JPH11171700A - シスプラチン微細結晶化方法 - Google Patents

シスプラチン微細結晶化方法

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JPH11171700A
JPH11171700A JP9345934A JP34593497A JPH11171700A JP H11171700 A JPH11171700 A JP H11171700A JP 9345934 A JP9345934 A JP 9345934A JP 34593497 A JP34593497 A JP 34593497A JP H11171700 A JPH11171700 A JP H11171700A
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cisplatin
solvent
organic
solution
fine crystals
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JP9345934A
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English (en)
Inventor
Masakazu Mizobe
雅一 溝邊
Kousuke Yoshino
廣祐 吉野
Yasuhisa Matsukawa
泰久 松川
Takahiro Matsuyama
貴広 松山
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Tanabe Seiyaku Co Ltd
Original Assignee
Tanabe Seiyaku Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 刺激性かつ腐食性の高い塩酸や、トランス型
への異性化や加水分解を引き起こす原因となる水を用い
ることのない、また、シスプラチンの微細結晶の平均粒
子径、粒度分布又は回収率などの点でも優れたシスプラ
チンの微細結晶の製造方法を提供するものである。 【解決手段】 シスプラチンに対する良溶媒にシスプラ
チンを溶解した溶液と、シスプラチンに対する貧溶媒で
あって且つ当該良溶媒と混和しうる有機溶媒とを混合し
てシスプラチンの微細結晶を析出する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はシスプラチンの微細
結晶化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】シスプラチンは、細菌に対する増殖抑制
作用(ロゼンバーグら、ネーチャー・ロンドン〔Ros
enberg et al.、Nature(Lond
on)〕、第205巻、698−699頁、1965
年)や抗腫瘍作用(ロゼンバーグら、ネーチャー・ロン
ドン〔Rosenberg et al.、Natur
e(London)〕、222巻、385−386頁、
1969年)を有する薬物であり、泌尿器科及び婦人科
領域の腫瘍、肺癌、頭頚部癌、睾丸腫瘍、膀胱癌、腎盂
・尿管腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、食道癌、子宮頚癌、神
経芽細胞腫瘍、膀胱癌等、化学療法に広く用いられてい
る代表的な抗腫瘍薬である。
【0003】本薬物は、水溶液中では加水分解(バナー
ジャら、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル
・ソサエティ〔Banerjea et al., J
ounal of the American Che
mical Society〕、第79巻、4055−
4062頁、1957年)やトランス型への異性化(ブ
レウソバ−バイダラ Y.G.ら、イン・アカデミア・
ナウク・SSSR〔Breusova−Baidar
a,Y.G.et al., in Akademia
Nauk SSSR〕、第6号、1167−1169
頁、1974年6月)を生じる等、水に対する安定性が
悪いことが知られており、このため、粉末の形で医療の
場に供給され、投与直前に注射用蒸留水に溶解して使用
する方法がとられる。
