JPH11152240A - ビスフェノール類の製造方法 - Google Patents

ビスフェノール類の製造方法

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JPH11152240A JP31812597A JP31812597A JPH11152240A JP H11152240 A JPH11152240 A JP H11152240A JP 31812597 A JP31812597 A JP 31812597A JP 31812597 A JP31812597 A JP 31812597A JP H11152240 A JPH11152240 A JP H11152240A
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    • C07C37/20Preparation of compounds having hydroxy or O-metal groups bound to a carbon atom of a six-membered aromatic ring by reactions increasing the number of carbon atoms using aldehydes or ketones

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ビスフェノール類の製造時に通常用いられる
酸性触媒の残留がなく、このため精製時に副生物の生成
がなく、色相、耐熱性などに優れたビスフェノール類を
得ることができるようなビスフェノール類の製造方法。 【解決手段】 フェノール類とケトン類との反応によっ
てビスフェノール類を製造するに際して、フェノール類
とケトン類との反応によって得られるビスフェノール類
に、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金
属化合物を添加して、ビスフェノール類の塩基性度を、
ビスフェノール類1モルに対してビスフェノール類の2
Na塩として1×10-8〜1×10-6モルの量に相当す
るように調整することを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、ビスフェノール類の製造
時に通常用いられる酸性触媒の残留がなく、このため精
製時に副生物の生成がなく、色相、耐熱性などに優れた
ビスフェノール類を得ることができるようなビスフェノ
ール類の製造方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】ビスフェノールA、ビスフェノー
ルFなどのビスフェノール類は、従来よりポリカーボネ
ート、エポキシ樹脂、ポリアリレートなどのポリマー製
造原料として広く用いられている。
【0003】このようなビスフェノール類たとえばビス
フェノールAは、通常、フェノールとアセトンとを、塩
酸などの鉱酸あるいは強酸性イオン交換樹脂などの酸性
触媒の存在下に反応させることにより製造される。
【0004】触媒として強酸性イオン交換樹脂を用いて
ビスフェノール類を製造する場合には、強酸性イオン交
換樹脂触媒から微量の酸性物質が溶出してくることがあ
った。また鉱酸触媒を用いてビスフェノール類を製造す
る場合には、得られるビスフェノール類から酸性物質を
除去しているが、この酸性物質を完全に除去することは
困難であった。
【0005】このようにして得られるビスフェノール類
中の酸性物質量は、一般的に商業プラントで生産される
もので2ppm以下(酸滴定によるp-トルエンスルホン
酸換算)であるとされているが、このような量であって
もビスフェノール類に着色が生じたり、またこのビスフ
ェノール類を用いて製造されるポリマーに着色が生じた
りすることがあった。これはビスフェノール類中に残存
する酸性物質によってビスフェノール類の精製工程でビ
スフェノール類が熱分解などを生ずるためであろうと考
えられる。
【0006】またビスフェノール類中に酸性物質が微量
でも残存していると、このビスフェノール類を原料とし
てエステル交換法でポリカーボネートなどのポリマーを
製造しようとすると、酸性物質によって重合速度が大き
く変化したり、得られるポリマーの物性が低下するなど
の問題が生ずる。
【0007】このような問題点を解決するため、本願出
願人は、特開平8−183844号公報において、ポリ
カーボネートを溶融重縮合反応によって製造するに際し
て、(1) 粗製ビスフェノール類とフェノール類との付加
体を形成し、(2) 得られた付加体に、触媒としてのアル
カリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物
をビスフェノール類1モルに対して、5×10-8〜2×
10-6モルの量で添加して、分散または溶解した後、
(3) 該付加体からフェノール類を除去し、(4) 得られた
ビスフェノール類を用いてポリカーボネートを製造する
ことを提案した。
【0008】ところが上記の公報に開示されているビス
