JP3407681B2 - 酸化物磁性材および積層チップインダクタとその製造方法 - Google Patents
酸化物磁性材および積層チップインダクタとその製造方法Info
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- JP3407681B2 JP3407681B2 JP03015699A JP3015699A JP3407681B2 JP 3407681 B2 JP3407681 B2 JP 3407681B2 JP 03015699 A JP03015699 A JP 03015699A JP 3015699 A JP3015699 A JP 3015699A JP 3407681 B2 JP3407681 B2 JP 3407681B2
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、小型の電子機器な
どにおいて、電磁波干渉ノイズ対策のためなどに使用さ
れるチップインダクタ用のソフトフェライト、すなわち
高透磁率酸化物磁性材、それを用いた積層チップインダ
クタ、およびそれらの製造方法に関する。
どにおいて、電磁波干渉ノイズ対策のためなどに使用さ
れるチップインダクタ用のソフトフェライト、すなわち
高透磁率酸化物磁性材、それを用いた積層チップインダ
クタ、およびそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年のパーソナルコンピュータや携帯電
話等に代表される、小型のOA機器あるいは移動通信機
器の発達に伴い、それらの機器に用いられる電子部品に
おいても、小型化、高性能化、低価格化などが強く要望
される。それらの部品の一つに積層型のチップインダク
タがある。
話等に代表される、小型のOA機器あるいは移動通信機
器の発達に伴い、それらの機器に用いられる電子部品に
おいても、小型化、高性能化、低価格化などが強く要望
される。それらの部品の一つに積層型のチップインダク
タがある。
【0003】インダクタとは、空芯または軟質磁性材を
芯材とするような巻線の要素に対応するもので、そのイ
ンダクタンスに基づく抵抗値すなわちインピーダンス
が、通過する電流の周波数が高くなるほど増加する特性
を有する。したがって、有用なな信号は通過させるが、
その信号より高い周波数の不要信号やノイズは阻止する
というローパスフィルターの機能があり、電子機器間の
電磁波干渉や、外部雑音の侵入による誤作動防止に活用
される。
芯材とするような巻線の要素に対応するもので、そのイ
ンダクタンスに基づく抵抗値すなわちインピーダンス
が、通過する電流の周波数が高くなるほど増加する特性
を有する。したがって、有用なな信号は通過させるが、
その信号より高い周波数の不要信号やノイズは阻止する
というローパスフィルターの機能があり、電子機器間の
電磁波干渉や、外部雑音の侵入による誤作動防止に活用
される。
【0004】インダクタを小型化しかつ高性能化して、
電子回路部品に適応させたものが積層チップインダクタ
である。チップインダクタは、例えば図1にその外観の
概念図を示すように、直方体のソフトフェライト焼結体
1の両対向面が、内部導体の入出力用端部電極2になっ
ている。その内部の一例を図2の模式図に示すが、グリ
ーンシート3上に導電材による内部導体パターン4を印
刷後、各層の導体が接続点6および7を介して直列接続
できるようにし、これらを積層して焼結し一体化してい
る。この内部導体4は外部接続用導体5を介し外側の両
端部電極2に接続されている。これら導体に密着したソ
フトフェライト、すなわち酸化物磁性材(以下単にフェ
ライトと略称する)は、導体のインダクタンスを大幅に
増大させる。
電子回路部品に適応させたものが積層チップインダクタ
である。チップインダクタは、例えば図1にその外観の
概念図を示すように、直方体のソフトフェライト焼結体
1の両対向面が、内部導体の入出力用端部電極2になっ
ている。その内部の一例を図2の模式図に示すが、グリ
ーンシート3上に導電材による内部導体パターン4を印
刷後、各層の導体が接続点6および7を介して直列接続
できるようにし、これらを積層して焼結し一体化してい
る。この内部導体4は外部接続用導体5を介し外側の両
端部電極2に接続されている。これら導体に密着したソ
フトフェライト、すなわち酸化物磁性材(以下単にフェ
ライトと略称する)は、導体のインダクタンスを大幅に
増大させる。
【0005】このような両端面を入出力電極とした、小
さな直方体の積層チップインダクタは、電子回路基板へ
の実装が容易であり、また、回路パターンを印刷したグ
リーンシートを積層後、所定チップ形状に切断して焼成
をおこなえば、量産によるコスト低減が可能となる。こ
のようなインダクタの性能、ことにそのインダクタンス
は、上記のようにフェライトの特性に大きく支配され
る。
さな直方体の積層チップインダクタは、電子回路基板へ
の実装が容易であり、また、回路パターンを印刷したグ
リーンシートを積層後、所定チップ形状に切断して焼成
をおこなえば、量産によるコスト低減が可能となる。こ
のようなインダクタの性能、ことにそのインダクタンス
は、上記のようにフェライトの特性に大きく支配され
る。
【0006】フェライトは、一般的にX−Fe2O4の形
で表される組成の、XがMn、Fe、Co、Ni、C
u、Zn等の一種、あるいはこれらの元素の混合物であ
る酸化物の固溶体である。積層チップ内部の、導体の形
状および寸法が同じであれば、フェライトの透磁率が高
いほど大きなインダクタンスが得られる。しかし、たと
えばXがMnとZnで構成されたフェライトは、きわめ
て高い透磁率を示すが、このMnZnフェライトは電気
抵抗が高くないため、低周波数帯域ではすぐれていても
高周波数帯域では透磁率が低下してくるので、チップイ
ンダクタには適用できない。これに対し、電気抵抗が十
