JPH11172372A - 延性および伸びフランジ性に優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
延性および伸びフランジ性に優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法Info
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- JPH11172372A JPH11172372A JP34312597A JP34312597A JPH11172372A JP H11172372 A JPH11172372 A JP H11172372A JP 34312597 A JP34312597 A JP 34312597A JP 34312597 A JP34312597 A JP 34312597A JP H11172372 A JPH11172372 A JP H11172372A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】引張強さが590〜690MPa級高張力熱延
鋼板において、張り出し加工と厳しい伸びフランジ加工
が複合して施される足廻り部材に適するように、TS×
Elの値が18000MPa・%以上の良好な強度−伸
びバランスを有し、しかも、穴拡がり率(λ)が80%
以上(穴拡がり比で1.8以上)の良好な伸びフランジ
性を同時に付与した高張力熱延鋼板及びその製造方法を
提供する。 【解決手段】重量%で、C:0.05〜0.12%と、
Si:0.6〜1.3%と、Mn:1.0〜1.8%
と、P:0.01〜0.04%と、残部Feおよび不可
避的不純物からなる成分の鋼であり、フェライトと、ベ
イナイトと、体積%で7%以下の残留オーステナイトか
らなるミクロ組織を有し、かつ、フェライトとベイナイ
トの硬度比が2.5以下を満足することを特徴とする。
鋼板において、張り出し加工と厳しい伸びフランジ加工
が複合して施される足廻り部材に適するように、TS×
Elの値が18000MPa・%以上の良好な強度−伸
びバランスを有し、しかも、穴拡がり率(λ)が80%
以上(穴拡がり比で1.8以上)の良好な伸びフランジ
性を同時に付与した高張力熱延鋼板及びその製造方法を
提供する。 【解決手段】重量%で、C:0.05〜0.12%と、
Si:0.6〜1.3%と、Mn:1.0〜1.8%
と、P:0.01〜0.04%と、残部Feおよび不可
避的不純物からなる成分の鋼であり、フェライトと、ベ
イナイトと、体積%で7%以下の残留オーステナイトか
らなるミクロ組織を有し、かつ、フェライトとベイナイ
トの硬度比が2.5以下を満足することを特徴とする。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】自動車に用いられている引張
強さが590〜690MPa級で、残留オーステナイト
を5%以上含有する残留オーステナイトタイプの高張力
熱延鋼板は、伸びで代表される張り出し成形性は優れて
いるが、穴拡げ率で代表される伸びフランジ成形性が劣
っており、足廻り部品のような伸びフランジ加工やバー
リング加工がきつい部品には適用することが難しい。
強さが590〜690MPa級で、残留オーステナイト
を5%以上含有する残留オーステナイトタイプの高張力
熱延鋼板は、伸びで代表される張り出し成形性は優れて
いるが、穴拡げ率で代表される伸びフランジ成形性が劣
っており、足廻り部品のような伸びフランジ加工やバー
リング加工がきつい部品には適用することが難しい。
【0002】本発明は、特に上記のような伸びフランジ
加工やバーリング加工等の優れた加工性が要求される自
動車足廻り部品等に好適な、残留オーステナイト鋼板の
高延性という特徴を維持しつつ、伸びフランジ性を改善
した高張力熱延鋼板およびその製造方法に関する。
加工やバーリング加工等の優れた加工性が要求される自
動車足廻り部品等に好適な、残留オーステナイト鋼板の
高延性という特徴を維持しつつ、伸びフランジ性を改善
した高張力熱延鋼板およびその製造方法に関する。
【0003】
【従来の技術】自動車の燃費向上を目指した車体構造部
材や足廻り部材の軽量化や衝突安全性向上のため、加工
性の良い高張力鋼板のニーズは強い。特に、近年は両者
を同時に満足するため、引張強さが590〜690MP
a級のプレス成形性の優れた高張力熱延鋼板の適用が検
討されている。このクラスの高張力鋼板に優れたプレス
成形性を付与するには、まず、強度−延性バランスの向
上が必要となる。従来、良好な延性を有する熱延高張力
鋼板としては、例えば、特開昭55−44551号公報
に記載されているように、フェライトとマルテンサイト
から構成される、Dual Phase(二相組織)鋼
板があるが、例えば590MPa級での伸びはせいぜい
30%であり、鋼板の強度−延性バランスを表す引張強
さ(TS)×伸び(El)の値は18000MPa・%
程度であった。一方、この状態を打破してTS×Elの
値が20000MPa・%以上が得られる方法として、
残留オーステナイトを含有させ、この相の変形時のTR
IP現象(変態誘起塑性)を利用して延性を高める方法
が提案されている。例えば、特開昭63−4017号公
報および特開昭64−79345号公報では、C:0.
15〜0.4%,Si:0.5〜2.0%,Mn:0.
