JP3787957B2 - 肉盛りバルブシートの製造方法及びシリンダヘッド - Google Patents

肉盛りバルブシートの製造方法及びシリンダヘッド Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの吸排気バルブが着座するバルブシートをシリンダヘッドのバルブシート部に形成する際のバルブシートの製造方法及びシリンダヘッドに関し、特に、金属粉末をシリンダヘッドのバルブシート部に肉盛り溶着する肉盛りバルブシートの製造方法に関する
【0002】
【従来の技術】
従来のシリンダヘッドにおいては、エンジン排気量,エンジン出力,エンジントルク,燃料の燃焼状態等により、燃焼室の形状が設定されてきた。また、エンジンのバルブシートとしては、一般的には鉄系焼結合金をバルブシート部に圧入したもの、あるいは、近年におけるエンジンの高出力化に伴い、高エネルギレーザを利用してバルブシート部に合金粉末を肉盛りした肉盛りバルブシート等が採用されている。
【0003】
この肉盛りバルブシートは、アルミニウム合金(例えば、JIS規格AC2A材)製シリンダヘッドの材質とは異なる特性を持つ金属粉末をシリンダヘッドのバルブシート部に供給しつつレーザビームを照射して溶着させ所望のバルブシート形状に仕上げたものである。
【0004】
一方、従来のシリンダヘッドにおいては、上述の如き肉盛り加工を考慮した燃焼室形状には設計されておらず、従って、バルブシート部の一部が燃焼室の上壁面とシリンダヘッドの下面とを接続する立壁、すなわち燃焼室の側壁に隣接し、又、この側壁の高さが約4mm近くあるものが存在する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の技術においては、シリンダヘッドのバルブシート部に金属粉末を供給して溶着する際に、例えば点火プラグ孔に近い側すなわち側壁から離れたバルブシート部の領域(他の領域)に比べて、側壁に隣接したバルブシート部の領域では、供給の際に飛散する粉末が側壁により跳ね返される等して、加工領域に供給される実際の金属粉末量が増加する傾向にある。
【0006】
この場合に、他の領域に合わせた加工出力でレーザビームを照射して肉盛り加工を施すと、供給量の多い側壁に隣接した領域では未溶着によるクラック等が発生する可能性がある。
【0007】
また、燃焼室の側壁が高い領域では、レーザビームを用いて肉盛り加工を行う際に、酸化を防止するシールドガスの流れが乱されて、加工領域でのシールド作用が確実に得られず、肉盛り部が酸化してしまう場合がある。
【0008】
以上のようなクラック,酸化等の欠陥が発生したシリンダヘッドは、通常不良品として廃棄処分するか、あるいは、リペアを行うことになり、結果的に生産性を低下させると共に製造コストを上昇させることになる。
【0009】
本発明は、上述の如き課題を解決するために達成されたものであり、その目的とするところは、生産性の向上,製造コストの低減等が図れる肉盛りバルブシートの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る肉盛りバルブシートの製造方法は、シリンダヘッドの下面に形成された凹状の燃焼室の上壁面上でかつ前記下面と上壁面とを接続する側壁に隣接した位置に環状の溝をなすバルブシート部を形成し、前記バルブシート部に粉末供給手段から肉盛り粉末を供給しつつレーザビームを照射して溶着しバルブシートを形成する肉盛りバルブシートの製造方法であって、前記バルブシート部のレーザビーム照射領域に投入される前記肉盛り粉末の量を前記バルブシート部の周方向全域において一定とすべく、前記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接する隣接領域に対して前記粉末供給手段により供給される肉盛り粉末の設定粉末供給量を前記隣接領域以外の領域に供給されるものに比べて少なくする構成となっている。
【0011】
本発明の請求項2に係る肉盛りバルブシートの製造方法は、前記バルブシート部が隣接する領域における前記側壁の高さをH、前記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接する領域以外の領域に対して前記粉末供給手段により供給される肉盛り粉末の設定粉末供給量をVo、係数をαとするとき、前記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接する領域に対して前記粉末供給手段により供給される肉盛り粉末の設定粉末供給量Vが、
V=Vo−α・H
なる関係を満たす構成となっている。
【0012】
