JPH11189860A - 摺動部材 - Google Patents
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Abstract
ク性を改善し、耐久性に優れた摺動部材を提供する。 【解決手段】 ピストンリング1の全表面にガス窒化層
2を形成し、外周面のガス窒化層2上にCrN系のPV
D皮膜3を被覆する。PVD皮膜3はCrNの結晶中に
0.5〜20重量%の酸素を固溶しており、空孔が1〜
15%分散しており、CrNの結晶は被覆面に平行に
(200)の優先方位を有する。PVD皮膜3の硬度は
HV1000〜1800の範囲にある。ピストンリング
1の外周面に被覆する耐摩耗性皮膜4例えば窒化クロム
系のPVD皮膜(CrN系やCr2 N系のPVD皮膜)
の下地皮膜として前記CrN系のPVD皮膜3を被覆す
ることができる。
Description
皮膜を被覆した摺動部材(例えば内燃機関用のピストン
リングあるいは回転圧縮機のベーン)に関する。
膜の改良について以下の技術がある。 1.特開平6−248425号 空孔率が1.5〜20%であるCrNからなり、厚さが
1〜80μmの皮膜を、ピストンリングの外周面に形成
して、ピッチング疲労に起因する皮膜剥離を抑制する。
この皮膜は、次の特徴を有している。 ・皮膜の厚さ方向に成長した柱状結晶組織を有する。 ・外周面に平行な(111)優先方位を有する。 ・イオンプレーティング法により、被覆する。 ・硬度がHV600〜1000である。 なお、(111)優先方位に関しては、特開平6−29
3954号も重要な要件であることを記載している。 2.特開平6−265023号 CrNの結晶構造中に3〜20重量%の酸素を固溶させ
て、耐焼き付き性と靱性を改良する。皮膜はHV160
0〜2200の硬度を有する。
0)優先方位を有するCrN系のPVD皮膜が耐クラッ
ク性に優れていることの記載は無く、(200)優先方
位と指定の空孔率を備えた皮膜が耐クラック性に優れて
いることについての示唆は全くない。
過酷な条件で使用できるよう、CrN系のPVD皮膜の
耐クラック性、耐剥離性を改善し、耐久性に優れた摺動
部材を提供することにある。
VD皮膜が被覆された摺動部材において、前記CrNの
結晶中に0.5〜20重量%の酸素が固溶されており、
前記皮膜中に空孔が1〜15%分散しており、前記Cr
Nの結晶が被覆面に平行に(200)の優先方位を持つ
ことを特徴とする。
上、HV1800以下が好ましく、HV1600以下が
より望ましい。HV1000未満では耐摩耗性が低下
し、HV1800を越えると相手攻撃性が増す不都合を
生じる。
響する。空孔率が1%未満であるとクラック抑制の効果
が無く、15%を越えると硬度低下や耐摩耗性が低下す
る不都合がある。空孔率が3〜15%で、皮膜硬度がH
V1000〜1600の範囲にあるのがより望ましい。
の靱性に影響する。酸素固溶量が0.5重量%を下回る
と耐焼き付き性および皮膜の靱性の改善効果が得られ
ず、20重量%を越えるとクロム酸化物が析出して皮膜
の靱性が低下する。より望ましい範囲は2〜15重量%
である。
つのがよく、CrNの結晶が(111)、(311)、
(220)の優先方位を持つ皮膜は(200)の優先方
位を持つ皮膜に比較して脆弱である。
れ、その厚さは1〜120μmの範囲にあるのが好まし
い。
する他、前記PVD皮膜を、摺動面に被覆される耐摩耗
性皮膜例えば窒化クロム系のPVD皮膜(CrN系やC
r2N系のPVD皮膜)の下に被覆することにより、耐
剥離性を改善することができる。
本発明の効果を損なわない範囲内であれば、PVD過程
で不可避的に形成されるマイクロバーティクルによるC
r相やCr2 N相が混入した皮膜も含むものとする。
ング等の内燃機関構成部品や回転圧縮機のベーン等があ
る。
より説明する。
全表面にガス窒化層2が20〜90μmの厚さで形成さ
れており、外周面のガス窒化層2上にCrN系のPVD
皮膜3が1〜120μmの厚さで被覆されている。Cr
N系のPVD皮膜3は、CrNの結晶中に0.5〜20
重量%の酸素が固溶されており、皮膜中に空孔が1〜1
5%分散しており、CrNの結晶が被覆面に平行に(2
00)の優先方位を有しており、硬度はHV1000〜
1800の範囲にある。
性皮膜の耐剥離性を改善するために耐摩耗性皮膜の下に
上記CrN系のPVD皮膜を被覆する。すなわち、ピス
トンリング1の全表面にガス窒化層2が20〜90μm
の厚さで形成されており、外周面のガス窒化層2上に前
記CrN系のPVD皮膜3が1〜50μmの厚さで被覆
されており、更にその上に、耐摩耗性皮膜4例えば窒化
クロム系のPVD皮膜(CrN系やCr2 N系のPVD
皮膜)が1〜90μmの厚さで被覆されている。
は、金属Crを蒸発源とし、窒素ガスと酸素ガスをプロ
セスガスとするイオンプレーティング法によって被覆す
ることができる。PVD皮膜中に空孔を分布させるに
