JP3654918B2 - 摺動材料 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、CrN の皮膜を有する耐摩耗性および耐焼き付き性に優れた摺動材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば自動車のエンジン部品、各種機械部品などの摺動部には摺動特性に優れた皮膜を表面処理により形成した摺動部品が使用されている。従来より行われている表面処理方法には、窒化処理、クロムめっき処理、モリブデン溶射処理などの方法がある。
しかし、近年摺動部品の使用条件が高速度化かつ高荷重化するに伴い、部品に要求される摺動特性はますます過酷なものとなり、従来の表面処理では対応できない場合が生じてきて、更に優れた耐摩耗性及び耐焼付性を有する皮膜が望まれていた。
【0003】
このような要請に対し、最近PVD(Physical Vapor Deposition)法により摺動部材の摺動面に金属窒化物や金属炭化物等の皮膜を被覆することが提案されている。
TiN 、TiC 、CrN 等のPVD皮膜は、優れた耐摩耗性、耐焼付性を示しており、特に窒化チタンや窒化クロムなどが実用化可能な皮膜として注目され、一部の機械部品やエンジン部品で使用されている。
【0004】
しかし、現在では使用条件がさらに苛酷になり、これら窒化チタンや窒化クロムを用いても、摺動特性が充分とは言えない状況が生じている。特に摺動運動に加え摺動面に法線方向の振動運動が相乗し、接触面が離れることが生じる場合、または摺動運動において法線方向の荷重が変動する場合など摺動条件が厳しい使用条件下では、イオンプレーティングによる窒化クロム皮膜をはじめとする硬質皮膜において欠け状剥離が発生し、摺動材料の寿命を短くすることがある。また使用温度が高かったり、接触荷重が大きく摺動部分に潤滑油膜が形成されにくい場合など潤滑条件が厳しい使用条件下でも同様な硬質皮膜の欠け状剥離が観察される。そこで現状の表面処理よりも耐剥離性に優れたセラミックスコーティング皮膜を被覆した摺動材料が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、厳しい使用条件下でも欠け状剥離が発生せず、同時に耐摩耗性、耐焼き付き性に優れたPVD処理による CrN の皮膜を被覆した摺動材料を提供することである。
【0006】
【問題を解決するための手段とその作用】
上記問題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、PVD法によりクロムおよび窒素を混合した気相を基材に接触させ、基材の表面上にCrN の皮膜を形成させ、その際、皮膜の破断面結晶が基材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態とすること、さらに皮膜の空孔率を1.5〜20%に限定することにより、欠け状剥離が発生しにくく、かつ耐摩耗性、耐焼き付き性に優れた摺動材料が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の摺動材料は、PVD処理によるCrN の皮膜を基材上に被覆してなる摺動材料であって、前記皮膜の破断面結晶が基材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有し、前記皮膜が摺動面に平行な(111)面が方位配向し、前記皮膜の微小硬さが表面から測定して HmV 600〜1000の値を有し、かつ前記皮膜の空孔率が1.5〜20%であることを特徴とする。
【0008】
皮膜を被覆する基材は、鉄系材料、アルミ系材料、および、チタン系材料の中から用途により適宜選択する。以下詳しく説明するPVD法は、CVD(Chemical Vapor Deposition) 法などに比べ低温処理に類するが、蒸着現象による入熱は避けられないので、できれば耐熱性のある鉄系材料およびチタン材料を基材として使用することが好ましい。
【0009】
本発明の摺動材料における皮膜は、CrN よりなり、かつ皮膜破断面の結晶が基材表面から皮膜表面に向かって柱状なる形態を有する。破断面が柱状結晶で有る皮膜は、ピッチングによると考えられる欠け状剥離が発生しにくい。
またCrN の皮膜は、緻密性が高くなると皮膜が脆くなり、欠け状剥離が発生しやすくなる。CrN の理論密度は6.14g/cm3 であるが、剥離を防止するためには、皮膜空孔率を1.5%以上とすることが必要である。一方、皮膜空孔率をあまり高くすると、硬さが低下し、耐摩耗性が劣化する。従って、皮膜空孔率の上限を20%とすることが必要である。空孔率は得られた皮膜の密度を測定することにより、理論密度との比として容易に計算できる。
皮膜硬さは、皮膜の結晶形態、皮膜空孔率、結晶配向により影響を受ける。本発明皮膜の硬さは、表面から測定してHmV で約600から1000程度である。
またCrN の皮膜において、さらに耐剥離性を向上するために、摺動面に平行に(111)面を方位配向させることは、なお一層効果がある。
【0010】
