JPH11152514A - 高周波焼入装置及び方法 - Google Patents

高周波焼入装置及び方法

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JPH11152514A
JPH11152514A JP9333673A JP33367397A JPH11152514A JP H11152514 A JPH11152514 A JP H11152514A JP 9333673 A JP9333673 A JP 9333673A JP 33367397 A JP33367397 A JP 33367397A JP H11152514 A JPH11152514 A JP H11152514A
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cup
groove
heating coil
induction hardening
peripheral surface
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Hiyoshi Watanabe
日吉 渡邊
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 特に外側冷却ジャケットを用いることなく筒
状ワークの内周面に焼き抜けを生じさせることなく高周
波焼入を施すことができるようにする。 【構成】 冷却液Lが貯溜されるとともに、底部110
に開口111が開設された冷却槽100と、開口111
を閉塞した状態で冷却槽100に設置される筒状ワーク
である等速ジョイントのカップ部Wの内周面W1を加熱
する高周波加熱コイル200と、この高周波加熱コイル
200に付設された内側冷却ジャケット300とを備え
ており、開口111をカップ部Wで閉塞した状態で冷却
槽100に冷却液Lを貯溜し、開口111を介してカッ
プ部Wの内側に挿入された高周波加熱コイル200によ
って加熱された内周面W1に内側冷却ジャケット300
で冷却液Lを噴射することでカップ部Wの内周面W1に
高周波焼入を施すように構成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、等速ジョイントの
カップ部の内周面に高周波焼入を施す高周波焼入装置及
び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種のカップ部の高周波焼入装
置について図6及び図7を参照しつつ説明する。
【0003】等速ジョイントのカップ部Wは2種類のタ
イプがある。すなわち、図7(A)に示すように、内周
面W1に3個の溝部W4が形成されたいわゆるトリポー
トタイプと、図7(B)に示すように、内周面W1に6
つの溝部W4が形成されたいわゆる6ツ溝タイプとであ
る。
【0004】トリポートタイプのカップ部Wでは、溝部
W4の両側面部W41に高周波焼入が施される。このた
めの高周波焼入装置は、溝部W4の形状に合致した3つ
の加熱導体部を有する高周波加熱コイル200と、この
高周波加熱コイル200に付設された内側冷却ジャケッ
ト300と、カップ部Wを外周面から冷却する外側冷却
ジャケット600とを有している。
【0005】一方、6ツ溝タイプのカップ部Wでは溝部
W4がトリポートタイプのものに比較して浅いため、溝
部W4の底面部W42に高周波焼入を施す加熱導体部が
螺旋状に巻回されたいわゆるマルチターンタイプの高周
波加熱コイル200が用いられる。
【0006】トリポートタイプのカップ部Wに高周波焼
入を施す高周波焼入装置には、2種類の加熱方法があ
る。第1の加熱方法は、高周波加熱コイル200の加熱
導体部とカップ部Wとを相対的に移動させて溝部W4を
下側から上側に向かって順次加熱する移動焼きと、溝部
W4の全面に対向する加熱導体部をそれぞれの溝部W4
に挿入しておき、1回で溝部W4の両側面部W41の全
面を加熱する一発焼きとである。
【0007】一方、6ツ溝タイプのカップ部Wでは、一
発焼きが採用される。これは、6ツ溝タイプの溝部W4
は、トリポートタイプのそれより浅いので、カップ部W
を軸芯を中心として回転させつつ加熱することが可能な
ためである。すなわち、カップ部Wを軸芯中心で回転さ
せると、より均一な加熱が可能となるからである。
