングを組み込んでいる。図2は、こ
の様なシンクロナイザリング1を組み込んだシンクロ機
構の1例として、特開平3−297527号公報に記載
された、ダブルコーン型のものを示している。このシン
クロ機構は、ドライブシャフト2と共に回転するシンク
ロハブ3の外周にインサートスプリング4を装着し、こ
のインサートスプリング4に、シフトレバーの操作に基
づいて軸方向(第2図の左右方向)に変位するカップリ
ングスリーブ5を係合させている。又、このカップリン
グスリーブ5と、変速ギヤ6と同期して回転するクラッ
チギヤ7との間に、アウターボークリング8と、上記シ
ンクロナイザリング1と、インナーボークリング9とを
設けている。
【0003】変速操作に伴なって、上記カップリングス
リーブ5が図2の左方に押されると、先ず、上記アウタ
ーボークリング8とシンクロナイザリング1との間、及
びこのシンクロナイザリング1とインナーボークリング
9との間に働く摩擦力の作用によって、カップリングス
リーブ5とクラッチギヤ7との回転速度差がなくなる。
この状態から更に上記カップリングスリーブ5が押され
ると、このカップリングスリーブ5の内周面に形成され
たスプライン溝10が、上記クラッチギヤ7の外周縁に
形成されたスプライン溝11と、前記インサートスプリ
ング4の外周縁に形成されたスプライン溝12とに掛け
渡す様に係合し、上記ドライブシャフト2と変速ギヤ6
とが同期して回転する様になる。
【0004】上述の様に構成され作用するシンクロ機構
に組み込まれるシンクロナイザリング1は、図3〜4に
示す様な形状に構成している。即ち、このシンクロナイ
ザリング1は、軸方向に亙って直径が変化するテーパ円
筒部13と、このテーパ円筒部13の大径側端面13a
の複数個所に互いに等間隔で形成した爪片14、14と
から構成している。これら各爪片14、14の厚さ寸法
tは、上記テーパ円筒部13の厚さ寸法Tよりも小さい
(T>t)。尚、上記各爪片14、14の方向は、上記
シンクロナイザリング1を組み込むべきシンクロ機構の
構造により異なり、上記テーパ円筒部13と同方向に傾
斜させる場合も、或は上記各爪片14、14同士を互い
に平行にする場合もある。
【0005】この様な形状を有するシンクロナイザリン
グ1を造る方法として、前記特開平3−297527号
公報には、金属の平板にプレス加工を施す事により、上
記シンクロナイザリング1を安価に造る方法が記載され
ている。図11は、上記公報に記載されて従来から知ら
れているシンクロナイザリングの製造方法を示してい
る。先ず、SCr420の如き浸炭鋼等の金属の平板を打
ち抜く、所謂ブランキングにより、図12〜13に示す
様な第一素材15を形成する。この第一素材15は、円
輪状の本体部分16と、この本体部分16の外周縁複数
箇所から突出する舌状部17、17とを有する。尚、第
一素材15を形成するのは、浸炭鋼製の平板を用いるの
が好ましいが、この理由は、所望の爪片の強度と耐摩耗
性とを得られる浸炭焼き入れ処理を可能とする為であ
る。次いで、この第一素材15をプレス成形する事によ
り、図14〜15に示す様な第二素材18とする。即
ち、成形工程では、上記本体部分16(図12〜13)
を、上記各舌状部17、17から離れるに従って径が小
さくなる方向に傾斜したテーパ円筒部19として、上記
第二素材18とする。次いでこの第二素材18を構成す
る上記テーパ円筒部19の端面及び舌状部17、17
に、旋削等の機械加工を施す事により、これら各部1
9、17の形状寸法を所定のものにする。次いで、上記
機械加工に基づいて生じたバリを除去した後、所望の硬
度を得る為の熱処理を施す。従来方法の場合にこの熱処
理は、浸炭熱処理を行ない、その後、熱処理に基づく変
形を矯正していた。この様にして熱処理を施した第三素
材には、上記各舌状部17、17の平面を仕上げて前記
各爪片14、14とする為の平面研削、並びに上記テー
パ円筒部19の内外両周面を平滑にして前記テーパ円筒
部13とする為の内外径研削を施して、前記シンクロナ