フェノール類の精製方法では、アルカリ金属化合物およ
び/またはアルカリ土類金属化合物をビスフェノール類
1モルに対して上記のような範囲内の一定量で添加して
いた。このように精製されたビスフェノール類は、精製
工程中にビスフェノール類が熱分解するなどし、このよ
うに得られたビスフェノール類を用いてポリカーボネー
トなどのポリマーを製造しようとすると、得られるポリ
マーの色相、耐熱性にばらつきを生じることを本発明者
らは見出した。
【0009】本発明者は上記の点についてさらに検討し
たところ、粗製ビスフェノール類中に含まれる不純物と
しての酸性物質の含有量が変化しており、このため一定
量のアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金
属化合物を添加したのでは、充分に優れた特性を有する
ビスフェノール類が得られないことを見だし、このよう
な知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
【発明の目的】本発明は、ビスフェノール類の製造時に
通常用いられる酸性触媒の残留がなく、このため精製時
に副生物の生成がなく、色相、耐熱性などに優れたビス
フェノール類を得ることができるようなビスフェノール
類の製造方法を提供することを目的としている。
【0011】
【発明の概要】本発明に係るビスフェノール類の製造方
法は、フェノール類とケトン類との反応によってビスフ
ェノール類を製造するに際して、フェノール類とケトン
類との反応によって得られるビスフェノール類に、アル
カリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物
を添加して、ビスフェノール類の塩基性度を、ビスフェ
ノール類1モルに対してビスフェノール類の2Na塩と
して1×10-8〜1×10-6モルの量に相当するように
調整することを特徴としている。
【0012】前記ビスフェノール類の塩基性度は、該ビ
スフェノール類中に含まれるアルカリ金属化合物および
/またはアルカリ土類金属化合物をエステル交換反応触
媒として、該ビスフェノール類と炭酸ジエステルとをエ
ステル交換反応させたときのエステル交換反応度から求
めることができる。
【0013】本発明の好ましい具体的態様では、(a) 酸
性触媒の存在下にフェノール類とケトン類とを反応させ
てビスフェノール類を生成させる工程、(b) 生成したビ
スフェノール類を含む反応混合物から触媒および低沸点
物を除去する工程、(c) フェノール類の添加または除去
により濃度調整されたビスフェノール類の均一溶液を得
る工程、(d) 上記で得られた均一溶液を冷却し、ビスフ
ェノール類とフェノール類との付加体を晶析させてスラ
リーとする工程、(e) スラリーを固液分離して、ビスフ
ェノール類とフェノール類との付加体を固体で得る工
程、(f) 上記で得られた固体状付加体を加熱溶融する工
程、および(g) 溶融物からフェノール類を除去する工程
によりビスフェノール類を製造工程するに際して、工程
(c) ないし工程(f) のうちの少なくとも一つの工程にお
いて、上記のようなアルカリ金属化合物および/または
アルカリ土類金属化合物を添加している。
【0014】上記アルカリ金属化合物および/またはア
ルカリ土類金属化合物の添加量は、最終的に得られるビ
スフェノール類の塩基性度に基づいて制御することが好
ましい。本発明では、ビスフェノール類はビスフェノー
ルAであることが好ましい。本発明では、ビスフェノー
ル類の塩基性度を、ビスフェノール類1モルに対してビ
スフェノール類の2Na塩として1×10-8〜1×10
-6モルの範囲から選ばれる特定の塩基性度値の10%以
内に調整することが好ましい。
【0015】
【発明の具体的説明】以下、本発明に係るビスフェノー
ル類の製造方法について具体的に説明する。本発明に係
るビスフェノール類の製造方法では、フェノール類とケ
トン類との反応によってビスフェノール類を製造するに
際して、フェノール類とケトン類との反応によって得ら
れるビスフェノール類に、アルカリ金属化合物および/
またはアルカリ土類金属化合物を添加して、ビスフェノ
ール類の塩基性度を、ビスフェノール類1モルに対して
ビスフェノール類の2Na塩として1×10-8〜1×1
-6モルの量に相当するように調整している。
【0016】本発明では、下記のような工程(a) 〜(g)
により、フェノール類とケトン類との反応によってビス
フェノール類を生成させ、次いで得られたビスフェノー
ル類とフェノール類との付加体を形成した後フェノール
類を除去してビスフェノール類を精製するに際して、付
加体からフェノール類を除去するに先立ってアルカリ金
属化合物または/およびアルカリ土類金属化合物を添加
して、上記のような塩基性度に調整されたビスフェノー
ル類を得ることが好ましい。このような好ましい具体的
態様を図1に示すプロセスフローを参照しながら説明す
る。
【0017】工程(a) 本発明では、まずフェノール類とケトン類とを反応させ
てビスフェノール類を生成させている。本発明におい