5〜2.0%を含有し、残り不可避的な不純物元素から
なる鋼を、仕上温度がAr3 ±50℃で全圧下率80%
以上で熱延し、続いて冷却制御を行いながら350〜5
00℃で巻き取ることにより、残留オーステナイトを5
%以上含有し残部がフェライトとベイナイトからなる熱
延高張力鋼板の製造技術について示しており、TS×E
lの値が24000MPa・%以上の高張力鋼板が得ら
れることが開示されている。この技術は熱延圧下率、仕
上げ温度、冷却条件、巻取り温度範囲を規定することに
より、オーステナイトから微細なポリゴナルフェライト
の生成を促進させて、オーステナイトへのCを濃化さ
せ、さらに、ベイナイト変態させることによりオーステ
ナイトへのCの濃化をさらに進行させ、オーステナイト
の安定化を図り、最終的に5%以上の残留オーステナイ
トを含有するフェライトとべイナイトの混合組織を得る
方法である。この残留オーステナイト鋼板の特徴は強度
−伸びバランスが優れているが、伸びフランジ性が劣っ
ているのが欠点であり、足廻り部品のように伸びフラン
ジ加工やバーリング加工がきつい部品には不適である。
伸びフランジ加工やバーリング加工する際、端面は打ち
抜きや剪断でブランキングされ、このため端面は大きな
ひずみを受け残留オーステナイトがマルテンサイトに変
態しこの部分の硬度が著しく上昇するとともにマルテン
サイト周辺にボイドが発生し、これが端面の延性を著し
く低下させる原因になっている。このため伸びフランジ
性は残留オーステナイト体積率が大きくなるほど劣化す
る。
材や足廻り部材の軽量化や衝突安全性向上のため、加工
性の良い高張力鋼板のニーズは強い。特に、近年は両者
を同時に満足するため、引張強さが590〜690MP
a級のプレス成形性の優れた高張力熱延鋼板の適用が検
討されている。このクラスの高張力鋼板に優れたプレス
成形性を付与するには、まず、強度−延性バランスの向
上が必要となる。従来、良好な延性を有する熱延高張力
鋼板としては、例えば、特開昭55−44551号公報
に記載されているように、フェライトとマルテンサイト
から構成される、Dual Phase(二相組織)鋼
板があるが、例えば590MPa級での伸びはせいぜい
30%であり、鋼板の強度−延性バランスを表す引張強
さ(TS)×伸び(El)の値は18000MPa・%
程度であった。一方、この状態を打破してTS×Elの
値が20000MPa・%以上が得られる方法として、
残留オーステナイトを含有させ、この相の変形時のTR
IP現象(変態誘起塑性)を利用して延性を高める方法
が提案されている。例えば、特開昭63−4017号公
報および特開昭64−79345号公報では、C:0.
15〜0.4%,Si:0.5〜2.0%,Mn:0.
5〜2.0%を含有し、残り不可避的な不純物元素から
なる鋼を、仕上温度がAr3 ±50℃で全圧下率80%
以上で熱延し、続いて冷却制御を行いながら350〜5
00℃で巻き取ることにより、残留オーステナイトを5
%以上含有し残部がフェライトとベイナイトからなる熱
延高張力鋼板の製造技術について示しており、TS×E
lの値が24000MPa・%以上の高張力鋼板が得ら
れることが開示されている。この技術は熱延圧下率、仕
上げ温度、冷却条件、巻取り温度範囲を規定することに
より、オーステナイトから微細なポリゴナルフェライト
の生成を促進させて、オーステナイトへのCを濃化さ
せ、さらに、ベイナイト変態させることによりオーステ
ナイトへのCの濃化をさらに進行させ、オーステナイト
の安定化を図り、最終的に5%以上の残留オーステナイ
トを含有するフェライトとべイナイトの混合組織を得る
方法である。この残留オーステナイト鋼板の特徴は強度
−伸びバランスが優れているが、伸びフランジ性が劣っ
ているのが欠点であり、足廻り部品のように伸びフラン
ジ加工やバーリング加工がきつい部品には不適である。
伸びフランジ加工やバーリング加工する際、端面は打ち
抜きや剪断でブランキングされ、このため端面は大きな
ひずみを受け残留オーステナイトがマルテンサイトに変
態しこの部分の硬度が著しく上昇するとともにマルテン
サイト周辺にボイドが発生し、これが端面の延性を著し
く低下させる原因になっている。このため伸びフランジ
性は残留オーステナイト体積率が大きくなるほど劣化す
る。
【0004】一方、特開平3−180445号公報で
は、C:0.05〜0.15%,Si:0.5〜2.5
%,Mn:0.5〜2.5%,P:0.02%以下,
S:0.01%以下,Al:0.005〜0.10%を
含み、1.6%<Si+Mn≦5.0%を満たす成分
で、組織がポリゴナルフェライトとベイナイトに加え5
%以上の残留オーステナイトを含有する高張力熱延鋼板
において、ポリゴナルフェライト占積率VPF(%)とポ
リゴナルフェライト粒径dPFの比VPF/dPFを20以上
にするとTS×Elの値が2000kgf/mm2 ・%
(19600MPa・%)以上で穴拡がり比(d/d
0 )が1.4以上の良好な伸びフランジ性が得られるこ
とが開示されている。なお、穴拡げ試験は、20mmの
打ち抜き穴を30°の円錐ポンチで押し広げ、クラック
が板厚を貫通した時点での穴径(d)と初期穴径(d
0 :20mm)との比で伸びフランジ性を評価してい
る。
は、C:0.05〜0.15%,Si:0.5〜2.5
%,Mn:0.5〜2.5%,P:0.02%以下,
S:0.01%以下,Al:0.005〜0.10%を
含み、1.6%<Si+Mn≦5.0%を満たす成分
で、組織がポリゴナルフェライトとベイナイトに加え5
%以上の残留オーステナイトを含有する高張力熱延鋼板
において、ポリゴナルフェライト占積率VPF(%)とポ
リゴナルフェライト粒径dPFの比VPF/dPFを20以上
にするとTS×Elの値が2000kgf/mm2 ・%
