JPH1113876A - 無段変速機の変速制御装置 - Google Patents

無段変速機の変速制御装置

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JPH1113876A
JPH1113876A JP16745897A JP16745897A JPH1113876A JP H1113876 A JPH1113876 A JP H1113876A JP 16745897 A JP16745897 A JP 16745897A JP 16745897 A JP16745897 A JP 16745897A JP H1113876 A JPH1113876 A JP H1113876A
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deceleration
ratio
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辰夫 落合
Tateki Shirosaki
建機 城崎
Hiroyuki Ashizawa
裕之 芦沢
Masahiro Yamamoto
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 急減速時でも停車時に無段変速機が最低速変
速比なるよう目標変速比を変更する制御が、本当に必要
な時のみ行われるよう車速も領域判定に使う。 【解決手段】 車両減速度Gが、高車速ほど大きくした
設定減速度aを越える急減速域Aにおいて、目標変速比
を最低速変速比よりも大きな(更に低速側の)変速比に
して、この目標変速比と、実変速比との偏差に応じて行
う無段変速機の最低速変速比への変速を高速で行わせ、
急減速時といえども停車時に確実に最低速変速比にし得
るようにする。ここで高車速ほど停車までの時間が長く
なることから、上記目標変速比の操作が必要な領域は小
さくなり、高車速ほど大きくした設定減速度aは当該事
実に符合して上記目標変速比の操作が本当に必要な時の
み行われることとなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無段変速機の変速
制御装置、特に車両の急減速時において無段変速機を適
切に変速制御するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】Vベルト式無段変速機や、トロイダル型
無段変速機に代表される無段変速機は、例えばエンジン
要求負荷および車速から目標変速比を求め、これと実変
速比との偏差に応じ実変速比が目標変速比になるよう変
速制御する。従って、運転者がアクセルペダルを踏み込
んでエンジン要求負荷を増すような加速時は、目標変速
比が大きくなる(低速側の変速比になる)よう変更さ
れ、無段変速機は当該大きくされた目標変速比へダウン
シフト変速され、逆に運転者がアクセルペダルを戻して
エンジン要求負荷を低下させるような低負荷運転時は、
目標変速比が小さくなる(高速側の変速比になる)よう
変更され、無段変速機は当該小さくされた目標変速比へ
アップシフト変速される。
【0003】ところでこのような変速は、目標変速比を
指令したから実際に変速比が当該目標変速比に一致する
までに、即ち、変速の進行に応答遅れが発生するのを免
れず、車両を制動により急減速させる場合において以下
の問題を生ずる。図5は、車速VSPが図示のような経
時変化をもって低下する急減速時の目標変速比i* と実
変速比iの変化傾向を示し、通常は上記の減速により目
標変速比i* が2点鎖線で示すように決定され、これに
対して上記の変速応答遅れにより実変速比iが2点鎖線
で示すごとくに追従するよう変速が進行する。
【0004】しかして上記の変速応答遅れは、車速VS
Pが0になる停車時に未だ実変速比iを最低速変速比
(最大変速比)にし得なくし、急減速後の車両の再発進
に際し、最低速変速比よりも高速側の変速比で当該再発
進を行うことを余儀なくされる。このことは、当該高速
側の変速比での再発進後、無段変速機が直ちに当該高速
側の変速比から一旦、通常の変速により最低速変速比に
されることとなり、変速比の急増で再発進時にショック
が発生するのを免れない。
【0005】この問題解決のために従来、例えば特開昭
62−31726号公報に記載されているように、車両