【0004】本薬物は水に対する溶解度が25℃で1m
g/mlである。シスプラチンを微細結晶化すること
は、薬物の表面積を飛躍的に増大させることができるた
め、溶解速度を上げるのに好適な手段であると考えられ
る。シスプラチンの微細結晶化方法としては、N,N−
ジメチルホルムアミドと濃塩酸水溶液との混合溶媒にシ
スプラチンを溶解し、次いで該溶液に希塩酸を添加して
微結晶状シスプラチンを析出させ、析出晶を濾取し、希
塩酸で洗浄後、乾燥することにより微結晶状シスプラチ
ンを得る方法が知られている(特開昭58−32029
号公報)。しかしながら、この方法は刺激性且つ腐食性
の高い塩酸を使用する点、トランス型への異性化や加水
分解を引き起こす原因となる水を用いる点、並びに結晶
の平均粒子径、粒度分布又は回収率などの点で、さらに
改良の余地があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、刺激性かつ
腐食性の高い塩酸を使用しない点、トランス型への異性
化や加水分解を引き起こす原因となる水を用いない点、
また、シスプラチンの微細結晶の平均粒子径、粒度分布
又は回収率などの点でも優れた、シスプラチンの微細結
晶の製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前述の如
き従来法の問題点を改善すべく鋭意検討を行った結果、
シスプラチンに対する良溶媒にシスプラチンを溶解した
溶液と、シスプラチンの溶解度が低く且つ当該良溶媒と
混和しうる有機溶媒と混合することによって、容易にシ
スプラチンの微細結晶が得られることを見出し、本発明
を完成させるに至った。
【0007】即ち、本発明は、シスプラチンに対する良
溶媒にシスプラチンを溶解した溶液と、シスプラチンに
対する貧溶媒であって且つ当該良溶媒と混和しうる有機
溶媒とを混合し、シスプラチンの微細結晶を析出させる
ことを特徴とするシスプラチンの微細結晶化方法であ
る。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の方法は、シスプラチンに
対する良溶媒にシスプラチンを溶解した溶液(以下、シ
スプラチン溶液という)を調製し、該シスプラチン溶液
と、シスプラチンに対する貧溶媒であって且つ当該良溶
媒と混和しうる有機溶媒とを混合することにより実施す
ることができる。
【0009】シスプラチンを溶解してシスプラチン溶液
を調製するために用いるシスプラチンに対する良溶媒と
しては、シスプラチンを溶解し且つシスプラチンに対し
て不活性であるものであれば、特に限定されないが、好
ましくは、25℃におけるシスプラチンの溶解度が10
g/L以上、とりわけ10g/L〜300g/Lである
溶媒があげられ、さらに好ましくは、25℃におけるシ
スプラチンの溶解度が20g/L〜50g/Lである溶
媒があげられる。
【0010】かかる良溶媒としては、有機アミド及び有
機スルフォキシドから選ばれる少なくとも1種以上の溶
媒があげられる。
【0011】「有機アミド」としては、アミノ基が低級
アルキル基又はヒドロキシ低級アルキル基で同一又は異
なって1又は2つ置換されていてもよいアミド(例え
ば、ホルムアミド;N−メチルホルムアミド、N−エチ
ルホルムアミド、N−プロピルホルムアミドもしくはN
−(2−ヒドロキシエチル)ホルムアミドなどのN−置
換ホルムアミド;N,N−ジメチルホルムアミド、N,
N−ジエチルホルムアミドもしくはN,N−ジプロピル
ホルムアミドなどのN,N−ジ置換ホルムアミド;アセ
トアミド;N−メチルアセトアミド、N−エチルアセト
アミド、N−プロピルアセトアミドもしくはN−(2−
ヒドロキシエチル)アセトアミドなどのN−置換アセト
アミド;N,N−ジメチルアセトアミドもしくはN,N
−ジエチルアセトアミドなどのN,N−ジ置換アセトア
ミド;プロピオンアミド;N−メチルプロピオンアミ
ド、N−エチルプロピオンアミドもしくはN−(2−ヒ
ドロキシエチル)プロピオンアミドなどのN−置換プロ
ピオンアミド;又はN,N−ジメチルプロピオンアミド
もしくはN,N−ジエチルプロピオンアミドなどのN,
N−ジ置換プロピオンアミドなど)、又はイミノ基が低
級アルキル基又はヒドロキシ低級アルキル基で置換され
ていてもよい環状アミド(例えば、2−ピロリジノン、
N−メチル−2−ピロリジノン、N−エチル−2−ピロ
