JPH11140542A - 高延性を有し、かつ材質均一性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

高延性を有し、かつ材質均一性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法

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JPH11140542A
JPH11140542A JP30880897A JP30880897A JPH11140542A JP H11140542 A JPH11140542 A JP H11140542A JP 30880897 A JP30880897 A JP 30880897A JP 30880897 A JP30880897 A JP 30880897A JP H11140542 A JPH11140542 A JP H11140542A
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健 中原
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Abstract

(57)【要約】 【課題】80kgf/mm2 以上の強度をコイル全長に渡って安
定して確保しつつ、かつポリゴナルフェライトを有する
組織とすることで延性に優れかつ形状劣化のない高強度
熱延鋼板を製造する方法を提供する。 【解決手段】重量% で、C:0.08〜0.2%,Mn:1 〜2.5%,Si
≦1%,S≦0.01%,Sol.Al:0.01 〜0.1%,N≦0.01%,Ti:0.05
〜0.2%,Nb:0.005 〜0.04%,かつ下記(1) 式を満たし、残
部がFe及び不可避的不純物からなり、さらに面積率で80
% 以上のポリゴナルフェライト地にベイニティックフェ
ライト,パーライト,ベイナイトの群から選択された一
種以上が分散した組織を有する連続鋳造スラブを1200℃
以上に加熱後圧延を開始しまたは鋳造後直送圧延を行
い、仕上温度≧Ar3 で熱間圧延を終了する。次いで、58
0 〜620 ℃で巻取後10分越え30分以内に、巻取ったコイ
ルの全体を空冷以上の冷却速度で冷却する。 {(Nb%/92.9)/(Ti%/47.9)} ≦0.13 …(1)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に延性や伸びフ
ランジ性等の優れた加工性が要求される自動車足廻り用
材料等に好適な、高延性を有し、かつ材質均一性に優れ
た高強度熱延鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、自動車足廻り用材料に使用される
高強度熱延鋼板は、強度が40、50kgf/mm2
ベルの鋼板である。しかし、近年、自動車の軽量化と衝
突安全性能の向上が盛んに叫ばれるようになり、これら
の要求を満足するため、薄肉化による軽量化を目的とし
た鋼板の高強度化へのニーズが高まっており、将来的に
は80kgf/mm2 レベルの鋼板使用の可能性も十分
に考えられる。80kgf/mm2 レべルの鋼板の製造
にあたっては、安定して所定の強度が得られていること
に加えて自動車足廻り用材料に使用されるために良好な
延性や伸びフランジ性等の加工性が確保されていること
が要求される。
【0003】80kgf/mm2 レベルの高強度化を確
保するためには、析出強化あるいは組織強化等を利用す
る必要があるが、低温変態相を利用する組織強化では巻
取温度を低めなければならない。例えば特開平05−1
79396号公報に、NbCやTiCを析出させたフェ
ライトとマルテンサイトおよび残留オーステナイトから
なる組織とした、低YR(降伏比)で延性に優れる鋼板
が公開されている。
【0004】しかし、このような組織を有する鋼板を製
造するには、実質的に巻取温度を390〜475℃まで
下げる必要があるので、薄鋼板では形状が劣化し矯正に
より生産効率が低下するばかりか矯正量の増加に伴い延
性が低下し加工性が低下するという問題がある。このよ
うな形状の問題を回避しつつ80kgf/mm2 レベル
の高強度を確保するためには、低温変態相を生成させず
に析出強化を主体に強度を確保する必要がある。また、
C含有量を低減して、フェライト単相もしくはフェライ
ト面積率が85%以上である組織とし、析出強化で強度
を確保することで、高強度を達成しながら優れた伸びフ
ランジ性を有する鋼板が、特開平06−200351号
公報、特開平06−287685号公報そして特開平0
7−070696号公報に公開されている。
【0005】一方、特開昭50−2620号公報にNb
とTiを複合添加した鋼板の巻取温度を制御すること