減速度が大きい時は目標変速比を最低速変速比にして、
これと実変速比との偏差を大きくすることにより変速速
度を高めることが提案された。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、同じ急減速
のもとでも、高車速からの急減速では車速0の停車状態
になるまでに十分な時間があり、変速応答遅れがあって
も停車する時に無段変速機は確実に最低速変速比への変
速を完了することができる。それにもかかわらず上記し
た従来装置のように急減速時は兎に角、目標変速比を最
低速変速比にして変速速度を高めるというのでは、高車
速時において変速速度が速すぎることとなり、停車のか
なり前に走行条件にマッチしない最低速変速比が選択さ
れる結果、エンジン回転数が急上昇され、所謂エンジン
の空吹けを生じさせる。
【0007】請求項1に記載の第1発明は、前記の変速
応答遅れが問題となる急減速領域が高車速になるほど小
さいとの事実認識に基づき、目標変速比を操作して変速
速度を速める制御域を車速に応じて可変にし、これによ
り、従来装置で生じていたような高車速での上記問題を
生ずることなく、停車時に無段変速機の最低速変速比へ
の変速を確実に完了させ得るようにすることを目的とす
る。
【0008】請求項2に記載の第2発明は、低車速では
第1発明によっても無段変速機が最低速変速比に戻り得
ないし、変速比の演算が困難で第1発明による制御がで
たらめになることから、これらによる弊害を、当該低車
速になった時の変速比に維持することで回避することを
目的とする。
【0009】請求項3に記載の第3発明は、変速機入力
回転数が低い間に第1発明による変速速度の上昇制御を
行うと無段変速機の摩擦伝動要素間で滑りを生じるた
め、変速機入力回転数が低くなった時の変速比に維持す
ることで、当該滑りの問題を生ずることのないようにす
ることを目的とする。
【0010】請求項4に記載の第4発明は、車両減速度
が大減速度域になると車輪が最早ロックすることから、
第1発明によっても停車時に無段変速機が最低速変速比
に戻り得ないし、変速比の演算が困難で第1発明による
制御がでたらめになるため、これらによる弊害を、当該
大減速度域に入った時の変速比に維持することで回避す
ることを目的とする。
【0011】請求項5に記載の第5発明は、アンチスキ
ッド制御装置が作動していれば車輪がロックすることが
なくて、車両減速度に応じた変速比固定制御が不要であ
るし、また、急減速時に第1発明の制御で変速比を速く
最低速変速比にすると、車輪の回転イナーシャが速く増
大してアンチスキッド制御性能が低下する弊害を生ずる
ことから、アンチスキッド制御中は車両減速度に応じた
変速比固定制御および変速速度上昇制御を行わないよう
にし、もって変速比固定制御が無駄に行われたり、変速
速度上昇制御でアンチスキッド制御性能が低下するのを
防止することを目的とする。
【0012】請求項6に記載の第6発明は、上記した変
速比固定制御の適切な解除域を提案することを目的とす
る。
【0013】請求項7に記載の第7発明は、車速に応じ
た変速比固定制御の解除を、制御のハンチングを生ずる
ことなく適切に行い得るようにすることを目的とする。
【0014】請求項8に記載の第8発明は、車速および
変速機入力回転数に応じた変速比固定制御の解除を、制
御のハンチングを生ずることなく適切に行い得るように
することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】これらの目的のため、先
ず第1発明による無段変速機の変速制御装置は、走行条
件により決定される目標変速比と実変速比との偏差に応
じて、この偏差がなくなるよう変速を進行される無段変
速機において、車両減速度が、高車速ほど大きくした設
定減速度を越える急減速時、前記目標変速比を、前記走
行条件に関係なく、通常時の最低速変速比よりも大きな
変速比にするよう構成したことを特徴とするものであ
る。
【0016】第2発明による無段変速機の変速制御装置
は、上記第1発明において車速が微小設定値未満の低車
速域である間、該低車速域に入った時の実変速比を目標
変速比とするよう構成したことを特徴とするものであ
る。
【0017】第3発明による無段変速機の変速制御装置
は、上記第1発明または第2発明において無段変速機の
入力回転数が微小設定値未満の低回転域である間、該低
