JPH11200238A - 糸の加工方法、波状糸、形状記憶糸、伸縮糸、布の加工方法、伸縮布、樹脂加工糸および樹脂加工布 - Google Patents

糸の加工方法、波状糸、形状記憶糸、伸縮糸、布の加工方法、伸縮布、樹脂加工糸および樹脂加工布

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JPH11200238A
JPH11200238A JP9360878A JP36087897A JPH11200238A JP H11200238 A JPH11200238 A JP H11200238A JP 9360878 A JP9360878 A JP 9360878A JP 36087897 A JP36087897 A JP 36087897A JP H11200238 A JPH11200238 A JP H11200238A
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cloth
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tencel
resin
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JP9360878A
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Kou Futamura
倖 二村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 例えばレーヨン等の風合いに優れたセルロー
ス繊維糸によって波状糸を作ることは困難で、耐洗濯性
を犠牲にしたり、耐張力性を犠牲にしなければならなか
った。 【解決手段】 セルロースを溶剤で溶かして空中で紡糸
するテンセル糸1は、セルロースの分子が高結晶、高配
向であり、このテンセル糸1を編み込んで、テンセル糸
1に一定のループの繰り返しを与える。その編地を所定
時間アルカリ溶液に浸してアルカリ化処理し、テンセル
のセルロースをアルカリセルロースにして軟化させる。
次に、所定時間酸化溶液に浸して酸処理し、テンセル糸
1の形状をその状態で固定化する。その後、水洗いし、
脱水、乾燥後、編地を解くと、テンセル糸1には一定の
ループの繰り返し形状が残っており、結果的にテンセル
の風合いを有した波状糸Wが得られ、耐洗濯性に優れ、
耐張力性にも優れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高配向再生セルロ
ース糸の加工方法、高配向再生セルロース糸による布の
加工方法、これらの加工方法によって得られる波状糸、
形状記憶糸、伸縮糸、伸縮布、樹脂加工糸および樹脂加
工布に関する。なお、この発明に示す高配向再生セルロ
ース糸は、セルロースの分子配列が一定方向に揃う高配
向性繊維を用いた糸で、リョウセル糸およびポリノジッ
ク糸を示すものである。
【0002】リョウセル糸は、テンセル(商標、以下商
標不表示)やレンチングリヨセル(商標、以下商標不表
示)など、リョウセル繊維100%の糸の他に、リョウ
セル繊維に他の繊維が含まれた糸を含むものとする。リ
ョウセル繊維とは、溶剤にセルロースを溶解し、空気中
で延伸して製造した繊維で、その特徴としては繊維中の
セルロースの鎖状分子が長く、分子配列が一定方向に揃
ういわゆる高結晶、高配向の乾湿式紡糸繊維である。そ
の代表的な繊維としては、上述のテンセル、レンキング
リヨセルなどが知られている。ポリノジック糸は、ポリ
ノジック繊維100%の糸の他に、ポリノジック繊維に
他の繊維が含まれた糸を含むものとする。
【0003】
【発明の背景】天然セルロース繊維や、再生セルロース
繊維(ビスコスレーヨン、キュプラ等)を用いた波状糸
(波形状を呈する糸)や、伸縮糸、伸縮布を製造するこ
とは困難であった。つまり、天然セルロース繊維や、再