で、80kgf/mm2 レベルの強度を有する鋼板の安
定製造方法が公開されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
06−287685号公報および特開平07−0706
96号公報では、ε−Cuの析出強化も利用するもの
で、Cu添加鋼板はリサイクル性に劣るという問題があ
り、環境問題が重視されている今日においては積極的に
活用すべき手段であるとはいい難い。また特開平06−
200351号公報は、TiCを主体とした炭化物をポ
リゴナルフェライ卜中に分散させる技術に関するもので
あるが、到達強度レベルは70kgf/mm2 であり、
80kgf/mm2 レベルの強度が安定的に確保できる
製造方法については言及されていない。
【0007】一方、特開昭50−2620号公報の技術
は、巻取温度を500〜600℃とすることにより、析
出物を大量かつ微細に析出させ、80kgf/mm2
上の強度を安定的に得るものであるが、巻取温度が60
0℃では得られる強度が81.5kgf/mm2 と80
kgf/mm2 レベルの鋼板の強度保証の観点からは安
定製造性に不安が残り、さらに強度を高める為には巻取
温度を500〜550℃まで下げる必要があるが、その
場合伸びは20%未満と高延性を確保することができな
い。このように、Cuを添加することなく一般的な析出
強化元素であるTi、Nbの添加のみで80kgf/m
2 以上の強度の安定確保を保証しつつ、高延性でかつ
形状劣化のない熱延鋼板を安定して製造する技術は未だ
確立されていないのが現状である。
【0008】本発明の目的は、このような現状を鑑み、
リサイクル性が問題となるCuの添加による強化を利用
せずに、TiとNbの複合添加をベースに、80kgf
/mm2 以上の強度をコイル全長に渡って安定して確保
しつつ、かつポリゴナルフェライトを有する組織とする
ことで延性に優れかつ形状劣化のない高強度熱延鋼板を
製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決し目的を
達成するために、本発明は以下に示す手段を用いてい
る。 (1)本発明の製造方法は、重量%で、C:0.08〜
0.2%と、Mn:1〜2.5%と、Si:1%以下
と、S:0.01%以下と、Sol.Al:0.01〜
0.1%と、N:0.01%以下と、Ti:0.05〜
0.2%と、Nb:0.005〜0.04%とを含有
し、且つ下記(1)式を満たし、残部がFe及び不可避
的不純物とからなり、さらに面積率で80%以上のポリ
ゴナルフェライト地にベイニティックフェライト、パー
ライト、及びベイナイトの群から選択された一種以上が
分散した組織を有する鋼板を製造する方法において、連
続鋳造鋼スラブを1200℃以上に加熱後圧延を開始す
るかまたは鋳造後直送圧延を行い、Ar3 以上の仕上温
度で熱間圧延を終了する工程と、仕上圧延された鋼板
を、580〜620℃で巻取後10分越え30分以内
に、巻取ったコイルの全体を空冷以上の冷却速度で冷却
する工程と、を備えたことを特徴とする、高延性を有
し、かつ材質均一性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法
である。
【0010】 {(Nb%/92.9)/(Ti%/47.9)}≦0.13 …(1) (2)本発明の製造方法は、鋼成分として、重量%でさ
らに、Cr:0.1〜1%を含有することを特徴とす
る、上記(1)に記載の高延性を有し、かつ材質均一性
に優れた高強度熱延鋼板の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明者らは、上記の課題を解決
するために鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得るに
至った。80kgf/mm2 レベルの強度を安定して確
保するためには、上述したように、析出強化のみで強度
を確保することで鋼板中のC含有量を低減し延性を改善
する方法では、絶対的な強度の安定確保の保証が困難で
ある。そこで、鋼板中のC含有量は従来の高強度熱延鋼
板のレベルのままでフェライト−パーライト組織をベー
スとして検討を行った。従来の高強度熱延鋼板のC含有
量レベルで延性を改善するためには、巻取温度を高めポ
リゴナルフェライトを有する組織とすることが必要であ
る。
【0012】しかしながら、巻取温度を高めることは、
析出強化に寄与する微細析出物の凝集粗大化を促進する
ため、強度の低下につながる。そこで、本発明者らは、
巻取温度を高めかつ強度確保を図る技術を得るべく詳細
に調査した結果、以下に示す新規知見を得た。従来の高
強度熱延鋼板のC含有量レベルである0.13C−0.