(19600MPa・%)以上で穴拡がり比(d/d
0 )が1.4以上の良好な伸びフランジ性が得られるこ
とが開示されている。なお、穴拡げ試験は、20mmの
打ち抜き穴を30°の円錐ポンチで押し広げ、クラック
が板厚を貫通した時点での穴径(d)と初期穴径(d
0 :20mm)との比で伸びフランジ性を評価してい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、張り出
し性と厳しい伸びフランジ性が複合で施される足廻り部
品では、上記特開平3−180445号公報のTS×E
lの値が2000kgf/mm2 ・%(19600MP
a・%)以上で穴拡がり比が1.4以上のレベルでは加
工性が十分ではなく、TS×Elの値が18000MP
a・%以上と若干低めであっても、更に伸びフランジ性
の優れた材料が必要とされている。
し性と厳しい伸びフランジ性が複合で施される足廻り部
品では、上記特開平3−180445号公報のTS×E
lの値が2000kgf/mm2 ・%(19600MP
a・%)以上で穴拡がり比が1.4以上のレベルでは加
工性が十分ではなく、TS×Elの値が18000MP
a・%以上と若干低めであっても、更に伸びフランジ性
の優れた材料が必要とされている。
【0006】本発明の目的は、引張強さが590〜69
0MPa級高張力熱延鋼板において、張り出し加工と厳
しい伸びフランジ加工が複合して施される足廻り部材に
適するように、TS×Elの値が18000MPa・%
以上の良好な強度−伸びバランスを有し、しかも、穴拡
がり率(λ)が80%以上(穴拡がり比で1.8以上)
の良好な伸びフランジ性を同時に付与した高張力熱延鋼
板及びその製造方法を提供することにある。
0MPa級高張力熱延鋼板において、張り出し加工と厳
しい伸びフランジ加工が複合して施される足廻り部材に
適するように、TS×Elの値が18000MPa・%
以上の良好な強度−伸びバランスを有し、しかも、穴拡
がり率(λ)が80%以上(穴拡がり比で1.8以上)
の良好な伸びフランジ性を同時に付与した高張力熱延鋼
板及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決し目的を
達成するために、本発明は以下に示す手段を用いてい
る。 (1)本発明の鋼板は、重量%で、C:0.05〜0.
12%と、Si:0.6〜1.3%と、Mn:1.0〜
1.8%と、P:0.01〜0.04%と、残部Feお
よび不可避的不純物からなる成分の鋼であり、フェライ
トと、ベイナイトと、体積%で7%以下の残留オーステ
ナイトからなるミクロ組織を有し、かつ、フェライトと
ベイナイトの硬度比が2.5以下を満足することを特徴
とする、延性および伸びフランジ性に優れた高張力熱延
鋼板である。
達成するために、本発明は以下に示す手段を用いてい
る。 (1)本発明の鋼板は、重量%で、C:0.05〜0.
12%と、Si:0.6〜1.3%と、Mn:1.0〜
1.8%と、P:0.01〜0.04%と、残部Feお
よび不可避的不純物からなる成分の鋼であり、フェライ
トと、ベイナイトと、体積%で7%以下の残留オーステ
ナイトからなるミクロ組織を有し、かつ、フェライトと
ベイナイトの硬度比が2.5以下を満足することを特徴
とする、延性および伸びフランジ性に優れた高張力熱延
鋼板である。
【0008】(2)本発明の製造方法は、上記(1)に
記載の成分組成を有する鋼を所定の温度に加熱後圧延を
開始し、次いでオーステナイト単相域で熱間圧延を終了
する工程と、仕上圧延された鋼板を、10℃/秒以上の
冷却速度で650〜750℃の温度範囲まで冷却してか
ら1秒以上保持する工程と、冷却保持された鋼板を、さ
らに10℃/秒以上の冷却速度で冷却して、最終的に3
50〜500℃の温度範囲で巻取る工程と、を備えたこ
とを特徴とする、フェライトと、ベイナイトと、体積%
で7%以下の残留オーステナイトからなるミクロ組織を
有し、かつ、フェライトとベイナイトの硬度比が2.5
以下を満足する、延性および伸びフランジ性に優れた高
張力熱延鋼板の製造方法である。
記載の成分組成を有する鋼を所定の温度に加熱後圧延を
開始し、次いでオーステナイト単相域で熱間圧延を終了
する工程と、仕上圧延された鋼板を、10℃/秒以上の
冷却速度で650〜750℃の温度範囲まで冷却してか
ら1秒以上保持する工程と、冷却保持された鋼板を、さ
らに10℃/秒以上の冷却速度で冷却して、最終的に3
50〜500℃の温度範囲で巻取る工程と、を備えたこ
とを特徴とする、フェライトと、ベイナイトと、体積%
で7%以下の残留オーステナイトからなるミクロ組織を
有し、かつ、フェライトとベイナイトの硬度比が2.5
以下を満足する、延性および伸びフランジ性に優れた高
張力熱延鋼板の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明者らは、上記の課題を解決
すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得るに至っ
た。引張強さが590〜690MPa級高張力熱延鋼板
において、TS×Elの値が18000MPa・%以上
の良好な強度−伸びバランスを付与するには、いわゆ
る、フェライト+マルテンサイトのDual Phas
e鋼板では安定性の点で無理であり、残留オーステナイ
トを利用せざるを得ない。残留オーステナイト含有量は
多いほどTS×Elの値は良くなるが、残留オーステナ
イトを2%以上含有すると、穴拡げ率が劣化し80%以
上を確保出来なくなる。
すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得るに至っ
た。引張強さが590〜690MPa級高張力熱延鋼板
において、TS×Elの値が18000MPa・%以上
