JPH11186022A - 酸化物磁性材料およびチップインダクタとその製造方法 - Google Patents

酸化物磁性材料およびチップインダクタとその製造方法

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JPH11186022A
JPH11186022A JP9347580A JP34758097A JPH11186022A JP H11186022 A JPH11186022 A JP H11186022A JP 9347580 A JP9347580 A JP 9347580A JP 34758097 A JP34758097 A JP 34758097A JP H11186022 A JPH11186022 A JP H11186022A
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ferrite
magnetic material
oxide magnetic
internal conductor
mol
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JP9347580A
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Osamu Kanda
修 神田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】内部導体がAg単体で、低温焼結可能かつAg
の拡散による内部導体消失を抑止した酸化物磁性材料、
その材料を用いた積層チップインダクタ、およびそれら
の製造方法の提供。 【解決手段】焼結体として、Fe23:45.0〜49.0モル
%、CuO:8.0〜14.0モル%、NiO:8.0〜36.0%、
ZnO:上記3成分の残部、からなる主成分を100重量
部とし、これに助剤として、PbO:0.05〜0.15重量
部、B23:0.10〜0.30重量部、およびAg2O:0.03〜
0.10重量部を含有する酸化物磁性材料と、その結晶粒径
が0.5〜1.5μmである材料、および原料の仮焼合成後、
平均粒子径を1.0μm以下に粉砕整粒し、所定形状に成形
後、800〜850℃にて焼成する上記材料の製造方法。さら
には、この酸化物磁性材料を用い、Ag単体を内部導体
とした積層チップインダクタとその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、小型の電子機器な
どに使用するチップインダクタに適用されるソフトフェ
ライト、すなわち高透磁率酸化物磁性体、それを用いた
積層チップインダクタ、およびそれらの製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年のパーソナルコンピュータや携帯電
話等に代表されるOA機器あるいは移動通信機器の発達
に伴い、それらの機器に用いられる電子部品も、小型
化、高性能化、低価格化などが強く要望されている。そ
れらの部品の一つに積層型チップインダクタがある。
【0003】インダクタとは、空芯または軟質磁性材料
を芯材とするような巻線の要素に対応するもので、その
インダクタンスに基づく抵抗値すなわちインピーダンス
が、通過する電流の周波数が高くなるほど増加する特性
を有する。したがって、有効な信号は通過するが、その
信号より高い周波数の不要信号やノイズは阻止するロー
パスフィルターの効果があり、電子機器間の電磁波干渉
や、外部雑音の侵入による誤作動防止に活用される。
【0004】インダクタを小型化しかつ高性能化して、
電子部品に適応させたものが積層型チップインダクタで
ある。チップインダクタは、例えば図1にその概念図を
示すように直方体のソフトフェライト焼結体1 の両対向
面が内部導体の入出力用端部電極2 になっている。その
内部は、一例を図2に示すように、グリーンシート3上
に導電材料による内部導体パターン4 を印刷後、各層の
導体が接続点6 および7 を介して直列接続できるように
し、これらを積層して焼結し一体化している。この内部
導体 は外部接続用導体5 を介し外側の両端部電極2 に
接続されている。この導体に密着したソフトフェライ