て、フェノール類とケトン類との反応により得られるビ
スフェノール類は、たとえば下記式[I]で示される。
【0018】
【化1】
【0019】上記のような式[I]で示されるビスフェ
ノール類としては、具体的には、1,1-ビス(4-ヒドロキ
シフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニ
ル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパ
ン(以下ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ
フェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)
オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパ
ン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、ビス
(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス
(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビ
ス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-
ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパンなど
のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス
(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス
(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス
(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類などが挙げら
れる。
【0020】また本発明では、上記式中、Xが−O−、
−S−、−SO−または−SO2−であるようなビスフ
ェノール類も製造することができ、たとえば4,4'-ジヒ
ドロキシジフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'
-ジメチルフェニルエーテルなどのビス(ヒドロキシア
リール)エーテル類、4,4'-ジヒドロキシジフェニルス
ルフィド、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニ
ルスルフィドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スル
フィド類、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホキシ
ド、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルスル
ホキシドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホキ
シド類、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-
ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルスルホンなどの
ビス(ヒドロキシジアリール)スルホン類などを製造す
ることもできる。
【0021】これらのうちでも、ビスフェノールAを製
造することが特に好ましい。上記のようなビスフェノー
ル類は、フェノール類とケトン類とを酸性触媒の存在下
に縮合反応させる公知のビスフェノール類の生成反応に
より得ることができる。フェノール類としては、上記式
[I]中Xで結合していない構造のフェノール類が用い
られる。また上記のようなビスフェノール類を得ること
ができれば、フェノール類とホルムアルデヒド、スルホ
ン酸類などとを縮合反応させてもよい。以下、主として
フェノールとアセトンとの脱水縮合反応によりビスフェ
ノールAを製造する場合について説明する。
【0022】
【化2】
【0023】上記反応では、通常フェノールはアセトン
に対して過剰量で用いられ、フェノールとアセトンとの
モル比(フェノール/アセトン)は、通常3〜30好ま
しくは5〜20であることが望ましい。
【0024】酸性触媒としては、公知の酸性イオン交換
樹脂触媒を特に限定することなく用いることができる
が、通常ゲル型で架橋度が1〜8%好ましくは2〜6%
のスルホン酸型陽イオン交換樹脂が好ましく用いられ
る。また塩酸、硫酸などの鉱酸触媒を用いることもでき
る。反応は、通常、温度が30〜100℃好ましくは5
0〜90℃、圧力が常圧〜5kg/cm2G の条件下に行わ
れる。上記のようなフェノールとアセトンとの反応で
は、通常生成したビスフェノールAとともに未反応フェ
ノール、未反応アセトン、反応副生水および着色物質な