35Si−1.7Mn−0.14Ti−0.03Nb−
0.18Crを基本組成とする鋼板の、材質およびポリ
ゴナルフェライト面積率に及ぼす巻取温度の影響を実機
試作にて調査した。その結果を図1に示す。
【0013】図1からわかるように、面積率で80%以
上のポリゴナルフェライトを主体とした組織とするに
は、巻取温度は580℃以上とする必要がある。また、
ポリゴナルフェライト量の増大に伴いコイル全体で伸び
は増大していくが、コイルTop部では強度が低下しな
い。これは、微細析出物の析出状態に関係している。
【0014】0.13C−0.3Si−1.8Mn−
0.03Nb−0.12Ti−0.2Crを含有する実
験室熱間圧延後の鋼板を、600℃の温度で種々の時間
保持後水冷しその状態での微細析出物の析出状態を凍結
する実験を行い、引張試験を行った結果を図2に示す。
【0015】図2に示すように巻取温度が600℃で
は、析出強化に寄与する微細析出物の析出状態を表す降
伏強度(YP)が、ある保持時間で極大値をとった後減
少していき一定値に達することが分かる。このことは短
時間の保持時間では微細析出物の析出が不十分であり、
長時間の保持時間では微細析出物の粗大化が生じてしま
うことを示唆している。また、さらに重要な点は、YP
が極大値をとる、すなわち微細析出物の析出状態が最も
有効に析出強化に寄与する状態において、伸びが低下し
ないという点である。すなわち、図1に示したように巻
取後の冷却速度の速いコイルTop(頂)部及びBot
tom(尾)部では高延性でかつ高強度を達成すること
ができるが、冷却速度の遅いコイルMiddle(中
間)部では高強度が得られない。しかし、逆にコイルM
iddle部でも巻取後の冷却条件を制御することによ
って、コイル全体に渡って、高強度でかつ高延性を有す
る高強度熱延鋼板の製造が可能である。また、Topお
よびBottom部で一般に材質のバラツキが大きいこ
とも、上記知見により説明できる。したがって、Top
およびBottom部についても冷却条件を制御するこ
とでバラツキの少ない均一な材質を得ることが可能であ
る。
【0016】以上の新規知見に基づき、本発明者らは、
Ti,Nb複合添加析出強化型高張力鋼板の延性を改善
するために、巻取り温度及び巻取り後のコイル全体の冷
却条件(冷却開始時間,冷却速度)を一定範囲内に制御
して、面積率80%以上のポリゴナルフェライトを主体
とした組織に調整するようにして、コイル全長に渡って
80kgf/mm2 以上の強度を安定して確保しつつか
つ高延性を有する高強度熱延鋼板が得られることを見出
し、本発明を完成させた。
【0017】すなわち、本発明は、鋼組成、組織及び製
造条件を下記範囲に限定することにより、リサイクル性
が問題となるCuの添加による強化を利用せずに、Ti
とNbの複合添加をベースに、80kgf/mm2 以上
の強度をコイル全長に渡って安定して確保しつつ、かつ
ポリゴナルフェライトを有する組織とすることで延性に
優れかつ形状劣化のない高強度熱延鋼板の製造方法を提
供することができる。
【0018】以下に、本発明の成分添加理由、成分限定
理由、組織の限定理由及び製造条件の限定理由につい
て、説明する。 (1)成分組成範囲及び鋼組織 C:0.08〜0.2% 鋼の高強度化のためには必須の元素であり、本発明に於
けるような80kgf/mm2 以上の高強度を得るため
には少なくとも0.08%は必要であるが、過剰に添加
すると鋼中のセメンタイトが増加してしまい伸びフラン
ジ性等の延性を劣化させてしまうので、その添加量の上
限は0.2%である。
【0019】Mn:1〜2.5% 固溶強化元素として鋼の高強度化には有効な元素であ
り、80kgf/mm2以上の高強度を得るためには少
なくとも1%は必要であるが、過剰な添加はコスト高と
なり経済的に不利であるので、その添加量の上限は2.