回転域に入った時の実変速比を目標変速比とするよう構
成したことを特徴とするものである。
【0018】第4発明による無段変速機の変速制御装置
は、上記第2発明または第3発明において車両減速度
が、前記高車速ほど大きくした可変の設定減速度より大
きな固定の設定減速度を越える大減速度域である間、該
大減速度域に入った時の実変速比を目標変速比とするよ
う構成したことを特徴とするものである。
【0019】第5発明による無段変速機の変速制御装置
は、上記第1発明乃至第4発明のいずれかにおいてアン
チスキッド制御装置の作動中は、車両減速度の如何にか
かわらず前記目標変速比を前記走行条件により決定して
通常の変速制御を行うよう構成したことを特徴とするも
のである。
【0020】第6発明による無段変速機の変速制御装置
は、上記第4発明または第5発明において車両減速度が
加速度に極性反転した時に前記大減速度域での変速比固
定制御を解除して通常の変速制御に戻すよう構成したこ
とを特徴とするものである。
【0021】第7発明による無段変速機の変速制御装置
は、上記第2発明乃至第6発明のいずれかにおいて前記
低車速域での変速比固定制御の解除を、車速が前記微小
設定値よりもヒステリシス分だけ高い第2の微小設定車
速に達した時に行わせるよう構成したことを特徴とする
ものである。
【0022】第8発明による無段変速機の変速制御装置
は、上記第3発明乃至第6発明のいずれかにおいて前記
低車速域および低回転域での変速比固定制御の解除を、
車速が前記微小設定値よりもヒステリシス分だけ高い第
2の微小設定車速に達し、且つ、無段変速機の入力回転
数が前記微小設定値よりもヒステリシス分だけ高い第2
の微小入力回転数設定値に達した時に行わせるよう構成
したことを特徴とするものである。
【0023】
【発明の効果】第1発明において無段変速機は通常、車
両の走行条件により決定される目標変速比と実変速比と
の偏差に応じて、この偏差がなくなるように変速を進行
される。しかし車両減速度が、高車速ほど大きくした設
定減速度を越える急減速時は、上記目標変速比を、車両
走行条件に関係なく、通常時の最低速変速比よりも大き
な変速比にする。よって急減速時は、目標変速比と実変
速比との偏差が大きくなって、最低速変速比への変速速
度が速くなり、急減速時といえども停車時に未だ、変速
応答遅れにより最低速変速比への変速が未だ完了してい
ないといったようなことがなくなる。
【0024】そして第1発明においては特に、上記の設
定減速度を高車速ほど大きくしたために、以下の作用効
果が得られる。つまり、減速により車速0の停車状態に
なるまでの時間は高車速ほど長くなり、従って高車速で
あるほど、急減速によっても変速応答遅れが原因で停車
時に未だ最低速変速比への変速が完了していないといっ
た問題の発生は少なくなる。このことは、当該問題を生
ずる減速度域が高車速ほど小さくなることを意味し、第
1発明による上記の変速速度上昇操作を開始すべき車両
減速度、つまり前記の設定減速度は高車速ほど大きくす
べきである。第1発明における設定減速度の設定はかか
る要求にマッチし、前記の変速速度上昇操作を必要な時
にのみ行わせることができる。これがため、高車速時に
おいて不要に変速速度上昇操作が実行されることがなく
なり、前記の従来装置で生じていた問題、つまり、停車
のかなり前に走行条件にマッチしない最低速変速比が選
択される結果、エンジン回転数が急上昇され、所謂エン
ジンの空吹けが生ずるといった問題を回避しつつ、前記
の作用効果、つまり急減速時といえども停車時に確実に
最低速変速比への変速を完了させるという作用効果を達
成することができる。
【0025】第2発明では、第1発明において車速が微
小設定値未満の低車速域である間、該低車速域に入った
時の実変速比を目標変速比とするために、以下の作用効
果が得られる。つまり当該低車速域では、第1発明の変
速速度上昇制御によっても停車時に無段変速機が最低速
変速比に戻り得ないと共に、変速比の演算が困難であっ
て第1発明による制御がでたらめになるところながら、
第2発明においては無段変速機を当該低車速域になった
時の変速比に維持することで、これらによる弊害を回避
することができる。
【0026】第3発明では、第1発明または第2発明に
おいて無段変速機の入力回転数が微小設定値未満の低回
転域である間、該低回転域に入った時の実変速比を目標
変速比とするため、以下の作用効果が得られる。つま