【0008】一発焼きの方向では、加熱された後に高周
波加熱コイル200に付設された内側冷却ジャケット3
00Aから冷却液Lを噴射して高周波焼入を行う。ま
た、移動焼きの場合には、高周波加熱コイル200の下
方に冷却ジャケット300Bを配置しておき、高周波加
熱コイル200によって加熱された部分に冷却液Lを順
次噴射して高周波焼入を行う。
【0009】トリポートタイプ或いは6ツ溝タイプの両
者ともカップ部Wには、溝部W4が形成されているた
め、溝部W4が形成された部分は薄肉であり、溝部W4
が形成されていない部分は厚肉になっている。このた
め、高周波焼入が施されるべき溝部W4の両側面部W4
1や底面部W42である薄肉の部分に焼き抜けが形成さ
れることを防止するために、外側冷却ジャケット600
からも冷却液Lを噴射している。なお、焼き抜けとは、
高周波焼入によって形成される硬化層が裏側から表側に
まで達することをいう。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の高周波焼入装置には以下のような問題点があ
る。まず、外側冷却ジャケットはカップ部の薄肉の部分
に集中的に冷却液を噴射するため、薄肉の部分に対向す
る部分にのみ設けられている。このため、カップ部、す
なわちカップ部のサイズ、種類等が変わると、高周波加
熱コイルのみならず、外側冷却ジャケットをも変更する
必要がある。このため、カップ部のサイズ、種類等ごと
に外側冷却ジャケットを準備しておく必要があった。
【0011】本発明は上記事情に鑑みて創案されたもの
であって、特に外側冷却ジャケットを用いることなくカ
ップ部の内周面、特に溝部に焼き抜けを生じさせること
なく高周波焼入を施すことができる高周波焼入装置及び
方法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る高周波焼
入装置は、内周面に6つの溝部が形成された6ツ溝タイ
プの等速ジョイントのカップ部の溝部に高周波焼入を施
す高周波焼入装置であって、冷却液が貯溜されるととも
に、カップ部によって覆われる開口が底部に開設された
冷却槽と、前記開口を介してカップ部の内部に挿入さ
れ、溝部を加熱する高周波加熱コイルと、この高周波加
熱コイルに付設された内側冷却ジャケットと、カップ部
の軸芯を中心として回転させる回転機構とを備えてお
り、冷却液が冷却槽に貯溜された状態でカップ部を回転
させつつ、カップ部の内部に挿入された高周波加熱コイ
ルを固定した状態でカップ部の溝部を加熱した後、加熱
された溝部に内側冷却ジャケットから冷却液を噴射する
ように構成されている。
【0013】また、請求項2に係る高周波焼入装置は、
内周面に3つの溝部が形成されたトリポートタイプの等
速ジョイントのカップ部の溝部に高周波焼入を施す高周
波焼入装置であって、冷却液が貯溜されるとともに、カ
ップ部によって覆われる開口が底部に開設された冷却槽
と、前記開口を介してカップ部の内部に挿入され、溝部
を加熱する高周波加熱コイルと、この高周波加熱コイル
に付設された内側冷却ジャケットとを備えており、前記
開口を覆ったカップ部の内部に挿入された高周波加熱コ
イルを固定した状態でカップ部の溝部を加熱した後、加
熱された溝部に内側冷却ジャケットから冷却液を噴射す
るように構成されている。
【0014】さらに、請求項3に係る高周波焼入装置
は、内周面に3つの溝部が形成されたトリポートタイプ
の等速ジョイントのカップ部の溝部に高周波焼入を施す
高周波焼入装置であって、冷却液が貯溜されるととも
に、冷却液が貯溜されるとともに、カップ部によって覆
われる開口が底部に開設された冷却槽と、前記開口を介
してカップ部の内部に挿入され、溝部を加熱する高周波
加熱コイルと、この高周波加熱コイルに付設された内側
冷却ジャケットと、前記高周波加熱コイルとカップ部と
を相対的に移動させる移動機構とを備えており、前記移
動機構でカップ部の内部に挿入された高周波加熱コイル
とカップ部とを相対的に移動させつつ、溝部を加熱した
後、加熱された溝部に内側冷却ジャケットで冷却液を噴
射するように構成されている。
【0015】また、請求項4に係る高周波焼入装置で
は、冷却槽は、貯溜される冷却液の量をカップ部の高さ
寸法に応じて変更することができるようになっている。
【0016】一方、請求項5に係る高周波焼入方法は、