どの反応副生物を含む反応混合物が得られる。
【0025】工程(b) 上記で得られたビスフェノール類を含む反応混合物から
触媒および低沸点物を除去する。上記反応触媒として鉱
酸を用いたときには、反応混合物から低沸点物を蒸留除
去するに先立って、水洗などの触媒の分離除去処理を行
なう。イオン交換樹脂触媒が充填された固定床反応器を
用いる反応では、触媒を含まない反応混合物が得られる
ので、脱触媒処理は通常行なわない。反応混合物の蒸留
は、通常、50〜300mmHg、70〜130℃の条
件下で行われる。この減圧蒸留では、アセトン、水など
の低沸点物とともに、共沸によりフェノールの一部も除
去されることもある。
【0026】工程(c) フェノール類の添加または除去により濃度調整されたビ
スフェノール類の均一溶液を得る。フェノール類として
はフェノールが好ましく用いられ、たとえばビスフェノ
ールAとフェノールとの付加体を生成させることが好ま
しい。ビスフェノールAとフェノールとの付加体を効率
よく晶析させるには、ビスフェノールAとフェノールと
の均一溶液を形成し、かつ均一溶液中のビスフェノール
Aの濃度を20〜50重量%好ましくは30〜45重量
%とすることが望ましい。この均一溶液は、上記付加体
からなってもよく、また付加体とフェノールとの混合物
からなってもよい。
【0027】工程(d) 上記で得られた均一溶液を冷却し、ビスフェノール類と
フェノール類との付加体を晶析させてスラリーとする。
ビスフェノールAとフェノールとの均一溶液は、35〜
60℃に冷却することが好ましく、冷却は外部熱交換器
あるいは減圧による除熱などによって行うことができ
る。
【0028】工程(e) 上記で得られたスラリーを固液分離して、ビスフェノー
ル類とフェノール類との付加体を固体で得る。スラリー
の固液分離は、遠心分離、減圧濾過などにより行うこと
ができる。固液分離によりビスフェノール類とフェノー
ル類との付加体結晶は、反応副生物などを含む母液から
分離される。分離された付加体(ウエットケーキ)はた
とえばフェノールなどで洗浄してもよい。
【0029】工程(f) 上記で得られた固体状付加体を加熱溶融する。上記で分
離された付加体結晶たとえばビスフェノールAとフェノ
ールとの付加体は、通常100〜160℃で加熱溶融し
て、溶融物(液状混合物)とする。
【0030】工程(g) 溶融物からフェノール類を除去する。溶融物(液状混合
物)から減圧蒸留などによってフェノール類を除去して
ビスフェノール類を回収する。蒸留によりフェノールを
留去させるときには、10〜100mmHgの圧力下、
蒸留温度150〜190℃で減圧蒸留を行う。この際、
蒸留塔内に存在するビスフェノールAとフェノールとの
混合液の融点よりも少なくとも10℃高い温度で行われ
る。
【0031】この工程(g) では、さらに特開平2−28
126号公報、特開昭63−132850号公報などに
記載された利用してビスフェノールA中に残存するフェ
ノール類をスチームストリッピングなどにより除去して
もよい。
【0032】上記のような工程を連続的に行なってビス
フェノールAを製造することが好ましい。本発明では、
上記のようにしてビスフェノールAを製造するに際し
て、工程(c) 〜工程(f) のうち少なくとも一つの工程に
おいて、アルカリ金属化合物または/およびアルカリ土
類金属化合物(以下アルカリ(土類)金属化合物)を添
加して、ビスフェノール類の塩基性度を、ビスフェノー
ル類1モルに対してビスフェノール類の2Na塩として
1×10-8〜1×10-6モルの量に相当するように調整
している。
【0033】本発明で用いられるアルカリ金属化合物お
よびアルカリ土類金属化合物としては、アルカリ金属お
よびアルカリ土類金属の有機酸塩、無機酸塩、酸化物、
水酸化物、水素化物あるいはアルコラートなどが好まし
く挙げられる。
【0034】具体的には、アルカリ金属化合物として
は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウ
ム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素
リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウ
ム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ス
テアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステア
リン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ
素リチウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナ
トリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン
酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水
