JPH1110795A - 汚れ乾拭き性に優れたフッ素樹脂被覆鋼板 - Google Patents
汚れ乾拭き性に優れたフッ素樹脂被覆鋼板Info
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- JPH1110795A JPH1110795A JP17220197A JP17220197A JPH1110795A JP H1110795 A JPH1110795 A JP H1110795A JP 17220197 A JP17220197 A JP 17220197A JP 17220197 A JP17220197 A JP 17220197A JP H1110795 A JPH1110795 A JP H1110795A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 疵付き部が目立ちにくく、付着した油等の汚
れを乾拭きで容易に除去できるフッ素樹脂被覆鋼板を得
る。 【構成】 このフッ素樹脂被覆鋼板は、フッ素樹脂被覆
面の面内直線距離に対する沿面距離の比で表される表面
長さ率S1 (%)が100.1以上、フッ素樹脂被覆面
に静置した水及び沃化メチレンの液滴それぞれとフッ素
樹脂被覆面との接触角θw 及びθm から式(1)に従っ
て算出される表面張力γとフッ素樹脂被覆面の10点平
均粗さRz (μm)との間にRz ≦30.2−0.80
γの関係が成立している。 γ=[2.96−1.30cos(θw)+4.25cos(θm)]2 +[3.17+5.95cos(θw)−2.78cos(θm)]2 ・・・(1) フッ素樹脂には、エチレン−テトラフルオロエチレン共
重合体,フルオロエチレン−フルオロプロピレン共重合
体,パーフルオロアルキルビニルエーテル−テトラフル
オロエチレン共重合体,ポリテトラフルオロエチレン等
が使用される。
れを乾拭きで容易に除去できるフッ素樹脂被覆鋼板を得
る。 【構成】 このフッ素樹脂被覆鋼板は、フッ素樹脂被覆
面の面内直線距離に対する沿面距離の比で表される表面
長さ率S1 (%)が100.1以上、フッ素樹脂被覆面
に静置した水及び沃化メチレンの液滴それぞれとフッ素
樹脂被覆面との接触角θw 及びθm から式(1)に従っ
て算出される表面張力γとフッ素樹脂被覆面の10点平
均粗さRz (μm)との間にRz ≦30.2−0.80
γの関係が成立している。 γ=[2.96−1.30cos(θw)+4.25cos(θm)]2 +[3.17+5.95cos(θw)−2.78cos(θm)]2 ・・・(1) フッ素樹脂には、エチレン−テトラフルオロエチレン共
重合体,フルオロエチレン−フルオロプロピレン共重合
体,パーフルオロアルキルビニルエーテル−テトラフル
オロエチレン共重合体,ポリテトラフルオロエチレン等
が使用される。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、疵付き部が目立ちにく
く且つ汚れ乾拭き性に優れたフッ素樹脂被覆鋼板に関す
る。
く且つ汚れ乾拭き性に優れたフッ素樹脂被覆鋼板に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ガステーブルを初めとする各種厨房機器
や厨房壁材には、油等の食品で汚染され易い環境で使用
されることから、耐汚染性に優れたフッ素樹脂塗料を塗
装した鋼板やフッ素樹脂フィルムを貼り合わせたラミネ
ート鋼板等が使用されている。フッ素樹脂塗料として
は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEとい
う)とポリエーテルスルフィド樹脂との混合樹脂を塗料
化したものが知られている。フッ素樹脂フィルムとして
は、優れた非粘着性,耐汚染性,耐薬品性を示すパーフ
ルオロアルキルビニルエーテル−テトラフルオロエチレ
ン共重合体(以下、PFAという)フィルム,エチレン
−テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEと
いう)等が知られている。
や厨房壁材には、油等の食品で汚染され易い環境で使用
されることから、耐汚染性に優れたフッ素樹脂塗料を塗
装した鋼板やフッ素樹脂フィルムを貼り合わせたラミネ
ート鋼板等が使用されている。フッ素樹脂塗料として
は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEとい
う)とポリエーテルスルフィド樹脂との混合樹脂を塗料
化したものが知られている。フッ素樹脂フィルムとして
は、優れた非粘着性,耐汚染性,耐薬品性を示すパーフ
ルオロアルキルビニルエーテル−テトラフルオロエチレ
ン共重合体(以下、PFAという)フィルム,エチレン
−テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEと
いう)等が知られている。
【0003】フッ素樹脂は、高い非粘着性をもつことか
ら、凝集力(凝集エネルギ)が小さく、換言すると硬度