カップ部の外周面を貯溜した冷却液に浸漬し、内周面を
冷却液に浸漬させない状態で内周面を高周波加熱し、加
熱された部分に冷却液を噴射してカップ部の内周面に高
周波焼入を施すようになっている。
【0017】
【発明の実施の形態】図1は本発明の第1の実施の形態
に係る高周波焼入装置の概略的断面図、図2は本発明の
第2の実施の形態に係る高周波焼入装置に用いられる高
周波加熱コイルの概略的斜視図、図3は発明の第2の実
施の形態に係る高周波焼入装置に用いられる高周波加熱
コイルの概略的平面図、図4は本発明の第2の実施の形
態に係る高周波焼入装置の概略的断面図、図5は本発明
の第3の実施の形態に係る高周波焼入装置に用いられる
高周波加熱コイルの概略的斜視図である。なお、従来の
ものと略同一の部品等には同一の符号を付して説明を行
う。
【0018】まず、本発明の第1の実施の形態に係る高
周波焼入装置は、図7(B)に示されるように、6つの
溝部W4が形成されたいわゆる6ツ溝タイプの等速ジョ
イントのカップ部Wに高周波焼入を施すものである。
【0019】かかる高周波焼入装置は、冷却液Lが貯溜
されるとともに、カップ部Wによって覆われる開口11
1が底部110に開設された冷却槽100と、前記開口
111を介してカップ部Wの内部に挿入され、溝部W4
を加熱する高周波加熱コイル200Aと、この高周波加
熱コイル200Aに付設された内側冷却ジャケット30
0Aと、カップ部Wの軸芯を中心として回転させる回転
機構500とを備えており、冷却液Lが冷却槽100に
貯溜された状態でカップ部Wを回転させつつ、カップ部
Wの内部に挿入された高周波加熱コイル200Aを固定
した状態でカップ部Wの溝部W4を加熱した後、加熱さ
れた溝部W4に内側冷却ジャケット300Aから冷却液
Lを噴射するように構成されている。
【0020】前記高周波加熱コイル200Aは、加熱導
体部210Aを螺旋状に巻回したいわゆるマルチターン
タイプのものであり、それぞれの溝部W4に入り込む加
熱導体部というものは有していない。このため、固定さ
れた高周波加熱コイル200Aをカップ部Wに挿入した
状態でカップ部Wのみを回転機構500によって図1に
示す矢印A方向に回転させることができるのである。
【0021】前記冷却槽100は、カップ部Wに対応し
た容量を有しており、その底部110には、カップ部W
によって覆うことができる開口111が開設されてい
る。この開口111は、カップ部Wの内周面W1を加熱
する高周波加熱コイル200が挿入される部分であるの
で、高周波加熱コイル200Aの外形に応じた外形等に
設定されている。また、開口111の周縁部にはセラミ
ックス等からなるリング状の絶縁部材111Aが設けら
れている。
【0022】この冷却槽100の底部110には、前記
開口111の他に冷却液Lを抜くための開閉自在になっ
た液抜き部112が形成されている。
【0023】さらに、この冷却槽100の側面120に
は開閉自在になったレベル調整部121が形成されてい
る。このレベル調整部121は、カップ部Wの高さ寸法
に応じて冷却槽100に貯溜する冷却液Lの量を変更す
るためのものであって、図1に示すように、背高のカッ
プ部Wの場合には実線で示す位置まで冷却液Lを貯溜
し、背低のカップ部Wの場合には一点鎖線で示す位置ま
で冷却液Lを貯溜するようになっている。なお、このレ
ベル調節部121は、具体的には側面120に開設され
た開口と、この開口を開閉する蓋体と、この蓋体を移動
させる移動部とを有している。
【0024】また、この高周波加熱コイル200Aに付
設される内側冷却ジャケット300Aは、加熱導体部2
10Aの中心に位置し冷却液Lを上方向に噴射する冷却
ジャケット320Aを有している。なお、この冷却ジャ
ケット320Aの上側には、冷却液Lがカップ部Wの頂
面W2に直接噴射されないように笠部321Aが設けら
れている。冷却液Lは、この笠部321Aによって加熱
導体部210Aを越えて内周面W1に直接噴射される。
【0025】従って、この冷却ジャケット320Aから
噴射された冷却液Lは、笠部321Aに当たってからカ
ップ部Wの溝部W4に流れ込んで、溝部W4を冷却す
る。
【0026】カップ部Wの軸心を中心として回転させる
回転機構500は、カップ部Wの上部に突出されたシャ
フト部W3に適宜な連結機構510を介して連結されて