生セルロース繊維は、加熱処理して一旦波形状にして
も、洗濯等によって波形が消失してしまう。また、波形
を固定させようとして、繊維表面に熱硬化性樹脂や熱可
塑性樹脂を含浸またはコーティングしても、耐洗濯性に
乏しく、長期に波形を保持するのは困難であった。そこ
で、本願発明者は、セルロース繊維の中でもセルロース
の分子が高配向のリョウセル糸とポリノジック糸に着目
し、耐張力性および耐洗濯性に優れる波状糸、形状記憶
糸、伸縮糸、伸縮布を製造する技術を開発した。
【0004】
【発明の目的】本発明の目的は、耐張力性や耐洗濯性に
優れたセルロース繊維による波状糸、伸縮糸、伸縮布を
製造する製造方法、およびその製造方法によって作られ
た波状糸、形状記憶糸、伸縮糸、伸縮布、樹脂加工糸、
樹脂加工布の提供にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は、次の技術的手段を採用した。 〔請求項1の手段〕糸の加工方法は、高配向再生セルロ
ース糸を編み込む編込工程と、この編込工程で得られた
編地をアルカリ化処理するアルカリ化工程と、このアル
カリ化工程でアルカリ化処理された前記編地を酸処理す
る中和工程と、この中和工程で酸処理された前記編地を
解いて糸に戻す解編工程と、を具備する。 〔請求項2の手段〕波状糸は、請求項1の糸の加工方法
によって製造されたことを特徴とする。
【0006】〔請求項3の手段〕糸の加工方法は、高配
向再生セルロース糸を編み込む編込工程と、この編込工
程で得られた編地をアルカリ化処理するアルカリ化工程
と、このアルカリ化工程でアルカリ化処理された前記編
地を酸処理する中和工程と、この中和工程で酸処理され
た前記編地を解いて糸に戻す解編工程と、この解編工程
で解編された糸に張力を与えて巻き取る巻取工程と、を
具備する。
【0007】〔請求項4の手段〕形状記憶糸は、請求項
3の糸の加工方法によって製造されたことを特徴とす
る。
【0008】〔請求項5の手段〕糸の加工方法は、高配
向再生セルロース糸をアルカリ化処理するアルカリ化工
程と、このアルカリ化工程でアルカリ化処理された前記
高配向再生セルロース糸を酸処理する中和工程と、を具
備する。
【0009】〔請求項6の手段〕伸縮糸は、請求項5の
糸の加工方法によって製造されたことを特徴とする。
【0010】〔請求項7の手段〕糸の加工方法は、高配
向再生セルロース糸をアルカリ化処理するアルカリ化工
程と、このアルカリ化工程でアルカリ化処理された前記
高配向再生セルロース糸を酸処理する中和工程と、この
中和工程で中和処理された糸に張力を与えて巻き取る巻
取工程と、を具備する。
【0011】〔請求項8の手段〕形状記憶糸は、請求項
7の糸の加工方法によって製造されたことを特徴とす
る。
【0012】〔請求項9の手段〕布の加工方法は、高配
向再生セルロース糸を用いて織られた布をアルカリ化処
理するアルカリ化工程と、このアルカリ化工程でアルカ
リ化処理された前記布を酸処理する中和工程と、を具備
する。
【0013】〔請求項10の手段〕伸縮布は、請求項9
の布の加工方法によって製造されたことを特徴とする。
【0014】〔請求項11の手段〕布の加工方法は、請
求項3または請求項7の巻取工程で張力が与えられて延
ばされた糸によって布を形成する布形成工程と、この布
形成工程によって形成された布に水分を付与し、布を収
縮させる収縮工程と、を具備する。
【0015】〔請求項12の手段〕伸縮布は、請求項1
1の布の加工方法によって製造されたことを特徴とす
る。
【0016】〔請求項13の手段〕糸または布の加工方
法は、請求項1、請求項3、請求項5、請求項7、請求
項9、請求項11のいずれかの糸または布の加工方法に
おいて、前記アルカリ化処理に用いられるアルカリ溶液
には、塩類が付与されてることを特徴とする。
【0017】〔請求項14の手段〕樹脂加工糸は、請求
項1、請求項3、請求項5、請求項7のいずれかの糸の
加工方法によって製造された糸には、熱硬化性樹脂ある
