JPH112154A - 肉盛りバルブシートの製造方法及びシリンダヘッド - Google Patents

肉盛りバルブシートの製造方法及びシリンダヘッド

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JPH112154A
JPH112154A JP9155521A JP15552197A JPH112154A JP H112154 A JPH112154 A JP H112154A JP 9155521 A JP9155521 A JP 9155521A JP 15552197 A JP15552197 A JP 15552197A JP H112154 A JPH112154 A JP H112154A
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木 健 司 鈴
Makoto Kano
納 眞 加
Hidenobu Matsuyama
山 秀 信 松
Naritsuyo Sato
藤 成 剛 佐
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 シリンダヘッドに肉盛りバルブシートを形成
するにあたり、肉盛り部におけるクラック等の発生を防
止し、生産性の低下を抑制する。 【解決手段】 シリンダヘッド1の下面1aに形成され
た凹状の燃焼室の上壁面1b上でかつ下面と上壁面とを
接続する側壁1cに隣接した位置に環状の溝をなすバル
ブシート部2a,2bを形成し、バルブシート部に肉盛
り粉末を供給しつつレーザビームを照射して溶着しバル
ブシートを形成する肉盛りバルブシートの製造方法にお
いて、バルブシート部のレーザビーム照射領域に投入さ
れる肉盛り粉末の量をバルブシート部の周方向全域にお
いて一定とするべく、バルブシート部のうち周方向にお
いて側壁に隣接する隣接領域Aに対して粉末供給手段に
より供給される肉盛り粉末の設定粉末供給量を隣接領域
A以外の領域に供給されるものに比べて少なくする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンの吸排気
バルブが着座するバルブシートをシリンダヘッドのバル
ブシート部に形成する際のバルブシートの製造方法及び
シリンダヘッドに関し、特に、金属粉末をシリンダヘッ
ドのバルブシート部に肉盛り溶着する肉盛りバルブシー
トの製造方法及びシリンダヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】従来のシリンダヘッドにおいては、エン
ジン排気量,エンジン出力,エンジントルク,燃料の燃
焼状態等により、燃焼室の形状が設定されてきた。ま
た、エンジンのバルブシートとしては、一般的には鉄系
焼結合金をバルブシート部に圧入したもの、あるいは、
近年におけるエンジンの高出力化に伴い、高エネルギレ
ーザを利用してバルブシート部に合金粉末を肉盛りした
肉盛りバルブシート等が採用されている。
【0003】この肉盛りバルブシートは、アルミニウム
合金(例えば、JIS規格AC2A材)製シリンダヘッ
ドの材質とは異なる特性を持つ金属粉末をシリンダヘッ
ドのバルブシート部に供給しつつレーザビームを照射し
て溶着させ所望のバルブシート形状に仕上げたものであ
る。
【0004】一方、従来のシリンダヘッドにおいては、
上述の如き肉盛り加工を考慮した燃焼室形状には設計さ
れておらず、従って、バルブシート部の一部が燃焼室の
上壁面とシリンダヘッドの下面とを接続する立壁、すな
わち燃焼室の側壁に隣接し、又、この側壁の高さが約4
mm近くあるものが存在する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の技術
においては、シリンダヘッドのバルブシート部に金属粉
末を供給して溶着する際に、例えば点火プラグ孔に近い
側すなわち側壁から離れたバルブシート部の領域(他の
領域)に比べて、側壁に隣接したバルブシート部の領域
では、供給の際に飛散する粉末が側壁により跳ね返され
る等して、加工領域に供給される実際の金属粉末量が増
加する傾向にある。
【0006】この場合に、他の領域に合わせた加工出力
でレーザビームを照射して肉盛り加工を施すと、供給量