素二リチウム、ビスフェノールAの二ナトリウム塩、二
カリウム塩、二リチウム塩、フェノール類のナトリウム
塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられ、アルカリ
土類金属化合物としては、水酸化カルシウム、水酸化バ
リウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、
炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグ
ネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、
炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウ
ム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウ
ム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ス
テアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステ
アリン酸ストロンチウムなどが挙げられる。これら化合
物を2種以上併用することもできる。
【0035】上記のようなアルカリ(土類)金属化合物
は溶液状態で用いられることが望ましく、たとえばアル
カリ(土類)金属化合物の水溶液、メタノール、エタノ
ールなどのアルコール溶液、フェノール類溶液などで用
いられる。また上記アルカリ(土類)金属化合物を含む
ビスフェノール類を用いることもできる。
【0036】上記のようなアルカリ(土類)金属化合物
を、工程(c) 〜工程(f) のうち少なくとも一つの工程に
おいて添加することによって、ビスフェノール類の塩基
性度を調整しているが、このアルカリ(土類)金属化合
物は、たとえば上記工程(c)で得られる均一溶液、工程
(d) で得られるスラリー、工程(e) で固液分離された付
加体(ウエットケーキ)の洗浄液に、工程(f) で得られ
る溶融物(液状混合物)などに添加することができる。
【0037】ここでビスフェノール類の塩基性度は、通
常、滴定により直接定量することが考えられるが、上記
のように極微量のNa量に相当する塩基性度を滴定によ
り測定することは極めて困難である。このようなビスフ
ェノール類の塩基性度は、該ビスフェノール類中に含ま
れるアルカリ(土類)金属化合物がエステル交換反応触
媒として有効に作用する量として求めることが正確でか
つ最適であると考えられる。
【0038】具体的には、以下のようにして求めること
ができる。予め、ビスフェノール類と炭酸ジエステルと
をエステル交換反応させたときの触媒量(触媒として有
効に作用する量)と、エステル交換反応度との関係を示
す検量線を作成する。この際、純粋なビスフェノール類
1モルに対するビスフェノール類の2Na塩の量を触媒
量とする。なお純粋なビスフェノール類とは、実質的に
酸性または塩基性不純物を含まないビスフェノール類で
ある。エステル交換反応度は、たとえば反応により生成
するフェノール類、オリゴマー、未反応のビスフェノー
ル類または炭酸ジエステルの量などとして求めることが
できる。フェノール類、オリゴマーまたは未反応のビス
フェノール類またはジフェニルカーボネートの量は、近
赤外計、屈折率計、高速液体クロマトグラフィーなどの
分析装置で測定することができる。
【0039】上記で製造されるアルカリ(土類)金属化
合物を含むビスフェノール類と、炭酸ジエステルとを、
検量線を作成する際のエステル交換反応(温度、圧力)
と同一条件下でエステル交換反応させたときのエステル
交換反応度を測定することにより、上記検量線から、ビ
スフェノール類中のアルカリ(土類)金属化合物がエス
テル交換反応触媒として有効に作用した量、すなわち純
粋なビスフェノール類1モルに対してビスフェノール類
の2Na塩含有量に相当する量としてのビスフェノール
類の塩基性度を求める。
【0040】このようなビスフェノール類の塩基性度の
測定は一定時間毎に行ってもよいが、前記分析装置をビ
スフェノール類の製造ラインにオンラインで付設し、製
造されるビスフェノール類の塩基性度を連続的に測定す
ることはさらに好ましい。
【0041】上記のようにして最終的に得られるビスフ
ェノール類の塩基性度を測定し、この測定値に基づいて
工程(c) 〜(d)で添加するアルカリ(土類)金属化合物
の添加量を制御することにより、ビスフェノール類の塩
基性度を調整することができる。
【0042】本発明では、上記のような方法により、ビ
スフェノール類の塩基性度を、ビスフェノール類2Na
塩として1×10-8〜1×10-6モル/モル−ビスフェ
ノール類の範囲に調整しているが、さらにはこの範囲か
ら選ばれる特定の塩基性度値の10%以内、好ましくは
6%以内に調製することが好ましい。
【0043】上記のようなビスフェノール類の製造工程
(g) では溶融状態のビスフェノール類が得られる。この
溶融状態のビスフェノール類は、次いで通常、冷却、造
