JPH11141325A - ブローバイガスのオイル還流装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ブローバイガスと共に吸気通路内へ持ち去ら
れるオイル分を低減すると共に、トラップしたオイルが
吸気通路に吹き出すことが無ない。 【解決手段】 クランクケース６の内側にポンプ室２
を、その外側に膨張室８を設け、ポンプ室２にブローバ
イガスの吸入圧で回転する羽根車３を設け、ポンプ室２
と膨張室８とは羽根車３の回転軸上に垂直な垂直管７に
より連結し、羽根車３は円盤状の底板３ａを有し、その
下面に遠心力でオイルを底板３ａ中央から外部に放出す
るポンプ１３を形成している。底板３ａの周囲となるポ
ンプ室２の周囲にはオイル放出孔４を設け、膨張室下部
から底板３ａの中心上部にオイル吸引管５が伸びてい
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、クランクケース内
で発生するブローバイガスをエンジンの吸気通路内に供
給する際、ブローバイガス中に含まれるオイルミスト等
のオイル分を分離して、エンジンの潤滑系に還流するブ
ローバイガスのオイル還流装置に属する。

【０００２】

【従来の技術】一般にエンジンに限らず機関の潤滑油
（オイル）の消費は、ランニングコスト、メンテナンス
性、排気エミッション等各面から最小にすることが好ま
しく、ブローバイガスの吸気通路内への供給に際しても
オイル分を除去するために還流装置が設けられている。

【０００３】図２は従来のブローバイガスのオイル還流
装置を示す模式図であり、２１は渦発生室でクランクケ
ース６内に配置され、その上部のクランクケース外側に
気液分離室２３が配置され、両者は円筒状の通路２９に
より連通されている。気液分離室２３は、上部にエンジ
ンの吸気管に接続されたブローバイガス流出通路２４を
有し、下部にはオイル排出通路２６を有した円筒形状の
容器で、オイル排出通路２６の先端は渦発生室２１の下
部に形成されたオイル吸引室２５へ接続されている。そ
してオイル吸引室２５の中央上部には渦発生室２１内の
通路２９内へ向けて負圧管２８が突設されている。尚、
矢印はブローバイガスの流れ、あるいは凝集したオイル
の流れを示している。

【０００４】このように構成することで、エンジン動作
中はクランクケース６内が高圧、ブローバイガス流出通
路２４が低圧となるため、クランクケース内で発生した
ブローバイガスはブローバイガス流入口２２から渦発生
室２１に流入する。そして、渦発生室２１内で渦を形成
し、通路２９から上部の気液分離室２３に入り込む。気
液分離室２３に入ったブローバイガスは旋回しながら上
昇し、ブローバイガス流出通路２４から吸気管へ吸入さ
れる。

【０００５】この際、旋回流による遠心力でブローバイ
ガス中のオイルミストが気液分離室２３の内壁に付着
し、オイルの自重により気液分離室下部に溜る。この溜
ったオイルは渦の中心に発生する負圧により負圧管２８
を介し減圧されたオイル吸引室２５にオイル排出通路２
６から吸引され流れ込む。そして、オイル吸引室２５に
溜ったオイルはエンジン停止時にリード弁２７より排出
され、クランクケース内に還流される。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上記従来の技術では、
ブローバイガス中のオイルミストは分離されるが、エン
ジン動作中はオイル吸引室２５の圧力がクランクケース
６内より負圧となるため、リード弁２７が閉じた状態の
ままであり、オイルを排出することができない。そのた
め、エンジン動作中にオイル吸引室がオイルで満たされ
ると吸引能力が無くなり、逆に負圧管よりオイルが吹き
出してしまう。このような場合、内燃機関，特にディー
ゼルエンジンの場合、ブローバイガスの気液分離室から
吸気管へのオイルの吹き出しはオーバーラン等の重大な
問題を起こすことがあり、これを防止する必要がある。

【０００７】そこで本発明の課題は、吸気管等のエンジ
ンの吸気通路内へブローバイガスと共に持ち去られるオ
イル分を低減すると共に、トラップしたオイルが吸気通
路内に吹き出すことが無いブローバイガスのオイル還流
装置を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、請求項１の発明によるブローバイガスのオイル還流
装置は、クランクケース内に生じたブローバイガスを吸
気通路内に供給するブローバイガス通路の途中にトラッ
プを設け、ブローバイガスからオイルを分離し、その分
離されたオイルをエンジンの潤滑系に戻すブローバイガ
スのオイル還流装置であって、前記ブローバイガス通路
の途中に、ブローバイガスの吸引力で回転する羽根車に
より駆動されるポンプを設け、そのポンプにより前記ト
ラップで分離されたオイルをトラップの外へ強制的に送
り返すよう構成される。