いは熱可塑性樹脂等の樹脂による樹脂加工が施されたも
のであることを特徴とする。
【0018】〔請求項15の手段〕樹脂加工布は、請求
項1、請求項3、請求項5、請求項7のいずれかの糸の
加工方法によって製造された糸で形成された布には、熱
硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂等の樹脂による樹脂加
工が施されたものであることを特徴とする。
【0019】〔請求項16の手段〕樹脂加工布は、請求
項9または請求項11の布の加工方法によって製造され
た布には、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂等の樹脂
による樹脂加工が施されたものであることを特徴とす
る。
【0020】
【発明の作用および発明の効果】〔請求項1および請求
項2の作用および効果〕まず、編込工程で高配向再生セ
ルロース糸を編み込み編地を作る。次に、アルカリ化工
程で編地をアルカリ化処理する。次に、中和工程で編地
を酸処理する。次に、解編工程で編地を解く。すると、
高配向再生セルロース糸による波状糸が得られる。
【0021】上記製造方法は、高配向再生セルロース糸
を形成している高配向のセルロースが、アルカリ化処理
によってアルカリセルロースに変化して軟化する。この
状態で酸処理されると、アルカリセルロースがセルロー
スに戻され、高配向再生セルロース糸がその形状のまま
で固定化される。このため、編地を解いた後も、高配向
再生セルロース糸は編み込まれた状態の形状、つまり波
形状を保つ。上記製造方法によって製造された波状糸
は、高配向再生セルロース糸の本来の特性がほぼ維持さ
れたままで波状糸に固定され、耐張力に優れるととも
に、洗濯によっても形状が波状に保たれる。
【0022】〔請求項3および請求項4の作用および効
果〕まず、編込工程で高配向再生セルロース糸を編み込
み編地を作る。次に、アルカリ化工程で編地をアルカリ
化処理する。次に、中和工程で編地を酸処理する。次
に、解編工程で編地を解く。すると、高配向再生セルロ
ース糸による波状糸が得られる。次に、巻取工程で波状
糸に張力を与えて巻き取る。すると、高配向再生セルロ
ース糸による波状糸が伸ばされた形状記憶糸が得られ
る。この伸ばされた形状記憶糸は、水分が与えられる
と、再び波状糸に戻るものである。
【0023】上記製造方法は、高配向再生セルロース糸
を形成している高配向のセルロースが、アルカリ化処理
によってアルカリセルロースに変化して軟化する。この
状態で酸処理されると、アルカリセルロースがセルロー
スに戻され、高配向再生セルロース糸がその形状のまま
で固定化される。このため、編地を解いた後も、高配向
再生セルロース糸は編み込まれた状態の形状、つまり波
形状を保つ。そして、張力が与えられて巻き取られるこ
とで形状記憶糸が得られるものであるため、上記製造方
法によって製造された形状記憶糸は、高配向再生セルロ
ース糸の本来の特性がほぼ維持されているため、耐張力
に優れるとともに、水分が与えられて波状糸に戻された
後は、洗濯によっても形状が波状に保たれる。
【0024】〔請求項5および請求項6の作用および効
果〕まず、高配向再生セルロース糸をアルカリ化工程で
アルカリ化処理する。次に、中和工程で高配向再生セル
ロース糸を酸処理する。すると、高配向再生セルロース
糸による伸縮糸が得られる。上記製造方法は、高配向再
生セルロース糸を形成しているリョウセル繊維のセルロ
ースが、アルカリ化処理によってアルカリセルロースに
変化して軟化するとともに、膨潤して、リョウセル繊維
が縮む。この状態で酸処理されると、アルカリセルロー
スがセルロースに戻され、リョウセル繊維が縮んだ状態
で固定され、乾燥されると膨潤していたリョウセル繊維
が細く戻り、結果的に繊維間に隙間が生じた高配向再生
セルロース糸が製造される。つまり、高配向再生セルロ
ース糸は、縮れた状態で固定化されるもので、繊維間に