本発明の請求項3に係る肉盛りバルブシートの製造方法は、前記設定粉末供給量Voの値がVo>10g/min、前記側壁の高さHが0mm≦H≦10mmのとき、前記係数αがα=0.6である構成となっている。
【0013】
本発明の請求項4に係る肉盛りバルブシートの製造方法は、前記肉盛り粉末として、粉径が50μm〜150μmの範囲でかつ硬質相を析出する銅合金粉末を用いる構成となっている。
【0014】
本発明の請求項5に係る肉盛りバルブシートの製造方法は、前記銅合金粉末の基本組成が、重量%で、アルミニウム:1.0〜5.0%、元素周期律表Va族元素であるバナジウム,ニオブ,タンタルのうち少なくとも1種:0.1〜5.0%、シリコン:1.0〜5.0%、残部が銅及び不純物からなる構成となっている。
【0015】
本発明の請求項6に係る肉盛りバルブシートの製造方法は、前記レーザビームとして線状に集光したものを照射する構成となっている。
【0016】
本発明の請求項7に係る肉盛りバルブシートの製造方法は、下面に形成された燃焼室と、前記燃焼室の上壁面上でかつ前記下面と上壁面とを接続する側壁に隣接した位置に環状の溝をなすように形成されると共にバルブシートを形成すべく肉盛り粉末が溶着されるバルブシート部とを備えるシリンダヘッドであって、前記バルブシート部の溝の深さは、周方向において前記側壁に隣接する領域がそれ以外の領域に比べて浅く形成されており、前記バルブシート部のレーザビーム照射領域に投入される前記肉盛り粉末の量を前記バルブシート部の周方向全域において一定とすべく、前記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接する隣接領域に対して前記粉末供給手段により供給される肉盛り粉末の設定粉末供給量を前記隣接領域以外の領域に供給されるものに比べて少なくする構成となっている。
【0017】
本発明の請求項8に係る肉盛りバルブシートの製造方法は、前記バルブシート部が隣接する領域における前記側壁の高さをH、前記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接する領域以外における溝の深さをDo、係数をβとするとき、前記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接する領域における溝の深さDが、
D=Do−β・H
なる関係を満たす構成となっている。
は、前記バルブシート部が隣接する領域における前記側壁の高さをH、前記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接する領域以外における溝の深さをDo、係数をβとするとき、前記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接する領域における溝の深さDが、
D=Do−β・H
なる関係を満たす構成となっている。
【0018】
本発明の請求項9に係る肉盛りバルブシートの製造方法は、前記バルブシート部が隣接する領域における側壁の高さHが0mm≦H≦10mmのとき、前記係数βがβ=0.02である構成となっている。
【0019】
本発明の請求項10に係る肉盛りバルブシートの製造方法は、前記側壁とバルブシート部とが隣接する領域において、前記下面に平行な方向における前記側壁とバルブシート部の外周部との間の距離Wが、W<5mmである構成となっている。
【0020】
本発明の請求項11に係る肉盛りバルブシートの製造方法は、前記バルブシート部の溝形状が半径3.5mm〜6.5mmの範囲のR溝である構成となっている。
【0021】
本発明の請求項12に係る肉盛りバルブシートの製造方法は、前記側壁の高さHが3mm〜6mmの範囲である構成となっている。
【0022】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係る肉盛りバルブシートの製造方法によれば、シリンダヘッドに設けられたバルブシート部の周方向全域において、供給される金属粉末の量が一定になり、これにより、レーザビームの加工出力を一定にした状態で肉盛り加工を施しても、未溶着によるクラック等がない所望の肉盛り形状を確実に安定して得ることができる。
【0023】
本発明の請求項2に係る肉盛りバルブシートの製造方法によれば、バルブシート部が隣接する側壁の高さを考慮して、粉末供給手段により供給される粉末量をコントロールすることで、従来のシリンダヘッドに対して未溶着によるクラック等が存在しない所望の肉盛りバルブシートを確実に形成することができる。すなわち、シリンダヘッドを新たに設計する必要がなくなることから、開発コストの増加が抑えられ、これにより、製品の低コスト化、生産性の向上等が達成される。
【0024】