皮膜の厚みは1〜80μm、特に好ましくは35〜50μmであることが好ましい。皮膜の厚みが1μm未満の場合、摩耗により皮膜の寿命が短い。一方、皮膜の厚みが50μmを超える場合、皮膜が剥離したり、皮膜に亀裂が生じたりすることがあり、基材との密着力が低下する。また必要以上に皮膜を厚くすることは、経済上好ましくない。
【0011】
本発明においては、PVD法によりクロムおよび窒素を混合した気相と基材とを接触させる。PVD法は、皮膜を形成する技術の一種であり、基本的には蒸着スパッタリング、イオンプレーティングの三法に分類できる。
特に、本発明においては、クロムの蒸気物質を窒素と反応させてCrN の皮膜を基材上に堆積させる反応性イオンプレーティング法が最も好ましい。
クロムの蒸気は、HCDガンや電子ビームなどの高エネルギービームをクロムに照射し、蒸発させることにより得る。また陰極アークプラズマ式イオンプレーティング法、およびスパッタリング法のように、陰極からクロム粒子を飛出させることにより、クロム蒸気を得てもよい。
そのクロム蒸気に窒素を混合した気相中でプラズマを発生させると、クロムはイオン化し、窒素イオンと化合しCrN の化合物を生成する。その結果、基材表面にCrN の皮膜が形成される。
【0012】
以下において、イオンプレーティング法を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されない。
まず、基材を洗浄し、表面に付着した汚れを取り、充分清浄化してイオンプレーティング装置の真空チャンバー内に挿入する。チャンバー内圧力が1.3×10-3〜5×10-3Paになるまで真空引きを行なってから、イオンプレーティング装置に内蔵されているヒーターにより加熱して基材の内在ガスを放出させる。加熱温度は300〜500℃とするのが好ましい。その後100〜400℃まで冷却する。
チャンバー内圧力が4×10-3Pa以下になった時点でターゲットであるクロムを陰極として、その表面でアーク放電を発生させクロムイオンを飛び出させる。この際、基材にはバイアス電圧を印加しておき、陰極より飛び出した金属イオンを基板表面に高エネルギーで衝突させる方法、いわゆるボンバードクリーニングにより基材表面の酸化物除去と活性化処理を行う。そのときのバイアス電圧は−700〜−900Vとするのが好ましい。
その後バイアス電圧を低下させ、クロムイオンを基材表面に堆積させながら、窒素ガスをチャンバー内に導入し、プラズマ内を通過させる。それにより窒素をイオン化して、窒素分圧を1.3×10-1〜13.3Pa程度にして、バイアス電圧を0〜−100V印加して基材表面にイオンプレーティング皮膜を形成させる。皮膜形成後、真空チャンバー内で200℃以下になるまで冷却してから、摺動材料をチャンバーから取り出す。皮膜の空孔率は使用する圧力を調整することにより制御できる。
以上の方法により、皮膜破断面結晶が柱状の形態を示し、所定の空孔率を有する耐摩耗性及び焼き付き性に優れたCrN の皮膜を摺動材料の摺動面に形成することができる。
【0013】
以上がCrN の皮膜を皮膜破断面の結晶が柱状なる形態で基材に形成させる方法であるが、本発明においては皮膜と基材との間に金属下地層を介在させてもよい。上述における皮膜形成の工程中、窒素ガスの導入前にイオンプレーティングを行うと基材にクロム金属の下地層が形成される。このクロム金属の下地層は、熱膨張率が基材に近く、熱応力の影響を受けにくいため、密着性は良好で柔軟性に富む。クロム金属の下地層は0.1〜2μmの厚さに形成するのが好ましい。0.1μm未満では効果が密着性向上の効果が薄く、0.1〜2μmの厚さで充分な効果を示す。また2μmを超えてもそれ以上の効果を得ることはできず、また経済上も好ましくない。
このように皮膜と基材との間に、密着性および柔軟性に富む下地層を形成することは、皮膜の剥離防止に効果がある。
【0014】
【実施例】
本発明を以下に、具体的実施例によりさらに詳細に説明する。
(実施例1)
本実施例では、材質がSUS440材の基材を使用した。
PVD処理は、陰極アークプラズマ式イオンプレーティング装置を用いた。基材をフロン洗浄し、イオンプレーティング装置の真空チャンバー内に挿入した。
チャンバー内圧力が1.3×10-3Paになるまで真空引きを行なってから、イオンプレーティング装置に内蔵されているヒーターにより300〜500℃で加熱して基材の内在ガスを放出させ、その後200℃まで冷却した。
チャンバー内圧力が4×10-3Pa以下になった時点でバイアス電圧を−700〜900V印加しておき、アーク放電を発生させクロムイオンを飛び出させる。その後チャンバー内に導入した窒素ガス分圧を1.3×10-1〜13.3Pa程度の範囲で変化させ、バイアス電圧を0〜−100V印加して基材表面に厚さ5μmのイオンプレーティング皮膜を形成させた。皮膜形成後、真空チャンバー内で200℃以下になるまで冷却して摺動材料を得た。
得られた皮膜の、破断面形態、組成、空孔率、表面微小硬さを調べた。
皮膜の破断面を走査型電子顕微鏡により二次電子像を観察した。母材から皮膜表面に向かって柱状なる結晶を確認できた。また、X線回折により組成を分析した結果、CrN の単一相でかつ摺動面に平行な(111)面が方位配向していることも確認した。さらに空孔率は、3.9%でその表面硬さはHmV 770であった。