いる。なお、回転機構500については、コンセントリ
ングの下にシールを介してベアリング等で受け、ギア又
はベルトによって駆動を伝達する方法もある。
【0027】また、冷却槽100の下方には、冷却槽1
00から排出された冷却液Lを受ける液受け部400が
設けられている。この液受け部400に受けられた冷却
液Lは、ポンプ410によってフィルター420を介し
て冷却槽100に戻される。
【0028】このように構成された高周波焼入装置によ
るカップ部Wの溝部W4の高周波焼入について説明す
る。まず、冷却槽100の底部110の開口111を覆
うようにしてカップ部Wを冷却槽100の底部110に
セットする。そして、この状態で冷却槽100に冷却液
Lを貯溜する。この際、レベル調整部121により冷却
液Lの量をカップ部Wに合わせる。
【0029】高周波加熱コイル200Aを開口111を
介してカップ部Wの内側に挿入する。高周波加熱コイル
200Aに高周波電流を供給し、カップ部Wの内周面W
1、特に溝部W4の底面部W42を加熱し、6つの溝部
W4の底面部W42を同時に加熱する。このとき、カッ
プ部Wは、回転機構500によって前記矢印A方向に回
転駆動されている。
【0030】高周波加熱コイル200Aによるカップ部
Wの溝部W4の加熱が完了したならば、高周波加熱コイ
ル200Aへの高周波電流の供給を停止して、内側冷却
ジャケット300Aの冷却ジャケット320Aから冷却
液Lを噴射し、高周波加熱コイル200Aによって加熱
された溝部W4を冷却して高周波焼入を施す。
【0031】ここで、カップ部Wの外周面は常に冷却液
Lに接しているため、特に薄肉の部分である溝部W4は
冷却されている。このため、溝部W4の底面部W42に
焼き抜けが形成されることはない。
【0032】1つのカップ部Wに高周波焼入を施したな
らば、液抜き部112を開放するとともに、カップ部W
を図示しないハンドリング機構によって取り除く。冷却
液Lは、液抜き部112と開口111とから排出され
て、前記液受け部400に受けられる。
【0033】次のカップ部Wが、ハンドリング機構によ
って冷却槽100にセットされる。さらに、前記液受け
部400に受けられ、前記フィルター420を通過した
冷却液Lが冷却槽100に供給されて次のカップ部Wの
内周面W1への高周波焼入を施す。
【0034】すなわち、この高周波焼入装置による場合
には、カップ部Wの外周面は冷却槽100に貯溜した冷
却液Lに浸漬し、内周面W1を冷却液Lに浸漬させない
状態で内周面W1を高周波加熱し、加熱された部分に内
側冷却ジャケット300Aによって冷却液Lを噴射して
カップ部Wの内周面W1に高周波焼入を施すようにな
る。
【0035】次に、本発明の第2の実施の形態に係る高
周波焼入装置について説明する。この第2の実施の形態
に係る高周波焼入装置が第1の形態に係るものと大きく
相違する点は、カップ部Wが3つの溝部W4を有するい
わゆるトリポートタイプのものである点であり、一発焼
きで高周波焼入が施される点である。この場合には、ワ
ークであるカップ部Wを回転させることなく高周波焼入
が施される。
【0036】すなわち、一発焼の場合に用いられる高周
波加熱コイル200Bは、図2に示すように、3つの溝
部W4の全面に対応した3つの加熱導体部210Bを有
している。この高周波加熱コイル200Bの1つの加熱
導体部210Bは、一対の垂直導体211Bと、この垂
直導体211Bを上方で連結する水平導体212Bとか
らなり、全体として略逆凹字形状に形成されている。各
加熱導体部210Bが溝部W4に入り込むと、垂直導体
211Bが溝部W4の両側面部W41を加熱するのであ
る。なお、この垂直導体211Bは、カップ部Wの深さ
寸法に対応した長さ寸法を有してしている。そして、各
加熱導体部210Bは、接続導体部220Bによって高
周波電源に対して直列に接続される。
【0037】この一発焼きを採用する場合の内側冷却ジ
ャケット300Bは、上述した第1の実施の形態に係る
高周波焼入装置と同様に、3つの加熱導体部210Bの
中心に位置しており、冷却液Lを上方向に向かって噴射
する冷却ジャケット320Bを有している。なお、この
冷却ジャケット320Bには、冷却液Lがカップ部Wの
頂面W2に直接噴射されないように笠部321Bが設け
られている点も同様である。
【0038】また、この場合には、コンセントリング4