5%である。
【0020】Si:1%以下 Mnと同様に固溶強化元素として鋼の高強度化に有効な
元素であるが、過剰な添加は表面性状を劣化させるので
その添加量の上限は1%である。
【0021】P:0.05%以下 固溶強化元素として有効な元素であるが、過剰に添加す
ると加工性および溶接性の劣化を招くので、その添加量
の上限は好ましくは0.05%である。
【0022】S:0.01%以下 鋼中に過剰に存在すると加工性を劣化させるので、その
鋼中含有量の上限は0.01%である。
【0023】Sol.Al:0.01〜0.1% 脱酸剤として必要な元素であり、そのためには0.01
%は必要であるが、過剰の添加は伸びフランジ性等の延
性を劣化させるので、その添加量の上限は0.1%であ
る。
【0024】N:0.01%以下 鋼中に過剰に存在すると、本発明の場合、粗大な(T
i,Nb)Nの析出量が増加してしまい強度確保が困難
となるので、その鋼中含有量の上限は0.01%であ
る。Ti:0.05〜0.2%、Nb:0.005〜
0.04%、且つ{(Nb%/92.9)/(Ti%/
47.9)}≦0.13 Tiは微細TiCとしてフェライト中に析出させ鋼板の
強度を確保するためには、少なくとも0.05%は必要
であるが、過剰の添加はコスト高となり経済的に不利で
あるので、その添加量の上限は0.2%である。
【0025】Nbは圧延中のオーステナイトの再結晶を
抑制し圧延後の冷却時にベイナイト組織を得るために必
要であり、そのためには0.005%は必要であるが、
過剰な添加は鋼中に粗大な(Ti,Nb)Nや(Nb,
Ti)Cを多量に析出させ強度確保が困難となるので、
その添加量の上限は0.04%であり、かつTiとNb
の添加量割合は、所望の強度を得るために、{(Nb%
/92.9)/(Ti%/47.9)}≦0.13を満
足するものとする。
【0026】さらに、本発明では、上記の合金元素の他
に、鋼板の加工性を高めるために、Crを以下の範囲で
含有してもよい。 Cr:0.1〜1% 加工性を損なう粗大なパーライトの生成を抑制する元素
であり、効果を得るためには0.1%以上必要である
が、過剰の添加はコスト高となり経済的に不利であるの
でその添加量の上限は1%である。
【0027】以上の成分系を基本とするが、本発明にお
ける鋼板は必要に応じて、伸びフランジ性向上のためC
aを0.01%以下、耐食性向上のためMo、Ni、C
uをそれぞれ1%以下よりなる群から選ばれる少なくと
も一種以上をそれぞれ含有しても構わない。
【0028】組織:本発明における鋼板の組織は、伸び
フランジ性等の延性の観点から、面積率で80%以上の
TiCの微細析出物によって強化したポリゴナルフェラ
イトにべイナイトまたはパーライトもしくはベイニティ
ックフェライトが混在したものとする。即ち、ポリゴナ
ルフェライトの面積率については、前述の本発明者らの
実験結果(図1)で説明したように、高強度熱延鋼板の
C含有量レベルで高延性を得るために、80%以上にす
る必要がある。この面積率が80%未満では、所望の強
度及び延性を確保することができない。
【0029】また、延性及び伸びフランジ性等の観点か
ら、面積率で80%以上のポリゴナルフェライト地に、
ベイニティックフェライト、パーライト、及びベイナイ
トの群から選択された一種以上が分散した組織にするこ
とが望ましい。上記の成分組成範囲及び組織に調整する
ことにより、リサイクル性が問題となるCuの添加によ
る強化を利用せずに、TiとNbの複合添加をベース
に、80kgf/mm2 以上の強度をコイル全長に渡っ
て安定して確保しつつ、かつポリゴナルフェライトを有
する組織とすることで延性に優れかつ形状劣化のない高
強度熱延鋼板を得ることが可能となる。
【0030】このような特性の鋼板は、以下の製造方法
により製造することができる。 (2)鋼板製造工程 (製造方法)上記の成分組成範囲に調整した鋼を転炉に
て溶製し、連続鋳造によりスラブにした後、鋼スラブを