【0015】
(実施例2、3、比較例1)
本発明材料の耐焼付性を評価する。
SKD61材からなり、縦5mm×横5mm×高さ5mmのピン状突起10(図1、図2参照)を同心円上に等間隔に三個配置した試験片5を用いて、5mm角の正方形端面に本発明による皮膜を厚さ10μm形成した試験片を作成して、超高圧摩耗試験機によって耐焼付性試験を行なった。試験片の皮膜は、実施例1に記述した方法により形成し、破断面の結晶が基材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有し、かつCrN 単一相で摺動面に平行な(111)面が方位配向している、皮膜空孔率が3.9%である皮膜(実施例2)、および破断面の結晶が基材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有し、皮膜空孔率が2.3%である皮膜(実施例3)であった。皮膜の表面微小硬さは実施例2なる皮膜がHmV 770、実施例3なる皮膜がHmV 845であった。
比較例として、試験片の5mm角の端面に厚さ100μmのクロムめっき皮膜(比較例1)を形成した試験片を用いて同様な試験を行なった。
本試験に用いた超高圧摩耗試験機の装置と試験条件は次の通りである。
試験装置は図1および図1のA−A矢視断面図である図2に要部を図解的に示すものであって、ステータホルダ1に取外し可能に取り付けられた直径80mm×厚さ10mmの研磨仕上げを施した円盤2(相手材)の中央には、裏側から注油口3を通して潤滑油が注油される。ステータホルダ1には図示しない油圧装置によって図において右方に向けて所定圧力で押圧力Pが作用するようにしてある。円盤2に相対向してロータ4があり、図示しない駆動装置によって所定速度で回転するようにしてある。ロータ4には試験片5が表面処理層を形成した5mm角の正方形の端面を摺動面として円盤2に対し摺動自在に取り付けてある。
このような装置において、ステータホルダ1に所定の押圧力Pをかけ、所定の面圧で円盤2と試験片5のピン状突起10とが接触するようにしておいて、注油口3から摺動面に所定給油速度で給油しながらロータ4を回転させる。一定時間毎にステータホルダ1に作用する圧力を段階的に増加していき、ロータ4の回転によって試験片5と相手の円盤2との摩擦によってステータホルダ1に生ずるトルクTをステンレスファイバー6を介してロードセル7に作用せしめ、その変化を動歪計8で読取り、記録計9に記録させる。トルクTが急激に上昇したとき焼付が発生したものとして、この時の接触面圧をもって耐焼付特性の良否を判断する。相手材としては、鉄系FC25材を用いた。試験条件は次の通りである。
摩擦速度:8m/秒
相手材:FC25
接触面圧:20kg/cm2 でならした後、焼付発生まで10kg/cm2 ずつ増圧。
各面圧に3分間保持。
潤滑油:モーターオイル#30
油温80℃、供給量250cc/分
表1に試験結果を示した。
【0016】
【表1】
【0017】
FC25相手で本発明品は接触面圧280および283kg/cm2 で焼付が発生した。比較品のクロムめっきの耐焼付面圧253kg/cm2 以上であり、耐焼付性が優れている。
【0018】
(実施例4、比較例2)
科研式摩耗試験機により本発明材料の腐食摩耗試験を実施した。基板材質がSKD−61材で、形状は縦5mm×横5mm×高さ20mm、長手方向の一方の先端をR6mmの曲面とした試験片を用い、実施例1に記述した方法により、試験片の先端に、破断面の結晶が基材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有し、かつCrN 単一相で摺動面に平行な(111)面が方位配向している。皮膜空孔率が3.9%である皮膜(実施例4)を10μmの厚さで被覆した。皮膜の表面微小硬さはHmV 770であった。
比較例として試験片先端R部に厚さ100μmのクロムめっき試験片を用いて同様な試験を行なった。
試験は、表面処理を施した試験片の先端R部をドラム状に加工した相手材の外周部に曲面同士が線接触するように合わせ、所定荷重を加え、所定速度で回転する。潤滑は、PH=2に調整した硫酸水溶液を接触部に一定量滴下して行ない、酸雰囲気とした。
試験条件は次の通りである。
摺動相手材:FC25材
摩擦速度:0.25m/秒
摩擦時間:6時間
接触荷重:4kg
雰囲気:摺動部にPH=2.0に調整した硫酸水溶液を1.5cc/分滴下
皮膜摩耗量の測定値を表2に示した。結果はクロムめっき皮膜の摩耗量を100とした相対値で示した。
比較品であるクロムめっき品に比べ、本発明品は摩耗量が約1/30と大幅に減少している。
【0019】
【表2】
【0020】
(実施例5、6、比較例3)