50とカップ部Wとの間に絶縁部材460を介在させ
て、コンセントリング450とカップ部W1との間に隙
間を形成し、この隙間から冷却液Lを入れてカップ部W
の端面を冷却するようにする。すなわち、カップ部Wの
端面を冷却することにより、端面への電力集中による過
度の加熱を防止するのである。
【0039】次に、このように構成された本発明の第2
の実施の形態に係る高周波焼入装置による高周波焼入に
ついて説明する。まず、冷却槽100の底部110の開
口111を覆うようにしてカップ部Wを冷却槽100の
底部110にセットする。そして、この状態で冷却槽1
00に冷却液Lを貯溜する。この際、レベル調整部12
1により冷却液Lの量をカップ部Wに合わせる。この点
は、上述した第1の実施の形態に係る高周波焼入装置と
同様である。
【0040】次に、高周波加熱コイル200Bを開口1
11を介してカップ部Wの内側に挿入する。この時、高
周波加熱コイル200Bの3つの加熱導体部210B
が、それぞれ溝部W4に入り込むようにし、垂直導体2
11Bを溝部W4の両側面部W41に対向させる。この
状態で、高周波加熱コイル200Bに高周波電流を供給
し、カップ部Wの内周面W1、特に3つの溝部W4の両
側面部W41を加熱する。
【0041】高周波加熱コイル200Bによるカップ部
Wの溝部W4の加熱が完了したならば、高周波加熱コイ
ル200Bへの高周波電流の供給を停止して、内側冷却
ジャケット300Bの冷却ジャケット320Bから冷却
液Lを噴射し、高周波加熱コイル200Bによって加熱
された溝部W4を冷却して高周波焼入を施す。
【0042】ここで、カップ部Wの外周面は常に冷却液
Lに接しているため、特に薄肉の部分である溝部W4は
冷却されている。このため、溝部W4の底面部W42に
焼き抜けが形成されることはない。
【0043】1つのカップ部Wに高周波焼入を施したな
らば、液抜き部112を開放するとともに、カップ部W
を図示しないハンドリング機構によって取り除く。冷却
液Lは、液抜き部112と開口111とから排出され
て、前記液受け部400に受けられる。
【0044】次のカップ部Wが、ハンドリング機構によ
って冷却槽100にセットされる。さらに、前記液受け
部400に受けられ、前記フィルター420を通過した
冷却液Lがポンプ410によって冷却槽100に供給さ
れて次のカップ部Wの内周面W1への高周波焼入を施
す。
【0045】すなわち、この高周波焼入装置による場合
には、カップ部Wの外周面は冷却槽100に貯溜した冷
却液Lに浸漬し、内周面W1を冷却液Lに浸漬させない
状態で内周面W1を高周波加熱し、加熱された部分に内
側冷却ジャケット300Bによって冷却液Lを噴射して
カップ部Wの内周面W1に高周波焼入を施すようにな
る。
【0046】一方、本発明の第3の実施の形態に係る高
周波焼入装置、すなわちトリポートタイプのカップ部W
に移動焼きを施す装置の場合には、図示しない上下動機
構にて高周波加熱コイル200Cを上側に向かって移動
させることによって溝部W4を順次下側から加熱してい
くのである。
【0047】従って、この場合に用いられる高周波加熱
コイル200Cは、一発焼きの第2の実施の形態におい
て説明した高周波加熱コイル200Bとは違って、図5
に示すように、3つの加熱導体部210Cが、2ターン
として形成されている。
【0048】すなわち、この高周波加熱コイル200C
は、前記溝部W4に移動可能に嵌まり込む3つの加熱導
体部210Cと、これらの加熱導体部210Cを図外の
高周波電源に対して直列に接続する接続導体部220C
とを備えており、前記加熱導体部210Cは、2ターン
に形成されているのである。
【0049】また、この場合には、内側冷却ジャケット
300Cの冷却ジャケット310Cは、図5に示すよう
に、高周波加熱コイル200Cの加熱導体部210Cの
下側に設ける。すなわち、移動焼きの場合には、順次下
側から加熱されていくため、加熱されたならばすぐに冷
却液Lを噴射する必要があるので、冷却ジャケット31
0Cは加熱導体部210Cの下側に設ける必要があるた
めである。
【0050】この冷却ジャケット310は、高周波加熱
コイル200Cによって加熱されている部分に冷却液L
が噴射されないように、多数の噴射孔311Cは若干下
側を向けた方が好ましい。