1200℃以上に加熱後圧延を開始するか、または鋳造
後直送圧延を行い、Ar3 以上の仕上温度で熱間圧延を
終了し、次いで、580〜620℃で巻取後10分越え
30分以内に、巻取ったコイルの全体を空冷以上の冷却
速度で冷却する。
【0031】a.スラブ加熱温度:1200℃以上 本発明においては、スラブ中に析出しているTiおよび
Nbの析出物を一旦鋼中に再固溶させる必要があり、そ
のためのスラブ加熱温度は1200℃以上は必要であ
る。
【0032】b.仕上温度(FT):Ar3 点以上 フェライト域での圧延となってしまうと、粗大なα展伸
粒が生成し延性および強度が低下してしまうので、FT
はAr3 点以上である必要がある。
【0033】c.巻取温度(CT):580〜620℃ CTが620℃を越えると、微細TiCの粗大化を抑制
することが現実的に困難となり、強度を確保することが
できない。また、CTが580℃未満では、図1で示し
たように、面積率で80%以上のポリゴナルフェライト
を確保することができないので、その下限は580℃で
ある。d.巻取後のコイル全体の冷却:巻取後10分超
え30分以内に空冷以上の冷却速度で冷却巻取後のコイ
ル全体の冷却速度は、上記した面積率で80%以上のポ
リゴナルフェライトを主体とした組織に調整するため、
空冷以上が必要である。ただし、巻取直後にコイル全体
を冷却してしまうと、オーステナイトが残存した状態か
らの冷却となつてしまい面積率で80%以上のポリゴナ
ルフェライトが得られず高延性が達成できないので、コ
イル全体の冷却開始時間の下限は10分超えとする。ま
た、冷却開始時間が遅いと、微細TiCが粗大化してし
まい強度の確保が困難となるので、その上限は30分で
ある。
【0034】なお、巻取後のコイル全体の冷却方法は空
冷以上の冷却速度が確保できるものであれば、例えばコ
イル水冷ヤードの利用や、オープンコイルの状態での強
制空冷の利用等、特に規定するものではない。
【0035】本発明の対象は通常の熱延鋼板以外に、酸
洗熱延鋼板や熱延鋼板に亜鉛メッキや錫メッキ等を施し
た表面処理鋼板を含む。また、鋼の溶製は転炉、電気炉
のいずれでもよく、上記原理から、スラブを一旦冷却す
ることなく連続鋳造後に直送圧延を行っても同様な効果
を得ることができる。以下に本発明の実施例を挙げ、本
発明の効果を立証する。
【0036】
【実施例】次に本発明の実施例を示す。表1に示す化学
成分を有する連続鋳造スラブ(A,B,D,E,F:本
発明鋼、C:比較鋼)を転炉で溶製後、1250℃にて
3〜5時間保持後、あるいは一部のスラブについては直
送にて表2に示す条件No.1〜14(本発明例:N
o.1〜6、比較例:No.7〜14)にて熱間圧延を
行い(Ar3 以上の仕上温度で圧延)、板厚4.5mm
の熱延鋼板のコイルを作製した。このようにして製造し
たコイルを仮置き場へ搬送し、ミスト水冷により表2に
示す条件にてコイル全体を冷却した後、コイルTop部
5m、Middle部そしてBottom部10mの各
位置から、コイル幅方向中央部よりL(長手)方向にJ
IS5号引張試験片を採取し引張試験を行い、また組織
観察も行ってポリゴナルフェライトの面積率を測定し
た。
【0037】表3に引張試験の結果を示す。本発明の製
造方法を適用した本発明例No.1〜5および直送圧延
にて製造した本発明例No.6のコイルについては、コ
イル全長に渡って80kgf/mm2 以上の強度を安定
確保しており、かつ高延性を有しているので、本発明の
製造方法を適用することにより、材質均一性に優れかつ
高延性を有する高強度熱延鋼板が得られることがわか
り、直送にて熱間圧延を開始してもその効果が同様に得
られることがわかる。
【0038】しかし、比較例No.7のコイルは、鋼板
の化学成分が本発明の範囲外であるため本発明の製造方
法を適用しても強度を確保することができなかった。比
較例No.8〜12は、表1に示した本発明鋼A,B,