り、変速機入力回転数が当該低回転域である間に第1発
明による変速速度の上昇制御を行うと無段変速機の摩擦
伝動要素間で滑りを生じるが、第3発明においては、無
段変速機を変速機入力回転数が上記低回転域に入った時
の変速比に維持することから、当該滑りの問題を回避す
ることができる。
【0027】第4発明では、第2発明または第3発明に
おいて車両減速度が、前記高車速ほど大きくした可変の
設定減速度より大きな固定の設定減速度を越える大減速
度域である間、この大減速度域に入った時の実変速比を
目標変速比とするため、以下の作用効果が得られる。つ
まり、車両減速度が上記の大減速度域になると車輪が最
早ロックすることから、第1発明の変速速度上昇によっ
ても停車時に無段変速機が最低速変速比に戻り得ない
し、変速比の演算が困難で第1発明による制御がでたら
めになるが、第4発明においては大減速度域である間、
この大減速度域に入った時の実変速比を目標変速比とす
るため、これらによる弊害を回避することができる。
【0028】第5発明においては、アンチスキッド制御
装置の作動中、車両減速度の如何にかかわらず目標変速
比を車両走行条件により決定して通常の変速制御を行う
ことから、以下の作用効果が得られる。つまり、アンチ
スキッド制御装置が作動していれば車輪がロックするこ
とがなくて、車両減速度に応じた変速比固定制御が不要
であるし、また、急減速時に変速比を速く最低速変速比
にする変速速度上昇制御を行うと、車輪の回転イナーシ
ャが速く増大してアンチスキッド制御性能が低下する弊
害を生ずるところながら、第5発明のように、アンチス
キッド制御中は車両減速度に応じた変速比固定制御およ
び変速速度上昇制御を行わないようにすれば、変速比固
定制御が無駄に行われたり、変速速度上昇制御でアンチ
スキッド制御性能が低下するのを防止することができ
る。
【0029】第6発明では、車両減速度が加速度に極性
反転した時に前記大減速度域での変速比固定制御を解除
して通常の変速制御に戻すことから、上記した変速比固
定制御を適切に解除することができる。
【0030】第7発明では、上記第2発明乃至第6発明
のいずれかにおける低車速域での変速比固定制御の解除
を、車速が前記微小設定値よりもヒステリシス分だけ高
い第2の微小設定車速に達した時に行わせることから、
車速に応じた変速比固定制御の解除を、制御のハンチン
グを生ずることなく適切に行うことができる。
【0031】第8発明では、第3発明乃至第6発明のい
ずれかにおける低車速域および低回転域での変速比固定
制御の解除を、車速が前記微小設定値よりもヒステリシ
ス分だけ高い第2の微小設定車速に達し、且つ、無段変
速機の入力回転数が前記微小設定値よりもヒステリシス
分だけ高い第2の微小入力回転数設定値に達した時に行
わせることから、車速および変速機入力回転数に応じた
変速比固定制御の解除を、制御のハンチングを生ずるこ
となく適切に行うことができる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形
態になる変速制御装置を具えた車両のパワートレーン
と、その制御系を示し、該パワートレーンをエンジン1
と無段変速機2とで構成する。エンジン1は、運転者が
操作するアクセルペダル3にリンク連結されたスロット
ルバルブ5を具え、このスロットルバルブ5は、運転者
によるアクセルペダル3の踏み込みにより開度を増大さ
れて、エンジンり出力を大きくするものとする。
【0033】無段変速機2は周知のVベルト式無段変速
機とし、トルクコンバータ6を介してエンジン1の出力
軸に駆動結合されたプライマリプーリ7と、これに整列
配置したセカンダリプーリ8と、これら両プーリ間に掛
け渡したVベルト9とを具える。そして、セカンダリプ
ーリ8にファイナルドライブギヤ組10を介してディフ
ァレンシャルギヤ装置11を駆動結合し、これらにより
図示せざる車輪を回転駆動するものとする。
【0034】無段変速機2の変速のために、プライマリ
プーリ7およびセカンダリプーリ8のそれぞれのV溝を
形成するフランジのうち、一方の可動フランジを他方の
固定フランジに対して相対的に接近してV溝幅を狭めた
り、離反してV溝幅を広め得るようにし、両可動フラン
ジを、コントロールバルブ12からのプライマリプーリ
圧Ppriおよびセカンダリプーリ圧Psec に応じた位置