の多い側壁に隣接した領域では未溶着によるクラック等
が発生する可能性がある。
【0007】また、燃焼室の側壁が高い領域では、レー
ザビームを用いて肉盛り加工を行う際に、酸化を防止す
るシールドガスの流れが乱されて、加工領域でのシール
ド作用が確実に得られず、肉盛り部が酸化してしまう場
合がある。
【0008】以上のようなクラック,酸化等の欠陥が発
生したシリンダヘッドは、通常不良品として廃棄処分す
るか、あるいは、リペアを行うことになり、結果的に生
産性を低下させると共に製造コストを上昇させることに
なる。
【0009】本発明は、上述の如き課題を解決するため
に達成されたものであり、その目的とするところは、生
産性の向上,製造コストの低減等が図れる肉盛りバルブ
シートの製造方法及びシリンダヘッドを提供することに
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る
肉盛りバルブシートの製造方法は、シリンダヘッドの下
面に形成された凹状の燃焼室の上壁面上でかつ前記下面
と上壁面とを接続する側壁に隣接した位置に環状の溝を
なすバルブシート部を形成し、前記バルブシート部に粉
末供給手段から肉盛り粉末を供給しつつレーザビームを
照射して溶着しバルブシートを形成する肉盛りバルブシ
ートの製造方法であって、前記バルブシート部のレーザ
ビーム照射領域に投入される前記肉盛り粉末の量を前記
バルブシート部の周方向全域において一定とすべく、前
記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接
する隣接領域に対して前記粉末供給手段により供給され
る肉盛り粉末の設定粉末供給量を前記隣接領域以外の領
域に供給されるものに比べて少なくする構成となってい
る。
【0011】本発明の請求項2に係る肉盛りバルブシー
トの製造方法は、前記バルブシート部が隣接する領域に
おける前記側壁の高さをH、前記バルブシート部のうち
周方向において前記側壁に隣接する領域以外の領域に対
して前記粉末供給手段により供給される肉盛り粉末の設
定粉末供給量をVo、係数をαとするとき、前記バルブ
シート部のうち周方向において前記側壁に隣接する領域
に対して前記粉末供給手段により供給される肉盛り粉末
の設定粉末供給量Vが、 V=Vo−α・H なる関係を満たす構成となっている。
【0012】本発明の請求項3に係る肉盛りバルブシー
トの製造方法は、前記設定粉末供給量Voの値がVo>
10g/min、前記側壁の高さHが0mm≦H≦10
mmのとき、前記係数αがα=0.6である構成となっ
ている。
【0013】本発明の請求項4に係る肉盛りバルブシー
トの製造方法は、前記肉盛り粉末として、粉径が50μ
m〜150μmの範囲でかつ硬質相を析出する銅合金粉
末を用いる構成となっている。
【0014】本発明の請求項5に係る肉盛りバルブシー
トの製造方法は、前記銅合金粉末の基本組成が、重量%
で、アルミニウム:1.0〜5.0%、元素周期律表V
a族元素であるバナジウム,ニオブ,タンタルのうち少
なくとも1種:0.1〜5.0%、シリコン:1.0〜
5.0%、残部が銅及び不純物からなる構成となってい
る。
【0015】本発明の請求項6に係る肉盛りバルブシー
トの製造方法は、前記レーザビームとして線状に集光し
たものを照射する構成となっている。
【0016】本発明の請求項7に係るシリンダヘッド
は、下面に形成された燃焼室と、前記燃焼室の上壁面上
でかつ前記下面と上壁面とを接続する側壁に隣接した位
置に環状の溝をなすように形成されると共にバルブシー
トを形成すべく肉盛り粉末が溶着されるバルブシート部
とを備えるシリンダヘッドであって、前記バルブシート
部の溝の深さは、周方向において前記側壁に隣接する領
域がそれ以外の領域に比べて浅く形成されている構成と
なっている。
【0017】本発明の請求項8に係るシリンダヘッド
は、前記バルブシート部が隣接する領域における前記側
壁の高さをH、前記バルブシート部のうち周方向におい
て前記側壁に隣接する領域以外における溝の深さをD
o、係数をβとするとき、前記バルブシート部のうち周
方向において前記側壁に隣接する領域における溝の深さ
Dが、 D=Do−β・H なる関係を満たす構成となっている。