が低い。そのため、手で触れる機会の多い部材にフッ素
樹脂被覆鋼板を使用する場合、耐疵付き性を改善するこ
とが要求される。耐疵付き性の改善には、疵付き変形量
を低減するためにフッ素樹脂被覆を薄くすることが考え
られる。しかし、薄いフッ素樹脂被覆は、耐久性を考慮
すると良策とはいえない。そこで、表面に付いた疵を目
立ちにくくするため、フッ素樹脂被覆を粗面化してい
る。粗面化には、表面にエンボス加工を施す方法,フッ
素樹脂に粉末を分散させて表面に凹凸を付ける方法等が
採用されている。
ら、凝集力(凝集エネルギ)が小さく、換言すると硬度
が低い。そのため、手で触れる機会の多い部材にフッ素
樹脂被覆鋼板を使用する場合、耐疵付き性を改善するこ
とが要求される。耐疵付き性の改善には、疵付き変形量
を低減するためにフッ素樹脂被覆を薄くすることが考え
られる。しかし、薄いフッ素樹脂被覆は、耐久性を考慮
すると良策とはいえない。そこで、表面に付いた疵を目
立ちにくくするため、フッ素樹脂被覆を粗面化してい
る。粗面化には、表面にエンボス加工を施す方法,フッ
素樹脂に粉末を分散させて表面に凹凸を付ける方法等が
採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】凹凸を付けたフッ素樹
脂被覆では、凹凸の中に物理的に入り込んだ汚染物を除
去し難くなる。水や中性洗剤等を含ませた布でフッ素樹
脂被覆の表面を拭き取るとき、汚染物を浮かせ、高い非
粘着性を活用して凹凸の中から汚染物を除去することは
可能である。しかし、非粘着性を謳い文句とするフッ素
樹脂被覆鋼板では、水や中性洗剤等を含ませた布の使用
は好ましいものではなく、ティッシュペーパ等による乾
拭きで汚れを除去できることが要求される。本発明は、
このような問題を解消すべく案出されたものであり、フ
ッ素樹脂被覆層の表面形態及び表面張力を調整すること
により、疵付きを目立たなくする凹凸を付けていても、
乾拭きで汚れが容易に除去できるフッ素樹脂被覆鋼板を
提供することを目的とする。
脂被覆では、凹凸の中に物理的に入り込んだ汚染物を除
去し難くなる。水や中性洗剤等を含ませた布でフッ素樹
脂被覆の表面を拭き取るとき、汚染物を浮かせ、高い非
粘着性を活用して凹凸の中から汚染物を除去することは
可能である。しかし、非粘着性を謳い文句とするフッ素
樹脂被覆鋼板では、水や中性洗剤等を含ませた布の使用
は好ましいものではなく、ティッシュペーパ等による乾
拭きで汚れを除去できることが要求される。本発明は、
このような問題を解消すべく案出されたものであり、フ
ッ素樹脂被覆層の表面形態及び表面張力を調整すること
により、疵付きを目立たなくする凹凸を付けていても、
乾拭きで汚れが容易に除去できるフッ素樹脂被覆鋼板を
提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のフッ素樹脂被覆
鋼板は、その目的を達成するため、フッ素樹脂被覆面の
面内直線距離に対する沿面距離の比で表される表面長さ
率S1 (%)が100.1以上であり、フッ素樹脂被覆
面に静置した水及び沃化メチレンの液滴それぞれとフッ
素樹脂被覆面との接触角θw 及びθm から式(1)に従
って算出される表面張力γとフッ素樹脂被覆面の10点
平均粗さRz (μm)との間にRz ≦30.2−0.8
0γの関係が成立していることを特徴とする。 γ=[2.96−1.30cos(θw)+4.25cos(θm)]2 +[3.17+5.95cos(θw)−2.78cos(θm)]2 ・・・(1) フッ素樹脂としては、エチレン−テトラフルオロエチレ
ン共重合体,フルオロエチレン−フルオロプロピレン共
重合体,パーフルオロアルキルビニルエーテル−テトラ
フルオロエチレン共重合体,ポリテトラフルオロエチレ
ンから選ばれた1種又は2種以上の混合物が使用され
る。
鋼板は、その目的を達成するため、フッ素樹脂被覆面の
面内直線距離に対する沿面距離の比で表される表面長さ
率S1 (%)が100.1以上であり、フッ素樹脂被覆
面に静置した水及び沃化メチレンの液滴それぞれとフッ
素樹脂被覆面との接触角θw 及びθm から式(1)に従
って算出される表面張力γとフッ素樹脂被覆面の10点
平均粗さRz (μm)との間にRz ≦30.2−0.8
0γの関係が成立していることを特徴とする。 γ=[2.96−1.30cos(θw)+4.25cos(θm)]2 +[3.17+5.95cos(θw)−2.78cos(θm)]2 ・・・(1) フッ素樹脂としては、エチレン−テトラフルオロエチレ
ン共重合体,フルオロエチレン−フルオロプロピレン共
重合体,パーフルオロアルキルビニルエーテル−テトラ
フルオロエチレン共重合体,ポリテトラフルオロエチレ
ンから選ばれた1種又は2種以上の混合物が使用され
る。
【0006】
【作用】フッ素樹脂被覆鋼板では、疵付き部が目立ちに
くく且つ優れた汚れ乾拭き性を発現させるため、フッ素
樹脂被覆面の表面形態及び表面張力を調整することが必