隙間が生じているため、糸にスプリング効果が発生し、
結果的に伸縮できる。上記製造方法によって製造された
伸縮糸は、高配向再生セルロース糸の本来の特性がほぼ
維持されたままで伸縮糸に固定され、耐張力に優れると
ともに、洗濯によっても伸縮性が保たれる。
【0025】〔請求項7および請求項8の作用および効
果〕まず、高配向再生セルロース糸をアルカリ化工程で
アルカリ化処理する。次に、中和工程で高配向再生セル
ロース糸を酸処理する。すると、高配向再生セルロース
糸による伸縮糸が得られる。次に、巻取工程で伸縮糸に
張力を与えて巻き取る。すると、高配向再生セルロース
糸による伸縮糸が伸ばされた形状記憶糸が得られる。こ
の伸ばされた形状記憶糸は、水分が与えられると、再び
伸縮糸に戻るものである。
【0026】上記製造方法は、高配向再生セルロース糸
を形成しているリョウセル繊維のセルロースが、アルカ
リ化処理によってアルカリセルロースに変化して軟化す
るとともに、膨潤して、リョウセル繊維が縮む。この状
態で酸処理されると、アルカリセルロースがセルロース
に戻され、リョウセル繊維が縮んだ状態で固定され、乾
燥されると膨潤していたリョウセル繊維が細く戻り、結
果的に繊維間に隙間が生じた高配向再生セルロース糸が
製造される。つまり、高配向再生セルロース糸は、縮れ
た状態で固定化されるもので、繊維間に隙間が生じてい
るため、糸にスプリング効果が発生し、結果的に伸縮で
きる。そして、張力が与えられて巻き取られることで形
状記憶糸が得られるものであるため、上記製造方法によ
って製造された形状記憶糸は、高配向再生セルロース糸
の本来の特性がほぼ維持されているため、耐張力に優れ
るとともに、水分が与えられて波状糸に戻された後は、
洗濯によっても伸縮性が保たれる。
【0027】〔請求項9および請求項10の作用および
効果〕まず、高配向再生セルロース糸を用いて織られた
布をアルカリ化工程でアルカリ化処理する。次に、中和
工程で布を酸処理する。すると、伸縮性を有する布が得
られる。上記製造方法は、布中に用いられている高配向
再生セルロース糸のリョウセル繊維のセルロースが、ア
ルカリ化処理によってアルカリセルロースに変化して軟
化するとともに、膨潤して、リョウセル繊維が縮む。こ
の状態で酸処理されると、アルカリセルロースがセルロ
ースに戻され、リョウセル繊維が縮んだ状態で固定さ
れ、乾燥されると膨潤していたリョウセル繊維が細く戻
り、結果的に繊維間に隙間が生じた高配向再生セルロー
ス糸となり、結果的に布中の高配向再生セルロース糸に
スプリング効果が発生する。このように、スプリング効
果の発生する糸で布が構成されることとなり、布が伸縮
できる。上記製造方法によって製造された伸縮布は、高
配向再生セルロース糸の本来の特性がほぼ維持されたま
まで伸縮布に固定されるもので、耐張力に優れるととも
に、洗濯によっても伸縮性が保たれる。
【0028】〔請求項11および請求項12の作用およ
び効果〕請求項3または請求項7で得られた形状記憶糸
によって布を作る。次に、この布に水分を付与する。す
ると、形状記憶糸が波状糸(あるいは伸縮糸の縮んだ状
態)に戻る。この結果、布が縮んで、伸縮可能な布にな
る。上記製造方法は、この伸縮布を生成している形状記
憶糸は、高配向再生セルロース糸の本来の特性がほぼ維
持されているため、耐張力に優れるとともに、洗濯によ
っても伸縮性が保たれる。
【0029】〔請求項13の作用および効果〕高配向再
生セルロース糸(あるいは高配向再生セルロース布)を
アルカリ化処理するアルカリ溶液に塩類を付与したこと
により、セルロース繊維の強度低下をより小さく抑える
ことができる。また、塩類の添加量を変化させることに
より、仕上がりの風合いを変化させることができる。
【0030】〔請求項14の作用および効果〕波状糸、
伸縮糸あるいは形状記憶糸には、樹脂加工が施されてい
るため、ほつれを抑えることが可能になり、風合いの調