に変位させ、これにより、無段変速機2を実変速比が後
述の目標変速比に一致するよう無段変速させ得るものと
する。これがためコントロールバルブ12にはステップ
モータ14を設け、このステップモータ14は駆動信号
stepにより回転されて、後述する目標変速比を実現す
るようなプライマリプーリ圧Ppri およびセカンダリプ
ーリ圧Psec を出力すべくコントロールバルブ12を動
作させるものとする。
【0035】ステップモータ駆動信号Sstepはコントロ
ーラ13により演算して求めることとし、これがためコ
ントローラ13には、車両加減速度Gを検出するGセン
サ15からの信号と、スロットル開度TVOを検出する
スロットル開度センサ16からの信号と、プライマリプ
ーリ7の回転数(プライマリ回転数)Npri を検出する
プライマリプーリ回転センサ17からの信号と、セカン
ダリプーリ8の回転数(セカンダリ回転数)Nsec を検
出するセカンダリプーリ回転センサ18からの信号と、
車速VSPを検出する車速センサ19からの信号とを入
力する。
【0036】コントローラ13はこれら入力情報を基
に、図2に示す変速制御を以下のごとくに行う。先ずス
テップ21において、車速VSP、スロットル開度TV
O、プライマリ回転数Npri 、セカンダリ回転数
sec 、および車両加減速度Gをそれぞれ読み込む。次
いでステップ22において、プライマリ回転数Npri
セカンダリ回転数N sec との比である実変速比iをi=
pri /Nsec の演算により求める。
【0037】ステップ23においては、車速VSPおよ
び車両加減速度Gから、図3(a),(b)に対応した
マップをもとに変速領域の判定、つまり、急減速時のた
めの本発明が狙いとする変速速度上昇制御を行うべき急
減速時変速域Aか、通常の変速制御を行うべき通常変速
域B,Eか、変速比を固定すべき変速比固定域C,Dか
を判定する。詳しくは、アンチスキッド制御装置が非作
動中であれば図3(a)にもとづき、車両減速度Gが、
高車速ほど大きくなるよう定められた可変の設定減速度
aを越える急減速域Aを急減速時変速域と判定し、車両
減速度Gが設定減速度a以下(車両加速度域を含む)の
領域Bを通常変速域と判定する。ここで設定減速度a
は、車速VSPごとに変速応答遅れで停車までに最低速
変速比に戻ることができる減速度限界値を狙って定め、
従って、車両減速度Gが設定減速度aを越える領域A
は、車速VSPごとに変速応答遅れで停車までに最低速
変速比に戻ることができない領域である。
【0038】なお、車両加減速度Gが負値となる減速域
にはその他に、車速VSPが第1の微小設定値VSP1
(3km/h)未満の低車速域にある時の変速比固定域C
と、車両減速度Gが、可変の設定減速度aよりも大きな
固定の設定減速度−1gを越える大減速度域にある時の
変速比固定域Dとを設定する。前者の低車速故の変速比
固定域Cは、如何なる対策によっても停車時に無段変速
機が最低速変速比に戻り得ないと共に、変速比の演算が
困難であって制御がでたらめになる領域であり、ここに
おける変速比固定制御は後で詳述するが、当該低車速域
Cに入った時の変速比を維持する制御を意味するものと
する。また後者の大減速度故の変速比固定域Dは、車輪
が最早ロックすることから、如何なる対策によっても停
車時に無段変速機が最低速変速比に戻り得ないし、変速
比の演算が困難であって制御がでたらめになる領域であ
り、ここにおける変速比固定制御は後で詳述するが、当
該大減速度域Dに入った時の変速比を維持する制御を意
味するものとする。
【0039】アンチスキッド制御装置が作動中であれば
図3(b)にもとづき、上記の変速比固定域C以外の車
両減速度域をEで示すように全域に亘って通常変速域と
する。その理由は、アンチスキッド制御装置の作動中は
車輪がロックすることがなくて、車両減速度に応じた変
速比固定制御A,Dが不要であるし、また、急減速時に
変速比を速く最低速変速比にする変速速度上昇制御を行
うと、車輪の回転イナーシャが速く増大してアンチスキ
ッド制御性能が低下する弊害を生ずるからである。
【0040】図2のステップ23における上記の領域判
定結果が、通常変速域B,Eであるとの判定結果であれ
ば、制御をステップ24〜27に進めて以下のように通
常の変速を行う。ステップ24においては、車速VSP
およびスロットル開度TVOから、予め設定しておく図