分高く高周波帯域に使用可能なフェライトとして、Ni
Znフェライトがあり、さらには、より低温で焼結が可
能なフェライトとしてCuZnフェライトが知られてい
る。
で表される組成の、XがMn、Fe、Co、Ni、C
u、Zn等の一種、あるいはこれらの元素の混合物であ
る酸化物の固溶体である。積層チップ内部の、導体の形
状および寸法が同じであれば、フェライトの透磁率が高
いほど大きなインダクタンスが得られる。しかし、たと
えばXがMnとZnで構成されたフェライトは、きわめ
て高い透磁率を示すが、このMnZnフェライトは電気
抵抗が高くないため、低周波数帯域ではすぐれていても
高周波数帯域では透磁率が低下してくるので、チップイ
ンダクタには適用できない。これに対し、電気抵抗が十
分高く高周波帯域に使用可能なフェライトとして、Ni
Znフェライトがあり、さらには、より低温で焼結が可
能なフェライトとしてCuZnフェライトが知られてい
る。
【0007】通常、透磁率が高いすぐれた性能を持つ緻
密なフェライトを得るためには、素材を十分に混合して
700〜1100℃の温度で仮焼反応させたものを粉砕して原
料粉とし、バインダーを混ぜ混練して最終形状に成型
後、1000℃を超える高温で焼成する。しかしながら、積
層チップインダクタは、塗布可能な状態の導体の素材を
グリーンシート上に印刷し、これを積層して導体とフェ
ライトとを同時焼成し一体化するので、焼成温度が高す
ぎると、この内部導体はフェライト中へ拡散していった
り溶けて流れ出したりして、その断面積の減少や消失が
起きる。
密なフェライトを得るためには、素材を十分に混合して
700〜1100℃の温度で仮焼反応させたものを粉砕して原
料粉とし、バインダーを混ぜ混練して最終形状に成型
後、1000℃を超える高温で焼成する。しかしながら、積
層チップインダクタは、塗布可能な状態の導体の素材を
グリーンシート上に印刷し、これを積層して導体とフェ
ライトとを同時焼成し一体化するので、焼成温度が高す
ぎると、この内部導体はフェライト中へ拡散していった
り溶けて流れ出したりして、その断面積の減少や消失が
起きる。
【0008】このため内部導体には、通常Ag−Pd合
金が多く用いられる。AgにPdを含有させると、融点
が上昇して溶融や拡散を抑止し、フェライトとの熱収縮
差を低減できる。しかし、AgはPdなど他の合金元素
を含むと、電気抵抗が高くなるという問題がある。イン
ダクタとしての品質の指標であるいわゆるQ値は、内部
導体の電気抵抗増加とともに低下してくる。その上、積
層チップインダクタの大電流部位への使用が近年増して
おり、その場合に内部導体の電気抵抗が高ければ、使用
中の発熱や効率低下をもたらす。また、ノイズ対策が電
源回路ばかりでなく電子回路のインターフェイス部位に
も拡大しつつあり、さらに小型の携帯型電子機器などで
は、安定したグランドの確保が困難なため、コンデンサ
型の並列実装ノイズフィルタよりも、インダクタ型の直
列実装ノイズフィルタが多用される傾向にある。
金が多く用いられる。AgにPdを含有させると、融点
が上昇して溶融や拡散を抑止し、フェライトとの熱収縮
差を低減できる。しかし、AgはPdなど他の合金元素
を含むと、電気抵抗が高くなるという問題がある。イン
ダクタとしての品質の指標であるいわゆるQ値は、内部
導体の電気抵抗増加とともに低下してくる。その上、積
層チップインダクタの大電流部位への使用が近年増して
おり、その場合に内部導体の電気抵抗が高ければ、使用
中の発熱や効率低下をもたらす。また、ノイズ対策が電
源回路ばかりでなく電子回路のインターフェイス部位に
も拡大しつつあり、さらに小型の携帯型電子機器などで
は、安定したグランドの確保が困難なため、コンデンサ
型の並列実装ノイズフィルタよりも、インダクタ型の直
列実装ノイズフィルタが多用される傾向にある。
【0009】これらの点から、チップ内部の導体の電気
抵抗はできるだけ低くすることが望ましく、電気抵抗の
低い内部導体としては、実用的にはPdを減らしたA
g、できればAgそのものの単体がよい。しかし、Ag
の融点は962℃と低く、Agを用いる場合、焼結時の溶
融や拡散による内部導体消失を防止するためには、900
℃を下回る温度で焼成する必要がある。
抵抗はできるだけ低くすることが望ましく、電気抵抗の
低い内部導体としては、実用的にはPdを減らしたA
g、できればAgそのものの単体がよい。しかし、Ag
の融点は962℃と低く、Agを用いる場合、焼結時の溶
融や拡散による内部導体消失を防止するためには、900
℃を下回る温度で焼成する必要がある。
【0010】このように、積層チップインダクタ用のフ
ェライトに対して要求が増しつつある特性は、高周波数
帯域で十分な透磁率を有し、かつ電気抵抗が高いこと、
およびそれらの性能を得るための焼結温度が低いことで
ある。
ェライトに対して要求が増しつつある特性は、高周波数
帯域で十分な透磁率を有し、かつ電気抵抗が高いこと、
およびそれらの性能を得るための焼結温度が低いことで
ある。
【0011】前述の、低温で焼結可能なCuZnフェラ
イトを、高周波帯域特性にすぐれたNiZnフェライト
に組み合わせた、NiCuZnフェライトも積層チップ
インダクタに使用されている。しかしながら、通常のN
iCuZnフェライトの焼成温度は1000〜1100℃であ
り、900℃を下回る温度では、緻密なフェライトが得ら
れないという難点がある。
イトを、高周波帯域特性にすぐれたNiZnフェライト
に組み合わせた、NiCuZnフェライトも積層チップ
インダクタに使用されている。しかしながら、通常のN
iCuZnフェライトの焼成温度は1000〜1100℃であ
り、900℃を下回る温度では、緻密なフェライトが得ら
れないという難点がある。
【0012】フェライトの焼結温度の低温化の方法に
は、組成の変更、添加物の選定、粉体粒子の微細化など