イザリング1とする。この様にして造ったシンクロナイ
ザリング1は、所定の検査を行なってから出荷する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来のシンクロナイザ
リングの製造方法の場合には、所望の爪片14、14の
強度と耐摩耗性とを得る為に浸炭焼き入れが可能な浸炭
鋼製の板材を使用し、この板材を所望形状に加工した
後、浸炭焼き入れ処理を施していた。即ち、この様に浸
炭焼き入れ処理を施せば、板材の芯部に靱性を確保した
まま表面を硬化させる事ができる為、爪片14、14の
耐破断性と耐摩耗性とを確保できる。但し、浸炭焼き入
れ処理はそれ自体の処理コストが嵩むだけでなく、処理
に基づく変形が比較的大きい為、処理後に形状を矯正す
る為の熱処理を施す必要があり、製造コストが全体とし
て相当に嵩む事が避けられない。本発明は、上述の様な
事情に鑑みて、新規開発した鉄系合金を材料として使用
する事で、所望の性能を有し、しかも製造コストの低廉
化を図れるシンクロナイザリングの製造方法を実現すべ
く発明したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のシンクロナイザ
リングの製造方法のうち、請求項1に記載したシンクロ
ナイザリングの製造方法は、次の第一〜第四工程から成
る。先ず、第一工程では、0.6〜1.2重量%(更に
好ましくは0.7〜0.9重量%)のCと、0.1〜
0.9重量%(更に好ましくは0.1〜0.4重量%)
のMnと、0.3〜1.0重量%のCrと、0.01〜0.
15重量%のSiとを含み、残りをFeと不可避不純物とし
た炭素帯鋼を打ち抜いて、円輪状の本体部分と、この本
体部分の外周縁複数箇所から突出する舌状部とを有する
第一素材を形成する。次いで、第二工程では、上記第一
素材をプレス成形する事により、上記本体部分を所望形
状に加工して第二素材とする。次に、第三工程では、上
記第二素材に機械加工を施す事により、各部の形状寸法
を所定のものとした第三素材とする。更に、第四工程で
は、上記第三素材に焼き入れ・焼き戻し処理を施す。
【0008】又、請求項2に記載したシンクロナイザリ
ングの製造方法も、次の第一〜第四工程から成る。先
ず、第一工程では、0.4〜1.0重量%(更に好まし
くは0.6〜0.85重量%)のCと、0.1〜0.9
重量%(更に好ましくは0.3〜0.9重量%)のMn
と、0.2〜1.5重量%(更に好ましくは0.3〜
1.0重量%)のCrと、0.01〜0.15重量%のSi
とを含み、残りをFeと不可避不純物とした炭素帯鋼を打
ち抜いて、円輪状の本体部分と、この本体部分の外周縁
複数箇所から突出する舌状部とを有する第一素材を形成
する。次いで、第二工程では、上記第一素材をプレス成
形する事により、上記本体部分を所望形状に加工して第
二素材とする。次に、第三工程では、上記第二素材に機
械加工を施す事により、各部の形状寸法を所定のものと
した第三素材とする。更に、第四工程では、上記第三素
材に焼き入れ・焼き戻し処理を施す。尚、好ましくはこ
の第四行程での焼き戻し温度を、260〜320℃とす
る。
【0009】
【作用】上述の様に構成する本発明のシンクロナイザリ
ングの製造方法は何れも、特定の組成を有する鋼板か
ら、打ち抜き、プレス、機械の各加工を施して各部の形
状寸法を所定のものにした後、浸炭焼き入れ処理を施す
事なく、焼き入れ・焼き戻し処理を施すのみで所望の性
能を有するシンクロナイザリングを得る事ができる。従
って、浸炭焼き入れ処理を施さない為に、焼き入れ硬化
の際の変形が少なくて済み、矯正の為の熱処理が不要に
なる。これにより、高精度のシンクロナイザリングを安
価に造る事が可能となる。特に、請求項1に記載したシ
ンクロナイザリングの製造方法によれば、得られるシン
クロナイザリングの硬度をHv 653(HRc58)以上
にできる。又、請求項2に記載したシンクロナイザリン
グの製造方法によれば、得られるシンクロナイザリング
の硬度を、Hv 550〜640(HRc52.4〜57.