粒工程(h) が加えられる。ビスフェノール類の造粒は、
(g) で得られた溶融状態のビスフェノール類をスプレー
ドライヤーなどを用いて噴霧、滴下、散布等の方法によ
り液滴とし、これを窒素、空気等によって冷却固化する
ことにより行われる。
【0044】上記のようにして得られる精製ビスフェノ
ール類の純度は、ビスフェノールAの場合には高速液体
クロマトグラフィー(HPLC)で測定される純度が9
9重量%以上さらには99.5重量%以上であることが
好ましい。また本発明では色相に優れたビスフェノール
類が得られる。
【0045】
【発明の効果】本発明では、ビスフェノール類の製造時
に通常用いられる酸性触媒の残留がなく、このため精製
時に副生物の生成がなく、色相、耐熱性などに優れたビ
スフェノール類を得ることができる。本発明で得られる
ビスフェノールAは、ポリカーボネート、エポキシ樹
脂、ポリアリレートなどのポリマー製造用原料として好
適である。
【0046】
【実施例】次に本発明を実施例により具体的に説明する
が、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本明細書において、実施例で製造されたビスフェノール
Aの塩基性度、色相、純度、およびビスフェノールAを
用いて製造されたポリカーボネートのMFR、色相は、
以下のようにして測定した。
【0047】[ビスフェノールAの塩基性度]100m
lスケールの反応器に、実施例で製造されたビスフェノ
ールA(以下BPAともいう)と、ジフェニルカーボネ
ートとを1:1のモル比で合計で200ml/hrの量
で連続的に導入し、160℃で滞留時間30分でエステ
ル交換反応させ、反応器から出てくる液を近赤外分析計
で測定し、該液中のフェノール濃度(反応により生成し
たフェノールの量すなわちエステル交換反応度)を測定
し、予め同一エステル交換反応条件下で作成された下記
の検量線からビスフェノールAの塩基性度を求めた。 ビスフェノールAの塩基性度(ビスフェノールAの2N
a塩量モル/モル−BPA)=3.33×10-7×フェ
ノール濃度(重量%)
【0048】[ビスフェノールAの色相]ビスフェノー
ルAを空気中で250℃にて10分間加熱した時の色相
を、APHA標準比色液を用いて目視により測定した。
【0049】[ビスフェノールAの純度]高速液体クロ
マトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。 [ポリカーボネートの色相(黄色度:YI)]3mm厚の
射出成形板をシリンダー温度290℃、射出圧力100
0kg/cm、1サイクル45秒、金型温度100℃で成形
し、X、Y、Z値を日本電色工業(株) 製の Colorand
Color Defference Meter ND-1001 DP を用いて透過法で
測定し、黄色度〔YI〕を測定した。 YI=100(1.277X−1.060Z)/Y
【0050】[ポリカーボネートのMFR]JIS K
−7210の方法に準拠し、温度250℃、荷重1.2k
gで測定した。実施例では基本的に以下の製造工程を経
てビスフェノールAおよびポリカーボネートを連続的に
製造した。
【0051】[ビスフェノールAの製造工程] (a) フェノールとアセトンとを、フェノール/アセトン
=5のモル比で、50℃、常圧で、酸性触媒として架橋
度4%のスルホン酸型陽イオン交換樹脂を用いて反応さ
せ、反応混合物を得た。 (b) 上記で得られた反応混合物を、200mmHg、1
20℃で減圧蒸留して未反応アセトン、反応副生水など
を除去して粗製液(ビスフェノールA)を得た。 (c) 上記で得られた粗製液からフェノールを留去してビ
スフェノールAの濃度を30重量%に調整した。 (d) 上記で濃度調整された粗製液(均一溶液)を、外部
熱交換器により除熱して42℃まで冷却してビスフェノ
ールAとフェノールとの付加体を晶析し、スラリーとし
た。 (e) 該スラリーを遠心分離および減圧濾過することによ
り、付加体(結晶部)と母液とに分離した。 (f) 固液分離されたビスフェノールAとフェノールとの
付加体を130℃で加熱溶融した。 (g) 溶融物(液状混合物)を、100mmHg、190
℃で減圧蒸留してフェノールを除去し、溶融状態のビス
フェノールAを回収した。 (h) 上記工程(g) で得られた溶融状態のビスフェノール
Aを、スプレードライヤーにより液滴にし、窒素で冷却
固化してビスフェノールAを造粒した。
【0052】[ポリカーボネートの製造工程]ポリカー
ボネートの重合装置は、原料のミキシング用の攪拌槽を
一基、前重合槽を二基、横形重合槽を二基、備え付けら
れたものを使用した。各々の反応条件は、下記の通りで
ある。反応器 圧力 温度(℃) 平均滞留時間(hr) 攪拌槽 窒素雰囲気 160 2.0 前重合槽I 100torr 230 1.0 前重合槽II 20torr 240 0.5 横形重合槽I 3〜5torr 270 0.5 横形重合槽II 0.1〜1.0torr 275 0.5 上記のビスフェノールA製造装置より、工程(g) より直
