JPH11188A - エリスリトールの精製方法 - Google Patents

エリスリトールの精製方法

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JPH11188A
JPH11188A JP16789497A JP16789497A JPH11188A JP H11188 A JPH11188 A JP H11188A JP 16789497 A JP16789497 A JP 16789497A JP 16789497 A JP16789497 A JP 16789497A JP H11188 A JPH11188 A JP H11188A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エリスリトール含有培養液を経済的且つ容易
に精製する方法を提供する。 【解決手段】 グルコースを原料としてエリスリトール
生産菌の培養により得たエリスリトール含有培養液から
菌体を除去した後、該培養液中のエリスリトール濃度を
20重量%以上に濃縮することで生成する不溶性物質を
該培養液から分離する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】本発明は、エリスリトールの精製方法に関
する。
【0003】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
【0004】エリスリトールは、地衣類、キノコ類、果
実類(梨、ブドウ、スイカ、メロン等)に含まれる四炭
糖の糖アルコールである。
【0005】エリスリトールは、体内ではほとんどエネ
ルギーにならず、砂糖の約75%の甘味度の甘味料であ
り、非う蝕性であること、大きな冷涼感があること、吸
湿性が低いこと、矯味・矯臭効果が高いこと、緩下作用
が小さいこと等、多くのすぐれた特性を有することか
ら、飲料やキャンデー等の数多くの食品に利用されてい
るばかりでなく、化粧品、医薬品にも利用されている。
【0006】エリスリトールは、通常、グルコースをエ
リスリトール生産菌により培養させることで産出され
る。その具体的な製造方法としては、モニリエラ・トメ
ントサ・バール・ポリニス(Moniliella Tomentosa Va
r. Pollinis)、カンジダ・ポリモルファ(Candida Pol
ymorpha)、トリゴノプシス・バリアビリス(Trigonops
is Variabilis)、オーレオバシディウム(Aureobasidi
um)等のエリスリトール生産菌を用いた方法がアプライ
ド・マイクロバイオロジー(Applied Microbiology)第
12巻3号第240−246頁(1964年)、特公昭
37−3546号公報、特公平4−11189号公報、
特公平6−30593号公報等、多くの文献や特許公報
に紹介されている。
【0007】これらのエリスリトール生産菌を用いてグ
ルコースを培養して得られたエリスリトール含有培養液
は、通常、そこから菌体を遠心分離等で除去した後、活
性炭を用いて着色物質等を除去し、イオン交換樹脂によ
る精製処理を行い、濃縮して結晶化することによりエリ
スリトールの結晶が製造される。
【0008】しかし、一般にエリスリトール生産菌の培
養による生産方法では、エリスリトールの他にグリセリ
ンやリビトール等が生産されるばかりでなく、エリスリ
トール生産菌体の他に酵母エキス、尿素等の窒素源、硫
酸マグネシウム、リン酸2ナトリウム等の無機塩等が添
加される為に、その培養液の精製負荷が極めて大きく、
精製に多量のイオン交換樹脂を必要とし、使用したイオ
ン交換樹脂の再生で発生する廃水処理量も膨大なものと
なる。
【0009】更に、通常の活性炭処理やイオン交換樹脂
精製処理を行っただけの濃縮液には濁りが生じ、その濃
縮液から分離したエリスリトールの結晶を再び水に溶解
させるとまたこの濁りが生じる。この濁りは培養工程で
生成するグルコースを主成分とする多糖類であることは
既に知られており、通常の活性炭処理や、イオン交換樹
脂を充填した塔を通液するだけでは除去されず、更に、
この多糖類は結晶化工程で析出するエリスリトールの結
晶を微細化するため、結晶と結晶母液の分離を困難にす
る。
【0010】この多糖類を除去する方法としては、エリ
スリトール生産菌を培養して得られたエリスリトール含
有の培養液を分画分子量が1,000〜100,000
の限外濾過膜により濾過し、エリスリトールを回収する
方法(特公平7−34750号公報)、該培養液をアル
カリ金属若しくはアンモニウム型の強酸性カチオン交換
樹脂を充填した分離塔に通してエリスリトールを主成分
とする画分を分取することでエリスリトールを回収する