リジノン又はN−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロ
リジノンなど)などがあげられる。
【0012】「有機スルフォキシド」としては、スルフ
ォキシドが同一又は異なる2つの低級アルキル基により
置換されているスルフォキシド(例えば、ジメチルスル
フォキシド又はエチルメチルスルフォキシドなど)など
があげられる。
【0013】これらのうち、N,N−ジ低級アルキルホ
ルムアミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、
N,N−ジエチルホルムアミド又はN,N−ジプロピル
ホルムアミドなど)、N,N−ジ低級アルキルアセトア
ミド(例えば、N,N−ジメチルアセトアミド又はN,
N−ジエチルアセトアミドなど)、N,N−ジ低級アル
キルプロピオンアミド(例えば、N,N−ジメチルプロ
ピオンアミド又はN,N−ジエチルプロピオンアミドな
ど)、N−低級アルキル−2−ピロリジノン(例えば、
N−メチル−2−ピロリジノン又はN−エチル−2−ピ
ロリジノンなど)又はN−ヒドロキシ低級アルキル−2
−ピロリジノン(例えば、N−(2−ヒドロキシエチ
ル)−2−ピロリジノンなど)が好ましく、N,N−ジ
低級アルキルホルムアミドがとりわけ好ましい。
【0014】さらに、これら有機アミド及び有機スルフ
ォキシドから選ばれる少なくとも1種以上の溶媒のう
ち、好ましい具体例としては、N,N−ジメチルホルム
アミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメ
チルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド又は
N−メチル−2−ピロリジノンから選ばれる少なくとも
1種以上の溶媒があげられ、とりわけ好ましくは、N,
N−ジメチルホルムアミドがあげられる。
【0015】シスプラチンを析出させるためにシスプラ
チン溶液に混合する、シスプラチンに対する貧溶媒であ
って且つシスプラチン溶液を調製するのに用いた良溶媒
と混和しうる有機溶媒(以下、析出溶媒という)として
は、シスプラチン溶液を調製するのに用いた良溶媒より
もシスプラチンの溶解度が低く且つ当該良溶媒と混和し
うる有機溶媒であればよく、シスプラチンを実質的に溶
解せず、且つ当該良溶媒と混和しうる有機溶媒もこれに
含まれる。
【0016】また、このような析出溶媒には、25℃に
おけるシスプラチンの溶解度が5g/L以下(好ましく
は、25℃におけるシスプラチンの溶解度が2g/L以
下)であって且つシスプラチン溶液を調製するのに用い
た良溶媒と混和しうる有機溶媒が含まれる。
【0017】かかる析出溶媒としては、例えば、低級ア
ルカノール(例えば、メタノール、エタノール、n−プ
ロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソ
ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノー
ル、イソペンタノール、sec−ペンタノール、n−ヘ
キサノール又はイソヘキサノールなど)、ジ低級アルキ
ルケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジ
エチルケトン、メチルイソプロピルケトン又はジ−n−
ヘキシルケトンなど)、ハロゲノ低級アルカン(クロロ
ホルム、塩化メチレン、トリクロルエタン、1−ブロモ
−2−クロロエタン又は1−ブロモ−6−クロロヘキサ
ンなど)、シアノ低級アルカン(例えば、アセトニトリ
ルなど)、ジ低級アルキルエーテル(例えば、ジエチル
エーテル、エチルメチルエーテル、ジイソプロピルエー
テル又はtert−ブチルメチルエーテルなど)、環状
エーテル(例えば、テトラヒドロフラン又はジオキサン
など)及び低級脂肪酸エステル(例えば、ぎ酸メチル、
ぎ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、
酢酸イソプロピル又は酢酸ブチルなど)から選ばれる少
なくとも1種以上の有機溶媒があげられ、好ましくは、
低級アルカノール、ハロゲノ低級アルカン、ジ低級アル
キルケトン及びシアノ低級アルカンから選ばれる少なく
とも1種以上の有機溶媒があげられ、特に好ましくは、