D,E,Fと同様の化学成分を有し、かつ熱間圧延終了
までは本発明の製造方法を適用しながら、コイル巻取後
に本発明の製造方法を適用せずに通常通り空冷したコイ
ルである。これらのコイルでは、コイル位置により強度
の確保にバラツキが生じており、コイル全長に渡って均
一な材質を得ることはできなかった。これは、前述した
図2において詳述したように、コイルTopおよびBo
ttom部では材質のバラツキが大きく、また巻取後の
冷却速度が遅いコイルMiddle部では析出強化に寄
与する微細TiCの粗大化が生じるため強度の確保がで
きず、結果的にコイル位置により材質がばらついてしま
うためである。また比較例No.13は本発明鋼Aを用
いながら、巻取温度(CT)を本発明の製造方法よりも
下げたものであり、比較例No.14は本発明鋼Fを用
いながらCTを本発明の製造方法よりも高めたものであ
る。CTを本発明の製造方法より下げてしまうと、面積
率で80%以上のポリゴナルフェライトが得られないば
かりかベイニティックフェライ卜を主体とした組織とな
ってしまい、高延性が得られない。また、CTを本発明
の製造方法より高めると、析出強化に寄与する微細Ti
Cの凝集粗大化が起こってしまい強度を確保することが
できない。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
鋼組成、組織及び製造条件を特定することにより、Ti
およびNbの複合添加をベースにリサイクル性が問題と
なるCu添加による強化を利用することなしに、80k
gf/mm2 以上の強度をコイル全長に渡って安定して
確保し、かつポリゴナルフェライトを有する組織とする
ことで延性に優れる高強度熱延鋼板が得られる。従っ
て、本発明は、延性や伸びフランジ性等の優れた加工性
が要求される自動車足廻り用材料等に適用することがで
き、産業上非常に有効な技術である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る鋼板の材質(機械的
特性)及びポリゴナルフェライト面積率に及ぼす巻取り
温度の影響を示す図。
【図2】本発明の実施の形態に係る鋼板の材質(機械的
特性)に及ぼす巻取り保持時間の影響を示す図。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.08〜0.2%と、
    Mn:1〜2.5%と、Si:1%以下と、S:0.0
    1%以下と、Sol.Al:0.01〜0.1%と、
    N:0.01%以下と、Ti:0.05〜0.2%と、
    Nb:0.005〜0.04%とを含有し、且つ下記
    (1)式を満たし、残部がFe及び不可避的不純物から
    なり、さらに面積率で80%以上のポリゴナルフェライ
    ト地にベイニティックフェライト、パーライト、及びベ
    イナイトの群から選択された一種以上が分散した組織を
    有する鋼板を製造する方法において、 連続鋳造鋼スラブを1200℃以上に加熱後圧延を開始
    し又は鋳造後直送圧延を行い、次いでAr3 以上の仕上
    圧延温度で熱間圧延を終了する工程と、 仕上圧延された鋼板を、580〜620℃で巻取後10
    分越え30分以内に、巻取ったコイルの全体を空冷以上
    の冷却速度で冷却する工程と、 を備えたことを特徴とする、高延性を有し、かつ材質均
    一性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。 {(Nb%/92.9)/(Ti%/47.9)}≦0.13 …(1)
  2. 【請求項2】 鋼成分として、重量%でさらに、Cr:
    0.1〜1%を含有することを特徴とする、請求項1に
    記載の高延性を有し、かつ材質均一性に優れた高強度熱
    延鋼板の製造方法。
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