4)にできる。この為、シンクロナイザリングを構成す
る爪片の耐破断性を確保すると同時に、このシンクロナ
イザリングの耐摩耗性を確保できる。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は、本発明のシンクロナイザ
リングの製造方法を実施する場合のフローチャートであ
る。先ず、請求項1に記載した製造方法によりシンクロ
ナイザリングを造る場合に就いて説明する。先ず、第一
工程として、所定の組成を有する高炭素帯鋼を打ち抜く
ブランキングにより、図12〜13に示す様な第一素材
15を形成する。上記高炭素帯鋼は、必要とする塑性加
工性と熱処理後の硬度とを得る為に、0.6〜1.2重
量%(更に好ましくは0.7〜0.9重量%)のCと、
0.1〜0.9重量%(更に好ましくは0.1〜0.4
重量%)のMnと、0.3〜1.0重量%のCrと、0.0
1〜0.15重量%のSiとを含み、残りをFeと不可避不
純物としたものを使用する。尚、この不可避不純物中で
も、Ni及びCuはそれぞれ0.25重量%以下に、P及び
Sはそれぞれ0.025重量%以下に、それぞれ抑え
る。
【0011】上記第一素材15は、円輪状の本体部分1
6と、この本体部分16の外周縁複数箇所から突出する
舌状部17、17とを有する。次いで、第二工程とし
て、この第一素材15をプレス成形する事により、図1
4〜15に示す様な第二素材18とする。即ち、成形工
程では、上記本体部分16(図12〜13)を、上記各
舌状部17、17から離れるに従って径が小さくなる方
向に傾斜したテーパ円筒部19として、上記第二素材1
8とする。次いで、第三工程として、この第二素材18
を構成する上記テーパ円筒部19の端面及び舌状部1
7、17に、旋削等の機械加工を施す事により、これら
各部19、17の形状寸法を所定のものにする。次い
で、上記機械加工に基づいて生じたバリを除去した後、
第四工程として、所望の硬度を得る為の熱処理を施す。
【0012】本発明の製造方法の場合にこの熱処理は、
焼き入れ・焼き戻し処理を施す事により行なう。例え
ば、上記した組成を有する高炭素帯鋼により造った第二
素材18は、800〜850℃で焼き入れをした後、1
60〜200℃で焼き戻し処理をする事により、Hv 6
53〜800(HRc58〜64)程度の硬度を得られ
る。この様にして熱処理を施した第三素材には、上記各
舌状部17、17の平面を仕上げて前記各爪片14、1
4(図3〜4参照)とする為の平面研削、並びに上記テ
ーパ円筒部19の内外両周面を平滑にして前記テーパ円
筒部13(図3〜4参照)とする為の内外径研削を施し
て、前記シンクロナイザリング1とする。この様にして
造ったシンクロナイザリング1は、所定の検査を行なっ
てから出荷する。
【0013】上述の様に構成する本発明の請求項1に記
載したシンクロナイザリングの製造方法の場合には、前
述した様な特定の組成を有する高炭素帯鋼を使用する
為、打ち抜き、プレス、機械の各加工を施して所望形状
を有する第三素材を形成した後、通常の焼き入れ・焼き
戻し処理を施すのみで、シンクロナイザリング1に必要
とされるHv 653(HRc58)以上の硬度を得られ
る。しかも、従来方法で必須とされていた浸炭焼き入れ
処理と異なり、通常の焼き入れ・焼き戻し処理を施すの
みである為、焼き入れ硬化の際の変形が少なくて済み、
矯正の為の熱処理が不要になる。更に、浸炭焼き入れの
場合に比べて、上記第三素材の表面部分の硬度が過度に
高くなる事がないので、表面の形状・寸法を仕上げる研
削加工が容易になり、この研削加工のサイクルを高める
事が可能になる。これらにより、高精度のシンクロナイ
ザリングを安価に造る事が可能になる。
【0014】ところで、上述の請求項1に記載したシン
クロナイザリングの製造方法によれば、シンクロナイザ
リング1(図3〜4)として好ましい硬度である、Hv
653(HRc58)以上の硬度を安価に得る事ができ
る。但し、この硬度は、耐摩耗性の点からは適切である