4の変速マップをもとに目標プライマリ回転数Npri *
を検索する。そしてステップ25で、上記の目標プライ
マリ回転数Npri * をセカンダリ回転数Nsec により除
算する演算により、走行状態に応じた目標変速比i*
pr i * /Nsec を算出する。次いでステップ26にお
いて、目標変速比i* と実変速比iとの間の変速比偏差
Δiを演算し、ステップ27において、この変速比偏差
Δiを所定ゲインでなくすようなステップモータ駆動信
号Sstepを図1のステップモータ14に指令する。以上
によりコントロールバルブ12は、実変速比iを所定ゲ
インで目標変速比i* に接近させるようなプライマリプ
ーリ圧Ppri およびセカンダリプーリ圧P sec を出力
し、通常の変速制御が実行される。
【0041】図2のステップ23における領域判定結果
が、図3(a)に示す急減速時変速域Aであるとの判定
結果であれば、制御をステップ28,26,27に進め
て以下のように通常とは異なる変速を行う。ステップ2
8においては目標変速比i* を、走行状態とは関係なく
図5に実線で示すごとく通常時の最低速変速比よりも大
きな(機構上は存在しない更に低速側の)変速比にし、
次いでステップ26において、かかる大きな目標変速比
* と実変速比iとの間の変速比偏差Δiを演算し、ス
テップ27において、この変速比偏差Δiを所定ゲイン
でなくすようなステップモータ駆動信号Sstepを図1の
ステップモータ14に指令して、最低速変速比へのダウ
ンシフト変速を進行させる。
【0042】よって、当該急減速時においてはステップ
26で演算する変速比偏差Δiが大きくなり、これに応
じた最低速変速比へのダウンシフト変速速度が上昇され
ることとなる。これがため、変速応答遅れで通常の変速
制御だと、停車時に最低速変速比に到達することができ
ないような急減速時においても、図5に実線で示す実変
速比iの経時変化から明らかなように、最低速変速比へ
のダウンシフト変速を停車時に確実に完了させることが
できる。
【0043】ところで、図3(a)に示すように上記可
変の設定減速度aを高車速ほど大きくしたために、以下
の作用効果が得られる。つまり、減速により車速0の停
車状態になるまでの時間は高車速ほど長くなり、従って
高車速であるほど、急減速によっても変速応答遅れが原
因で停車時に未だ最低速変速比への変速が完了していな
いといった問題の発生は少なくなる。このことは、当該
問題を生ずる減速度域が高車速ほど小さくなることを意
味し、上記の変速速度上昇操作を開始すべき車両減速
度、つまり当該変速速度上昇操作を開始する設定減速度
は高車速ほど大きくすべきである。本実施の形態におけ
る可変の設定減速度aは高車速ほど大きくしたため、か
かる要求にマッチして前記の変速速度上昇操作を必要な
時にのみ行わせることができる。これがため、高車速時
において不要に変速速度上昇操作が実行されることがな
くなり、前記の従来装置で生じていた問題、つまり、停
車のかなり前に走行条件にマッチしない最低速変速比が
選択される結果、エンジン回転数が急上昇され、所謂エ
ンジンの空吹けが生ずるといった問題を回避しつつ、前
記の作用効果、つまり急減速時といえども停車時に確実
に最低速変速比への変速を完了させるという作用効果を
達成することができる。
【0044】図2のステップ23で変速比固定域C,D
と判定する場合、制御をステップ29〜32に進めて、
以下のように変速比を固定する制御を行う。ステップ2
9では、変速比固定域に入った時にステップ31で1に
セットされ、図示しなかったが、後述する当該変速比固
定制御の解除が指令された時に0にリセットされるフラ
グFLAGが1か否かを判別する。変速比固定域に入っ
て1回目はFLAG=0であるから制御がステップ3
0,31に進み、当該瞬時の実変速比iを変速比固定域
に入った時の変速比im として記憶すると共に、フラグ
FLAGを1にセットし、ステップ32で、変速比固定
域に入った時の変速比im を目標変速比i* にセットす
る。これらステップ30,31は、フラグFLAGの上
記セットにより1回のみ実行され、従って、ステップ3
2で設定される目標変速比i* は、変速比固定域に入っ
た時の変速比im に保持される。以後、ステップ26,
27での前記したと同様の処理により無段変速機は、実
変速比iが目標変速比i* =im に保持されるよう、つ