は、バイアス電圧を小さくし、プロセスガス圧力を大き
くすることで可能である。PVD法により析出するCr
N結晶の優先方位は、一般的に、バイアス電圧、プロセ
スガス等の要因によって複雑に変化するといわれてい
る。本発明者がアークイオンプレーティング装置を使用
して試験したところ、優先方位は、バイアス電圧とプロ
セスガス中の酸素分圧比によってコントロールするのが
最も容易であった。表1は、種々の条件において析出す
るCrN結晶の優先方位を示したものである。
使用して作製した種々のCrN系のPVD皮膜の特性
と、ファンデアホルスト摩擦試験機によってクラックの
発生荷重を測定した結果を説明する。
ィフラクトメータによる回折図形で決定した。また、空
孔率は、表面をラッピング後、画像解析装置を用いて測
定した。酸素量の分析は、X線マイクロアナライザで行
った。
孔率、優先方位および皮膜硬度の特性と、クラック発生
荷重を一括して表2に示す。
デアホルスト摩擦試験機を図2により説明する。試験片
10であるピストンリングが水平軸を中心に回転するロ
ータ11の外周面12の上端に配設され、試験片10で
あるピストンリングに荷重Pが作用されてロータ11の
外周面12上に押接される。この状態で、試験片10で
あるピストンリングとロータ11の接触部分に潤滑油を
供給しながらロータ11を回転させる。種々の荷重で所
定時間運転したとき、摺動面にクラックが発生している
かどうかを顕微鏡で観察した。
る。表中の比較例1,2は、それぞれ従来技術の項で説
明した、特開平6−248425号、特開平6−265
023号の皮膜である。比較例3は比較例2の皮膜を更
に改善したものであり、CrN結晶中に酸素が固溶した
PVD皮膜の酸素固溶量を母材側から表面側に向かって
増加させている。これらのクラック発生荷重は120N
以下である。比較例4,5,6は酸素固溶量が指定範囲
を外れたものであり、クラック発生荷重は50N以下で
ある。比較例7,8は空孔率が指定範囲を外れたもので
あり、クラック発生荷重は100Nである。比較例9は
優先方位が(200)以外のものであり、クラック発生
荷重は100Nである。
5,6はクラック発生荷重が130N以上であり、特
に、実施例1,2,3はクラック発生荷重が150Nよ
り大きい結果を示している。
る。
ック発生荷重が高かった比較例3の皮膜と、実施例1,
2,3の皮膜とを、トップリングの外周面に被覆して、
エンジン実験を行った。エンジンはボア径94mm、4
気筒、4ストロークのディーゼルエンジンを使用した。
このエンジンを全負荷の条件で300時間運転した後、
トップリングの外周面を観察した。その結果を表3に示
す。表3に示されているように、実施例1〜3はクラッ
クおよび剥離がない。
PVD皮膜を被覆した摺動部材は、皮膜の耐クラック
性、耐剥離性が優れ、優れた耐久性を有する。
(b)はそれぞれピストンリングの一部分を示す縦断面
図である。
おり、(a)は一部断面正面図、(b)は側面図であ
る。
Claims (10)
- 【請求項1】 CrN系のPVD皮膜が被覆された摺動
部材において、前記CrNの結晶中に0.5〜20重量
%の酸素が固溶されており、前記皮膜中に空孔が1〜1
5%分散しており、前記CrNの結晶が被覆面に平行に
(200)の優先方位を持つことを特徴とする摺動部
材。 - 【請求項2】 前記PVD皮膜の硬度がHV1000〜
1800の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の
摺動部材。 - 【請求項3】 前記PVD皮膜の硬度がHV1000〜
1600の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の
摺動部材。 - 【請求項4】 前記PVD皮膜が摺動面に被覆されてい
ることを特徴とする請求項1,2または3記載の摺動部
材。 - 【請求項5】 前記PVD皮膜の厚さが1〜120μm
の範囲にあることを特徴とする請求項4記載の摺動部
材。 - 【請求項6】 前記PVD皮膜が摺動面に被覆されてい
る耐摩耗性皮膜の下に被覆されていることを特徴とする
請求項1,2または3記載の摺動部材。 - 【請求項7】 前記耐摩耗性皮膜がPVD皮膜であるこ
とを特徴とする請求項6記載の摺動部材。 - 【請求項8】 前記耐摩耗性皮膜が窒化クロム系のPV
D皮膜であることを特徴とする請求項6記載の摺動部
材。 - 【請求項9】 前記摺動部材がピストンリングであるこ
とを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の摺動部
材。 - 【請求項10】 前記摺動部材がピストンリングである
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の摺動
部材。
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