が挙げられる。通常、フェライト中のCu、すなわち原
料中のCuOの量を増せば、焼結温度は低下できる。し
かし、CuOの多すぎはCuの離脱を引き起こし磁気特
性を損なうなど、焼結温度低下だけの目的による組成変
更には限界がある。また、低融点のガラス原料を少量添
加し、焼結温度の低温化をはかる方法があるが、用いる
ガラス原料によってはAgと反応して内部導体を収縮あ
るいは拡散させ、積層チップインダクタとしての所要性
能を損なわせるおそれがある。粉体粒子の微細化は、粒
子が細かいほど低温で焼結が進行しやすくなることか
ら、仮焼後の原料の粉砕を十分におこなえばよい。しか
し細かくしすぎると粉体の比表面積が増大してバインダ
ーの効果が減退するので、それの多量添加が必要にな
り、表面の均質性にすぐれたグリーンシートが得られな
くなるため、これにも限度がある。
は、組成の変更、添加物の選定、粉体粒子の微細化など
が挙げられる。通常、フェライト中のCu、すなわち原
料中のCuOの量を増せば、焼結温度は低下できる。し
かし、CuOの多すぎはCuの離脱を引き起こし磁気特
性を損なうなど、焼結温度低下だけの目的による組成変
更には限界がある。また、低融点のガラス原料を少量添
加し、焼結温度の低温化をはかる方法があるが、用いる
ガラス原料によってはAgと反応して内部導体を収縮あ
るいは拡散させ、積層チップインダクタとしての所要性
能を損なわせるおそれがある。粉体粒子の微細化は、粒
子が細かいほど低温で焼結が進行しやすくなることか
ら、仮焼後の原料の粉砕を十分におこなえばよい。しか
し細かくしすぎると粉体の比表面積が増大してバインダ
ーの効果が減退するので、それの多量添加が必要にな
り、表面の均質性にすぐれたグリーンシートが得られな
くなるため、これにも限度がある。
【0013】フェライトの特性を損なうことなく焼結温
度を低下させ、内部導体にAgを用いて許容電流値を大
きくした、積層チップインダクタの発明が特公平7-8714
9号公報に提示されている。この発明は主成分のNiC
uZnフェライトに、Bi2O3、V2O5または珪酸鉛ガ
ラスのうちの少なくとも一種を少量添加することによ
り、1150℃を要した焼成温度を900℃に低下させ、内部
導体をAg-Pd合金からAgに変えて、通電時の発熱
から規制される許容電流値を、230mmAから394〜415mm
Aに増加させることができたとしている。しかしながら
この場合、内部導体にAgを用いた素子としては、十分
な許容電流が得られているとは言い難い。
度を低下させ、内部導体にAgを用いて許容電流値を大
きくした、積層チップインダクタの発明が特公平7-8714
9号公報に提示されている。この発明は主成分のNiC
uZnフェライトに、Bi2O3、V2O5または珪酸鉛ガ
ラスのうちの少なくとも一種を少量添加することによ
り、1150℃を要した焼成温度を900℃に低下させ、内部
導体をAg-Pd合金からAgに変えて、通電時の発熱
から規制される許容電流値を、230mmAから394〜415mm
Aに増加させることができたとしている。しかしながら
この場合、内部導体にAgを用いた素子としては、十分
な許容電流が得られているとは言い難い。
【0014】以上のように、大電流に適用する積層チッ
プインダクタにおいては、電気抵抗をできるだけ低くす
るために、内部導体にはAg単体を用いることが望まし
い。しかし、拡散や反応などによりAg導体が細くなっ
たり消失したりしない範囲の温度で焼成して、十分高い
透磁率の得られるフェライト、そして、そのようなフェ
ライトを用いた積層チップインダクタに関して、現状で
はまだ十分すぐれた性能のものが得られていない。
プインダクタにおいては、電気抵抗をできるだけ低くす
るために、内部導体にはAg単体を用いることが望まし
い。しかし、拡散や反応などによりAg導体が細くなっ
たり消失したりしない範囲の温度で焼成して、十分高い
透磁率の得られるフェライト、そして、そのようなフェ
ライトを用いた積層チップインダクタに関して、現状で
はまだ十分すぐれた性能のものが得られていない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、チップイン
ダクタを構成するフェライトとして、低温での焼結にて
十分高い透磁率が得られる酸化物磁性材、およびその製
造方法を提供し、電気抵抗の小さいAgを内部導体に用
い、この磁性材料と組み合わせてAgの拡散が抑制され
る低温で焼成することにより、大電流仕様に適応できる
高性能のチップインダクタを得ることを目的とする。
ダクタを構成するフェライトとして、低温での焼結にて
十分高い透磁率が得られる酸化物磁性材、およびその製
造方法を提供し、電気抵抗の小さいAgを内部導体に用
い、この磁性材料と組み合わせてAgの拡散が抑制され
る低温で焼成することにより、大電流仕様に適応できる
高性能のチップインダクタを得ることを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】積層チップインダクタの
大電流仕様の要望に対し、高性能のものを得るには、内
部導体としては合金でなくAg単体のものが必要であ
り、そしてフェライトはその使用条件下で高透磁率であ
る必要がある。また、内部導体はペースト状の素材の形
でフェライトのグリーンシート上に印刷され、乾燥後シ
ートが積層圧着され成形されて一体化焼成される際に、
フェライトとともにその焼結がおこなわれる。そこで、
まず内部導体をAgとする場合のAg導体素材について
調査した。その結果、グリーンシート上のAg素材の焼
結が十分進行し、導体の抵抗値が最小となる焼成温度は
800〜900℃であることを確認した。この温度範囲より高
くなると、Ag導体は拡散や反応を起こしやすくなっ
て、断面積が減少したり他元素が侵入したりするおそれ
があり、低くなると焼結不十分になって、いずれもイン
ダクタ内部導体としての電気抵抗値を増加させる。