まり、変速比固定域に入った時の変速比im に固定され
るよう変速制御される。
【0045】かかる変速比固定制御の作用効果を次に説
明する。変速比固定域Cでは、車速VSPが微小設定値
VSP1 =3km/h未満の低車速域である間、この低車速
域に入った時の実変速比im を目標変速比i* とし、無
段変速機を当該変速比に固定することから、以下の作用
効果が得られる。つまり当該低車速域Cでは、前記の変
速速度上昇制御によっても停車時に無段変速機が最低速
変速比に戻り得ないと共に、変速比の演算が困難であっ
て上記の変速速度上昇制御がでたらめになるところなが
ら、本実施の形態においては無段変速機を当該低車速域
Cになった時の変速比imに固定することで、これらに
よる弊害を回避することができる。
【0046】なお、図3(a),(b)に併記するだけ
で、図2の制御プログラムには示さなかったが、領域C
における変速比固定制御は車速条件が前記の通りに揃わ
なくても、無段変速機の入力回転数であるプライマリ回
転数Npri が微小設定値200rpm 未満の低回転域に入
っていることを条件に行わせてもよい。この場合も、当
該低回転域に入った時の実変速比を目標変速比とするこ
と勿論である。この場合、変速機入力回転数(プライマ
リ回転数Npri )が当該低回転域である間に前記した変
速速度の上昇制御を行うと無段変速機の摩擦伝動要素で
あるVベルト9(図1参照)がプーリ7,8に対して滑
りを生じるところながら、無段変速機を変速機入力回転
数が上記低回転域に入った時の変速比に固定することか
ら、当該滑りの問題を回避することができる。
【0047】次いで、図3(a)の変速比固定域Dにお
ける変速比固定制御の作用効果を説明する。この変速比
固定域Dは、車両減速度Gが、前記高車速ほど大きくし
た可変の設定減速度aより大きな固定の設定減速度(−
1g)を越える大減速度域であるが、この大減速度域D
では、当該領域に入った時の実変速比im を目標変速比
*として、無段変速機を当該変速比に固定することか
ら、以下の作用効果が得られる。つまり、車両減速度G
が上記の大減速度域になると車輪が最早ロックすること
から、前記の変速速度上昇制御によっても停車時に無段
変速機が最低速変速比に戻り得ないし、変速比の演算が
困難で当該変速速度上昇制御がでたらめになるところな
がら、大減速度域Dである間、この大減速度域に入った
時の実変速比に無段変速機を固定することから、これら
による弊害を回避することができる。
【0048】なお、図3(a),(b)に示した変速比
固定域C,Dにおける変速比固定制御の解除を如何にし
て行うかを、図2の制御プログラムでは煩雑になるため
省略したが、当該変速比固定制御の解除は図3(c)に
示す条件が揃った時にこれを行うこととする。先ず変速
比固定域Cにおける低車速域での変速比固定制御の解除
は、図3(c)にFで示すように車速VSPが前記した
第1の微小設定値VSP1 よりもヒステリシス分だけ大
きな第1の微小設定値VSP2 に達し、且つ、変速機入
力回転数Npri が前記微小設定値200rpm よりもヒス
テリシス分だけ高い第2の設定値250rpm に達した時
に初めて行わせる。これがため、当該変速比固定制御の
実行と解除が頻繁に繰り返されるハンチング現象を回避
することができる。
【0049】次に変速比固定域Dにおける大減速度域で
の変速比固定制御の解除を説明するに、この変速比固定
制御は、図3(c)にHで示すように車両減速度Gが減
速度値から加速度値に極性反転した時に解除し、当該変
速比固定制御の解除を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態になる変速制御装置を具
えた無段変速機搭載車のパワートレーンを、その制御シ
ステムと共に示す概略説明図である。
【図2】同実施の形態においてコントローラが実行する
変速制御プログラムを示すフローチャートである。
【図3】(a)は、アンチスキッド非作動時における3
種の変速制御態様の領域線図で、(b)は、アンチスキ
ッド作動時における変速制御態様の領域線図で、(c)
は、変速制御態様のうち変速比固定制御を解除する条件
を示した領域線図である。
【図4】通常の変速態様において用いる変速マップを線
図化した変速パターン図である。
【図5】急減速時における変速動作を、本発明による変
速速度上昇制御を行った場合と、行わない場合とで比較