低級アルカノール及びハロゲノ低級アルカンから選ばれ
る少なくとも1種以上の有機溶媒があげられる。
【0018】さらに、上記析出溶媒のうち、好ましい具
体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノ
ール、n−ブタノール、アセトン、クロロホルム、塩化
メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、ジイソ
プロピルエーテル及び酢酸エチルから選ばれる少なくと
も1種以上の有機溶媒があげられる。さらに好ましい具
体例としては、メタノール、エタノール、アセトン、ク
ロロホルム、塩化メチレン及びアセトニトリルから選ば
れる少なくとも1種以上の有機溶媒があげられ、特に好
ましくは、塩化メチレン及びエタノールから選ばれる少
なくとも1種以上の有機溶媒があげられる。
【0019】本発明の方法で、シスプラチンを溶解して
シスプラチン溶液を調製するために用いるシスプラチン
に対する良溶媒と析出溶媒との好ましい組み合わせとし
ては、シスプラチンに対する良溶媒が、有機アミド及び
有機スルフォキシドから選ばれる少なくとも1種以上の
溶媒であり、析出溶媒が低級アルカノール、ジ低級アル
キルケトン、ハロゲノ低級アルカン、シアノ低級アルカ
ン、ジ低級アルキルエーテル、環状エーテル及び低級脂
肪酸エステル類から選ばれる少なくとも1種以上の有機
溶媒である組み合わせがあげられ、このうち好ましい組
み合わせとしては、シスプラチンに対する良溶媒が、
N,N−ジ低級アルキルホルムアミド、N,N−ジ低級
アルキルアセトアミド及びN−低級アルキル−2−ピロ
リジノンから選ばれる少なくとも1種以上の溶媒であ
り、析出溶媒が低級アルカノール、ジ低級アルキルケト
ン、ハロゲノ低級アルカン、シアノ低級アルカン、ジ低
級アルキルエーテル、環状エーテル及び低級脂肪酸エス
テル類から選ばれる少なくとも1種以上の有機溶媒であ
る組み合わせが好ましい。
【0020】また、より好ましい組み合わせてとして
は、シスプラチンに対する良溶媒がN,N−ジメチルホ
ルムアミドであり、析出溶媒がエタノール、メタノー
ル、アセトン、塩化メチレン、クロロホルム及びアセト
ニトリルから選ばれる少なくとも1種以上の有機溶媒で
ある組み合わせがあげられる。
【0021】さらに、特に好ましい組み合わせとして
は、シスプラチンに対する良溶媒がN,N−ジメチルホ
ルムアミドであり、析出溶媒が塩化メチレンである組み
合わせと、シスプラチンに対する良溶媒がN,N−ジメ
チルホルムアミドであり、析出溶媒がエタノールである
組み合わせがあげられる。
【0022】本発明において、シスプラチンの微細結晶
とは、シスプラチンの結晶粒径が約0.01μm〜10
μmの結晶があげられ、好ましくは、約0.1μm〜5
μmの結晶があげられる。
【0023】本発明において、シスプラチン溶液の濃度
は、使用する溶媒や温度条件によって異なるが、通常、
25℃において、約5g/L〜約200g/Lの範囲で
あり、好ましくは、約10g/L〜約40g/Lの範囲
であり、より好ましくは、約20g/L〜約30g/L
の範囲である。この濃度は種々変えることができる。
【0024】本発明において、シスプラチンを良溶媒に
溶解するときの温度は、特に限定はなく、冷却下〜良溶
媒の沸点の範囲から作業上問題のない温度条件を適宜選
べばよいが、通常、約0℃〜約80℃の範囲であり、好
ましくは、約10℃〜約40℃の範囲であり、より好ま
しくは、約15℃〜約25℃の範囲である。
【0025】なお、シスプラチン溶液を調製する際に不
溶物を除去する目的で必要に応じて、常法により、濾過
を行ってもよい。
【0026】析出溶媒の量は、特に限定はされないが、
経済性の面から、通常、シスプラチン溶液に対し、容量
比で0.5倍〜10倍の範囲であり、好ましくは、0.
75倍〜5倍の範囲である。また、一般に、析出溶媒の
量を多くすると、微細結晶の回収率は向上する。
【0027】本発明において、シスプラチン溶液と析出
溶媒との混合操作は、撹拌下で行っても、また特に撹拌
を行わずに行ってもよい。撹拌下で混合する場合、撹拌
条件に特に限定はなく、この分野で一般に行われる撹拌
装置および操作条件が好適に使用される。混合する順序
は、シスプラチン溶液を析出溶媒に添加しても良いし、