【0018】本発明の請求項9に係るシリンダヘッド
は、前記バルブシート部が隣接する領域における側壁の
高さHが0mm≦H≦10mmのとき、前記係数βがβ
=0.02である構成となっている。
【0019】本発明の請求項10に係るシリンダヘッド
は、前記側壁とバルブシート部とが隣接する領域におい
て、前記下面に平行な方向における前記側壁とバルブシ
ート部の外周部との間の距離Wが、W<5mmである構
成となっている。
【0020】本発明の請求項11に係るシリンダヘッド
は、前記バルブシート部の溝形状が半径3.5mm〜
6.5mmの範囲のR溝である構成となっている。
【0021】本発明の請求項12に係るシリンダヘッド
は、前記側壁の高さHが3mm〜6mmの範囲である構
成となっている。
【0022】
【発明の効果】本発明の請求項1に係る肉盛りバルブシ
ートの製造方法によれば、シリンダヘッドに設けられた
バルブシート部の周方向全域において、供給される金属
粉末の量が一定になり、これにより、レーザビームの加
工出力を一定にした状態で肉盛り加工を施しても、未溶
着によるクラック等がない所望の肉盛り形状を確実に安
定して得ることができる。
【0023】本発明の請求項2に係る肉盛りバルブシー
トの製造方法によれば、バルブシート部が隣接する側壁
の高さを考慮して、粉末供給手段により供給される粉末
量をコントロールすることで、従来のシリンダヘッドに
対して未溶着によるクラック等が存在しない所望の肉盛
りバルブシートを確実に形成することができる。すなわ
ち、シリンダヘッドを新たに設計する必要がなくなるこ
とから、開発コストの増加が抑えられ、これにより、製
品の低コスト化、生産性の向上等が達成される。
【0024】本発明の請求項3に係る肉盛りバルブシー
トの製造方法によれば、所望形状の肉盛りバルブシート
をより確実に安定して形成することができ、これによ
り、製品の低コスト化,生産性の向上等が達成される。
【0025】本発明の請求項4に係る肉盛りバルブシー
トの製造方法によれば、肉盛り加工領域における供給粉
末の飛散を極力抑制することができ、安定した粉末供給
が可能となる。これにより、無駄な粉末の使用量を最低
限に抑えることができ、材料費の低減を行うことができ
る。
【0026】本発明の請求項5に係る肉盛りバルブシー
トの製造方法によれば、安定した粉末供給が行えるのに
併せて、エンジン稼働時に要求される耐摩耗性,耐久性
等に優れた肉盛りバルブシートを形成することができ
る。
【0027】本発明の請求項6に係る肉盛りバルブシー
トの製造方法によれば、肉盛り用の粉末を溶融させるた
めに必要な熱エネルギを十分に得ることができ、未溶着
によるクラックの発生等を防止することができる。ま
た、肉盛り加工の際にシリンダヘッドの素材が肉盛り層
を希釈することが極力抑制され、この希釈によるクラッ
クの発生等を防止することができる。
【0028】これにより、生産性の向上、製造コストの
低減等が達成される。
【0029】本発明の請求項7に係るシリンダヘッドに
よれば、環状の溝をなすバルブシート部のうち側壁に隣
接する領域の溝の深さがそれ以外の領域の溝の深さに比
べて浅く形成されていることから、粉末供給手段により
供給される設定粉末供給量を一定にした状態で粉末の供
給を行っても、バルブシート部の周方向全域において加
工領域に供給される実際の粉末供給量が一定になり、こ
れにより、未溶着によるクラック等がない所望の肉盛り
形状を確実に安定して得ることができる。
【0030】本発明の請求項8に係るシリンダヘッドに
よれば、バルブシート部が隣接する側壁の高さを考慮し
て、バルブシート部の溝の深さを変化させることで、未
溶着によるクラック等がない所望の肉盛りバルブシート
を確実に形成することができる。すなわち、シリンダヘ
ッドの素材にバルブシート部としての溝加工を施す際
に、その溝深さを予め調節することのみで、均質な肉盛
りバルブシートを形成することができ、これにより、製
品の低コスト化、生産性の向上等が達成される。
【0031】本発明の請求項9に係るシリンダヘッドに
よれば、所望形状の肉盛りバルブシートをより確実に安
定して形成することができ、これにより、製品の低コス
ト化、生産性の向上等が達成される。