の良好な強度−伸びバランスを付与するには、いわゆ
る、フェライト+マルテンサイトのDual Phas
e鋼板では安定性の点で無理であり、残留オーステナイ
トを利用せざるを得ない。残留オーステナイト含有量は
多いほどTS×Elの値は良くなるが、残留オーステナ
イトを2%以上含有すると、穴拡げ率が劣化し80%以
上を確保出来なくなる。
【0010】そこで、本発明者らはフェライト−ベイナ
イト−残留オーステナイトより構成される高張力熱延鋼
板のTS×Elおよびλにおよぼすミクロ組織の影響を
検討した結果、残留オーステナイト量が2%以上でもフ
ェライトとベイナイトの硬度比を2.5以下に制御する
と、TS×Elの値が18000MPa・%以上でλが
80%以上の延性と伸びフランジ性バランスの良好な5
90〜690MPa級高張力熱延鋼板が得られることを
見出した。
イト−残留オーステナイトより構成される高張力熱延鋼
板のTS×Elおよびλにおよぼすミクロ組織の影響を
検討した結果、残留オーステナイト量が2%以上でもフ
ェライトとベイナイトの硬度比を2.5以下に制御する
と、TS×Elの値が18000MPa・%以上でλが
80%以上の延性と伸びフランジ性バランスの良好な5
90〜690MPa級高張力熱延鋼板が得られることを
見出した。
【0011】また一方では、フェライトとベイナイトの
硬度比を2.5以下に制御しても、残留オーステナイト
量が7%を越えると上記延性−伸びフランジ性バランス
を満足できないことが判明した。
硬度比を2.5以下に制御しても、残留オーステナイト
量が7%を越えると上記延性−伸びフランジ性バランス
を満足できないことが判明した。
【0012】以上の知見に基づき、本発明者らは、フェ
ライト−ベイナイト−残留オーステナイトより構成され
る高張力熱延鋼板の残留オーステナイト量と、フェライ
トとベイナイトの硬度比を特定して所望の延性と伸びフ
ランジ性の両方を確保するために、鋼の成分組成と鋼板
の熱延条件(仕上圧延、冷却、巻取りの条件)を一定範
囲内に制御するようにして、良好な強度−延性バランス
と伸びフランジ性を有した590〜690MPa級高張
力熱延鋼板及びその製造方法を見出し、本発明を完成さ
せた。
ライト−ベイナイト−残留オーステナイトより構成され
る高張力熱延鋼板の残留オーステナイト量と、フェライ
トとベイナイトの硬度比を特定して所望の延性と伸びフ
ランジ性の両方を確保するために、鋼の成分組成と鋼板
の熱延条件(仕上圧延、冷却、巻取りの条件)を一定範
囲内に制御するようにして、良好な強度−延性バランス
と伸びフランジ性を有した590〜690MPa級高張
力熱延鋼板及びその製造方法を見出し、本発明を完成さ
せた。
【0013】すなわち、本発明は、鋼組成、組織、及び
製造条件を下記範囲に限定することにより、引張強さが
590〜690MPa級高張力熱延鋼板において、張り
出し加工と厳しい伸びフランジ加工が複合して施される
足廻り部材に適するように、TS×Elの値が1800
0MPa・%以上の良好な強度−伸びバランスを有し、
しかも、穴拡がり率(λ)が80%以上(穴拡がり比で
1.8以上)の良好な伸びフランジ性を同時に付与した
高張力熱延鋼板及びその製造方法を提供することができ
る。
製造条件を下記範囲に限定することにより、引張強さが
590〜690MPa級高張力熱延鋼板において、張り
出し加工と厳しい伸びフランジ加工が複合して施される
足廻り部材に適するように、TS×Elの値が1800
0MPa・%以上の良好な強度−伸びバランスを有し、
しかも、穴拡がり率(λ)が80%以上(穴拡がり比で
1.8以上)の良好な伸びフランジ性を同時に付与した
高張力熱延鋼板及びその製造方法を提供することができ
る。
【0014】以下に、本発明の成分添加理由、成分限定
理由、組織の限定理由、及び製造条件の限定理由につい
て説明する。 (1)成分組成範囲及び鋼組織 C:0.05〜0.12% C含有量が0.05%未満ではTS×Elの値を180
00MPa・%以上となる程度の残留オーステナイト量
が得られず、一方、0.12%を越えると残留オーステ
ナイト量が7%越えとなり、良好な伸びフランジ性が得
られない。このためC含有量は0.05〜0.12%の
狭い範囲に限定するのが好ましい。
理由、組織の限定理由、及び製造条件の限定理由につい
て説明する。 (1)成分組成範囲及び鋼組織 C:0.05〜0.12% C含有量が0.05%未満ではTS×Elの値を180
00MPa・%以上となる程度の残留オーステナイト量
が得られず、一方、0.12%を越えると残留オーステ
ナイト量が7%越えとなり、良好な伸びフランジ性が得
られない。このためC含有量は0.05〜0.12%の
狭い範囲に限定するのが好ましい。
【0015】Si:0.6〜1.3% Siはフェライト安定化元素であり、フェライトの生成
を促進してCのオーステナイトへの濃縮を助け、また、
巻取り後のオーステナイトからのセメンタイトの析出を
遅らせるので、残留オーステナイトを確保するには有効
な元素である。
を促進してCのオーステナイトへの濃縮を助け、また、
巻取り後のオーステナイトからのセメンタイトの析出を
遅らせるので、残留オーステナイトを確保するには有効
な元素である。
【0016】また、Siはフェライトに固溶して、これ
の硬度を高め、フェライトとべイナイトの硬度比を下
げ、延性と伸びフランジ性を両立させるのに有効であ
る。このためには少なくとも0.6%以上の添加が必要
となる。しかし、Siはフェライトを固溶強化し強度を
高めるので、必要とする強度レベルによっては多く添加
できないことがあり、590〜690MPa級高張力熱
延鋼板では1.3%が上限である。
の硬度を高め、フェライトとべイナイトの硬度比を下
げ、延性と伸びフランジ性を両立させるのに有効であ