ト、すなわち酸化物磁性体(以下単にフェライトと略
称)は、導体のインダクタンスを大幅に増大させる。
【0005】このような積層型チップインダクタは、両
端面を入出力電極とした小直方体となっていて、電子回
路基板への実装が容易になる。また回路パターンが印刷
されたグリーンシートを積層後、所定チップ形状に切断
し焼成をおこなえば、量産によるコスト低減が可能とな
る。しかし、インダクタの性能、ことにそのインダクタ
ンスは、用いるフェライトの特性に大きく支配される。
【0006】積層型チップインダクタのフェライトに要
求される性能は、高周波数帯域で十分な透磁率を有し、
かつ電気抵抗が大きいことと、その特性を得るための焼
結温度が低いことである。
【0007】通常、透磁率が高いすぐれた性能を持つ緻
密なフェライトを得るためには、素材を十分に混ぜ圧縮
成型して、700〜1100℃で仮焼反応させたものを粉砕し
て原料粉とし、結合剤を混ぜ混練して最終形状に圧縮成
型後、1000℃を超える高温で焼結する。しかしながら、
積層型チップインダクタでは、塗布可能な状態の導体を
グリーンシート上に印刷後積層して導体とフェライトを
同時焼結し一体化するため、焼結温度が高すぎると、こ
の内部導体が溶けて流れ出したり、フェライト中に拡散
し消失してしまう。
【0008】内部導体には、Ag−Pd合金が多く用い
られる。AgにPdを含有させることにより、融点を上
昇させ溶融や拡散を抑止し、フェライトとの熱収縮差を
低減させる。しかし、AgはPdなど他の合金元素を含
むと、電気抵抗が増大するという問題がある。まず、イ
ンダクタとしての品質の指標であるいわゆるQ値は、内
部導体の電気抵抗増加とともに低下する。さらに、積層
型チップインダクタは大電流部位への使用が増してお
り、その場合の内部導体の電気抵抗は、使用中の発熱や
効率低下をもたらす。近年ノイズ対策が電源回路やイン
ターフェイス部にも拡大し、さらに小型の携帯型電子機
器などでは、安定したグランドの確保が困難となり、コ
ンデンサ型の並列実装よりもインダクタ型の直列実装ノ
イズフィルターが多用される傾向にある。
【0009】これらの点から、チップ内部の導体の電気
抵抗はできるだけ小さくすることが望ましく、電気抵抗
の小さい内部導体として、実用的にはPdを減らしたA
g、できればAg単体がよい。しかし、Agの融点は96
2℃と低く、Ag単体を用いる場合、焼結時の溶融や拡
散による内部導体の消失防止のためには、900℃を十分
下回る温度で焼結する必要がある。
【0010】ソフトフェライトは、一般的にX−Fe2
4の形で表される組成の、XにはMn、Fe、Co、
Ni、Cu、Zn等の単体あるいはこれらの元素の混合
体が入った酸化物の固溶体である。積層チップ内部の導
体の形状、ないしは長さが同じであれば、ソフトフェラ
イトの透磁率が高いほど大きなインダクタンスが得られ
る。
【0011】しかし、例えばXがMnとZnで構成され
たフェライトは、きわめて高い透磁率を示すが、このM
nZnフェライトは電気抵抗が大きくないため、低周波
数帯域ではすぐれていても高周波数帯域では透磁率が低
下するので、チップインダクタには適用できない。これ
に対し、電気抵抗が大きく高周波帯域に使用可能なフェ
ライトとして、NiZnフェライトがあり、低温で焼結
可能なフェライトとしてCuZnフェライトが知られ、
これらを組み合わせたNiCuZnフェライトも積層チ
ップインダクタに使用されている。通常のNiCuZn
フェライトの焼成温度は1000〜1100℃であり、900℃を
下回る温度では、緻密なフェライトは得られない。
【0012】フェライトの焼結温度の低温化の方法に
は、組成の変更、添加物の選定、粉体粒子の微細化など
がある。通常、上記X中のCu、すなわち原料中のCu
Oの量を増せば、焼結温度は低下できるが、組成の変更
は磁気特性を大きく変えるので、焼結温度低下だけの目
的での組成変更には限界がある。また、Bi23やPb
Oなど低融点のガラス原料の少量添加は、焼結温度の低
温化に効果がある。しかし、Agと反応して内部導体を
収縮させ、積層チップインダクタの電気抵抗を大きくす
る危険性がある。粉体粒子の微細化は仮焼後の原料の粉
砕によっておこない、粒子が細かいほど低温で焼結が進
行する。ただし細かくなりすぎると、良好なグリーンシ