すべりを伴う転がり疲労試験機(ローラーピッチング試験機)により本発明材料に被覆した皮膜の耐剥離性を評価した。試験片の基板材質はSCM420材を浸炭処理した材料で、形状はφ26mm×28mmのローラー状でその外周表面に本発明皮膜を45μmの厚さ処理した。試験片の皮膜は、実施例1に記述した方法により形成し、破断面の結晶が基材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有し、かつCrN 単一相で摺動面に平行な(111)面が方位配向している、皮膜空孔率が3.9%である皮膜(実施例5)、および破断面の結晶が基材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有し、皮膜空孔率が2.3%である皮膜(実施例6)であった。また皮膜の表面微小硬さは実施例5なる皮膜がHmV 770、実施例6なる皮膜がHmV 845であった。
比較例として実施例5、6と同材質の試験片本体外周に、破断面の形態が柱状ではなく皮膜空孔率が0.2%程度と極めて低いCrN 皮膜を42μm被覆し、実施例5、6と同様に耐剥離性を測定した。
本試験に用いたピッチング試験機の装置と試験条件は次の通りである。
試験装置は、図3は要部を図解的に示すものであって、φ26mm×28mmの試験片13を取り付けたテストローラー11と相対向して負荷ローラー12があり、所定圧力で押圧力が作用するようにしてある。テストローラー11は、図示しない駆動装置により所定速度で回転するようにしてあり、その試験片13の外周には表面処理相を形成する。負荷ローラー12は、φ130×18の大きさで、外周はR300mmの形状をして微視的には試験片13と点接触し、大きな押圧力をかけられるようになっている。また負荷ローラー12はテストローラー11に対し図示しない歯車を介して従動し、相対的に滑りながら回転するようになっている。滑り率は試験片周速(U13)と負荷ローラー周速(U12)により、(U13−U12)/U13で表され、任意に選定できる。試験片11と負荷ローラー12の接触部には、図示しない注油口を通して潤滑油が注がれる。
このような装置において、試験片13に所定の押圧力をかけ、所定の面圧で試験片13と負荷ローラー12とが接触するようにしておいて、接触部に所定注油速度で注油しながらテストローラーを所定速度で回転させるとともに、所定滑り率で負荷ローラー12を回転させる。
試験中定期的に試験片表面を注意深く観察し、試験片の表面に欠け状剥離が発生するまでの回転の累計より耐剥離性の良否を判断する。相手材である負荷ローラーの材質はFC25材を用いた。試験条件は次の通りである。
試験条件 面圧(ヘルツ圧力):160kgf /mm2
試験片周速:82m/s
滑り率:20%
使用オイル:#30(ベースオイル)
オイル流量:1200cc/分
オイル温度:80℃
表3に試験結果を示した。
本発明品は、比較例に対し、耐剥離性が非常に優れている。
【0021】
【表3】
【0022】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明は基材表面に被覆されるCrN の皮膜の破断面の結晶を基材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態とし、さらに皮膜空孔率を限定することによって、従来から使用されている皮膜に比較して、耐剥離性に優れた摺動材料を提供するものでありならびに、その摺動材料を製造し得る方法を提供できる。
本発明材料は、ピストンリング、カムフォロアなどのエンジン部品さらにはシューディスクなどのコンプレッサー部品をはじめとする摺動部品や切削工具などに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】超高圧摩耗試験機による破砕試験の説明図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】転がり疲労試験機の概要説明図である。
【図4】 本発明で使用するピストンリングの外周面に形成されたCrN 層の金属組織の顕微鏡写真である。
【図5】 比較例3に使用したピストンリングの外周面に形成された柱状でないCrN 層の金属組織の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 ステータホルダ
2 円盤(相手材)
3 注油口
4 ロータ
5 試験片
6 ステンレスファイバー
7 ロードセル
8 動歪計
9 記録計
10 試験片のピン状突起(5mm角)
11 テストローラー
12 負荷ローラー
13 試験片
Claims (2)
- PVD処理によるCrN の皮膜を基材上に被覆してなる摺動材料であって、前記皮膜の破断面結晶が基材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有し、前記皮膜が摺動面に平行な(111)面が方位配向し、前記皮膜の微小硬さが表面から測定してHmV 600〜1000の値を有し、かつ前記皮膜の空孔率が1.5〜20%であることを特徴とする摺動材料。
- 請求項1に記載の摺動材料において、前記皮膜と前記基材との間にPVD処理によるクロムからなる下地層が介在することを特徴とする摺動材料。
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