要である。本発明者等は、表面張力が異なるフッ素樹脂
被覆面の表面形態を種々調整し、表面形態の如何が疵付
き部の目立ち方及び汚れ乾拭き性に及ぼす影響を調査し
た。疵付き性に関しては、手で触ったときの疵付き,硬
い素材での拭取りを想定して爪及び塩化ビニリデン製タ
ワシによる疵付きを調査した。その結果、フッ素樹脂被
覆面の面内直線距離に対する沿面距離の比で表される表
面長さ率S1 (%)が100.1以上になると、表面に
付いた疵が目立ちにくくなることを見い出した。表面長
さ率S1 が100.1未満になると、フッ素樹脂被覆表
面に付いた疵が目立ち易くなる。
くく且つ優れた汚れ乾拭き性を発現させるため、フッ素
樹脂被覆面の表面形態及び表面張力を調整することが必
要である。本発明者等は、表面張力が異なるフッ素樹脂
被覆面の表面形態を種々調整し、表面形態の如何が疵付
き部の目立ち方及び汚れ乾拭き性に及ぼす影響を調査し
た。疵付き性に関しては、手で触ったときの疵付き,硬
い素材での拭取りを想定して爪及び塩化ビニリデン製タ
ワシによる疵付きを調査した。その結果、フッ素樹脂被
覆面の面内直線距離に対する沿面距離の比で表される表
面長さ率S1 (%)が100.1以上になると、表面に
付いた疵が目立ちにくくなることを見い出した。表面長
さ率S1 が100.1未満になると、フッ素樹脂被覆表
面に付いた疵が目立ち易くなる。
【0007】疵の目立ち易さはフッ素樹脂被覆面の光沢
で解釈でき、光沢が低い場合に疵が目立ちにくくなると
いえる。しかし、光沢値は、フッ素樹脂被覆層の色調や
下地の光沢値等に大きく影響される。たとえば、透明E
TFEフィルムについてみると、黒色塗膜に透明接着剤
層を介して積層した場合に60度光沢値が70であるの
に対し、SUS304 BA仕上げ材に透明接着剤層を
介して積層したものでは60度光沢値が110を超える
ことがある。したがって、フッ素樹脂被覆の表面形態を
光沢値で管理することは難しい。この点、本発明では、
相対的な光沢値が短波長のフッ素樹脂被覆面の凹凸頻度
に依存することに着目し、面内直線距離に対する沿面距
離の比で表される表面長さ率S1 を指標として疵の目立
ち易さを調整している。表面長さ率S1 は、塗料に分散
させる粉末の粒径や配合量,塗膜の焼成条件,エンボス
加工で付けた凹凸等によって制御できる。何れの方法に
よる粗面化でも、表面長さ率S1 が100.1以上にな
ると、疵が目立ちにくくなる。
で解釈でき、光沢が低い場合に疵が目立ちにくくなると
いえる。しかし、光沢値は、フッ素樹脂被覆層の色調や
下地の光沢値等に大きく影響される。たとえば、透明E
TFEフィルムについてみると、黒色塗膜に透明接着剤
層を介して積層した場合に60度光沢値が70であるの
に対し、SUS304 BA仕上げ材に透明接着剤層を
介して積層したものでは60度光沢値が110を超える
ことがある。したがって、フッ素樹脂被覆の表面形態を
光沢値で管理することは難しい。この点、本発明では、
相対的な光沢値が短波長のフッ素樹脂被覆面の凹凸頻度
に依存することに着目し、面内直線距離に対する沿面距
離の比で表される表面長さ率S1 を指標として疵の目立
ち易さを調整している。表面長さ率S1 は、塗料に分散
させる粉末の粒径や配合量,塗膜の焼成条件,エンボス
加工で付けた凹凸等によって制御できる。何れの方法に
よる粗面化でも、表面長さ率S1 が100.1以上にな
ると、疵が目立ちにくくなる。
【0008】汚れ乾拭き性に関しては、乾拭きに使用す
る布やティッシュペーパ等がフッ素樹脂被覆層の凹凸に
入り込んで、凹凸の間に固着している汚れに接触するこ
とが必要である。フッ素樹脂被覆層の凹凸への布やティ
ッシュペーパ等の入込み易さは、JIS B0601に
規定されている10点平均粗さRz (μm)で評価でき
る。フッ素樹脂被覆層の凹凸に固着している汚れの布,
ティッシュペーパ等との接触による剥れ易さは、フッ素
樹脂被覆面の表面張力γで評価できる。一般的にいっ
て、表面張力γが小さいフッ素樹脂被覆面では汚れが固
着しにくく、より大きな10点平均粗さRz であっても
乾拭きで汚れを除去できる。また、10点平均粗さRz
が小さい場合、表面張力γが比較的大きなフッ素樹脂被
覆面であっても固着した汚れを除去できる。そこで、疵
が目立たなくなる表面長さ率S1 が100.1以上であ
ることを前提として、汚れ乾拭き性に及ぼす表面張力γ
及び10点平均粗さRz の影響を調査した。
る布やティッシュペーパ等がフッ素樹脂被覆層の凹凸に
入り込んで、凹凸の間に固着している汚れに接触するこ
とが必要である。フッ素樹脂被覆層の凹凸への布やティ
ッシュペーパ等の入込み易さは、JIS B0601に
規定されている10点平均粗さRz (μm)で評価でき
る。フッ素樹脂被覆層の凹凸に固着している汚れの布,
ティッシュペーパ等との接触による剥れ易さは、フッ素
樹脂被覆面の表面張力γで評価できる。一般的にいっ
て、表面張力γが小さいフッ素樹脂被覆面では汚れが固
着しにくく、より大きな10点平均粗さRz であっても
乾拭きで汚れを除去できる。また、10点平均粗さRz