本発明の請求項3に係る肉盛りバルブシートの製造方法によれば、所望形状の肉盛りバルブシートをより確実に安定して形成することができ、これにより、製品の低コスト化,生産性の向上等が達成される。
【0025】
本発明の請求項4に係る肉盛りバルブシートの製造方法によれば、肉盛り加工領域における供給粉末の飛散を極力抑制することができ、安定した粉末供給が可能となる。これにより、無駄な粉末の使用量を最低限に抑えることができ、材料費の低減を行うことができる。
【0026】
本発明の請求項5に係る肉盛りバルブシートの製造方法によれば、安定した粉末供給が行えるのに併せて、エンジン稼働時に要求される耐摩耗性,耐久性等に優れた肉盛りバルブシートを形成することができる。
【0027】
本発明の請求項6に係る肉盛りバルブシートの製造方法によれば、肉盛り用の粉末を溶融させるために必要な熱エネルギを十分に得ることができ、未溶着によるクラックの発生等を防止することができる。また、肉盛り加工の際にシリンダヘッドの素材が肉盛り層を希釈することが極力抑制され、この希釈によるクラックの発生等を防止することができる。
【0028】
これにより、生産性の向上、製造コストの低減等が達成される。
【0029】
本発明の請求項7に係る肉盛りバルブシートの製造方法によれば、環状の溝をなすバルブシート部のうち側壁に隣接する領域の溝の深さがそれ以外の領域の溝の深さに比べて浅く形成されていることから、粉末供給手段により供給される設定粉末供給量を一定にした状態で粉末の供給を行っても、バルブシート部の周方向全域において加工領域に供給される実際の粉末供給量が一定になり、これにより、未溶着によるクラック等がない所望の肉盛り形状を確実に安定して得ることができる。
【0030】
本発明の請求項8に係る肉盛りバルブシートの製造方法によれば、バルブシート部が隣接する側壁の高さを考慮して、バルブシート部の溝の深さを変化させることで、未溶着によるクラック等がない所望の肉盛りバルブシートを確実に形成することができる。すなわち、シリンダヘッドの素材にバルブシート部としての溝加工を施す際に、その溝深さを予め調節することのみで、均質な肉盛りバルブシートを形成することができ、これにより、製品の低コスト化、生産性の向上等が達成される。
【0031】
本発明の請求項9に係る肉盛りバルブシートの製造方法によれば、所望形状の肉盛りバルブシートをより確実に安定して形成することができ、これにより、製品の低コスト化、生産性の向上等が達成される。
【0032】
本発明の請求項10に係る肉盛りバルブシートの製造方法によれば、バルブシート部が側壁により密接している場合において、この側壁の高さを考慮してこの領域におけるバルブシート部の溝深さを変化させる、すなわち、他の領域に比べて浅くすること
で、所望形状の肉盛りバルブシートをより確実に安定して形成することができる。
【0033】
本発明の請求項11に係る肉盛りバルブシートの製造方法によれば、加工領域に供給される粉末量を確実に確保することができ、所望の肉盛り形状を得ることができる。
【0034】
本発明の請求項12に係る肉盛りバルブシートの製造方法によれば、肉盛り用の粉末を溶融するために必要な入熱を得ることができ、未溶着によるクラックの発生等を防止できる。従って、シリンダヘッドを設計する場合、肉盛り加工性を考慮したシリンダヘッドを予め設計することができ、これにより生産性に優れたシリンダヘッドをもたらすことが可能となる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0036】
図1は、本発明に係る肉盛りバルブシートの製造方法を適用するシリンダヘッドの下面の一部を示す底面図である。図1に示すように、シリンダヘッド1の下面1aには、凹状の燃焼室がエンジンの気筒数だけ形成されており、この燃焼室の上壁面1b上には、径の大きい吸気バルブ用のバルブシート部2aと、径の小さい排気バルブ用のバルブシート部2bとが、それぞれ2個ずつ形成されている。また、これらのバルブシート部2a,2bに挟まれた略中央部には、点火プラグを取り付ける点火プラグ孔3が設けられている。
【0037】
これらのバルブシート部2a,2bは、それぞれ環状の溝をなすように半径4.5mmのR溝に加工され、このR溝領域に肉盛り部5a,5bが施されて、これら肉盛り部5a,5bが所定のバルブシート形状に加工される。
【0038】
また、設計上の制約から、これらバルブシート部5a,5bは、少なくともその一部分が、燃焼室の上壁面1bとシリンダヘッドの下面1aとを接続する燃焼室の側壁1cに隣接する位置に形成されている。
【0039】