ートが得られなくなる。
【0013】このようなフェライトの焼結温度を、その
特性を損なうことなく低下させ、さらに内部導体と同時
に一体化焼結する際の電極とフェライトとの相互作用を
抑制した発明として、特開平9-40455号公報が開示され
ている。この発明はCuZnフェライトを主成分とし、
添加物にBi23を用いて焼結温度を低下させ、さらに
焼結前にフェライト中の不純物であるSを1000ppm以
下、Clを600ppm以下に規制している。これらの不純物
は焼結中電極材料と反応し、電極消失の原因になるとい
う。これら不純物は焼成時に燃焼し含有量が低下するの
で、焼結後のフェライトではSは200ppm以下、Clは10
0ppm以下としている。この発明では、930℃以下の温度
で焼成が可能としているが、実施例では880℃にて焼成
がおこなわれている。しかしAg単体に対してはこの温
度ではやや高すぎ、Pdを含有させたAg合金を使用せ
ざるを得ないと考えられる。
【0014】このように、大電流に適応した積層チップ
インダクタとしては、現状はまだ十分すぐれた性能のも
のは得られていない。すなわち、フェライトは十分高い
透磁率と強度をより低い焼成温度にて得られ、かつ、内
部導体は電気抵抗が低いのみならず、焼成時に内部導体
がフェライト中への拡散や反応などにより細くならない
積層チップインダクタ、ないしはその製造方法が要望さ
れる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、第一
に低温で焼結可能で、焼結時のAgの拡散を抑制する酸
化物磁性体、およびその製造方法の提供である。これは
酸化物磁性体すなわちソフトフェライトを積層するチッ
プインダクタにおいて、とくに大電流仕様を対象に、内
部導体に電気抵抗の小さいAg単体を用いることができ
るようになる。第二は、そのソフトフェライトを用いた
積層チップインダクタと、その製造方法の提供である。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者は、大電流を対
象とする積層チップインダクタ用の、ソフトフェライト
に要求される材料物性に関して種々検討をおこなった。
まず、内部導体の電気抵抗は低いほどよいが、汎用金属
導体ではAgが最も低いことはよく知られている。一
方、回路基板や積層セラミックスに用いられる導電ペー
ストには様々な組成のものがある。そこで、焼成後にA
g単体となるペーストについて調査の結果、800℃以上9
00℃未満の焼成が電気抵抗を最も低くでき、かつ接して
いる絶縁体またはフェライトへの拡散や他成分との反応
も、最小限に抑制できることがわかった。
【0017】積層セラミックスの製造は、その工程簡略
化のため、グリーンシート上に導電ペーストを印刷し、
積層後焼成してセラミックスの焼結と内部導体の焼成を
同時におこなわせ一体化する。したがって、内部導体の
電気抵抗が最も低くなり、しかもAgが拡散や反応によ
り失われてその断面積が減少することのない温度範囲で
の焼成により焼結が進み、十分な密度と高透磁率の得ら
れるフェライト組成が必要である。
【0018】高透磁率が得られ、しかも電気抵抗の十分
高いフェライト組成を調査して、NiCuZn系のフェ
ライトが最も好ましいことを確認し、それに添加する助
剤を検討した。一般に助剤には低融点化合物が用いられ
る。これは焼結を促進させる作用があり、焼結温度を低
下させる効果がある。そこで、とくに十分な密度を得る
ための焼結温度が低くできる助剤を選定の結果、この系
に対しては適量のPbOとB23との混合添加が最適で
あることを見出した。
【0019】さらに、焼結する前のグリーンシートの粉
体粒子は、通常細かいほど焼結温度を低くすることがで
きる。仮焼後の粉砕による粉体粒子の径を細かくした場
合の効果を調べた結果、上記の助剤を用い粉体粒子の径
を1μm以下にすることを組み合わせると、より一層低い
温度の焼結で、高密度、かつ高透磁率の焼結フェライト
が得られることが明らかになった。なお、ここで粉体の
粒子径とは50%径(メジアン径)を指すものとする。粉
体の粒子径は細かくしすぎるとグリーンシートの成形性
を悪くするので、その細粒化には限界がある。
【0020】この低温での焼結フェライトについて、磁