接配管にて送液されてきた溶融状態のビスフェノールA
または造粒されたビスフェノールA(供給速度36.0
kg/hr)と、蒸留後に直接配管にて送液されてきた
溶融状態のジフェニルカーボネート(供給速度34.7
kg/hr)とを、上記の温度に保った攪拌槽に連続し
て供給し、ビスフェノールA換算で36.0kg/hr
の供給速度で前重合槽I、前重合槽II、横形重合槽I、
横形重合槽IIに順次供給し、上記反応条件下で重合を行
い、目標のMFRが11.0g/10分のポリカーボネー
トを製造した。2時間ごとに測定されるMFRを見なが
ら、横形重合槽Iと横形重合槽IIの圧力を調節して、で
きるだけ目標のMFRを外れないよう運転した。
【0053】
【実施例1】ビスフェノールAの製造 上記工程(c) において、濃度調製された粗製液(ドラ
ム)に0.5%の水酸化ナトリウムのフェノール溶液を
添加して、ビスフェノールAの2Na塩として2×10
-7モル/モル−BPAの量に相当する塩基性度に調整さ
れたビスフェノールAを連続的に製造した。
【0054】この際、上記工程(h) で得られる造粒ビス
フェノールAの塩基性度を連続的に測定しながら、この
ビスフェノールAが、常時、ビスフェノールAの2Na
塩として2×10-7モル/モル−BPAの量に相当する
塩基性度を示すように、上記工程(c) で添加する0.5
%の水酸化ナトリウムのフェノール溶液を添加量を制御
することにより、ビスフェノールAの塩基性度を調整し
た。
【0055】ポリカーボネートの製造 工程(g) より直接配管にて連続して送液されてきた溶融
状態のビスフェノールAを用いて上記のポリカーボネー
トの重合方法にて、14日間連続して、ポリカーボネー
トを製造した。ビスフェノールAとポリカーボネート
は、2時間ごとにサンプルを採取し、ビスフェノール
A、純度、色相、ポリカーボネートの色相、MFRを評
価した。結果を表1に示す。
【0056】
【実施例2】実施例1において、0.5%の水酸化ナト
リウムのフェノール溶液の添加場所を、工程(d) で得ら
れた付加体結晶を含んだスラリー(スラリーが流れる配
管中)に変えた以外は、実施例1と同様にして、連続的
にビスフェノールAを製造し、実施例1と同様にしてポ
リカーボネートを製造した。結果を表1に示す。
【0057】
【実施例3】実施例1において、0.5%の水酸化ナト
リウムのフェノール溶液の添加場所を、工程(e) での遠
心分離と減圧濾過により得られた付加体結晶を取り出す
配管に変えた以外は、実施例1と同様にして、連続的に
ビスフェノールAを製造し、実施例1と同様にしてポリ
カーボネートを製造した。結果を表1に示す。
【0058】
【実施例4】実施例1において、0.5%の水酸化ナト
リウムのフェノール溶液の添加場所を、工程(f) での付
加体結晶の溶解槽中に変えた以外は、実施例1と同様に
して、連続的にビスフェノールAを製造し、実施例1と
同様にしてポリカーボネートを製造した。結果を表1に
示す。
【0059】
【比較例1】アルカリ(土類)金属化合物を添加するこ
となく、上記の製造工程によりビスフェノールAを連続
的に製造した。このビスフェノールAの色相、純度を表
1に示す。次いで工程(g) より直接配管にて連続して送
液されてきた溶融状態の上記ビスフェノールAを攪拌槽
に導き、ビスフェノールA1モルに対してビスフェノー
ルAの2Na塩を4×10-7モルの量の割合で添加し
て、上記のポリカーボネートの重合方法にて、14日間
連続して、ポリカーボネートを製造した。結果を表1に
示す。
【0060】
【比較例2】実施例4において、製造されるビスフェノ
ールAの塩基性度の測定と、アルカリ(土類)金属化合
物の添加量制御は行わず、工程(f) において、0.5%
の水酸化ナトリウムのフェノール溶液を、ビスフェノー
ルAの2Na塩として4×10-7モル/モル−BPAに
相当する量で一定量添加した以外は、実施例4と同様に
してビスフェノールAを製造し、このビスフェノールA
を用いてポリカーボネートを製造した。結果を表1に示
す。
【0061】
【比較例3】実施例4において、製造されるビスフェノ
ールAの塩基性度がビスフェノールAの2Na塩として
2×10-6/モル−BPAの量の割合に変えた以外は、
実施例4と同様にしてビスフェノールAを製造し、この
ビスフェノールAを用いてポリカーボネートを製造し
た。結果を表1に示す。比較例3のようにアルカリ(土
類)金属化合物の使用量が多いと、ビスフェノールAの
色相、ポリカーボネート色相(YI)に劣る。
【0062】
【表1】
【0063】
【実施例5】実施例4において、製造されるビスフェノ
ールAの塩基性度をビスフェノールAの2Na塩として
4×10-7モル/モル−BPAの量に相当するように調
整した以外は、実施例4と同様にしてビスフェノールA
を製造し、このビスフェノールAを用いてポリカーボネ
ートを製造した。結果を表2に示す。
【0064】
【実施例6】実施例4において、製造されるビスフェノ
ールAの塩基性度をビスフェノールAの2Na塩として
8×10-7モル/モル−BPAの量に相当するように調