が小さい場合、表面張力γが比較的大きなフッ素樹脂被
覆面であっても固着した汚れを除去できる。そこで、疵
が目立たなくなる表面長さ率S1 が100.1以上であ
ることを前提として、汚れ乾拭き性に及ぼす表面張力γ
及び10点平均粗さRz の影響を調査した。
【0009】調査に際しては、フッ素樹脂被覆鋼板が厨
房機器,厨房壁材として使用されることを考慮し、油性
マーカで付けた汚れが乾拭きで除去できるか否かで汚れ
乾拭き性を判定した。実際の用途でフッ素樹脂被覆面を
汚す汚染因子としては、油,食品,調味料等があり、こ
れら汚染因子がフッ素樹脂被覆面に付着した後直ちに拭
き取られる場合ばかりでもない。この点、油性マーカ
は、たとえばガステーブルに対面するキッチン壁材で6
か月間拭取りをしなかった部分の油汚れの固着挙動に類
似していることを確認した。これは、油の酸化,フッ素
樹脂被覆面への完全な濡れが、油性マーカで付けた汚れ
に類似しているものと推察される。油性マーカで付けた
汚れを乾拭きで除去する調査の結果、表面張力γと10
点平均粗さRz との間にRz ≦30.2−0.80γの
関係を成立させるとき、優れた汚れ乾拭き性がフッ素樹
脂被覆面に付与されることを見い出した。
房機器,厨房壁材として使用されることを考慮し、油性
マーカで付けた汚れが乾拭きで除去できるか否かで汚れ
乾拭き性を判定した。実際の用途でフッ素樹脂被覆面を
汚す汚染因子としては、油,食品,調味料等があり、こ
れら汚染因子がフッ素樹脂被覆面に付着した後直ちに拭
き取られる場合ばかりでもない。この点、油性マーカ
は、たとえばガステーブルに対面するキッチン壁材で6
か月間拭取りをしなかった部分の油汚れの固着挙動に類
似していることを確認した。これは、油の酸化,フッ素
樹脂被覆面への完全な濡れが、油性マーカで付けた汚れ
に類似しているものと推察される。油性マーカで付けた
汚れを乾拭きで除去する調査の結果、表面張力γと10
点平均粗さRz との間にRz ≦30.2−0.80γの
関係を成立させるとき、優れた汚れ乾拭き性がフッ素樹
脂被覆面に付与されることを見い出した。
【0010】表面張力γは、フッ素樹脂被覆面に静置し
た水及び沃化メチレンの液滴それぞれとフッ素樹脂被覆
面との接触角θw 及びθm から前掲した式(1)に従っ
て算出される。一般に、固体表面の表面張力は、静置液
滴をなす液体の表面張力をγL ,固体の表面張力をγ
S ,静置液滴がなす接触角をθ,それぞれの分散力成分
をγd ,極性力成分をγp とするとき、2成分を考慮し
た拡張Fowkesの式[M.Fowkes,Ind.
Eng.Chem.,56(12),40(196
4)]γL(1+ cosθ) =2[ (γd Sγd L)0.5+ (γp S
γp L)0.5]で表される。水及び沃化メチレンの表面張力
に関するDannの値[J.R.Dann,J.Col
loid Interface Sci.,32,30
2(1970)]、水:γd L=21.8,γp L=51.
0(dyne/cm),沃化メチレン:γd L=48.
5,γp L=2.3(dyne/cm)を拡張Fowke
sの式に代入し、固体、すなわちフッ素樹脂被覆面の表
面張力γs (γs =γd s+γp s)を求めると、前掲の式
(1)が得られる。
た水及び沃化メチレンの液滴それぞれとフッ素樹脂被覆
面との接触角θw 及びθm から前掲した式(1)に従っ
て算出される。一般に、固体表面の表面張力は、静置液
滴をなす液体の表面張力をγL ,固体の表面張力をγ
S ,静置液滴がなす接触角をθ,それぞれの分散力成分
をγd ,極性力成分をγp とするとき、2成分を考慮し
た拡張Fowkesの式[M.Fowkes,Ind.
Eng.Chem.,56(12),40(196
4)]γL(1+ cosθ) =2[ (γd Sγd L)0.5+ (γp S
γp L)0.5]で表される。水及び沃化メチレンの表面張力
に関するDannの値[J.R.Dann,J.Col
loid Interface Sci.,32,30
2(1970)]、水:γd L=21.8,γp L=51.
0(dyne/cm),沃化メチレン:γd L=48.
5,γp L=2.3(dyne/cm)を拡張Fowke
sの式に代入し、固体、すなわちフッ素樹脂被覆面の表
面張力γs (γs =γd s+γp s)を求めると、前掲の式
(1)が得られる。
【0011】
【実施の形態】フッ素樹脂被覆は、クロメート処理,リ
ン酸塩処理等の前処理を施しためっき鋼板,ステンレス
鋼板等にフッ素樹脂塗料を塗布し焼き付ける方法,フッ
素樹脂フィルムをラミネートする方法等によって鋼板表
面に形成される。被覆に使用されるフッ素樹脂には、エ
チレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETF
E),フルオロエチレン−フルオロプロピレン共重合体
(FEP),パーフルオロアルキルビニルエーテル−テ
トラフルオロエチレン共重合体(PFA),ポリテトラ