が、シンクロナイザリング1を構成する爪片14、14
(図3〜4)の耐破断性(靱性)及びシンクロナイザリ
ング1全体としてのプレス成形性とのバランスを考慮し
た場合に、必ずしも適切な硬度ではない場合がある。即
ち、熱処理後の硬度が高い程、上記シンクロナイザリン
グ1の耐摩耗性は向上するが、その反面、靱性が低下す
る事により、このシンクロナイザリング1を構成する上
記爪片14、14が、衝撃荷重が加わった場合に破損し
易くなる。これら各爪片14、14が破損し易くなる
と、上記シンクロナイザリング1の信頼性確保の為に
は、これら各爪片14、14の肉厚を大きくしなければ
ならず、好ましくない場合がある。
【0015】以上の点を考慮すると、上記シンクロナイ
ザリング1を構成する金属材は、硬度を適正範囲に規制
する事により、シンクロナイザリング1を構成する爪片
14、14の耐破断性の確保と、この金属材の耐摩耗性
の確保との両立を図る事が好ましい場合がある。この様
な事情に鑑みて、上記各性能を確保できるシンクロナイ
ザリング1を安価に実現すべく考えた、請求項2に記載
したシンクロナイザリングの製造方法に就いて、以下に
説明する。
【0016】先ず、シンクロナイザリング1のプレス成
形性を確保する上から好ましい、シンクロナイザリング
1を構成する素材である炭素帯鋼中のC含有量の上限を
決定する為に本発明者が行なった、第一の実験に就いて
説明する。この第一の実験は、JIS Z 2248の
金属材料曲げ試験法によるもので、板厚を4mmとした1
号試験片(鋼板)を用いて行なった。そして、この試験
片のC含有量(重量%)を種々変えたものに就いて、そ
れぞれ10個の試験片により120度曲げ試験と180
度曲げ試験とを行ない、試験後のクラック(亀裂、割
れ)の有無を検査した。表1は、この第一の実験の結果
を示している。尚、各試験片に於いて、C以外の成分の
条件は全て同じとして実験を行なった。
【0017】
【表1】
【0018】上記表1中に示した第一の実験の結果によ
れば、試験片のC含有量が1.0重量%を越えると、1
20度曲げ試験と180度曲げ試験との何れに於いて
も、試験片にクラックが発生する可能性がある事が分か
った。そして、この様な第一の実験の結果から、シンク
ロナイザリング1のプレス成形性を確保する上から好ま
しい、シンクロナイザリング1を構成する炭素帯鋼中の
C含有量の上限は、1.0重量%であるとした。
【0019】次に、シンクロナイザリング1の硬度と摩
耗量との関係を調べる為に行なった、第二の実験に就い
て説明する。この第二の実験は、図5に示すサバン試験
機20を用いた摩耗試験法により行なった。この第二の
実験に使用したサバン試験器20は、固定台21に回転
輪22を回転自在に支持すると共に、この固定台21の
一部に、揺動部材23を揺動自在に支持している。この
揺動部材23の一端側(図5の左端側)にはバランス用
錘24を、同じく他端側(図5の右端側)には荷重用錘
25を、それぞれ支持している。従って、上記揺動部材
23の中間部に設けた支持部26に、支持固定した試験
片(鋼板)27の側面(図5の下面)が、上記回転輪2
2の外周面に、所定の荷重により押し付けられる。この
状態で、上記回転輪22を所定時間、所定回転速度で回
転させた後、上記試験片27の比摩耗量(mm3/kgf・mm)
を測定した。尚、上記回転輪22も、上記試験片27と
同一の成分を有する鋼製とした。又、この実験は、上記
試験片27の硬度(Hv )を種々変える事により行なっ
た。図6は、この第二の実験の結果を示している。
【0020】この図6に示した第二の実験の結果から、
試験片27の硬度が低下するのに伴って、この試験片2
7の比摩耗量は増大するが、上記硬度がHv 550(H
Rc52.4)未満では、この硬度がHv 550以上であ
る場合に比べて、硬度の減少量に対する比摩耗量の増大
量が大きくなる事が分かった。従って、この第二の実験
の結果から、シンクロナイザリング1の耐摩耗性の面か
らは、シンクロナイザリング1の硬度をHv 550以上