【0051】この第3の実施の形態に係る高周波焼入装
置によるカップ部Wの高周波焼入について説明する。ま
ず、冷却槽100の底部110の開口111を覆うよう
にしてカップ部Wを冷却槽100の底部110にセット
する。そして、この状態で冷却槽100に冷却液Lを貯
溜する。この際、レベル調整部121により冷却液Lの
量をカップ部Wに合わせる。
【0052】高周波加熱コイル200Cを開口111を
介してカップ部Wの内側に挿入する。高周波加熱コイル
200Cに図外の高周波電源から高周波電流を供給しつ
つ、図外の移動機構によって高周波加熱コイル200C
を上方に移動させる。これによって、溝部W4は、下側
から順次上側に向かって加熱される。
【0053】高周波加熱コイル200Cに付設された冷
却ジャケット310Cから、冷却液Lを溝部W4に向か
って噴射する。冷却ジャケット310Cは高周波加熱コ
イル200Cに付設されているため、高周波加熱コイル
200Cの移動に伴って移動するので、高周波加熱コイ
ル200Cによって加熱された部分に順次冷却液Lが噴
射され、高周波焼入が施されることになる。
【0054】ここで、カップ部Wの外周面は常に冷却液
Lに接しているため、特に薄肉の部分である溝部W4は
冷却されている。このため、溝部W4の底面部W42に
焼き抜けが形成されることはない。
【0055】1つのカップ部Wに高周波焼入を施したな
らば、液抜き部112を開放するとともに、カップ部W
を図示しないハンドリング機構によって取り除く。冷却
液Lは、液抜き部112と開口111とから排出され
て、前記液受け部400に受けられる。
【0056】次のカップ部Wが、ハンドリング機構によ
って冷却槽100にセットされる。さらに、前記液受け
部400に受けられ、前記フィルター420を通過した
冷却液Lがポンプ410によって冷却槽100に供給さ
れて次のカップ部Wの内周面W1への高周波焼入を施
す。
【0057】すなわち、この高周波焼入装置による場合
には、カップ部Wの外周面は冷却槽100に貯溜した冷
却液Lに浸漬し、内周面W1を冷却液Lに浸漬させない
状態で内周面W1の溝部W4を高周波加熱し、加熱され
た部分に内側冷却ジャケット300Cによって冷却液L
を噴射してカップ部Wの内周面W1に高周波焼入を施す
ようになる。
【0058】なお、この移動焼きの場合には、高周波加
熱コイル200Cとカップ部Wとは相対的に移動すれば
よいので、高周波加熱コイル200Cを固定しておき、
カップ部Wを下側に向かって移動させるようにしてもよ
いし、高周波加熱コイル200Cを上側に向かって移動
させるとともに、カップ部Wを下側に向かって移動させ
るようにしてもよい。
【0059】また、この場合にはカップ部Wを回転させ
ないので、開口111とカップ部Wとの間には隙間を設
ける必要がない。このため、絶縁部材111Aをカップ
部Wの開放側の端部に密着させることも可能である。し
かし、実際には、カップ部Wの開放側の端部への電流の
集中を防止するためにある程度の隙間を設けるととも
に、コンセントリングをセットする方がよい。
【0060】
【発明の効果】請求項1に係る高周波焼入装置は、内周
面に6つの溝部が形成された6ツ溝タイプの等速ジョイ
ントのカップ部の溝に高周波焼入を施す高周波焼入装置
であって、冷却液が貯溜されるとともに、底部に開口が
開設された冷却槽と、前記開口を覆うように冷却槽に設
置されるカップ部の内周面を加熱する高周波加熱コイル
と、この高周波加熱コイルに付設された内側冷却ジャケ
ットと、カップ部の軸芯を中心として回転させる回転機
構とを備えており、前記回転機構によってカップ部を回
転させつつ、前記開口をカップ部で覆った状態で冷却槽
に冷却液を貯溜し、前記開口を介してカップ部の内側に
高周波加熱コイルを挿入し、この高周波加熱コイルを固
定させた状態で内周面を加熱した後、加熱された内周面
に内側冷却ジャケットで冷却液を噴射することで前記溝
部に高周波焼入を施すように構成されている。
【0061】このようにすると、カップ部の外周面は常
に冷却されているので、特に内周面に他の部分より薄肉
の部分がある場合、焼き抜けが発生しにくくなる。しか
も、従来のように、カップ部ごとに外側冷却ジャケット
を準備する必要がなく管理等が簡易化される。
【0062】特にこのタイプの高周波焼入装置では、カ
ップ部の軸心を中心として回転させる回転機構を有し、