整した以外は、実施例4と同様にしてビスフェノールA
を製造し、このビスフェノールAを用いてポリカーボネ
ートを製造した。結果を表2に示す。
【0065】
【実施例7】実施例4において、製造されるビスフェノ
ールAの塩基性度をビスフェノールAの2Na塩として
8×10-8モル/モル−BPAの量に相当するように調
整した以外は、実施例4と同様にしてビスフェノールA
を製造した。
【0066】このビスフェノールAを用いてポリカーボ
ネートを製造する際に、重合活性を補うため、0.5%
の水酸化ナトリウムのフェノール溶液をNaOHとして
4×10-7モル/モル−BPAの量でポリカーボネート
製造用反応器(攪拌槽)中に添加した以外は、実施例4
と同様にポリカーボネートを製造した。結果を表2に示
す。
【0067】
【比較例4】実施例4において、製造されるビスフェノ
ールAの塩基性度をビスフェノールAの2Na塩として
2×10-6モル/モル−BPAの量に相当するように調
整した以外は、実施例4と同様にしてビスフェノールA
を製造し、このビスフェノールAを用いてポリカーボネ
ートを製造した。結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るビスフェノール類の製造方法の
好ましいプロセスフロー態様を模式的に示す。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07C 37/86 C07C 37/86 // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 (72)発明者 下 田 智 明 千葉県市原市有秋台西2−5 三井有秋西 社宅C22−404

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フェノール類とケトン類との反応によって
    ビスフェノール類を製造するに際して、 フェノール類とケトン類との反応によって得られるビス
    フェノール類に、アルカリ金属化合物および/またはア
    ルカリ土類金属化合物を添加して、 ビスフェノール類の塩基性度を、ビスフェノール類1モ
    ルに対してビスフェノール類の2Na塩として1×10
    -8〜1×10-6モルの量に相当するように調整すること
    を特徴とするビスフェノール類の製造方法。
  2. 【請求項2】前記ビスフェノール類の塩基性度が、 該ビスフェノール類中に含まれるアルカリ金属化合物お
    よび/またはアルカリ土類金属化合物をエステル交換反
    応触媒として、該ビスフェノール類と炭酸ジエステルと
    をエステル交換反応させたときのエステル交換反応度か
    ら求められることを特徴とする請求項1に記載のビスフ
    ェノール類の製造方法。
  3. 【請求項3】(a) 酸性触媒の存在下にフェノール類とケ
    トン類とを反応させてビスフェノール類を生成させる工
    程、 (b) 生成したビスフェノール類を含む反応混合物から触
    媒および低沸点物を除去する工程、 (c) フェノール類の添加または除去により濃度調整され
    たビスフェノール類の均一溶液を得る工程、 (d) 上記で得られた均一溶液を冷却し、ビスフェノール
    類とフェノール類との付加体を晶析させてスラリーとす
    る工程、 (e) スラリーを固液分離して、ビスフェノール類とフェ
    ノール類との付加体を固体で得る工程、 (f) 上記で得られた固体状付加体を加熱溶融する工程、
    および (g) 溶融物からフェノール類を除去する工程 によりビスフェノール類を製造工程するに際して、 工程(c) ないし工程(f) のうちの少なくとも一つの工程
    において、前記アルカリ金属化合物および/またはアル
    カリ土類金属化合物を添加することを特徴とする請求項
    1または2に記載のビスフェノール類の製造方法。
  4. 【請求項4】前記アルカリ金属化合物および/またはア
    ルカリ土類金属化合物の添加量を、最終的に得られるビ
    スフェノール類の塩基性度に基づいて制御することを特
    徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のビスフェノー
    ル類の製造方法。
  5. 【請求項5】ビスフェノール類がビスフェノールAであ
    ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のビ
    スフェノール類の製造方法。
  6. 【請求項6】前記ビスフェノール類の塩基性度を、ビス
    フェノール類1モルに対してビスフェノール類の2Na
    塩として1×10-8〜1×10-6モルの範囲から選ばれ
    る特定の塩基性度値の10%以内に調整することを特徴
    とする請求項1〜5のいずれかに記載のビスフェノール
    類の製造方法。
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