【０００９】請求項２の発明によるブローバイガスのオ
イル還流装置は、請求項１の発明において、トラップ
が、ブローバイガスを断熱膨張させることによりオイル
を分離する膨張室であることを特徴とする。

【００１０】請求項３の発明によるブローバイガスのオ
イル還流装置は、請求項１又は２の発明において、ポン
プが羽根車と同軸上に背中合せで設けられると共に、ブ
ローバイガス通路の中心へ同軸配置し、トラップとポン
プとの間に、トラップで分離されたオイルをブローバイ
ガス通路の中心を通ってポンプの中心に形成された吸入
口に導入するパイプを設け、前記ポンプの周囲に形成さ
れた排出口をクランクケース内に開口したことを特徴と
する。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した実施の
形態について図面を基に詳細に説明する。図１はクラン
クケース上部壁面にブローバイガスのオイル還流装置を
取付けた図を示し、（ａ）は縦断面図、（ｂ）はＡ−Ａ
矢視断面図である。図において８は膨張室、２はポンプ
室であり、双方は一体に形成され、ケーシング１２はク
ランクケース６に穿設した窓を塞ぐ形で、ポンプ室２が
クランクケースの内側に、膨張室８が外側になるように
設置されている。

【００１２】ポンプ室２は、ケーシング１２ａが略円筒
形で、ブローバイガス流入口１０が接線方向に形成さ
れ、吸入したブローバイガスが内部で渦を発生するよう
に配置されている。そして、内部にポンプ１３を下部に
設けた羽根車３を有し、中央上部には発生した渦の旋回
面と垂直となる方向に膨張室８にブローバイガスを送り
出すための円筒形の垂直管７が設けられている。

【００１３】羽根車３は、ポンプ室２底面中央で回転軸
１４が軸支され、ポンプ室２の内径いっぱいの直径を有
する円盤状の底板３ｂに複数の羽根３ａを立設して形成
されている。羽根３ａは、底板３ｂに向けて外側に広が
った形状を有し、垂直管７を囲むように天井面近くまで
伸びている。そして、底板３ｂの下側は膨張室８で分離
凝集したオイルを強制還流させるポンプ１３を構成して
いる。ポンプ１３は、底板３ｂの中央に形成された凹部
３ｃに設けた吸引口１３ａから外側に向けて形成した溝
状通路であって、その先端方向となるポンプ室２の側面
下部にはスリット状のオイル放出孔４が底板３ｂの外周
に複数設けられ、羽根車３の回転による遠心力で吸引作
用を生じさせて、凹部３ｃ内のオイルを放出するように
なっている。このように、ポンプとその動力である羽根
車とを一体に形成することで、全体の構成を簡素化して
いる。

【００１４】膨張室８は、ポンプ室２から垂直管７を通
り流入してきたブローバイガスの流れが緩やかになり断
熱膨張するのに必要な空間を有し、垂直管７とは反対位
置となる上面にはエンジンの吸気通路（図示せず）へ接
続されたブローバイガス流出通路１１が形成され、壁面
からは板状のセパレータ９がブローバイガスの流れを邪
魔するように複数突設されている。そして、底部の垂直
管７の壁面には穴７ａが穿設され、垂直管７の内側にそ
の穴７ａからオイルを吸引するオイル吸引管５が設けら
れ、先端を羽根車３の中央の凹部３ｃに垂下している。
尚、羽根車３の回転軸１４、垂直管７、オイル吸引管５
の先端開口部はいずれも発生渦の旋回中心と同一の軸線
上に位置している。

【００１５】次に作用を説明する。エンジン動作時は吸
気通路側が負圧となるため、ブローバイガス流入口１０
にクランクケース６から吸気通路へ向うブローバイガス
の流れが発生する。このガスの流れは、先ず、ポンプ室
２にブローバイガス流入口１０から入り、垂直管７に入
り込もうとする過程で、ポンプ室の形状に従いガスは旋
回流となり、旋回中心にある垂直管７に旋回しながら進
むと同時に、ブローバイガスの旋回力により羽根車３を
回転させる。

【００１６】このとき、旋回流の遠心力により、ブロー
バイガス中に含まれているオイルミストの一部は外側に
追いやられ、特に周辺部では羽根車３の回転による遠心
力が大きいため壁面等に付着して気液の分離を始める。
このように、羽根車を設けることで、ポンプ室内でもオ
イルミストの分離をするためオイル分離能力を向上させ
ることができる。

【００１７】そして、ポンプ室２の壁面や羽根３ａに付
着したオイルは、遠心力や重力により、壁面下部のオイ
ル放出孔４付近に移動し、羽根車３の回転により生ずる
外方向へのブローバイガスの流れによってオイル放出孔
４からクランクケース６内に放出される。