方法(特公平7−34748号公報および特開平1−3
20987号公報)が報告されている。
【0011】しかし、限外濾過膜はその装置が高価であ
るばかりか定期的に膜表面の洗浄を行う必要がありその
管理が繁雑であること、また、強酸性カチオン交換樹脂
を充填した分離塔による分画方法では処理液の濃度が希
薄となり引き続く工程の濃縮費用が高価となること、及
びエリスリトールの回収率も低下する等の課題が残され
ていた。
【0012】本発明は、上記課題を解決し、エリスリト
ール含有培養液を経済的且つ容易に精製する方法を提供
することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
【0014】本発明者等は、前記課題を解決するために
鋭意検討した結果、グルコースを原料としてエリスリト
ール生産菌の培養により得たエリスリトール含有培養液
から菌体を除去した後、該エリスリトール含有培養液を
特定の濃度以上に濃縮することで培養時に生成した多糖
類が不溶性物質として容易に析出すること、しかも該不
溶性物質の粒径が濾別可能な粒径にまで成長すること、
及び一度析出した多糖類を含む不溶性物質は再度加熱す
るか又は水を加えて濃縮前の濃度に調整してもほとんど
再溶解しないことを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0015】即ち、本発明の課題を解決するための手段
は、下記の通りである。
【0016】第1に、グルコースを原料としてエリスリ
トール生産菌の培養により得たエリスリトール含有培養
液から菌体を除去した後、該培養液中のエリスリトール
濃度を20重量%以上に濃縮することで生成する不溶性
物質を該培養液から分離することを特徴とするエリスリ
トールの精製方法である。第2に、不溶性物質を該培養
液から分離するに際し、孔径0.1〜10μmのフィル
ターを使用することを特徴とする第1に記載のエリスリ
トールの精製方法である。
【0017】本発明の精製には、モニリエラ・トメント
サ・バール・ポリニス、カンジダ・ポリモルファ、トリ
ゴノプシス・バリアビリス、オーレオバシディウム等の
通常使用されるエリスリトール生産菌体を用いてグルコ
ースを培養したエリスリトール含有培養液が使用され
る。
【0018】エリスリトール生産菌体を用いてグルコー
スを培養したエリスリトール含有培養液から菌体を除去
するには、遠心分離やフィルター等が使用される。
【0019】菌体を除去した後のエリスリトール含有培
養液は、エリスリトール濃度を20重量%以上、好まし
くは20〜60重量%に濃縮することで、エリスリトー
ル含有培養液中に含まれる多糖類が不溶性物質として析
出する。
【0020】エリスリトール含有培養液のエリスリトー
ル濃度が20重量%未満での濃縮は、不溶性物質の析出
が不十分で、引き続き通常の精製をした後、結晶化する
ことで得られたエリスリトール結晶は、再び水に溶解し
た場合にはその水溶液に濁りが生じることがある。
【0021】また、エリスリトール含有培養液のエリス
リトール濃度が60重量%を越える濃縮では、多糖類は
不溶性物質として析出するが、エリスリトール結晶が多
量に析出してしまい、結果として、不溶性物質とエリス
リトールを分離することが困難となるので好ましくな
い。
【0022】菌体を除去した後のエリスリトール含有培
養液を濃縮することで析出する多糖類を含む不溶性物質
は、フィルターを使用して濾過することができる。
【0023】該濾過には、孔径0.1〜10μm、好ま
しくは0.4〜2μmのセルロースろ紙、ガラス繊維フ
ィルター、ポリフロン・フィルター等を用いて遠心分
離、吸引濾過、加圧濾過等の方法を採用できるが、活性
炭や濾過助剤等を予め濃縮したエリスリトール含有培養
液に加えて濾過するか、または濾過器にプレコートする
ことが濾過作業を容易とするばかりでなく、培養液に含
まれる着色物質やその他の活性炭や濾過助剤等への吸着
性物質を同時に除去できるので好ましい。
【0024】本発明者等は、菌体を除去した後のエリス
リトール含有培養液を濃縮することで析出する多糖類を
含む不溶性物質が、再度加熱しても、また、水を加えて
濃縮前の濃度に調整してもほとんど溶解しないことを見
出した。
【0025】従って、菌体を除去した後のエリスリトー
ル含有培養液を濃縮した後に、不溶性物質とともにエリ
スリトール結晶が析出した場合には、該濃縮液を加熱す
ることでエリスリトール結晶を溶解し、再度エリスリト
ール結晶が析出しない温度で濾過することで、不溶性物
質のみを濾別することができる。
【0026】また、菌体を除去した後のエリスリトール
含有培養液を濃縮した後に、不溶性物質とともにエリス