大電流仕様の要望に対し、高性能のものを得るには、内
部導体としては合金でなくAg単体のものが必要であ
り、そしてフェライトはその使用条件下で高透磁率であ
る必要がある。また、内部導体はペースト状の素材の形
でフェライトのグリーンシート上に印刷され、乾燥後シ
ートが積層圧着され成形されて一体化焼成される際に、
フェライトとともにその焼結がおこなわれる。そこで、
まず内部導体をAgとする場合のAg導体素材について
調査した。その結果、グリーンシート上のAg素材の焼
結が十分進行し、導体の抵抗値が最小となる焼成温度は
800〜900℃であることを確認した。この温度範囲より高
くなると、Ag導体は拡散や反応を起こしやすくなっ
て、断面積が減少したり他元素が侵入したりするおそれ
があり、低くなると焼結不十分になって、いずれもイン
ダクタ内部導体としての電気抵抗値を増加させる。
【0017】フェライトの素材には、このAg導体の最
適焼結温度範囲にて十分に焼結がおこなわれ、高透磁率
が得られるものが必要である。そこで、焼成後のフェラ
イトの特性の目標値を、焼結密度ρが5.0g/cm3以上であ
ること、および1.0 MHzおける透磁率μが350以上である
こととし、その焼結温度をAg導体焼結に適した温度範
囲にまで低下できる、主成分と助剤との組み合わせの組
成範囲を調査した。
適焼結温度範囲にて十分に焼結がおこなわれ、高透磁率
が得られるものが必要である。そこで、焼成後のフェラ
イトの特性の目標値を、焼結密度ρが5.0g/cm3以上であ
ること、および1.0 MHzおける透磁率μが350以上である
こととし、その焼結温度をAg導体焼結に適した温度範
囲にまで低下できる、主成分と助剤との組み合わせの組
成範囲を調査した。
【0018】フェライトの主成分の原料としては、Fe
2O3の他に焼結温度を低くできるCuO、共振点をシフ
トして高周波帯域の特性を向上させるNiO、そして高
透磁率を得るためのZnOを選び、それぞれの配合比率
を検討した。それとともに、これらの主成分に適した助
剤を種々調査した結果、Bi2O3とB2O3とを用いれ
ば、上記の目標値を超えるフェライトが、Ag導体の焼
結温度にて得られることが明らかになった。これは、B
2O3がこの温度範囲では液相となり、Bi2O3とともに
主成分の粒子間に存在して焼結を促進すること、あるい
はBi2O3−B2O3−Fe2O3系の強磁性ガラスを形成
することなどの効果により、低温で十分な焼結が可能に
なったためと思われた。
2O3の他に焼結温度を低くできるCuO、共振点をシフ
トして高周波帯域の特性を向上させるNiO、そして高
透磁率を得るためのZnOを選び、それぞれの配合比率
を検討した。それとともに、これらの主成分に適した助
剤を種々調査した結果、Bi2O3とB2O3とを用いれ
ば、上記の目標値を超えるフェライトが、Ag導体の焼
結温度にて得られることが明らかになった。これは、B
2O3がこの温度範囲では液相となり、Bi2O3とともに
主成分の粒子間に存在して焼結を促進すること、あるい
はBi2O3−B2O3−Fe2O3系の強磁性ガラスを形成
することなどの効果により、低温で十分な焼結が可能に
なったためと思われた。
【0019】このようなフェライト素材を用いて、Ag
を内部導体とする積層チップインダクタを製造したとこ
ろ、導体とフェライトとの界面に空隙の生じる場合があ
ること、およびAg導体の断面積減少の傾向が認められ
ることがわかってきた。界面に空隙が生じると、特性の
ばらつきやチップインダクタとしての電気抵抗の増加を
もたらし、その上長期使用の間に特性の劣化する耐候性
低下の原因となる。この界面の空隙については、焼結時
の熱収縮率がAg素材とフェライト素材とで異なるため
と推定された。Ag導体の断面積減少は、フェライト中
へのAgの拡散、あるいはAgのBi2O3やB2O3との
反応によると考えられた。
を内部導体とする積層チップインダクタを製造したとこ
ろ、導体とフェライトとの界面に空隙の生じる場合があ
ること、およびAg導体の断面積減少の傾向が認められ
ることがわかってきた。界面に空隙が生じると、特性の
ばらつきやチップインダクタとしての電気抵抗の増加を
もたらし、その上長期使用の間に特性の劣化する耐候性
低下の原因となる。この界面の空隙については、焼結時
の熱収縮率がAg素材とフェライト素材とで異なるため
と推定された。Ag導体の断面積減少は、フェライト中
へのAgの拡散、あるいはAgのBi2O3やB2O3との
反応によると考えられた。
【0020】そこで次に、このAg導体とフェライトと
の界面の空隙発生、およびAgの断面減少防止に対し、
助剤に他の組成を含有させることによる効果を種々調査
してみた。その結果、Rh2O3とAg2Oとの添加が効
果的であることを見出した。すなわち、Bi2O3および
B2O3とともに、助剤としてRh2O3とAg2Oとを同
時に用いれば、フェライトの透磁率を十分高い値に維持
したまま、焼成温度を低下でき、その上、焼成時の界面
の空隙発生やAg導体の断面積減少も抑止できたのであ
る。
の界面の空隙発生、およびAgの断面減少防止に対し、
助剤に他の組成を含有させることによる効果を種々調査
してみた。その結果、Rh2O3とAg2Oとの添加が効
果的であることを見出した。すなわち、Bi2O3および
B2O3とともに、助剤としてRh2O3とAg2Oとを同
時に用いれば、フェライトの透磁率を十分高い値に維持
したまま、焼成温度を低下でき、その上、焼成時の界面
の空隙発生やAg導体の断面積減少も抑止できたのであ
る。
【0021】Rh2O3およびAg2Oの含有により、こ
のような効果が得られる理由は必ずしも明らかではない
が、Rh2O3はフェライトのグリーンシートとAg導電
体ペーストが高温で焼成される際、フェライト中から拡
散してきてAg粒子を被覆するような形で集まり、これ
が空隙の発生を阻止し、Agの他の成分との反応を防止