フルオロエチレン(PTFE)から選ばれた1種又は2
種以上の混合物がある。塗装による場合、スピンコート
法,ロールコート法,カーテンコート法等でフッ素樹脂
のディスパージョン塗料を鋼板表面に塗布し、水又は溶
剤を乾燥除去した後、フッ素樹脂の融点以上に加熱して
焼き付ける。塗布形態としては、ディスパージョン塗料
の塗装を重ねる方法,更に鋼板との間に耐熱プライマー
層を設ける方法,耐熱樹脂及びフッ素樹脂を溶剤に溶解
・分散させた樹脂塗料を塗布し焼き付ける方法等が採用
される。
ン酸塩処理等の前処理を施しためっき鋼板,ステンレス
鋼板等にフッ素樹脂塗料を塗布し焼き付ける方法,フッ
素樹脂フィルムをラミネートする方法等によって鋼板表
面に形成される。被覆に使用されるフッ素樹脂には、エ
チレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETF
E),フルオロエチレン−フルオロプロピレン共重合体
(FEP),パーフルオロアルキルビニルエーテル−テ
トラフルオロエチレン共重合体(PFA),ポリテトラ
フルオロエチレン(PTFE)から選ばれた1種又は2
種以上の混合物がある。塗装による場合、スピンコート
法,ロールコート法,カーテンコート法等でフッ素樹脂
のディスパージョン塗料を鋼板表面に塗布し、水又は溶
剤を乾燥除去した後、フッ素樹脂の融点以上に加熱して
焼き付ける。塗布形態としては、ディスパージョン塗料
の塗装を重ねる方法,更に鋼板との間に耐熱プライマー
層を設ける方法,耐熱樹脂及びフッ素樹脂を溶剤に溶解
・分散させた樹脂塗料を塗布し焼き付ける方法等が採用
される。
【0012】ラミネートによる場合、鋼板表面にフッ素
樹脂フィルムを直接積層して熱融着する方法,鋼板とフ
ッ素樹脂フィルムとの間にプライマー層を設けた後でフ
ッ素樹脂フィルムを貼り合わせる方法等が採用される。
この場合、鋼板又はプライマー層を設けた鋼板を予めフ
ッ素樹脂の融点以上に加熱し、フッ素樹脂フィルムを積
層した後、更に融点以上に加熱することにより、フッ素
樹脂フィルムを鋼板表面に熱融着できる。フィルムラミ
ネートには、ラミネートロール法,プレス法等が採用さ
れる。プライマー層は、スプレーコート法,ロールコー
ト法,カーテンコート法等で塗膜を鋼板表面に設けた後
で焼き付けることにより形成される。鋼板表面に接着剤
層を介してフッ素樹脂フィルムを貼り合わせる方法,更
に鋼板と接着剤層との間にプライマー層を設ける方法等
も採用可能である。この場合の接着剤層やプライマー層
も、スプレーコート法,ロールコート法,カーテンコー
ト法等で塗膜を鋼板表面に設けた後で焼き付け又は乾燥
することにより形成される。
樹脂フィルムを直接積層して熱融着する方法,鋼板とフ
ッ素樹脂フィルムとの間にプライマー層を設けた後でフ
ッ素樹脂フィルムを貼り合わせる方法等が採用される。
この場合、鋼板又はプライマー層を設けた鋼板を予めフ
ッ素樹脂の融点以上に加熱し、フッ素樹脂フィルムを積
層した後、更に融点以上に加熱することにより、フッ素
樹脂フィルムを鋼板表面に熱融着できる。フィルムラミ
ネートには、ラミネートロール法,プレス法等が採用さ
れる。プライマー層は、スプレーコート法,ロールコー
ト法,カーテンコート法等で塗膜を鋼板表面に設けた後
で焼き付けることにより形成される。鋼板表面に接着剤
層を介してフッ素樹脂フィルムを貼り合わせる方法,更
に鋼板と接着剤層との間にプライマー層を設ける方法等
も採用可能である。この場合の接着剤層やプライマー層
も、スプレーコート法,ロールコート法,カーテンコー
ト法等で塗膜を鋼板表面に設けた後で焼き付け又は乾燥
することにより形成される。
【0013】鋼板に貼り合わされるフッ素樹脂フィルム
には、たとえば塩化ビニル樹脂フィルムとの複合フィル
ムを使用しても良い。複合フィルムを使用する場合、接
着剤層に塩化ビニル樹脂フィルムが接するように接着さ
れる。鋼板表面に設けられるフッ素樹脂被覆は、前述し
たように被覆面の面内直線距離に対する沿面距離の比で
表される表面長さ率S1 が100.1以上であり、且つ
表面張力γと10点平均粗さRz との間にRz ≦30.
2−0.80γの関係が成立した凹凸のある表面形態に
調整することが要求される。このような表面形態をもつ
粗面化は、平均粒径や配合量を調整したシリカ,マイカ
等の粉末を配合したフッ素樹脂塗料又はフッ素樹脂フィ
ルムを使用する方法,エンボスロールやエンボスシート
等を用いて溶融状態にあるフッ素樹脂をエンボス加工す
る方法,粒径やブラスト密度等を調整してフッ素樹脂被
覆面をブラスト処理する方法等で得られる。
には、たとえば塩化ビニル樹脂フィルムとの複合フィル
ムを使用しても良い。複合フィルムを使用する場合、接
着剤層に塩化ビニル樹脂フィルムが接するように接着さ
れる。鋼板表面に設けられるフッ素樹脂被覆は、前述し
たように被覆面の面内直線距離に対する沿面距離の比で
表される表面長さ率S1 が100.1以上であり、且つ
表面張力γと10点平均粗さRz との間にRz ≦30.