【0032】本発明の請求項10に係るシリンダヘッド
によれば、バルブシート部が側壁により密接している場
合において、この側壁の高さを考慮してこの領域におけ
るバルブシート部の溝深さを変化させる、すなわち、他
の領域に比べて浅くすることで、所望形状の肉盛りバル
ブシートをより確実に安定して形成することができる。
【0033】本発明の請求項11に係るシリンダヘッド
によれば、加工領域に供給される粉末量を確実に確保す
ることができ、所望の肉盛り形状を得ることができる。
【0034】本発明の請求項12に係るシリンダヘッド
によれば、肉盛り用の粉末を溶融するために必要な入熱
を得ることができ、未溶着によるクラックの発生等を防
止できる。従って、シリンダヘッドを設計する場合、肉
盛り加工性を考慮したシリンダヘッドを予め設計するこ
とができ、これにより生産性に優れたシリンダヘッドを
もたらすことが可能となる。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を添付図面
に基づいて説明する。
【0036】図1は、本発明に係る肉盛りバルブシート
の製造方法を適用するシリンダヘッドの下面の一部を示
す底面図である。図1に示すように、シリンダヘッド1
の下面1aには、凹状の燃焼室がエンジンの気筒数だけ
形成されており、この燃焼室の上壁面1b上には、径の
大きい吸気バルブ用のバルブシート部2aと、径の小さ
い排気バルブ用のバルブシート部2bとが、それぞれ2
個ずつ形成されている。また、これらのバルブシート部
2a,2bに挟まれた略中央部には、点火プラグを取り
付ける点火プラグ孔3が設けられている。
【0037】これらのバルブシート部2a,2bは、そ
れぞれ環状の溝をなすように半径4.5mmのR溝に加
工され、このR溝領域に肉盛り部5a,5bが施され
て、これら肉盛り部5a,5bが所定のバルブシート形
状に加工される。
【0038】また、設計上の制約から、これらバルブシ
ート部5a,5bは、少なくともその一部分が、燃焼室
の上壁面1bとシリンダヘッドの下面1aとを接続する
燃焼室の側壁1cに隣接する位置に形成されている。
【0039】ところで、これらの所定の深さにR溝加工
されたバルブシート部2a,2bに周方向に沿って金属
粉末を供給して肉盛りを形成する際に、側壁1cに隣接
する領域Aにおいては、飛散した粉末の一部がこの側壁
1cにより跳ね返されてR溝部に投入され、このR溝部
に実際に供給される粉末の量は、粉末供給手段により供
給される設定粉末供給量よりも増加する傾向にある。
【0040】図2は、図1中のC−C部における拡大断
面図であり、本発明に係る種々の定義を説明するための
ものである。図2に示すように、バルブシート部2aが
隣接する領域における側壁1cの高さをH、バルブシー
ト部2aのうち周方向において側壁1cに隣接する領域
における溝の深さをD、側壁1cとバルブシート部とが
隣接する領域において、下面1aに平行な方向における
側壁1cとバルブシート部の外周部との間の距離をWと
する。
【0041】図3は、図1中のE−E部における拡大断
面図であり、前述の如き飛散した粉末の一部を跳ね返す
側壁1cを示すものである。図3に示すように、点Fの
位置での側壁1cの高さHは約4mm、点Gの位置での
側壁1cの高さHは約10mmあり、特にバルブシート
部2aに隣接するところに位置する側壁1cの高さHが
高くなる程、一般に、側壁が肉盛りの際の粉末供給量に
及ぼす影響の度合が大きくなる傾向にある。
【0042】また、下面1aに平行な方向における側壁
1cとバルブシート部2aの外周部との間の距離Wが小
さくなる程、側壁が肉盛りの際の粉末供給量に及ぼす影
響の度合が大きくなる傾向にある。
【0043】次に、ここで用いられる肉盛り粉末として
は、例えば肉盛り部に硬質相を析出するような銅合金粉
末を挙げることができる。
【0044】その中でも特に、入熱量とのバランスを考
慮して、粒径が50μm〜150μmの範囲のものを使
用するのが好ましい。
【0045】また、上述銅合金粉末としては、その成分
組成が重量%で、Al:1.0〜5.0%、元素周期律
表Va族元素であるV,Nb,Taのうち少なくとも1
種:0.1〜5.0%、Si:1.0〜5.0%、場合