し、さらにフェライト内部への拡散を抑止していると考
えられる。またAg2O含有は、拡散しようとするフェ
ライト中のAg濃度を高める効果があるため、濃度勾配
を小さくしてAgの拡散傾向を抑止していると推測され
る。これら二つの効果が相まってグリーンシート上に印
刷されたAgの導電ペーストが、それの有するAg量を
損耗することなく健全な内部導体に変化したものと思わ
れる。
のような効果が得られる理由は必ずしも明らかではない
が、Rh2O3はフェライトのグリーンシートとAg導電
体ペーストが高温で焼成される際、フェライト中から拡
散してきてAg粒子を被覆するような形で集まり、これ
が空隙の発生を阻止し、Agの他の成分との反応を防止
し、さらにフェライト内部への拡散を抑止していると考
えられる。またAg2O含有は、拡散しようとするフェ
ライト中のAg濃度を高める効果があるため、濃度勾配
を小さくしてAgの拡散傾向を抑止していると推測され
る。これら二つの効果が相まってグリーンシート上に印
刷されたAgの導電ペーストが、それの有するAg量を
損耗することなく健全な内部導体に変化したものと思わ
れる。
【0022】以上のように、主成分および添加すべき助
剤等を検討した結果、低い温度にて焼成可能で、Ag内
部導体に適合した、ほぼ目的とするフェライトの得られ
ることがわかった。そこで、当初の目標、すなわち 1.0
MHzにおける透磁率μが350以上であって、焼結密度ρ
が5.0g/cm3以上であるフェライトを得るために、さらに
各組成の範囲限界をより明確にして、本発明を完成させ
た。このようなフェライトのグリーンシートを用いるこ
とにより、大電流用途に適した高性能の積層チップイン
ダクタの製造が可能になった。本発明の要旨とするとこ
ろは、以下のとおりである。
剤等を検討した結果、低い温度にて焼成可能で、Ag内
部導体に適合した、ほぼ目的とするフェライトの得られ
ることがわかった。そこで、当初の目標、すなわち 1.0
MHzにおける透磁率μが350以上であって、焼結密度ρ
が5.0g/cm3以上であるフェライトを得るために、さらに
各組成の範囲限界をより明確にして、本発明を完成させ
た。このようなフェライトのグリーンシートを用いるこ
とにより、大電流用途に適した高性能の積層チップイン
ダクタの製造が可能になった。本発明の要旨とするとこ
ろは、以下のとおりである。
【0023】(1) Fe2O3:44.0〜49.9モル%、Cu
O:5.0〜12.0モル%、NiO:20.0〜30.0モル%、お
よびZnO:上記3成分の残部、である主成分と、主成
分100重量部に対してBi2O3:0.5〜2.0重量部、B2O
3:0.1〜0.5重量部、Rh2O3:0.5〜2.0重量部、およ
びAg2O:0.03〜0.10重量部の助剤とからなることを
特徴とする酸化物磁性材。
O:5.0〜12.0モル%、NiO:20.0〜30.0モル%、お
よびZnO:上記3成分の残部、である主成分と、主成
分100重量部に対してBi2O3:0.5〜2.0重量部、B2O
3:0.1〜0.5重量部、Rh2O3:0.5〜2.0重量部、およ
びAg2O:0.03〜0.10重量部の助剤とからなることを
特徴とする酸化物磁性材。
【0024】(2) 酸化物原料を仮焼合成し粉砕整粒した
粉体を用いて所定形状に成形後、800〜900℃にて0.5〜
5.0時間焼成をおこなうことを特徴とする、上記(1)の酸
化物磁性材の製造方法 (3) Agの内部導体と、上記(1)に記載の酸化物磁性材
とからなることを特徴とする積層チップインダクタ。
粉体を用いて所定形状に成形後、800〜900℃にて0.5〜
5.0時間焼成をおこなうことを特徴とする、上記(1)の酸
化物磁性材の製造方法 (3) Agの内部導体と、上記(1)に記載の酸化物磁性材
とからなることを特徴とする積層チップインダクタ。
【0025】(4) 焼成後Agとなる内部導体素材と、焼
成によって上記(1)の酸化物磁性材となるグリーンシー
トとにより、所定の回路積層体を成形てた後、800〜900
℃にて0.5〜5.0時間の一体化焼成をおこなうことを特徴
とする、上記(3)の積層チップインダクタの製造方法。
成によって上記(1)の酸化物磁性材となるグリーンシー
トとにより、所定の回路積層体を成形てた後、800〜900
℃にて0.5〜5.0時間の一体化焼成をおこなうことを特徴
とする、上記(3)の積層チップインダクタの製造方法。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明において、フェライトの組
成を限定するのは、以下の理由による。
成を限定するのは、以下の理由による。
【0027】Fe2O3は、フェライトの基幹成分であ
り、そのフェライトの主成分をX−Fe2O4(XはC
u、Ni、Zn等)として示される逆スピネル構造の固
溶体とすれば、そのうちの44.0〜49.9モル%を構成して
いなければならない。44.0モル%未満の場合、十分な透
磁率が得られず、積層チップインダクタに組み込まれた
ときのインピーダンスが不足する。他方、49.9モル%を
超えて存在すると、焼結密度の低下により積層チップイ
ンダクタの機械的強度が不足し、その上長期使用による
性能劣化の耐性、すなわち耐候性が低下してくる。
り、そのフェライトの主成分をX−Fe2O4(XはC
u、Ni、Zn等)として示される逆スピネル構造の固
溶体とすれば、そのうちの44.0〜49.9モル%を構成して
いなければならない。44.0モル%未満の場合、十分な透
磁率が得られず、積層チップインダクタに組み込まれた
ときのインピーダンスが不足する。他方、49.9モル%を
超えて存在すると、焼結密度の低下により積層チップイ
ンダクタの機械的強度が不足し、その上長期使用による
性能劣化の耐性、すなわち耐候性が低下してくる。
【0028】CuOはフェライトの主成分のうちの、5.