2−0.80γの関係が成立した凹凸のある表面形態に
調整することが要求される。このような表面形態をもつ
粗面化は、平均粒径や配合量を調整したシリカ,マイカ
等の粉末を配合したフッ素樹脂塗料又はフッ素樹脂フィ
ルムを使用する方法,エンボスロールやエンボスシート
等を用いて溶融状態にあるフッ素樹脂をエンボス加工す
る方法,粒径やブラスト密度等を調整してフッ素樹脂被
覆面をブラスト処理する方法等で得られる。
【0014】また、フッ素樹脂フィルムをラミネートす
る場合では、予めエンボス加工を施したフィルムを積層
する方法,フッ素樹脂フィルムが貼り合わされたラミネ
ート鋼板をエンボス加工する方法等も採用できる。更
に、鋼板表面に設けられたフッ素樹脂フィルムを溶融・
流動させることにより凹凸を低減させ、表面形態を微調
整することも可能である。フッ素樹脂被覆層には、必要
に応じてメタリック調を付与できる金属粉末や、体質顔
料,紫外線吸収剤,抗菌剤等の添加剤を配合しても良
い。本発明で規定した表面形態を連続した被覆層で構成
するためには、フッ素樹脂被覆層の厚みが3μm以上で
あることが好ましい。しかし、厚すぎる被覆層ではコス
ト,被覆条件等から不利となるので、フッ素樹脂被覆層
の厚み上限を50μmに設定することが好ましい。
る場合では、予めエンボス加工を施したフィルムを積層
する方法,フッ素樹脂フィルムが貼り合わされたラミネ
ート鋼板をエンボス加工する方法等も採用できる。更
に、鋼板表面に設けられたフッ素樹脂フィルムを溶融・
流動させることにより凹凸を低減させ、表面形態を微調
整することも可能である。フッ素樹脂被覆層には、必要
に応じてメタリック調を付与できる金属粉末や、体質顔
料,紫外線吸収剤,抗菌剤等の添加剤を配合しても良
い。本発明で規定した表面形態を連続した被覆層で構成
するためには、フッ素樹脂被覆層の厚みが3μm以上で
あることが好ましい。しかし、厚すぎる被覆層ではコス
ト,被覆条件等から不利となるので、フッ素樹脂被覆層
の厚み上限を50μmに設定することが好ましい。
【0015】
実施例1:板厚0.45mmのSUS430鋼板に塗布
型クロメート処理を施し、平均粒径6μmのシリカ粉を
4重量%配合したPTFEディスパージョン塗料(黒)
をスピンコータを用いて乾燥膜厚で30μm塗布し、3
50℃×30分で焼き付けた。 比較例1:シリカ粉を配合しないPTFEディスパージ
ョン塗料(黒)を用いた以外は、実施例1と同じ条件下
でフッ素樹脂塗膜を形成した。
型クロメート処理を施し、平均粒径6μmのシリカ粉を
4重量%配合したPTFEディスパージョン塗料(黒)
をスピンコータを用いて乾燥膜厚で30μm塗布し、3
50℃×30分で焼き付けた。 比較例1:シリカ粉を配合しないPTFEディスパージ
ョン塗料(黒)を用いた以外は、実施例1と同じ条件下
でフッ素樹脂塗膜を形成した。
【0016】実施例2:片面当り150g/m2 の溶融
亜鉛めっきを施した板厚0.5mmの溶融めっき鋼板に
塗布型クロメート処理を施し、ロールコータを用いて線
状高分子ポリエステル樹脂系プライマー(黒)を乾燥膜
厚で7μm塗布し、210℃×40秒で焼き付けた。プ
ライマー層の上にロールコータを用いてポリウレタン樹
脂系接着剤(硬化剤:イソシアネート)を乾燥膜厚で5
μm塗布し、210℃×60秒で焼き付けた。直ちに、
ラミネートロールを用いて平均粒径7μmのマイカ粉を
3重量%配合した膜厚25μmのETFEフィルムを積
層した。 比較例2:マイカ粉を10重量%配合する以外は、実施
例2と同じ条件下でフッ素樹脂フィルムラミネート鋼板
を製造した。
亜鉛めっきを施した板厚0.5mmの溶融めっき鋼板に
塗布型クロメート処理を施し、ロールコータを用いて線
状高分子ポリエステル樹脂系プライマー(黒)を乾燥膜
厚で7μm塗布し、210℃×40秒で焼き付けた。プ
ライマー層の上にロールコータを用いてポリウレタン樹
脂系接着剤(硬化剤:イソシアネート)を乾燥膜厚で5
μm塗布し、210℃×60秒で焼き付けた。直ちに、
ラミネートロールを用いて平均粒径7μmのマイカ粉を
3重量%配合した膜厚25μmのETFEフィルムを積
層した。 比較例2:マイカ粉を10重量%配合する以外は、実施
例2と同じ条件下でフッ素樹脂フィルムラミネート鋼板
を製造した。
【0017】実施例3:大理石模様を印刷した膜厚15
0μmの可塑化ポリ塩化ビニル樹脂フィルムに厚み3μ
mのポリエステル樹脂系接着剤を介して膜厚12μmの
ETFEフィルムを接着し、エンボスロールを用い16
0℃でエンボス加工を施した複合フィルムを得た。実施
例2と同じ溶融亜鉛めっき鋼板に塗布型クロメート処理
を施し、ロールコータを用いエポキシ樹脂系プライマー
を乾燥膜厚で5μm塗布し、210℃×40秒で焼き付
け、ポリウレタン樹脂系接着剤層を150℃×60秒で
焼き付けた後、直ちにラミネートロールを用いて複合フ
ィルムを140℃で積層し、直ちに水冷した。 実施例4:ポリウレタン樹脂系接着剤を170℃×60
秒で焼き付ける以外は、実施例3と同じ条件下で複合フ
ィルムを貼り合わせたラミネート鋼板を得た。 比較例3:ポリウレタン樹脂系接着剤を210℃×60
秒で焼き付けし、複合フィルムを195℃で積層する以
外は、実施例3と同じ条件下で複合フィルムを貼り合わ
せたラミネート鋼板を得た。
0μmの可塑化ポリ塩化ビニル樹脂フィルムに厚み3μ
mのポリエステル樹脂系接着剤を介して膜厚12μmの
ETFEフィルムを接着し、エンボスロールを用い16
0℃でエンボス加工を施した複合フィルムを得た。実施
例2と同じ溶融亜鉛めっき鋼板に塗布型クロメート処理
を施し、ロールコータを用いエポキシ樹脂系プライマー