気特性と諸性質との関係を調べてみると、結晶粒径が特
定の範囲にあるとき、最も磁気特性が良好であることが
分かった。この理由は必ずしも明らかではないが、次の
ように考えられる。
【0021】フェライトの磁気特性は、固溶体とする成
分組成に支配されるが、成分の他に結晶粒径や内部の応
力に大きな影響を受ける。一般に結晶粒界は磁化の際の
磁壁の移動を阻害し透磁率を低下させるので、結晶粒は
大きいほど、すなわち体積当たりの結晶粒界が少ないほ
ど好ましい。
【0022】フェライトは焼結の温度を高め、時間を長
くすることにより、結晶粒を成長させ粗大化させること
ができる。ところが、この結晶粒径が大きくなりすぎる
と磁気特性が低下してくるのは、二つの主な理由が考え
られる。一つは、結晶粒成長により残留応力が全くなく
なってしまうことである。結晶粒が成長粗大化していく
と、それとともにフェライトの内部の歪みは解放され、
残留応力が消失していく。ところがフェライトの磁歪の
ため、残留応力が完全に消失するよりも、若干残存する
方が透磁率は高くなる。したがって、結晶粒が十分粗大
化するよりも、残留応力の多少存在する適度の大きさの
結晶粒にとどめておく方が高い透磁率が得られる。もう
一つは、結晶粒が大きくなるとそれに伴って磁区も大き
くなることである。磁性体は外部磁場が与えられると磁
壁の移動により磁化が現れるが、磁区が大きい場合磁壁
の間隔が広いので、磁化のための磁壁の移動距離が大き
くなる。移動距離が増せば、磁壁移動のために必要なエ
ネルギーも増し、高周波による磁化では、損失が増し透
磁率が低下する。これに対し、結晶粒が小さければ磁区
は小さくなり、同じ磁化に対して磁壁の移動距離が小さ
くてすみ、高周波での透磁率は向上するのである。
【0023】一方、結晶粒が小さすぎると、焼結不十分
で密度が低く、多すぎる結晶粒界や大量の残留歪みによ
り透磁率は低い。その結果、結晶粒径に磁気特性を最も
よくする最適範囲が存在することになる。
【0024】このように、フェライトの結晶粒径を最適
範囲に制御するための手段は、一つは粉体粒子の大きさ
を制御することであり、もう一つは焼結温度を十分に管
理することである。ことに焼結温度については、内部導
体の電気抵抗が最も低くなる焼成温度と一致させ得るこ
とが明らかになった。
【0025】これらの低い電気抵抗の内部導体とフェラ
イトを用い、低温焼成によって大電流の積層チップイン
ダクタの量産試作を進めたところ、溶融点の低い助剤を
用いると、焼結温度は低下できるが、Agのフェライト
中への拡散が増加する傾向にあることがわかってきた。
【0026】そこで、この内部導体の拡散あるいは反応
による収縮を抑止するための方策を種々検討し、助剤と
してさらにAg2Oを添加することがきわめて効果的で
あることを知った。Ag2Oは高温では比較的不安定で
あり、容易に分解してAgを生じるので、これがフェラ
イトマトリックス中のAg濃度を高め、内部導体のAg
の消失を抑止したものと考えられる。
【0027】以上のように、大電流用途に適した高性能
の積層チップインダクタを得るために、内部導体に合金
成分を添加しないAg単体を用いることを前提とし、ソ
フトフェライトの主成分、添加すべき助剤、焼結後のソ
フトフェライトの結晶粒径、製造条件等を検討した。そ
の結果、当初の目標、すなわち 1.0 MHzにおける透磁率
が300以上で、内部導体の焼成時の収縮がないという優
れた性能のチップを得るための条件が明らかになってき
た。そこで、それらの諸条件の限界範囲を明確にし、本
発明に至ったのである。本発明の要旨とするところは、
以下のとおりである。
【0028】(1) 焼結体として、Fe23:45.0〜49.0
モル%、CuO:8.0〜14.0モル%、NiO:8.0〜36.0
モル%、ZnO:上記3成分の残部、からなる主成分を
100重量部とし、これに助剤として、PbO:0.05〜0.1
5重量部、B23:0.10〜0.30重量部、およびAg2O:0.
03〜0.10重量部を含有することを特徴とする、酸化物磁
性材料。
【0029】(2) 焼結後の結晶粒径が0.5〜1.5μmであ
ることを特徴とする上記(1)に記載の酸化物磁性材料。
【0030】(3) 酸化物原料を仮焼合成後、粒子径が1.