にする事が好ましい事が分かった。
【0021】次に、シンクロナイザリング1の硬度と、
爪片14、14の耐破断性との関係を調べる為に行っ
た、第三の実験に就いて説明する。この第三の実験は、
図7〜8に示す、爪片用強度試験機28を用いて行なっ
た。この爪片用強度試験器28を使用して行なう上記第
三の実験の際には、シンクロナイザリング1の爪片1
4、14を除くテーパ円筒部13部分を、1対の挟持部
材29、30により軸方向(図8の左右方向)に挟持し
て、固定台31に上記シンクロナイザリング1を支持固
定する。そして、上記挟持部材29、30により挟持さ
れない、シンクロナイザリング1の爪片14、14のう
ちの一個の爪片14に、押圧部材32を介して曲げ方向
(図7の下方)の荷重を徐々に加える。尚、上記シンク
ロナイザリング1を構成する上記各爪片14、14の厚
さtは2.5mmとし、同じく軸方向寸法l14は10mmと
し、テーパ円筒部13の小径側外径dは74mmとし、同
じく軸方向寸法l13は20mmとした。又、この様なシン
クロナイザリング1を造る際には、所定の形状寸法に加
工した後、焼き入れを820℃で30分間行ない、その
後、油中で冷却した。そして、180〜430℃の範囲
の種々の焼き戻し温度で、焼き戻し処理を行なって、硬
度が異なる複数種類のシンクロナイザリング1を得た。
尚、上記シンクロナイザリング1を構成する炭素帯鋼中
のCの含有量は0.7重量%とした。この様にして、完
成後の硬度が互いに異なる複数種類のシンクロナイザリ
ング1を造り、それぞれに就いて爪片14、14の耐破
断性(破損しにくさ)を、上記爪片用強度試験器28に
より測定した。図9は、この様にして行なった第三の実
験の結果を示している。
【0022】この様にして行なった第三の実験の結果か
ら、シンクロナイザリング1の硬度が高くなるのに伴っ
て各爪片14、14の耐破断性は低下するが、シンクロ
ナイザリング1の硬度がHv 640(HRc57.4)を
越えると各爪片14、14の耐破断性の低下が著しくな
る事が分かった。この事から、爪片14、14の耐破断
性を確保し、シンクロナイザリング1の信頼性を確保す
る面から、完成後のシンクロナイザリング1の硬度をH
v 640以下とするのが好ましい。
【0023】前述した第二の実験の結果と上述した第三
の実験の結果とから、シンクロナイザリング1を構成す
る爪片14、14の耐破断性の確保と、シンクロナイザ
リング1の耐摩耗性の確保との両立を図る為には、完成
後に於けるこのシンクロナイザリング1の硬度を、Hv
550〜640(HRc52.4〜57.4)とするのが
好ましい事が分かる。
【0024】次に、この様なシンクロナイザリング1の
硬度を実現する為のCの含有量と、焼き戻し温度とを、
それぞれ求める為に行なった、第四の実験に就いて説明
する。この第四の実験では、試験片を構成する炭素帯鋼
中に含有するCの量を、0.2〜1.3重量%の範囲で
種々変えたものに就いて、それぞれ焼き戻し温度を種々
変えて焼き戻し処理を行ない、焼き戻し後にそれぞれの
試験片の硬度を測定した。尚、上記各試験片の厚さは3
mmとし、焼き入れ温度は820℃とし、焼き入れの際の
冷却液は油とした。図10は、この様にして行なった第
四の実験の結果を示している。
【0025】この様にして行なった第四の実験の結果か
ら、熱処理後のシンクロナイザリング1の硬度をHv 5
50〜640の範囲に納める為には、シンクロナイザリ
ング1を構成する素材である、炭素帯鋼中のC含有量を
0.4〜1.2重量%(更に好ましくは0.6〜0.8
5重量%)とすると共に、焼き戻し処理の際の焼き戻し
温度を260〜320℃とすれば良い事が分かる。又、
前述した第一の実験の実験結果に於いて、シンクロナイ
ザリング1のプレス成形性上好ましい炭素帯鋼中のC含
有量の上限を1.0重量%とした事から、シンクロナイ
ザリング1に必要とされる爪片14、14の耐破断性及
びプレス成形性を確保すると共に、シンクロナイザリン
グ1全体としての耐摩耗性を確保する為には、炭素帯鋼