0〜12.0モル%を構成していることとする。これは、C
uOは焼結温度の低温化に大きく寄与しており、5.0モ
ル%を下回ると、本発明の目的とする低温度域で焼成を
おこなう場合に焼結密度が不十分になり、機械的強度の
不足に加えて耐候性が劣るからである。また、12.0モル
%を超えると焼成時、表面にガラスとの混合相が形成さ
れるため、保持台に溶着し生産性が低下する。
0〜12.0モル%を構成していることとする。これは、C
uOは焼結温度の低温化に大きく寄与しており、5.0モ
ル%を下回ると、本発明の目的とする低温度域で焼成を
おこなう場合に焼結密度が不十分になり、機械的強度の
不足に加えて耐候性が劣るからである。また、12.0モル
%を超えると焼成時、表面にガラスとの混合相が形成さ
れるため、保持台に溶着し生産性が低下する。
【0029】NiOはフェライトの高周波域における透
磁率を確保するために含有させる。その量は20.0モル%
未満でも、また逆に多すぎて30.0モル%を超える場合で
も、100MHzないしはそれ以上の高周波域でのインピーダ
ンスが低下するので、フェライトの主成分中の含有量は
20.0〜30.0モル%に限定する。
磁率を確保するために含有させる。その量は20.0モル%
未満でも、また逆に多すぎて30.0モル%を超える場合で
も、100MHzないしはそれ以上の高周波域でのインピーダ
ンスが低下するので、フェライトの主成分中の含有量は
20.0〜30.0モル%に限定する。
【0030】ZnOはフェライトの透磁率向上のために
重要な元素であり、フェライトの主成分の、上記Fe2
O3、CuOおよびNiOを除いた残りの部分を構成す
るものとする。ただし、その含有比率が14.0モル%を下
回ると、得られたフェライトの磁気特性不十分、焼結密
度不足等の問題を生じ、逆に26.0モル%を超えても磁気
特性が悪くなるので、望ましいのは、14.0〜26.0モル%
の範囲になるようにすることである。
重要な元素であり、フェライトの主成分の、上記Fe2
O3、CuOおよびNiOを除いた残りの部分を構成す
るものとする。ただし、その含有比率が14.0モル%を下
回ると、得られたフェライトの磁気特性不十分、焼結密
度不足等の問題を生じ、逆に26.0モル%を超えても磁気
特性が悪くなるので、望ましいのは、14.0〜26.0モル%
の範囲になるようにすることである。
【0031】上記のフェライトの主成分にBi2O3、B
2O3、Rh2O3およびAg2Oからなる組成の助剤を含
有させる。助剤の各成分の所要量とその作用は以下のと
おりである。この場合、フェライトの主成分を100重量
部としたときの、それぞれの成分の量を重量部で示す。
2O3、Rh2O3およびAg2Oからなる組成の助剤を含
有させる。助剤の各成分の所要量とその作用は以下のと
おりである。この場合、フェライトの主成分を100重量
部としたときの、それぞれの成分の量を重量部で示す。
【0032】Bi2O3はB2O3とともに含有させること
により、低温での焼結を促進させる効果がある。Bi2
O3の量が0.5重量部未満の場合、焼結が不十分となり、
得られたフェライトは十分な透磁率が得られない。一
方、2.0重量部を超える場合は焼成の際にAg内部導体
の断面積減少が顕著になり、導体を消失させるおそれが
ある。そこで、Bi2O3の量を0.5〜2.0重量部とする。
により、低温での焼結を促進させる効果がある。Bi2
O3の量が0.5重量部未満の場合、焼結が不十分となり、
得られたフェライトは十分な透磁率が得られない。一
方、2.0重量部を超える場合は焼成の際にAg内部導体
の断面積減少が顕著になり、導体を消失させるおそれが
ある。そこで、Bi2O3の量を0.5〜2.0重量部とする。
【0033】B2O3は融点が低く、焼成時に主成分の結
晶粒間に液相となって存在し、焼結を促進する効果があ
る。その量が0.1重量部未満の場合は効果が不十分で焼
結が進まず、焼成後の密度が大きくならない。しかし0.
5重量部を超える量含有すると、焼成中に液相成分が流
出し、冷却後固化して焼結体が保持台に溶着するため、
製品製造が困難となる。そこでB2O3の含有量は0.1〜
0.5重量部に限定する。
晶粒間に液相となって存在し、焼結を促進する効果があ
る。その量が0.1重量部未満の場合は効果が不十分で焼
結が進まず、焼成後の密度が大きくならない。しかし0.
5重量部を超える量含有すると、焼成中に液相成分が流
出し、冷却後固化して焼結体が保持台に溶着するため、
製品製造が困難となる。そこでB2O3の含有量は0.1〜
0.5重量部に限定する。
【0034】Rh2O3の含有量は、0.5〜2.0重量部とす
る。Rh2O3は、焼成時のAg内部導体とフェライトと
の界面に生じやすい空隙の抑止やAgの他の組成との反
応を阻止する効果があり、さらにAg2Oと同時に存在
させることによってAgのフェライト中への拡散を防止
する効果もある。このような効果は、0.5重量部未満で
は十分発揮させることができず、他方、2.0重量部を超
えて含有させると、焼結時フェライトに亀裂を発生する
おそれがある。そこで、Rh2O3の含有量は、0.5〜2.0
重量部とするのである。
る。Rh2O3は、焼成時のAg内部導体とフェライトと
の界面に生じやすい空隙の抑止やAgの他の組成との反
応を阻止する効果があり、さらにAg2Oと同時に存在
させることによってAgのフェライト中への拡散を防止
する効果もある。このような効果は、0.5重量部未満で
は十分発揮させることができず、他方、2.0重量部を超
えて含有させると、焼結時フェライトに亀裂を発生する
おそれがある。そこで、Rh2O3の含有量は、0.5〜2.0
重量部とするのである。
【0035】Ag2Oは、焼成時の拡散によると考えら
れるAg導体の断面積減少を防止するために添加する。
その含有量は0.03〜0.10重量部とする。これは、0.03重
量部未満の場合にはその効果は十分でなく、0.10重量部
を超えると焼成の際に割れを生じることがあるからであ
る。
れるAg導体の断面積減少を防止するために添加する。
その含有量は0.03〜0.10重量部とする。これは、0.03重
量部未満の場合にはその効果は十分でなく、0.10重量部
を超えると焼成の際に割れを生じることがあるからであ
る。
【0036】これらの組成の他、フェライトの特性に大
きく影響しない限りにおいて、多少の不可避的不純物の
混在は許容できる。
きく影響しない限りにおいて、多少の不可避的不純物の