によってはCo:5.0〜20.0%、同じく場合によ
ってはFe及びNiの1種又は2種:5.0〜20.0
%、同じく場合によってはMn:1.0〜10.0%を
含有し、残部がCu及び不純物からなる組成を有するも
のを適用することができる。
【0046】尚、本実施例では、肉盛り粉末として、成
分組成が重量%で、Co:12.5%、Fe:6.4
%、Ni:12.7%、Al:1.1%、V:1.9
%、Nb:2.2%、Mn:1.2%、残部がCu及び
不純物からなる銅合金粉末を使用した。
【0047】さらに、その他の肉盛り加工条件として
は、下記表1に示すものを適用することができる。
【0048】
【表1】
【0049】ここで用いるレーザビームとしては、表1
に示すように、例えば、短径2mm,長径6mmの略線
状に集光された長楕円光を採用することができ、これに
より、肉盛り粉末を溶融するのに必要な入熱を十分に確
保することができる。
【0050】尚、これに限定されるものではなく、例え
ばスポット径2mmのレーザビームを肉盛りの幅方向に
オシレートさせつつ照射させるオシレートレーザビーム
を採用することも可能である。
【0051】以上のような条件の下で、シリンダヘッド
に対して肉盛りバルブシートを形成する方法について、
以下に説明する。尚、本実施例では、1998cc4気
筒DOHCエンジン用のアルミニウム合金(JIS規格
AC2A材)製シリンダヘッドを採用した。
【0052】先ず、図2に示すように、バルブシート部
2aを半径4.5mm、深さD=1.0mmのR溝に加
工する。続いて、粉末供給手段として、例えば粉末の減
少重量を測定できかつ0.5g/minの単位で供給量
を制御できる粉末供給装置(不図示)を用いて、R溝部
2aに銅合金粉末を供給しつつ、COレーザビームを
照射して肉盛り加工を行う。
【0053】この際、粉末の供給手法としては、バルブ
シート部2aのうち周方向において側壁1cに隣接する
領域A(図1参照)以外の領域に対して粉末供給装置に
より供給される肉盛り粉末の設定粉末供給量をVo、側
壁1cに隣接する領域Aに対して供給される肉盛り粉末
の設定粉末供給量をV、係数をαとするとき、V=Vo
−αHの関係を満たすように、すなわち、側壁1cに隣
接する領域Aではそれ以外の領域に比べてαHだけ少な
い量の粉末を供給することにする。尚、Hは粉末を供給
する位置での側壁1cの高さである。
【0054】ここで、バルブシート部が側壁1cに隣接
する領域かどうかを判断する目安としては、例えば、側
壁1cの高さHが0mm≦H≦10mmの範囲にあると
ころに対応するバルブシート部を隣接する領域Aと見な
すものとする。
【0055】また、Voの値が10g/minよりも大
きい場合において、上述の関係式を適用するのが好まし
い。尚、本実施例においては、Voの値を50g/mi
n、係数αを0.6として、肉盛り加工を行った。
【0056】以上のようにして得られた肉盛り部5aの
高さを測定したところ、図4に示すような結果が得られ
た。尚、この測定は、図4(a)に示すように、肉盛り
部5aを反時計回りに30度間隔で肉盛り方向に対して
垂直に切断し、各々の切断面において、図5に示すよう
に幅方向中央部の肉盛り高さを測定した。
【0057】その結果、図4(b)に示すように、側壁
1cに隣接する領域(約120度から240度の範囲)
においても肉盛り高さが増加することはなく、それ以外
の領域とほぼ同じような高さ(肉盛り高さは±0.2m
mの範囲に収まっている)をもつ安定した肉盛り部5a
が得られた。また、クラック等も発生しなかった。
【0058】次に、バルブシート部の溝の深さを変化さ
せて肉盛り加工を行う実施例について説明する。
【0059】先ず、側壁1cとバルブシート部2aとが
隣接する領域において、下面1aに平行な方向における
側壁1cとバルブシート部2aの外周部との間の距離W
(図2参照)が1mm、この領域における側壁1cの高
さHが3mm<H<6mmとなるようなシリンダヘッド
1を作製した。尚、このシリンダヘッド1の距離W,側
壁高さHは、上述の値に限定されるものではなく、W<
5mmの範囲に設定して適用することもでき、又、0m
m≦H≦10mmとすることもできる。