中のC含有量を0.4〜1.0重量%(更に好ましくは
0.6〜0.85重量%)とすると共に、焼き戻し処理
の際の焼き戻し温度を260〜320℃とすれば良い事
が分かる。
【0026】従って、シンクロナイザリングは、上述し
た含有量のCと共に、0.01〜0.15重量%のSi
と、0.1〜0.9重量%(更に好ましくは0.3〜
0.9重量%)のMnと、0.2〜1.5重量%(更に好
ましくは0.3〜1.0重量%)のCrとを含み、残りを
Feと不可避不純物とした炭素帯鋼から造れば良い。この
理由は、次の通りである。先ず、Siは、鋼板の製鋼時に
脱酸剤として用いられ、一般的に、0.15重量%以上
を鋼中に含有する。但し、この様に0.15重量%以上
のSiが鋼中に含有されると、フェライトが強化される事
によりプレス成形性が低下する。従って、請求項2に記
載した発明の製造方法によりシンクロナイザリングを造
る場合には、Siの含有量が0.15重量%以下の炭素帯
鋼から造る。但し、Siの含有量を0.01重量%以下に
する事は製鋼上難しいので、Siの含有量の下限値は0.
01重量%とする。
【0027】次に、Mnは、鋼板の製鋼時に脱酸剤として
用いられると共に、鋼中に添加する事により焼き入れ性
を増大する効果が認められる為、一般的に、0.1重量
%以上のMnを鋼中に添加する。但し、このMnの含有量が
0.9重量%を越えると、鋼板の変形抵抗が大きく増大
してプレス成形性が低下する。従って、請求項2に記載
した発明の製造方法によりシンクロナイザリングを造る
場合には、0.1〜0.9重量%(焼き入れ性の向上の
為、更に好ましくは、0.3〜0.9重量%)のMnを含
む炭素帯鋼を使用する事が好ましい。
【0028】又、Crは、鋼中に添加する事により焼き入
れ性を増大する効果が認められる為、0.2重量%以上
を鋼中に添加する。但し、このCrの含有量が、1.5重
量%を越えると、鋼板の変形抵抗が大きく増大してプレ
ス成形性が低下する。従って、請求項2に記載した発明
の製造方法によりシンクロナイザリングを造る場合に
は、0.2〜1.5重量%のCrを含む炭素帯鋼を使用す
る事が好ましい。又、焼き入れ性とプレス加工性とを十
分に両立して確保する為により好ましくは、0.3〜
1.0重量%のCrを含む炭素帯鋼から造る。
【0029】以上の様に、請求項2に記載した発明の製
造方法により造るシンクロナイザリングは、0.4〜
1.0重量%(更に好ましくは0.6〜0.85重量
%)のCと、0.01〜0.15重量%のSiと、0.1
〜0.9重量%(更に好ましくは0.3〜0.9重量
%)のMnと、0.2〜1.5重量%(更に好ましくは
0.3〜1.0重量%)のCrとを含み、残りをFeと不可
避不純物とした炭素帯鋼から、打ち抜き、プレス、機械
の各加工を施して各部の形状寸法を所定のものにした
後、焼き入れ・焼き戻し処理を施して造る。そして、シ
ンクロナイザリングの硬度をHv 550〜640(HRc
52.4〜57.4)とする。更に、好ましくは、上記
シンクロナイザリングを造る為に、焼き戻し処理の際の
焼き戻し温度を、260〜320℃とする。
【0030】上述の様に構成するシンクロナイザリング
の製造方法によれば、組成成分の比率を特定した鋼板を
使用し、焼き入れ・焼き戻し処理後の硬度を、Hv 55
0〜640(HRc52.4〜57.4)とする為、シン
クロナイザリング全体のプレス成形性を確保すると共
に、このシンクロナイザリングを構成する爪片の耐破断
性及び耐摩耗性を確保する事ができる。
【0031】尚、本発明の発明者が、本発明の効果を確
認すべく、本発明に係る各製造方法により造ったシンク
ロナイザリングと、従来の浸炭焼き入れ処理を施したシ
ンクロナイザリング(浸炭鋼製)とに就いて、熱処理後
に於ける変形量(真円度)を比較する実験を行なったと
ころ、従来のシンクロナイザリングの真円度が0.15
〜0.25mmであったのに対して、本発明の各製造方法
により造ったシンクロナイザリングの場合は0.05〜