ところで、これらの所定の深さにR溝加工されたバルブシート部2a,2bに周方向に沿って金属粉末を供給して肉盛りを形成する際に、側壁1cに隣接する領域Aにおいては、飛散した粉末の一部がこの側壁1cにより跳ね返されてR溝部に投入され、このR溝部に実際に供給される粉末の量は、粉末供給手段により供給される設定粉末供給量よりも増加する傾向にある。
【0040】
図2は、図1中のC−C部における拡大断面図であり、本発明に係る種々の定義を説明するためのものである。図2に示すように、バルブシート部2aが隣接する領域における側壁1cの高さをH、バルブシート部2aのうち周方向において側壁1cに隣接する領域における溝の深さをD、側壁1cとバルブシート部とが隣接する領域において、下面1aに平行な方向における側壁1cとバルブシート部の外周部との間の距離をWとする。
【0041】
図3は、図1中のE−E部における拡大断面図であり、前述の如き飛散した粉末の一部を跳ね返す側壁1cを示すものである。図3に示すように、点Fの位置での側壁1cの高さHは約4mm、点Gの位置での側壁1cの高さHは約10mmあり、特にバルブシート部2aに隣接するところに位置する側壁1cの高さHが高くなる程、一般に、側壁が肉盛りの際の粉末供給量に及ぼす影響の度合が大きくなる傾向にある。
【0042】
また、下面1aに平行な方向における側壁1cとバルブシート部2aの外周部との間の距離Wが小さくなる程、側壁が肉盛りの際の粉末供給量に及ぼす影響の度合が大きくなる傾向にある。
【0043】
次に、ここで用いられる肉盛り粉末としては、例えば肉盛り部に硬質相を析出するような銅合金粉末を挙げることができる。
【0044】
その中でも特に、入熱量とのバランスを考慮して、粒径が50μm〜150μmの範囲のものを使用するのが好ましい。
【0045】
また、上述銅合金粉末としては、その成分組成が重量%で、Al:1.0〜5.0%、元素周期律表Va族元素であるV,Nb,Taのうち少なくとも1種:0.1〜5.0%、Si:1.0〜5.0%、場合によってはCo:5.0〜20.0%、同じく場合によってはFe及びNiの1種又は2種:5.0〜20.0%、同じく場合によってはMn:1.0〜10.0%を含有し、残部がCu及び不純物からなる組成を有するものを適用することができる。
【0046】
尚、本実施例では、肉盛り粉末として、成分組成が重量%で、Co:12.5%、Fe:6.4%、Ni:12.7%、Al:1.1%、V:1.9%、Nb:2.2%、Mn:1.2%、残部がCu及び不純物からなる銅合金粉末を使用した。
【0047】
さらに、その他の肉盛り加工条件としては、下記表1に示すものを適用することができる。
【0048】
【表1】
Figure 0003787957
【0049】
ここで用いるレーザビームとしては、表1に示すように、例えば、短径2mm,長径6mmの略線状に集光された長楕円光を採用することができ、これにより、肉盛り粉末を溶融するのに必要な入熱を十分に確保することができる。
【0050】
尚、これに限定されるものではなく、例えばスポット径2mmのレーザビームを肉盛りの幅方向にオシレートさせつつ照射させるオシレートレーザビームを採用することも可能である。
【0051】
以上のような条件の下で、シリンダヘッドに対して肉盛りバルブシートを形成する方法について、以下に説明する。尚、本実施例では、1998cc4気筒DOHCエンジン用のアルミニウム合金(JIS規格AC2A材)製シリンダヘッドを採用した。
【0052】
先ず、図2に示すように、バルブシート部2aを半径4.5mm、深さD=1.0mmのR溝に加工する。続いて、粉末供給手段として、例えば粉末の減少重量を測定できかつ0.5g/minの単位で供給量を制御できる粉末供給装置(不図示)を用いて、R溝部2aに銅合金粉末を供給しつつ、COレーザビームを照射して肉盛り加工を行う。
【0053】
この際、粉末の供給手法としては、バルブシート部2aのうち周方向において側壁1cに隣接する領域A(図1参照)以外の領域に対して粉末供給装置により供給される肉盛り粉末の設定粉末供給量をVo、側壁1cに隣接する領域Aに対して供給される肉盛り粉末の設定粉末供給量をV、係数をαとするとき、V=Vo−αHの関係を満たすように、すなわち、側壁1cに隣接する領域Aではそれ以外の領域に比べてαHだけ少ない量の粉末を供給することにする。尚、Hは粉末を供給する位置での側壁1cの高さである。
【0054】
ここで、バルブシート部が側壁1cに隣接する領域かどうかを判断する目安としては、例えば、側壁1cの高さHが0mm≦H≦10mmの範囲にあるところに対応するバルブシート部を隣接する領域Aと見なすものとする。
【0055】
また、Voの値が10g/minよりも大きい場合において、上述の関係式を適用するのが好ましい。尚、本実施例においては、Voの値を50g/min、係数αを0.6として、肉盛り加工を行った。
【0056】