リトール結晶が析出した場合には、析出したエリスリト
ール結晶が溶解するに十分な量の水を加えてエリスリト
ール結晶のみを溶解した後、不溶性物質を濾別すること
もできる。
【0027】菌体を除去した後のエリスリトール含有培
養液の濃縮液から不溶性物質が析出するに要する時間
は、濃縮液の濃度により異なるが、濃縮液が濃い場合に
は数時間で充分であり、また、濃縮液が薄い場合には1
日以上静置するのが好ましく、また、ゆっくりと撹拌し
ながら徐冷することで不溶性物質の粒子径を大きくする
ことができ、本発明の効果を十分に得ることができる。
【0028】得られた濾液は、必要により通常実施され
る活性炭やイオン交換樹脂を用いた精製処理を行い、濃
縮結晶化することで、溶解しても白濁しないエリスリト
ール結晶を得ることができる。
【0029】
【実施例】
【0030】以下に実施例をあげて更に具体的に本発明
の方法を説明するが、本発明の技術的範囲は以下の例に
制限されるものではない。
【0031】また、以下の実施例において、%は特に断
らない限り重量%を表わすものとする。
【0032】尚、エリスリトールの純度は高速液体クロ
マトグラフィーを用いて分析し、エリスリトール結晶を
水に溶解した時の水溶液の白濁の程度は、日本分光(株)
製分光光度計Ubest−55により、セル長10セン
チメートルのセルを使用して、波長660mμでその吸
光度(OD660)を測定し比較した。
【0033】
【実施例1】 [エリスリトール含有培養液の調製]
【0034】無水結晶ブドウ糖112g/リットル及び
コーンステープリカー11.2g/リットルを含む培地
にモニリエラ・トメントサ・バール・ポリニス(CBS
461.67)を接種し、30℃で4日間振とう培養
することで前培養液を得た。
【0035】次に、容量30リットルのジャーファーメ
ンターに無水結晶ブドウ糖3kg、コーンステープリカ
ー225g、前培養液800ミリリットル及び水を加え
て全量を15リットルとし、空気量15リットル/分、
撹拌速度500rpm、温度30℃にて12日間培養し
た。
【0036】次に、遠心分離により培養液から菌体を分
離し、エリスリトール75.2g/リットル、グリセリ
ン5.3g/リットル及びその他の物質6.8g/リッ
トルを含むエリスリトール含有培養液を得た。
【0037】[精製]
【0038】得られたエリスリトール含有培養液10リ
ットルをエリスリトール濃度60%まで濃縮した。温度
60℃にて、該濃縮液に活性炭(武田薬品工業(株)製
「白さぎ」)3gを加え一時間撹拌した後、水を加えて
エリスリトール濃度40%に調整し、孔径2.0μmの
ポリフロン・フィルターPFO−20(アドバンテック
(株)製)で活性炭及び不溶性物質を濾別した。
【0039】濾液はカチオン樹脂IR−120B(オル
ガノ(株)製)100ミリリットルを充填したカラム及び
アニオン交換樹脂IRA−410(オルガノ(株)製)2
00ミリリットルを充填したカラムに通液した後、固形
物濃度65%まで濃縮し、容量1リットルの撹拌機付き
結晶化装置に移し、16時間かけて温度70℃から35
℃まで徐々に冷却し、途中、種晶としてエリスリトール
結晶1gを添加することで、エリスリトール結晶を含む
スラリーを得た。
【0040】該スラリーは、遠心分離器でエリスリトー
ル結晶と結晶化母液に分離し、エリスリトール結晶は少
量の水で洗浄した後、減圧下、温度60℃にて乾燥する
ことにより、エリスリトール結晶346gを得た。この
時のエリスリトールの純度は99.9%であり、その一
部を水に溶解し、エリスリトール濃度30%の水溶液を
調整したところ、この水溶液は無色透明であって白濁は
見られなかった。更に、この水溶液のOD660は0.0
00であった。
【0041】
【実施例2】
【0042】実施例1と同様の方法で得たエリスリトー
ル含有培養液10リットルをエリスリトール濃度40%
に濃縮した。この濃縮液を温度40℃にて1日間ゆっく
りと撹拌した後、活性炭(武田薬品工業(株)製「白さ
ぎ」)3gを加え、更に一時間撹拌した後、孔径1.0
μmのろ紙No.5C(アドバンテック(株)製)で活性
炭及び不溶性物質を濾別した。
【0043】濾液はカチオン樹脂IR−120B(オル
ガノ(株)製)100ミリリットルを充填したカラム及び
アニオン交換樹脂IRA−410(オルガノ(株)製)2
00ミリリットルを充填したカラムに通液した後、固形
物濃度65%まで濃縮し、容量1リットルの撹拌機付き
結晶化装置に移し、16時間かけて温度70℃から35
℃まで徐々に冷却し、途中、種晶としてエリスリトール
結晶1gを添加することで、エリスリトール結晶を含む
スラリーを得た。
【0044】該スラリーは、遠心分離器でエリスリトー