0.12mmと、従来のシンクロナイザリングに比べて熱
処理後の変形量を半分以下に減少できる事が分かった。
【0032】
【発明の効果】以上に述べた通り本発明のシンクロナイ
ザリングの製造方法によれば、必要とする精度並びに硬
度を有するシンクロナイザを安価に得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する場合のフローチャート。
【図2】シンクロナイザリングを組み込んだシンクロ機
構の1例を示す部分断面図。
【図3】シンクロナイザリングの1例を示す端面図。
【図4】図3のA−A断面図。
【図5】第二の実験に用いるサバン式摩耗試験機を示す
正面図。
【図6】第二の実験の結果に就いて、試験片の硬度と比
摩耗量との関係を示す図。
【図7】第三の実験に用いる爪片用強度試験機を示す正
面図。
【図8】図7のD−D断面図。
【図9】第三の実験の結果に就いて、シンクロナイザリ
ングの硬度と爪片の耐破断性との関係を示す図。
【図10】第四の実験の結果に就いて、試験片の硬度
と、焼き戻し温度及びC含有量との関係を示す図。
【図11】従来方法を示すフローチャート。
【図12】第一素材の端面図。
【図13】図12のB−B断面図。
【図14】第二素材の端面図。
【図15】図14のC−C断面図。
【符号の説明】
1 シンクロナイザリング 2 ドライブシャフト 3 シンクロハブ 4 インサートスプリング 5 カップリングスリーブ 6 変速ギヤ 7 クラッチギヤ 8 アウターボークリング 9 インナーボークリング 10 スプライン溝 11 スプライン溝 12 スプライン溝 13 テーパ円筒部 13a 大径側端面 14 爪片 15 第一素材 16 本体部分 17 舌状部 18 第二素材 19 テーパ円筒部 20 サバン試験機 21 固定台 22 回転輪 23 揺動部材 24 バランス用錘 25 荷重用錘 26 支持部 27 試験片 28 爪片用強度試験機 29 挟持部材 30 挟持部材 31 固定台 32 押圧部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22C 38/18 C22C 38/18 (72)発明者 前佛 誠 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 0.6〜1.2重量%のCと、0.1〜
    0.9重量%のMnと、0.3〜1.0重量%のCrと、
    0.01〜0.15重量%のSiとを含み、残りをFeと不
    可避不純物とした炭素帯鋼を打ち抜いて、円輪状の本体
    部分と、この本体部分の外周縁複数箇所から突出する舌
    状部とを有する第一素材を形成する第一工程と、この第
    一素材をプレス成形する事により、上記本体部分を所望
    形状に加工して第二素材とする第二工程と、この第二素
    材に機械加工を施す事により、各部の形状寸法を所定の
    ものとした第三素材とする第三工程と、この第三素材に
    焼き入れ・焼き戻し処理を施す第四工程とから成るシン
    クロナイザリングの製造方法。
  2. 【請求項2】 0.4〜1.0重量%のCと、0.1〜
    0.9重量%のMnと、0.2〜1.5重量%のCrと、
    0.01〜0.15重量%のSiとを含み、残りをFeと不
    可避不純物とした炭素帯鋼を打ち抜いて、円輪状の本体
    部分と、この本体部分の外周縁複数箇所から突出する舌
    状部とを有する第一素材を形成する第一工程と、この第
    一素材をプレス成形する事により、上記本体部分を所望
    形状に加工して第二素材とする第二工程と、この第二素
    材に機械加工を施す事により、各部の形状寸法を所定の
    ものとした第三素材とする第三工程と、この第三素材に
    焼き入れ・焼き戻し処理を施す第四工程とから成るシン
    クロナイザリングの製造方法。
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