【００１８】旋回しながら回転半径を縮めたブローバイ
ガスは、垂直管７に流れ込み膨張室８に入る。膨張室８
に流入したブローバイガスは狭い垂直管７から広い空間
に入り込み流れが緩やかになるため、断熱膨張し冷却さ
れ、気化されたオイルが液化し壁面やセパレータ９に付
着すると同時に、オイルミストも降下或いは付着してブ
ローバイガス中のオイルの多くが分離され、凝集したオ
イルは底部に集まる。

【００１９】膨張室８の底部に設けたオイル吸引管５は
先端開口部が、ポンプ室２の羽根車３中央の凹部３ｃ上
に配置されているため、膨張室８より負圧となり、膨張
室８の下部に溜ったオイルは穴７ａから吸い出される。
そして、吸い出されたオイルは羽根車３の凹部３ｃ内に
落下し、吸引口１３ａからポンプ１３により外側に移動
して、オイル放出孔４からクランクケース６内へ放出さ
れ還流される。

【００２０】このように、ブローバイガスの吸入圧で回
転する羽根車により動作するポンプにより、エンジン動
作中であっても凝集したオイルをクランクケース内に常
時還流するものであるから、トラップ内にオイルが溢れ
ることが無いし、それが吸気通路に流れ込むようなこと
も無い。更に、トラップ部を膨張室とすることで気化し
たオイルも還流するので、吸気通路へ吸引されるブロー
バイガス中のオイル分を大幅に低減することができ、潤
滑油の消費を大きく減少させることができる。

【００２１】尚、上記実施の形態において、羽根車とポ
ンプを背中合わせに一体に形成し、両者をクランクケー
ス内に設けているが、離れていても良いし、必ずしもク
ランクケース内でなくても良い。例えば、一般にクラン
クケース内に連通されるシリンダヘッドカバーに設けて
も良い。また、還流先もクランクケース内に限定するも
のではなく要は潤滑系に還流すればよい。また、渦流の
発生は必須ではなく、羽根車にしても、ブローバイガス
を中央から吸入して外周から出す構造でも良いし、ポン
プも外周から吸入して中央から出すこともできる。要は
ブローバイガスの吸入圧でポンプを駆動させることがで
きれば良い。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で
各部の形状並びに構成を適宜変更して具体化することも
可能である。

【００２２】

【発明の効果】以上詳述したように、請求項１の発明に
よれば、エンジン動作中であっても吸気通路内へ送られ
るブローバイガスから分離したオイルをクランクケース
内等のエンジンの潤滑系へ常時還流可能なため、吸気通
路にオイルが吹き出すことが無い。

【００２３】請求項２の発明によれば、請求項１の効果
に加え、気化したオイルも液化し還流するため、吸気通
路へ吸引されるオイル分をさらに低減することができ
る。

【００２４】請求項３の発明によれば、請求項１，２の
効果に加え、ポンプと羽根車とを一体に形成するため、
構成を簡素にすることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態の１例を示すブローバイガ
スのオイル還流装置の断面図であり、（ａ）は縦断面
図、（ｂ）はＡ−Ａ矢視断面図である。

【図２】従来のブローバイガスのオイル還流装置を示す
模式図で、（ａ）は縦断面図、（ｂ）はＢ−Ｂ矢視断面
図である。

【符号の説明】

２・・ポンプ室、３・・羽根車、３ａ・・羽根、３ｂ・
・底板、４・・オイル放出孔、５・・オイル吸引管、６
・・クランクケース、７・・垂直管、８・・膨張室、９
・・セパレータ、１０・・ブローバイガス流入口、１１
・・ブローバイガス流出通路、１３・・ポンプ、１３ａ
・・吸引口、１４・・回転軸。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 クランクケース内に生じたブローバイガ
   スを吸気通路内に供給するブローバイガス通路の途中に
   トラップを設け、ブローバイガスからオイルを分離し、
   その分離されたオイルをエンジンの潤滑系に戻すブロー
   バイガスのオイル還流装置であって、前記ブローバイガ
   ス通路の途中に、ブローバイガスの吸引力で回転する羽
   根車により駆動されるポンプを設け、そのポンプにより
   前記トラップで分離されたオイルをトラップの外へ強制
   的に送り返すブローバイガスのオイル還流装置。
2. 【請求項２】 トラップが、ブローバイガスを断熱膨張
   させることによりオイルを分離する膨張室である請求項
   １記載のブローバイガスのオイル還流装置。
3. 【請求項３】 ポンプが羽根車と同軸上に背中合せで設
   けられると共に、ブローバイガス通路の中心へ同軸配置
   し、トラップとポンプとの間に、トラップで分離された
   オイルをブローバイガス通路の中心を通ってポンプの中
   心に形成された吸入口に導入するパイプを設け、前記ポ
   ンプの周囲に形成された排出口をクランクケース内に開
   口した請求項１又は２に記載のブローバイガスのオイル
   還流装置。