前記回転機構によってカップ部を軸心を中心として回転
させつつカップ部の内周面に高周波焼入を施すので、カ
ップ部の内周面に万遍なく冷却液が噴射されるのでより
ムラのない高周波焼入を施すことができる。
【0063】また、請求項2に係る高周波焼入装置は、
内周面に3つの溝部が形成されたトリポートタイプの等
速ジョイントのカップ部の溝部に高周波焼入を施す高周
波焼入装置であって、冷却液が貯溜されるとともに、底
部に開口が開設された冷却槽と、前記開口を覆うように
冷却槽に設置されるカップ部の溝部を加熱する高周波加
熱コイルと、この高周波加熱コイルに付設された内側冷
却ジャケットとを備えており、前記開口をカップ部で覆
った状態で冷却槽に冷却液を貯溜し、前記開口を介して
カップ部の内側に高周波加熱コイルを挿入し、この高周
波加熱コイルを固定させた状態で溝部を加熱した後、加
熱された内周面に内側冷却ジャケットで冷却液を噴射す
ることでカップ部の溝部に高周波焼入を施すように構成
されている。
【0064】これによると、高周波加熱コイルはワーク
であるカップ部に対して固定されているため、高周波加
熱コイルとカップ部との間の距離を精密に維持すること
ができる。このため、より精度の高い高周波焼入を施す
ことができる。また、この方が高周波加熱コイルの作成
が容易で長寿命化しやすいという利点もある。
【0065】また、請求項3に係る高周波焼入装置は、
内周面に3つの溝部が形成されたトリポートタイプの等
速ジョイントのカップ部の溝部に高周波焼入を施す高周
波焼入装置であって、冷却液が貯溜されるとともに、冷
却液が貯溜されるとともに、カップ部によって覆われる
開口が底部に開設された冷却槽と、前記開口を介してカ
ップ部の内部に挿入され、溝部を加熱する高周波加熱コ
イルと、この高周波加熱コイルに付設された内側冷却ジ
ャケットと、前記高周波加熱コイルとカップ部とを相対
的に移動させる移動機構とを備えており、前記移動機構
でカップ部の内部に挿入された高周波加熱コイルとカッ
プ部とを相対的に移動させつつ、溝部を加熱した後、加
熱された溝部に内側冷却ジャケットで冷却液を噴射する
ように構成されている。
【0066】この場合には、溝部を順次加熱していくの
であるから、歪のコントロールが容易であり、硬化層の
強度に優れるという利点がある。
【0067】さらに、前記冷却槽に貯溜される冷却液の
量をカップ部の高さ寸法に応じて変更することができる
ようにすると、高さ寸法の異なるカップ部の高周波焼入
に用いることができるので大変便利である。
【0068】一方、本発明に係る高周波焼入方法は、カ
ップ部の外周面を貯溜した冷却液に浸漬し、内周面を冷
却液に浸漬させない状態で内周面を高周波加熱し、加熱
された部分に冷却液を噴射してカップ部の内周面に高周
波焼入を施すようにしているので、特に内周面に他の部
分より薄肉の部分がある場合、焼き抜けが発生しにくく
なる。しかも、従来のように、カップ部ごとに外側冷却
ジャケットを準備する必要がなく管理等が簡易化され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る高周波焼入装
置の概略的断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る高周波焼入装
置に用いられる高周波加熱コイルの概略的斜視図であ
る。
【図3】発明の第2の実施の形態に係る高周波焼入装置
に用いられる高周波加熱コイルの概略的平面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る高周波焼入装
置の概略的断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る高周波焼入装
置に用いられる高周波加熱コイルの概略的斜視図であ
る。
【図6】従来のこの種の高周波焼入装置の概略的構成図
である。
【図7】等速ジョイントのカップ部の図面であって、同
図(A)はトリポートタイプのカップ部の概略的断面
図、同図(B)は6ツ溝タイプのカップ部の概略的断面
図である。
【符号の説明】
100 冷却槽 110 底部 111 開口 200A、200B、200C 高周波加熱コイル 300A、300B、300C 内側冷却ジャケット W カップ部 W1 (カップ部の)内周面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H05B 6/10 331 H05B 6/10 331