混在は許容できる。
【0037】チップインダクタの製造は、通常の方法で
おこなえばよい。すなわちまず一般のフェライトの製造
方法と同様、主成分および助剤とを混合して仮焼し、仮
焼粉を粉砕して整粒した後、バインダーを加えて十分混
練し、ドクターブレード法などにより、グリーンシート
に成形する。このグリーンシート上に導電体ペーストを
印刷後、シートを積層して所定形状に切断してから、80
0〜900℃にて0.5〜5.0時間焼成する。焼成温度は800℃
を下回ると、焼結不十分で磁気特性および機械的強度と
も劣ったものになり、900℃を超えると、内部導体が細
くなったり失したりして、良好なチップインダクタが得
られなくなるからである。また焼成時間は、0.5時間未
満では焼結が不十分となる一方、必要以上に加熱を続け
ても性能の向上はほとんど認められず、加熱の時間およ
びエネルギーの無駄になるので、5.0時間までとする。
焼成後、内部導体と接続する導体部分に入出力用端部電
極を取り付け、チップインダクタとする。
おこなえばよい。すなわちまず一般のフェライトの製造
方法と同様、主成分および助剤とを混合して仮焼し、仮
焼粉を粉砕して整粒した後、バインダーを加えて十分混
練し、ドクターブレード法などにより、グリーンシート
に成形する。このグリーンシート上に導電体ペーストを
印刷後、シートを積層して所定形状に切断してから、80
0〜900℃にて0.5〜5.0時間焼成する。焼成温度は800℃
を下回ると、焼結不十分で磁気特性および機械的強度と
も劣ったものになり、900℃を超えると、内部導体が細
くなったり失したりして、良好なチップインダクタが得
られなくなるからである。また焼成時間は、0.5時間未
満では焼結が不十分となる一方、必要以上に加熱を続け
ても性能の向上はほとんど認められず、加熱の時間およ
びエネルギーの無駄になるので、5.0時間までとする。
焼成後、内部導体と接続する導体部分に入出力用端部電
極を取り付け、チップインダクタとする。
【0038】
【実施例】〔実施例1〕表1に示す調合組成比とした原
料を各々250g秤量し、1Lの純水とともにジルコニア粉
砕用ボールを使用した2Lのボールミルにて24時間混合
後、原料粉を分別乾燥し、ジルコニアるつぼにて730℃
の仮焼合成をおこなった。仮焼後、X線回折により所要
の化合物が得られていることを確認し、ボールミルにて
粉砕、乾燥後メッシュふるいにて分別して、仮焼合成粉
の粒子径が0.6〜0.8μmとなるように整粒した。これに1
0重量%PVA溶液を添加して、ライカイ機にて造粒
し、造粒粉を金型にてプレスし成形した後、大気中にて
850℃、3.0時間の焼成をおこない、外径16mm、内径8m
m、厚さ3mmのトロイド形の焼結試験片を作製した。試験
片の密度は、液中秤量法により測定し、透磁率は日本ヒ
ューレットパッカード社製のインピーダンス測定装置
(HP4291A)および透磁率測定装置(HP16454A)を用い
て、1.0MHzにおける値を求めた。
料を各々250g秤量し、1Lの純水とともにジルコニア粉
砕用ボールを使用した2Lのボールミルにて24時間混合
後、原料粉を分別乾燥し、ジルコニアるつぼにて730℃
の仮焼合成をおこなった。仮焼後、X線回折により所要
の化合物が得られていることを確認し、ボールミルにて
粉砕、乾燥後メッシュふるいにて分別して、仮焼合成粉
の粒子径が0.6〜0.8μmとなるように整粒した。これに1
0重量%PVA溶液を添加して、ライカイ機にて造粒
し、造粒粉を金型にてプレスし成形した後、大気中にて
850℃、3.0時間の焼成をおこない、外径16mm、内径8m
m、厚さ3mmのトロイド形の焼結試験片を作製した。試験
片の密度は、液中秤量法により測定し、透磁率は日本ヒ
ューレットパッカード社製のインピーダンス測定装置
(HP4291A)および透磁率測定装置(HP16454A)を用い
て、1.0MHzにおける値を求めた。
【0039】
【表1】
【0040】表1に、焼結密度および透磁率の測定結果
をあわせて示す。主成分の組成および助剤の含有量が本
発明にて定める範囲内にあるものは、いずれも焼結密度
および透磁率がすぐれ、目標としたフェライトの特性
(焼結密度:5.0g/cm3以上、および1.0 MHzおけるに透
磁率:350以上)を具備したものとなることが明らかで
ある。
をあわせて示す。主成分の組成および助剤の含有量が本
発明にて定める範囲内にあるものは、いずれも焼結密度
および透磁率がすぐれ、目標としたフェライトの特性
(焼結密度:5.0g/cm3以上、および1.0 MHzおけるに透
磁率:350以上)を具備したものとなることが明らかで
ある。
【0041】〔実施例2〕表1の透磁率が360(1MHz)を
示した試料番号3の組成のフェライト素材を用い、ドク
ターブレード法により厚さ70μmのグリーンシートを作
製した。シート表面に内部導体となるAg導電ペースト
を所要パターンにスクリーン印刷し、シート間の内部導
体の間の接続はスルーホールを用い、そこへ導電ペース
トを充填してシートを積層圧着後、所定のチップサイズ
に切断し、大気中で850℃、3.0時間の焼成をおこなっ
た。なお内部導体は、幅150μm、厚さ20μmの線路とし
た。端部に接続用電極を焼き付けて作製した積層チップ
インダクタは、図1にその模式的外観図を示すが、 212
5サイズ(長さ2.0mm、幅1.25mm、厚さ0.6mm)のもの
で、図2にその内部導体の形と積層方法を模式的に示
す。
示した試料番号3の組成のフェライト素材を用い、ドク
ターブレード法により厚さ70μmのグリーンシートを作
製した。シート表面に内部導体となるAg導電ペースト
を所要パターンにスクリーン印刷し、シート間の内部導
体の間の接続はスルーホールを用い、そこへ導電ペース
トを充填してシートを積層圧着後、所定のチップサイズ
に切断し、大気中で850℃、3.0時間の焼成をおこなっ
た。なお内部導体は、幅150μm、厚さ20μmの線路とし
た。端部に接続用電極を焼き付けて作製した積層チップ
インダクタは、図1にその模式的外観図を示すが、 212
5サイズ(長さ2.0mm、幅1.25mm、厚さ0.6mm)のもの
で、図2にその内部導体の形と積層方法を模式的に示
す。
【0042】この積層チップインダクタは、日本ヒュー
レットパッカード社製のインピーダンス測定装置(HP42
91A)を用いて、直接インピーダンスとインダクタンス