節が可能になり、発水性や発油性が向上できる。
【0031】〔請求項15および請求項16の作用およ
び効果〕布を構成する高配向再生セルロース糸には、樹
脂加工が施されているため、紡皺性に優れ、反発弾性が
向上し、寸法が安定化し、風合いの調節が可能になり、
発水性や発油性が向上できる。
【0032】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を、第
1〜第3実施例を用いて説明する。 〔第1実施例〕第1実施例を図1ないし図4を参照して
説明する。第1実施例に示す糸の加工方法は、まず、図
1に示す直線状のテンセル糸1(複数のテンセル繊維を
撚糸した糸で、高配向再生セルロース糸の一例)を編み
込む(編込工程)。この編込は、編み機によって自動的
に成されるもので、例えば図2に示すように環状に編み
込まれる。テンセル糸1が編み込まれることにより、図
3に示すように、テンセル糸1には一定のループが繰り
返し与えられる。なお、この実施例に示されるテンセル
糸1は、テンセル繊維100%の糸であっても良いし、
テンセル繊維に他の繊維(天然セルロース繊維、再生セ
ルロース繊維、合成繊維等)が含まれたテンセル混紡糸
であっても良い。
【0033】上記により得られた編地Aは、苛性ソー
ダ、苛性カリ、アンモニア水、アンモニウム塩基、炭酸
ソーダ等のアルカリ物質を含有する例えば5℃〜80℃
のアルカリ溶液に浸して30秒〜30分間アルカリ化処
理する(アルカリ化工程)。このアルカリ化処理によ
り、テンセル糸に含まれる高結晶、高配列のセルロース
がアルカリセルロースに変化する。ここで、アルカリ溶
液のアルカリ濃度は、5°〜40°Beを使用した。な
お、アルカリ溶液の温度が高いと結果的に軟らかい仕上
がりとなる。また、アルカリ溶液に塩類(例えば、食
塩、芒硝等の中性塩等)を添加すると強度低下をより低
く抑えれる。この塩類の添加は、例えば中性塩では、塩
を飽和状態にすることでより大きな効果が得られる。こ
のアルカリ化処理により、テンセル繊維中のセルロース
をアルカリセルロースに変化させることで、テンセル繊
維が軟化する。
【0034】アルカリ化処理後、編地Aを流水でよく水
洗いする。水洗いされた編地Aを、酢酸、蟻酸、硫酸等
の酸物質を含有する酸溶液に浸して3分〜30分間酸処
理する(中和工程)。この酸処理により、軟化していた
アルカリセルロースが再びセルロースに戻され、その形
状のままで固定化される。つまり、テンセル糸1の形状
が一定の繰り返しループに固定される。
【0035】酸処理された編地Aを流水でよく水洗い
し、脱水、乾燥させる。その後、乾燥した編地Aを解い
て糸に戻す(解編工程)。上記の酸処理によってテンセ
ル糸1には、一定の繰り返しループが固定されているた
め、解編しても、図4に示すように、テンセル糸1に
は、一定の繰り返しループが残り、結果的に波状糸Wと
なる。
【0036】上記製造方法は、テンセル糸1を形成して
いる高結晶、高配向のセルロースをアルカリ化処理して
軟化させて、編地Aによりテンセル糸1を波形にし、酸
処理でアルカリセルロースをセルロースに戻してテンセ
ル糸1の形状を固定化する技術であり、この結果得られ
た波状糸Wはテンセル本来の性質を保つ。このため、こ
のテンセル糸1による波状糸Wは、分繊化、酵素処理に
よるピーチ加工、染色性、染色堅牢性、風合いに優れ
る。
【0037】また、上記製造方法によって得られた波状
糸Wは、アルカリセルロースからセルロースに戻される
際に形状が固定されているため、湿度を含むと波形が消
えたり、洗濯時に波形が消えたりする不具合がなく、半
永久的に波形を保つことができる。さらに、この波状糸
Wは、テンセル本来の性質が保たれるため、耐張力にも
優れる。
【0038】〔第2実施例〕第2実施例を図5および図
6を参照して説明する。なお、図5および図6はテンセ
ル糸の顕微鏡写真である。第2実施例に示す糸の加工方
法は、テンセル糸{複数のテンセル繊維を撚糸した糸