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内周面に6つの溝部が形成された6ツ溝
    タイプの等速ジョイントのカップ部の溝部に高周波焼入
    を施す高周波焼入装置において、冷却液が貯溜されると
    ともに、カップ部によって覆われる開口が底部に開設さ
    れた冷却槽と、前記開口を介してカップ部の内部に挿入
    され、溝部を加熱する高周波加熱コイルと、この高周波
    加熱コイルに付設された内側冷却ジャケットと、カップ
    部の軸芯を中心として回転させる回転機構とを具備して
    おり、冷却液が冷却槽に貯溜された状態でカップ部を回
    転させつつ、カップ部の内部に挿入された高周波加熱コ
    イルを固定した状態でカップ部の溝部を加熱した後、加
    熱された溝部に内側冷却ジャケットから冷却液を噴射す
    ることを特徴とする高周波焼入装置。
  2. 【請求項2】 内周面に3つの溝部が形成されたトリポ
    ートタイプの等速ジョイントのカップ部の溝部に高周波
    焼入を施す高周波焼入装置において、冷却液が貯溜され
    るとともに、カップ部によって覆われる開口が底部に開
    設された冷却槽と、前記開口を介してカップ部の内部に
    挿入され、溝部を加熱する高周波加熱コイルと、この高
    周波加熱コイルに付設された内側冷却ジャケットとを具
    備しており、前記開口を覆ったカップ部の内部に挿入さ
    れた高周波加熱コイルを固定した状態でカップ部の溝部
    を加熱した後、加熱された溝部に内側冷却ジャケットか
    ら冷却液を噴射することを特徴とする高周波焼入装置。
  3. 【請求項3】 内周面に3つの溝部が形成されたトリポ
    ートタイプの等速ジョイントのカップ部の溝部に高周波
    焼入を施す高周波焼入装置において、冷却液が貯溜され
    るとともに、冷却液が貯溜されるとともに、カップ部に
    よって覆われる開口が底部に開設された冷却槽と、前記
    開口を介してカップ部の内部に挿入され、溝部を加熱す
    る高周波加熱コイルと、この高周波加熱コイルに付設さ
    れた内側冷却ジャケットと、前記高周波加熱コイルとカ
    ップ部とを相対的に移動させる移動機構とを具備してお
    り、前記移動機構でカップ部の内部に挿入された高周波
    加熱コイルとカップ部とを相対的に移動させつつ、溝部
    を加熱した後、加熱された溝部に内側冷却ジャケットで
    冷却液を噴射することを特徴とする高周波焼入装置。
  4. 【請求項4】 前記冷却槽は、貯溜される冷却液の量を
    カップ部の高さ寸法に応じて変更することができること
    を特徴とする請求項1、2又は3記載の高周波焼入装
    置。
  5. 【請求項5】 等速ジョイントのカップ部の外周面を貯
    溜した冷却液に浸漬し、内周面を冷却液に浸漬させない
    状態で内周面を高周波加熱し、加熱された部分に冷却液
    を噴射してカップ部の内周面に高周波焼入を施すことを
    特徴とする高周波焼入方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012031483A (ja) * 2010-07-30 2012-02-16 Neturen Co Ltd ワーク下部熱処理装置及びワーク下部熱処理方法
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JP2013170287A (ja) * 2012-02-20 2013-09-02 Neturen Co Ltd 加熱コイル及びそれを備えた加熱装置
JP2015092029A (ja) * 2015-02-17 2015-05-14 高周波熱錬株式会社 ワーク確認方法及びワーク熱処理装置
CN114891974A (zh) * 2022-05-11 2022-08-12 兴化市剑达铸造有限公司 一种金属工件加工用淬火设备

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