その逆に析出溶媒をシスプラチン溶液に添加しても良
い。
【0028】シスプラチン溶液と析出溶媒とを混合する
ときの温度は、特に限定はなく、冷却下〜析出溶媒の沸
点の範囲から作業上問題のない温度条件を適宜選べばよ
いが、通常、約−10℃〜約80℃の範囲であり、好ま
しくは約5℃〜約40℃の範囲であり、より好ましくは
約15℃〜約25℃の範囲である。
【0029】本発明の方法によると、シスプラチンの微
細結晶は、シスプラチン溶液と析出溶媒とを混合すれ
ば、すぐに析出する。したがって、両液を混合してか
ら、特に、放置時間(アニーリング時間)を置く必要は
ないが、放置すると結晶表面が安定するので、析出した
シスプラチンの微細結晶をそのまま混合液中に、一定時
間放置することにより結晶表面を安定化させてもよい。
この操作をすることによって、物理化学的性質(例え
ば、微細結晶の乾熱滅菌を行う際に変色しにくいなど)
のより優れたシスプラチンの微細結晶が得られる。この
目的のための放置時間は、特に限定はないが、例えば、
5時間以上、好ましくは一晩以上、より好ましくは一昼
夜以上とするのがよい。さらに工業的な効率を考慮する
と、例えば、約12時間〜約72時間の範囲、とりわ
け、約24時間〜約48時間の範囲とすればよい。
【0030】本発明の方法により析出したシスプラチン
の微細結晶は、常法(遠心分離または濾過など)によ
り、混合液から分離・採取することができる。
【0031】分離・採取したシスプラチンの微細結晶
は、残存する溶媒を除去する目的で、あるいは所望によ
り、適当な溶媒で洗浄してもよい。洗浄に使用する溶媒
は、シスプラチンに対する貧溶媒を適宜用いればよい
が、乾燥効率の点からは、なるべく低沸点の揮発性有機
溶媒が望まれる。このような洗浄に使用する有機溶媒と
しては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、
塩化メチレン、アセトニトリルなどがあげられ、好まし
くは、エタノールがあげられる。なお、洗浄に使用する
溶媒の量は、特に限定はないが、洗浄効果、作業時間及
びコストとを考慮して、最適量が選ばれる。
【0032】得られたシスプラチンの微細結晶は、所望
により乾燥させてもよい。乾燥方法には、特に限定はな
く、常法(例えば、減圧乾燥、加熱乾燥、風乾など)に
より、適宜実施すればよい。
【0033】本明細書中、低級アルキルとしては、直鎖
又は分岐鎖の炭素数1〜6のもの(例えば、メチル、エ
チル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ
ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペン
タン、n−ヘキサンなど)があげられ、このうち炭素数
1〜4のもの、とりわけ炭素数1〜2のものが好まし
い。低級アルカノールとしては、直鎖又は分岐鎖の炭素
数1〜6のものがあげられ、このうち炭素数1〜4のも
の、とりわけ炭素数1〜2のものが好ましい。低級アル
カンとしては、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のものが
あげられ、このうち炭素数1〜4のもの、とりわけ炭素
数1〜2のものが好ましい。低級脂肪酸エステルとして
は、低級脂肪酸の低級アルキルエステルがあげられる。
低級脂肪酸としては、ぎ酸及び直鎖又は分岐鎖の炭素数
2〜6の脂肪酸があげられ、とりわけ炭素数2のもの
(即ち、酢酸)が好ましい。
【0034】以下、実施例によって本発明を具体的に説
明するが、本発明は、これらによって限定されるもので
はない。
【0035】
【実施例】実施例1 シスプラチンの結晶末20mgをN,N−ジメチルホル
ムアミド1mlに溶解し、得られたシスプラチン溶液を
塩化メチレン0.5mlにマグネチックスタラーで撹拌
下、添加してシスプラチンを晶析させた。この懸濁液を
5分間撹拌した後、遠心管に移し2500rpmで10
分間遠心し上清を除き、沈殿物をエタノール10mlで
2回洗浄後、シスプラチンの微細結晶を分離した。分離
したシスプラチンの微細結晶を一夜減圧乾燥した。得ら
れたシスプラチンの微細結晶の平均粒子径は0.72μ
mであり、5μm以下の微細結晶は全重量の99.4%
がであった。