る。このためには少なくとも0.6%以上の添加が必要
となる。しかし、Siはフェライトを固溶強化し強度を
高めるので、必要とする強度レベルによっては多く添加
できないことがあり、590〜690MPa級高張力熱
延鋼板では1.3%が上限である。
【0017】Mn:1.0〜1.8% Mnは熱延過程およびその後の冷却過程でオーステナイ
ト中に濃化し、オーステナイトの安定性を高め、パーラ
イトやマルテンサイト変態するのを抑制する作用を有す
る。このため、少なくとも1.0%は必要であり、一方
1.8%を越えると冷却過程でのフェライトへの変態が
不十分となり、それに伴いオーステナイト中へのCの濃
化が不十分となるため、オーステナイトが残留しにくく
なる。このことから、Mnは1.0〜1.8%に限定さ
れる。
ト中に濃化し、オーステナイトの安定性を高め、パーラ
イトやマルテンサイト変態するのを抑制する作用を有す
る。このため、少なくとも1.0%は必要であり、一方
1.8%を越えると冷却過程でのフェライトへの変態が
不十分となり、それに伴いオーステナイト中へのCの濃
化が不十分となるため、オーステナイトが残留しにくく
なる。このことから、Mnは1.0〜1.8%に限定さ
れる。
【0018】P:0.01〜0.04% Pは不純物元素ではなく添加元素としての役割を期待し
て、0.01〜0.04%の範囲で添加される。Pの役
割は、Siと同様フェライト中に固溶してこれの硬度を
高める元素であり、また、Si含有鋼で生じる赤スケー
ルの発生を抑制する効果もあり、そこで0.01%以上
添加する、特に0.02%以上でその効果が顕著であ
る。しかし、Pの過剰の添加は偏析による加工割れの原
因となることから、上限は0.04%にする必要があ
る。
て、0.01〜0.04%の範囲で添加される。Pの役
割は、Siと同様フェライト中に固溶してこれの硬度を
高める元素であり、また、Si含有鋼で生じる赤スケー
ルの発生を抑制する効果もあり、そこで0.01%以上
添加する、特に0.02%以上でその効果が顕著であ
る。しかし、Pの過剰の添加は偏析による加工割れの原
因となることから、上限は0.04%にする必要があ
る。
【0019】なお、本発明では、上記以外の元素につい
ては、特に限定しない。即ち、脱酸剤として使用される
sol.Al、不純物元素S,N等の元素は、本発明の
効果を阻害しない範囲での含有は許容される。
ては、特に限定しない。即ち、脱酸剤として使用される
sol.Al、不純物元素S,N等の元素は、本発明の
効果を阻害しない範囲での含有は許容される。
【0020】上記化学組成の鋼は、転炉法、電気炉法の
いずれの溶製でもよく、鋳造法は連続鋳造法、造塊法の
いずれでもよい。組織:本発明の鋼板の組織は、フェラ
イトと、ベイナイトと、体積%で7%以下の残留オース
テナイトからなるミクロ組織を有し、かつ、フェライト
とベイナイトの硬度比が2.5以下である。上記のフェ
ライト−ベイナイト−残留オーステナイトから構成され
る組織に限定する理由は、前述したように引張強さが5
90〜690MPa級高張力熱延鋼板において、(TS
×El)≧18000MPa・%でかつλ≧80%の良
好な強度−伸びバランスを付与するためである。即ち、
フェライトとベイナイトの硬度比を2.5以下に制御す
ると、TS×Elの値が18000MPa・%以上でλ
が80%以上の延性と伸びフランジ性バランスの良好な
590〜690MPa級高張力熱延鋼板が得られる。一
方、フェライトとベイナイトの硬度比を2.5以下に制
御しても、残留オーステナイト量が7%を越えると上記
延性−伸びフランジ性バランスを満足できない。また、
上記の特性を得るために、残留オーステナイト量の下限
は1%にするのが好ましい。なお、上述したように、本
発明の鋼板のミクロ組織は、フェライトとベイナイトを
基本とし7%以下の残留オーステナイトが分散している
が、マルテンサイトおよびパーライトが混在することも
ある。
いずれの溶製でもよく、鋳造法は連続鋳造法、造塊法の
いずれでもよい。組織:本発明の鋼板の組織は、フェラ
イトと、ベイナイトと、体積%で7%以下の残留オース
テナイトからなるミクロ組織を有し、かつ、フェライト
とベイナイトの硬度比が2.5以下である。上記のフェ
ライト−ベイナイト−残留オーステナイトから構成され
る組織に限定する理由は、前述したように引張強さが5
90〜690MPa級高張力熱延鋼板において、(TS
×El)≧18000MPa・%でかつλ≧80%の良
好な強度−伸びバランスを付与するためである。即ち、
フェライトとベイナイトの硬度比を2.5以下に制御す
ると、TS×Elの値が18000MPa・%以上でλ
が80%以上の延性と伸びフランジ性バランスの良好な
590〜690MPa級高張力熱延鋼板が得られる。一
方、フェライトとベイナイトの硬度比を2.5以下に制
御しても、残留オーステナイト量が7%を越えると上記
延性−伸びフランジ性バランスを満足できない。また、
上記の特性を得るために、残留オーステナイト量の下限
は1%にするのが好ましい。なお、上述したように、本
発明の鋼板のミクロ組織は、フェライトとベイナイトを
基本とし7%以下の残留オーステナイトが分散している
が、マルテンサイトおよびパーライトが混在することも
ある。
【0021】上記の成分組成範囲及び組織に調整するこ
とにより、良好な強度−延性バランスと伸びフランジ性
を有した590〜690MPa級高張力熱延鋼板を得る
ことが可能となる。
とにより、良好な強度−延性バランスと伸びフランジ性
を有した590〜690MPa級高張力熱延鋼板を得る
ことが可能となる。
【0022】このような特性の鋼は、以下の製造方法に
より製造することができる。 (2)鋼板製造工程 (製造方法)上記の成分組成範囲に調整した鋼を転炉に
て溶製し、連続鋳造によりスラブにした後、鋼スラブを