【0060】次に、バルブシート部2aを半径4.5m
mのR溝に加工する。この際、R溝の深さは、バルブシ
ート部2aのうち周方向において側壁1cに隣接する領
域以外における溝の深さをDo、側壁1cに隣接する領
域Aにおける溝の深さをD、係数をβとするとき、D=
Do−βHの関係を満たすように、すなわち、側壁1c
に隣接する領域Aではそれ以外の領域に比べてβHだけ
浅く溝を形成する。ここで、Hは溝を加工する位置に対
応する側壁1cの高さである。尚、本実施例では、Do
=1.0mm、β=0.02として、溝加工を行った。
【0061】次に、前述の粉末供給装置を用いて設定粉
末供給量50g/min(一定)として、銅合金粉末を
供給しつつCOレーザビームを照射して肉盛り加工を
行った。尚、その他の加工条件は、前述実施例と同様に
設定した。
【0062】以上のようにして得られた肉盛り部5aに
おけるクラックの発生数を調べたところ、図6(b)に
示すような結果が得られた。尚、この結果は、本実施例
に係る肉盛り部5aと、従来技術による肉盛り部とをそ
れぞれ50個形成し、図6(a)に示すような各々の角
度位置におけるクラック数を累計してまとめたものであ
る。
【0063】図6(b)に示すように、従来の手法にお
いては、側壁1cに隣接した領域(約120度から24
0度の範囲)で多数のクラックが確認されたが、本発明
に係る手法ではクラックは確認されなかった。
【0064】このように、上述の実施例によれば、欠陥
のない肉盛りバルブシートを形成することができ、製品
の歩留りが向上すなわち生産性が向上し、又、無駄にな
る製品が削減されて製品の低コスト化が達成される。
【0065】尚、上述の実施例において、R溝の半径を
4.5mmとしたが、これに限定されるものではなく、
例えば、3.5mm〜6.5mmの範囲で適用可能であ
る。これによれば、加工領域に供給される粉末が効率良
くR溝に保持されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るシリンダヘッドの下面の一部を
示す底面図である。
【図2】 図1中のC−C部における拡大断面図であ
る。
【図3】 図1中のE−E部における拡大断面図であ
る。
【図4】 本発明に係る肉盛り部の肉盛り高さの測定結
果を示すものであり、図4(a)は測定角度位置を示す
底面図、図4(b)は図4(a)中に示す各々の角度位
置における肉盛り高さを示す図である。
【図5】 図4に示す肉盛り高さの定義を説明するため
の図である。
【図6】 本発明に係る肉盛り部におけるクラックの発
生状況を示すものであり、図6(a)は検査した角度位
置を示す底面図、図6(b)は図6(a)中に示す各々
の角度位置における本発明及び従来の技術によるクラッ
クの発生数を示す図である。
【符号の説明】
1 シリンダヘッド 1a 下面 1b 燃焼室上壁面 1c 側壁 2a 吸気バルブ用バルブシート部 2b 排気バルブ用バルブシート部 3 点火プラグ孔 5a,5b 肉盛り部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F01L 3/24 F01L 3/24 E (72)発明者 佐 藤 成 剛 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリンダヘッドの下面に形成された凹状
    の燃焼室の上壁面上でかつ前記下面と上壁面とを接続す
    る側壁に隣接した位置に環状の溝をなすバルブシート部
    を形成し、前記バルブシート部に粉末供給手段から肉盛
    り粉末を供給しつつレーザビームを照射して溶着しバル
    ブシートを形成する肉盛りバルブシートの製造方法であ
    って、 前記バルブシート部のレーザビーム照射領域に投入され
    る前記肉盛り粉末の量を前記バルブシート部の周方向全
    域において一定とすべく、前記バルブシート部のうち周
    方向において前記側壁に隣接する隣接領域に対して前記
    粉末供給手段により供給される肉盛り粉末の設定粉末供
    給量を前記隣接領域以外の領域に供給されるものに比べ
    て少なくすることを特徴とする肉盛りバルブシートの製
    造方法。