【0036】実施例2 シスプラチンの結晶末20mgをN,N−ジメチルホル
ムアミド1mlに溶解し、得られたシスプラチン溶液を
塩化メチレン2mlにマグネチックスタラーで撹拌下、
添加してシスプラチンを晶析させた。この懸濁液を5分
間撹拌した後、遠心管に移し2500rpmで10分間
遠心し上清を除き、沈殿物をエタノール10mlで2回
洗浄後、シスプラチンの微細結晶を分離した。分離した
シスプラチンの微細結晶を一夜減圧乾燥した。得られた
シスプラチンの微細結晶の平均粒子径は0.65μmで
あり、全重量の89.1%が5μm以下の結晶であっ
た。
【0037】実施例3 シスプラチンの結晶末10.2gをN,N−ジメチルホ
ルムアミド500mlに溶解し、この溶液を0.45μ
mのフィルター(商品名:FR−20、富士フィルム社
製)でろ過して不溶部を除いた。得られたシスプラチン
溶液に、マグネチックスタラーで撹拌下、塩化メチレン
500mlを急速に添加しシスプラチンを晶析させた。
この懸濁液を引き続き30分間撹拌した後、20℃の恒
温槽中、遮光下に24時間静置した。次いで、上清をデ
カンテーションした後、遠心管に移して2000rpm
で5分間遠心してさらに上清を除き、エタノール30m
lで2回洗浄後、シスプラチンの微細結晶を分離した。
分離したシスプラチンの微細結晶を一夜減圧乾燥してシ
スプラチンの晶析品9.33gを得た(回収率91.8
%)。得られたシスプラチンの微細結晶の平均粒子径は
1.36μmであり、全重量の93.0%が5μm以下
であった。
【0038】実施例4 シスプラチンの結晶末300mgをジメチルスルフォキ
シド15mlに溶解し、得られたシスプラチン溶液にク
ロロホルム75mlを添加してシスプラチンを晶析させ
た。この懸濁液を遠心管に移し2000rpmで5分間
遠心し上清を除き、沈殿物をエタノール10mlで2回
洗浄後、シスプラチンの微細結晶を分離した。分離した
シスプラチンの微細結晶を一夜減圧乾燥した。得られた
シスプラチンの微細結晶の平均粒子径は0.40μmで
あり、全重量の94.0%が5μm以下の結晶であっ
た。
【0039】実施例5 シスプラチンの結晶末3gをジメチルスルフォキシド1
5mlに溶解し、得られたシスプラチン溶液にクロロホ
ルム15mlを添加してシスプラチンを晶析させた。こ
の懸濁液を遠心管に移し2000rpmで5分間遠心し
上清を除き、沈殿物をエタノール10mlで2回洗浄
後、シスプラチンの微細結晶を分離した。分離したシス
プラチンの微細結晶を一夜減圧乾燥した。得られたシス
プラチンの微細結晶の平均粒子径は1.78μmであ
り、全重量の92.0%が5μm以下の結晶であった。
【0040】実施例6 シスプラチンの結晶末100mgをN,N−ジメチルホ
ルムアミド5mlに溶解し、得られたシスプラチン溶液
をエタノール5mlに添加してシスプラチンを晶析させ
た。この懸濁液を遠心管に移し2000rpmで5分間
遠心し上清を除き、沈殿物をエタノール10mlで2回
洗浄後、シスプラチンの微細結晶を分離した。分離した
シスプラチンの微細結晶を一夜減圧乾燥した。得られた
シスプラチンの微細結晶の収量は86.1mgであり、
平均粒子径は0.65μmであり、結晶はすべて5μm
以下であった。
【0041】実施例7 シスプラチンの結晶末100mgをN,N−ジメチルホ
ルムアミド5mlに溶解し、得られたシスプラチン溶液
をエタノール25mlに添加してシスプラチンを晶析さ
せた。この懸濁液を遠心管に移し2000rpmで5分
間遠心し上清を除き、沈殿物をエタノール10mlで2
回洗浄後、シスプラチンの微細結晶を分離した。分離し
たシスプラチンの微細結晶を一夜減圧乾燥した。得られ
たシスプラチンの微細結晶の収量は100mgであり、
平均粒子径は1.28μmであり、結晶はすべて5μm
以下であった。
【0042】実施例8 シスプラチンの結晶末100mgをN,N−ジメチルホ
ルムアミド5mlに溶解し、得られたシスプラチン溶液
をメタノール25mlに添加してシスプラチンを晶析さ
せた。この懸濁液を遠心管に移し2000rpmで5分
間遠心し上清を除き、沈殿物をエタノール10mlで2
回洗浄後、シスプラチンの微細結晶を分離した。分離し
たシスプラチンの微細結晶を一夜減圧乾燥した。得られ
たシスプラチンの微細結晶の収量は85.1mgであ
り、平均粒子径は1.56μmであり、全重量の98.