で、高配向再生セルロース糸の一例、図5、図6の
(a)参照}を、第1実施例同様のアルカリ溶液に浸
し、所定時間アルカリ化処理する(アルカリ化工程)。
【0039】なお、この実施例に示されるテンセル糸
は、テンセル繊維100%の糸であっても良いし、テン
セル繊維に他の繊維(天然セルロース繊維、再生セルロ
ース繊維、合成繊維等)が含まれたテンセル混紡糸であ
っても良い。このアルカリ化処理により、テンセル糸を
形成しているテンセル繊維のセルロースが、アルカリセ
ルロースに変化して軟化するとともに、膨潤して、テン
セル繊維が縮み、結果的にテンセル糸の撚りの密度が高
まり、テンセル糸も縮む{図5の(b)参照}。
【0040】アルカリ化処理後、テンセル糸を流水でよ
く水洗いし、第1実施例同様の酸溶液に浸し、所定温度
で所定時間酸処理する(中和工程)。この酸処理によ
り、アルカリセルロースがセルロースに戻され、テンセ
ル繊維が縮んだ状態で固定される。そして、酸処理され
たテンセル糸を流水で良く水洗いし、脱水して乾燥させ
ると、膨潤していたテンセル繊維が細く戻り、結果的に
図6の(b)に示すようにテンセル繊維間に隙間が生じ
たテンセル糸が製造される。つまり、テンセル糸は、図
5、図6の(b)に示すように縮れた状態で固定化され
るとともに、繊維間に隙間が生じているため、糸にスプ
リング効果が発生し、結果的に伸縮できる。
【0041】次に、上記アルカリ化処理で用いられるア
ルカリ溶液の濃度と、伸縮による伸度との関係を、次の
表1に示す。なお、この表1では、テンセル繊維100
%のテンセル糸を用い、アルカリ溶液の温度を15℃と
し、処理時間を30分としたものである。
【表1】
【0042】上記製造方法によって得られるテンセル糸
による伸縮糸は、高結晶、高配向のセルロースをアルカ
リ化処理によってアルカリセルロースに変化して、軟
化、膨潤させ、この状態で酸処理してアルカリセルロー
スをセルロースに戻し、テンセル繊維を縮んだ状態で固
定するとともに、乾燥後に繊維間に隙間を生じさせる技
術であり、この結果得られた伸縮糸はテンセル糸本来の
性質を保つ。このため、このテンセル糸による伸縮糸
は、分繊化、酵素処理によるピーチ加工、染色性、染色
堅牢性、風合いに優れる。
【0043】また、上記製造方法によって得られたテン
セル糸による伸縮糸は、アルカリセルロースからセルロ
ースに戻される際に形状が固定されているため、湿度を
含むと伸縮性が消えたり、洗濯時に伸縮性が消えたりす
る不具合がなく、半永久的に伸縮性を保つことができ
る。さらに、この伸縮糸は、テンセル糸本来の性質が保
たれるため、耐張力にも優れる。
【0044】〔第3実施例〕第3実施例に示す布の加工
方法は、テンセル布(テンセル糸によって織られた布、
高配向再生セルロース糸を用いて織られた布の一例)
を、第1実施例同様のアルカリ溶液に浸し、所定時間ア
ルカリ化処理する(アルカリ化工程)。なお、この実施
例に示されるテンセル布は、テンセル繊維100%の糸
で織った布であっても良いし、テンセル繊維に他の繊維
(天然セルロース繊維、合成セルロース繊維等)が含ま
れた糸で織った布であっても良いし、テンセル糸と他の
糸とを用いて織られた交織布であっても良い。このアル
カリ化処理により、第2実施例で示したように、テンセ
ル糸を形成しているテンセル繊維のセルロースが、アル
カリセルロースに変化して軟化するとともに、膨潤し
て、テンセル繊維が縮み、結果的にテンセル糸の撚りの
密度が高まり、結果的にテンセル布が縮む。
【0045】アルカリ化処理後、テンセル布を流水でよ
く水洗いし、第1実施例同様の酸溶液に浸し、所定温度
で所定時間酸処理する(中和工程)。この酸処理によ
り、アルカリセルロースがセルロースに戻され、テンセ
ル繊維が縮んだ状態で固定される。そして、酸処理され
たテンセル布を流水で良く水洗いし、脱水して乾燥させ
ると、第2実施例で示したように、膨潤していたテンセ
ル繊維が細く戻り、テンセル繊維間に隙間が生じたテン