以上のようにして得られた肉盛り部5aの高さを測定したところ、図4に示すような結果が得られた。尚、この測定は、図4(a)に示すように、肉盛り部5aを反時計回りに30度間隔で肉盛り方向に対して垂直に切断し、各々の切断面において、図5に示すように幅方向中央部の肉盛り高さを測定した。
【0057】
その結果、図4(b)に示すように、側壁1cに隣接する領域(約120度から240度の範囲)においても肉盛り高さが増加することはなく、それ以外の領域とほぼ同じような高さ(肉盛り高さは±0.2mmの範囲に収まっている)をもつ安定した肉盛り部5aが得られた。また、クラック等も発生しなかった。
【0058】
次に、バルブシート部の溝の深さを変化させて肉盛り加工を行う実施例について説明する。
【0059】
先ず、側壁1cとバルブシート部2aとが隣接する領域において、下面1aに平行な方向における側壁1cとバルブシート部2aの外周部との間の距離W(図2参照)が1mm、この領域における側壁1cの高さHが3mm<H<6mmとなるようなシリンダヘッド1を作製した。尚、このシリンダヘッド1の距離W,側壁高さHは、上述の値に限定されるものではなく、W<5mmの範囲に設定して適用することもでき、又、0mm≦H≦10mmとすることもできる。
【0060】
次に、バルブシート部2aを半径4.5mmのR溝に加工する。この際、R溝の深さは、バルブシート部2aのうち周方向において側壁1cに隣接する領域以外における溝の深さをDo、側壁1cに隣接する領域Aにおける溝の深さをD、係数をβとするとき、D=Do−βHの関係を満たすように、すなわち、側壁1cに隣接する領域Aではそれ以外の領域に比べてβHだけ浅く溝を形成する。ここで、Hは溝を加工する位置に対応する側壁1cの高さである。尚、本実施例では、Do=1.0mm、β=0.02として、溝加工を行った。
【0061】
次に、前述の粉末供給装置を用いて設定粉末供給量50g/min(一定)として、銅合金粉末を供給しつつCOレーザビームを照射して肉盛り加工を行った。尚、その他の加工条件は、前述実施例と同様に設定した。
【0062】
以上のようにして得られた肉盛り部5aにおけるクラックの発生数を調べたところ、図6(b)に示すような結果が得られた。尚、この結果は、本実施例に係る肉盛り部5aと、従来技術による肉盛り部とをそれぞれ50個形成し、図6(a)に示すような各々の角度位置におけるクラック数を累計してまとめたものである。
【0063】
図6(b)に示すように、従来の手法においては、側壁1cに隣接した領域(約120度から240度の範囲)で多数のクラックが確認されたが、本発明に係る手法ではクラックは確認されなかった。
【0064】
このように、上述の実施例によれば、欠陥のない肉盛りバルブシートを形成することができ、製品の歩留りが向上すなわち生産性が向上し、又、無駄になる製品が削減されて製品の低コスト化が達成される。
【0065】
尚、上述の実施例において、R溝の半径を4.5mmとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、3.5mm〜6.5mmの範囲で適用可能である。これによれば、加工領域に供給される粉末が効率良くR溝に保持されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る肉盛りバルブシートの製造方法が適用されるシリンダヘッドの下面の一部を示す底面図である。
【図2】 図1中のC−C部における拡大断面図である。
【図3】 図1中のE−E部における拡大断面図である。
【図4】 本発明に係る肉盛り部の肉盛り高さの測定結果を示すものであり、図4(a)は測定角度位置を示す底面図、図4(b)は図4(a)中に示す各々の角度位置における肉盛り高さを示す図である。
【図5】 図4に示す肉盛り高さの定義を説明するための図である。
【図6】 本発明に係る肉盛り部におけるクラックの発生状況を示すものであり、図6(a)は検査した角度位置を示す底面図、図6(b)は図6(a)中に示す各々の角度位置における本発明及び従来の技術によるクラックの発生数を示す図である。

Claims (12)

  1. シリンダヘッドの下面に形成された凹状の燃焼室の上壁面上でかつ前記下面と上壁面とを接続する側壁に隣接した位置に環状の溝をなすバルブシート部を形成し、前記バルブシート部に粉末供給手段から肉盛り粉末を供給しつつレーザビームを照射して溶着しバルブシートを形成する肉盛りバルブシートの製造方法であって、