0μm以下となるよう粉砕整粒し、この粉体を用いて所定
形状に成形後、800〜850℃にて焼成をおこなうことを特
徴とする、上記(1)または(2)に記載の酸化物磁性材料の
製造方法。
【0031】(4) Ag単体を内部導体とし、ソフトフェ
ライトとして上記(1)または(2)に記載の酸化物磁性材料
を用いることを特徴とする積層チップインダクタ。
【0032】(5) Ag単体を内部導体とし、ソフトフェ
ライトとして上記(1)または(2)に記載の酸化物磁性材料
を用い、上記(3)の方法にて一体化焼成することを特
徴とする積層チップインダクタの製造方法。
【0033】
【発明の実施の形態】本発明の実施に際しフェライトの
組成を限定するのは、以下の理由による。
【0034】Fe23はソフトフェライトの基本成分で
あり、そのフェライトの主要成分をX−Fe24(Xは
Cu、Ni、Zn等)として示される逆スピネル構造の
固溶体とすれば、そのうちの45.0〜49.0モル%を構成し
ていることとする。これは45.0モル%未満の場合、十分
な磁気特性すなわち透磁率が得られず、他方、49.0モル
%を超えて存在すると焼結密度の低下のため、積層チッ
プを作製したとき、機械的強度が不足し、その上、長期
使用による性能の劣化の抵抗性すなわち耐候性が低下し
てくる危険性がでてくるためである。
【0035】CuOはフェライトの主要成分のうち、8.
0〜14.0モル%であることとする。これは、CuOは焼
結温度の低温化に大きく寄与しており、8.0モル%を下
回ると、本発明の目的とする低温で焼結をおこなう場
合、焼結密度が不十分になり、耐候性が劣って、機械的
強度も不足するからである。また、14.0モル%を超える
と透磁率が不十分になる。
【0036】NiOはフェライトの高周波域における透
磁率を確保するために含有させる。その量は、8.0モル
%未満でも、36.0モル%を超える場合でも、目的とする
高周波域での透磁率が不十分になるので、フェライトの
主要成分中の含有量を8.0〜36.0モル%に限定する。
【0037】ZnOはフェライトの透磁率向上のために
重要な元素であり、フェライトの主要成分の、上記Fe
23、CuOおよびNiOを除いた残りの部分とする。
ただし、その含有比率が5.0モル%を下回ると、得られ
たフェライトの磁気特性不十分、焼結密度不足等の問題
を生じ、逆に35.0モル%を超えても磁気特性が悪くなる
ので、望ましいのは、5.0〜35.0モル%の範囲になるよ
うにすることである。
【0038】上記のフェライトの主要成分に下記の助剤
を含有させる。助剤の所要量とその作用は以下のとおり
である。この場合フェライトの主要成分を100重量部と
したときの、それぞれの助剤の量を重量部で示す。
【0039】PbOおよびB23を助剤として同時に含
有させる。これら二つの酸化物は、いずれもフェライト
の主要成分よりも低融点の化合物であり、十分に焼結さ
せるのに必要な焼成温度を低下させる効果がある。これ
らの助剤は、単独で添加するよりも、両者を併せて添加
する方がより効果的である。その場合、PbOは0.05〜
0.15重量部、B23は0.10〜0.30重量部の範囲として、
それぞれ含有させる。いずれの酸化物も、これら下限値
を下回ると焼結温度低下の効果は小さく所定温度では焼
結不十分となり、上限値を上回ると十分な耐候性と機械
強度が得られなくなるためである。
【0040】助剤として、上記の他Ag2Oを0.03〜0.1
0重量部含有させる。内部導体をAg単体となるように
して焼成をおこなう場合、Agがフェライト中に拡散し
て導体の収縮が生じるが、Ag2Oを添加すると、収縮
を抑止する効果がある。含有量が0.03重量部未満ではそ
の効果は十分でないが、0.10重量部を超える含有は焼成
時に割れ発生が多発する傾向が現れる。したがってAg
2Oの含有範囲は0.03〜0.10重量部とする。
【0041】本発明において焼成後のフェライトの結晶
粒径は0.5〜1.5μmの範囲とする。これは結晶粒径が0.5
μm未満の小さい場合も、1.5μmを超える大きさの場合
も磁気特性が目標値、すなわち1.0 MHzにおける透磁率
が300以上であることを満足できなくなるからである。
【0042】フェライトの結晶粒径に対し、焼成前の粒
子の径や焼成の温度および時間が影響する。本発明で
は、とくに焼成温度を低くして、結晶粒径を0.5〜1.5μ
mの範囲に制御する必要があるので、その条件を十分検
討の上、選定しなければならない。本発明で定めるフェ
ライト主要成分に助剤を添加したグリーンシートの場
合、焼成後のフェライトの結晶粒径を0.5〜1.5μmの範
囲に制御するには、原料を混ぜて仮焼した後の粉砕は、
1.0μm以下の粉末粒子とし、バインダーを用いて混練し
シートを作製する。シート上に内部導体となる塗料を印
刷し、所定回路に積層後、焼成を800〜850℃にておこな
う。
【0043】グリーンシート用の粉末粒子の径を1.0μm
以下とするのは、これより大きい場合、低温での焼成に
て十分な焼結状態が得られなくなるためである。低温焼
成可能という点から粒子の径の下限は特には定めない
が、現実には、粒子径が小さくなりすぎると、グリーン
シートは加工困難なものになってしまうので限界があ
り、0.1μm程度までである。望ましい粒子径の範囲は0.