を測定した。許容電流は、端部電極間に流す電流を増
し、表面が周囲温度より+40℃以内で安定する限界の電
流値を求めた。それらの特性は下記の通りであった。
レットパッカード社製のインピーダンス測定装置(HP42
91A)を用いて、直接インピーダンスとインダクタンス
を測定した。許容電流は、端部電極間に流す電流を増
し、表面が周囲温度より+40℃以内で安定する限界の電
流値を求めた。それらの特性は下記の通りであった。
【0043】
素子インピーダンス |Z|(100MHz): 500 Ω
素子インダクタンス L (100MHz) : 550 nH
許容電流値(直流) : 5.0 A(最大)
これからわかるように、本発明による積層チップインダ
クタは、このサイズとしては許容電流値がきわめて大き
く、その許容電流値を有するインダクタとしてはインピ
ーダンス、インダクタンスとも大きな値を示している。
クタは、このサイズとしては許容電流値がきわめて大き
く、その許容電流値を有するインダクタとしてはインピ
ーダンス、インダクタンスとも大きな値を示している。
【0044】
【発明の効果】本発明により、従来のものよりも低温で
焼結可能で、かつAgの拡散による内部導体消失を抑止
できる酸化物磁性材、すなわちソフトフェライトが得ら
れる。このフェライトは、とくに大電流仕様の内部導体
に電気抵抗の小さいAgを用いる積層チップインダクタ
に最適であり、インダクタの性能を向上させ、その使用
範囲を大きく拡大させることができる。
焼結可能で、かつAgの拡散による内部導体消失を抑止
できる酸化物磁性材、すなわちソフトフェライトが得ら
れる。このフェライトは、とくに大電流仕様の内部導体
に電気抵抗の小さいAgを用いる積層チップインダクタ
に最適であり、インダクタの性能を向上させ、その使用
範囲を大きく拡大させることができる。
【図1】積層チップインダクタの外観を模式的に示した
図である。
図である。
【図2】積層チップインダクタの内部導体のパターン
と、それを積層する状態を模式的に示した図である。
と、それを積層する状態を模式的に示した図である。
1.フェライトの積層焼結体部分、 2.入出力用端部電
極、 3.フェライトシート、 4.内部導体、 5.入
出力電極と接続する導電部分、 6.下層内部導体との
接続用スルーホール、 7.上層内部導体との接続点
極、 3.フェライトシート、 4.内部導体、 5.入
出力電極と接続する導電部分、 6.下層内部導体との
接続用スルーホール、 7.上層内部導体との接続点
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
H01F 1/12 - 1/375
H01F 15/00 - 21/12
H01F 27/24 - 27/26
H01F 31/00 - 39/00
H01F 41/00 - 41/04
H01F 41/08 - 41/10
Claims (4)
- 【請求項1】Fe2O3:44.0〜49.9モル%、CuO:5.
0〜12.0モル%、NiO:20.0〜30.0モル%、およびZ
nO:上記3成分の残部、である主成分と、主成分100
重量部に対してBi2O3:0.5〜2.0重量部、B2O3:0.
1〜0.5重量部、Rh2O3:0.5〜2.0重量部、およびAg
2O:0.03〜0.10重量部の助剤とからなることを特徴と
する酸化物磁性材。 - 【請求項2】酸化物原料を仮焼合成し、粉砕整粒した粉
体を用いて所定形状に成形後、800〜900℃にて0.5〜5.0
時間焼成をおこなうことを特徴とする、請求項1に記載
の酸化物磁性材の製造方法 - 【請求項3】Agの内部導体と、請求項1に記載の酸化
物磁性材とからなることを特徴とする積層チップインダ
クタ。 - 【請求項4】焼成後Agとなる内部導体素材と、焼成に
よって請求項1に記載の酸化物磁性材となるグリーンシ
ートとにより、所定の回路積層体を成形した後、800〜9
00℃にて0.5〜5.0時間の一体化焼成をおこなうことを特
徴とする、請求項3に記載の積層チップインダクタの製
造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP03015699A JP3407681B2 (ja) | 1999-02-08 | 1999-02-08 | 酸化物磁性材および積層チップインダクタとその製造方法 |
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JP03015699A JP3407681B2 (ja) | 1999-02-08 | 1999-02-08 | 酸化物磁性材および積層チップインダクタとその製造方法 |
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JP2000228306A JP2000228306A (ja) | 2000-08-15 |
JP3407681B2 true JP3407681B2 (ja) | 2003-05-19 |
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ID=12295903
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JP03015699A Expired - Fee Related JP3407681B2 (ja) | 1999-02-08 | 1999-02-08 | 酸化物磁性材および積層チップインダクタとその製造方法 |
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JP2007214341A (ja) * | 2006-02-09 | 2007-08-23 | Taiyo Yuden Co Ltd | 積層インダクタ |
JP5471672B2 (ja) * | 2010-03-23 | 2014-04-16 | Tdk株式会社 | 積層型電子部品及びその製造方法 |
-
1999
- 1999-02-08 JP JP03015699A patent/JP3407681B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JP2000228306A (ja) | 2000-08-15 |
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