    前記バルブシート部のレーザビーム照射領域に投入される前記肉盛り粉末の量を前記バルブシート部の周方向全域において一定とすべく、前記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接する隣接領域に対して前記粉末供給手段により供給される肉盛り粉末の設定粉末供給量を前記隣接領域以外の領域に供給されるものに比べて少なくすることを特徴とする肉盛りバルブシートの製造方法。
  2. 前記バルブシート部が隣接する領域における前記側壁の高さをH、前記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接する領域以外の領域に対して前記粉末供給手段により供給される肉盛り粉末の設定粉末供給量をVo、係数をαとするとき、前記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接する領域に対して前記粉末供給手段により供給される肉盛り粉末の設定粉末供給量Vは、
    V=Vo−α・H
    の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の肉盛りバルブシートの製造方法。
  3. 前記設定粉末供給量Voの値がVo>10g/min、前記側壁の高さHが0mm≦H≦10mmのとき、前記係数αがα=0.6であることを特徴とする請求項2記載の肉盛りバルブシートの製造方法。
  4. 前記肉盛り粉末として、粉径が50μm〜150μmの範囲でかつ硬質相を析出する銅合金粉末を用いることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つに記載の肉盛りバルブシートの製造方法。
  5. 前記銅合金粉末の基本組成は、重量%で、アルミニウム:1.0〜5.0%、元素周期律表Va族元素であるバナジウム,ニオブ,タンタルのうち少なくとも1種:0.1〜5.0%、シリコン:1.0〜5.0%、残部が銅及び不純物からなることを特徴とする請求項4記載の肉盛りバルブシートの製造方法。
  6. 前記レーザビームとして線状に集光したものを照射することを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つに記載の肉盛りバルブシートの製造方法。
  7. シリンダヘッドの下面に形成された凹状の燃焼室の上壁面上でかつ前記下面と上壁面とを接続する側壁に隣接した位置に環状の溝をなすバルブシート部を形成し、前記バルブシート部に粉末供給手段から肉盛り粉末を供給しつつレーザビームを照射して溶着しバルブシートを形成する肉盛りバルブシートの製造方法であって、
    下面に形成された燃焼室と、前記燃焼室の上壁面上でかつ前記下面と上壁面とを接続する側壁に隣接した位置に環状の溝をなすように形成されると共にバルブシートを形成すべく肉盛り粉末が溶着されるバルブシート部とを備えるシリンダヘッドであって、前記バルブシート部の溝の深さは、周方向において前記側壁に隣接する領域がそれ以外の領域に比べて浅く形成されており、
    前記バルブシート部のレーザビーム照射領域に投入される前記肉盛り粉末の量を前記バルブシート部の周方向全域において一定とすべく、前記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接する隣接領域に対して前記粉末供給手段により供給される肉盛り粉末の設定粉末供給量を前記隣接領域以外の領域に供給されるものに比べて少なくすることを特徴とする肉盛りバルブシートの製造方法
  8. 前記バルブシート部が隣接する領域における前記側壁の高さをH、前記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接する領域以外における溝の深さをDo、係数をβとするとき、前記バルブシート部のうち周方向において前記側壁に隣接する領域における溝の深さDは、
    D=Do−β・H
    の関係を満たすことを特徴とする請求項7記載の肉盛りバルブシートの製造方法
  9. 前記側壁の高さHが0mm≦H≦10mmのとき、前記係数βがβ=0.02であることを特徴とする請求項8記載の肉盛りバルブシートの製造方法
  10. 前記側壁とバルブシート部とが隣接する領域において、前記下面に平行な方向における前記側壁とバルブシート部の外周部との間の距離Wが、W<5mmであることを特徴とする請求項8又は9記載の肉盛りバルブシートの製造方法
  11. 前記バルブシート部の溝形状が、半径3.5mm〜6.5mmの範囲のR溝であることを特徴とする請求項7ないし10いずれか1つに記載の肉盛りバルブシートの製造方法
  12. 前記側壁の高さHが3mm〜6mmの範囲であることを特徴とする請求項7ないし11いずれか1つに記載の肉盛りバルブシートの製造方法
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