セル糸となり、テンセル糸にスプリング効果が発生し、
結果的にテンセル布が伸縮できる。
【0046】上記製造方法によって得られるテンセル布
による伸縮布は、テンセル布中に含まれるテンセルの高
結晶、高配向のセルロースをアルカリ化処理によってア
ルカリセルロースに変化して、軟化、膨潤させ、この状
態で酸処理してアルカリセルロースをセルロースに戻
し、テンセル繊維を縮んだ状態で固定するとともに、乾
燥後に繊維間に隙間を生じさせる技術であり、この結果
得られた伸縮布はテンセル布本来の性質を保つ。このた
め、このテンセル布による伸縮布は、分繊化、酵素処理
によるピーチ加工、染色性、染色堅牢性、風合いに優れ
る。
【0047】また、上記製造方法によって得られたテン
セル布による伸縮布は、アルカリセルロースからセルロ
ースに戻される際に形状が固定されているため、湿度を
含むと伸縮性が消えたり、洗濯時に伸縮性が消えたりす
る不具合がなく、半永久的に伸縮性を保つことができ
る。さらに、この伸縮布は、テンセル布本来の性質が保
たれるため、耐張力にも優れる。
【0048】〔変形例〕上記の第1、第2実施例で得ら
れた波状糸Wや伸縮糸に張力を与えて巻き取って形状記
憶糸を製造しても良い(巻取工程)。こうすることで、
波状糸Wや伸縮糸は一旦伸びるが、水分を付与すること
によって(収縮工程)、伸ばされていた糸は再び、波状
糸Wや伸縮糸に戻る。また、上記の形状記憶糸を用いて
布を形成しても良い(布形成工程)。布の形成は、織
物、編み物など既存の技術によるものである。そして、
形成された布に水分を付与することによって(収縮工
程)、布を構成する糸が波状糸Wまたは伸縮糸に戻り、
結果的に布が縮むとともに、伸縮布になる。
【0049】上記実施例や上記変形例中で示した波状糸
W、伸縮糸、形状記憶糸に熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂
などを用いて樹脂加工を施して樹脂加工糸を形成しても
良い。上記実施例や上記変形例中で示した波状糸W、伸
縮糸、形状記憶糸で形成した布に熱硬化性樹脂や熱可塑
性樹脂などを用いて樹脂加工を施して伸縮可能な樹脂加
工布を形成しても良い。上記変形例中で示した伸縮布に
熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などを用いて樹脂加工を施
して伸縮可能な樹脂加工布を形成しても良い。
【0050】上記の例では、高配向再生セルロース繊維
の一例として、リョウセル繊維のテンセルを例に示した
が、レンチングリヨセルなど、他のリョウセル繊維を用
いても良い。また、高配向再生セルロース繊維の一例と
して、リョウセル繊維を例に示したが、ポリノジック繊
維を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】処理前のテンセル糸を示す図である(第1実施
例)。
【図2】環状に編み込まれた編地を示す図である(第1
実施例)。
【図3】編地の拡大図である(第1実施例)。
【図4】処理によって得られた波状糸を示す図である
(第1実施例)。
【図5】テンセル糸の処理前および処理後の顕微鏡写真
である(第2実施例)。
【図6】テンセル糸の処理前および処理後の顕微鏡写真
である(第2実施例)。
【符号の説明】
1 テンセル糸(高配向再生セルロース糸) A 編地 W 波状糸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI D06M 1/14 1/22

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高配向再生セルロース糸を編み込む編込工
    程と、 この編込工程で得られた編地をアルカリ化処理するアル
    カリ化工程と、 このアルカリ化工程でアルカリ化処理された前記編地を
    酸処理する中和工程と、 この中和工程で酸処理された前記編地を解いて糸に戻す