2%が5μm以下の結晶であった。
【0043】実施例9 シスプラチンの結晶末20mgをN,N−ジメチルホル
ムアミド1mlに溶解し、得られたシスプラチン溶液を
クロロホルム1mlに添加してシスプラチンを晶析させ
た。この懸濁液を遠心管に移し2000rpmで5分間
遠心し上清を除き、シスプラチンの微細結晶を分離し
た。分離したシスプラチンの微細結晶の平均粒子径は
0.66μmであり、全重量の90.4%が5μm以下
の結晶であった。
【0044】実施例10 シスプラチンの結晶末20mgをN,N−ジメチルホル
ムアミド1mlに溶解し、得られたシスプラチン溶液を
アセトン5mlに添加してシスプラチンを晶析させた。
得られたシスプラチンの微細結晶の平均粒子径は0.8
3μmであり、全重量の98.9%が5μm以下の結晶
であった。
【0045】実施例11 シスプラチンの結晶末20mgをN,N−ジメチルホル
ムアミド1mlに溶解し、得られたシスプラチン溶液を
アセトニトリル5mlに添加してシスプラチンを晶析さ
せた。得られたシスプラチンの微細結晶の平均粒子径は
0.96μmであり、結晶はすべて5μm以下であっ
た。
【0046】実施例12 シスプラチンの結晶末100mgをN,N−ジメチルホ
ルムアミド5mlに溶解し、得られたシスプラチン溶液
を塩化メチレン5mlに添加してシスプラチンを晶析さ
せた。この懸濁液を遠心管に移し2000rpmで5分
間遠心し上清を除き、沈殿物をエタノール10mlで2
回洗浄後、シスプラチンの微細結晶を分離した。分離し
たシスプラチンの微細結晶を一夜減圧乾燥した。得られ
たシスプラチンの微細結晶の収量は90.1mgであ
り、平均粒子径は0.61μmであり、結晶はすべて5
μm以下であった。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シスプラチンに対する良溶媒にシスプラ
    チンを溶解した溶液と、シスプラチンに対する貧溶媒で
    あって且つ当該良溶媒と混和しうる有機溶媒とを混合
    し、シスプラチンの微細結晶を析出させることを特徴と
    するシスプラチンの微細結晶化方法。
  2. 【請求項2】 シスプラチンに対する良溶媒が、有機ア
    ミド及び有機スルフォキシドから選ばれる少なくとも1
    種以上の溶媒であり、シスプラチンに対する貧溶媒であ
    って且つ当該良溶媒と混和しうる有機溶媒が、低級アル
    カノール、ジ低級アルキルケトン、ハロゲノ低級アルカ
    ン、シアノ低級アルカン、ジ低級アルキルエーテル、環
    状エーテル及び低級脂肪酸エステルから選ばれる少なく
    とも1種以上の有機溶媒である請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 シスプラチンに対する良溶媒が、N,N
    −ジ低級アルキルホルムアミド、N,N−ジ低級アルキ
    ルアセトアミド及びN−低級アルキル−2−ピロリジノ
    ンから選ばれる少なくとも1種以上の溶媒である請求項
    2記載の方法。
  4. 【請求項4】 シスプラチンに対する良溶媒が、N,N
    −ジメチルホルムアミドであり、シスプラチンに対する
    貧溶媒であって且つ当該良溶媒と混和しうる有機溶媒
    が、エタノール、メタノール、アセトン、塩化メチレ
    ン、クロロホルム及びアセトニトリルから選ばれる少な
    くとも1種以上の有機溶媒である請求項3記載の方法。
  5. 【請求項5】 N,N−ジメチルホルムアミドにシスプ
    ラチンを溶解した溶液と、塩化メチレンとを混合し、シ
    スプラチンの微細結晶を析出させることを特徴とするシ
    スプラチンの微細結晶化方法。
  6. 【請求項6】 N,N−ジメチルホルムアミドにシスプ
    ラチンを溶解した溶液と、エタノールとを混合し、シス
    プラチンの微細結晶を析出させることを特徴とするシス
    プラチンの微細結晶化方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項記載の方法
    により析出させたシスプラチンの微細結晶を、混合液中
    から分離・採取することを特徴とするシスプラチンの微
    細結晶の製法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜6のいずれか1項記載の方法
    により析出させたシスプラチンの微細結晶を、そのまま
    混合液中に放置した後、混合液中から分離・採取するこ
    とを特徴とするシスプラチンの微細結晶の製法。
  9. 【請求項9】 25℃におけるシスプラチンの溶解度が
    10g/L〜300g/Lである良溶媒にシスプラチン
    を溶解した溶液と、25℃におけるシスプラチンの溶解
    度が5g/L以下である貧溶媒であって且つ当該良溶媒
    と混和しうる有機溶媒とを混合し、シスプラチンの微細
    結晶を析出させることを特徴とするシスプラチンの微細
    結晶化方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005023081A (ja) * 2003-06-11 2005-01-27 Api Corporation アルブチン結晶及びその製造方法
JP2009535345A (ja) * 2006-04-28 2009-10-01 シェーリング コーポレイション 制御された析出による6,6−ジメチル−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−アミド化合物の析出および単離のための方法、ならびにこれを含む医薬処方物
US8420122B2 (en) 2006-04-28 2013-04-16 Merck Sharp & Dohme Corp. Process for the precipitation and isolation of 6,6-dimethyl-3-aza-bicyclo [3.1.0] hexane-amide compounds by controlled precipitation and pharmaceutical formulations containing same

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