を乾燥膜厚で5μm塗布し、210℃×40秒で焼き付
け、ポリウレタン樹脂系接着剤層を150℃×60秒で
焼き付けた後、直ちにラミネートロールを用いて複合フ
ィルムを140℃で積層し、直ちに水冷した。 実施例4:ポリウレタン樹脂系接着剤を170℃×60
秒で焼き付ける以外は、実施例3と同じ条件下で複合フ
ィルムを貼り合わせたラミネート鋼板を得た。 比較例3:ポリウレタン樹脂系接着剤を210℃×60
秒で焼き付けし、複合フィルムを195℃で積層する以
外は、実施例3と同じ条件下で複合フィルムを貼り合わ
せたラミネート鋼板を得た。
【0018】実施例5:片面当り付着量70g/m2 の
溶融55%Al−Znめっきを施した板厚0.5mmの
溶融めっき鋼板に塗布型クロメート処理を施し、ロール
コータを用い平均粒径3μmのマイカ粉を10重量%配
合したメタリックグレー調のFEP/PES=70/3
0塗料を乾燥膜厚で12μm塗布し、320℃×90秒
で焼き付けた。 比較例4:平均粒径11μmのマイカ粉を5重量%配合
したFEP/PES塗料を用いる以外は、実施例5と同
じ条件下でフッ素樹脂塗装鋼板を得た。
溶融55%Al−Znめっきを施した板厚0.5mmの
溶融めっき鋼板に塗布型クロメート処理を施し、ロール
コータを用い平均粒径3μmのマイカ粉を10重量%配
合したメタリックグレー調のFEP/PES=70/3
0塗料を乾燥膜厚で12μm塗布し、320℃×90秒
で焼き付けた。 比較例4:平均粒径11μmのマイカ粉を5重量%配合
したFEP/PES塗料を用いる以外は、実施例5と同
じ条件下でフッ素樹脂塗装鋼板を得た。
【0019】実施例6:板厚0.45mmのSUS43
0鋼板に塗布型クロメート処理を施し、ロールコータを
用いPFA/PES=60/40塗料(黒)を乾燥膜厚
で7μm塗布し、390℃×90秒で焼き付け、直ちに
ラミネートロールを用いて膜厚40μmのPFAフィル
ムを塗膜面に積層した後、380℃×6分で焼成した。
エンボスロールを用いて得られたPFAラミネート鋼板
を360℃でエンボス加工し、直ちに水冷した。 比較例5:エンボス加工後で空冷する以外は、実施例6
と同じ条件下でラミネート鋼板を得た。
0鋼板に塗布型クロメート処理を施し、ロールコータを
用いPFA/PES=60/40塗料(黒)を乾燥膜厚
で7μm塗布し、390℃×90秒で焼き付け、直ちに
ラミネートロールを用いて膜厚40μmのPFAフィル
ムを塗膜面に積層した後、380℃×6分で焼成した。
エンボスロールを用いて得られたPFAラミネート鋼板
を360℃でエンボス加工し、直ちに水冷した。 比較例5:エンボス加工後で空冷する以外は、実施例6
と同じ条件下でラミネート鋼板を得た。
【0020】得られた各フッ素樹脂被覆鋼板について、
フッ素樹脂被覆面の面内直線距離に対する沿面距離の比
で表される表面長さ率S1 及び10点平均粗さRz を、
レーザ式の非接触表面解析装置(明神工機株式会社製)
で測定した。また、静置液滴法でフッ素樹脂被覆面の水
及び沃化メチレンそれぞれに対する接触角θw 及びθ m
を測定し、前掲した式(1)に従って表面張力γを算出
した。更に、塩化ビニリデン製タワシを用いてフッ素樹
脂被覆面を研磨(30回往復)し、フッ素樹脂被覆鋼板
の疵付き性を調査した。そして、疵が目立たないものを
○,目立ちにくいものを△,目立つものを×として3段
階評価した。また、フッ素樹脂被覆鋼板表面に油性マー
カを塗り、20℃に24時間静置した後、日本薬局方ガ
ーゼを用いて乾拭き性を調査した。そして、汚れが容易
に拭き取れたものを○,何とか拭き取れたものを△,汚
れが残ったものを×として3段階評価した。
フッ素樹脂被覆面の面内直線距離に対する沿面距離の比
で表される表面長さ率S1 及び10点平均粗さRz を、
レーザ式の非接触表面解析装置(明神工機株式会社製)
で測定した。また、静置液滴法でフッ素樹脂被覆面の水
及び沃化メチレンそれぞれに対する接触角θw 及びθ m
を測定し、前掲した式(1)に従って表面張力γを算出
した。更に、塩化ビニリデン製タワシを用いてフッ素樹
脂被覆面を研磨(30回往復)し、フッ素樹脂被覆鋼板
の疵付き性を調査した。そして、疵が目立たないものを
○,目立ちにくいものを△,目立つものを×として3段
階評価した。また、フッ素樹脂被覆鋼板表面に油性マー
カを塗り、20℃に24時間静置した後、日本薬局方ガ
ーゼを用いて乾拭き性を調査した。そして、汚れが容易
に拭き取れたものを○,何とか拭き取れたものを△,汚
れが残ったものを×として3段階評価した。
【0021】調査結果を示す表1にみられるように、本
発明に従ったフッ素樹脂被覆鋼板では、何れも疵付き部
が目立ちにくく、しかも優れた汚れ乾拭き性を示してい
ることが判る。これに対し、比較例のフッ素樹脂被覆鋼
板では、疵付き部が目立ち易く、或いは汚れ乾拭き性に
劣っていた。疵付き部の目立ちにくさ及び汚れ乾拭き性
は、表1から明らかなように表面長さ率S1 及び表面張
力γと強い相関性をもっており、表面長さ率S1 10
0.1以上及びRz ≦30.2−0.80γに規制する
ことにより、疵付き部が目立ちにくく且つ汚れ乾拭き性
に優れたフッ素樹脂被覆鋼板が得られることが確認され
た。また、実施例3,4と比較例3とを対比すると、ラ
ミネート温度が高いほど複合フィルムの下層である可塑
化ポリ塩化ビニル樹脂フィルム層が流動してエンボス流
れが発生し、表面粗さが低減していることが判る。すな
わち、ラミネート温度の管理によっても、疵付き部が目
立ちにくく且つ汚れ乾拭き性に優れた表面形態を付与で
きることが判る。
発明に従ったフッ素樹脂被覆鋼板では、何れも疵付き部
が目立ちにくく、しかも優れた汚れ乾拭き性を示してい