    解編工程と、を具備する糸の加工方法。
  2. 【請求項2】請求項1の糸の加工方法によって製造され
    た波状糸。
  3. 【請求項3】高配向再生セルロース糸を編み込む編込工
    程と、 この編込工程で得られた編地をアルカリ化処理するアル
    カリ化工程と、 このアルカリ化工程でアルカリ化処理された前記編地を
    酸処理する中和工程と、 この中和工程で酸処理された前記編地を解いて糸に戻す
    解編工程と、 この解編工程で解編された糸に張力を与えて巻き取る巻
    取工程と、を具備する糸の加工方法。
  4. 【請求項4】請求項3の糸の加工方法によって製造され
    た形状記憶糸。
  5. 【請求項5】高配向再生セルロース糸をアルカリ化処理
    するアルカリ化工程と、 このアルカリ化工程でアルカリ化処理された前記高配向
    再生セルロース糸を酸処理する中和工程と、を具備する
    糸の加工方法。
  6. 【請求項6】請求項5の糸の加工方法によって製造され
    た伸縮糸。
  7. 【請求項7】高配向再生セルロース糸をアルカリ化処理
    するアルカリ化工程と、 このアルカリ化工程でアルカリ化処理された前記高配向
    再生セルロース糸を酸処理する中和工程と、 この中和工程で中和処理された糸に張力を与えて巻き取
    る巻取工程と、を具備する糸の加工方法。
  8. 【請求項8】請求項7の糸の加工方法によって製造され
    た形状記憶糸。
  9. 【請求項9】高配向再生セルロース糸を用いて織られた
    布をアルカリ化処理するアルカリ化工程と、 このアルカリ化工程でアルカリ化処理された前記布を酸
    処理する中和工程と、を具備する布の加工方法。
  10. 【請求項10】請求項9の布の加工方法によって製造さ
    れた伸縮布。
  11. 【請求項11】請求項3または請求項7の巻取工程で張
    力が与えられて延ばされた糸によって布を形成する布形
    成工程と、 この布形成工程によって形成された布に水分を付与し、
    布を収縮させる収縮工程と、を具備する布の加工方法。
  12. 【請求項12】請求項11の布の加工方法によって製造
    された伸縮布。
  13. 【請求項13】請求項1、請求項3、請求項5、請求項
    7、請求項9、請求項11のいずれかの糸または布の加
    工方法において、 前記アルカリ化処理に用いられるアルカリ溶液には、塩
    類が付与されてることを特徴とする糸または布の加工方
    法。
  14. 【請求項14】請求項1、請求項3、請求項5、請求項
    7のいずれかの糸の加工方法によって製造された糸に
    は、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂等の樹脂による
    樹脂加工が施されたことを特徴とする樹脂加工糸。
  15. 【請求項15】請求項1、請求項3、請求項5、請求項
    7のいずれかの糸の加工方法によって製造された糸で形
    成された布には、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂等
    の樹脂による樹脂加工が施されたことを特徴とする樹脂
    加工布。
  16. 【請求項16】請求項9または請求項11の布の加工方
    法によって製造された布には、熱硬化性樹脂あるいは熱
    可塑性樹脂等の樹脂による樹脂加工が施されたことを特
    徴とする樹脂加工布。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111005108A (zh) * 2019-12-25 2020-04-14 际华三五零九纺织有限公司 一种天丝纯纺高支纱及其生产方法和用途

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