して示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン 2 無段変速機 3 アクセルペダル 5 スロットルバルブ 6 トルクコンバータ 7 プライマリプーリ 8 セカンダリプーリ 9 Vベルト 10 ファイナルドライブギヤ組 11 ディファレンシャルギヤ装置 12 コントロールバルブ 13 コントローラ 14 ステップモータ 15 Gセンサ 16 スロットル開度センサ 17 プライマリプーリ回転センサ 18 セカンダリプーリ回転センサ 19 車速センサ
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F16H 59:54 59:70 63:06 (72)発明者 山本 雅弘 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 走行条件により決定される目標変速比と
    実変速比との偏差に応じて、この偏差がなくなるよう変
    速を進行される無段変速機において、 車両減速度が、高車速ほど大きくした設定減速度を越え
    る急減速時、前記目標変速比を、前記走行条件に関係な
    く、通常時の最低速変速比よりも大きな変速比にするよ
    う構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装
    置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、車速が微小設定値未
    満の低車速域である間、該低車速域に入った時の実変速
    比を目標変速比とするよう構成したことを特徴とする無
    段変速機の変速制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、無段変速機
    の入力回転数が微小設定値未満の低回転域である間、該
    低回転域に入った時の実変速比を目標変速比とするよう
    構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  4. 【請求項4】 請求項2または3において、車両減速度
    が、前記高車速ほど大きくした可変の設定減速度より大
    きな固定の設定減速度を越える大減速度域である間、該
    大減速度域に入った時の実変速比を目標変速比とするよ
    う構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装
    置。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項におい
    て、アンチスキッド制御装置の作動中は、車両減速度の
    如何にかかわらず前記目標変速比を前記走行条件により
    決定して通常の変速制御を行うよう構成したことを特徴
    とする無段変速機の変速制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項4または5において、車両減速度
    が加速度に極性反転した時に前記大減速度域での変速比
    固定制御を解除して通常の変速制御に戻すよう構成した
    ことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  7. 【請求項7】 請求項2乃至6のいずれか1項におい
    て、前記低車速域での変速比固定制御の解除を、車速が
    前記微小設定値よりもヒステリシス分だけ高い第2の微
    小設定車速に達した時に行わせるよう構成したことを特
    徴とする無段変速機の変速制御装置。
  8. 【請求項8】 請求項3乃至6のいずれか1項におい
    て、前記低車速域および低回転域での変速比固定制御の
    解除を、車速が前記微小設定値よりもヒステリシス分だ
    け高い第2の微小設定車速に達し、且つ、無段変速機の
    入力回転数が前記微小設定値よりもヒステリシス分だけ
    高い第2の微小入力回転数設定値に達した時に行わせる
    よう構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装
    置。
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