所定の温度に加熱後圧延を開始し、次いでオーステナイ
ト(γ)単相域で熱間圧延を終了する。次いで10℃/
秒以上の冷却速度で650〜750℃の温度範囲まで冷
却、この温度で1秒以上保持後、さらに10℃/秒以上
の冷却速度で冷却して、最終的に350〜500℃の温
度範囲で巻き取る。
より製造することができる。 (2)鋼板製造工程 (製造方法)上記の成分組成範囲に調整した鋼を転炉に
て溶製し、連続鋳造によりスラブにした後、鋼スラブを
所定の温度に加熱後圧延を開始し、次いでオーステナイ
ト(γ)単相域で熱間圧延を終了する。次いで10℃/
秒以上の冷却速度で650〜750℃の温度範囲まで冷
却、この温度で1秒以上保持後、さらに10℃/秒以上
の冷却速度で冷却して、最終的に350〜500℃の温
度範囲で巻き取る。
【0023】a.仕上圧延温度 加熱後のスラブはγ単相域で仕上圧延する。これは仕上
圧延温度がA3 変態点を切ってα+γ2相域で圧延され
ると、層状組織が形成され伸びフランジ性が低下するか
らである。
圧延温度がA3 変態点を切ってα+γ2相域で圧延され
ると、層状組織が形成され伸びフランジ性が低下するか
らである。
【0024】b.冷却速度、中間保持(温度、時間) 仕上圧延後、ランナウトテーブルで10℃/秒以上の冷
却速度で冷却し、650〜750℃の温度領域で1秒以
上保持するとγからポリゴナルフェライトが形成され、
残ったγ相中へCが濃化しγ相の安定度が高まる。中間
保持はγからのポリゴナルフェライトを形成させ、γ相
へのCの濃化を促進する意味があり、この冷却速度と保
持温度はランナウトテーブル上で効率よく達成すること
が必要となる。
却速度で冷却し、650〜750℃の温度領域で1秒以
上保持するとγからポリゴナルフェライトが形成され、
残ったγ相中へCが濃化しγ相の安定度が高まる。中間
保持はγからのポリゴナルフェライトを形成させ、γ相
へのCの濃化を促進する意味があり、この冷却速度と保
持温度はランナウトテーブル上で効率よく達成すること
が必要となる。
【0025】c.中間保持後の冷却速度、巻取温度 中間保持後10℃/秒以上の冷却速度で冷却して、35
0〜500℃の巻取温度範囲で巻き取られる。巻取温度
が350℃未満ではオーステナイトがマルテンサイトに
変態しやすく、また、500℃超えではパーライト変態
が起きやすいので、ベイナイト変態を進行させ、残留オ
ーステナイトを7%以下でも安定に残すには350〜5
00℃の範囲で巻き取る必要がある。
0〜500℃の巻取温度範囲で巻き取られる。巻取温度
が350℃未満ではオーステナイトがマルテンサイトに
変態しやすく、また、500℃超えではパーライト変態
が起きやすいので、ベイナイト変態を進行させ、残留オ
ーステナイトを7%以下でも安定に残すには350〜5
00℃の範囲で巻き取る必要がある。
【0026】上記成分組成範囲の鋼を上記中間保持と巻
取温度で製造することにより、フェライトとベイナイト
の硬度比を2.5以下に制御できる。上記したように、
本発明は延性と伸びフランジ性のバランスの優れた59
0〜780MPa級の高張力熱延鋼板およびその製造方
法に関するもので、成分を規定し、さらに熱延条件を組
み合わせることにより、フェライトとベイナイトを基本
とし、7%以下の残留オーステナイトを含有させ、さら
に、フェライトとべイナイトの硬度比を2.5以下に制
御することにより、TS×Elが18000MPa・%
以上の延性を有し、また、穴拡がり率が80%以上の伸
びフランジ性を有する高張力熱延鋼板を得るものであ
る。
取温度で製造することにより、フェライトとベイナイト
の硬度比を2.5以下に制御できる。上記したように、
本発明は延性と伸びフランジ性のバランスの優れた59
0〜780MPa級の高張力熱延鋼板およびその製造方
法に関するもので、成分を規定し、さらに熱延条件を組
み合わせることにより、フェライトとベイナイトを基本
とし、7%以下の残留オーステナイトを含有させ、さら
に、フェライトとべイナイトの硬度比を2.5以下に制
御することにより、TS×Elが18000MPa・%
以上の延性を有し、また、穴拡がり率が80%以上の伸
びフランジ性を有する高張力熱延鋼板を得るものであ
る。
【0027】成分組成を本発明の範囲に限定し、しか
も、γ単相域で仕上圧延した後、10℃/秒以上の冷却
速度で冷却し、650〜750℃の温度領域に中間保持
することにより、γ相からポリゴナルフェライトを析出
させるとともにγ相にCを濃化させて安定化を図り、続
いて10℃/秒以上で冷却してから350〜500℃で
巻き取ることにより、ベイナイト変態を進行させ、この
過程でさらにCがオーステナイト中に濃化し、オーステ
ナイ卜の安定化が高まり体積率で7%以下の適度に残留
させたことも本発明のポイントである。さらに、成分と
の組み合わせで、フェライトとベイナイトの硬度比が
2.5以下になり、残留オーステナイトが存在しても伸
びフランジ性を高めるところに特徴を有する。以下に本
発明の実施例を挙げ、本発明の効果を立証する。
も、γ単相域で仕上圧延した後、10℃/秒以上の冷却
速度で冷却し、650〜750℃の温度領域に中間保持
することにより、γ相からポリゴナルフェライトを析出
させるとともにγ相にCを濃化させて安定化を図り、続
いて10℃/秒以上で冷却してから350〜500℃で
巻き取ることにより、ベイナイト変態を進行させ、この
過程でさらにCがオーステナイト中に濃化し、オーステ
ナイ卜の安定化が高まり体積率で7%以下の適度に残留
させたことも本発明のポイントである。さらに、成分と
の組み合わせで、フェライトとベイナイトの硬度比が
2.5以下になり、残留オーステナイトが存在しても伸
びフランジ性を高めるところに特徴を有する。以下に本
発明の実施例を挙げ、本発明の効果を立証する。
【0028】