5〜0.9μmである。
【0044】焼成温度は、800℃未満になると焼結不十
分となり、密度は低く機械的強度は不十分で結晶粒は0.
5μmを下回り、磁気特性もよくない。またAg単体の内
部導体も、焼成不十分で電気抵抗が十分低下しない。一
方、850℃を超えると、磁気特性はある程度改善される
傾向にあるが、Agがフェライト中の成分と反応した
り、フェライト中へ拡散したりして、内部導体収縮のお
それがでてくる。また、フェライトの結晶粒が1.5μmを
超え、磁気特性が低下することもある。したがって、焼
成温度は800〜850℃に限定しなければならない。なお、
焼成時間は、被焼結体が、中心部まで十分所定温度にま
で達することができればよい。しかし長くなりすぎると
結晶粒が成長し、1.5μmを超えるようになるので 3時間
以下とするのが望ましい。
【0045】以上のように、フェライトの主要成分およ
び助剤を上記に定める範囲の組成とし、原料を配合して
仮焼後、粉砕して粒子径を1.0μm以下とした粉末を用い
てグリーンシートを作製する。そのシート上に焼成後A
g単一組成となるペーストにより内部導体を印刷後積層
し、所定形状に切断後、800〜850℃にて焼成し、得られ
たチップ端面に入出力電極用の導体を施工する。これに
よって大電流用途に適した高性能の積層チップインダク
タが製造できるのである。
【0046】
【実施例】〔実施例1〕表1に示すように、フェライト
の主成分および助剤の酸化物原料を、17種の異なった配
合にてそれぞれ十分混合し、ジルコニア製坩堝内にて大
気中730℃の温度で仮焼合成をおこなった。仮焼材はX
線回折により所要の化合物が得られていることを確認
後、ジルコニア製粉砕用ボールとともに樹脂製ポットミ
ル内に入れ粉砕し、乾燥後メッシュふるいにて分別し
て、仮焼粉の粒子径が0.6〜0.8μmとなるように整粒し
た。物性評価のため、この仮焼整粒粉にPVA液(ポリ
ビニールアルコールの10重量%水溶液)を適量混ぜ、ラ
イカイ機にて造粒し、造粒粉を金型にてプレスし、大気
中にて830℃、2.0時間の焼成をおこない、外径16mm、内
径8mm、厚さ3mmのリング状焼結体を作製した。内部導体
の拡散の有無については、次の実施例2にて説明するよ
うな、チップを作製し、これをエポキシ樹脂に埋め込ん
で研磨して、断面を走査型電子顕微鏡にて観察した。こ
のチップも積層後、上記同様大気中、830℃、2.0時間の
焼成をおこなった。
【0047】焼結体の密度はアルキメデス法にて測定
し、リング状コアにより、ヒューレットパッカード社製
のインピーダンス測定装置(HP4291A)および透磁率測
定装置(HP16454A)を用いて、1.0MHz-500mVにおける透
磁率を測定した。焼結したフェライトの結晶粒径につい
ては、アルゴンイオンによるスパッタリングにてフェラ
イト薄膜を作製し、加速電圧200kVの透過電子顕微鏡に
て、20000倍の明視野像を撮影し、これから平均の結晶
粒径を求めた。図1に試料番号3での、この電子顕微鏡
の観察例を示す。
【0048】
【表1】
【0049】表1に焼結体の特性の測定結果をあわせて
示す。試料番号 1または 5は、助剤の量は本発明の定め
る範囲であるが、Fe23、CuOおよびNiOのいず
れも本発明の範囲を外れており、透磁率の十分高いもの
が得られていない。試料番号6、 9、 10および 13は、
主成分は本発明の定める組成であるが、助剤のPbOあ
るいはB23が本発明の範囲を外れており、低温の焼成
であるため焼結が十分でなく、密度が低く透磁率が劣っ
たものになったと考えられる。試料番号14は内部導体の
Agの拡散によると思われる収縮が発生しており、他の
性能は測定しなかった。また、Ag2Oが本発明で定め
る範囲よりやや多めの試料番号17は、焼成後に割れてし
まい、特性の測定ができなかった。他の本発明で定める
組成の焼結体は、いずれも十分な密度、300以上の透磁
率、良好な結晶粒径、および十分なAgの拡散抑止のす
ぐれた結果が得られている。
【0050】〔実施例2〕表1に示した試料番号 3に相
当する配合組成の仮焼整粒粉を用い、PVBを混ぜて湿