ル結晶と結晶化母液に分離し、エリスリトール結晶は少
量の水で洗浄した後、減圧下、温度60℃にて乾燥する
ことにより、エリスリトール結晶339gを得た。この
時のエリスリトールの純度は99.9%であり、その一
部を水に溶解し、エリスリトール濃度30%の水溶液を
調整したところ、この水溶液は無色透明であって白濁は
見られなかった。更に、この水溶液のOD660は0.0
00であった。
【0045】
【実施例3】
【0046】実施例1と同様の方法で得たエリスリトー
ル含有培養液10リットルをエリスリトール濃度25%
に濃縮した。この濃縮液を温度20℃にて1日間ゆっく
りと撹拌した後、活性炭(武田薬品工業(株)製「白さ
ぎ」)3gを加え、更に一時間撹拌した後、孔径0.4
μmのガラス繊維フィルターGB−140(アドバンテ
ック(株)製)で活性炭及び不溶性物質を濾別した。
【0047】濾液はカチオン樹脂IR−120B(オル
ガノ(株)製)100ミリリットルを充填したカラム及び
アニオン交換樹脂IRA−410(オルガノ(株)製)2
00ミリリットルを充填したカラムに通液した後、固形
物濃度65%まで濃縮し、容量1リットルの撹拌機付き
結晶化装置に移し、16時間かけて温度70℃から35
℃まで徐々に冷却し、途中種晶としてエリスリトール結
晶1gを添加することで、エリスリトール結晶を含むス
ラリーを得た。
【0048】該スラリーは、遠心分離器でエリスリトー
ル結晶と結晶化母液に分離し、エリスリトール結晶は少
量の水で洗浄した後、減圧下、温度60℃にて乾燥する
ことにより、エリスリトール結晶348gを得た。この
時のエリスリトールの純度は99.9%であり、その一
部を水に溶解し、エリスリトール濃度30%の水溶液を
調整したところ、この水溶液は無色透明であって白濁は
見られなかった。更に、この水溶液のOD660は0.0
00であった。
【0049】
【参考例】
【0050】実施例1と同様の方法で得たエリスリトー
ル含有培養液10リットルに活性炭(武田薬品工業(株)
製「白さぎ」)3gを加え、温度50℃にて1時間撹拌
した後、孔径0.4μmのガラス繊維フィルターGB−
140(アドバンテック(株)製)で濾過した。
【0051】濾液はカチオン樹脂IR−120B(オル
ガノ(株)製)100ミリリットルを充填したカラム及び
アニオン交換樹脂IRA−410(オルガノ(株)製)2
00ミリリットルを充填したカラムに通液した後、濃度
65%まで濃縮し、容量1リットルの撹拌機付き結晶化
装置に移し、16時間かけて温度70℃から35℃まで
徐々に冷却し、途中種晶としてエリスリトール結晶1g
を添加することで、エリスリトール結晶を含むスラリー
を得た。
【0052】該スラリーは、遠心分離器でエリスリトー
ル結晶と結晶化母液に分離し、エリスリトール結晶は少
量の水で洗浄した後、減圧下、温度60℃にて乾燥する
ことにより、エリスリトール結晶340gを得た。この
時のエリスリトールの純度は99.9%であり、その一
部を水に溶解し、エリスリトール濃度30%の水溶液を
調整したところ、この水溶液は白濁した。更に、この水
溶液のOD660は0.07であった。
【0053】
【発明の効果】
【0054】本発明を実施することにより、エリスリト
ール含有培養液を経済的且つ容易に精製することができ
る。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グルコースを原料としてエリスリトール
    生産菌の培養により得たエリスリトール含有培養液から
    菌体を除去した後、該培養液中のエリスリトール濃度を
    20重量%以上に濃縮することで生成する不溶性物質を
    該培養液から分離することを特徴とするエリスリトール
    の精製方法。
  2. 【請求項2】 不溶性物質を該培養液から分離するに際
    し、孔径0.1〜10μmのフィルターを使用すること
    を特徴とする請求項1に記載のエリスリトールの精製方
    法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20190059388A (ko) * 2017-11-23 2019-05-31 경북대학교 산학협력단 에리스리톨을 생산하는 신규 효모 균주 및 이의 생산 방법
DE102017106605B4 (de) 2016-04-22 2022-09-01 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Brennstoffzellensystem

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