【実施例】表1に示す成分組成の鋼A〜Oまでのスラブ
(A〜G:本発明鋼、H〜O:比較鋼)を表2に示す条
件で加熱、熱間圧延、制御冷却および巻取りし、板厚
2.9mmの熱延鋼板を得た。次に、得られた鋼板から
圧延方向にJIS5号引張試験片を採取し、機械的性質
(YP,TS,El,TS×El)を調査した。また、
150×150mmの試験片の中央部に10mmφの穴
を打ち抜き、ばりをポンチ側とし、これを頂角60°の
円錐ポンチで穴を押し拡げ、穴縁に板厚を貫通して亀裂
が入った時点での穴径を測定、次式により穴拡がり率
(λ)を求めた。
(A〜G:本発明鋼、H〜O:比較鋼)を表2に示す条
件で加熱、熱間圧延、制御冷却および巻取りし、板厚
2.9mmの熱延鋼板を得た。次に、得られた鋼板から
圧延方向にJIS5号引張試験片を採取し、機械的性質
(YP,TS,El,TS×El)を調査した。また、
150×150mmの試験片の中央部に10mmφの穴
を打ち抜き、ばりをポンチ側とし、これを頂角60°の
円錐ポンチで穴を押し拡げ、穴縁に板厚を貫通して亀裂
が入った時点での穴径を測定、次式により穴拡がり率
(λ)を求めた。
【0029】 穴拡がり率:λ=(df −d0 )/d0 ×100(%) 但し、d0 :初期穴径(10mm),df :破断時の穴
径 また、断面を研磨後、ナイタールエッチングによりミク
ロ組織を現出した後、フェライトとベイナイトの硬度を
荷重1gの超マイクロビッカース硬度計で測定した。ま
た、板厚1/4位置の残留オーステナイト量をX線回折
により測定した。以上の測定結果を表2に併せて示す。
径 また、断面を研磨後、ナイタールエッチングによりミク
ロ組織を現出した後、フェライトとベイナイトの硬度を
荷重1gの超マイクロビッカース硬度計で測定した。ま
た、板厚1/4位置の残留オーステナイト量をX線回折
により測定した。以上の測定結果を表2に併せて示す。
【0030】表2に示されるように、本発明の範囲にあ
る熱延鋼板(本発明例No.1〜11)は、ミクロ組織
がフェライト、ベイナイト、および7%以下の体積率の
残留オーステナイトからなり、さらにフェライトとベイ
ナイトの硬度比が2.5以下を満足し、TS×Elで1
8000MPa・%以上の良好な強度−延性バランスを
有し、それと同時に80%以上の良好な穴拡がり率であ
った。
る熱延鋼板(本発明例No.1〜11)は、ミクロ組織
がフェライト、ベイナイト、および7%以下の体積率の
残留オーステナイトからなり、さらにフェライトとベイ
ナイトの硬度比が2.5以下を満足し、TS×Elで1
8000MPa・%以上の良好な強度−延性バランスを
有し、それと同時に80%以上の良好な穴拡がり率であ
った。
【0031】一方、本発明の範囲内の成分である本発明
鋼Bを用いても、熱延条件の内、巻取温度が低めに外れ
た比較例No.1および高めに外れた比較例No.2
は、いずれも良好な延性と伸びフランジ性のバランスが
得られなかった。また、熱延条件が本発明の範囲内であ
っても、成分が本発明の範囲外にあるものは、良好な延
性と伸びフランジ性のバランスが得られなかった。すな
わち、C量が本発明範囲を下回る比較鋼Hによる比較例
No.3は残留オーステナイトが得られず、伸びフラン
ジ性は優れているにもかかわらず、延性が劣っていた。
また、C量が高めに外れた比較鋼IおよびJによる比較
例No.4および5は、TS×Elで24000MPa
・%以上の良好な延性が得られたが、穴拡がり率は80
%以下であり、伸びフランジ性は劣っていた。Si量が
低めに外れた比較鋼Kを用いた比較例No.6は残留オ
ーステナイトが得られず良好な延性が得られなかった。
また、Si量が高めに外れた比較鋼Lを用いた比較例N
o.7では残留オーステナイト量が8%となり延性は優
れていたが良好な伸びフランジ性は得られなかった。M
n量が低めに外れた比較鋼Mを用いた比較例No.8で
は残留オーステナイトが得られず良好な延性が得られな
かった。一方、Pが高めに外れた比較鋼Nを用いた比較
例No.9では良好な延性と伸びフランジ性が得られた
が、打ち抜き端面にPの中心偏析による割れが認めら
れ、製品としては不合格であった。また、Pが低めに外
れた比較鋼Oを用いた比較例No.10では良好な延性
と伸びフランジ性が得られたが、表面の赤スケールと呼
ばれるスケール欠陥が多発し、製品にはならなかった。
鋼Bを用いても、熱延条件の内、巻取温度が低めに外れ
た比較例No.1および高めに外れた比較例No.2
は、いずれも良好な延性と伸びフランジ性のバランスが
得られなかった。また、熱延条件が本発明の範囲内であ
っても、成分が本発明の範囲外にあるものは、良好な延
性と伸びフランジ性のバランスが得られなかった。すな
わち、C量が本発明範囲を下回る比較鋼Hによる比較例
No.3は残留オーステナイトが得られず、伸びフラン
ジ性は優れているにもかかわらず、延性が劣っていた。
また、C量が高めに外れた比較鋼IおよびJによる比較
例No.4および5は、TS×Elで24000MPa
・%以上の良好な延性が得られたが、穴拡がり率は80
%以下であり、伸びフランジ性は劣っていた。Si量が
低めに外れた比較鋼Kを用いた比較例No.6は残留オ
ーステナイトが得られず良好な延性が得られなかった。
また、Si量が高めに外れた比較鋼Lを用いた比較例N
o.7では残留オーステナイト量が8%となり延性は優
れていたが良好な伸びフランジ性は得られなかった。M
n量が低めに外れた比較鋼Mを用いた比較例No.8で
は残留オーステナイトが得られず良好な延性が得られな
かった。一方、Pが高めに外れた比較鋼Nを用いた比較
例No.9では良好な延性と伸びフランジ性が得られた
が、打ち抜き端面にPの中心偏析による割れが認めら
れ、製品としては不合格であった。また、Pが低めに外
れた比較鋼Oを用いた比較例No.10では良好な延性