  2. 【請求項2】 前記バルブシート部が隣接する領域にお
    ける前記側壁の高さをH、前記バルブシート部のうち周
    方向において前記側壁に隣接する領域以外の領域に対し
    て前記粉末供給手段により供給される肉盛り粉末の設定
    粉末供給量をVo、係数をαとするとき、前記バルブシ
    ート部のうち周方向において前記側壁に隣接する領域に
    対して前記粉末供給手段により供給される肉盛り粉末の
    設定粉末供給量Vは、 V=Vo−α・H の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の肉盛り
    バルブシートの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記設定粉末供給量Voの値がVo>1
    0g/min、前記側壁の高さHが0mm≦H≦10m
    mのとき、前記係数αがα=0.6であることを特徴と
    する請求項2記載の肉盛りバルブシートの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記肉盛り粉末として、粉径が50μm
    〜150μmの範囲でかつ硬質相を析出する銅合金粉末
    を用いることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1
    つに記載の肉盛りバルブシートの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記銅合金粉末の基本組成は、重量%
    で、アルミニウム:1.0〜5.0%、元素周期律表V
    a族元素であるバナジウム,ニオブ,タンタルのうち少
    なくとも1種:0.1〜5.0%、シリコン:1.0〜
    5.0%、残部が銅及び不純物からなることを特徴とす
    る請求項4記載の肉盛りバルブシートの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記レーザビームとして線状に集光した
    ものを照射することを特徴とする請求項1ないし5いず
    れか1つに記載の肉盛りバルブシートの製造方法。
  7. 【請求項7】 下面に形成された燃焼室と、前記燃焼室
    の上壁面上でかつ前記下面と上壁面とを接続する側壁に
    隣接した位置に環状の溝をなすように形成されると共に
    バルブシートを形成すべく肉盛り粉末が溶着されるバル
    ブシート部とを備えるシリンダヘッドであって、 前記バルブシート部の溝の深さは、周方向において前記
    側壁に隣接する領域がそれ以外の領域に比べて浅く形成
    されていることを特徴とするシリンダヘッド。
  8. 【請求項8】 前記バルブシート部が隣接する領域にお
    ける前記側壁の高さをH、前記バルブシート部のうち周
    方向において前記側壁に隣接する領域以外における溝の
    深さをDo、係数をβとするとき、前記バルブシート部
    のうち周方向において前記側壁に隣接する領域における
    溝の深さDは、 D=Do−β・H の関係を満たすことを特徴とする請求項7記載のシリン
    ダヘッド。
  9. 【請求項9】 前記側壁の高さHが0mm≦H≦10m
    mのとき、前記係数βがβ=0.02であることを特徴
    とする請求項8記載のシリンダヘッド。
  10. 【請求項10】 前記側壁とバルブシート部とが隣接す
    る領域において、前記下面に平行な方向における前記側
    壁とバルブシート部の外周部との間の距離Wが、W<5
    mmであることを特徴とする請求項8又は9記載のシリ
    ンダヘッド。
  11. 【請求項11】 前記バルブシート部の溝形状が、半径
    3.5mm〜6.5mmの範囲のR溝であることを特徴
    とする請求項7ないし10いずれか1つに記載のシリン
    ダヘッド。
  12. 【請求項12】 前記側壁の高さHが3mm〜6mmの
    範囲であることを特徴とする請求項7ないし11いずれ
    か1つに記載のシリンダヘッド。
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