式混練をおこない、ドクターブレード法により薄膜のグ
リーンシートを作製した。シート表面に内部導体となる
Ag単一組成ペーストを所要パターンにスクリーン印刷
し、シート間の内部導体の間の接続はスルーホールを用
い、そこへ導電ペーストを充填してシートを積層圧着
後、所定のチップサイズに切断し、大気中で830℃、2.0
時間の焼成をおこなった。なお、内部導体としてはは、
幅150μm、厚さ20μmの線路を印刷した。チップインダ
クタは、図1にその模式的外観図を示す 2125 サイズ
(長さ2.0mm、幅1.25mm、厚さ0.6m)のもので、図2に
その内部導体と積層方法を模式的に示す。
【0051】用いたソフトフェライトの透磁率は 330(a
t 1MHz)で、この積層チップインダクタの素子特性は下
記の通りであった。
【0052】 素子インピーダンス |Z|(100MHz): 200 Ω 素子インダクタンス L (100MHz) : 200 nH 直流ライン抵抗 : 30 mΩ これからわかるように、本発明による積層チップインダ
クタは、直流ライン抵抗が小さく、インダクタンスがき
わめて大きい。
【0053】
【発明の効果】本発明により、Ag単一組成の導電ペー
ストに適した温度にて焼結可能で、かつAgの拡散によ
る内部導体消失を抑止しできる酸化物磁性体、すなわち
ソフトフェライトが得られる。そのフェライトは、とく
に大電流使用を対象として内部導体に電気抵抗の小さい
Ag単体を用いる積層チップインダクタに最適であり、
インダクタの性能を向上しその使用範囲を大きく拡大す
る。本発明をインダクタに適用することにより、近年増
大しつつある電磁気雑音による種々の悪影響を効果的に
低減できるので、産業上極めて有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸化物磁性体の、透過電子顕微鏡観察
写真(20000倍)の例である。
【図2】積層チップインダクタの外観を模式的に示した
図である。
【図3】積層チップインダクタの内部導体のパターン
と、それを積層する状態を模式的に示した図である。
【符号の説明】
1 フェライトの積層焼結体部分 2 入出力用端部電極 3 フェライトシート 4 内部導体 5 入出力電極と接続する導電部分 6 下層内部導体との接続用スルーホール 7 上層内部導体との接続点

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】焼結体として、Fe23:45.0〜49.0モル
    %、CuO:8.0〜14.0モル%、NiO:8.0〜36.0モル
    %、ZnO:上記3成分の残部、からなる主成分を100
    重量部とし、これに助剤として、PbO:0.05〜0.15重
    量部、B23:0.10〜0.30重量部およびAg2O:0.03〜
    0.10重量部を含有することを特徴とする、酸化物磁性材
    料。
  2. 【請求項2】焼結後の結晶粒径が0.5〜1.5μmであるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の酸化物磁性材料。
  3. 【請求項3】酸化物原料を仮焼合成後、粒子径が1.0μm
    以下となるよう粉砕整粒し、この粉体を用いて所定形状
    に成形後、800〜850℃にて焼成をおこなうことを特徴と
    する、請求項1または請求項2に記載の酸化物磁性材料
    の製造方法。
  4. 【請求項4】Agを単一組成成分とする内部導体を用
    い、ソフトフェライトを請求項1または請求項2に記載
    の酸化物磁性材料とすることを特徴とする積層チップイ
    ンダクタ。
  5. 【請求項5】Agを単一組成成分とする内部導体を用
    い、ソフトフェライトを請求項1または請求項2に記載
    の酸化物磁性材料とし、請求項3の方法にて一体化焼成
    することを特徴とする積層チップインダクタの製造方
    法。
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