と伸びフランジ性が得られたが、表面の赤スケールと呼
ばれるスケール欠陥が多発し、製品にはならなかった。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
鋼組成、組織、及び製造条件を特定することにより、良
好な強度−延性バランスと伸びフランジ性を有した59
0〜690MPa級高張力熱延鋼板を提供することがで
きる。従って、本発明の鋼板を自動車の足廻り部材に適
用する事により、自動車の軽量化を図ることができ、産
業上極めて有用な効果が得られる。
鋼組成、組織、及び製造条件を特定することにより、良
好な強度−延性バランスと伸びフランジ性を有した59
0〜690MPa級高張力熱延鋼板を提供することがで
きる。従って、本発明の鋼板を自動車の足廻り部材に適
用する事により、自動車の軽量化を図ることができ、産
業上極めて有用な効果が得られる。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.05〜0.12%
と、Si:0.6〜1.3%と、Mn:1.0〜1.8
%と、P:0.01〜0.04%と、残部Feおよび不
可避的不純物からなる成分の鋼であり、フェライトと、
ベイナイトと、体積%で7%以下の残留オーステナイト
からなるミクロ組織を有し、かつ、フェライトとベイナ
イトの硬度比が2.5以下を満足することを特徴とす
る、延性および伸びフランジ性に優れた高張力熱延鋼
板。 - 【請求項2】 請求項1に記載の成分組成を有する鋼を
所定の温度に加熱後圧延を開始し、次いでオーステナイ
ト単相域で熱間圧延を終了する工程と、 仕上圧延された鋼板を、10℃/秒以上の冷却速度で6
50〜750℃の温度範囲まで冷却してから1秒以上保
持する工程と、 冷却保持された鋼板を、さらに10℃/秒以上の冷却速
度で冷却して、最終的に350〜500℃の温度範囲で
巻取る工程と、 を備えたことを特徴とする、フェライトと、ベイナイト
と、体積%で7%以下の残留オーステナイトからなるミ
クロ組織を有し、かつ、フェライトとベイナイトの硬度
比が2.5以下を満足する、延性および伸びフランジ性
に優れた高張力熱延鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP34312597A JPH11172372A (ja) | 1997-12-12 | 1997-12-12 | 延性および伸びフランジ性に優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP34312597A JPH11172372A (ja) | 1997-12-12 | 1997-12-12 | 延性および伸びフランジ性に優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11172372A true JPH11172372A (ja) | 1999-06-29 |
Family
ID=18359120
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP34312597A Pending JPH11172372A (ja) | 1997-12-12 | 1997-12-12 | 延性および伸びフランジ性に優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH11172372A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001073040A (ja) * | 1999-07-30 | 2001-03-21 | Usinor | 薄いストリップの形態のtrip鋼を製造する方法及びこの方法で得られる薄いストリップ |
EP1350859A1 (en) * | 2002-03-22 | 2003-10-08 | Kawasaki Steel Corporation | High-tensile strength hot-rolled steel sheet excellent in elongation properties and stretch flangeability, and producing method thereof |
-
1997
- 1997-12-12 JP JP34312597A patent/JPH11172372A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001073040A (ja) * | 1999-07-30 | 2001-03-21 | Usinor | 薄いストリップの形態のtrip鋼を製造する方法及びこの方法で得られる薄いストリップ |
JP4684397B2 (ja) * | 1999-07-30 | 2011-05-18 | アルセロールミタル・フランス | 薄いストリップの形態のtrip鋼を製造する方法 |
EP1350859A1 (en) * | 2002-03-22 | 2003-10-08 | Kawasaki Steel Corporation | High-tensile strength hot-rolled steel sheet excellent in elongation properties and stretch flangeability, and producing method thereof |
CN1296507C (zh) * | 2002-03-22 | 2007-01-24 | 杰富意钢铁株式会社 | 延展性和延伸翻口性出色的高强度热轧钢板及其制造方法 |
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