ることが判る。これに対し、比較例のフッ素樹脂被覆鋼
板では、疵付き部が目立ち易く、或いは汚れ乾拭き性に
劣っていた。疵付き部の目立ちにくさ及び汚れ乾拭き性
は、表1から明らかなように表面長さ率S1 及び表面張
力γと強い相関性をもっており、表面長さ率S1 10
0.1以上及びRz ≦30.2−0.80γに規制する
ことにより、疵付き部が目立ちにくく且つ汚れ乾拭き性
に優れたフッ素樹脂被覆鋼板が得られることが確認され
た。また、実施例3,4と比較例3とを対比すると、ラ
ミネート温度が高いほど複合フィルムの下層である可塑
化ポリ塩化ビニル樹脂フィルム層が流動してエンボス流
れが発生し、表面粗さが低減していることが判る。すな
わち、ラミネート温度の管理によっても、疵付き部が目
立ちにくく且つ汚れ乾拭き性に優れた表面形態を付与で
きることが判る。
【0022】
【0023】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のフッ素
樹脂被覆鋼板においては、フッ素樹脂被覆面の面内直線
距離に対する沿面距離の比で表される表面長さ率S1 を
100.1以上とし、10点平均粗さRz と表面張力γ
との間にRz ≦30.2−0.80γの関係を成立させ
ることにより、疵付き部が目立ちにくく、付着した油等
の汚れを乾拭きで容易に除去できるフッ素樹脂被覆鋼板
となる。そのため、過酷な食品汚れが発生する厨房機
器,厨房壁材等の部材として好適に使用される。
樹脂被覆鋼板においては、フッ素樹脂被覆面の面内直線
距離に対する沿面距離の比で表される表面長さ率S1 を
100.1以上とし、10点平均粗さRz と表面張力γ
との間にRz ≦30.2−0.80γの関係を成立させ
ることにより、疵付き部が目立ちにくく、付着した油等
の汚れを乾拭きで容易に除去できるフッ素樹脂被覆鋼板
となる。そのため、過酷な食品汚れが発生する厨房機
器,厨房壁材等の部材として好適に使用される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 輿石 謙二 千葉県市川市高谷新町7番1号 日新製鋼 株式会社技術研究所内
Claims (2)
- 【請求項1】 フッ素樹脂被覆面の面内直線距離に対す
る沿面距離の比で表される表面長さ率S1 (%)が10
0.1以上であり、フッ素樹脂被覆面に静置した水及び
沃化メチレンの液滴それぞれとフッ素樹脂被覆面との接
触角θw 及びθm から式(1)に従って算出される表面
張力γとフッ素樹脂被覆面の10点平均粗さRz (μ
m)との間にRz ≦30.2−0.80γの関係が成立
している汚れ乾拭き性に優れたフッ素樹脂被覆鋼板。 γ=[2.96−1.30cos(θw)+4.25cos(θm)]2 +[3.17+5.95cos(θw)−2.78cos(θm)]2 ・・・(1) - 【請求項2】 フッ素樹脂がエチレン−テトラフルオロ
エチレン共重合体,フルオロエチレン−フルオロプロピ
レン共重合体,パーフルオロアルキルビニルエーテル−
テトラフルオロエチレン共重合体,ポリテトラフルオロ
エチレンから選ばれた1種又は2種以上の混合物である
請求項1記載の汚れ乾拭き性に優れたフッ素樹脂被覆鋼
板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17220197A JPH1110795A (ja) | 1997-06-27 | 1997-06-27 | 汚れ乾拭き性に優れたフッ素樹脂被覆鋼板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17220197A JPH1110795A (ja) | 1997-06-27 | 1997-06-27 | 汚れ乾拭き性に優れたフッ素樹脂被覆鋼板 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1110795A true JPH1110795A (ja) | 1999-01-19 |
Family
ID=15937468
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP17220197A Pending JPH1110795A (ja) | 1997-06-27 | 1997-06-27 | 汚れ乾拭き性に優れたフッ素樹脂被覆鋼板 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH1110795A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20210097752A (ko) | 2019-03-28 | 2021-08-09 | 닛테츠 스테인레스 가부시키가이샤 | 클리어 도장 스테인리스 강판 |
-
1997
- 1997-06-27 JP JP17220197A patent/JPH1110795A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20210097752A (ko) | 2019-03-28 | 2021-08-09 | 닛테츠 스테인레스 가부시키가이샤 | 클리어 도장 스테인리스 강판 |
US12091578B2 (en) | 2019-03-28 | 2024-09-17 | Nippon Steel Stainless Steel Corporation | Clear-coated stainless steel sheet |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20030617 |